JP3550919B2 - 含窒素シラン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含窒素シラン化合物に関するものであり、詳しくは、構造用セラミックスとして使用される窒化ケイ素セラミックスの中で、特に高強度高靱性の窒化ケイ素セラミックスを製造するための出発原料として好適な含窒素シラン化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】
窒化ケイ素セラミックスは、高強度、高靭性、高耐蝕性という優れた特性を有し、1000℃以下の温度で使用される構造材料や機械部品として種々の分野への用途展開が進展している。
この窒化ケイ素の焼結においては、通常Y2O3、Al2O3等の酸化物を5〜10重量%程度添加して焼結を行う為、焼結条件により、得られる焼結体の機械的特性が変化するという難点があった。このような焼結条件の変動による機械的特性の変化を防止し、焼結条件によらず安定して優れた機械的特性を発現し得る窒化ケイ素セラミックスを製造する為に、Y2O3、MgO、Sc2O3等の焼結助剤の探索やCr2N、NbB、TaSi2、ZrSi2等の硬質粒子の分散の検討と併行し、焼結体製造原料である窒化ケイ素粉末の製造条件についても研究が行われている。
【0003】
従来、窒化ケイ素粉末の製法として、ハロゲン化ケイ素とアンモニアとを反応させるイミド分解法が知られており、この方法で製造された窒化ケイ素粉末は、易焼結性であり、かつ優れた焼結体性能を示すと言われている。
そこで、イミド分解法の出発原料である含窒素シラン化合物の粉末特性と得られる窒化ケイ素粉末の焼結性及び焼結体特性との関係について詳細に検討した結果、特定の粉末特性を有する含窒素シラン化合物を用いた場合に、得られる窒化ケイ素粉末を通常の焼結条件で焼結することで、優れた機械的特性を有する窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定的に製造することができることを見出した。
【0004】
【発明の目的】
本発明の目的は、優れた機械的特性を有する窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定して製造できる窒化ケイ素粉末を製造するための出発原料となる含窒素シラン化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真密度が1.4〜1.9g/cm3、軽装密度が0.045〜0.090g/cm3であり、かつ比表面積が600〜1000m2/g、酸素含有量が3.5重量%以下、炭素含有量が0.25重量%未満である主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物に関するものである。
本発明の含窒素シラン化合物は、主として化学式 Si(NH)2 で表されるシリコンジイミドからなるものである。含窒素シラン化合物の窒素含有量は、45.5〜51.5重量%、ケイ素含有量は、44.5〜51.5重量%である。
【0006】
シリコンジイミドは、ケイ素原子と窒素原子が三次元のネットワーク構造を形成しているので、そのSi−N結合の規則性により真密度が変わってくる。
本発明の含窒素シラン化合物は、真密度が1.4〜1.9g/cm3、好ましくは、1.5〜1.7g/cm3である。真密度が1.4g/cm3よりも小さくなると、これを焼成した際に、結晶化が高温側にシフトし、針状晶が生成しやすくなる。針状晶の割合が増えると、得られる焼結体の強度特性が低下し、またバラツキも増大して、焼結体の信頼性が悪化する。さらに、焼結体の耐酸化性も悪化し、酸化増量の上昇、酸化後強度の低下を引き起こす。また、真密度が1.9g/cm3よりも大きくなると、これを焼成した際に、結晶化が低温側にシフトし、角ばった安定した粒状粒子が生成する。しかしながら、過度に安定化された粒子は焼結活性が低く、焼結体を作製する際に緻密化させることが難しくなるので好ましくない。
【0007】
また、軽装密度は0.045〜0.090g/cm3、好ましくは、0.055〜0.085g/cm3である。軽装密度が0.045g/cm3よりも小さくなると、これを焼成して得られる窒化ケイ素粉末のβ分率が低下すると共に、粉末の凝集が強くなる。その結果、湿式ボールミル等により焼結助剤と混合する際に、助剤を均一に分散し難くなる。窒化ケイ素粉末のβ分率には最適値があり、過度に低いβ分率は好ましくない。また、助剤との均一混合が難しくなる影響として、焼結体の室温強度及び高温強度が低下してしまうという問題がある。また、軽装密度が0.090g/cm3よりも大きくなると、これを焼成して得られる窒化ケイ素粉末のβ分率が上昇すると共に、粉末の凝集が弱くなって解砕しやすくなる。このため、湿式ボールミル等により焼結助剤と混合する際に、助剤を均一に分散できる。しかしながら、成形体のプレス密度が低下し、焼結体の破壊靱性が低下するいう問題を生じるので好ましくない。
【0008】
比表面積は600〜1000m2/g、好ましくは、700〜800m2/gである。比表面積が600m2/gよりも小さくなると、これを焼成して得られる粉末の凝集指標が大きくなり、最終的に得られる焼結体の高温強度が低下する。また、1000m2/gよりも大きくなると、窒化ケイ素粉末のα分率が低下して焼結性が悪くなるので好ましくない。
また、酸素含有量は3.5重量%以下、好ましくは、2.5重量%以下である。酸素含有量が、3.5重量%よりも多くなると、得られる窒化ケイ素粉末の焼結性は良好であるものの、得られる焼結体の高温強度が低下する。また、得られる窒化ケイ素粉末の内部酸素量が多くなるため、得られる焼結体の酸化後強度が低下する。
さらに、含窒素シラン化合物を製造する際に、原料又は反応溶媒から炭素含有物質(例えば、トルエン)が不純物として混入してくるが、その含有量は炭素換算で0.25重量%未満、好ましくは、0.10重量%未満である。炭素含有量が0.25重量%以上になると、含窒素シラン化合物を焼成して得られる窒化ケイ素粉末の炭素含有量が0.10重量%よりも多くなり、その結果、焼結性が悪くなるので好ましくない。
【0009】
さらに、本発明の含窒素シラン化合物は、平均粒径、金属不純物含有量、ハロゲン含有量が以下の範囲にあることが、所期の目的を達成する上で望ましい。
平均粒径は100nm以下であることが望ましい。平均粒径が100nmよりも大きくなると、これを焼成した際に、針状晶が生成しやすくなる。針状晶の割合が増えると、得られる焼結体の強度特性が低下し、またバラツキも増大して、焼結体の信頼性が悪化する。さらに、焼結体の耐酸化性も悪化し、酸化増量の上昇、酸化後強度の低下を引き起こす。
また、金属不純物は、そのまま焼成粉末中に残存してしまうが、金属不純物は、焼結体の破壊発生源となるため、高信頼性の焼結体を作製するには、金属不純物を低減しなければならない。本発明においては、金属不純物含有量は100ppm以下であることが望ましい。金属不純物含有量が100ppmよりも多くなると、得られる焼結体の強度が低下する。さらに、得られる焼結体の粒界の組成変化、粒界での不純物偏析が起こり、焼結体の耐酸化性が悪化し、酸化増量の上昇、酸化後強度の低下が起こる。
ハロゲン含有量は180ppm以下であることが望ましい。含窒素シラン化合物に含まれるハロゲンの約半分は、焼成粉末中に残留する。窒化ケイ素粉末中に含まれるハロゲンは、焼結体の粒界相に集まり、粒界相の軟化温度を下げる作用がある。このため、ハロゲン含有量が180ppmよりも多くなると、最終的に得られる焼結体の高温強度が低下し、また、耐酸化性も悪化する。
【0010】
本発明の含窒素シラン化合物を製造する方法は、上記特性を有する含窒素シラン化合物が得られれば、特に制限はないが、例えば、以下に示すように、ハロゲン化シランと液体アンモニアとを反応させることにより製造することができる。即ち、液体アンモニアと、液体アンモニアと溶けあわずかつ比重が液体アンモニアより大きい有機溶媒とが比重差により二層に分離している反応系の下部有機溶媒層中に、ハロゲン化シランと前記有機溶媒との混合溶液を供給することによって、ハロゲン化シランと液体アンモニアとを反応させる。そして、前記反応で生成した含窒素シラン化合物を液体アンモニアで洗浄し、副生したハロゲン化アンモニウムを除去する。
【0011】
上記反応において、圧力を0.54〜13.6気圧、反応温度を−45〜36℃の範囲に設定することにより、真密度が1.4〜1.9g/cm3の範囲の含窒素シラン化合物を合成することができる。また、圧力を1.5〜7.2気圧、反応温度を−25〜15℃の範囲とすることにより、真密度を1.5〜1.7g/cm3の範囲に制御することができる。
また、生成した含窒素シラン化合物をジャケット式撹拌槽等を用いて乾燥する際の乾燥時間と攪拌回転数を変えることにより、含窒素シラン化合物の軽装密度を0.045〜0.090g/cm3の範囲に制御することができる。乾燥条件と軽装密度との関係は、用いる乾燥機により変わってくるので、予め両者の関係式を調べて適宜条件を設定すればよい。
【0012】
さらに、反応の際のハロゲン化シランと液体アンモニアとの比率(体積基準)を0.030〜0.047、好ましくは、0.035〜0.041の範囲で変化させることにより、比表面積600〜1000m2/g、好ましくは、700〜800m2/gの含窒素シラン化合物を合成することができる。
なお、前記反応の初期段階では、液体アンモニアは大過剰に存在するが、反応の進行によりアンモニアが消費されるため、液体アンモニアも連続的に反応槽へ供給することになる。そして、定常状態において反応槽内へ供給するハロゲン化シランと液体アンモニアとの体積比率を変化させる。
また、上記反応で得られた含窒素シラン化合物を洗浄する際に使用する液体アンモニア中の水分量をできるだけ少なくすることで、含窒素シラン化合物の酸素含有量を3.5重量%以下、好ましくは、2.5重量%以下とすることができる。
具体的には、液体アンモニア中の水分量H(ppm)と洗浄液量/含窒素シラン化合物量W(l/kg)との積(H×W)が、31500以下、好ましくは、22500以下とする。
同様に、含窒素シラン化合物を洗浄する際に使用する液体アンモニア中の有機化合物の含有量を1500ppm以下、好ましくは、600ppm以下とすることにより、含窒素シラン化合物の炭素含有量を0.25重量%未満、好ましくは、0.10重量%未満とすることができる。
【0013】
含窒素シラン化合物の平均粒径は、反応槽の温度と反応槽へ供給するハロゲン化シランと希釈用の有機溶媒との混合比率(体積比率)との両方を制御することで変化させることができる。含窒素シラン化合物の平均粒径を100nm以下にするには、混合比率を0.08以上とすればよい。
金属不純物は、反応槽、洗浄槽、乾燥機等の内部に設置された撹拌翼の摺動摩耗、接触摩耗により混入するものであり、機器の調整、制御精度の改善により低減することができる。具体的には、撹拌翼と各種の金属部品(ろ過板、容器壁など)との間隔を5mm以上、好ましくは、10mm以上空け、なおかつ、回転翼先端部における最大周速を5m/s以下に制御することにより、金属不純物量を100ppm以下にすることができる。
ハロゲン含有量は、反応で得られた含窒素シラン化合物とハロゲン化アンモニウムとの混合物からハロゲン化アンモニウムを洗浄、除去する際に使用する液体アンモニアの量によって変化する。通常、液体アンモニアを含窒素シラン化合物1kg当たり40l以上使用することにより、ハロゲン含有量を180ppm以下にすることができる。ハロゲン含有量は、多量の液体アンモニアの使用により、いくらでも低減できるが、過度の洗浄はコストアップにつながるので経済的でない。
【0014】
前記反応で使用するハロゲン化シランとしては、SiF4、H2SiF6、HSiF3、H3SiF5、H3SiF、H5SiF3等の弗化シラン、SiCl4、HSiCl3、H2SiCl2、H3SiCl等のクロルシラン、SiBr4、HSiBr3、H2SiBr2、H3SiBr、等のブロモシラン、及びSiI4、HSiI3、H2SiI2、H3SiI等のヨウ化シランを使用することができる。また、RSiX3、R2SiX2、R3SiX(RはCH3、C2H5、C3H7等のアルキル基、Xはハロゲン)等のハロゲン化アルキルシランも使用することができる。
【0015】
また、有機溶媒としては、液体アンモニアやハロゲン化シランに対して不活性であるとともに、反応温度で液体アンモニアと溶けあわず、かつ比重が液体アンモニアより大きいものが用いられる。例えば、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−ペンタン、C−ヘキサン等の炭化水素数5〜7の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの単独または混合物が挙げられる。
【0016】
本発明の含窒素シラン化合物を出発原料として用いることにより、優れた機械的特性を有する窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定して製造できる窒化ケイ素粉末を製造することができる。
まず、含窒素シラン化合物を酸素含有量5%以下の窒素あるいはアンモニア含有不活性ガス雰囲気下に600〜1200℃の範囲の温度で仮焼して非晶質窒化ケイ素粉末を製造する。
このとき、含窒素シラン化合物は、室温から徐々に分解していき、250〜600℃で特に激しく分解してアンモニアを発生する。
窒素あるいはアンモニア含有不活性ガスとしては、窒素またはアンモニア、あるいはさらにアルゴン、ヘリウム等との混合ガスが挙げられる。
【0017】
次に、得られた非晶質窒化ケイ素粉末を窒素あるいはアンモニア含有不活性ガス雰囲気下に焼成して結晶質窒化ケイ素粉末を製造する。
焼成温度は1400〜1600℃の範囲である。焼成温度が1400℃より低いと、窒化ケイ素の結晶化が十分に進行しない。また、焼成温度が1600℃を越えると、粗大結晶から成る結晶質窒化ケイ素粉末が生成し易いので好ましくない。また、急激な昇温は粒子形状を均一にする上で好ましくなく、1150〜1400℃の範囲を1.5時間以上かけてゆっくり昇温することが望ましい。
【0018】
含窒素シラン化合物及び非晶質窒化ケイ素粉末の加熱に使用される加熱炉としては、高周波誘導加熱方式または抵抗加熱方式によるバッチ式電気炉、プッシャー炉、ロータリーキルン炉、シャフトキルン炉、流動化焼成炉等が用いられる。特に連続焼成炉は非晶質窒化ケイ素の結晶化反応に伴う発熱の効率的な放散に対して、有効な手段である。
【0019】
得られた窒化ケイ素粉末は、従来の窒化ケイ素粉末の場合と同様な方法、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等の焼結助剤と混合し、混合物を所定の形状に成形した後、焼結することにより、窒化ケイ素セラミックス(焼結体)を製造することができる。上記成形圧力は、0.5〜5ton/cm2程度とすれば良く、また上記焼結条件は、焼結温度1500〜2000℃、雰囲気圧力0.5〜100気圧、焼結時間1〜10時間程度とすれば良い。
【0020】
この窒化ケイ素粉末を用いて製造された窒化ケイ素セラミックス(焼結体)は、従来のものと比較して、高強度、高靱性、高ワイブル係数であるばかりでなく、耐酸化性にも優れていることから、1400℃以下の温度で使用されるターボローター、バルブ、ディーゼルエンジン副燃焼室等の熱機関用構造材料や機械部品として用いられる窒化ケイ素セラミックスの製造用原料として特に好適なものである。
【0021】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
実施例1〜14及び比較例1〜8
〔含窒素シラン化合物の製造〕
〔表1〕に示す温度及び圧力下に、直径30cm、高さ45cmの縦型反応槽内の空気を窒素ガスで置換した後、液体アンモニア及びトルエンを仕込んだ。反応槽内では、上層の液体アンモニアと下層のトルエンとに分離した。〔表1〕に示す割合で調製した四塩化ケイ素とトルエンよりなる溶液を、導管を通じて、ゆっくり撹拌されている下層に供給した。トルエン溶液の供給と共に、上下層の界面近傍に白色の反応生成物が析出した。
反応終了後、反応液を濾過槽へ移送し、生成物を濾別して、液体アンモニアで洗浄し、主としてシリコンジイミドからなる含窒素シラン化合物を得た。
【0022】
上記反応において、真密度は反応温度を変化させて制御した。
また、軽装密度は、生成した含窒素シラン化合物をジャケット式撹拌槽(45度傾斜2枚羽根パドル付)を用いて加熱蒸気で乾燥する際の乾燥時間と攪拌回転数を変えて制御した。乾燥時間は、溶媒が飛びきったら温度が上がり始めるので、粉体層の温度が上がり始める時点を乾燥の終点とした。
比表面積は、反応の際の四塩化ケイ素と液体アンモニアとの比率(体積基準)を変化させることにより、制御した。なお、前記反応の初期段階では、液体アンモニアは大過剰に存在するが、反応の進行によりアンモニアが消費されるため、液体アンモニアも連続的に反応槽へ供給することになる。そして、定常状態において反応槽内へ供給する四塩化ケイ素と液体アンモニアとの体積比率を〔表1〕に示す範囲で変化させることにより、種々の比表面積の含窒素シラン化合物を合成した。
【0023】
酸素含有量は、生成した含窒素シラン化合物を洗浄する際に使用する液体アンモニア中の水分量を〔表1〕に示す範囲で変化させて制御した。
同様に、炭素含有量は、含窒素シラン化合物を洗浄する際に使用する液体アンモニア中のトルエン含有量を〔表1〕に示す範囲で変化させて制御した。
また、平均粒径は、反応槽の温度と反応槽へ供給する四塩化ケイ素とトルエンとの体積比率を〔表1〕に示す範囲で変化させて制御した。
塩素含有量は、含窒素シラン化合物を洗浄する際に使用する液体アンモニアの使用液量を〔表1〕に示す範囲で変化させて制御した。
金属不純物は、撹拌翼の調整状態により変化した。
【0024】
【表1】
【0025】
得られた含窒素シラン化合物の粉末特性を〔表2〕に示す。
含窒素シラン化合物の真密度は、媒液として脱水処理したキシレンを使用し、ピクノメーターを用いて、キシレン中に浸漬して測定した。測定に際して、脱泡を十分に行った。(JIS H1902に準じて実施)
軽装密度は、充填容器として市販の100mlのメスシリンダーを使用し、JIS K5101に準じて測定した。
平均粒径は、含窒素シラン化合物の透過型電子顕微鏡観察を行い、顕微鏡写真上で粒径分布を計測して、一次粒子の平均粒径を求めた。
比表面積は、島津−マイクロメリティックス製フローソーブ2300形を使用し、BET一点法にり測定した。
酸素含有量は、LECO社製TC−136型酸素・窒素同時分析装置を使用して不活性ガス融解−赤外線吸収法により測定した。
炭素含有量は、LECO社製WR−12型炭素分析装置を使用して、燃焼−熱伝導度法により測定した。
【0026】
【表2】
【0027】
〔窒化ケイ素粉末の製造〕
生成した含窒素シラン化合物を、酸素を0.5%含有する窒素雰囲気下に1000℃で加熱分解して、非晶質窒化ケイ素粉末を得た。次いで、得られた非晶質窒化ケイ素粉末を振動ミルにて摩砕処理した後、電気炉にて、窒素雰囲気下、100℃/hの昇温速度で1550℃まで昇温し、同温度で1時間保持して、灰白色の窒化ケイ素粉末を得た。
得られた窒化ケイ素粉末の走査型電子顕微鏡による観察では、0.05〜0.5μmの等軸的な粒状粒子のみが認められた。
【0028】
使用試験例
実施例1〜14及び比較例1〜8で得られた窒化ケイ素粉末を用いて、下記の製造方法により焼結体をそれぞれ製造した。
〔焼結体の製造〕
窒化ケイ素粉末にYb2O36重量%、Al2O31.5重量%及びHfO2 0.5重量%を加え、ボールミルにて湿式混合した後、2ton/cm2 の圧力でラバープレス成形して成形体を作製した。この成形体を、窒化ケイ素製ルツボに充填し、電気炉にて1気圧の窒素雰囲気中、昇温速度200℃/hで昇温し、1770℃で4時間保持して窒化ケイ素質焼結体を得た。
得られた焼結体の到達密度、曲げ強度及び破壊靱性を〔表3〕に示す。尚、焼結体の嵩密度はアルキメデス法で、曲げ強度の測定はJIS R 1601規定の四点曲げ試験で、破壊靱性値はJIS R 1607規定のSEPB法で測定した。
また、得られた焼結体より、所定形状のテストピースを切り出し、表面を平滑に研削、研磨した。このテストピースを箱型電気炉に入れ、空気流通下1300℃で100時間加熱処理した後の重量増加を測定した。試料の重量増加を、その外表面積で割った値を酸化増量(g/m2 )とした。また、同一条件で酸化処理した抗析試験片の室温における四点曲げ強度を測定して、酸化後強度を判定した。
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】
本発明の含窒素シラン化合物を出発原料として用いることにより、高強度、高靱性、高信頼性、高耐酸化性の窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定して製造できる窒化ケイ素粉末を製造することができる。
Claims (4)
- 真密度が1.4〜1.9g/cm3、軽装密度が0.045〜0.090g/cm3であり、かつ比表面積が600〜1000m2/g、酸素含有量が3.5重量%以下、炭素含有量が0.25重量%未満である主としてシリコンジイミドよりなる含窒素シラン化合物。
- 真密度が1.5〜1.7g/cm3であり、軽装密度が0.055〜0.085g/cm3である請求項1記載の含窒素シラン化合物。
- 比表面積が700〜800m2/g、酸素含有量が2.5重量%以下、炭素含有量が0.10重量%未満である請求項1記載の含窒素シラン化合物。
- 平均粒径が100nm以下、金属不純物含有量が100ppm以下、ハロゲン含有量が180ppm以下である請求項1記載の含窒素シラン化合物。
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