JP3550281B2 - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板の表面および/または内部に、金属粉末を含む導体配線層を形成した、半導体素子収納用パッケージなどに適した配線基板とその製造方法に関するものであり、特に、導体配線層の低抵抗化とともに、耐マイグレーション性の改良に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、アルミナ等の絶縁層とW,Moなどの高融点金属からなる配線層とを具備したセラミック配線基板が多用されているが、このようなセラミック配線基板は、硬くて脆い性質を有することから、製造工程または搬送工程において、セラミックの欠けや割れ等が発生しやすく、また、焼結前のグリーンシートにメタライズペーストを印刷して、印刷後のシートを積層して焼結する場合、焼結により得られる基板に反り等の変形や寸法のばらつき等が発生しやすいという問題があり、回路基板の超高密度化やフリップチップ等のような基板の平坦度の厳しい要求に対して十分に対応できないという問題があった。
【0003】
そこで、最近では、樹脂を含む絶縁層表面に銅箔を接着した後、これをエッチングして微細な回路を形成した基板や、銅などの金属粉末を含むペーストを絶縁層に印刷して配線層を形成した後、これを積層し、あるいは積層後に、所望位置にマイクロドリルやパンチング等によりビア用の孔明けを行い、そのビア内壁にメッキ法により金属を付着させて配線層を接続して多層化したプリント配線基板が提案されている。また、絶縁層としては、その強度を高めるために、樹脂に対して、粉末状あるいは繊維状の無機質フィラーを分散させた基板も提案されており、これらの複合材料からなる絶縁層上に多数の半導体素子を搭載したマルチチップモジュール(MCM)等への適用も検討されている。
【0004】
以上のようなプリント配線板の多層化、配線の超微細化、精密化の要求に対応して、樹脂を含む絶縁層の表面に銅などの低抵抗金属を含む導体ペーストで回路パターンを印刷したり、スルーホール中に導体ペーストを充填した高密度に多層化された配線基板を作製する試みが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低抵抗金属を含む導体ペースト中には、絶縁性への印刷性を高めるとともに、金属粉末を互いに結合させるために樹脂を配合させることから、粉末の接触界面には、樹脂が介在しやすいために、通常の銅箔や銅メッキにより形成された回路よりも抵抗値が高いという問題点があった。
【0006】
そのため、ペースト中の低抵抗金属としては銀が多用されている。銀が主導体成分として用いられる理由は、金属中で最も導電率が高いこと、銅等の卑金属に比べ化学的安定性が高いこと等による。しかしながら、銀はコストが非常に高く、さらに銀が大気中湿気と直流電界との相互作用により、銀配線相互間を移行する現象、いわゆるマイグレーションが生じるために、回路設計上の制約が多く、使用条件によっては信頼性に問題があった。これに対して、銅は、比抵抗もある程度低く、銀に比較して安価に入手できるものの、表面が酸化しやすいことから、特殊な方法で貯蔵する必要があるなど、取り扱いが不便である。
【0007】
そこで、これらの問題を解決するために、銅粒子の表面に低抵抗の銀を被覆して、比抵抗の低減と銅粒子の酸化を抑制した導電材料が特開昭56−101739号、特開平8−138437号等にて提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの銀被覆銅粒子を用いた場合においても、これらの粒子を結合するために全固形分あたり3重量%以上の樹脂が必要とされており、この樹脂分が粒子間の接触部に介在して接触抵抗が高くなり、導体配線層の比抵抗を低減するには至っておらず、さらには、銀が単独で存在することからマイグレーションが生じるという問題がある。
【0009】
そこで、さらにこれらの問題を解決するために、前記の銀被覆銅粉末に対して、さらにパラジウムあるいは白金を合金化もしくは、添加した導電性粉末が提案されている。これにより、耐マイグレーション性は向上するが、抵抗が高くなってしまうという問題があるのが現状である。
【0010】
また、ペースト中の樹脂分を加熱分解除去したり、通電加熱を行うことなど様々な改良も行われているが、これらの加熱処理においても十分な効果が得られておらず、場合によっては、加熱によっては絶縁層に対して悪影響を及ぼすなどの問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような欠点が生ぜず、安価で高導電性を有し、且つ耐マイグレーション性に優れたる導体回路を具備した配線基板とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題に対して検討を重ねた結果、金属成分として、パラジウムあるいは白金の少なくとも1種と、銀と、銅とを含有する混合粉末あるいは合金粉末により導体回路を形成し、この導体回路に対してパルス電流を印加することによって、粉末間の接触部付近に放電を起こし、電気の導通を妨げていた導電性粉末表面の樹脂や酸化物を除去すると同時に粉末同士を溶接して接触部を少なくとも銀と、パラジウムあるいは白金のうち少なくとも1種とを含有する合金によって形成することにより、配線層の抵抗を格段に下げることができ、さらに単独で存在する銀量を合金化により低減できることから、銀によるマイグレーションを抑制できることを見出し、これにより多層プリント配線基板の超微細化、精密化の要求に応えうることのできる高信頼性の導体配線層を形成することができることを知見した。
【0013】
即ち、本発明の配線基板は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板と、前記絶縁基板の表面及び/または内部に、銅を主成分とし、銀を1〜30重量%、パラジウムを0.1〜15重量%または白金を0.1〜25重量%の割合で含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末からなる導体回路が形成されてなり、該導体回路の金属粉末間の接触部に少なくとも銀と、パラジウムまたは白金とを含有する合金からなるネック部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
また、かかる配線基板の製造方法として、少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板と、前記絶縁基板の表面及び/または内部に、銅を主成分とし、銀を1〜30重量%、パラジウムを0.1〜15重量%または白金を0.1〜25重量%の割合で含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末からなる導体回路を形成した後、該導体回路にパルス電流を印加して、前記金属粉末間の接触部を溶接して少なくとも銀と、パラジウムあるいは白金の少なくとも1種とを含有する合金からなるネック部を形成してなることを特徴とするものである。なお、印加するパルス電流は、電流密度が1〜2000A/cm2 、パルス幅が0.01〜1000msec.であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板は、基本的には図1の概略断面図に示すように、絶縁基板1と導体回路2によって構成される。また、前記導体回路2としては、絶縁基板の表面または絶縁層間に形成された配線回路層3と、異なる層の配線回路層3間を接続するスルーホール導体またはビアホール導体4により構成される。
【0016】
本発明における絶縁基板1は、絶縁材料としての電気的特性、耐熱性、および機械的強度を有する熱硬化性樹脂、例えば、アラミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、フェニレンエーテル樹脂、ビスマイレイミドトリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびアリル樹脂等が、単独または組み合わせで含まれる。
【0017】
また、上記の絶縁基板1中には、絶縁基板あるいは配線基板全体の強度を高めるために、有機樹脂に対してフィラーを複合化させることもできる。有機樹脂と複合化されるフィラーとしては、SiO2 、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、AlN、SiC、BaTiO3 、SrTiO3 、ゼオライト、CaTiO3 、ほう酸アルミニウム等の無機質フィラーが好適に用いられる。また、ガラスやアラミド樹脂からなる不織布、織布などに上記樹脂を含浸させて用いてもよい。なお、有機樹脂とフィラーとは、体積比率で15:85〜50:50の比率で複合化されるのが適当である。これらの中でも、絶縁層の加工性、強度等の点で、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フェニレンエーテル樹脂と、シリカまたはアラミド不織布との混合物であることが最も望ましい。
【0018】
本発明によれば、導体回路2は、銅を主成分とし、銀を1〜30重量%、特に3〜10重量%、パラジウムを0.1〜15重量%、特に0.3〜10重量%、または白金を0.1〜25重量%、特に0.3〜10重量%の割合で含有する混合粉末あるいは合金粉末を金属粉末として含むものである。ここで、銀の含有量を上記の範囲に限定したのは、1重量%よりも少ないと従来の銅粉末と同様に耐酸化性が劣化、30重量%よりも大きくなると銀のマイグレーションが起こるためである。
【0019】
また、パラジウムまたは白金が0.1重量%よりも少ないと銀のマイグレーションを抑制する効果が小さくなり、パラジウムが15重量%よりも多いと、または白金が25重量%よりも多いと、いずれの場合も抵抗が高くなるためであり、特にパラジウムでは、15重量%を越えると耐酸化性が悪くなるために望ましくない。
【0020】
本発明における金属粉末によれば、上記の少なくとも3成分からなる金属成分は、すべて合金化されていてもよいし、あるいは混合粉末からなってもよい。例えば、銀を銅粉末の表面に被覆した粉末に、パラジウムあるいは白金の粉末を添加混合することができるが、パラジウムあるいは白金が銀被覆銅粉末の銀と結合を保っている方が良く、例えば、銀被覆銅粉末の表面に、パラジウムあるいは白金をメッキ法や共沈粉によって被覆したり、メカニカルアロイ粉として用いることもできる。特に、銅粉末の表面に、銀とパラジウムあるいは白金とを合金からなる被覆層を形成することが望ましい。
【0021】
また、金属粉末の平均粒径は3〜10μm、特に3〜7μm、最適には3〜5μmであることが必要である。これは平均粒径が3μmよりも小さいか、あるいは10μmよりも大きくなるといずれも導体ペーストの印刷性および充填性が悪くなるとともに、金属粉末の充填密度が低下することにより抵抗が高くなってしまうためである。また、パラジウムあるいは白金を粉末として混合する場合には、パラジウムあるいは白金の粉末の平均粒径は3μm以下であることが望ましい。これは、平均粒径が3μmを超えると、少量のパラジウムあるいは白金を均一に混合するのが難しくなるためである。
【0022】
本発明における金属粉末中には、銅、銀、パラジウムあるいは白金以外の金属成分として、例えば、Fe、Co、Ni等を総量で10重量%以下含有されていても良い。
【0023】
また、本発明の配線基板における導体回路中には、前記金属粉末間の結合を図るために樹脂結合剤が配合されていてもよく、このような結合剤としては、印刷性の点でセルロース系、ポリエチレングリコール等のグリコール系の樹脂が好適に使用されるが、その他、絶縁基板を形成するのに用いたような前述の熱硬化性樹脂等を用いることもできる。この樹脂結合剤は、その量が多くなるほど、粉末間に介在して接触抵抗を増大させる傾向にあるため、金属粉末100重量部に対して、2重量部以下、特に0.05〜1重量部であることが印刷性および導体回路の低抵抗化を図る上で望ましい。
【0024】
なお、本発明の配線基板における導体回路の露出する表面に、ニッケルや金等の耐食性に優れ、かつ半導体素子等の電子部品との接合性および外部電気回路基板の配線層との接続性に優れる金属をメッキ法により1〜20μmの厚みで被着形成させておくことにより、導体回路が酸化腐食することを有効に防止することができるとともに、導体回路の電気部品あるいは外部電気回路基板との電気接続を容易、かつ強固に行うことができる。
【0025】
本発明によれば、金属粉末間の接触部にネック部が形成されていることが重要であり、しかもネック部は少なくとも銀と、パラジウムあるいは白金が合金から形成されていることが重要である。このネック部の幅は、金属粉末の粒径の1/5以上であることが低抵抗化を達成する上で望ましい。そして、このネック部は、また、粉末間の非接触部においても、少なくとも銀と、パラジウムあるいは白金とが合金化しており、銀が単独で存在しないことが耐マイグレーションの点で望ましい。
【0026】
本発明の配線基板の製造方法によれば、まず、前述したような熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂と無機質フィラーとを用いて、これに適当な硬化剤、溶剤を添加混合してスラリー状となし、これをドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法等によりシート状に成形して絶縁層を作製する。所望によりこれを加熱硬化させて半硬化あるいは完全硬化させて作製される。また、絶縁層としては、上記以外にプリプレグ等を用いることもできる。
【0027】
次に、この絶縁層に、金属粉末を含む導体回路を形成する。適用する導体回路としては、絶縁基板の表面や絶縁層間に形成される配線回路層および/または配線回路層間を接続するビアホール導体やスルーホール導体のいずれでもよい。導体回路を形成する場合には、金属粉末を主体とする導体ペーストを、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの周知の印刷方法によって厚さ10〜35μmの厚みで印刷する。また、ビアホール導体やスルーホール導体を形成する場合には、絶縁層にビアホールやスルーホールなどを形成し、そのホール内に導体ペーストを充填する。
【0028】
この時に用いる導体ペーストとしては、固形成分として、前記金属粉末と、金属粉末100重量部に対して樹脂結合剤を2重量部以下、特に0.05〜1重量部の割合で含み、さらには、適当な溶剤等を含む。また、場合によっては、適当な硬化剤を含む場合もある。
【0029】
また、多層化する場合には、例えば、導体ペーストによって導体回路が形成された複数の絶縁層を積層し、30kg/cm2 以下の圧力で圧着する。この圧着は、導体回路が軟化した状態で行われることが望ましく、樹脂結合剤が熱硬化性樹脂の場合には、半硬化の状態で積層圧着することにより絶縁層を密着することができ、さらには絶縁層間に接着剤を介在させて積層することもできる。
【0030】
このようにして作製された配線基板においては、導体回路における金属粉末の表面には、配線層中に含まれる樹脂によって粉末表面に薄い樹脂膜が存在したり、大気中の酸素によって酸化した薄い酸化膜が形成されている。また、銀被覆銅粉末の場合、表面に銀の単独層が存在しており、これにより銀のマイグレーションが生じやすい。さらに、パラジウムあるいは白金を複合した銀被覆銅粉末の場合、銀のマイグレーションは若干抑制されるが、不純物として存在するために抵抗が高くなってしまう。
【0031】
そこで、本発明によれば、上記のように作製された配線基板における導体回路に対して、パルス電流を印加する。この配線層にパルス電流を連続して印加すると金属粒子間にプラズマ放電を生じる。このプラズマにより金属粒子表面の酸化膜や付着物が除去され、いわゆる溶接された状態となって、金属粒子同士が導電性を妨げる介在物なしに接触することが可能になり、この結果、通電加熱のみでは達成されなかった低抵抗の配線層を、その周辺の絶縁層に悪影響を及ぼすことなく、形成することができるのである。
【0032】
さらに本発明によれば、上記のように銀被覆銅粉末同士の接触部が溶接された状態になり低抵抗を達成することができると同時に、少なくとも接触部において合金化した状態となって、単独で存在する銀が減少し耐マイグレーション性を高めることができる。
【0033】
このパルス電流の印加は、電流を印加する導体回路の両端に電極を押し当ててパルス電流を印加する。印加するパルス電流の最適条件としては、電流密度が1〜2000A/cm2 、パルス幅が0.01〜1000ms.の条件が良好に用いられ、電流密度が1A/cm2 より低いと、溶接されずに金属粉末間の界面に存在する酸化膜や樹脂の除去が難しく、また2000A/cm2 を越えると、部分的に発熱が起こり絶縁基板を傷める場合があるためである。また、望ましくは、1パルスの通電時間3秒以下がよい。なお、望ましくは、このパルス電流の印加は、5秒〜5分間、特に10秒〜1分間が望ましい。
【0034】
また、パルス電流が、矩形波であることが望ましい。正弦波等も用いられるが矩形波が最も効果的である。また、パルス電流が、直流パルスであることが望ましい。それは、正弦波よりも矩形波のほうが、粒子間の放電が起こりやすく、表面の清浄効果が高く、パルス電流は交流よりも直流のほうが一旦清浄された粒子表面に汚れ等が付着しにくいためである。
【0035】
さらに、上記パルス電流の印加の後に、配線層に通電により加熱処理を施すことにより、さらに配線層の低抵抗化を図ることができる。通電処理は、電流密度1〜4000A/cm2 の直流、交流でもよく、通電による加熱温度は100〜350℃の範囲が適当である。この時の温度が100℃よりも低いと、電気抵抗を下げる効果が小さく、350℃を越えると絶縁層や導体回路を構成する樹脂が分解する場合がある。この通電加熱によって、金属粉末間の接点が発熱し粉末同士の結合力をさらに高めることができる。
【0036】
また、この通電加熱は、前述したパルス電流の印加と同時に行うことができる。具体的には、直流のパルス電流と直流電流とをあわせた波形、つまり直流電流波形の上部が矩形波となった電流を印加すると通電加熱による作用と、パルス電流印加による放電溶接作用とを同時に付加することができる。
【0037】
上記の導体回路に印加するパルス電流を制御することにより比抵抗5×10−5Ω・cm以下の低抵抗化を実現することが可能となる。さらに、本発明によれば、上述の製造方法により作製した配線基板は、例えば、線幅0.5mm、ギャップ0.4mmの櫛歯パターンにおいて、130℃85%相対湿度中に5Vの直流電圧を100時間印加後の絶縁抵抗が5×1013Ω・cm以上の優れた耐マイグレーション性を示し、これにより、配線基板における導体回路の超微細化、精密化の要求に応えることのできる高信頼性の配線基板を提供することができる。
【0038】
【実施例】
実施例1
平均粒径が約5μmの略球形の酸化珪素70体積%、イミド樹脂30体積%を用いてスラリーを調整し、このスラリーを用いてドクターブレード法によってキャリアシート上に塗布し、これを50℃の温度で60分間乾燥して厚み120μmの絶縁層を完成した。
【0039】
次に、前記絶縁基板の表面に、表1の平均粒径および銀とパラジウムと白金の含有量を有する金属粉末、即ち、銀被覆銅粉末の表面に、パラジウムあるいは白金をメッキした粉末100重量部、セルロース0.2重量部、溶剤として2−オクタノール10重量部とを混合してなる導電性ペーストを調製し、スクリーン印刷法により線幅0.5mm、ギャップ0.4mmの櫛歯パターンを印刷した。また、1部に直径が0.1mmのスルーホールを形成しそのホール内にこのペーストを充填した。なお、金属粉末中の金属成分の含有量は、ICP発光分光分析法によって測定した。
【0040】
次に、上記のようにして導体回路を形成した8層の絶縁層を作製し、これを位置合わせして積層圧着した。そして、この積層物をプレス機内にセットし、50kg/cm2 の圧力を印加した。さらに120℃に加熱してペースト中の有機溶剤を揮散除去した。その後,250℃で5時間処理して、熱硬化性樹脂を完全硬化させて配線基板を作製した。(試料No.1〜39)
得られた配線基板に対して、導体回路の両極端に表1に示す電流密度およびパルス幅で30秒間パルス電流を印加した。なお、パルス間間隔はパルス幅と同じにした。また、一部の基板に対しては、さらに、表1に示す条件で通電加熱を行った。
【0041】
そして、これらの処理後の配線基板における導体回路の初期体積固有抵抗と、130℃、85%相対湿度中に5Vの直流電圧を100時間印加後の櫛歯パターン間の絶縁抵抗を測定し、その結果を表1に示した。また、導体回路の銀被覆銅粉末の接触状況を走査型電子顕微鏡写真(SEM)により観察し、溶接の有無を確認し、溶接により形成されたネック幅の金属粉末の粒径に対する比率を測定しその平均を求めた。
【0042】
実施例2
実施例1における導電性複合粉末に変えて、銅と、銀と、パラジウムあるいは白金による表3の組成からなる導電性合金粉末を用いて、上記と全く同様にして配線基板を作製し、同様に評価を行った。(試料No.40〜48)
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表1〜3の結果から明らかなように、銀の含有量が1重量%よりも少ない試料No.8では、比抵抗が大きくなり、30重量%よりも多い試料No.33では、マイグレーションにより配線間の抵抗が低下した。パラジウムあるいは白金の少なくとも1種が0.1重量%よりも少ない試料No.10では、マイグレーションを防止できず、配線間の抵抗が低下した。また、パラジウムが15重量%を越える試料No.20および白金が25重量%を越える試料No.26では、いずれも配線層の比抵抗が増大した。
【0047】
また、本発明の組成を満足してもパルス電流の印加を行わない試料No.4では、全くネック部が形成されず、通電加熱のみ施した試料No.5では、わずかにネックが形成されたが、銀とパラジウムまたは白金との合金が生成されるまでには至らず、その結果、いずれの場合も銀のマイグレーションの抑制効果が不十分となり配線間の抵抗が低下した。さらに、平均粒径が3μmよりも小さい試料No.1〜3では、10μmを越える試料No.34〜36では、いずれも比抵抗が大きいものであった。
【0048】
これらの比較例に対して、本発明品は、いずれもX線マイクロアナライザー(EPMA)による測定の結果、粉末間に銅と、銀と、パラジウムあるいは白金とを含むネック部が形成されており、配線回路層の比抵抗が5×10−5Ω・cm以下の低抵抗を示し、且つ高温高湿電圧印加後の絶縁抵抗が5×1013Ω・cm以上の優れた耐マイグレーション性を示した。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の配線基板は、導体回路を金属成分として銅と、銀と、パラジウムあるいは白金とを特定比率で含有する粉末により形成し、これにパルス電流を印加することにより、粉末表面の樹脂や酸化物を除去し、粉末同士の接触部にネック部を形成することができるために、導体回路の比抵抗を大幅に低減することができる。さらに、金属成分を銀、銅、パラジウムあるいは白金により複合化しているために、高い導電性とともに耐マイグレーション性にも優れている。これにより、配線回路の微細化と高密度化に充分に対応することができ、超微細化、精密化の要求に応えうることのできる高信頼性の配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の基本的構造を説明するための概略断面図を示す。
【符号の説明】
1 絶縁基板
2 導体回路
3 配線回路層
4 スルーホール導体/ビアホール導体
Claims (3)
- 少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板と、前記絶縁基板の表面及び/または内部に、銅を主成分とし、銀を1〜30重量%、パラジウムを0.1〜15重量%または白金を0.1〜25重量%の割合で含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末からなる導体回路が形成されてなり、該導体回路の金属粉末間の接触部に少なくとも銀と、パラジウムまたは白金とを含有する合金からなるネック部が形成されてなることを特徴とする配線基板。
- 少なくとも有機樹脂を含む絶縁基板と、前記絶縁基板の表面及び/または内部に、銅を主成分とし、銀を1〜30重量%、パラジウムを0.1〜15重量%または白金を0.1〜25重量%の割合で含有する平均粒径が3〜10μmの金属粉末からなる導体回路を形成した後、該導体回路にパルス電流を印加して、前記金属粉末間の接触部を溶接して少なくとも銀と、パラジウムあるいは白金の少なくとも1種とを含有する合金からなるネック部を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
- 印加するパルス電流の電流密度が1〜2000A/cm2 、パルス幅が0.01〜1000msec.であることを特徴とする請求項3記載の配線基板の製造方法。
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