JP3555205B2 - リン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は気相反応に適した複合酸化物触媒の製造方法に関するものである。より詳しくは、炭素数4のブタン、ブテン、ブタジエン等の炭化水素を気相酸化により無水マレイン酸を製造するのに適したリン−バナジウム酸化物からなる触媒前駆体の改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブタン、ブテン、ブタジエン等の炭素数4の炭化水素、特に飽和炭化水素のn−ブタンを、気相にて選択的に酸化して無水マレイン酸を製造するための触媒として、4価のバナジウムと5価のリンから成る触媒が用いられている。この触媒としては、特に、触媒特性の優れた結晶性の複合酸化物触媒として、ピロリン酸ジバナジル((VO)2 P2 O7 )が知られており、この化合物に係る文献が多く知られている(例えば、Chem.Rev.88,P.55〜80(1988)及びその引用文献)。このピロリン酸ジバナジルの合成方法として、その前駆体(プレカーサー)であるリン−バナジウム酸化物、即ち、リン酸水素バナジル・1/2水塩(VOHPO4 ・1/2H2 O)を焼成する方法が一般的であり、この前駆体を加熱焼成することにより、その構造を保持しながらピロリン酸ジバナジルに転移させることができることが報告されている。
【0003】
前駆体であるリン酸水素バナジル・1/2水塩の製造方法としては、いくつかの提案がある。中でも、有機溶媒中にて前駆体を製造する方法が数多く報告されているが、基本的には、5価のバナジウム化合物の少なくとも一部を有機溶媒中で還元した後、5価のリン化合物と反応させて5価のリンと4価のバナジウムの複合酸化物を得る方法である。
【0004】
例えば、特公昭57−8761号公報には、実質的に無水の有機溶媒中で五酸化バナジウムをバナジウムの価数を4.0〜4.6に還元させた後、オルトリン酸と反応させる方法が示されている。該公報の実施例で使用されているオルトリン酸は、具体的には85%及び100%リン酸である。有機溶媒としては、イソブタノ−ル単独あるいはイソブタノ−ルとベンジルアルコ−ルの混合溶媒が用いられている。ベンジルアルコ−ルの使用量はベンジルアルコ−ル/五酸化バナジウムモル比で2.2以上である。添加する助触媒成分元素としては、周期律表のV族元素が好ましく、特にタンタルとビスマスが好ましいことが記載されている。
【0005】
特公平1−50,455号公報には、実質的に5価のバナジウム化合物及びリン含有化合物を飽和有機溶媒中で加熱することにより、触媒前駆体を製造する方法が開示されている。この中に記載されているリン酸の濃度は100%である。また、特公平2−97号公報及び特公平2−98号公報には、混合リン酸を使用することを特徴としたリン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法が記載されている。ここで混合リン酸とは、オルトリン酸とピロリン酸及び少量のトリリン酸の混合物であり、具体的には75〜90重量%のオルトリン酸と10〜25重量%のピロリン酸の混合物が使用されている。
【0006】
更に、特公平62−61951号公報には、リン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法として、反応媒体として有機溶媒を用い、この反応系より該有機溶媒の一部を蒸留除去する方法が開示されている。ここで使用されているリン酸は、85%オルトリン酸あるいは上記のような組成の混合リン酸である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の例を含めた公知の方法で製造したリン−バナジウム酸化物前駆体より得た触媒では、1)無水マレイン酸が高収率であること、2)触媒がより低い反応温度で良好に働き、かつ長寿命であること、3)製造方法の再現性が良好なこと等の目的の一部は達成されているものの、その全てを兼ね備えた製造方法としてはなお不十分であった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来の実情に鑑み鋭意検討を進めた結果、工業的にも著しい改良が期待できる触媒前駆体の製造方法を見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は5価のリン化合物及び5価のバナジウム化合物を、5価のバナジウム化合物の少なくとも一部を4価に還元できる有機溶媒中で鉄化合物の存在下に反応させて、炭素数4の炭化水素を気相酸化して無水マレイン酸を製造するための触媒前駆体を製造する方法において、5価のリン化合物として、88〜90%のリン酸を使用することを特徴とする鉄を含むリン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法に存する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒前駆体の原料として使用する5価のバナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、またはメタバナジウム酸アンモニウム、オキシ三ハロゲン化バナジウムなどのバナジウム塩が例示されるが、最も一般的な原料は五酸化バナジウムである。五酸化バナジウムは市販品をそのまま、あるいは、粉砕して用いる。
【0010】
また、本発明の触媒前駆体の原料として使用する5価のリン化合物としては、オルトリン酸換算で88〜90%(重量%表示。以下同じ)の高濃度のリン酸で、かつ該リン酸はピロリン酸やトリリン酸等の縮合リン酸を実質的に含まず、実質的に全量がオルトリン酸であるものを使用する。(なお、ここで「実質的に全量がオルトリン酸」とは、全リン酸に対して、オルトリン酸の割合が99モル%以上であることを表す。)88〜90%のリン酸としては、工業規模で生産されて入手が容易な89%リン酸が最も好ましい。その他、105%リン酸に水を添加する方法や85%リン酸から水を除去する方法により、88〜90%のリン酸を調合して使用することも可能であるが、また105%リン酸は高価であると共に、固体であるので、取扱操作が煩雑であり好ましくない。なお、105%リン酸とは、オルトリン酸換算の濃度表示であるので、実際は、オルトリン酸、ピロリン酸及びトリリン酸からなる混合リン酸である。更にリン酸の縮合が進行した116%リン酸なども原料として使用可能であるが、105%リン酸と同様な理由で好ましくない。
【0011】
本発明で使用される有機溶媒はそれ自身が還元力を有するものである。還元性の有機溶媒としては、酸化を受けやすい官能基を有するものが挙げられ、典型的にはアルコ−ル性水酸基を有する有機溶媒が好適である。このような有機溶媒の中では、ブタノール、2−プロパノ−ルや2−メチルプロパノ−ル、ヘキサノール等の炭素数3〜6の脂肪族アルコ−ルや、ベンジルアルコ−ルが代表的である。かかる有機溶媒としては、上記の溶媒を混合物として使用することもでき、例えば、炭素数3〜6の脂肪族アルコ−ルと還元力の大きなベンジルアルコ−ルを混合して用いるのが好ましい。また、ヒドラジンやシュウ酸等の還元剤を有機溶媒中に存在させることも可能である。
【0012】
また、本発明では、触媒前駆体の調製の際に、助触媒を反応系に添加することが可能である。この酸化物触媒の前駆体に含有させる助触媒元素としては、鉄、コバルト、亜鉛等が挙げられ、特に鉄が良好である。これらの助触媒の金属は、前駆体を調製する際の反応媒体中に化合物で存在させるのが良い。この化合物の例として、例えば鉄の化合物としては、塩化第一鉄(II)、酢酸第一鉄(II)、シュウ酸第一鉄(II)、リン酸第二鉄(III)等が例示される。
【0013】
原料の使用割合は、5価のリン化合物と5価のバナジウム化合物がリンとバナジウムの原子比として、通常1.0:1〜1.3:1が適当である。鉄等の助触媒金属を使用する場合には、バナジウムと助触媒金属の合計に対する助触媒金属の原子比で、通常0.005〜0.3、好ましくは0.02〜0.2である。また有機溶媒の使用量は、反応媒体として使用できる量であれば特に限定されないが、特に還元力の大きなベンジルアルコ−ルを混合して使用する場合は、ベンジルアルコ−ル:5価のバナジウム化合物のモル比で通常0.02:1〜2:1、好ましくは0.5:1〜1.5:1である。以上の原料の使用割合の範囲において特に活性の高い触媒が得られる。
【0014】
本発明では以上の原料からなるスラリ−状態とし、これを、加熱撹拌下で反応させる。具体的には、バナジウムを還元するとともに、88〜90%のリン酸と反応させ、4価のバナジウム及び5価のリンを含有する複合酸化物粒子を製造する。本発明の方法においては、5価のバナジウム化合物、好ましくは五酸化バナジウムを有機溶媒中であらかじめ加熱還流してバナジウムの価数の一部を4価に還元した後でリン酸を添加する方法、あるいは五酸化バナジウムとリン酸を初めから混合して反応させる方法のいずれも採用することができるが、好ましくは前者の方法である。
【0015】
また、助触媒金属化合物を使用する場合には、反応の最初から添加する方法、リン酸を添加した後に加える方法等が選択可能である。
原料を混合したスラリ−の加熱温度としては、用いる有機溶媒の種類によるが、通常80〜200℃の範囲で実施し、溶媒の沸点付近の温度範囲で還流させる方法が特に好ましい。加熱時間は、反応条件により変動するが、反応系にリン酸を添加してから、通常1〜20時間が好適である。
【0016】
また、場合によっては、上記の加熱・還流中において、原料中の水あるいは反応により生成する水を除去することにより、優れた性能の触媒が得られやすい。除去する水の量は、反応系における水分を実質的全量除去する必要はないが、継続的に水を除去するようにした方が望ましい。水と共に加熱により蒸発した有機溶媒は、冷却して凝縮すると有機層と水層の2層に分離するので、この有機層は反応系に戻し、水層側を除去する。このような操作は、例えばディ−ン・スタ−ク型の装置を付けることにより、容易に実施できる。
【0017】
得られる複合酸化物粒子は、必ずしも結晶性は良好ではないが、リン酸水素バナジル・1/2水塩を含有するものである。該粒子は、固液分離の一般的手法により分離され、必要に応じてアルコ−ル等の溶媒で洗浄した後、乾燥する。
このようにして得られた酸化物触媒の前駆体は、そのままバインダ−成分あるいは担体成分と混合し、乾燥、加熱活性化するか、あるいは、前駆体を予め加熱して活性化後、バインダ−成分あるいは担体成分と混合し、乾燥するなどした後、反応器の形態により必要に応じて成型し、工業的な触媒とする。
【0018】
例えば上記の加熱活性化条件としては、例えば窒素雰囲気や窒素と空気を適当な割合で混合した雰囲気での加熱・焼成や、炭素数4の炭化水素を含有した反応ガス雰囲気中での加熱・焼成が挙げられる。そして温度条件400〜700℃で加熱することにより活性化させ、前駆体中の複合酸化物であるリン酸水素バナジル・1/2水塩の少なくとも一部を、触媒活性成分であるピロリン酸ジバナジルに転換させて触媒として使用する。
【0019】
本発明で得られる触媒前駆体を用いて調製される上記のような触媒は、炭化水素又はカルボン酸の部分酸化反応、特にn−ブタン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン等の炭素数4の炭化水素の気相酸化による無水マレイン酸の製造に好適に利用される。炭化水素原料として特に経済的に有利なのはn−ブタン及びブテンであり、これらは天然ガスからの分離、或いはナフサクラッキング生成物からの分離などによって容易に得ることができる。
【0020】
酸化反応の形式は流動床でも固定床でも或いは輸送床でもよい。酸化剤としては空気あるいは分子状酸素含有ガスが用いられる。原料炭化水素濃度は酸素含有ガスとの合計に対する割合で通常0.1〜10容量%、好ましくは1〜5容量%、酸素濃度は原料炭化水素及び酸素含有ガスの合計ガス中の割合が、10〜30容量%で行われる。反応温度は通常300〜500℃、好ましくは350〜450℃であり、反応圧力は、通常、常圧もしくは0.05〜10kg/cm2 Gの加圧下で行われる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「%」は、「重量%」を示す。また、「リン酸」とは、特に断りがない限り全量をオルトリン酸に換算した濃度で表す。
【0022】
実施例1
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2195g、ベンジルアルコ−ル205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸第一鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加後、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。このスラリ−溶液を更に7時間、加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0023】
実施例2
最初の還流時間を1時間とした以外は、実施例1と同様に触媒前駆体の合成を実施した。
実施例3
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル5120g、ベンジルアルコ−ル205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸第一鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加後、2−メチルプロパノ−ル0.1リットルを入れた。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。このスラリ−溶液を更に7時間、加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0024】
実施例4
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2195g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸第一鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−にベンジルアルコ−ル205.4gと、89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加した。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。更に、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れ、7時間、加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0025】
実施例5
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2400g、五酸化バナジウム347.5gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加後、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。このスラリ−溶液を還流開始した時点で、シュウ酸第一鉄・2水和物36.0gを添加し、7時間、加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0026】
実施例6
10リットルの容器にベンジルアルコ−ル2400g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸第一鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に89%リン酸528.5gとベンジルアルコ−ル1,000gの混合液を添加後、ベンジルアルコ−ル1720gを入れた。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。スラリ−溶液を80℃で7時間加熱した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0027】
実施例7
実施例1において、最初に仕込む原料のうち、2−メチルプロパノ−ル2205g、ベンジルアルコ−ル194.6g、五酸化バナジウム329.2g、シュウ酸第鉄・2水塩72.0gとした以外は実施例1と同様にして触媒前駆体を製造した。
実施例8
実施例7において、最初に仕込む原料のうち、2−メチルプロパノ−ル2011g、ベンジルアルコ−ル389.3gとした以外は実施例7と同様にして触媒前駆体を合成した。
【0028】
実施例9
実施例1において、最初に仕込む原料のうち、2−メチルプロパノ−ル2205g、ベンジルアルコ−ル194.6g、五酸化バナジウム292.6g、シュウ酸第一鉄・2水塩144.0gとした以外は実施例1と同様にして触媒前駆体を製造した。
実施例10
実施例1において、最初に仕込む原料のうち、シュウ酸第一鉄のかわりに酢酸第一鉄38.2gを使用した以外は実施例1と同じ合成を実施して触媒前駆体を製造した。
【0029】
実施例11
実施例1において、最初に仕込む原料のうち、シュウ酸第一鉄のかわりにリン酸第二鉄(III)40.2gを用いて実施例1と同様に触媒前駆体を合成した。
【0030】
比較例1
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2400g、五酸化バナジウム347.5gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に85%リン酸553.4gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解して添加後、シュウ酸第一鉄・2水塩36.0gを2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。このスラリ−溶液を7時間加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0031】
比較例2
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2400g、五酸化バナジウム329.2g、シュウ酸第一鉄・2水物72.0gを入れて3時間、加熱・還流した。このスラリ−に85%リン酸553.4gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加後、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。このスラリ−溶液を7時間加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0032】
比較例3
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2400g、五酸化バナジウム329.2g、シュウ酸第一鉄・2水物72.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に99%リン酸475.2gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加後し、次いで、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。このスラリ−溶液を7時間、加熱・還流した後、冷却した。2−メチルプロパノ−ルにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃にて10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0033】
反応試験例
実施例1〜11、比較例1〜3にて得られた酸化物触媒の前駆体を窒素雰囲気下、550℃焼成後、14〜24メッシュの粒径に成型した触媒を用いて、触媒活性を試験した。石英製反応管に触媒を1cc充填し、n−ブタン濃度4モル%の空気混合ガスを、GHSV1000Hr−1の速度で通過させて400℃で反応を実施した。約20時間経過後、反応管内の温度を350〜500℃の範囲で調整し、反応状態を調べた。反応管出口ガスをサンプリングして、オンライン接続したガスクロマトグラフにより生成物の分析を実施した。得られた結果を表−1に示す。比較例に比べて実施例の触媒は、無水マレイン酸収率が高く、かつ反応温度が低く、反応成績が良好なことが理解される。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例12
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2195g、ベンジルアルコ−ル205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸第一鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。このスラリ−に、89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リットルに溶解した溶液を添加し、次いで、2−メチルプロパノ−ル2.4リットルを入れた。尚、この89%リン酸は、実質的に全量がオルトリン酸である。このスラリ−溶液を更に7時間、加熱・還流したが、この間ディ−ン・スタ−ク型の受器により留出液から水層部分のみを合計で67mL除去した。反応スラリーを冷却後、濾過し、130℃にて10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0036】
実施例13
実施例12と同様に合成を実施し、7時間の加熱・還流の間に合計で水層60mLを除去し、触媒前駆体を調製した。
比較例4
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル2400g、五酸化バナジウム347.5g、85%リン酸553.4gを入れ、スラリ−溶液を加熱し、還流を開始した所でシュウ酸第一鉄・2水和物36.0gを添加した。実施例12と同様な方法で水層を除去しながら、7時間、加熱・還流し、合計で71mLの水層を除去し、触媒前駆体を調製した。
【0037】
比較例5
10リットルの容器に2−メチルプロパノ−ル5120g、五酸化バナジウム365.8g、固体リン酸(メルク社製品、純度99%、試薬)475.2gを入れて7時間、加熱・還流した。還流開始から4時間の間に2−メチルプロパノ−ルと水の共沸組成物1450mLを除去すると共に、2−メチルプロパノ−ル1450mLを補給した。スラリ−を冷却、濾過した後、2−メチルプロパノ−ルにより生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥し、触媒前駆体を調製した。
【0038】
比較例6
固体リン酸(メルク社製品、純度99%、試薬)475.2gを用いた以外は、実施例12と同様に合成を実施した。7時間の加熱・還流の間に合計で14.5mLの水層を除去し、触媒前駆体を調製した。
反応試験例2
実施例12〜13、比較例4〜6にて得られた酸化物触媒の前駆体を窒素雰囲気下、550℃焼成後、14〜24メッシュの粒径に成型した触媒を用いて、前記反応試験例1と同じ方法で触媒活性を試験した。得られた結果を表−2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明により得られる前駆体を活性化した酸化物触媒は、炭素数4の炭化水素、特に飽和のブタンを選択的に酸化して無水マレイン酸を製造する反応において、比較的低い温度範囲においても収率が高く、長期に渡り反応成績が良好である。そのため、触媒当たりの無水マレイン酸の製造量が大きく、触媒原単位の低減が可能である。また、工業的な触媒製造条件にて再現性よく製造することができる。
Claims (4)
- 5価のリン化合物及び5価のバナジウム化合物を、5価のバナジウム化合物の少なくとも一部を4価に還元できる有機溶媒中で鉄化合物の存在下に反応させて、炭素数4の炭化水素を気相酸化して無水マレイン酸を製造するための触媒前駆体を製造する方法において、5価のリン化合物として88〜90%のリン酸を使用することを特徴とする鉄を含むリン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
- 有機溶媒として炭素数3〜6の脂肪族アルコールとベンジルアルコールの混合液を使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 鉄化合物を、バナジウムに対する鉄の原子比が0.02〜0.2となるように存在させることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 反応中に水を除去することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
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1994
- 1994-12-21 JP JP31857094A patent/JP3555205B2/ja not_active Expired - Lifetime
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