JP3550717B2 - 車両走行位置推定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は車両走行位置推定装置に関し、特に走行軌跡と道路パターンデータとを比較して、現在位置を推定する車両走行位置推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両に搭載されたセンサからの検出信号に基づいて、車両の走行方向と走行距離とを求めて車両の位置を計算し、この計算位置に基づいて、表示された地図上に車両の位置を表示するものが知られている。しかし、走行距離検出手段や方位検出手段の検出値には若干の誤差が含まれるので、これらの検出値を積算して得られる車両の計算位置には誤差が生じる。これらの誤差は人工衛星を用いたGPSシステムでも、人工衛星と車両との間に建物があったりした場合には測定データに誤差が生じる場合があった。
【0003】
このような誤差を補正するために算出された車両軌跡と地図データの道路パターンとを、所定距離分比較して相関を求め、その一致度(近似度)により、近接しているいずれの道路を走行しているのかを推定する装置が知られており、例えば特開平2−138813号公報に開示されている。この装置では、更に、所定距離内で測定された複数データの信頼度を考慮して、時間の要因あるいは測定データの外乱要因に応じて重みづけした比較を行って精度を向上させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来技術では、道路パターンと走行軌跡との相関は、一定距離走行時点で、地図データの道路パターンとこの道路パターンの距離に対応する走行軌跡との形状の一致度を演算し、車両位置を決定する、いわゆるパターンマッチング方式が採用されていた。
【0005】
パターンマッチングを常に一定距離にて比較していると、次のような不都合が生じた。即ち、高速道路などでは急なカーブは存在せず、緩いカーブのみであることから、上記一定距離がかなり長くないと道路間のパターンの差が僅少となり、接近して存在する複数の道路のいずれの道路を走行しているのか判断することが困難となった。
【0006】
また、市街地走行等で、比較的急なカーブが多数存在する状況では、上記一定距離が長いと、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等はほとんど無視されて比較されてしまうので、位置推定の誤差が大きくなり、特に走行位置の詳細かつ精密な決定が望まれる市街地走行で、無視できない位置の誤差が出てしまった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するものであり、道路の状況に適合させて、適切なパターンマッチングを可能とする車両走行位置推定装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、
上記判定手段が、
車速が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、車速が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項1記載の車両走行位置推定装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
道路カーブ検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記道路カーブ検出手段にて検出された所定カーブの出現頻度に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、
上記判定手段が、
所定カーブの出現頻度が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、所定カーブの出現頻度が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項3記載の車両走行位置推定装置である。
【0012】
請求項5記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて所定距離単位の長さを設定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0013】
【作用及び発明の効果】
請求項1記載の発明において、現在走行道路の推定に用いる近似度のデータは、複数種類の所定距離単位毎に得られ車速に応じて重みづけされた近似度を道路パターン毎に総合したものである。尚、近似度とはそのパターン同士の形状が似ていることを示す尺度であり、本発明では道路パターンデータと実際に測定されている走行軌跡との似ている度合を示すものである。
【0014】
高速道路では一般に車速が高く、市街地では一般に車速が低い。したがって車速に応じて、近似度を求めるべき所定距離の重みづけを決定すれば、道路の状況に適合させた適切なパターンマッチングが可能となる。
請求項2記載の発明は、この重みづけとして、車速が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、車速が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくしている。このことにより、高速道路などでは、パターンマッチングにて比較する距離が長くなるので、緩いカーブであっても走行軌跡とのパターンマッチングが正確にできる。したがって接近している複数の道路のいずれの道路を走行しているのかが正確に推定できる。また、市街地走行等では、比較的急なカーブが多数存在する状況で、パターンマッチングにて比較する距離が短くなるので、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等も十分にパターンマッチングに反映され、一層正確に位置推定ができる。尚、高速状態ではパターンマッチングの距離が長いことによる検出上の位置ずれがあるが、高速走行時は市街地走行とは異なり、詳細な位置データは運転者には不要なので問題とならない。
【0015】
請求項3記載の発明において、現在走行道路の推定に用いる近似度のデータは、複数種類の所定距離単位毎に得られ所定カーブの出現頻度に応じて重みづけされた近似度を道路パターン毎に総合したものである。
高速道路では一般にカーブが緩くかつ少なく、市街地ではそれに比較してカーブが急でかつ多い。したがって所定カーブの出現頻度に応じて、近似度を求めるべき所定距離の重みづけを設定すれば、道路の状況に適合させた適切なパターンマッチングが可能となる。請求項1,2の発明に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0016】
請求項4記載の発明は、この重みづけとして、所定カーブの出現頻度が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、所定カーブの出現頻度が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくすることにより、請求項2と同様な作用効果を生じると共に、請求項1,2の発明に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0017】
更に、請求項5記載の発明のごとく、完全に車速に応じて所定距離を切り替えるように重みづけを設定してもよく、上記請求項1と同様の作用効果を生じる。また同様に所定カーブの出現頻度に応じて完全に所定距離を切り替えていってもよく、上記請求項3と同様の作用効果を生じる。
【0018】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例1である車両走行位置表示装置の概略構成図である。車両には、車速センサ1と、方位センサ2とが積載されており、車速センサ1は、車両の走行速度を検出するものである。この走行速度を後述する電子制御回路20により積分処理することによって、車両の走行距離が求められる構成となっている。方位センサ2は、車両の走行方位を検出するものであり、本実施例では、地磁気を検出して方位を得るものを用いている。但し、この方位センサ2としては、ジャイロコンパスによるものや、左右操舵輪の回転差などから得られる車両のステアリング角を累積して方位を求めるものなどでもよい。勿論、直接位置を検出する装置としてGPSシステムを用いてもよい。
【0019】
また、地図メモリ4を備えており、これはコンパクトディスク等の大容量の記憶装置で構成されている。この地図メモリ4には、例えば東京都や愛知県あるいは東海地方などの所定範囲の地図データが記憶されている。地図データは、道路形状、道路幅、道路名、建物、地名、地形などの地図を再生するためのデータである。このうち、道路形状のデータは、道路パターンデータとして、車両走行軌跡と比較され、走行位置を補正するために、地図データあるいは実測に基づいて作成されるデータである。
【0020】
更に、コントロールスイッチ6が設けられており、これは、運転者が初期値を入力したり、表示される地図を選択したりするための各種スイッチで構成されている。
これらの車速センサ1、方位センサ2、地図メモリ4、コントロールスイッチ6は、各々電子制御回路20に接続されている。この電子制御回路20は、周知のCPU22、制御用のプログラムやデータを予め格納するROM24、読み書き可能なRAM26に、入出力回路28がコモンバス30を介して相互に接続されて構成されている。CPU22は、車速センサ1、方位センサ2、地図メモリ4、コントロールスイッチ6からの信号を入出力回路28を介して入力し、これらの信号、ROM24、RAM26内のプログラムやデータ等に基づいて、入出力回路28、CRTコントローラ32を介してCRT34に駆動信号を出力する。
【0021】
このCRTコントローラ32は、CRT34の表示を制御し、電子制御回路20から転送される地図データを、CRT34の画面に地図として再生すると共に、電子制御回路20から転送される車両の計算位置を、現在表示中の地図上に表示する構成のものである。
【0022】
尚、電子制御回路20は、車両に搭載することなく、固定局に設けて、適宜の通信装置によってデータを送受信して車両位置を再現する構成のものでもよい。前記電子制御回路20は、図示しない電源スイッチがオンされると、ROM24に予め設定されたプログラムに従って、CPU22が演算処理を実行開始する。
【0023】
本実施例では、発進前に車両の乗員が、コントロールスイッチ6を操作して、CRT34に表示される地図を選択し、この地図上に自らの車両位置を初期位置として指示する。あるいは、これ以外にも、前回の車両の運転停止時の計算位置を不揮発性メモリに格納しておき、この位置を初期位置として設定してもよい。
【0024】
そして、車両が走行を開始すると、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と、方位センサ2から得られる進行方位が検出される。車両がある距離走行して、検出された走行距離と走行方位とに基づいて計算された現在の計算位置が、CRT34の地図上に表示される。更に、この計算位置を蓄積して行くことにより車両の走行軌跡を求め、計算位置近傍の道路パターンデータと比較して、いずれの道路を走行しているかを求め、その位置を補正している。
【0025】
次に、電子制御回路20で行われるこの道路の決定処理について、図2に示すフローチャートによって説明する。尚、図示はしないが、別の処理により、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置が算出され、その現在位置が所定個蓄積されることにより、車両の走行軌跡も求められてる。
【0026】
まず、処理が開始されると、既に求められいる走行軌跡がRAM26の所定の作業領域に記憶される(ステップ101)。次に現在の車速も同じ作業領域に記憶される(ステップ103)。
次に、地図メモリ4から、上記走行軌跡の近傍(例えば車両の現在位置から所定半径内)の道路パターンデータを抽出し、更にその内から、車両の現在の進行方向に対して前方左右60゜の方向に走っている道路パターンを候補道路パターンとして選択し、RAM26の作業領域に記憶する(ステップ104)。次にこの候補道路パターンデータと走行軌跡とを、短距離、中距離、長距離にわけて、その距離毎の相関値(RER_S,RER_M,RER_L)を演算する(ステップ105)。これを候補道路パターン毎に行う。
【0027】
短距離の場合は、候補道路パターンに車両位置から垂線を下ろしてその交点を起点として、例えば車両の20m走行毎に得られる20mの走行軌跡を、400m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Sとする。同様に中距離の場合は、車両の40m走行毎に得られる40mの走行軌跡を、800m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Mとする。同様に長距離の場合は、車両の80m走行毎に得られる80mの走行軌跡を、1600m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Lとする。
【0028】
上記相関値は、例えば、走行軌跡と候補道路パターンとの方位のずれを所定間隔で一方の端点から他方の端点まで順次最小2乗法により演算して求める。また特開平2−138813号に示されているように、車両の走行軌跡と道路パターンとをそれぞれ単位長ベクトルを用いて折線近似した上でそれら折線近似されたパターンの各先頭が一致するように両者を重ね合わせたときに両者間のずれによって生じる面積の総和を相関値としてもよい。この場合は、値が大きいほど相関が低い、つまり近似していないことになる。
【0029】
次にこうして求められた短距離の相関値RER_S、中距離の相関値RER_M、長距離の相関値RER_Lに、車速により重みづけをおこなって総合的な相関値RERを求める(ステップ107)。その計算式を次式(1)に示す。
【0030】
【数1】
【0031】
ここでα1,α2,α3は、重みづけ係数を表し、α1は短距離重みづけ係数、α2は中距離重みづけ係数、α3は長距離重みづけ係数である。これらは図3に示すごとく車速に応じて設定される。即ち、車速が12(m/s)以下ではα1=1,α2=0,α3=0である。車速12→18(m/s)ではα1は1→0へ、α2は0→1へ直線的に変化し、α3=0である。車速18→24(m/s)ではα1=0、α2は1→0へ直線的に変化し、α3は0→1へ直線的に変化する。車速24(m/s)以上ではα1=0,α2=0,α3=1である。即ち、複数種類の所定距離単位毎に得られた相関値(近似度に該当)を、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて重みづけして総合したものを総合相関値RERとして求めたことになる。
【0032】
こうして、候補道路パターンデータ毎に、RERが求められると、これらの内で、相関の高い(近似度の高い)道路パターンが選択される(ステップ109)。即ち総合相関値RERの最も小さい道路パターンが最も相関の高い道路パターンであり、車両が現在走行している道路であるとして推定される。
【0033】
こうして道路の決定処理が終了する。以後、ここで推定された道路パターンに基づいて、図示しない処理にて現在位置が補正される。
このように実施例1では、速度に応じて、パターンマッチングの距離を、車速が高いほど距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくし、車速が低いほど距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくしている。このため、高速道路などでは、パターンマッチングにて比較する距離が長くなるので、緩いカーブであっても走行軌跡とのパターンマッチングが正確にできる。したがって接近している複数の道路のいずれの道路を走行しているのかが正確に推定できる。例えば、図4に示すようにカーブの緩い道路パターンR1と直線状の道路パターンR2とが候補に挙がった場合に、短距離・中距離では区別し難いが、長距離ではカーブの差が明確となり、車両の軌跡とのパターンマッチングによる推測が容易となる。
【0034】
また、市街地走行等では、比較的急なカーブが多数存在する状況で、パターンマッチングにて比較する距離が短くなるので、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等も十分にパターンマッチングに反映され、一層正確に位置推定ができる。
【0035】
次に実施例2について説明する。実施例2は車速の代わりに所定カーブの出現頻度により、重みづけ係数α1,α2,α3の値を変更している点が異なる。
即ち、図2において実施例1と異なるところを説明すると、ステップ103では、所定カーブの出現頻度を算出している。所定カーブとはここでは所定の曲率より小さいカーブをいう。即ちある程度以上の急カーブを意味している。この所定カーブの出現頻度は、走行軌跡からその所定距離毎のベクトルの変化から得ることができる。この他、特別に所定カーブ検出処理を実施し、ある程度以上の急カーブ(例えば10m走行で40゜以上の進行方向の変化)が存在する場合に、その数をカウントするようにしてもよい。頻度としては、例えば過去1kmの走行中に、上記急カーブが幾つあったかで表される。
【0036】
そしてステップ107では所定カーブの出現頻度に基づいて重みづけして総合相関値RERを求めている。即ち、図3において横軸が車速でなく、所定カーブの出現頻度に置き換える。また境界値も出現頻度に対応した適切な値に変更される。
【0037】
このように実施例2では、所定カーブの出現頻度に応じて、パターンマッチングの距離を、出現頻度が低いほど距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくし、出現頻度が高いほど距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくしている。このため実施例1と同様な効果が生じると共に、実施例1に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0038】
上記実施例1において、重みづけも図3のごとく傾斜をつけて変化させるのではなく、例えば車速が15(m/s)以下ではα1=1,α2=0,α3=0とし、車速が15〜21(m/s)ではα1=0,α2=1,α3=0とし、車速が21(m/s)以上ではα1=0,α2=0,α3=1とするごとく、完全に車速に応じて所定距離を切り替えてもよい。実施例2についても同様に、完全に所定カーブの出現頻度に応じて所定距離を切り替えてもよい。
【0039】
また上記実施例1,2において、短距離、中距離、長距離の3種類の距離に分けたが、短距離と長距離との2つに分けてもよいし、また4種類以上に分けてもよい。更に、短距離を20m、中距離を40m、長距離を80mでパターンマッチングしたが、これに限らず短距離を10mとし、中距離を20mとし、長距離を40mとしてもよく、道路環境の状態に合わせて適宜決定すればよい。
【0040】
上記実施例1において、図1に示した電子制御回路20が、車両の走行軌跡検出手段、近似度検出手段および判定手段に該当し、車速センサ1が車速検出手段に該当し、地図メモリ4が地図情報記憶手段に該当する。電子制御回路20が実行する処理の内、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置を算出し、その現在位置を所定個蓄積することにより求められる車両の走行軌跡算出処理が、車両の走行軌跡検出手段としての処理に該当する。またステップ105,107の処理が近似度検出手段としての処理に該当し、ステップ109の処理が判定手段としての処理に該当する。
【0041】
実施例2においては、図1に示した電子制御回路20が、車両の走行軌跡検出手段、道路カーブ検出手段、近似度検出手段および判定手段に該当し、地図メモリ4が地図情報記憶手段に該当する。電子制御回路20が実行する処理の内、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置を算出し、その現在位置を所定個蓄積することにより求められる車両の走行軌跡算出処理が、車両の走行軌跡検出手段としての処理に該当する。またステップ103が道路カーブ検出手段としての処理に該当し、すステップ105,107の処理が近似度検出手段としての処理に該当し、ステップ109の処理が判定手段としての処理に該当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の車両走行位置表示装置のブロック図である。
【図2】電子制御回路20で行われる道路決定処理のフローチャートである。
【図3】重みづけ係数の車速に応じた変化を表すグラフである。
【図4】道路パターンデータの説明図である。
【符号の説明】
1…車速センサ 2…方位センサ 4…地図メモリ
6…コントロールスイッチ 20…電子制御回路
22…CPU 24…ROM 26…RAM
28…入出力回路 30…コモンバス 32…CRTコントローラ
34…CRT R1,R2…道路パターン
【産業上の利用分野】
本発明は車両走行位置推定装置に関し、特に走行軌跡と道路パターンデータとを比較して、現在位置を推定する車両走行位置推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両に搭載されたセンサからの検出信号に基づいて、車両の走行方向と走行距離とを求めて車両の位置を計算し、この計算位置に基づいて、表示された地図上に車両の位置を表示するものが知られている。しかし、走行距離検出手段や方位検出手段の検出値には若干の誤差が含まれるので、これらの検出値を積算して得られる車両の計算位置には誤差が生じる。これらの誤差は人工衛星を用いたGPSシステムでも、人工衛星と車両との間に建物があったりした場合には測定データに誤差が生じる場合があった。
【0003】
このような誤差を補正するために算出された車両軌跡と地図データの道路パターンとを、所定距離分比較して相関を求め、その一致度(近似度)により、近接しているいずれの道路を走行しているのかを推定する装置が知られており、例えば特開平2−138813号公報に開示されている。この装置では、更に、所定距離内で測定された複数データの信頼度を考慮して、時間の要因あるいは測定データの外乱要因に応じて重みづけした比較を行って精度を向上させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来技術では、道路パターンと走行軌跡との相関は、一定距離走行時点で、地図データの道路パターンとこの道路パターンの距離に対応する走行軌跡との形状の一致度を演算し、車両位置を決定する、いわゆるパターンマッチング方式が採用されていた。
【0005】
パターンマッチングを常に一定距離にて比較していると、次のような不都合が生じた。即ち、高速道路などでは急なカーブは存在せず、緩いカーブのみであることから、上記一定距離がかなり長くないと道路間のパターンの差が僅少となり、接近して存在する複数の道路のいずれの道路を走行しているのか判断することが困難となった。
【0006】
また、市街地走行等で、比較的急なカーブが多数存在する状況では、上記一定距離が長いと、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等はほとんど無視されて比較されてしまうので、位置推定の誤差が大きくなり、特に走行位置の詳細かつ精密な決定が望まれる市街地走行で、無視できない位置の誤差が出てしまった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するものであり、道路の状況に適合させて、適切なパターンマッチングを可能とする車両走行位置推定装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、
上記判定手段が、
車速が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、車速が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項1記載の車両走行位置推定装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
道路カーブ検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記道路カーブ検出手段にて検出された所定カーブの出現頻度に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、
上記判定手段が、
所定カーブの出現頻度が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、所定カーブの出現頻度が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項3記載の車両走行位置推定装置である。
【0012】
請求項5記載の発明は、
車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて所定距離単位の長さを設定することを特徴とする車両走行位置推定装置である。
【0013】
【作用及び発明の効果】
請求項1記載の発明において、現在走行道路の推定に用いる近似度のデータは、複数種類の所定距離単位毎に得られ車速に応じて重みづけされた近似度を道路パターン毎に総合したものである。尚、近似度とはそのパターン同士の形状が似ていることを示す尺度であり、本発明では道路パターンデータと実際に測定されている走行軌跡との似ている度合を示すものである。
【0014】
高速道路では一般に車速が高く、市街地では一般に車速が低い。したがって車速に応じて、近似度を求めるべき所定距離の重みづけを決定すれば、道路の状況に適合させた適切なパターンマッチングが可能となる。
請求項2記載の発明は、この重みづけとして、車速が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、車速が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくしている。このことにより、高速道路などでは、パターンマッチングにて比較する距離が長くなるので、緩いカーブであっても走行軌跡とのパターンマッチングが正確にできる。したがって接近している複数の道路のいずれの道路を走行しているのかが正確に推定できる。また、市街地走行等では、比較的急なカーブが多数存在する状況で、パターンマッチングにて比較する距離が短くなるので、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等も十分にパターンマッチングに反映され、一層正確に位置推定ができる。尚、高速状態ではパターンマッチングの距離が長いことによる検出上の位置ずれがあるが、高速走行時は市街地走行とは異なり、詳細な位置データは運転者には不要なので問題とならない。
【0015】
請求項3記載の発明において、現在走行道路の推定に用いる近似度のデータは、複数種類の所定距離単位毎に得られ所定カーブの出現頻度に応じて重みづけされた近似度を道路パターン毎に総合したものである。
高速道路では一般にカーブが緩くかつ少なく、市街地ではそれに比較してカーブが急でかつ多い。したがって所定カーブの出現頻度に応じて、近似度を求めるべき所定距離の重みづけを設定すれば、道路の状況に適合させた適切なパターンマッチングが可能となる。請求項1,2の発明に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0016】
請求項4記載の発明は、この重みづけとして、所定カーブの出現頻度が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、所定カーブの出現頻度が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくすることにより、請求項2と同様な作用効果を生じると共に、請求項1,2の発明に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0017】
更に、請求項5記載の発明のごとく、完全に車速に応じて所定距離を切り替えるように重みづけを設定してもよく、上記請求項1と同様の作用効果を生じる。また同様に所定カーブの出現頻度に応じて完全に所定距離を切り替えていってもよく、上記請求項3と同様の作用効果を生じる。
【0018】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例1である車両走行位置表示装置の概略構成図である。車両には、車速センサ1と、方位センサ2とが積載されており、車速センサ1は、車両の走行速度を検出するものである。この走行速度を後述する電子制御回路20により積分処理することによって、車両の走行距離が求められる構成となっている。方位センサ2は、車両の走行方位を検出するものであり、本実施例では、地磁気を検出して方位を得るものを用いている。但し、この方位センサ2としては、ジャイロコンパスによるものや、左右操舵輪の回転差などから得られる車両のステアリング角を累積して方位を求めるものなどでもよい。勿論、直接位置を検出する装置としてGPSシステムを用いてもよい。
【0019】
また、地図メモリ4を備えており、これはコンパクトディスク等の大容量の記憶装置で構成されている。この地図メモリ4には、例えば東京都や愛知県あるいは東海地方などの所定範囲の地図データが記憶されている。地図データは、道路形状、道路幅、道路名、建物、地名、地形などの地図を再生するためのデータである。このうち、道路形状のデータは、道路パターンデータとして、車両走行軌跡と比較され、走行位置を補正するために、地図データあるいは実測に基づいて作成されるデータである。
【0020】
更に、コントロールスイッチ6が設けられており、これは、運転者が初期値を入力したり、表示される地図を選択したりするための各種スイッチで構成されている。
これらの車速センサ1、方位センサ2、地図メモリ4、コントロールスイッチ6は、各々電子制御回路20に接続されている。この電子制御回路20は、周知のCPU22、制御用のプログラムやデータを予め格納するROM24、読み書き可能なRAM26に、入出力回路28がコモンバス30を介して相互に接続されて構成されている。CPU22は、車速センサ1、方位センサ2、地図メモリ4、コントロールスイッチ6からの信号を入出力回路28を介して入力し、これらの信号、ROM24、RAM26内のプログラムやデータ等に基づいて、入出力回路28、CRTコントローラ32を介してCRT34に駆動信号を出力する。
【0021】
このCRTコントローラ32は、CRT34の表示を制御し、電子制御回路20から転送される地図データを、CRT34の画面に地図として再生すると共に、電子制御回路20から転送される車両の計算位置を、現在表示中の地図上に表示する構成のものである。
【0022】
尚、電子制御回路20は、車両に搭載することなく、固定局に設けて、適宜の通信装置によってデータを送受信して車両位置を再現する構成のものでもよい。前記電子制御回路20は、図示しない電源スイッチがオンされると、ROM24に予め設定されたプログラムに従って、CPU22が演算処理を実行開始する。
【0023】
本実施例では、発進前に車両の乗員が、コントロールスイッチ6を操作して、CRT34に表示される地図を選択し、この地図上に自らの車両位置を初期位置として指示する。あるいは、これ以外にも、前回の車両の運転停止時の計算位置を不揮発性メモリに格納しておき、この位置を初期位置として設定してもよい。
【0024】
そして、車両が走行を開始すると、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と、方位センサ2から得られる進行方位が検出される。車両がある距離走行して、検出された走行距離と走行方位とに基づいて計算された現在の計算位置が、CRT34の地図上に表示される。更に、この計算位置を蓄積して行くことにより車両の走行軌跡を求め、計算位置近傍の道路パターンデータと比較して、いずれの道路を走行しているかを求め、その位置を補正している。
【0025】
次に、電子制御回路20で行われるこの道路の決定処理について、図2に示すフローチャートによって説明する。尚、図示はしないが、別の処理により、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置が算出され、その現在位置が所定個蓄積されることにより、車両の走行軌跡も求められてる。
【0026】
まず、処理が開始されると、既に求められいる走行軌跡がRAM26の所定の作業領域に記憶される(ステップ101)。次に現在の車速も同じ作業領域に記憶される(ステップ103)。
次に、地図メモリ4から、上記走行軌跡の近傍(例えば車両の現在位置から所定半径内)の道路パターンデータを抽出し、更にその内から、車両の現在の進行方向に対して前方左右60゜の方向に走っている道路パターンを候補道路パターンとして選択し、RAM26の作業領域に記憶する(ステップ104)。次にこの候補道路パターンデータと走行軌跡とを、短距離、中距離、長距離にわけて、その距離毎の相関値(RER_S,RER_M,RER_L)を演算する(ステップ105)。これを候補道路パターン毎に行う。
【0027】
短距離の場合は、候補道路パターンに車両位置から垂線を下ろしてその交点を起点として、例えば車両の20m走行毎に得られる20mの走行軌跡を、400m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Sとする。同様に中距離の場合は、車両の40m走行毎に得られる40mの走行軌跡を、800m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Mとする。同様に長距離の場合は、車両の80m走行毎に得られる80mの走行軌跡を、1600m分、即ち20回分、候補道路パターンに対してパターンマッチングし、得られた20個の相関値を平均して、RER_Lとする。
【0028】
上記相関値は、例えば、走行軌跡と候補道路パターンとの方位のずれを所定間隔で一方の端点から他方の端点まで順次最小2乗法により演算して求める。また特開平2−138813号に示されているように、車両の走行軌跡と道路パターンとをそれぞれ単位長ベクトルを用いて折線近似した上でそれら折線近似されたパターンの各先頭が一致するように両者を重ね合わせたときに両者間のずれによって生じる面積の総和を相関値としてもよい。この場合は、値が大きいほど相関が低い、つまり近似していないことになる。
【0029】
次にこうして求められた短距離の相関値RER_S、中距離の相関値RER_M、長距離の相関値RER_Lに、車速により重みづけをおこなって総合的な相関値RERを求める(ステップ107)。その計算式を次式(1)に示す。
【0030】
【数1】
【0031】
ここでα1,α2,α3は、重みづけ係数を表し、α1は短距離重みづけ係数、α2は中距離重みづけ係数、α3は長距離重みづけ係数である。これらは図3に示すごとく車速に応じて設定される。即ち、車速が12(m/s)以下ではα1=1,α2=0,α3=0である。車速12→18(m/s)ではα1は1→0へ、α2は0→1へ直線的に変化し、α3=0である。車速18→24(m/s)ではα1=0、α2は1→0へ直線的に変化し、α3は0→1へ直線的に変化する。車速24(m/s)以上ではα1=0,α2=0,α3=1である。即ち、複数種類の所定距離単位毎に得られた相関値(近似度に該当)を、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて重みづけして総合したものを総合相関値RERとして求めたことになる。
【0032】
こうして、候補道路パターンデータ毎に、RERが求められると、これらの内で、相関の高い(近似度の高い)道路パターンが選択される(ステップ109)。即ち総合相関値RERの最も小さい道路パターンが最も相関の高い道路パターンであり、車両が現在走行している道路であるとして推定される。
【0033】
こうして道路の決定処理が終了する。以後、ここで推定された道路パターンに基づいて、図示しない処理にて現在位置が補正される。
このように実施例1では、速度に応じて、パターンマッチングの距離を、車速が高いほど距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくし、車速が低いほど距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくしている。このため、高速道路などでは、パターンマッチングにて比較する距離が長くなるので、緩いカーブであっても走行軌跡とのパターンマッチングが正確にできる。したがって接近している複数の道路のいずれの道路を走行しているのかが正確に推定できる。例えば、図4に示すようにカーブの緩い道路パターンR1と直線状の道路パターンR2とが候補に挙がった場合に、短距離・中距離では区別し難いが、長距離ではカーブの差が明確となり、車両の軌跡とのパターンマッチングによる推測が容易となる。
【0034】
また、市街地走行等では、比較的急なカーブが多数存在する状況で、パターンマッチングにて比較する距離が短くなるので、パターンマッチングにおいて小さいカーブ等も十分にパターンマッチングに反映され、一層正確に位置推定ができる。
【0035】
次に実施例2について説明する。実施例2は車速の代わりに所定カーブの出現頻度により、重みづけ係数α1,α2,α3の値を変更している点が異なる。
即ち、図2において実施例1と異なるところを説明すると、ステップ103では、所定カーブの出現頻度を算出している。所定カーブとはここでは所定の曲率より小さいカーブをいう。即ちある程度以上の急カーブを意味している。この所定カーブの出現頻度は、走行軌跡からその所定距離毎のベクトルの変化から得ることができる。この他、特別に所定カーブ検出処理を実施し、ある程度以上の急カーブ(例えば10m走行で40゜以上の進行方向の変化)が存在する場合に、その数をカウントするようにしてもよい。頻度としては、例えば過去1kmの走行中に、上記急カーブが幾つあったかで表される。
【0036】
そしてステップ107では所定カーブの出現頻度に基づいて重みづけして総合相関値RERを求めている。即ち、図3において横軸が車速でなく、所定カーブの出現頻度に置き換える。また境界値も出現頻度に対応した適切な値に変更される。
【0037】
このように実施例2では、所定カーブの出現頻度に応じて、パターンマッチングの距離を、出現頻度が低いほど距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくし、出現頻度が高いほど距離の短い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを大きくするとともに距離の長い方のパターンマッチングの相関値の重みづけを小さくしている。このため実施例1と同様な効果が生じると共に、実施例1に比較して、直接道路の状況を捉えているので、一層現実に即した推定が可能である。
【0038】
上記実施例1において、重みづけも図3のごとく傾斜をつけて変化させるのではなく、例えば車速が15(m/s)以下ではα1=1,α2=0,α3=0とし、車速が15〜21(m/s)ではα1=0,α2=1,α3=0とし、車速が21(m/s)以上ではα1=0,α2=0,α3=1とするごとく、完全に車速に応じて所定距離を切り替えてもよい。実施例2についても同様に、完全に所定カーブの出現頻度に応じて所定距離を切り替えてもよい。
【0039】
また上記実施例1,2において、短距離、中距離、長距離の3種類の距離に分けたが、短距離と長距離との2つに分けてもよいし、また4種類以上に分けてもよい。更に、短距離を20m、中距離を40m、長距離を80mでパターンマッチングしたが、これに限らず短距離を10mとし、中距離を20mとし、長距離を40mとしてもよく、道路環境の状態に合わせて適宜決定すればよい。
【0040】
上記実施例1において、図1に示した電子制御回路20が、車両の走行軌跡検出手段、近似度検出手段および判定手段に該当し、車速センサ1が車速検出手段に該当し、地図メモリ4が地図情報記憶手段に該当する。電子制御回路20が実行する処理の内、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置を算出し、その現在位置を所定個蓄積することにより求められる車両の走行軌跡算出処理が、車両の走行軌跡検出手段としての処理に該当する。またステップ105,107の処理が近似度検出手段としての処理に該当し、ステップ109の処理が判定手段としての処理に該当する。
【0041】
実施例2においては、図1に示した電子制御回路20が、車両の走行軌跡検出手段、道路カーブ検出手段、近似度検出手段および判定手段に該当し、地図メモリ4が地図情報記憶手段に該当する。電子制御回路20が実行する処理の内、車速センサ1から入力される走行速度を積分して得られる走行距離と方位センサ2から得られる進行方位とに基づき所定タイミングで現在位置を算出し、その現在位置を所定個蓄積することにより求められる車両の走行軌跡算出処理が、車両の走行軌跡検出手段としての処理に該当する。またステップ103が道路カーブ検出手段としての処理に該当し、すステップ105,107の処理が近似度検出手段としての処理に該当し、ステップ109の処理が判定手段としての処理に該当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の車両走行位置表示装置のブロック図である。
【図2】電子制御回路20で行われる道路決定処理のフローチャートである。
【図3】重みづけ係数の車速に応じた変化を表すグラフである。
【図4】道路パターンデータの説明図である。
【符号の説明】
1…車速センサ 2…方位センサ 4…地図メモリ
6…コントロールスイッチ 20…電子制御回路
22…CPU 24…ROM 26…RAM
28…入出力回路 30…コモンバス 32…CRTコントローラ
34…CRT R1,R2…道路パターン
Claims (5)
- 車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置。 - 上記判定手段が、
車速が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、車速が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項1記載の車両走行位置推定装置。 - 車両の走行軌跡検出手段と、
道路カーブ検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、複数種類の所定距離単位で近似度を求めると共に、上記判定手段が、その複数種類の所定距離単位毎に得られた近似度を、上記道路カーブ検出手段にて検出された所定カーブの出現頻度に応じて重みづけして道路パターン毎に総合し、その近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定することを特徴とする車両走行位置推定装置。 - 上記判定手段が、
所定カーブの出現頻度が低くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを大きくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを小さくし、所定カーブの出現頻度が高くなるほど所定距離単位が長い方の近似度の重みづけを小さくするとともに所定距離単位が短い方の近似度の重みづけを大きくする請求項3記載の車両走行位置推定装置。 - 車両の走行軌跡検出手段と、
車速検出手段と、
地図情報記憶手段と、
上記走行軌跡検出手段にて検出された走行軌跡と、上記地図情報記憶手段に記憶されている複数の道路パターンとを、所定距離単位で比較して、道路パターン毎に近似度を求める近似度検出手段と、
上記近似度検出手段により検出された近似度が最も高い道路パターンを現在走行道路と推定する判定手段と、
を備えた車両走行位置推定装置であって、
上記近似度検出手段が、上記車速検出手段にて検出された車速に応じて所定距離単位の長さを設定することを特徴とする車両走行位置推定装置。
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