JP3558710B2 - 電動機 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、軸受部分に流体潤滑剤による動圧軸受を用いた電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、記録ディスク駆動装置などに組み込まれるスピンドルモータと呼ばれる電動機は、駆動負荷の性質上、回転部材であるロータハブを高精度に支持する共に、振れやガタツキを極力抑えた精度良い回転支持が要求される。こうした要求に応えるため、軸受部分には従来のボールベアリングから、オイルなどによる流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段へ置き換えられ、それに伴う構成が種々提案されている。特にスピンドルモータでは、回転軸方向のガタツキがあってはならないため、ラジアル軸受部に加えてスラスト軸受部が設けられている。
【0003】
軸受構成の一例として、例えば特公昭63─43606号公報に、スラスト動圧軸受が示されている。スラスト軸受の鍔(スラストプレート)10の両端面に動圧発生溝13,13’が設けられ、このスラストプレート10を挟むようにハウジング11が構成されている。そしてスラストプレート10とハウジング11との間に潤滑油12が充填され、動圧発生圧力に伴って両者は相対回転する。
【0004】
近時、上記駆動装置等は小型化・高容量化が進み、これに伴って電動機に対する要求は増々厳しくなりつつある。即ち電動機自体の小型化に加え、実装部品の高密度化で周囲環境の温度上昇が著しく、電動機に対する影響度が高くなってきた。そして電動機の特性として、高速回転化が要求され、従来の数千r.p.mから一万r.p.m以上の高速回転が必要となってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述のような構造による電動機においては、電動機周囲の温度上昇や電動機内部の発熱部品(例えば電機子等)或いは軸受部からの発熱昇温により、動圧軸受部の潤滑油が変質を起こしやすくなる。即ち潤滑油の劣化が促進される。また電動機の起動・停止動作に伴い、特にスラスト軸受部において必然的に起こる摩耗の結果生じた摩耗粉により、潤滑油を汚濁させ、同様に劣化が促進される。このような潤滑油の劣化が進むと、高精度な回転軸受支持を長時間にわたって維持することが困難となると共に、高速回転による連続運転が困難となる。このため、電動機の耐久性・信頼性の向上をはかるため、何らかの対策を図る必要があった。
【0006】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、電動機内外部の発熱昇温や、起動・停止動作に対しても、動圧軸受部に介在される流体潤滑剤の劣化を可及的に抑制することが出来、もって長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することが出来る、耐久性と信頼性の高い電動機を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明の電動機は、ハウジングと、該ハウジングに固定された軸部材と、該軸部材に対して相対回転支持されるロータと、前記軸部材と前記ロータとの間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段とを具備した電動機において;前記軸部材には、半径方向外方へ全周にわたって張り出したスラストプレートが設けられ、前記ロータは、前記軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、前記スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み;前記スリーブと前記軸部材との間にラジアル軸受部が設けられ、前記スリーブの端部と前記スラストプレートとの間、及び前記スラストカバーと前記スラストプレートとの間に、夫々スラスト軸受部が設けられており;前記スラストプレートの外周端部側には、前記スリーブ及び前記スラストカバーによって規定された実質上一定間隙の環状間隙が設けられ;前記スラストプレートにおける前記スラストカバー側の対向面には、前記スラスト軸受部の内周端縁部に対応して、前記スラストカバー側へ開口する孔部が設けられ;前記軸部材の表面のうち、前記ラジアル軸受部の実質上最大動圧圧力が生成される対応部位には、孔部が設けられ;前記軸部材及び前記スラストプレートにおけるそれぞれ前記孔部は、該スラストプレートと該軸部材との夫々内部を経て連通しあう連通孔として構成され;前記スラスト軸受部のうち前記スリーブの端部側は、介在される流体潤滑剤が軸部材側へ移動するよう動圧発生溝が設けられ;前記ロータが回転駆動されることにより、前記ラジアル軸受部からの前記流体潤滑剤は、前記連通孔を経て前記スラストカバー側の前記スラスト軸受部へ送出されると共に、前記スラストカバー側のスラスト軸受部から前記スリーブの端部側のスラスト軸受部へ移動した前記流体潤滑剤は、前記スリーブの端部側のスラスト軸受部により前記軸部材側に送出されて、前記ラジアル軸受部に還流されてなるものである。
【0008】
そして本発明の電動機は、連通孔の途中または開口孔部に、前記流体潤滑剤中の異物や不純物等を濾過するフィルタ部材が装着されることが望ましい。
【0009】
【作用】
本発明の電動機によれば、連通孔における軸部材側の孔部は、ラジアル軸受部の実質上最大動圧圧力が生成される部位に対応して設けられている。この為、電動機が回転駆動されるに伴い、ラジアル動圧の発生圧力により、流体潤滑剤の圧力は1気圧以上となり、流体潤滑剤の一部は、連通孔に押し込められるよう作用力を受け、この連通孔を経てスラストプレートのスラストカバー側へ送り出される。この流体潤滑剤は、スラストカバー側のスラスト軸受部に供給される一方、スリーブの遠心力等により環状間隙を経てスリーブ側のスラスト軸受部へ供給される。スリーブ側のスラスト軸受部では、介在される流体潤滑剤が軸部材側へ移動するよう動圧発生溝が設けられている為、スリーブ側のスラスト軸受部の流体潤滑剤は、軸部材側へ移動し、軸部材側に設けられたラジアル軸受部へ流れる。
【0010】
前記連通孔は、ラジアル軸受部から送り出される流体潤滑剤の還流路をなし、ラジアル軸受部の動圧発生力の一部を利用することにより、ラジアル軸受部からスラスト軸受部へ、流体潤滑剤が送り出される。そしてスラスト軸受部におけるスリーブ側の動圧発生力を利用して、スラスト軸受部からラジアル軸受部へ流体潤滑剤が送り出される。これにより流体潤滑剤は電動機内部の軸受部を満遍なく循環する。このため、電動機内外部の発熱昇温に対して部分的に帯熱することなく均等に循環して放熱されるから、流体潤滑剤の温度上昇が抑制される。また起動・停止動作による摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。こうして流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0011】
また上記の電動機によれば、連通孔の途中または開口孔部に、流体潤滑剤の異物や不純物等を濾過するフィルタ部材が装着されることにより、流体潤滑剤の汚濁が防止され、流体潤滑剤の変質・劣化がより低減される。
【0012】
【実施例】
本発明に従う電動機の実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、例えば光・磁気ディスクなどの記録ディスクを回転駆動するための電動機であり、その全体断面図である。図2は図1の動圧軸受によりロータ3がシャフト2に対して回転支持される部分を中心に示した拡大断面図である。また図3は図1における部材を示し、(a)はシャフト2とスラストプレート5とが固定された状態を示す側面図、(b)はスラストプレート5の上端部33側から見た平面図、(c)は同じくスラストプレート5の下端部34側から見た平面図、(d)はスリーブ4の断面図である。これらの図において、同じ部材・部位には、同じ番号が付してある。
【0013】
図1乃至図3において、ハウジング1はアルミ合金から形成され、その中心部には上方(電動機内部側)に***して形成されたボス部16が設けられている。ボス部16には、その中央部において孔部15が設けられ、孔部15の内側に筒状のブッシュ70が嵌め込まれて固定されている。ブッシュ70は鉄鋼材などから形成されている。そしてブッシュ70の孔部71にシャフト2の下端部が嵌め込まれて固定されている。ブッシュ70はハウジング1とシャフト2とに介在される介在部材であり、ハウジング1とシャフト2との寸法調整をなすと共に、アルミ合金のハウジング1に対して嵌合されるシャフト2の固定剛性を確保するためのものである。
【0014】
シャフト2はハウジング1の取付面72に対して、実質上、垂直に取り付けられている。シャフト2は、例えば鉄基合金等から形成されており、上端部側の外周部が僅かに縮径されて形成され(縮径部73)、この縮径部73に円板状をなすスラストプレート5が外嵌固定されている。スラストプレート5は、シャフト2の長手(軸心)方向に対して、実質上、直角に形成されると共に、その上下端部33,34の面が実質上平行となるよう形成されている。
【0015】
シャフト2に回転支持されるロータ3は、略円筒状をなすスリーブ4と、スリーブ4の外周側に固定されたハブ10とを有している。ハブ10は、例えば磁性材のステンレス鋼から形成され、その外周部49に例えば回転負荷としての記録ディスク(図示省略)が外嵌して装着される。ハブ10の鍔41は記録ディスクを受け止めるために外方へ張り出して形成されている。なお、記録ディスクは、図示省略する既に周知のクランプ手段により、ハブ10へ一体に固定される。
【0016】
スリーブ4はその全長の大部分を占める円筒状の周壁24と、その上部に一体に設けられた拡径部25とからなり、これらはシャフト2に対して同軸的に形成されている。スリーブ4は、例えば鉛青銅等の銅合金材料により形成されている。スリーブ4における拡径部25の段部27上部には、スラストカバー6が装着される。スラストカバー6は、リング形状をなし、その外周部がスリーブ4の上部内周側74にて嵌め込まれ、スリーブ上端部32を加締めることにより、スリーブ4に対してきつく固定される。スラストカバー6の内周部57は、シャフト2の外周部19(縮径部73)と僅かな隙間をもって対向している。これらスリーブ4、ハブ10及びスリーブ4に固定されたスラストカバー6を含む一体部材が、シャフト2に対して回転支持される。
【0017】
ハウジング1のボス部16には、その外周上部に段部17が形成され、段部17にステータ7が固定されている。ステータ7は、所定の磁極歯を有するステータコア12に、ステータコイル11が巻回されている。ステータコイル11から引き出されたコイルリード線13は、ハウジング1上に貼着されたフレキシブル回路基板14に接続され、さらに図示省略する接続線は絶縁ブッシュ23を介して電動機外部へ導出される。ステータ7と半径方向へ対向したハブ10側(ハブ10の内周部18)には、ロータマグネット8が装着されている。従ってコイルリード線13に所定の電気信号が通電されると、ロータマグネット8とステータ7との電磁相互作用により、ロータ3(ハブ10)が回転駆動される。
【0018】
シャフト2に対するロータ3の回転支持は、潤滑油による流体潤滑剤を介した動圧軸受によっている。シャフト2の外周部19における略中央部には、外周部19の外径寸法より僅かに縮径して形成された縮径部35が設けられている。そしてその上下方向の両側には、所定の外径寸法で形成された外周面を有する外周部47,48が設けられている。外周部47,48は、これらと半径方向に外嵌して対面するスリーブ4とにより、ラジアル動圧軸受部A,Bが構成される。ラジアル動圧軸受部A,Bを構成するために、流体潤滑剤が介在されると共に、スリーブ4の内周部31の対応部には、図3(d)に示すように周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状の動圧発生溝75,76が全周にわたり設けられている。なお、これらの動圧発生溝75,76はこれに代えて、スリーブ4側と相対するシャフト2の外周部47,48側に設けられていてもよい。
【0019】
一方、スラストカバー6の下端部52とこれに軸方向(上下方向)に対向するスラストプレート5の上端部33、そしてスラストプレート5の下端部34と同じく同方向に対向するスリーブ4の(周壁24の)上端部44により、スラスト動圧軸受部C,Dが構成される。スラスト動圧軸受部C,Dが構成されるために、流体潤滑剤が介在されると共に、スラストプレート5の上下両端部33,34には、図3(b)及び同図(c)に示すように、周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状の動圧発生溝77,78が全周にわたり設けられている。なお、動圧発生溝77,78は、スパイラル状にすることもできる。またそれぞれの動圧発生溝77,78は、スラストプレート5側に形成することに代えて、これと相対するスラストカバー6の下端部52、及びスリーブ4の上端部44側にそれぞれ設けられていても構わない。または、これらの組み合わせであっても構わない。
【0020】
スラストプレート5の外周端部79側には、スラストカバー6(下端部52)とスリーブ4(段部25の内周部61,周壁24の上端部44)とで規定されると共に、スラストプレート5の全周にわたり形成される環状間隙60が設けられている。そしてスラストプレート5の外周端部79には、全周にわたり外方へ開口した環状溝29が設けられており、環状溝29は外周端を最大開口とし内方に従い狭小した形状、図例ではテーパ状をなしている。
【0021】
スラストプレート5の上端部33には、スラストカバー6に対向して開口する孔部81が穿設されている。そして孔部81は、スラストプレート5の内周端縁部、即ちシャフト2と動圧発生溝77との中間部に位置付けられて開口している。孔部81は、シャフト2の内方軸中心部へ連通する連通路80のスラストプレート側開口部をなす。連通路80(連通孔)は、図2に示すように、シャフト2の軸中心部を軸方向へ連通し、途中で分岐した一方がシャフト2の外周部47にて開口(孔部82)し、他方がシャフト2の外周部48にて開口(孔部83)するよう形成されている。なお、シャフト2の上端部側に形成された貫通孔84は、連通路80を形成する加工上生成されたものであり、この貫通孔84にはこれを封止する閉塞部材85が挿入されている。閉塞部材85には、種々の金属材料や樹脂材料と用いることができ、圧入,接着等で固定する他、接着剤等で貫通孔84を充填してもよい。
【0022】
シャフト2に穿設された孔部82,83は、いずれもラジアル動圧軸受部A,Bの動圧発生中心部、即ち動圧発生圧力が最大となる部位(図例では、図3(d)の動圧発生溝75,76における部位86,87に対応する部位)に位置付けられている。従って、電動機が回転駆動され、ロータ3が相対回転すると、ラジアル軸受部A,Bに介在された流体潤滑剤は、その一部が孔部82,83へ流入して連通路80を通り、これを経て、スラストプレート上端部33の孔部81から流出する。この流体潤滑剤の流れを図2の矢印で示す。これは動圧軸受部A,Bの動圧発生圧力が大気圧力より大きくなり、即ち1気圧以上となり、一方スラストプレート上端部33側は実質上1気圧であるから、流体潤滑剤はスラストプレート5側へ移動するよう作用力を受ける。
【0023】
孔部82,83は、動圧軸受部A,Bにて生成される動圧発生圧力の一部を利用して、流体潤滑剤を流入するよう作用させている。このため、動圧軸受部A,Bは本来の軸受支持を維持するに必要な動圧発生圧力に加え、スラストプレート5側へ流体潤滑剤を送り出すための動圧発生圧力が得られるよう、予めその発生圧力が設定されている。動圧軸受部A,Bに対する動圧発生圧力を損なわず、かつ適切な圧力の流体潤滑剤を孔部82,83側へ送り出すために、連通路80は流体潤滑剤に対して適切な流通抵抗を持たせる必要がある。
【0024】
本実施例では、連通路80の横断面積を所定寸法に対応するよう予め穿設されている。連通路80の横断面積が加工の都合上、所定より大きくなるような場合には、連通路80の開口部である孔部82,83あるいは81等を縮径して「絞り」を設けるようにしてもよい。「絞り」は塑性変形加工等により容易に形成することができる。また「絞り」は、図4に示すように、開口径を所定開口面積に縮径した絞り部材102,103としてシャフト2に嵌合固定することもできる。(なお、以下に示す図面において、図1の電動機と同様の部位、部材については、同じ番号が付してある。)
【0025】
さらに図4において、スラストプレート5側の開口部に絞り部材101を嵌合固定するもよい。またこれらの組み合わせを設けることもできる。さらに開口形状を円や円弧、方形や星形等種々を選択することにより、実質上面積を変更、調整することができる。一方これとは逆に、本実施例では一つの連通路80が設けられているが、横断面積を増加させるため、これを例えば複数路をシャフト2の周方向に配置して設けてもよい。また、図5に示すように、連通路80の途中部位の貫通孔84に、ネジ104を螺着し、ネジ104の螺進度合いにより任意調整することもできる。この場合、ネジ104で調整後、貫通孔84には、閉塞部材105で貫通孔84を密閉する。
【0026】
ラジアル軸受部A,Bから送り出された流体潤滑剤は、スラストプレート5の孔部81から流出される。孔部81が開口する部分は、スラストプレート5(上端部33)とスラストカバー6(テーパ部62)とで構成される間隙98であり、この間隙98は(後述する)流体潤滑剤の(外部への漏出防止用)シール機能部をなし、流体潤滑剤が保持される部分である。このため、孔部81から送り出された流体潤滑剤は、間隙98に一時保持され、そしてスラスト軸受部Cに供給される。孔部81は動圧発生溝77に掛かっていないいから、スラスト動圧軸受支持になんら支障を与えない。
【0027】
スラスト軸受部Cからの流体潤滑剤は、スリーブ4の遠心力や他の作用力等により、スラストプレート5の上端部33から周壁61あるいは直接に間隙60に滞留する。また、環状溝29が設けられているから、孔部81からの流体潤滑剤は、毛管現象及び表面張力により環状溝29に伝い流れて、スラストプレート外周端部79側へ容易に流出する。そしてスリーブ内周部61とスラストプレート外周端部79との隙間、即ち環状間隙60内にほどなく滞留保持される。環状間隙60における、スラストプレート外周端部79と、スリーブ4における(段部27の)内周部61との間隙(半径方向)寸法は、流体潤滑剤が毛細管現象で作用する程度の間隙となっている。このため、環状間隙60内に滞留・保持された流体潤滑剤は、ほどなくスラスト軸受部Dにも供給される。
【0028】
スラスト軸受部Dの動圧発生溝78は、スラストプレート5の下端部34に設けられているが、流体潤滑剤をシャフト2の方向へ移動させるよう形成されている。すなわち図3(c)に示すように、そのヘリングボーン状溝において、くの字状をなす内周側の溝形状が外側の溝形状よりも短く構成されている。従って、スリーブ4との相対回転により、動圧軸受支持されると共に、介在される流体潤滑剤は内周側のシャフト2側へ移動するよう作用力を受ける。シャフト2側へ移動した流体潤滑剤は、ほどなく両ラジアル軸受部A,Bへ供給される。なお、スラストプレート上端部33の動圧発生溝77は、同様にヘリングボーン状溝であるが、内外周が対称状に構成されており、通常の動圧発生による軸受支持を行なう。また、特に動圧発生溝78は、ヘリングボーン状溝の他、図6に示すようにスパイラル状の溝でも構わない。(図6の動圧発生溝78は一部のみ図示している。)この場合も、流体潤滑剤はシャフト2側へ移動するよう作用を受ける。
【0029】
このように、連通路80は、電動機内部の動圧軸受部に介在される流体潤滑剤を循環させるための循環路をなし、ラジアル軸受部A,Bからスラスト軸受部C,Dへ流通させ、そしてスラスト軸受部Dの動圧作用で流体潤滑剤はラジアル軸受部A,Bへ還流する。なお、本実施例の図例では、ラジアル軸受部はA,Bの二箇所が一対の軸受手段を構成しているが、特にその数は問わない。一箇所または三箇所以上のラジアル軸受部にも対応できる。その際、流体潤滑剤が流入する孔部(本実施例の孔部82,83に対応)を、それぞれの動圧発生圧力が最大となる部位に対応して設ける。
【0030】
ステータ7から発熱する温度上昇により、電動機内部温度を昇温させ、また電動機の起動・停止が頻繁に繰り返されることにより、特にスラスト軸受部C,Dとスラストプレート5との(起動・停止時に必然的に発生する)摩耗により、発熱が生ずる。しかしながら、本構成によれば、こうした温度上昇による流体潤滑剤の温度変質・劣化が可及的に防止されると共に、電動機内部で発熱する温度上昇分布を均質化させて全体として電動機の温度上昇を低減させることができる。
【0031】
また起動・停止動作に伴い、スラストプレート5とスリーブ4とによる摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。これらにより、流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0032】
図2において、スラスト動圧軸受部C側の動圧発生部に保持される流体潤滑剤は、電動機外側、即ち図の上方側に対して次のような構成により漏出防止を図っている。シャフト2の外周部19(縮径部73)に、環状溝36が設けられ、この環状溝36とスラストカバー6の(内周部57の)環状溝88とが対向する間隙を大きくしている。また、スラストカバー6の内周部57の内側62をテーパ状に形成している。このため、動圧発生部の流体潤滑剤が電動機外側へ(図の上側へ)漏出しようとしても、これら二つの間隙により、流体潤滑剤に作用する表面張力で漏出することが防止される。
【0033】
特にテーパ部62によるスラストプレート5との間隙98は、電動機外方に向けて順次大きくなるよう構成されている。このため、流体潤滑剤の移動や変動に対しても、表面張力・毛細管現象により、所定の間隙幅に対応し平衡する部位で、確実に流体潤滑剤が保持される。即ちテーパ部62により流体潤滑剤の漏出防止の為のシール機能を有する。そして更に上記環状溝36,88により、より効果的に漏出防止が図ることができる。なお、これらスラストカバー6の各部位57,62やシャフト2の外周部19,環状溝36の部位に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布しておくことでより流体潤滑剤の漏出を防止することができる。
【0034】
一方、図2に示すスリーブ4の下側においては、ラジアル動圧軸受部Bが設けられている。この動圧発生部の流体潤滑剤が電動機の外部へ漏出することを防止するため、以下の構成が図られている。即ち、シャフト外周部19には、その下端部側にテーパ部40が設けられており、スリーブ4の内周部31との間隙により、流体潤滑剤の移動に対して、所定の表面張力で平衡する部位にて保持され、電動機外部(図の下側)へ漏出することが防止される。なお、両環状溝37,43の部位に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布することにより、漏出防止効果を高めることができる。
【0035】
次に示す図7は、別の実施例を示す電動機である。図7における電動機の特徴は、連通路80の通路中に、流体潤滑剤を濾過するフィルタ94を装着したことである。フィルタ94は流体潤滑剤に含まれる摩耗粉等の不純物を分離して除去することを目的とするものであり、例えば多孔質金属、セラミックス、繊維、そして金属網などを用いることができる。従って、図1の実施例に比べ、さらに流体潤滑剤の変質・劣化が抑制されることになり、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上をより図ることができる。図7のフィルタ94は、連通路80の上端部貫通孔84が拡径されているため、容易に装着される。なおシャフト上端部は閉塞部材95で封止される。そして本実施例ではフィルタ94が固定部材であるシャフト2側に設けられているため装着が容易であり、また電動機の回転特性に直接影響を与えることがない。
【0036】
また更にフィルタ94は、上記の異物除去の物質、部材を用いることの他、活性炭あるいは化学的な活性用物質を利用して、微細物質あるいは流体潤滑剤の変性成分を除去することも可能であることは言うまでもない。なお、フィルタ94は、図示の他、連通路80の任意の部位に装着することができる。またフィルタ94を連通路80の開口端である孔部81,82,83等に設けるようにしても構わない。
【0037】
次に示す図8は、更に別の実施例を示し、うち(a)は電動機を上から見た平面図であり、スラストカバー6を取り外した状態を示す。そして(b)はその部分断面図であり、また(c)はスラストカバー6を取り外した状態の斜視図である。図8における実施例では、既に説明した実施例に加えて、或いはその組み合わせにおいて、以下の実施例をさらに併用して構成することができる。そして図8においては、図1乃至図7で用いた連通路80,90の図示を便宜上省略しているが、実際には構成されている前提で以下に説明する。
【0038】
図8において、スラストプレート5には、上下端部33,34のスラスト動圧軸受部C,Dから環状溝29へ連通する孔部50,51が設けられている。孔部51はスラストプレート5を軸方向に貫通して設けられており、孔部50は孔部51からスラストプレート5と実質上平行に外周端部79側へ貫通して設けられている。更にスラストプレート5のシャフト2側には、貫通孔66が設けられている。
【0039】
一方、スリーブ4側におけるスラストプレート外周端部79側には、間隙幅の小さい(流体潤滑剤が毛細管現象により充分保持される程度の)環状間隙60に加えて180度回転対称状に吸気パイプ26が設けられている。吸気パイプ26に対応するスリーブ内周部61には、さらに円弧状の凹部67が設けられている。この場合、吸気パイプ26が凹部67の端部に位置付けられており、しかもこの位置は、シャフト2に対してロータ3(スリーブ4)の相対回転移動方向側に設けられている。
【0040】
本実施例によれば、もし、電動機の高速回転駆動や電動機に加わる衝撃等で、それぞれの動圧発生部から流体潤滑剤が環状間隙60へ飛散したり、環状間隙を規定する内部の周壁61や端部44へ漏出しても、環状間隙60内で受け止められて保持される。環状間隙60において滞留した流体潤滑剤は、環状溝29にて捕捉される。環状溝29はテーパ状に形成されているため、毛細管現象により容易に流体潤滑剤を捕捉することが出来る。環状溝29で捕捉された流体潤滑剤は、内部の供給路50及び51を経て、再びスラスト動圧軸受部C,Dの動圧発生部へ回収される。このため、両動圧発生部において流体潤滑剤が不足しても所要量が絶えず供給されるため、流体潤滑剤の枯渇や不足に伴う軸受支持不良を来さない。なお、環状間隙60に飛散・漏出した流体潤滑剤は、吸気パイプ26の開口部22が間隙空間の内方に突出しているため、この開口部22を経て電動機外部へ漏出することはない。
【0041】
図8(a)に示すようにスリーブ4は図のように回転して相対移動する。この実施例では、環状間隙60の間隙寸法が比較的狭く、この間隙に流体潤滑剤9が充填されるような場合であっても、凹部67の部分では、空隙68が生成される。この空隙68の横には、これと連通する吸気パイプ26が設けられている。従って、空隙68により、環状間隙60に流体潤滑剤が充填されても、必ず気圧差が解消された部分(空隙68)が常に生成されているから、温度変化等によっても流体潤滑剤を移動させるような作用力を受けることがない。また、吸気パイプ26の存在により、供給路50,51ヘ流体潤滑剤を押し込むことができる。その際、吸気パイプ26は、回転方向側に設けられているから、スリーブ4が高速回転しても、絶えず空隙68を生成することができる。
【0042】
従って、スラスト動圧軸受部C,Dにて保持される流体潤滑剤は、それぞれの動圧発生部において保持され、環状間隙60は電動機内外部の気圧差が解消されているため、流体潤滑剤が移動するような作用力を受けることがなく、安定した軸受支持が維持される。そして本実施例では、スラストプレート5側には、供給路51の内側に、スラストプレート5を貫通する貫通孔66が更に設けられているから、ラジアル動圧軸受部Aの動圧発生部に保持される流体潤滑剤に作用する気圧差を解消でき、流体潤滑剤の安定保持がより高められる。このように、図8における実施例を上記図1乃至図7の電動機に併用或いはこれらの組み合わせににより、流体潤滑剤の安定した使用ができ、信頼性と耐久性の両面において優れた軸受支持が実現できる電動機を得ることができる。
【0043】
以上、本発明の電動機の実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更乃至修正等自由である。例えば実施例で既に示した環状間隙60は、いずれもスリーブ4とスラストカバー6とで規定される構成であり、その内部の周壁61はスリーブ4の段部27によるものであるが,これに代えて環状間隙60の周壁をスラストカバー6側を用いるようにしても可能である。また、スラストプレート5とシャフト2とは別部材から構成されていたが、これらが一体に形成されていても構わない。その他、動圧軸受部の溝形状や配列、数量等任意に選択できる。また図示省略するが、図8において、スラストカバー6側に吸気パイプ26或いは吸気孔22を設けるようにしても構わない。また吸気パイプ26に代えて、一体形成された構成の吸気孔22を有するものであっても構わない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の電動機は、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。即ち、本発明の請求項1に対応する電動機によれば、連通路80を、流体潤滑剤がラジアル軸受部A,Bからスラスト軸受部Cへ流通する流体潤滑剤還流路とした。そして、ラジアル軸受部A,Bの動圧圧力の一部を利用して、流体潤滑剤を連通路80へ送り出す送出作用をさせる一方、スラスト軸受部Dの動圧発生作用の一部を利用してシャフト2側へ流体潤滑剤を移動させる作用により、流体潤滑剤を再びラジアル軸受部A,Bへ還流させることができる。これにより、流体潤滑剤は連通孔80を通して電動機内部を満遍なく循環する。従って、流体潤滑剤は、電動機内外部の発熱昇温に対して部分的に帯熱することなく、また均等に循環して放熱されるから、流体潤滑剤の温度上昇が抑制される。また起動・停止動作による摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。これらにより、流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0045】
また本発明の請求項2記載の電動機によれば、連通路80の途中または開口孔部に、流体潤滑剤を濾過するフィルタ部材94が装着されることにより、流体潤滑剤の汚濁が防止され、流体潤滑剤の変質・劣化がより低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電動機の全体を示す断面図である。
【図2】図1の電動機の要部拡大図である。
【図3】図1の電動機の要部拡大図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は平面図、そして(d)は断面図である。
【図4】本発明の別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の更に別の実施例に係る電動機の一部分の平面図である。
【図7】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータ
4 スリーブ
5 スラストプレート
6 スラストカバー
7 ステータ
8 ロータマグネット
10 ハブ
A,B ラジアル動圧軸受部
C,D スラスト動圧軸受部
【産業上の利用分野】
本発明は、軸受部分に流体潤滑剤による動圧軸受を用いた電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、記録ディスク駆動装置などに組み込まれるスピンドルモータと呼ばれる電動機は、駆動負荷の性質上、回転部材であるロータハブを高精度に支持する共に、振れやガタツキを極力抑えた精度良い回転支持が要求される。こうした要求に応えるため、軸受部分には従来のボールベアリングから、オイルなどによる流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段へ置き換えられ、それに伴う構成が種々提案されている。特にスピンドルモータでは、回転軸方向のガタツキがあってはならないため、ラジアル軸受部に加えてスラスト軸受部が設けられている。
【0003】
軸受構成の一例として、例えば特公昭63─43606号公報に、スラスト動圧軸受が示されている。スラスト軸受の鍔(スラストプレート)10の両端面に動圧発生溝13,13’が設けられ、このスラストプレート10を挟むようにハウジング11が構成されている。そしてスラストプレート10とハウジング11との間に潤滑油12が充填され、動圧発生圧力に伴って両者は相対回転する。
【0004】
近時、上記駆動装置等は小型化・高容量化が進み、これに伴って電動機に対する要求は増々厳しくなりつつある。即ち電動機自体の小型化に加え、実装部品の高密度化で周囲環境の温度上昇が著しく、電動機に対する影響度が高くなってきた。そして電動機の特性として、高速回転化が要求され、従来の数千r.p.mから一万r.p.m以上の高速回転が必要となってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述のような構造による電動機においては、電動機周囲の温度上昇や電動機内部の発熱部品(例えば電機子等)或いは軸受部からの発熱昇温により、動圧軸受部の潤滑油が変質を起こしやすくなる。即ち潤滑油の劣化が促進される。また電動機の起動・停止動作に伴い、特にスラスト軸受部において必然的に起こる摩耗の結果生じた摩耗粉により、潤滑油を汚濁させ、同様に劣化が促進される。このような潤滑油の劣化が進むと、高精度な回転軸受支持を長時間にわたって維持することが困難となると共に、高速回転による連続運転が困難となる。このため、電動機の耐久性・信頼性の向上をはかるため、何らかの対策を図る必要があった。
【0006】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、電動機内外部の発熱昇温や、起動・停止動作に対しても、動圧軸受部に介在される流体潤滑剤の劣化を可及的に抑制することが出来、もって長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することが出来る、耐久性と信頼性の高い電動機を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明の電動機は、ハウジングと、該ハウジングに固定された軸部材と、該軸部材に対して相対回転支持されるロータと、前記軸部材と前記ロータとの間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段とを具備した電動機において;前記軸部材には、半径方向外方へ全周にわたって張り出したスラストプレートが設けられ、前記ロータは、前記軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、前記スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み;前記スリーブと前記軸部材との間にラジアル軸受部が設けられ、前記スリーブの端部と前記スラストプレートとの間、及び前記スラストカバーと前記スラストプレートとの間に、夫々スラスト軸受部が設けられており;前記スラストプレートの外周端部側には、前記スリーブ及び前記スラストカバーによって規定された実質上一定間隙の環状間隙が設けられ;前記スラストプレートにおける前記スラストカバー側の対向面には、前記スラスト軸受部の内周端縁部に対応して、前記スラストカバー側へ開口する孔部が設けられ;前記軸部材の表面のうち、前記ラジアル軸受部の実質上最大動圧圧力が生成される対応部位には、孔部が設けられ;前記軸部材及び前記スラストプレートにおけるそれぞれ前記孔部は、該スラストプレートと該軸部材との夫々内部を経て連通しあう連通孔として構成され;前記スラスト軸受部のうち前記スリーブの端部側は、介在される流体潤滑剤が軸部材側へ移動するよう動圧発生溝が設けられ;前記ロータが回転駆動されることにより、前記ラジアル軸受部からの前記流体潤滑剤は、前記連通孔を経て前記スラストカバー側の前記スラスト軸受部へ送出されると共に、前記スラストカバー側のスラスト軸受部から前記スリーブの端部側のスラスト軸受部へ移動した前記流体潤滑剤は、前記スリーブの端部側のスラスト軸受部により前記軸部材側に送出されて、前記ラジアル軸受部に還流されてなるものである。
【0008】
そして本発明の電動機は、連通孔の途中または開口孔部に、前記流体潤滑剤中の異物や不純物等を濾過するフィルタ部材が装着されることが望ましい。
【0009】
【作用】
本発明の電動機によれば、連通孔における軸部材側の孔部は、ラジアル軸受部の実質上最大動圧圧力が生成される部位に対応して設けられている。この為、電動機が回転駆動されるに伴い、ラジアル動圧の発生圧力により、流体潤滑剤の圧力は1気圧以上となり、流体潤滑剤の一部は、連通孔に押し込められるよう作用力を受け、この連通孔を経てスラストプレートのスラストカバー側へ送り出される。この流体潤滑剤は、スラストカバー側のスラスト軸受部に供給される一方、スリーブの遠心力等により環状間隙を経てスリーブ側のスラスト軸受部へ供給される。スリーブ側のスラスト軸受部では、介在される流体潤滑剤が軸部材側へ移動するよう動圧発生溝が設けられている為、スリーブ側のスラスト軸受部の流体潤滑剤は、軸部材側へ移動し、軸部材側に設けられたラジアル軸受部へ流れる。
【0010】
前記連通孔は、ラジアル軸受部から送り出される流体潤滑剤の還流路をなし、ラジアル軸受部の動圧発生力の一部を利用することにより、ラジアル軸受部からスラスト軸受部へ、流体潤滑剤が送り出される。そしてスラスト軸受部におけるスリーブ側の動圧発生力を利用して、スラスト軸受部からラジアル軸受部へ流体潤滑剤が送り出される。これにより流体潤滑剤は電動機内部の軸受部を満遍なく循環する。このため、電動機内外部の発熱昇温に対して部分的に帯熱することなく均等に循環して放熱されるから、流体潤滑剤の温度上昇が抑制される。また起動・停止動作による摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。こうして流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0011】
また上記の電動機によれば、連通孔の途中または開口孔部に、流体潤滑剤の異物や不純物等を濾過するフィルタ部材が装着されることにより、流体潤滑剤の汚濁が防止され、流体潤滑剤の変質・劣化がより低減される。
【0012】
【実施例】
本発明に従う電動機の実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、例えば光・磁気ディスクなどの記録ディスクを回転駆動するための電動機であり、その全体断面図である。図2は図1の動圧軸受によりロータ3がシャフト2に対して回転支持される部分を中心に示した拡大断面図である。また図3は図1における部材を示し、(a)はシャフト2とスラストプレート5とが固定された状態を示す側面図、(b)はスラストプレート5の上端部33側から見た平面図、(c)は同じくスラストプレート5の下端部34側から見た平面図、(d)はスリーブ4の断面図である。これらの図において、同じ部材・部位には、同じ番号が付してある。
【0013】
図1乃至図3において、ハウジング1はアルミ合金から形成され、その中心部には上方(電動機内部側)に***して形成されたボス部16が設けられている。ボス部16には、その中央部において孔部15が設けられ、孔部15の内側に筒状のブッシュ70が嵌め込まれて固定されている。ブッシュ70は鉄鋼材などから形成されている。そしてブッシュ70の孔部71にシャフト2の下端部が嵌め込まれて固定されている。ブッシュ70はハウジング1とシャフト2とに介在される介在部材であり、ハウジング1とシャフト2との寸法調整をなすと共に、アルミ合金のハウジング1に対して嵌合されるシャフト2の固定剛性を確保するためのものである。
【0014】
シャフト2はハウジング1の取付面72に対して、実質上、垂直に取り付けられている。シャフト2は、例えば鉄基合金等から形成されており、上端部側の外周部が僅かに縮径されて形成され(縮径部73)、この縮径部73に円板状をなすスラストプレート5が外嵌固定されている。スラストプレート5は、シャフト2の長手(軸心)方向に対して、実質上、直角に形成されると共に、その上下端部33,34の面が実質上平行となるよう形成されている。
【0015】
シャフト2に回転支持されるロータ3は、略円筒状をなすスリーブ4と、スリーブ4の外周側に固定されたハブ10とを有している。ハブ10は、例えば磁性材のステンレス鋼から形成され、その外周部49に例えば回転負荷としての記録ディスク(図示省略)が外嵌して装着される。ハブ10の鍔41は記録ディスクを受け止めるために外方へ張り出して形成されている。なお、記録ディスクは、図示省略する既に周知のクランプ手段により、ハブ10へ一体に固定される。
【0016】
スリーブ4はその全長の大部分を占める円筒状の周壁24と、その上部に一体に設けられた拡径部25とからなり、これらはシャフト2に対して同軸的に形成されている。スリーブ4は、例えば鉛青銅等の銅合金材料により形成されている。スリーブ4における拡径部25の段部27上部には、スラストカバー6が装着される。スラストカバー6は、リング形状をなし、その外周部がスリーブ4の上部内周側74にて嵌め込まれ、スリーブ上端部32を加締めることにより、スリーブ4に対してきつく固定される。スラストカバー6の内周部57は、シャフト2の外周部19(縮径部73)と僅かな隙間をもって対向している。これらスリーブ4、ハブ10及びスリーブ4に固定されたスラストカバー6を含む一体部材が、シャフト2に対して回転支持される。
【0017】
ハウジング1のボス部16には、その外周上部に段部17が形成され、段部17にステータ7が固定されている。ステータ7は、所定の磁極歯を有するステータコア12に、ステータコイル11が巻回されている。ステータコイル11から引き出されたコイルリード線13は、ハウジング1上に貼着されたフレキシブル回路基板14に接続され、さらに図示省略する接続線は絶縁ブッシュ23を介して電動機外部へ導出される。ステータ7と半径方向へ対向したハブ10側(ハブ10の内周部18)には、ロータマグネット8が装着されている。従ってコイルリード線13に所定の電気信号が通電されると、ロータマグネット8とステータ7との電磁相互作用により、ロータ3(ハブ10)が回転駆動される。
【0018】
シャフト2に対するロータ3の回転支持は、潤滑油による流体潤滑剤を介した動圧軸受によっている。シャフト2の外周部19における略中央部には、外周部19の外径寸法より僅かに縮径して形成された縮径部35が設けられている。そしてその上下方向の両側には、所定の外径寸法で形成された外周面を有する外周部47,48が設けられている。外周部47,48は、これらと半径方向に外嵌して対面するスリーブ4とにより、ラジアル動圧軸受部A,Bが構成される。ラジアル動圧軸受部A,Bを構成するために、流体潤滑剤が介在されると共に、スリーブ4の内周部31の対応部には、図3(d)に示すように周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状の動圧発生溝75,76が全周にわたり設けられている。なお、これらの動圧発生溝75,76はこれに代えて、スリーブ4側と相対するシャフト2の外周部47,48側に設けられていてもよい。
【0019】
一方、スラストカバー6の下端部52とこれに軸方向(上下方向)に対向するスラストプレート5の上端部33、そしてスラストプレート5の下端部34と同じく同方向に対向するスリーブ4の(周壁24の)上端部44により、スラスト動圧軸受部C,Dが構成される。スラスト動圧軸受部C,Dが構成されるために、流体潤滑剤が介在されると共に、スラストプレート5の上下両端部33,34には、図3(b)及び同図(c)に示すように、周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状の動圧発生溝77,78が全周にわたり設けられている。なお、動圧発生溝77,78は、スパイラル状にすることもできる。またそれぞれの動圧発生溝77,78は、スラストプレート5側に形成することに代えて、これと相対するスラストカバー6の下端部52、及びスリーブ4の上端部44側にそれぞれ設けられていても構わない。または、これらの組み合わせであっても構わない。
【0020】
スラストプレート5の外周端部79側には、スラストカバー6(下端部52)とスリーブ4(段部25の内周部61,周壁24の上端部44)とで規定されると共に、スラストプレート5の全周にわたり形成される環状間隙60が設けられている。そしてスラストプレート5の外周端部79には、全周にわたり外方へ開口した環状溝29が設けられており、環状溝29は外周端を最大開口とし内方に従い狭小した形状、図例ではテーパ状をなしている。
【0021】
スラストプレート5の上端部33には、スラストカバー6に対向して開口する孔部81が穿設されている。そして孔部81は、スラストプレート5の内周端縁部、即ちシャフト2と動圧発生溝77との中間部に位置付けられて開口している。孔部81は、シャフト2の内方軸中心部へ連通する連通路80のスラストプレート側開口部をなす。連通路80(連通孔)は、図2に示すように、シャフト2の軸中心部を軸方向へ連通し、途中で分岐した一方がシャフト2の外周部47にて開口(孔部82)し、他方がシャフト2の外周部48にて開口(孔部83)するよう形成されている。なお、シャフト2の上端部側に形成された貫通孔84は、連通路80を形成する加工上生成されたものであり、この貫通孔84にはこれを封止する閉塞部材85が挿入されている。閉塞部材85には、種々の金属材料や樹脂材料と用いることができ、圧入,接着等で固定する他、接着剤等で貫通孔84を充填してもよい。
【0022】
シャフト2に穿設された孔部82,83は、いずれもラジアル動圧軸受部A,Bの動圧発生中心部、即ち動圧発生圧力が最大となる部位(図例では、図3(d)の動圧発生溝75,76における部位86,87に対応する部位)に位置付けられている。従って、電動機が回転駆動され、ロータ3が相対回転すると、ラジアル軸受部A,Bに介在された流体潤滑剤は、その一部が孔部82,83へ流入して連通路80を通り、これを経て、スラストプレート上端部33の孔部81から流出する。この流体潤滑剤の流れを図2の矢印で示す。これは動圧軸受部A,Bの動圧発生圧力が大気圧力より大きくなり、即ち1気圧以上となり、一方スラストプレート上端部33側は実質上1気圧であるから、流体潤滑剤はスラストプレート5側へ移動するよう作用力を受ける。
【0023】
孔部82,83は、動圧軸受部A,Bにて生成される動圧発生圧力の一部を利用して、流体潤滑剤を流入するよう作用させている。このため、動圧軸受部A,Bは本来の軸受支持を維持するに必要な動圧発生圧力に加え、スラストプレート5側へ流体潤滑剤を送り出すための動圧発生圧力が得られるよう、予めその発生圧力が設定されている。動圧軸受部A,Bに対する動圧発生圧力を損なわず、かつ適切な圧力の流体潤滑剤を孔部82,83側へ送り出すために、連通路80は流体潤滑剤に対して適切な流通抵抗を持たせる必要がある。
【0024】
本実施例では、連通路80の横断面積を所定寸法に対応するよう予め穿設されている。連通路80の横断面積が加工の都合上、所定より大きくなるような場合には、連通路80の開口部である孔部82,83あるいは81等を縮径して「絞り」を設けるようにしてもよい。「絞り」は塑性変形加工等により容易に形成することができる。また「絞り」は、図4に示すように、開口径を所定開口面積に縮径した絞り部材102,103としてシャフト2に嵌合固定することもできる。(なお、以下に示す図面において、図1の電動機と同様の部位、部材については、同じ番号が付してある。)
【0025】
さらに図4において、スラストプレート5側の開口部に絞り部材101を嵌合固定するもよい。またこれらの組み合わせを設けることもできる。さらに開口形状を円や円弧、方形や星形等種々を選択することにより、実質上面積を変更、調整することができる。一方これとは逆に、本実施例では一つの連通路80が設けられているが、横断面積を増加させるため、これを例えば複数路をシャフト2の周方向に配置して設けてもよい。また、図5に示すように、連通路80の途中部位の貫通孔84に、ネジ104を螺着し、ネジ104の螺進度合いにより任意調整することもできる。この場合、ネジ104で調整後、貫通孔84には、閉塞部材105で貫通孔84を密閉する。
【0026】
ラジアル軸受部A,Bから送り出された流体潤滑剤は、スラストプレート5の孔部81から流出される。孔部81が開口する部分は、スラストプレート5(上端部33)とスラストカバー6(テーパ部62)とで構成される間隙98であり、この間隙98は(後述する)流体潤滑剤の(外部への漏出防止用)シール機能部をなし、流体潤滑剤が保持される部分である。このため、孔部81から送り出された流体潤滑剤は、間隙98に一時保持され、そしてスラスト軸受部Cに供給される。孔部81は動圧発生溝77に掛かっていないいから、スラスト動圧軸受支持になんら支障を与えない。
【0027】
スラスト軸受部Cからの流体潤滑剤は、スリーブ4の遠心力や他の作用力等により、スラストプレート5の上端部33から周壁61あるいは直接に間隙60に滞留する。また、環状溝29が設けられているから、孔部81からの流体潤滑剤は、毛管現象及び表面張力により環状溝29に伝い流れて、スラストプレート外周端部79側へ容易に流出する。そしてスリーブ内周部61とスラストプレート外周端部79との隙間、即ち環状間隙60内にほどなく滞留保持される。環状間隙60における、スラストプレート外周端部79と、スリーブ4における(段部27の)内周部61との間隙(半径方向)寸法は、流体潤滑剤が毛細管現象で作用する程度の間隙となっている。このため、環状間隙60内に滞留・保持された流体潤滑剤は、ほどなくスラスト軸受部Dにも供給される。
【0028】
スラスト軸受部Dの動圧発生溝78は、スラストプレート5の下端部34に設けられているが、流体潤滑剤をシャフト2の方向へ移動させるよう形成されている。すなわち図3(c)に示すように、そのヘリングボーン状溝において、くの字状をなす内周側の溝形状が外側の溝形状よりも短く構成されている。従って、スリーブ4との相対回転により、動圧軸受支持されると共に、介在される流体潤滑剤は内周側のシャフト2側へ移動するよう作用力を受ける。シャフト2側へ移動した流体潤滑剤は、ほどなく両ラジアル軸受部A,Bへ供給される。なお、スラストプレート上端部33の動圧発生溝77は、同様にヘリングボーン状溝であるが、内外周が対称状に構成されており、通常の動圧発生による軸受支持を行なう。また、特に動圧発生溝78は、ヘリングボーン状溝の他、図6に示すようにスパイラル状の溝でも構わない。(図6の動圧発生溝78は一部のみ図示している。)この場合も、流体潤滑剤はシャフト2側へ移動するよう作用を受ける。
【0029】
このように、連通路80は、電動機内部の動圧軸受部に介在される流体潤滑剤を循環させるための循環路をなし、ラジアル軸受部A,Bからスラスト軸受部C,Dへ流通させ、そしてスラスト軸受部Dの動圧作用で流体潤滑剤はラジアル軸受部A,Bへ還流する。なお、本実施例の図例では、ラジアル軸受部はA,Bの二箇所が一対の軸受手段を構成しているが、特にその数は問わない。一箇所または三箇所以上のラジアル軸受部にも対応できる。その際、流体潤滑剤が流入する孔部(本実施例の孔部82,83に対応)を、それぞれの動圧発生圧力が最大となる部位に対応して設ける。
【0030】
ステータ7から発熱する温度上昇により、電動機内部温度を昇温させ、また電動機の起動・停止が頻繁に繰り返されることにより、特にスラスト軸受部C,Dとスラストプレート5との(起動・停止時に必然的に発生する)摩耗により、発熱が生ずる。しかしながら、本構成によれば、こうした温度上昇による流体潤滑剤の温度変質・劣化が可及的に防止されると共に、電動機内部で発熱する温度上昇分布を均質化させて全体として電動機の温度上昇を低減させることができる。
【0031】
また起動・停止動作に伴い、スラストプレート5とスリーブ4とによる摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。これらにより、流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0032】
図2において、スラスト動圧軸受部C側の動圧発生部に保持される流体潤滑剤は、電動機外側、即ち図の上方側に対して次のような構成により漏出防止を図っている。シャフト2の外周部19(縮径部73)に、環状溝36が設けられ、この環状溝36とスラストカバー6の(内周部57の)環状溝88とが対向する間隙を大きくしている。また、スラストカバー6の内周部57の内側62をテーパ状に形成している。このため、動圧発生部の流体潤滑剤が電動機外側へ(図の上側へ)漏出しようとしても、これら二つの間隙により、流体潤滑剤に作用する表面張力で漏出することが防止される。
【0033】
特にテーパ部62によるスラストプレート5との間隙98は、電動機外方に向けて順次大きくなるよう構成されている。このため、流体潤滑剤の移動や変動に対しても、表面張力・毛細管現象により、所定の間隙幅に対応し平衡する部位で、確実に流体潤滑剤が保持される。即ちテーパ部62により流体潤滑剤の漏出防止の為のシール機能を有する。そして更に上記環状溝36,88により、より効果的に漏出防止が図ることができる。なお、これらスラストカバー6の各部位57,62やシャフト2の外周部19,環状溝36の部位に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布しておくことでより流体潤滑剤の漏出を防止することができる。
【0034】
一方、図2に示すスリーブ4の下側においては、ラジアル動圧軸受部Bが設けられている。この動圧発生部の流体潤滑剤が電動機の外部へ漏出することを防止するため、以下の構成が図られている。即ち、シャフト外周部19には、その下端部側にテーパ部40が設けられており、スリーブ4の内周部31との間隙により、流体潤滑剤の移動に対して、所定の表面張力で平衡する部位にて保持され、電動機外部(図の下側)へ漏出することが防止される。なお、両環状溝37,43の部位に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布することにより、漏出防止効果を高めることができる。
【0035】
次に示す図7は、別の実施例を示す電動機である。図7における電動機の特徴は、連通路80の通路中に、流体潤滑剤を濾過するフィルタ94を装着したことである。フィルタ94は流体潤滑剤に含まれる摩耗粉等の不純物を分離して除去することを目的とするものであり、例えば多孔質金属、セラミックス、繊維、そして金属網などを用いることができる。従って、図1の実施例に比べ、さらに流体潤滑剤の変質・劣化が抑制されることになり、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上をより図ることができる。図7のフィルタ94は、連通路80の上端部貫通孔84が拡径されているため、容易に装着される。なおシャフト上端部は閉塞部材95で封止される。そして本実施例ではフィルタ94が固定部材であるシャフト2側に設けられているため装着が容易であり、また電動機の回転特性に直接影響を与えることがない。
【0036】
また更にフィルタ94は、上記の異物除去の物質、部材を用いることの他、活性炭あるいは化学的な活性用物質を利用して、微細物質あるいは流体潤滑剤の変性成分を除去することも可能であることは言うまでもない。なお、フィルタ94は、図示の他、連通路80の任意の部位に装着することができる。またフィルタ94を連通路80の開口端である孔部81,82,83等に設けるようにしても構わない。
【0037】
次に示す図8は、更に別の実施例を示し、うち(a)は電動機を上から見た平面図であり、スラストカバー6を取り外した状態を示す。そして(b)はその部分断面図であり、また(c)はスラストカバー6を取り外した状態の斜視図である。図8における実施例では、既に説明した実施例に加えて、或いはその組み合わせにおいて、以下の実施例をさらに併用して構成することができる。そして図8においては、図1乃至図7で用いた連通路80,90の図示を便宜上省略しているが、実際には構成されている前提で以下に説明する。
【0038】
図8において、スラストプレート5には、上下端部33,34のスラスト動圧軸受部C,Dから環状溝29へ連通する孔部50,51が設けられている。孔部51はスラストプレート5を軸方向に貫通して設けられており、孔部50は孔部51からスラストプレート5と実質上平行に外周端部79側へ貫通して設けられている。更にスラストプレート5のシャフト2側には、貫通孔66が設けられている。
【0039】
一方、スリーブ4側におけるスラストプレート外周端部79側には、間隙幅の小さい(流体潤滑剤が毛細管現象により充分保持される程度の)環状間隙60に加えて180度回転対称状に吸気パイプ26が設けられている。吸気パイプ26に対応するスリーブ内周部61には、さらに円弧状の凹部67が設けられている。この場合、吸気パイプ26が凹部67の端部に位置付けられており、しかもこの位置は、シャフト2に対してロータ3(スリーブ4)の相対回転移動方向側に設けられている。
【0040】
本実施例によれば、もし、電動機の高速回転駆動や電動機に加わる衝撃等で、それぞれの動圧発生部から流体潤滑剤が環状間隙60へ飛散したり、環状間隙を規定する内部の周壁61や端部44へ漏出しても、環状間隙60内で受け止められて保持される。環状間隙60において滞留した流体潤滑剤は、環状溝29にて捕捉される。環状溝29はテーパ状に形成されているため、毛細管現象により容易に流体潤滑剤を捕捉することが出来る。環状溝29で捕捉された流体潤滑剤は、内部の供給路50及び51を経て、再びスラスト動圧軸受部C,Dの動圧発生部へ回収される。このため、両動圧発生部において流体潤滑剤が不足しても所要量が絶えず供給されるため、流体潤滑剤の枯渇や不足に伴う軸受支持不良を来さない。なお、環状間隙60に飛散・漏出した流体潤滑剤は、吸気パイプ26の開口部22が間隙空間の内方に突出しているため、この開口部22を経て電動機外部へ漏出することはない。
【0041】
図8(a)に示すようにスリーブ4は図のように回転して相対移動する。この実施例では、環状間隙60の間隙寸法が比較的狭く、この間隙に流体潤滑剤9が充填されるような場合であっても、凹部67の部分では、空隙68が生成される。この空隙68の横には、これと連通する吸気パイプ26が設けられている。従って、空隙68により、環状間隙60に流体潤滑剤が充填されても、必ず気圧差が解消された部分(空隙68)が常に生成されているから、温度変化等によっても流体潤滑剤を移動させるような作用力を受けることがない。また、吸気パイプ26の存在により、供給路50,51ヘ流体潤滑剤を押し込むことができる。その際、吸気パイプ26は、回転方向側に設けられているから、スリーブ4が高速回転しても、絶えず空隙68を生成することができる。
【0042】
従って、スラスト動圧軸受部C,Dにて保持される流体潤滑剤は、それぞれの動圧発生部において保持され、環状間隙60は電動機内外部の気圧差が解消されているため、流体潤滑剤が移動するような作用力を受けることがなく、安定した軸受支持が維持される。そして本実施例では、スラストプレート5側には、供給路51の内側に、スラストプレート5を貫通する貫通孔66が更に設けられているから、ラジアル動圧軸受部Aの動圧発生部に保持される流体潤滑剤に作用する気圧差を解消でき、流体潤滑剤の安定保持がより高められる。このように、図8における実施例を上記図1乃至図7の電動機に併用或いはこれらの組み合わせににより、流体潤滑剤の安定した使用ができ、信頼性と耐久性の両面において優れた軸受支持が実現できる電動機を得ることができる。
【0043】
以上、本発明の電動機の実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更乃至修正等自由である。例えば実施例で既に示した環状間隙60は、いずれもスリーブ4とスラストカバー6とで規定される構成であり、その内部の周壁61はスリーブ4の段部27によるものであるが,これに代えて環状間隙60の周壁をスラストカバー6側を用いるようにしても可能である。また、スラストプレート5とシャフト2とは別部材から構成されていたが、これらが一体に形成されていても構わない。その他、動圧軸受部の溝形状や配列、数量等任意に選択できる。また図示省略するが、図8において、スラストカバー6側に吸気パイプ26或いは吸気孔22を設けるようにしても構わない。また吸気パイプ26に代えて、一体形成された構成の吸気孔22を有するものであっても構わない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の電動機は、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。即ち、本発明の請求項1に対応する電動機によれば、連通路80を、流体潤滑剤がラジアル軸受部A,Bからスラスト軸受部Cへ流通する流体潤滑剤還流路とした。そして、ラジアル軸受部A,Bの動圧圧力の一部を利用して、流体潤滑剤を連通路80へ送り出す送出作用をさせる一方、スラスト軸受部Dの動圧発生作用の一部を利用してシャフト2側へ流体潤滑剤を移動させる作用により、流体潤滑剤を再びラジアル軸受部A,Bへ還流させることができる。これにより、流体潤滑剤は連通孔80を通して電動機内部を満遍なく循環する。従って、流体潤滑剤は、電動機内外部の発熱昇温に対して部分的に帯熱することなく、また均等に循環して放熱されるから、流体潤滑剤の温度上昇が抑制される。また起動・停止動作による摩耗粉が発生しても、部分的に流体潤滑剤内に含有や滞留することなく、流体潤滑剤の循環によって汚濁の均質化が図られる。これらにより、流体潤滑剤の変質・劣化は可及的に低減され、長期連続運転や高速回転等の環境下で初期特性を長時間維持することができ、耐久性と信頼性の向上が図れる。
【0045】
また本発明の請求項2記載の電動機によれば、連通路80の途中または開口孔部に、流体潤滑剤を濾過するフィルタ部材94が装着されることにより、流体潤滑剤の汚濁が防止され、流体潤滑剤の変質・劣化がより低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電動機の全体を示す断面図である。
【図2】図1の電動機の要部拡大図である。
【図3】図1の電動機の要部拡大図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は平面図、そして(d)は断面図である。
【図4】本発明の別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の更に別の実施例に係る電動機の一部分の平面図である。
【図7】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の更に別の実施例に係る電動機の要部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータ
4 スリーブ
5 スラストプレート
6 スラストカバー
7 ステータ
8 ロータマグネット
10 ハブ
A,B ラジアル動圧軸受部
C,D スラスト動圧軸受部
Claims (2)
- ハウジングと、該ハウジングに固定された軸部材と、該軸部材に対して相対回転支持されるロータと、前記軸部材と前記ロータとの間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段とを具備した電動機において、
前記軸部材には、半径方向外方へ全周にわたって張り出したスラストプレートが設けられ、
前記ロータは、前記軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、前記スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み、
前記スリーブと前記軸部材との間にラジアル軸受部が設けられ、
前記スリーブの端部と前記スラストプレートとの間、及び前記スラストカバーと前記スラストプレートとの間に、夫々スラスト軸受部が設けられており、
前記スラストプレートの外周端部側には、前記スリーブ及び前記スラストカバーによって規定された実質上一定間隙の環状間隙が設けられ、
前記スラストプレートにおける前記スラストカバー側の対向面には、前記スラスト軸受部の内周端縁部に対応して、前記スラストカバー側へ開口する孔部が設けられ、
前記軸部材の表面のうち、前記ラジアル軸受部の実質上最大動圧圧力が生成される対応部位には、孔部が設けられ、
前記軸部材及び前記スラストプレートにおけるそれぞれ前記孔部は、該スラストプレートと該軸部材との夫々内部を経て連通しあう連通孔として構成され、
前記スラスト軸受部のうち前記スリーブの端部側は、介在される流体潤滑剤が軸部材側へ移動するよう動圧発生溝が設けられ、
前記ロータが回転駆動されることにより、
前記ラジアル軸受部からの前記流体潤滑剤は、前記連通孔を経て前記スラストカバー側の前記スラスト軸受部へ送出されると共に、
前記スラストカバー側のスラスト軸受部から前記スリーブの端部側のスラスト軸受部へ移動した前記流体潤滑剤は、前記スリーブの端部側のスラスト軸受部により前記軸部材側に送出されて、前記ラジアル軸受部に還流される、ことを特徴とする電動機。 - 前記の連通孔の途中または開口孔部に、前記流体潤滑剤中の異物や不純物等を濾過するフィルタ部材が装着された請求項1記載の電動機。
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