JP3548431B2 - 電子源、該電子源を用いた画像形成装置 - Google Patents

電子源、該電子源を用いた画像形成装置 Download PDF

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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2201/00Electrodes common to discharge tubes
    • H01J2201/30Cold cathodes
    • H01J2201/316Cold cathodes having an electric field parallel to the surface thereof, e.g. thin film cathodes
    • H01J2201/3165Surface conduction emission type cathodes

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子を用いた電子源、該電子源を用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子放出素子としては大別して熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金属型(以下、「MIM型」という。)や表面伝導型電子放出素子等がある。FE型の例としては、W.P.Dyke & W.W.Dolan,“Field Emission”,Advance in Electron Physics,8,89(1956)あるいはC.A.Spindt,“Physical Properties of Thin−Film Field Emission Cathodes with Molybdenium Cones”,J.Appl.Phys.,47,5248(1976)等に開示されたものが知られている。
【0003】
MIM型の例としてはC.A.Mead,“Operation of Tunnel−Emission Devices”,J.Apply.Phys.,32,646(1961)等に開示されたものが知られている。
【0004】
表面伝導型電子放出素子型の例としては、M.I.Elinson,Recio Eng.Electron Phys.,10,1290(1965)等に開示されたものがある。
【0005】
表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等によるSnO薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの[G.Dittmer:“Thin Solid Films”,9,317(1972)]、In/SnO薄膜によるもの[M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IEEE Trans.ED Conf.”,519(1975)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0006】
これらの表面伝導型電子放出素子の典型的な例として前述のM.ハートウェルの素子構成を図16に模式的に示す。同図において6は絶縁基板である。4は導電性薄膜で、H型形状のパターンに、スパッタで形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成される。尚、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、W′は0.1mmに設定されている。
【0007】
従来、これらの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行う前に導電性薄膜4を予め通電フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的であった。即ち、通電フォーミングとは前記導電性薄膜4両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成することである。尚、電子放出部5は導電性薄膜4の一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出が行われる。前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電子放出素子は、上述導電性薄膜4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、上述電子放出部5より電子を放出せしめるものである。
【0008】
従来の表面伝導型放出素子の場合、放出素子の形成されている絶縁基板6の電位が不安定である為、放出された電子ビームの軌道が不安定になるという問題を生じていた。この問題を解決する為に、電子放出素子近傍に電位規定手段を設け、絶縁基板6の表面電位を規定する方法が提案されている(例えば、特開平1−283735号公報)。
【0009】
上述の表面伝導型放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、大面積にわたり多数素子を配列形成できる利点がある。そこで、この特徴を生かせるようないろいろな応用が研究されている。例えば、荷電ビーム源、表示装置等があげられる。多数の表面伝導型放出素子を配列形成した例としては、後述する様に、並列に表面伝導型電子放出素子を配列し、個々の素子の両端を配線(共通配線とも呼ぶ)で、それぞれ結線した行を多数行配列した電子源があげられる(例えば、特開昭64−031332号公報、特開平1−283749号公報、特開平2−257552号公報等)。また、特に表示装置等の画像形成装置においては、近年、液晶を用いた平板型表示装置が、CRTに替わって、普及してきたが、自発光型でないため、バックライトを持たなければならない等の問題点があり、自発光型の表示装置の開発が、望まれてきた。自発光型表示装置としては、表面伝導型放出素子を多数配置した電子源と電子源より放出された電子によって、可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表示装置である画像形成装置が、あげられる。(例えば、米国特許第5066883号)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この、大面積にわたり多数の素子を配列形成した電子源装置においては、放出された電子の軌道が安定であるのはもちろんの事、長時間安定して駆動されうることが課題であった。長時間の駆動により、動作が不安定になったり、電子源としての均一性が劣化する要因の一つとして、放電が挙げられる。この放電現象は、素子部の表面電位の上昇、および素子間での表面電位に大きな差が生じやすい場合に引き起こされやすい。また、放出された電子を引き出すためのアノード電極へ印加する電圧が、上昇しているときにも起こりやすい。即ち、多数の素子にわたり、表面電位の上昇を抑制する事により、放出された電子の軌道を安定化し、かつ放電を効果的に抑制する事が可能となる。
【0011】
従来、例えば、特開平1−283735号公報においては、上記の放出された電子の軌道を安定化するために、電子放出素子近傍に電位規定手段を設け、前記絶縁基板の表面電位を規定する方法が提案されているが、電位規定手段としての電極が基板上面に形成されており、表面伝導型電子放出素子を複数使用した電子源として利用する場合には、配線が複数になったり、あるいは電位規定用の電極パターンを大面積にわたり歩留まりよく形成する事が困難であった。
【0012】
また、電位規定用の電極を基板の下面に形成する事も考えられうるが、大面積化に対応して基板の厚みを増す場合には、表面電位の上昇を十分抑制する事は困難である。例えば、比誘電率が5程度で、且つ厚さが2mmの絶縁性ガラスを用いた場合、電位規定用の電極に印加する電圧がグランド電圧で且つ、基板とアノード間の距離を5mm、アノード印加電圧を10kVとすることにより、容量分割から算出される表面電位は数百Vに上昇してしまう。これは、素子の駆動電圧が20V程度であるのに対して10倍以上大きな値であり、放出された電子の軌道を不安定にするとともに、放電抑制には十分な効果を与えない。
【0013】
そこで本発明の目的は、低コストでかつ容易に大面積で、電子放出特性が安定な表面伝導型電子放出素子およびそれを用いた電子源装置を提供することにある。さらに具体的には、上記放電現象を効果的に抑制した電子源装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を解決するために鋭意検討を行って成されたものであり、下述する構成のものである。
【0015】
即ち、本発明は、複数の電子放出素子が配置された基板と、前記複数の電子放出素子の配置されたアノード電極を有する電子源において、前記基板と前記複数の電子放出素子との間には、グランド電位に規定された導電層と、当該導電層と前記複数の電子放出素子との間を絶縁する絶縁層とが配置されており、前記絶縁層は、当該絶縁層の表面の電位が前記電子放出素子に印加する電位の最大値以下となる厚さを有していることを特徴とする電子源、ならびに該電子と画像形成部材とを有する画像形成装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0017】
まず、表面伝導型電子放出素子を用いた電子源について説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子を用いた電子源の構成を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A′断面図である。
【0019】
図1において1は複合基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部、72はX方向配線、73はY方向配線である。なお、1の複合基板は6の基板、導電層7および絶縁層8により構成されている。また、図中BおよびB′は後で述べるアライメント位置を示すものである。また、表面伝導型電子放出素子は電子放出部5を有する導電性薄膜4と一対の素子電極2,3とで構成されている。
【0020】
基板6としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、アルミナ等のセラミックス又はSi基板等を用いることができる。
【0021】
7の導電層、72のX方向配線、73のY方向配線、および互いに対向する素子電極2,3の材料としては、一般的な導体材料を用いることができる。これは例えばNi、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属或は合金及びPd、Ag、Au、RuO、Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、In−SnO等の透明導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料等から適宜選択することができる。
【0022】
絶縁層8としてはSiO、SiN、PSG(リンドープガラス)等を用いることができる。この絶縁層8の種類と厚さは、導電層7と素子表面間の静電容量を決定するものであり、表面電位の上昇を抑制し、素子間での表面電位に大きな差が生ずるのを抑制し、放電を防止するために適宜選択することができる。例えば、導電層7に接続される電位規定用の電極(不図示)に印加する電圧がグランド電圧で且つ、駆動電位が20V、アノードと基板間の距離が5mm、絶縁層8の誘電率ε1とアノードと基板間の誘電率ε2の比ε1/ε2が5の場合には、絶縁層8の厚さを約0.05mm以下にする事により、アノード印加電圧が10kV以下で、表面電位の上昇を駆動電圧以下に抑える事が可能である。これは、上記第2の層としての絶縁層8の厚さをd1、絶縁層の誘電率をε1、表面伝導型電子放出素子とアノード間の距離をd2、表面伝導型電子放出素子とアノード間の誘電率をε2、アノード印加電圧をV1としたとき、下述の式
V2=V1/(1+(d2×ε1)/(d1×ε2))
で表わされるV2の値が、容量分割から求められる表面電位を表すからである。
【0023】
素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して、設計される。素子電極間隔Lは、好ましくは、数百nmから数百μmの範囲とすることができ、より好ましくは数μmから数十μmの範囲とすることができる。
【0024】
素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすることができる。素子電極2,3の膜厚dは、数十nmから数μmの範囲とすることができる。
【0025】
導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが好ましい。その膜厚は、素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、0.1nmの数倍から数百nmの範囲とするのが好ましく、より好ましくは1nmから50nmの範囲とするのが良い。そのシート抵抗値Rsは10Ω/□から10Ω/□の値である。本願明細書において、フォーミング処理については、通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせて高抵抗状態を形成する処理を包含するものである。
【0026】
導電性薄膜4を構成する材料は、Pd、Pt、Ru、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pd等の金属、PdO、SnO、In、PbO、Sb等の酸化物、HfB、ZrB、LaB、CeB、YB、GdB等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、Ta、C、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等の中から適宜選択される。
【0027】
ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっている。微粒子の粒径は、0.1nmの数倍から数百nm範囲、好ましくは、1nmから20nmの範囲である。
【0028】
なお、本明細書では頻繁に「微粒子」という言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0029】
小さな粒子を「微粒子」と呼び、これよりも小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」よりもさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「クラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0030】
しかしながら、それぞれの境は厳密なものではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに沿ったものである。
【0031】
「実験物理学講座14 表面・微粒子」(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)では次のように記述されている。
【0032】
「本稿で微粒子と言うときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特に超微粒子というときは粒径が10nm程度から2〜3nm程度までを意味することにする。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼ぶ。」(195ページ 22〜26行目)
付言すると、新技術開発事業団の“林・超微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径の下限はさらに小さく、次のようなものであった。
【0033】
「創造科学技術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra fine particle)と呼ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ10〜10個くらいの原子の集合体という事になる。原子の尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超微粒子、創造科学技術」林主税、上田良二、田崎明 編;三田出版 1988年 2ページ1〜4行目)「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラスターと呼ばれる。」(同書2ページ12〜13行目)上記のような一般的な呼び方をふまえて、本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集合体で、粒径の下限は0.1nmの数倍から1nm程度、上限は数μm程度のものを指すこととする。
【0034】
電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、0.1nmの数倍から数十nmの範囲の粒径の導電性微粒子が存在する場合もある。この導電性微粒子は、導電性薄膜4を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。電子放出部5及びその近傍の導電性薄膜4には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0035】
上述の表面伝導型電子放出素子電子源の製造方法としては様々な方法があるが、その一例を図3及び図4に模式的に示す。
【0036】
以下、図1、図3及び図4を参照しながら製造方法の一例について説明する。図3及び図4においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。
【0037】
1)基板6を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により導電層7を形成する(図3(a))。尚、必要に応じて、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて、導電層7を所望の形状に加工してもよい。
【0038】
2)基板6に導電層7を形成した上にCVD法、スパッタ法により絶縁層8を形成する(図3(b))。
【0039】
3)基板6に導電層7、絶縁層8が形成された複合基板1上に、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて複合基板1上に素子電極2,3を形成する(図3(c))。なお、形成方法は厚膜法による印刷技術を利用する方法も採用できる。
【0040】
4)素子電極2,3を設けた複合基板1に、Y方向配線73を形成する。形成は真空蒸着法等を用いて膜を形成後、フォトリソグラフィー技術を用いて形成する方法や、厚膜法による印刷技術を利用する方法が採用できる(図3(d))。
【0041】
5)X方向配線とY方向配線が交差する部分に層間絶縁層9を形成する(図3では不図示)。
【0042】
6)X方向配線72を、4)と同様に形成する(図3(e))。
【0043】
7)有機金属溶液を塗布して、有機金属薄膜を形成する。有機金属溶液には、前述の導電性薄膜4の材料の金属を主元素とする有機金属化合物の溶液を用いることができる。有機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニングし、導電性薄膜4を形成する(図4(f))、ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性薄膜4の形成法はこれに限られるものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法、有機金属含有溶液をバブルジェット方式のインクジェット噴射装置を用いて付与する方法等を用いることもできる。
【0044】
8)つづいて、フォーミング工程を施す。このフォーミング工程の方法の一例として通電処理による方法を説明する。X方向配線72、Y方向配線73間に、不図示の電源を用いて、通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の変化した電子放出部5が形成される(図4(g))。尚、x方向配線72、y方向配線73への通電の仕方については後述する。通電フォーミングによれば導電性薄膜4に局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成される。該部位が電子放出部5を構成する。通電フォーミングの電圧波形の例を図5に示す。
【0045】
電圧波形は、パルス波形が、好ましい。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図5(a)に示した手法とパルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する図5(b)に示した手法がある。
【0046】
図5(a)におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μsec〜10msec、T2は、10μsec〜10msecの範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子形態に応じて適宜選択される。このような条件のもとで、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採用することができる。
【0047】
図5(b)におけるT1及びT2は、図5(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1V/ステップ程度ずつ、増加させることができる。
【0048】
通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、素子当り1MΩ以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
【0049】
9)フォーミングを終えた素子には活性化工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程とは、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化する工程である。活性化工程は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどC2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等あるいはこれらの混合物が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
【0050】
活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0051】
炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG、PG、GCを包含する、HOPGは、ほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であり、その膜厚は50nm以下の範囲とするのが好ましく、30nm以下の範囲とすることがより好ましい。
【0052】
10)このような工程を経て得られた電子放出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0053】
前記活性化の工程で、排気装置として油拡散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生するオイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1.3×10−6Pa以下が好ましく、さらには1.3×10−8Pa以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜250℃好ましくは150℃以上で、できるだけ長時間処理するのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1×10−5Pa以下が好ましく、さらに1.3×10−6Pa以下が特に好ましい。
【0054】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することが出来る。
【0055】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、また真空容器や基板などに吸着したHO、Oなども除去でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0056】
上述した工程を経て得られた本発明を適用可能な電子源の基本特性について述べる。まず、本発明を適用可能な電子源を構成しうる単一の電子放出素子の特性を説明するために、図6、図7を参照しながら説明する。
【0057】
図6は、真空処理装置の一例を示す模式図であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能をも兼ね備えている。図6においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。図6において、55は真空容器であり、56は排気ポンプである。真空容器55内には電子源が配されている。即ち、1は電子源を構成する複合基板であり、基板6、導電層7、絶縁層8より構成されている。2及び3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。51は、電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、50は素子電極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、54は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。53はアノード電極54に電圧を印加するための高圧電源、52は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。一例として、アノード電極54の電圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極54と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行うことができる。尚、導電層7は不図示の電源に接続可能であり、電圧を印加する事ができる。特に、導電層7に印加する電圧として、グランド電圧とする事もでき、この場合には、導電層7に電圧を印加するための電源等を必要とせず、特に好ましい。また、先述したとおり、第2の層としての絶縁層8の厚さをd1、絶縁層の誘電率をε1、表面伝導型電子放出素子とアノード54間の距離をd2、表面伝導型電子放出素子とアノード54間の誘電率をε2、アノード印加電圧をV1としたとき、下述の式
V2=V1/(1+(d2×ε1)/(d1×ε2))
で表わされるV2の値が、電子放出素子に印加する電位の最大値以下となるように設計する事により、表面電位の上昇を、特に効果的に抑制する事が可能である。
【0058】
真空容器55内には、不図示の真空計等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになっている。排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されている。ここに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、不図示のヒーターにより250℃まで加熱できる。従って、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミング以降の工程も行うことができる。
【0059】
図7は、図6に示した真空処理装置を用いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係を模式的に示した図である。図7においては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリニアスケールである。
【0060】
図7からも明らかなように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関して対する三つの特徴的性質を有する。
【0061】
即ち、
(i) 本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図7中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0062】
(ii) 放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
【0063】
(iii) アノード電極54に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0064】
以上の説明より理解されるように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子電子源を構成しうる表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能となる。
【0065】
図7においては、素子電流Ifが素子電圧Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」という。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特性」という。)を示す場合もある(不図示)。これら特性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0066】
次に、本発明を適用可能な、複数個の表面伝導型電子放出素子を基板上に配列した電子源あるいは、画像形成装置について説明する。
【0067】
電子放出素子の配列については、種々のものが採用できる。
【0068】
一例として、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これとは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス配置について以下に詳述する。
【0069】
本発明に適用可能な表面伝導型電子放出素子については、前述したとおり(i)乃至(iii)の特性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と幅で制御できる。一方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0070】
以下この原理に基づき、本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板について、図8を用いて説明する。図8において、71は電子源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。なお、71の電子源基板は図1の基板6、導電層7、絶縁層8等により構成されている。
【0071】
m本のX方向配線72は、Dx1、Dx2、…、Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、幅は、適宜設計される。Y方向配線73は、Dy1、Dy2、…、Dynのn本の配線よりなり、X方向配線72と同様に形成される。これらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m、nは、共に正の整数)。
【0072】
不図示の層間絶縁層8は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO等で構成される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0073】
表面伝導型放出素子74を構成する一対の電極(図2の2、3)は、m本のX方向配線72とn本のY方向配線73とに導電性金属等からなる結線75によって電気的に接続されている。
【0074】
配線72と配線73を構成する材料、結線75を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0075】
X方向配線72には、X方向に配列した表面伝導型放出素子74の行を、選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面伝導型放出素子74の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0076】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0077】
電子源基板71を構成する導電層7にはグランド電圧を印加してもよいが、絶縁層8の材料、および厚さにより決まる静電容量ε1を考慮して、所望の表面電位を得るための電圧を印加する事もできる。尚、上記の静電容量ε1が大きく、所望の駆動電圧を所望の駆動条件で得難い場合には、素子表面の絶縁面と対向する部分に導電層7を主に形成し、X方向配線72、Y方向配線73、素子電極2,3、導電性薄膜4と対向する部分には導電層7をできるだけ形成しないようにする事もできる。
【0078】
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図9と図10及び図11を用いて説明する。図9は、画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、図10は、図9の画像形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図11は、NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0079】
図9において、71は電子放出素子を複数配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリアプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバック85等が形成されたフェースプレートである。82は、支持枠であり該支持枠82には、リアプレート81、フェースプレート86が低融点のフリットガラスなどを用いて、接合される。
【0080】
74は、表面伝導型電子放出素子である。72,73は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0081】
外囲器88は、上述の如く、フェースプレート86、支持枠82、リアプレート81で構成される。リアプレート81は主に基板71の強度を補強する目的で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート81は不要とすることができる。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェースプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器88を構成しても良い。一方、フェースプレート86、リアプレート81間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器88を構成することもできる。
【0082】
図10は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とから構成することができる。ブラックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。ブラックストライプの材料としては、通常用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができる。
【0083】
ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等が採用できる。蛍光膜84の内面側には、通常メタルバック85が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側へ鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージから蛍光体を保護すること等である。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製できる。
【0084】
フェースプレート86には、更に蛍光膜84の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0085】
前述の封着を行う際には、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分な位置合わせが不可欠となる。
【0086】
図9に示した画像形成装置の製造方法の一例を以下に説明する。
【0087】
図14はこの工程に用いる装置の概要を示す模式である。画像形成装置131は、排気管132を介して真空チャンバー133に連結され、さらにゲートバルブ134を介して排気装置135に接続されている。真空チャンバー133には、内部の圧力及び雰囲気中の各成分の分圧を測定するために、圧力計136、四重極質量分析器(Q−mass)137等が取り付けられている。画像表示装置131の外囲器88内部の圧力などを直接測定することは困難であるため、該真空チャンバー133内の圧力などを測定し、処理条件を制御する。
【0088】
真空チャンバー133には、さらに必要なガスを真空チャンバー内に導入して雰囲気を制御するため、ガス導入ライン138が接続されている。該ガス導入ライン138の他端には導入物質源140が接続されており、導入物質がアンプルやボンベなどに入れて貯蔵されている。ガス導入ラインの途中には、導入物質を導入するレートを制御するための導入制御手段139が設けられている。該導入量制御手段としては具体的には、スローリークバルブなど逃す流量を制御可能なバルブや、マスフローコントローラーなどが、導入物質の種類に応じて、それぞれ使用が可能である。
【0089】
図14の装置により外囲器88の内部を排気し、フォーミングを行う。この際、例えば図15に示すように、Y方向配線73を共通電極141に接続し、X方向配線72の内の一つに接続された素子に電源142によって、同時に電圧パルスを印加して、フォーミングを行うことができる。パルスの形状や、処理の終了の判定などの条件は、個別素子のフォーミングについての既述の方法に準じて選択すればよい。また、複数のX方向配線に、位相をずらせたパルスを順次印加(スクロール)することにより、複数のX方向配線に接続された素子をまとめてフォーミングする事も可能である。図中143は電流測定用抵抗を、144は、電流測定用のオシロスコープを示す。
【0090】
フォーミング終了後、活性化工程を行う。外囲器88内は、十分に排気した後有機物質がガス導入ライン138から導入される。あるいは、個別素子の活性化方法として記述のように、まず油拡散ポンプやロータリーポンプで排気し、これによって真空雰囲気中に残留する有機物質を用いても良い。また、必要に応じて有機物質以外の物質も導入される場合がある。この様にして形成した、有機物質を含む雰囲気中で、各電子放出素子に電圧を印加することにより、炭素あるいは炭素化合物、ないし両者の混合物が電子放出部に堆積し、電子放出量がドラスティックに上昇するのは、個別素子の場合と同様である。このときの電圧の印加方法は、上記フォーミングの場合と同様の結線により、一つの方向配線につながった素子に、同時に電圧パルスを印加すればよい。
【0091】
活性化工程終了後は、個別素子の場合と同様に、安定化工程を行うことが好ましい。
【0092】
外囲器88を加熱して、80〜250℃に保持しながら、イオンポンプ、ソープションポンプなどのオイルを使用しない排気装置135により排気管132を通じて排気し、有機物質の十分少ない雰囲気にした後、排気管132をバーナーで熱して溶解させて封じきる。外囲器88の封止後の圧力を維持するために、ゲッター処理を行うこともできる。これは、外囲器88の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器88内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、外囲器88内の雰囲気を維持するものである。
【0093】
次に、単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例について、図11を用いて説明する。図11において、101は画像表示パネル、102は走査回路、103は制御回路、104はシフトレジスタである。105はラインメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0094】
表示パネル101は、端子Dox1乃至Doxm、端子Doy1乃至Doyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。端子Dox1乃至Doxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。
【0095】
端子Dy1乃至Dynには、前記走査信号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10kVの直流電圧が供給されるが、これは表面伝導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0096】
走査回路102について説明する。同回路は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図中、S1乃至Smで模式的に示している)ある。各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0V(グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル101の端子Dx1乃至Dxmと電気的に接続される。S1乃至Smの各スイッチング素子は、制御回路103が出力する制御信号TSCANに基づいて動作するものであり、例えばFETのようなスイッチング素子を組み合わせることにより構成することができる。
【0097】
直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
【0098】
制御回路103は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期信号分離回路106より送られる同期信号TSYNCに基づいて、各部に対してTSCANおよびTSFTおよびTMRYの各制御信号を発生する。
【0099】
同期信号分離回路106は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為の回路である。同期信号分離回路106により分離された同期信号は、垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分は便宜上DATA信号と表した。該DATA信号はシフトレジスタ104に入力される。
【0100】
シフトレジスタ104は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路103より送られる制御信号TSFTに基づいて動作する(即ち、制御信号TSFTは、シフトレジスタ104のシフトクロックであるということもできる。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータは、Id1乃至IdnのN個の並列信号として前記シフトレジスタ104より出力される。
【0101】
ラインメモリ105は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であり、制御回路103より送られる制御信号TMRYに従って適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶された内容は、I′d1乃至I′dnとして出力され、変調信号発生器107に入力される。
【0102】
変調信号発生器107は、画像データI′d1乃至I′dnの各々に応じて表面伝導型電子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、その出力信号は、端子Doy1乃至Doynを通じて表示パネル101内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0103】
前述したように、本発明を適用可能な電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出閾値以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出閾値以上の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化させる事により出力電子ビームの強度を制御することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御する事が可能である。
【0104】
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いることができる。
【0105】
パルス幅変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いることができる。
【0106】
シフトレジスタ104やラインメモリ105は、デジタル信号式のものをもアナログ信号式のものをも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行われれば良いからである。
【0107】
デジタル信号式を用いる場合には、同期信号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これには106の出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器107に用いられる回路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器107には、例えば高速の発振器および発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0108】
アナログ信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなどを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VOC)を採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0109】
このような構成をとり得る本発明を適用可能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器外端子Dox1乃至Doxm、Doy1乃至Doynを介して電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧端子Hvを介してメタルバック85、あるいは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速された電子は、蛍光膜84に衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0110】
次に、梯子型配置の電子源及び画像形成装置について図12及び図13を用いて説明する。
【0111】
図12は、梯子型配置の電子源の一例を示す模式図である。図12において、110は電子源基板、111は電子放出素子である。尚、電子源基板110は基板6、導電層7、絶縁層8等により構成されている。112で示すDx1〜Dx10は、電子放出素子111を接続するための共通配線である。電子放出素子111は、基板110上に、X方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させることができる。即ち、電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2、Dx3を同一配線とすることもできる。
【0112】
図13は、梯子型配置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図である。120はグリッド電極、121は電子が通過するため空孔、122はDox1、Dox2、…、Doxmよりなる容器外端子である。123は、グリッド電極120と接続されたG1、G2、…、Gnからなる容器外端子である。図13においては、図9、図12に示した部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号を付している。ここに示した画像形成装置と、図9に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違いは、電子源基板110とフェースプレート86の間にグリッド電極120を備えているか否かである。
【0113】
図13においては、基板110とフェースプレート86の間には、グリッド電極120が設けられている。グリッド電極120は、表面伝導型放出素子から放出された電子ビームを変調するためのものであり、梯子型配置の素子行と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口121が設けられている。グリッドの形状や設置位置は図13に示したものに限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0114】
容器外端子122およびグリッド容器外端子123は、不図示の制御回路と電気的に接続されている。
【0115】
本例の画像形成装置では、素子行を1列ずつ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これにより、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像を1ラインずつ表示することができる。
【0116】
ここで述べた画像形成装置の構成は、本発明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号については、NTSC方式を挙げたが入力信号はこれに限られるものではなく、PAL、SECAM方式など他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、高品位TV)方式をも採用できる。
【0117】
また、ここで述べた画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができる。
【0118】
本発明の電子源および画像形成装置は、導電層7、絶縁層8を有する事を特徴とするが、これは絶縁層8の材質、厚さ等により決まる導電層7と素子形成面の間の静電容量を規定することを目的としている。これにより、アノード電極54に印加する電圧に対して、導電層7に各々の電子放出素子に対して共通の電圧を印加した場合に、各々の素子形成面の表面電位を規定する事が可能になる。つまり、本発明の電子源においては、放出された電子の軌道が安定であるのはもちろんのこと、長時間安定して駆動する事が可能である。さらに述べると、素子部の表面電位の上昇、および素子間での表面電位に差が生じやすい場合に引き起こされる放電現象を抑制する事が可能である。
【0119】
本発明の電子源において、第1の層としての導電層7に印加する電圧をグランド電圧とした場合に、第2の層としての絶縁層の厚さをd1、絶縁層の誘電率をε1、表面伝導型電子放出素子とアノード間の距離をd2、表面伝導型電子放出素子とアノード間の誘電率をε2、アノード印加電圧をV1としたとき、下述の式
V2=V1/(1+(d2×ε1)/(d1×ε2))
で表わされる電圧V2の値が、駆動電圧以下である場合に、とりわけ長時間安定して駆動することが可能であり、同時にアノードに印加する電圧が上昇しているときに生じ易い放電を効果的に抑制する事が可能となる。この電圧V2の値は、容量分割から算出される素子形式面の表面電位をあらわすものであり、上記のd2、d1、ε1を制御する事によりさまざまに変化させる事が可能である。尚、ε2は近似的に真空中の誘電率で表されるものであり、制御する事は困難である。
【0120】
例えば、導電層7に印加する電圧がグランド電圧で且つ、駆動電圧が20V、アノード54と基板1間の距離が5mm、絶縁層8の誘電率ε1とアノード54と基板1間の誘電率ε2の比ε1/ε2が5の場合には、絶縁層8の厚さを約0.05mm以下にする事により、アノード印加電圧が10kV以下で、表面電位の上昇を駆動電圧以下に抑える事が可能である。このことからもわかるように、仮に比誘電率が5程度の基板の裏面に導電層を形成して、導電層にグランド電圧を印加する場合には、基板の厚さを約0.05mm以下にする事が必要となり、大面積化に対応して十分な強度を得ることが非常に困難になってしまう。
【0121】
【実施例】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0122】
[実施例1]
図1、図3及び図4を用いて、表面伝導型電子放出素子を用いた電子源の作製方法について説明する。
【0123】
1)ガラス基板6を洗浄する。基板は青板ガラスを使用する。
【0124】
2)導電層7を形成する。導電層7はCr0.01μm/Cu0.3μm/Cr0.01μmにより構成され、形成には真空蒸着法を使用する。
【0125】
3)絶縁層8を形成する。絶縁層8はリン濃度が6重量%のPSG膜を2μm形成したものとする。形成にはCVD法を使用する。尚、基板端に、導電層7に電圧を印加するための端子を得るために、絶縁層8にフッ酸を滴下して、導電層7が露出する部分を形成する(不図示)。この露出部分の面積は約1平方センチメートルである。
【0126】
4)素子電極2,3を形成する。膜の成膜方法としては厚膜印刷法を使用する。ここで使用する厚膜ペースト材料はMODペースト(DU−2110、ノリタケ(株)製)で金属成分は金である。印刷方法はスクリーン印刷法である。印刷の後は110℃で20分乾燥し、次に本焼成を実施する。焼成温度は580℃でピーク保持時間は約8分である。印刷焼成後の膜厚は0.3μmである。素子電極間距離は50μmとする。
【0127】
5)次に、Y方向配線73を形成する。厚膜スクリーン印刷法を用いる。ペースト材料はノリタケ(株)製(NP−4028A)で、金属成分は銀である。焼成は、2)と同様である。Y方向配線は、素子電極3の片側に接続する。
【0128】
6)次に、層間絶縁層(不図示)を形成する。厚膜スクリーン印刷法を用いる。ペースト材料はPbOを主成分としてガラスバインダーを混合したものを使用する。焼成は、2)と同様である。X方向配線72と素子電極2が接続できるような形態とする。
【0129】
7)次に、X方向配線72をY方向配線73と同じ手順で形成する。X方向配線72の一部は、素子電極2と接続されている。
【0130】
8)次に、導電性薄膜4を形成する。有機パラジウム含有溶液を、バブルジェット方式のインクジェット噴射装置を用いて、幅が200μmとなるように付与する。300℃で10分間の加熱処理を行って、酸化パラジウム微粒子から成る微粒子膜を得る。
【0131】
以上の工程によりガラス基板6上に導電層7、絶縁層8を形成した複合基板1、X方向配線72、層間絶縁層(不図示)、Y方向配線73、素子電極2,3、電子放出部形成用薄膜4、等を形成する。
【0132】
こうして作製された電子源基板を用いて、前述したようにフェースプレート86、支持枠82、リアプレート81とで外囲器88を形成し、封止を行って表示パネルを作成する。
【0133】
外囲器88内を排気して、圧力を1.3×10−4Pa以下とした後、Y方向配線73をグランド電位とし、X方向配線72の各配線毎に三角波パルスを印加して前述のフォーミング処理を行う。三角波パルスの波形は、図5(b)に示すように、波高値の漸増するもので、パルス幅T1=1msec.、パルス間隔10msec.とする。
【0134】
つづいて、活性化工程を行う。外囲器88内にアセトンを導入し、圧力を1.3×10−1Paとし、上記と同様に各X方向配線毎に波高値16Vの矩形波パルスを印加する。
【0135】
つづいて、外囲器88を加熱しながら排気を行い、圧力を1.3×10−5Pa以下とした後、バーナーにより排気管を加熱溶着して、封止を行い、さらに不図示のゲッターを高周波加熱することにより、ゲッター処理を行う。
【0136】
本表示パネルにおいては、アノード54と基板1間の距離d2が5mm、絶縁層の厚さd1が2μm、絶縁層の誘電率ε1とアノードと基板間の誘電率ε2の比ε1/ε2が約5であり、
V2=V1/(1+(d2×ε1)/(d1×ε2))
で与えられる電圧V2は、V2=V1/12501となる。尚、電圧V1はアノード54に印加する電圧である。更には図11に示すようなNTSC方式のテレビ信号に基づきテレビジョン方式を行う為の駆動回路を有する画像形成装置を作製する。
【0137】
上記の方法で製造した画像形成装置の放電の有無を長時間にわたり確認するために、放電が生じた場合に突発的にアノード電極54に流れる電流を計測する実験を行った。以下に測定条件を述べる。
【0138】
1)アノード54に印加する電圧V1を10kV、2kV毎秒で上昇させた。また、電子放出素子74の駆動電圧を16Vとした。すなわち、電子放出で行わせる素子に対応するX、Y各方向配線にピーク値+8V及び−8Vの矩形波パルスを印加した。この時、上記の電圧V2は約0.8Vとなり、正極側の電位8Vに対して小さな値となった。
【0139】
2)導電層7には、高圧電源のグランドと共有したグランド電圧を印加した。即ち、導電層7には時間的に変動しない電圧を印加した。
【0140】
3)駆動条件として、各素子とも同じ駆動電圧、パルス幅、となるようにした。つまり、アノード54に流れる電流値が時間的に変動の少ない条件とした。
【0141】
4)アノード54に定常的に流れる電流値の2倍の値をトリガーレベルとし、放電により、突発的に上記トリガーレベルを越えた電流が流れ、続いて、トリガーレベル以下の電流値に減衰したときに、放電が起きたものとした。尚、放電時には、放電個所において蛍光体の発光が見られる場合があるが、上記の測定方法で、十分な対応が取れるものであった。上記の測定方法により、放電の回数を、長時間にわたり計測可能である。
【0142】
上記の測定を200時間にわたり実施したところ、放電は一度も観測されなかった。このことから、本発明の電子源および画像形成装置が、放電抑制にきわめて有効である事が理解される。
【0143】
次に、画像の評価を行うために、さまざまな駆動信号を入力したところ、上記の本実施例の製造方法により作製した電子放出素子電子源基板、表示パネル及び画像形成装置は、画素の乱れのない安定な画像が得られた。
【0144】
[比較例1]
実施例1において、工程2)、3)を行わず、即ち、ガラス基板6上に直接素子を形成して、実施例1で行ったのと同様の放電測定実験を行った。尚、ガラス基板は比誘電率が約5、厚さが2mmのものを採用し、ガラス基板の素子形成面の裏面がグランド電位なるように配置した。実施例1と同じ駆動電圧、アノード印加電圧で200時間にわたり実施したところ、8回の放電が計測された。続いて、画像の評価を行うために、さまざまな駆動信号を入力したところ、比較例1の製造方法により作製した電子源、表示パネルおよび画像形成装置は、放電に起因すると思われる不明瞭な表示部分が確認された。
【0145】
[実施例2]
実施例1において、工程2)と3)の代わりに、次に示す工程2)′および3)′を行った。その他の工程は実施例1と同様である。
【0146】
2)′導電層7を図2に示される形状に形成する。導電層7はCr0.01μm/Cu0.3μm/Cr0.01μmにより構成され、成膜は真空蒸着法を使用する。なお、図2に示される形状を得るために、成膜前にレジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて所望の形状が得られるようにパターニングし、成膜後にリフトオフを行って作製する。なお、図2においてCおよびC′は、図1におけるBおよびB′と基板と垂直な方向から眺めて一致するように、後にアライメントされる。
【0147】
3)′絶縁層8を形成する。絶縁層8はリン濃度が6重量%のPSG膜を1μm形成したものである。形成方法としてはCVD法を使用した。
【0148】
こうして作製された電子源基板を用いて、前述したようにフェースプレート86、支持枠82、リアプレート81とで外囲器88を形成し、封止を行って表示パネル、更には図10に示すようなNTSC方式のテレビ信号に基づきテレビジョン表示を行う為の駆動回路を有する画像形成装置を作製した。本表示パネルにおいては、アノードと基板間の距離d2が5mm、絶縁層の厚さd1が1μm、絶縁層の誘電率ε1とアノードと基板間の誘電率ε2の比ε1/ε2が約5であり、
V2=V1/(1+(d2×ε1)/(d1×ε2))
で与えられる電圧V2は、V2=V1/25001となる。尚、電圧V1はアノードに印加する電圧である。
【0149】
まず、実施例1と同様に、放電の有無を長時間にわたり確認するために、放電が生じた場合に突発的にアノード電極に流れる電流を計測する実験を200時間にわたり行った。実験条件は実施例1と同じであり、その結果、放電は一度も観測されなかった。
【0150】
次に、画像の評価を行うために、さまざまな駆動信号を入力したところ、上記の本実施例の製造方法により作製した電子源基板、表示パネル及び画像形成装置は、画素の乱れのない安定な画像が得られた。
【0151】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば放電を抑制した電子放出素子電子源基板、表示パネル及び画像形成装置が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態及び実施例による表面伝導型電子放出素子を用いた電子源の構成を示す模式的平面図及び断面図である。
【図2】本発明の実施例2による基板上に形成した導電層を示す模式的平面図である。
【図3】本発明の実施形態及び実施例による表面伝導型電子放出素子の製造方法の一例の前半部を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態及び実施例による表面伝導型電子放出素子の製造方法の一例の後半部を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態及び実施例による表面伝導型電子放出素子の製造に際して採用できる通電フォーミング処理における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図6】測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態及び実施例による表面伝導型電子放出素子についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態及び実施例による単純マトリクス配置した電子源の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の実施形態及び実施例による画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図10】蛍光膜の一例を示す模式図である。
【図11】画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行わせるための駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態による梯子配置の電子源の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の実施形態による画像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図14】本発明の実施形態及び実施例による画像表示装置フォーミング、活性化工程を行うための真空排気装置の模式図である。
【図15】本発明の実施形態及び実施例による画像形成装置の、フォーミング、活性化工程のための結線方式を示す模式図である。
【図16】従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 複合基板
2,3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 基板
7 導電層
8 絶縁層
9 層間絶縁層
50 素子電極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計
51 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源
52 素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計
53 アノード電極54に電圧を印加するための高圧電源
54 素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極
55 真空装置
56 排気ポンプ
71 電子源基板
72 X方向配線
73 Y方向配線
74 表面伝導型電子放出素子
75 結線
81 リアプレート
82 支持枠
83 ガラス基板
84 蛍光膜
85 メタルバック
86 フェースプレート
87 高圧端子
88 外囲器
91 黒色導電材
92 蛍光体
101 表示パネル
102 走査回路
103 制御回路
104 シフトレジスタ
105 ラインメモリ
106 同期信号分離回路
107 変調信号発生器
VxおよびVa 直流電圧源
110 電子源基板
111 電子放出素子
112 Dx1〜Dx10は、前記電子放出素子を配線するための共通配線
120 グリッド電極
121 電子が通過するため空孔
122 Dox1、Dox2、…Doxmよりなる容器外端子
123 グリッド電極120と接続されたG1、G2
131 画像表示装置
132 排気管
133 真空チャンバー
134 ゲートバルブ
135 排気装置
136 圧力計
137 四重極質量分析器
138 ガス導入ライン
139 導入量制御手段
140 導入物質源
141 共通電極
142 電源
143 電流測定用抵抗
144 オシロスコープ

Claims (2)

  1. 複数の電子放出素子が配置された基板と、前記複数の電子放出素子の配置されたアノード電極を有する電子源において、前記基板と前記複数の電子放出素子との間には、グランド電位に規定された導電層と、当該導電層と前記複数の電子放出素子との間を絶縁する絶縁層とが配置されており、前記絶縁層は、当該絶縁層の表面の電位が前記電子放出素子に印加する電位の最大値以下となる厚さを有していることを特徴とする電子源。
  2. 請求項1に記載の電子源と画像形成部材とを有することを特徴とする画像形成装置。
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