JP3551960B2 - 有機物汚染土壌の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油やトリクロロエチレン等の有機物で汚染された土壌を、セメント原料の一部及びセメント焼成燃料の一部として資源利用することのできる有機物汚染土壌の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業活動などに伴って排出される廃材は、その大部分が、埋立処分場への投棄、あるいは、焼却炉による焼却によって処理されてきた。石油精製工場跡地などから発生する油混じり土や、洗浄に利用されたトリクロロエチレン等の有機物で汚染された土壌(以下、「有機物汚染土壌」という)についても、同様な方法で処分されてきた。
【0003】
ところが、近年、埋立処分場の能力が不足し、また、新たに処分場を確保することは社会的な制約により困難となっていることから、埋立処分による方法に期待することはできない状態となっている。また、焼却炉による焼却処理に関しても、環境に与える負荷が大きいために、実施が難しくなってきている。
【0004】
このような背景の基に環境保全の観点から、有機物汚染土壌についても、プラスチック等の廃材や下水汚泥などと同様に、再資源化することが社会的に重要な課題となっており、セメント製造用原料として有機物汚染土壌を活用する方法が推進されようとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有機物汚染土壌をセメント原料として使用する場合、そのまま原料混合段階で他のセメント原料と混ぜて使用する(つまり、有機物汚染土壌を混ぜたセメント原料を原料乾燥粉砕工程に通す)と、油等の有機成分が蒸発し、電気集塵機の電極に付着したりして、電気集塵機の性能を著しく低下させたり臭気を発生したりするおそれがある。
【0006】
そこで、有機物汚染土壌を原料乾燥粉砕工程に通さずに、直接セメント焼成設備のロータリーキルンへ投入することが考えられる。しかし、直接ロータリーキルンへ有機物汚染土壌を投入すると、土壌に含まれる数ミリ以上のレキ分が、セメントクリンカの品質に悪影響を及ぼすことが考えられる。また、大量に有機物汚染土壌をロータリーキルン内に投入すると、予め原料工程において調合してある粉末原料の組成とセメントクリンカの組成とが大きく異なってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、セメントクリンカの品質に影響を与えることなく、有機物汚染土壌を有効な資源として利用することのできる、有機物汚染土壌の処理方法を提供することを目的とする。また、有機物汚染土壌を大量にセメント焼成工程に投入しても、セメントクリンカの組成に影響を与えないようにすることのできる、有機物汚染土壌の処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の有機物汚染土壌の処理方法は、セメント原料を乾式ミルで粉砕し、プレヒータにおいて予熱した後に、セメント焼成用のロータリーキルンに投入してセメントクリンカを製造するに際して、有機物汚染土壌に、流動性を与えるための溶媒を加えて湿式ミルで粉砕した後、これを800℃以上の高温雰囲気下にあるセメント焼成工程に投入し、上記有機物汚染土壌の有機成分を燃料の一部として消費するとともに、土壌分をセメント原料の一部として利用することにより上記有機物汚染土壌を処分することを特徴とする。
【0009】
ここで、汚染物質である有機物の例としては、主にガソリンや石油等の油分が考えられるが、洗浄剤として利用されるトリクロロエチレン等も考えられる。湿式ミルで粉砕する場合、粉砕により温度が上がらないので、有機物成分がトリクロロエチレン等の低沸点の物質である場合にも、気化を防止しながら有機物汚染土壌を溶媒と共に混合粉砕することができる。
【0010】
このように800℃以上の高温雰囲気下にあるセメント焼成工程に、有機物汚染土壌と溶媒の混合粉砕物を投入することにより、有機成分は燃料の一部として消費することができ、土壌分はセメント原料の一部(粘土の一部)として、セメントクリンカの製造に利用することができる。従って、有機物汚染土壌を有効活用しながら処分できると共に、セメント原料である粘土分や焼成のための燃料を節約することができる。また、有機物汚染土壌を溶媒と共に湿式ミルで混合粉砕するので、土壌に含まれるレキ分(石ころ等)を確実に細かく粉砕することができ、セメントクリンカの品質に悪影響が出なくなる。この場合の湿式ミルは、乾式のセメント製造設備にはないものであるから、別置きとして設ける。
【0011】
ここで、湿式ミルから出てくるスラリー状の混合粉砕物を、セメント焼成工程に投入する場合、スラリー状のままで投入してもよいし、固液分離して固形分をケーキ状にしてから投入してもよい。固液分離する場合には、分離した液体を溶媒として再利用することもできる。また、汚染有機物が油で、溶媒として水を添加した場合は、油水分離を行って、油は燃料として利用し、スラリーをそのまま投入することも可能である。
【0012】
また、湿式ミルに投入する前に、有機物汚染土壌を溶媒と攪拌混合した後、ふるいにかけて、ふるい網上の粒径の大きな油等の有機分の少ない土壌を分離回収して、セメント原料として原料粉砕乾燥工程に投入し、網下の粒径の細かい有機分の多い土壌だけを湿式ミルに投入するようにしてもよい。また、ふるい網上の粒径の大きな土壌はクラッシャにかけて粉砕した後に、湿式ミルに投入してもよい。
【0013】
請求項2の発明の有機物汚染土壌の処理方法は、請求項1の方法における前記有機物汚染土壌の粉砕物の投入箇所を、ロータリーキルンの窯尻部、ロータリーキルンの前段に設けた仮焼炉、ロータリーキルンの前段に位置するプレヒータの高温部の少なくともいずれかの箇所とすることを特徴とする。
【0014】
有機物汚染土壌の粉砕物の投入箇所は、含有する有機物の着火温度以上の箇所であればよく、特にプレヒータに投入する場合は、前記の着火温度以上の高温部とする。そうすることにより、含有する有機成分を確実に燃焼させることができる。
【0015】
請求項3の発明の有機物汚染土壌の処理方法は、請求項1または2の方法における、前記溶媒として、廃油、廃液、汚泥、水、流動剤のうちの少なくとも1種を用いることを特徴とする。
【0016】
ここで、廃液としては、パルプ工場で出てくる廃液、市場などから回収された牛乳や飲料水、アルコールなどが考えられる。また、汚泥としては、下水処理場で出てくる汚泥などが考えられる。また、流動剤としては、主に水の添加量を減らす減水剤(界面活性剤)などが考えられる。
【0017】
請求項4の発明の有機物汚染土壌の処理方法は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記溶媒に加えて、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、石灰系廃棄物のうちの少なくとも1種を混入させることを特徴とする。
【0018】
この場合、前記の炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、石灰系廃棄物は、ほとんどセメント成分となるので、有機物汚染土壌を大量にセメント焼成工程に投入する場合にも、原料組成を適正に調整することができる。
【0019】
請求項5の発明の有機物汚染土壌の処理方法は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記有機物汚染土壌は、有機物としてのダイオキシン類で汚染された土壌を含むものであることを特徴とする。すなわち、有機物汚染土壌は、ダイオキシン類を含む有機物の汚染土壌であってもよい。
【0020】
この場合、ダイオキシン類は、セメントクリンカを製造する際に1450℃以上の雰囲気内で数10分以上加熱されることになるので、無害なものに確実に分解することができる。因みに、ダイオキシン類は、800℃以上の高温雰囲気で、2秒間以上滞留させることにより分解することができる。
【0021】
また、窯尻部内が800〜1100℃となり、仮焼炉内が800〜900℃となり、プレヒータの高温部であって例えば最下位置のサイクロン内が800〜900℃(仮焼炉が無い場合)となることから、これらのいずれの箇所に投入しても、その投入後2秒以上経過した後にはダイオキシン類を無害なものに分解することができる。
したがって、ダイオキシン類を含む有機物汚染土壌をセメントとして有効に利用することができるとともに、ダイオキシン類を無害なものに分解することによって、環境の改善を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の処理方法を実施するセメント製造設備の概要を示す図である。図において、このセメント製造設備は、乾式ミル1、原料サイロ2、プレヒータ3、ロータリーキルン5、電気集塵機10を備えて構成されている。
【0023】
セメント原料(石灰石、粘土、珪石、鉄原料)Gは、必要に応じてドライヤを経て、乾式ミル1に導入される。これらの原料Gは、乾式ミル1にて粉砕されて原料サイロ2に導入され、その後、プレヒータ3にて予熱された後、セメント焼成用のロータリーキルン5に投入されて焼成され、セメントクリンカとなる。
【0024】
プレヒータ3は、下方から上方に向けて複数のサイクロン3a、3b、3c、3dを多段に接続した多段サイクロン式のものであり、粉砕されたセメント原料を、ロータリーキルン5の排気を利用して、所定温度(800〜900℃)まで予熱する。ロータリーキルン5は、若干下流側へ下方傾斜した横向き円筒状のキルンシェルを有し、このキルンシェルをその中心軸線回りに回転させながら、重油や微粉石炭を燃料にしてバーナー6で加熱することで、プレヒータ3からのセメント原料を温度1450℃以上に昇温して焼成反応させて、セメントクリンカを生成する。その後、クリンカは、ロータリーキルン5の窯前部5Aに連結されたクーラー7により冷却されて、仕上げ工程へ送られる。以上は通常のセメント工場における操業と同様である。
【0025】
そして、この設備には、通常のセメント製造設備に加えて、湿式ミル11とスラリーポンプ12が新たに追加されており、有機物汚染土壌Aと溶媒Bの混合粉砕物Cを、スラリー状のまま、ロータリーキルン5の窯尻部5Bにスラリーポンプ12を用いて直接投入するようになっている。
【0026】
次に有機物汚染土壌を処理する場合の方法を説明する。
まず、有機物汚染土壌Aに、流動性を与えるための溶媒Bを加えて湿式ミル11で粉砕する。その後、これを800〜1100℃の高温雰囲気下にあるセメント焼成設備のロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入して、セメントクリンカを製造する。従って、ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入された有機物汚染土壌Aと溶媒Bの混合粉砕物Cは、加熱されたセメント原料と共に焼成され、セメントクリンカとして排出される。
【0027】
このようにロータリーキルン5の窯尻部5Bに、有機物汚染土壌Aと溶媒Bの混合粉砕物Cを投入することにより、有機分は燃料の一部として、ロータリーキルン5で消費することができ、土壌分はセメント原料の一部(粘土の一部)として、セメントクリンカの製造に利用することができる。
【0028】
従って、有機物汚染土壌Aを有効活用しながら処分できると共に、セメント原料である粘土分や焼成のための燃料を節約することができる。また、有機物汚染土壌Aを溶媒Bと共に湿式ミル11で混合粉砕するので、土壌に含まれるレキ分(石ころ等)を細かく砕くことができ、セメントクリンカの品質に悪影響を及ぼすこともない。
【0029】
この場合の溶媒Bとしては、廃油、廃液、汚泥、水、流動剤のうちの少なくとも1種を用いるのが望ましい。廃液としては、パルプ工場で出てくる廃液などが利用できるし、汚泥としては、下水処理場で出てくる汚泥などが利用できる。また、流動剤としては、主に水の添加量を減らす減水剤(界面活性剤)などが利用できる。これらの溶媒を用いることで、有機物汚染土壌Aに流動性を与えることができるので、湿式ミル11での混合粉砕を円滑且つ確実に行うことができるようになる。
【0030】
また、前記の溶媒Bに加えて炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、石灰系廃棄物などを混入させてもよく、そうした場合、それらはほとんどセメント成分となるので、それらの有効処分ができる上、セメントクリンカの組成を適正な範囲に保ちながら、有機物汚染土壌の大量投入ができるようになる。
【0031】
ここで、湿式ミル11から出てくるスラリー状の混合粉砕物Cを、ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入するに際して、前述のように、スラリー状のままで投入してもよいし、固液分離してケーキ状にしてから投入してもよい。固液分離する場合には、分離した液体を溶媒Bとして再利用することも可能である。
【0032】
また、湿式ミル11に投入する前に、有機物汚染土壌を溶媒と攪拌混合した後で、ふるいにかけて、ふるい網上の粒径の大きな有機分の少ない土壌を分離回収して、セメント原料として原料粉砕乾燥工程に投入し、網下の粒径の細かい有機分の多い土壌だけを湿式ミル11に投入するようにしてもよい。
【0033】
次に処理方法の実施例を挙げる。
《処理方法1》
油分0.1%〜30%(重量比)を含む土に、水(重量比30〜300%)と流動剤(重量比0〜10.0%)とを加えて湿式ミル11に投入し、約1〜60分間粉砕する。こうして得られたスラリー状の混合粉砕物を直接、ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入する。または、前記スラリー状の混合粉砕物を脱水した後、得られたケーキを、ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入し、油混じり水は溶媒として再利用する。
【0034】
《処理方法2》
油分0.1%〜30%(重量比)を含む土に、水(重量比30〜300%)と流動剤(重量比0〜10.0%)とを加えて、これを目開き0.5〜2.0mmのトロンメル(ふるい)に投入し、約1〜60分間攪拌洗浄する。このようにして得られた網上物は、セメント原料として、原料乾燥粉砕工程から使用する。また、網下物は、湿式ミル11で粉砕した後、スラリー状の混合粉砕物を直接ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入する。あるいは、前記スラリー状の混合粉砕物を脱水した後、得られたケーキを、ロータリーキルン5の窯尻部5Bに投入して、油混じり水は溶媒として再利用する。
【0035】
なお、仮焼炉を有するセメント焼成設備の場合は、ロータリーキルンの窯尻部に前記混合粉砕物Cを投入するのではなく、仮焼炉に投入することもできるし、ロータリーキルンの窯尻部と仮焼炉の両方に投入することもできる。また、800℃以上の温度が確保できる箇所であれば、プレヒータの高温部に投入することもできる。この場合、仮焼炉のないものであれば、最も高温となる窯尻部5B〜最下位置のサイクロン3aの間、もしくは、最下位置のサイクロン3aに混合粉砕物Cを投入することが好ましい。
【0036】
なお、図2および後述する図3、図4において、符号21および31は、それぞれ図1の原料供給流路21および排ガス流路31に対応している。また、図2〜図4においては、実線の矢印で原料の流れを示し、破線の矢印でガスの流れを示している。また、図1で示した構成要素と同一の要素については、当該図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図3は仮焼炉を有するセメント製造設備の要部を示す図であり、この図において、符号13は仮焼炉である。
仮焼炉13は、下から2番目のサイクロン3bと最下位置のサイクロン3aとの間に配置されたものであって、サイクロン3bから原料の供給を受けるとともに、当該原料を加熱してサイクロン3aに供給するようになっている。
また、仮焼炉13は、その下端部からロータリーキルン5の排ガスの供給を受けるとともに、クーラー抽気Dの供給を受け、かつ当該下端部に設けられたバーナー61によって加熱されるようになっている。クーラー抽気Dは、クーラー7でセメントクリンカの冷却に使われて高温となった空気である。符号71は、クーラー抽気Dを仮焼炉13に供給するための熱風流路である。
【0038】
そして、混合粉砕物Cは、仮焼炉13の、例えば側面の上端部に供給され、サイクロン3bから供給される原料と同様に、当該仮焼炉13で加熱されて、サイクロン3aから窯尻部5Bを介してロータリーキルン5に供給されるようになっている。
【0039】
また、仮焼炉13は、図4に示す構造のものであってもよい。すなわち、図4に示す仮焼炉13は、上記各サイクロン3a、3b、3c、3dとほぼ同様の容器状の形状をなしており、下端部から流動化ファン131による空気の供給を受けるとともに、クーラー抽気Dの供給を受け、かつ当該下端部に設けられたバーナー61によって加熱されるようになっている。
そして、混合粉砕物Cは、仮焼炉13の、例えば側面の上端部に供給され、当該仮焼炉13で加熱されて燃焼ガスやクーラー抽気D等のガスとともにサイクロン3aに供給され、当該サイクロン3aから窯尻部5Bを介してロータリーキルン5に供給されるようになっている。
【0040】
また、有機物としてダイオキシン類を含む場合であっても、セメント焼成工程のロータリーキルンは、ダイオキシンの分解温度よりもかなりの高温であるから、十分に分解処理することができる。
【0041】
すなわち、ダイオキシン類を含む汚染土壌としては、ごみ焼却場や、その他の焼却場の周辺や埋立場周辺などにおいてダイオキシン類で汚染された土壌や汚泥等があげられる。また、ダイオキシン類を含む汚染土壌としては、ごみ焼却施設や、その他の焼却施設等のいわゆるダイオキシン類を発生させる施設を解体したときに発生するがれき類や、煉瓦屑類、コンクリート塊類を含むものであってもよい。さらに、ダイオキシン類を含む汚染土壌としては、建築物内装材などのように燃焼によってダイオキシン類を生ずる可能性のある廃棄物、すなわち有機塩素系廃棄物を含むものであってもよい。
【0042】
上記ごみ焼却場等の周辺の土壌、汚泥や、ダイオキシン類で汚染されたがれき類、煉瓦類、コンクリート塊類等や、建築物内装材などは、上述したように溶媒Bと共に湿式ミル11で粉砕することによってスラリー状の混合粉砕物Cとし、この混合粉砕物Cをロータリーキルン5の窯尻部5Bや、仮焼炉13や、プレヒータ3の高温部である例えばサイクロン3aにスラリーポンプ12によって投入することになる。ただし、粒径の大きながれき類、煉瓦類、コンクリート塊類等は、クラッシャにかけて粉砕した後に、湿式ミル11に投入してもよい。
【0043】
また、ダイオキシン類とは、2、3、7、8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシンおよびその類縁化合物を指し、ジベンゾ−p−ジオキシン核に1〜8個の塩素原子が置換したポリクロロジベンゾ−p−ジオキシン類(PCDDs)およびジベンゾフラン核に1〜8個の塩素原子が置換したポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs)等を包含するものである。
そして、ダイオキシン類は、800℃以上の高温雰囲気で、2秒間以上滞留させることにより分解することができる。
【0044】
したがって、800〜1100℃となる窯尻部5B内や、800〜900℃となる仮焼炉13内や、仮焼炉13が無い場合に800〜900℃となる最下位置のサイクロン3a内に投入した場合には、その投入後、2秒以上経過した後には確実に、ダイオキシン類を無害なものに分解することができる。また、ロータリーキルン5内におけるセメントクリンカを製造する際の1450℃の雰囲気内を数10分以上の時間をかけて必ず通過することになるので、上記ダイオキシン類がセメントクリンカ中に残ることがない。
【0045】
なお、ダイオキシン類を含むものをプレヒータ3に投入する場合には、仮焼炉13の無い設備であれば、上述のように最も高温となる窯尻部5B〜最下位置のサイクロン3aの間、もしくは、最下位置のサイクロン3aに混合粉砕物Cを投入することが好ましい。ただし、800℃以上であれば、他のサイクロン3b、3c、3d等や、これらを接続する流路等に投入してもよい。また、仮焼炉13がある場合でも最下位置のサイクロン3a等に混合粉砕物Cを投入するようにしてもよい。さらに、仮焼炉13およびサイクロン3a等の双方に投入したり、仮焼炉13、サイクロン3a等および窯尻部5Bの全てに投入するようにしてもよい。因みに、図3や図4に示す仮焼炉13がある場合には、サイクロン3a内の温度が800〜900℃になるので、当該サイクロン3aにおいてより効果的にダイオキシン類を分解することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、有機物汚染土壌に、流動性を与えるための溶媒を加えて湿式ミルで粉砕した後、これを800℃以上の高温雰囲気下にあるセメント焼成工程に投入してセメントクリンカを製造するようにしたので、有機物汚染土壌の有機物成分を、燃料の一部として消費することができるし、土壌分を、セメント原料の一部(粘土の一部)として、セメントクリンカの製造に利用することができる。従って、有機物汚染土壌を有効活用しながら処分できると共に、セメント原料である粘土分や焼成のための燃料を節約することができる。
【0047】
また、有機物汚染土壌を溶媒と共に湿式ミルで混合粉砕するので、土壌に含まれるレキ分(石ころ等)を細かく砕くことができ、セメントクリンカの品質に悪影響を及ぼすこともない。
【0048】
また、請求項2の発明によれば、有機物汚染土壌の粉砕物の投入箇所を、ロータリーキルンの窯尻部、ロータリーキルンの前段に設けた仮焼炉、ロータリーキルンの前段に位置するプレヒータの高温部の少なくともいずれかの箇所としたので、含有する有機成分を確実に燃焼させることができる。
【0049】
また、請求項3の発明によれば、前記溶媒として、廃油、廃液、汚泥、水、流動剤のうちの少なくとも1種を用いるので、湿式ミルでの粉砕混合を円滑且つ確実に行うことができる。特に、溶媒として廃油や廃液や汚泥を使用した場合は、その有機分を燃料として使用することができるので、燃料費の節約に貢献することができると共に、それら廃棄物の有効な処分が可能となる。
【0050】
また、請求項4の発明によれば、前記溶媒に加えて炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、石灰系廃棄物のうちの少なくとも1種を混入させるので、それらの有効活用が可能となり、セメント原料の節約ができる。また、これらの混入物はセメント成分となるので、大量に有機物汚染土壌を投入する場合にも、セメントクリンカの組成を適正な範囲に調整することができ、セメントクリンカの組成に影響を与えないようにすることができる。
【0051】
また、請求項5の発明によれば、ダイオキシン類をセメント焼成工程に投入することによって、当該ダイオキシン類がその分解温度以上に必ず加熱されることになる。
したがって、ダイオキシン類を含む有機物汚染土壌をセメントとして有効に利用することができるとともに、ダイオキシン類を無害なものに分解することによって、環境の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法を実施するセメント製造設備の概略構成図である。
【図2】同セメント製造設備であって、仮焼炉の無いセメント製造設備の要部を示す概略構成図である。
【図3】同セメント製造設備であって、仮焼炉を有するセメント製造設備の要部を示す概略構成図である。
【図4】同セメント製造設備であって、他の仮焼炉を有するセメント製造設備の要部を示す概略構成図である。
【符号の説明】
A 有機物汚染土壌
B 溶媒
C 混合粉砕物(粉砕物)
G セメント原料
3 プレヒータ
3a 最下位置のサイクロン(プレヒータの高温部)
5 ロータリーキルン
5B 窯尻部
11 湿式ミル
13 仮焼炉
Claims (5)
- セメント原料を乾式ミルで粉砕し、プレヒータにおいて予熱した後に、セメント焼成用のロータリーキルンに投入してセメントクリンカを製造するに際して、
有機物汚染土壌に、流動性を与えるための溶媒を加えて湿式ミルで粉砕した後、これを800℃以上の高温雰囲気下にあるセメント焼成工程に投入し、上記有機物汚染土壌の有機成分を燃料の一部として消費するとともに、土壌分をセメント原料の一部として利用することにより上記有機物汚染土壌を処分することを特徴とする有機物汚染土壌の処理方法。 - 前記有機物汚染土壌の粉砕物の投入箇所を、ロータリーキルンの窯尻部、ロータリーキルンの前段に設けた仮焼炉、ロータリーキルンの前段に位置するプレヒータの高温部の少なくともいずれかの箇所とすることを特徴とする請求項1記載の有機物汚染土壌の処理方法。
- 前記溶媒として、廃油、廃液、汚泥、水、流動剤のうちの少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1または2記載の有機物汚染土壌の処理方法。
- 前記溶媒に加えて、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、石灰系廃棄物のうちの少なくとも1種を混入させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物汚染土壌の処理方法。
- 前記有機物汚染土壌は、有機物としてのダイオキシン類で汚染された土壌を含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機物汚染土壌の処理方法。
Priority Applications (1)
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