JP3546898B2 - 光走査装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、レーザビームプリンタ等に用いられる光走査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザビームプリンタ等に用いられる光走査装置は、半導体レーザ等の光源から射出しコリメータレンズによって平行化されたビームを回転多面鏡で偏向走査し、結像レンズによって被走査面上にビームスポットを形成している。
【0003】
ところで、結像レンズに要求される収差特性は次の二点である。即ち、一つは等速走査性を得るために特定の負の歪曲収差を持たせることにあり、もう一つはビームスポット径を回折限界に近くするために像面湾曲を小さくして像面の平坦性を得ることである。
【0004】
結像レンズを構成するレンズ枚数は1枚から複数枚まで様々である。収差特性を重要視する場合には構成枚数を多くし、また、コストを重要視する場合には単レンズが用いられている。特に最近では、収差特性をさらに向上させるために特開平4−50908号公報の発明に代表されるように、結像レンズに非球面を用いることが行われている。なお、特開平6−75162号公報の発明の光走査装置のように偏向手段として回転レンズ鏡を用いる場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
レンズ面が球面であれば、レンズ面上のどの位置でも曲率は一定である。それに対して、非球面は局所的な曲率がレンズ面上の位置により異なっている。従って、特開平4−50908号公報の発明のような非球面の結像レンズでは、結像レンズを透過するビーム径がある程度以上大きいと、非球面上のビーム断面内でも位置によって局所的な曲率が異なってしまい、非球面により変換を受けたビームの波面が乱されて結像特性が悪化し、ビームスポット形状が崩れてしまうという問題点を有している。非球面と言っても球面からの変位量がごく僅かであるものから、変曲点を有し光軸中心と端部とで凹凸が逆転するようなものまであるが、ビームスポット形状の崩れは特に後者のような場合に顕著となる。
【0006】
また、近年では、レーザビームプリンタの高解像度化が進展しており、光走査装置には益々微小なビームスポットを形成することが要求されてきている。ところで、ガウスビームの性質として、同じ焦点距離のレンズより小さいビームスポットを得るためには広がり角が大きいビームを絞り込む必要があるので、逆に径の大きなビームをレンズに入射させる必要がある。従って、レーザプリンタの高解像度化に伴い、上記問題点は益々重要なものとなり、高解像度化が困難であるという問題点をも有している。
【0007】
また、従来の光走査装置の結像レンズでは以下のような様々な問題点を有している。即ち、
1)結像レンズの副走査方向の光学倍率が結像レンズ中心と結像レンズ端部とで異なるため、副走査方向のビームスポット径が不均一である。また、副走査方向の光学倍率を均一にするためには、結像レンズの構成枚数を多くしなければならない。
2)結像レンズの光軸方向の厚さが副走査方向の高さに対して大きく、プラスチックで成形する際に内部歪みを生じ、焦点位置がずれたり結像特性が悪化する。
3)結像レンズの主走査断面の厚さが結像レンズ中心で厚く結像レンズ端部で薄くなっており、その差が大きいためプラスチックで成形する際に溶融樹脂の流動状態が不均一で内部歪を生じる。
4)結像レンズへの入射ビームが平行ビームであるため、結像レンズは正の大きな屈折力を有し、主走査断面の厚さが端部に対して中心で非常に大きく、厚さが非常に不均一である。
5)結像レンズが軸対称面だけで構成されており、収差補正の自由度が小さいため主走査方向,副走査方向の両方で像面湾曲や等速走査性を十分に補正することができない。また、十分な収差補正をなすためには結像レンズの構成枚数を多くしなければならない。
6)偏向手段の反射面の面倒れにより走査線の位置ずれを生じる。
7)結像レンズの副走査方向の曲率が一定しているので、副走査方向の像面湾曲を十分に小さくすることができない。また、副走査方向の像面湾曲を十分に小さくするためには結像レンズの構成枚数を多くしなければならない。
8)結像レンズの両面ともが曲面で構成されていると製造コストが高くつき、また、両面の光軸を一致させることに高度の精度が要求される。
9)一方、結像レンズの片面の副走査断面が直線であると、副走査方向における光学設計上の自由度を像面湾曲補正に使ってしまい、ビームスポット径を均一にすることができない。
【0008】
そこでこの発明は、結像レンズの非球面に関する諸元を所定の関係にすることにより、結像特性が良好でビームスポット形状に崩れがなく、しかも高解像度化に適した光走査装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の光走査装置は、光ビームを発生する光源と、前記光ビームを偏向し等角速度で回転する偏向手段と、前記偏向手段により偏向された光ビームを結像し被走査面上にビームスポットを形成させるための結像レンズとを有し、前記結像レンズが主走査断面で非球面を有する光走査装置において、
前記非球面に関する諸元e,n,w,ρが次の条件式を満足することを特徴とする光走査装置である。
【数4】
ただし、各諸元は以下の通りである。
【数5】
ci (vi ):レンズ面Si における光軸からの高さvi での曲率
ei :レンズ面Si と被走査面との間隔
g :像高0におけるビームスポットの主走査半径
ni :レンズ面Si を形成する結像レンズの屈折率
Si :第iレンズ面
ui :レンズ面Si の入射面、射出面の区別を示す係数
ui =1(入射面)
ui =−1(射出面)
vi (ys ):像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点の光軸からの高
さ
wi :レンズ面Si における、レンズ面Si の光軸に沿って透過する
光ビームの主走査断面半径
y :主走査方向への光軸からの高さを示す座標
ys :被走査面における像高
ρi (ys ):像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点における曲率変
化率であり、曲率ci のyによる微分値
【0010】
また、この発明の光走査装置は上記構成に加え、次のいずれかの構成を有することを特徴とする。
1)結像レンズのレンズ面Si において、前記主走査断面の有効部で、光軸からの高さyでのレンズ面Si の光軸方向の偏位量をΔzi (y),前記偏向手段の偏向点から前記レンズ面Si までの距離をbi ,前記偏向点から前記被走査面までの距離をaとすると
【数6】
の条件式を満足すること。
2)結像レンズの副走査断面において、光軸方向の厚さt,副走査方向の高さをhとすると
h/t>2
の条件式を満足すること。
3)結像レンズの主走査断面の有効部において、光軸方向の厚さの最大値tmax ,最小値をtmin とすると
tmax /tmin <2
の条件式を満足すること。
4)結像レンズの主走査断面の有効部において、光軸方向の厚さの最大値tmax ,最小値をtmin とすると
tmax /tmin <2
の条件式を満足すること。
4)結像レンズに入射する光ビームが主走査断面において集束光であること。
5)結像レンズは、主走査方向と副走査方向とで屈折力が異なること。さらに、副走査断面において偏向点と被走査面とが光学的に共役関係にあることや、結像レンズの少なくとも1面において副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化していることを特徴としている。また、結像レンズの少なくとも1面の副走査断面が直線であることや、結像レンズの両面において、副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化していることを特徴としている。
【0011】
【作用】
この発明の上記のような構成は、次に記載するような優れた作用・効果を奏するものである。
まず、請求項1記載の発明においては、結像レンズの非球面に関する諸元を所定の関係にすることにより、ビームスポットの主走査断面形状の崩れを実用上問題のない程度に設定したものである。
請求項2記載の発明においては、所定のレンズ形状にすることにより、偏向手段の反射面近傍の結像点と被走査面上の結像点との間の、副走査方向の光学倍率を均一にし、その結果、ビームスポット径が均一になり、解像度も均一になる。請求項3記載の発明においては、結像レンズの断面を所定の形状とすることによりビーム進行方向と垂直な方向の屈折率分布を抑制することができる。これにより、焦点位置がずれたり、結像特性が悪化したりすることを防ぐことができる。
請求項4記載の発明においては、結像レンズの厚さtの主走査断面の有効部の形状を特定することにより成形時の合成樹脂の流動状態の不均一性を防止し、内部歪を生じないように構成することができる。
請求項5記載の発明においては、結像レンズに入射するビームが主走査断面において集束光であるので、結像レンズの屈折力が小さくて済むようになる。この結果、レンズの厚さを均一に近くすることが可能である。
請求項6記載の発明においては、主走査方向と副走査方向とで屈折率が異なるので、諸収差の補正を主走査方向と副走査方向とで独立に行うことができ、光学設計上の自由度が大きくなる。
請求項7記載の発明においては、副走査断面において偏向点と被走査面とが光学的に共役関係にあるため、回転多面鏡あるいは回転レンズ鏡の反射面に面倒れがあっても被走査面上におけるビームスポットの副走査方向の位置は変化せず、走査線の位置ずれは発生しない。
請求項8記載の発明においては、結像レンズの射出面は副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化しているので、結像レンズの有効部のいかなる位置でも副走査断面に平行な断面の曲率を任意に設定することができる。このため、副走査方向の像面湾曲を完全に補正することができる。
請求項9記載の発明においては、結像レンズの二つの面のうち片方の面を副走査断面で直線となるようにすれば、結像レンズの製造が容易になりコストを低減することができる。さらに、一つのレンズに光学曲面が2面存在すると、それらの面の光軸の相対的な位置精度が問題となり、2本の光軸を一致させることが厳しく要求されるが、副走査断面で平凸レンズとなるようにすれば、副走査断面ではそのような要求は生じない。
請求項10記載の発明においては、結像レンズの両面ともを曲率が連続的に変化している面にすれば、光学設計の自由度が副走査方向でさらに1自由度大きくすることができる。この結果、副走査方向のビームスポット径を完全に一定にすることができる。
【0012】
【実施例】
以下、図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
実施例1
図1は、この発明の実施例1の光走査装置の構成を示す斜視図である。光源として半導体レーザ1より射出したビームが開口絞り7により絞り込まれ、コリメータレンズ2によってわずかに集束するビームに変換され、シリンドリカルレンズ3により副走査方向にのみ集束作用を受ける。ここで、副走査方向とは、回転レンズ鏡4などの偏向手段の回転軸に平行のことであり、また、副走査方向と光軸とに垂直な方向を主走査方向という。さらに、ビームは偏向手段としての回転レンズ鏡4の入射面に入射した後、反射面の近傍で副走査方向でのみ結像し、反射面で反射され射出面から射出する。入射面、射出面はいずれも主走査方向にのみ屈折力を有し、それぞれ凹シリンドリカル面、凸シリンドリカル面である。反射面は平面である。ビームは回転レンズ鏡4の回転に伴って偏向される。偏向されたビームは結像レンズ5で集束作用を受け、被走査面6上にビームスポットを形成する。
【0013】
図2に回転レンズ鏡4の回転に伴ってビームが偏向される様子を示す。入射面Sa ,射出面Sc は、走査中心を走査するビームがそれらの面を垂直に通過するように設定され、また、反射面Sb は走査中心を走査するビームが45°の角度で反射面Sb に入射するように設定されている。回転レンズ鏡4の回転軸Oは、反射面Sb に内包され、走査中心を走査するビームの反射点を通る。入射面Sa の光軸および射出面Sc の光軸は、走査中心を走査するビームの光路に一致する。回転レンズ鏡4は回転軸Oを中心に回転し、Iの破線,IIの実線,IIIの一点鎖線で示すように変位することになる。入射ビームLはこのような回転レンズ鏡4の回転に伴い、入射面Sa のそれぞれ異なる位置に異なる角度で入射するため、ここで屈折により偏向される。ビームは反射面Sb で反射されて、さらに偏向角を大きくし、射出面Sc で屈折して射出ビームM1 ,M2 ,M3 で示すように偏向して射出される。
【0014】
次に、本実施例における結像レンズ5の構成を図9の断面図に示し、詳細に説明する。本実施例における結像レンズ5の入射面R1 ,射出面R2 の主走査断面(光軸を含み主走査方向に平行な面)の形状は非球面である。この非球面は曲率が局所的に変化している面であるが、その変化が大きくてビーム直径の範囲内でも局所的に曲率が大きく変化するような場合には、非球面により変換を受けたビームの波面は乱されて球面ではなくなり、結像特性が悪化してしまう。そこで、本実施例における結像レンズ5では、非球面に関する諸元e,n,w,ρが、
【数7】
の条件式をを満足している。ただし、各諸元は次のとおりである。
【数8】
ci (vi ):レンズ面Si における光軸からの高さvi での曲率
ei :レンズ面Si と被走査面との間隔
g :像高0におけるビームスポットの曲率半径
ni :レンズ面Si を形成する結像レンズの屈折率
Si :第iレンズ面
ui :レンズ面Si の入射面、射出面の区別を示す係数
ui =1(入射面)
ui =−1(射出面)
vi (ys ):像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点の光軸からの高
さ
wi :レンズ面Si における、レンズ面Si の光軸に沿って透過する
光ビームの主走査断面半径
yi :主走査方向への光軸からの高さを示す座標
ys :被走査面における像高
ρi (ys ):像高ys の主光線が透過する光ビームSi を透過する点におけ
る曲率変化率であり、曲率ci のyによる微分値
【0015】
このようにすれば、ビームスポット形状の崩れは小さく、実用上の問題がない。このことについて、一例を上げて具体的に計算を行う。図3(a)に示すように、簡単のために結像レンズ5の入射面Sd は平面とし、射出面Se は近軸的には平面であるが、それに非球面変位が付加されているものとする。平行ビームが結像レンズ5を光軸に沿って透過する。射出面Se におけるビームの主走査断面半径をwとする。ここで、ビームの断面半径wとは、ビーム断面においてビームの中心強度に対して、1/e2 の強度となる点を連ねた形状の半径のことである。射出面Se と光軸とが交わる点を原点とし、光軸方向にz軸、光軸に垂直な方向にy軸をとる。曲率が変化するような面は3次曲線で代表される。そこで、射出面Se を係数kを用いて、
z=ky3
と与えると、曲率変化ρは近軸的にはyによるzの3次微分、即ち、
ρ=6k
となる。次に、ビームが半径wの太さを持っていることを考慮し、ビームを光線束であると考え、光軸から距離wだけ離れた位置を通る光線Nを追跡する。光軸からの高さwにおける射出面Se の傾きは3kw2 であり、結像レンズ5の屈折率をnとすれと、射出面Se から射出された光線が光軸となす角αは近似的に、
α=3kw2 (n−1)
となる。従って、曲率変化率ρと角αとの関係は、
α=ρw2 (n−1)/2
となる。光線Nが射出面Se から距離qだけ離れた面9と交わる位置Uと、射出面Se に非球面変位がない場合に交わる位置Tとのずれmは、
m=ρqw2 (n−1)/2
となる。なお、中心光線は光軸上をy方向に変位することなく直進する。以上の計算により、半径wのビームを光線束と考えると、光線は曲率変化率ρを有する面により、面9において最大でmのずれを生じる。
【0016】
上記の説明は、平行ビームが結像しないまま面9に到達する場合である。実際には、ビームは被走査面6上で一点に集束するのが理想的であり、被走査面6で一点に集束するビームが非球面変位のある結像レンズを透過した場合の様子を図3(b)に示す。図3(a)と同様に、結像レンズ5の射出面Se が非球面であり、射出面Se と被走査面6との間隔をeとすると、光線Nが被走査面6と交わる位置Uと、射出面Se に非球面変位がない場合に交わる位置Tとのずれmは、
m=ρew2 (n−1)/2
となる。ずれmが大きいと、焦点を被走査面6上に設定してもビーム内の各々の光線は一点に集束せずビームスポット形状が崩れ、結像特性を悪化させることになる。
【0017】
次に、被走査面6での光線のずれmとビームスポット形状の崩れとの関係を、シュミレーション結果を用いて説明する。被走査面6でのビームスポット半径をgとする。ここで、ビームスポット半径とはビームの中心強度に対して1/e2 の強度となる位置を連ねた形状の半径のことである。ビームスポットの断面強度分布形状は、光線のずれmとビームスポット半径gとの比m/gのみでほぼ決まり、図4(a),(b),(c)に示すようにm/gが大きくなると、ビームの側部の2次ピークFが大きくなる。中心強度に対する2次ピークFの強度を、m/gに対してプロットしたグラフを図5に示す。2次ピークの強度が大きくなると、隣接するドットにもビームが照射されることとなり、光走査装置としての解像度が悪化し、さらに、レーザプリンタによる印字でもぼやけが生じたり、特に細かい網点のような印字パターンではコントラストが低下して印字品質が悪化する。本件発明者らの実験によれば、光走査装置として良好な結像特性を得るために、また、レーザビームプリンタで良質な印字品質を得るためには、中心強度に対する2次ピークの強度は、1/e2 より小さいことが望ましい。従って、図5より
|m|/g<2.5
であることが要求される。即ち、
|ρ|ew2 (n−1)/2g<2.5
である。カラープリンタなどさらに高度な諧調表現が要求されるプリンタに用いられる光走査装置では、|m|/gはさらに小さいことが望ましい。
【0018】
非球面が複数ある場合には、被走査面上での光線のずれは各非球面の曲率変化によって生じるずれが累積した量となる。ただし、入射面と射出面とでは、光線に作用する屈折の方向が異なるため、入射面,射出面の区別を示す係数uを用いて
【数9】
であることが要求される。ただし、係数uは次のとおりである。
u=1(入射面)
u=−1(射出面)
【0019】
結像レンズの厚さが均一で、入射面と射出面の面形状が同じであれば、曲率変化の影響は入射面と射出面とで相殺し合い、光線のずれは生じないこととなる。
【0020】
以上の結論は、光軸上のビームに対してであるが、光軸外の斜めのビームに対しても同様のこととなる。従って、上記の理論を光軸外のビームに適用すると、以下のようになる。即ち、被走査面における像高をys とし、像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点の光軸からの高さをvi (ys )とし、レンズ面Si における光軸からの高さvi での曲率をci (vi )とすると
【数10】
であることが要求される。ただし、
【数11】
である。
【0021】
ところで、本発明の光走査装置に用いられる非球面の結像レンズは、プラスチック成形により製造することが望ましい。なぜなら、容易に低コストで非球面を形成できるからである。ただし、プラスチックでレンズを成形する場合、冷却速度の不均一によりレンズ内部に歪が生じ、屈折率が不均一となることがある。そこで、屈折率の分布が問題とならないような条件について調べた。図6に示すように、単純化するために結像レンズ5の副走査断面(光軸を含み副走査方向に平行な面)を矩形とし、光軸方向の厚さをt,副走査方向の高さをhとする。座標はレンズ断面の中心を原点とし、光軸方向にz軸を,副走査方向にx軸をとる。
【0022】
断面形状が長方形の場合、冷却時の等温度曲線は長手方向に沿ってほぼ平行となるため屈折率は長手方向にはほぼ均一となるが、それと垂直な方向に分布を生じることになる。また、ビームの進行方向に沿った屈折率分布は結像特性に影響を及ぼさないが、それと垂直な方向に屈折率分布があると焦点位置がずれたり結像特性が悪化したりする。従って、厚さtは小さい程、また、高さhは大きい程屈折率分布の影響は小さくなる。
【0023】
ここで、高さhと厚さtとの比によって、レンズ内部の冷却速度がどのように変化するのかを数値計算により調べた。一様に初期温度T1 となっているレンズを温度T2 の環境で冷却する場合について考える。x軸上の各点の温度T3 がT1 とT2 との中間温度、即ち、
T3 =(T1 +T2 )/2
に達するまでの冷却時間を図7に示す。横軸はレンズ高さの半値h/2で規格化したx座標であり、2x/h=0はレンズの中心,2x/h=1はレンズ厚さ方向の端部である。縦軸はレンズ断面の中心点(原点)の冷却時間で規格化してある。同図はビームの進行方向に垂直な方向での冷却時間の分布を示すものである。h/tが大きくなる程レンズ中心付近で冷却時間が一定値1に漸近し、冷却速度分布が均一になる傾向を示している。
【0024】
さらに、射出成形により製造したプラスチックレンズについて実測した屈折率分布を図8に示す。h/tとしては0.53と1.88の2種類のものを用いた。横軸はh/2で規格化したx座標であり、縦軸は光軸での屈折率を基準とした屈折率の変動量である。h/t=0.53の場合には、光軸付近で屈折率が変動しており、実際にビームを通してみると屈折率分布型レンズのように屈折率分布が凹レンズとして作用し、焦点位置がずれ、結像特性も悪化した。一方、h/t=1.88の場合には、光軸付近では屈折率がほぼ一定であり、ビームを通しても結像特性の悪化や焦点位置のずれは見られなかった。以上のことから、
(1) h/tが大きくなる程レンズ中心付近の分布が均一になること、
(2) h/t=1.88の場合には良好な結果が得られたこと、
を考慮すると、h/t≧1.88であることが望ましい。さらに、測定誤差や特性のばらつきなどを考慮すると、図6に示す結像レンズ5の副走査断面において、副走査方向の高さhと光軸方向の高さtとの比を
h/t>2
となるように設定することが望ましい。このようにすれば結像特性の悪化や焦点位置のずれを実用的に問題のない程度に抑えることが可能である。
【0025】
一方、h/tの上限値であるが、これは製作上の能力・製造性・コストなどによって決まる。一般的には、h/t<50程度の範囲内に設定することが好ましい。
【0026】
ところで、プラスチックレンズでは、レンズの強度や成形性を高めるためにレンズ有効部の周囲にリブを設けることが一般的である。そこで、図9のようにリブを含めた高さhを用いて上式を満足させても、同様の効果が得られる。
【0027】
また、プラスチックレンズでは厚さの不均一も内部歪を生じる原因となるためなるべく厚さを均一にする必要がある。結像レンズをプラスチックで成形するときには、レンズの厚さtが主走査断面の有効部において大きく変化していると、成形時の流動状態が不均一になり内部歪を生じてしまう。そこで、本実施例においては、結像レンズの有効部において、光軸方向の厚さの最大値tmax と最小値tmin との比を
tmax /tmin <2
となるようにしている。このようにすれば、内部歪を実用的に問題のない程度に抑えることができる。なお、理想的にはtmax /tmin =1なので、1≦tmax /tmin <2の範囲内に収まるようにするのが望ましい。
【0028】
しかも、本実施例においては、結像レンズに入射するビームは、主走査断面において集束光である。結像レンズへの入射ビームが主走査断面で平行光や発散光となっていると、ビームを非走査面に結像させるために結像レンズは屈折力の大きな正レンズとしなければならず、結像レンズの主走査断面の厚さが極めて不均一となってしまう。そこで、結像レンズへの入射ビームを主走査断面で集束光として結像レンズの屈折力が小さくて済むようにし、レンズの厚さを極力均一になるようにしている。
【0029】
本実施例における結像レンズは光軸上での屈折力が、主走査方向と副走査方向とで異なるアナモフィックレンズである。そのため、諸収差の補正を主走査方向と副走査方向とで独立に行え、光学設計上の自由度が大きく、主走査方向,副走査方向ともに像面湾曲を小さく抑えることができ、等速走査性も良好にすることができる。本実施例の結像レンズでは、先述したように主走査方向のビームスポット形状の崩れが小さく結像特性が良好である。そのため、結像レンズを軸対象面により構成しても、良好な光学特性を有する光走査装置を実現することができる。しかしながら、特に結像レンズをアナモフィックレンズとすれば、主走査方向と副走査方向とで収差補正を独立に行うことができ、それぞれの方向で像面湾曲が一段と良好になる。像面湾曲が小さいと、回折限界近くまでビームを絞り込めるため、ビームスポット形状の崩れや結像特性の差は顕著に現れる。従って、アナモフィックレンズを用いて像面湾曲を小さくすることにより、良好な結像特性を得るという本発明の効果がさらに有効なものとなる。
【0030】
本発明では、先述したように副走査断面においてはビームは回転レンズ鏡の反射面に結像する。そして、副走査断面において偏向点と被走査面とが光学的共役関係にあるため、回転レンズ鏡の反射面に面倒れがあっても被走査面上におけるビームスポットの副走査方向の位置は変化せず、走査線の位置ずれは発生しない。
【0031】
さらに、本実施例における結像レンズの射出面は、副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化している。このようにすれば、結像レンズの有効部のいかなる位置でも、副走査断面に平行な断面の曲率を任意に設定できるため、副走査方向の像面湾曲を完全に補正することができる。像面湾曲が小さいと、先述したように、良好な結像特性が得られるという本発明の効果がさらに有効なものとなる。
【0032】
ところで、副走査方向の曲率が変化する面を射出面に限る必要はなく、入射面の副走査方向の曲率を変化させてもよい。つまり、副走査方向の像面湾曲を補正するためには一つの自由度さえ持っていればよく、入射面,射出面の少なくとも一方の面を副走査方向の曲率が変化するようにすればよい。そうすれば、他方の面の副走査方向の曲率は任意に設定できる。そこで本実施例においては、結像レンズの入射面の副走査断面を直線とし、副走査断面で見ると平凸レンズとしている。このように、結像レンズの2つの面のうち、片方の面を副走査断面で直線となるようにすれば、結像レンズの製造が容易になりコストも低減する。さらに、一つのレンズに光学曲面が2面存在すると、それらの面の光軸の相対的な位置精度が問題となり、2本の光軸を一致させることが厳しく要求されるが、副走査断面で平凸レンズとなるようにすれば、副走査断面ではそのような要求は生じない。
【0033】
先述したように、光走査装置の光学系に要求される主な特性は、等速走査性と像面の平坦性とであるが、さらに付け加えるならば、ビームスポット径の均一性が要求される。最近では走査密度が高く、解像度も高い光走査装置が求められているため、有効走査領域においてビームスポット径が一定であることが強く要求されるようになってきた。ビームスポット径を一定にするためには、光学系の光学倍率を一定にすればよい。
【0034】
ここで、特に副走査方向の光学倍率を一定にすることを考える。本実施例では、副走査断面で回転レンズ鏡の反射面近傍にビームが結像するため、反射面近傍の結像点と被走査面上の結像点との間の光学倍率を一定にすればよい。
【0035】
単純化して考えるため、図10に示すように、結像レンズ5を薄肉レンズとし、回転レンズ鏡は副走査方向に屈折力を持たないので省略する。ビームの偏向点Pから被走査面6までの距離をa,偏向点Pから結像レンズ5までの距離をb,結像レンズ5の主走査断面の有効部で光軸からの高さをyとする。結像レンズ5と光軸とが交わる点を基準とした、yの高さでの結像レンズ5の光軸方向のずれをΔz(y)とする。回転レンズ鏡の反射面とビームの偏向点Pとはほぼ一致するため偏向点Pを結像点と考える。光軸からの高さyの位置を透過するビームの副走査方向の光学倍率β(y)は
【数12】
である。ところで、本件発明者の実験によれば、ビーム径が±20%以上変動すると光走査装置としての解像度が不均一となり、レーザービームプリンタでの印字でも、特に細かい網点のようなパターンでは濃度むらを生じて印字品質が悪化する。そこで、任意の光軸高さyでの光学倍率β(y)を、光軸上の光学倍率β(0)を基準として、次式で規定する。
【数13】
この式を計算し、近似を施すと、次式のようになる。
【数14】
従って、結像レンズのレンズ面Si において、主走査断面の有効部でyの高さでのレンズ面の光軸方向の変位量をΔzi (y)とし、偏向点からレンズ面Si までの距離をbi とすると
【数15】
となるようにすれば、副走査方向の光学倍率が均一で解像度が均一な光走査装置が実現できる。また、このような光走査装置をレーザープリンタに利用すると、濃度むらがなく良好な印字品質が得られることになる。
【0036】
本実施例の代表的な設計例の光学諸元を表1、表2に示す。ただし、1走査の走査開始から走査終了までの回転レンズ鏡4の回転角を2ωとする。開口絞り7の絞り穴形状は長円形状であり、主走査方向,副走査方向の大きさをそれぞれpx ,py とする。半導体レーザ1の発光点をS1 ,コリメータレンズ2の入射面,射出面をそれぞれS2 ,S3 、シリンドリカルレンズ3の入射面,反射面をそれぞれS4 ,S5 、回転レンズ鏡4の入射面,反射面,射出面をそれぞれS6 ,S7 ,S8 、結像レンズ5の入射面,射出面をそれぞれS9 ,S10とする。開口絞り7はコリメータレンズ2の入射面S2 に一致する。各光学諸元の記号については、第i面Si の曲率半径をri 、第i面から次の面までの軸上間隔をdi とし、コリメータレンズ2,シリンドリカルレンズ3,結像レンズ5の屈折率をそれぞれn2 ,n4 ,n9 とする。n6 ,n7 はいずれも回転レンズ鏡4の屈折率である。また、アナモフィックなレンズ面では、副走査方向、主走査方向の曲率半径をそれぞれrix、riyとし、非球面の曲率半径については光軸上の値を示す。結像レンズの主走査断面形状は非球面状であり、
【数16】
で表す。ただし、座標はレンズ面が光軸と交わる点を原点とし、光軸方向にz軸,光軸に垂直で主走査方向にy軸をとっている。Ki ,Ai ,Bi ,Ci ,Di ,Ei は非球面係数である。また、結像レンズの射出面は、副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化しており、曲率半径Ri を
Ri =rix+Aixy2 +Bixy4 +Cixy6 +Dixy8 +Eixy10
で表す。ここでAix,Bix,Cix,Dix,Eixは係数である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
図11はこの実施例の光走査装置の主走査断面図、図12はこの実施例の光走査装置の収差図である。なお、この収差図においては、像面湾曲は破線が主走査方向,実線が副走査方向の収差を示している。走査直線性は結像レンズの通例では理想像高y=fθからの像高のずれを%で表すが、本実施例においては回転レンズ鏡4が回転するために理想像高がfθとならない。従って、等価な表示方法として光軸近傍の光線について回転レンズ鏡4の回転角に対する像高の変化率ζとして、理想像高Y=ζθからのずれを%で表示している。ωはビームスポットが被走査面上で走査中心から走査端まで走査する間の回転レンズ鏡4の回転角である。
【0040】
結像レンズ5に非球面を用いているため、わずか1枚の結像レンズで図12に示すように主走査方向の像面湾曲は±2.0mm以内と良好に補正されている。1〜2mm程度の振幅で振動している像面湾曲は、結像レンズ5の主走査断面形状の非球面係数を12次までの非球面係数しか用いていないことにより生じるものである。より高次の非球面係数を用いれば像面湾曲はさらに小さくなる。
【0041】
結像レンズ5の射出面は、副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズ5の有効部で主走査方向に沿って連続的に変化しているため、図12に示すように副走査方向の像面湾曲が±0.2mm以内と極めて良好に補正されている。
【0042】
結像レンズ5の主走査断面における曲率変化率ρ等に関する関係式
【数17】
は、図13のグラフに示すように被走査面での像高に対応して変動し、その絶対値は最大で1.1である。ただし、上記関係式は非球面S9 ,S10についての総和であり、各諸元の値は表3の通りである。
【表3】
【0043】
結像レンズ5の副走査断面は図9に示すように上下にリブを有する形状であり、厚さtは5.5mm,高さhは14mmである。従って、
h/t=2.8
となっており、焦点位置のずれはなく良好な結像特性が得られる。
【0044】
結像レンズ5の有効部における光軸方向の厚さの最大値tmax は5.5mm,最小値tmin は3.90mmであり、それらの比は
tmax /tmin =1.41
となり、厚さが均一となっているため、結像レンズ5をプラスチックで成形するときにスムーズで均一な流動がなされ、内部歪の発生は殆どない。
【0045】
結像レンズ5への入射ビームは集束光であり、その焦点は結像レンズ5の入射面から被走査面側へ213.86mmの距離に位置する。従って、結像レンズ5の主走査方向の屈折力は小さくて済み、そのために結像レンズ5の厚さを均一にすることが可能となっている。
【0046】
結像レンズ5のレンズ面の光軸方向への変位量
【数18】
は、図14のグラフに示すようにレンズ有効部内で変動し、その絶対値は最大で0.18であり、副走査方向のビームスポット直径は、図15のグラフに示すように±10%以内に抑えられ、解像度は均一となっている。
【0047】
次に、解像度の均一性をさらに良好にすることを考える。本実施例の結像レンズ5では、副走査断面に平行な断面の曲率が主走査方向に沿って連続的に変化している面は射出面のみである。ところが、結像レンズ5の両面ともをそのように曲率が変化する面とすれば、光学設計の自由度が副走査方向でさらに1自由度大きくなり、副走査方向のビームスポット径を完全に一定にすることができる。このことを図を参照して説明する。上記した設計例では、結像レンズ5は図11に示すように屈曲しており、副走査断面に平行な断面の主点もその形状にほぼ沿って屈曲しているため実用上には問題のない範囲ではあるが、結像レンズ5の副走査方向の倍率は多少変化している。しかしながら、副走査断面に平行な任意の断面で両面の曲率半径を任意に設定できれば、図16(a)〜(e)のようにペンディングにより主点Hの位置も任意に設定することができる。そこで、副走査断面に平行な任意の断面の主点を連ねた線が光軸に対して垂直な直線となるように副走査方向の曲率半径を設定すれば、結像レンズ5の副走査方向の光学倍率を有効走査領域に亘って完全に一定にすることができ、ビームスポット径も一定となる。
【0048】
実施例2
図17は本発明の第2の実施例の光走査装置の構成を示す斜視図である。半導体レーザ1より射出したビームが開口絞り7により絞り込まれ、コリメータレンズ2によって平行ビームに変換され、シリンドリカルレンズ3により副走査方向にのみ集束作用を受ける。さらに、ビームは偏向手段としての回転多面鏡8の反射面の近傍で副走査方向でのみ結像し、反射面で反射される。ビームは回転多面鏡8の回転に伴って偏向される。この偏向されたビームは結像レンズ5で集束作用を受け、被走査面6上にビームスポットを形成する。
【0049】
本実施例の代表的な設計例の光学諸元を表4,表5に示す。ただし、1走査の走査開始から走査終了までの回転多面鏡8の回転角を2ωとする。開口絞り7の絞り穴の形状は長円形状であり、走査方向,副走査方向の大きさをそれぞれpx ,py とする。半導体レーザ1の発光点をS1 ,コリメータレンズ2の入射面,射出面をそれぞれS2 ,S3 ,シリンドリカルレンズ3の入射面,射出面をそれぞれS4 ,S5 ,回転多面鏡8の反射面をS6 結像レンズ5の入射面,射出面をそれぞれS7 ,S8 とする。
【0050】
開口絞り7はコリメータレンズ2の入射面S2 に一致する。各光学諸元の記号については、第i面Si の曲率半径ri ,第i面から次の面までの軸上間隔をdi とし、コリメータレンズ2,シリンドリカルレンズ3,結像レンズ5の屈折率をそれぞれn2 ,n4 ,n7 とする。また、アナモフィックなレンズ面では、副走査方向,主走査方向の曲率半径をそれぞれrix,riyとし、非球面の曲率半径については、光軸上の値を示す。結像レンズ5の主走査断面の形状は、入射面,射出面ともに非球面形状であり、また、射出面では副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズ5の有効部で主走査方向に沿って連続的に変化している。なお、結像レンズ5の面形状の標記については前記実施例1と同様である。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
図18はこの実施例の光走査装置の主走査断面図、図19はこの収差曲線図である。結像レンズ5に非球面を用いているため、わずか1枚の結像レンズ5で図19に示すように主走査方向の像面湾曲は±2.1mm以内と良好に補正されている。結像レンズ5の射出面は副走査断面に平行な断面の曲率が結像レンズ5の有効部で主走査方向に沿って連続的に変化しているため、図19に示すように副走査方向の像面湾曲が±0.1mm以内と極めて良好に補正されている。
【0054】
結像レンズ5の主走査断面における曲率変化率ρ等に関する関係式
【数19】
は、図20のグラフに示すように被走査面での像高に対応して変動し、その絶対値は最大0.12である。ただし、上記関係式は非球面S7 ,S8 についての総和であり、各諸元の値は表6の通りである。
【0055】
【表6】
【0056】
結像レンズ5のレンズ面の光軸方向への変位量
【数20】
は、図21のグラフに示すようにレンズ有効部内で変動し、その絶対値は最大でも0.2を越えず、副走査方向のビームスポット直径の変動は図22のグラフに示すように±2%以内に抑えられ、解像度は均一となっている。
【0057】
この発明の光走査装置は、レーザプリンタのみならずデジタル複写機,フアクシミリ,レーザ走査ディスプレイ等の画像形成装置等の画像入力装置あるいは光学マーク読取装置,表面検査用レーザ装置等にも適用することができ、上述したような優れた効果が得られる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の光走査装置によれば次のような種々の優れた効果を有する。
請求項1記載の発明によれば、ビームスポット形状の崩れを実用上問題のない範囲内に抑えることができる。
請求項2記載の発明によれば、ビームスポット径を一定にすることができる。この結果、光走査装置としての解像度を均一にすることができる。
請求項3記載の発明によれば、ビームの進行方向と垂直な方向の屈折率分布を抑制することができる。これにより、焦点位置がずれたり結像特性が悪化したりすることを防ぐことができる。
請求項4記載の発明によれば、レンズ成形時の流動状態の不均一性を防止し、内部歪を生じないような特性の優れたレンズを製造することができる。
請求項5記載の発明によれば、結像レンズの屈折力が小さくて済むようにすることができる。この結果、レンズの厚さを均一に近づけることができ、製造性・コストの点で極めて有効である。
請求項6記載の発明によれば、諸収差の補正を主走査方向と副走査方向とで独立に行うことができ、光学設計上の自由度が大きくなる。このことにより、主走査方向,副走査方向ともに像面湾曲を小さく抑えることができ、等速走査性も良好にすることができる。
請求項7記載の発明によれば、回転多面鏡あるいは回転レンズ鏡の反射面に面倒れがあっても、被走査面上におけるビームスポットの副走査方向の位置は変化せず、走査線の位置ずれを防止することができる。
請求項8記載の発明によれば、結像レンズの有効部のいかなる位置でも副走査断面に平行な断面曲率を任意に設定することができる。このため、副走査方向の像面湾曲を完全に補正することができる。
請求項9記載の発明によれば、結像レンズの製造が容易になりコストを低減することができる。さらに、レンズ両面の光軸の相対的な位置精度や2本の光軸を一致させることが要求されないので、組立性,レンズ精度の点で非常に有効である。
請求項10記載の発明によれば、光学設計の自由度が副走査方向でさらに自由度を大きくすることができる。この結果、副走査方向のビームスポット径を完全に一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の光走査装置の斜視図、
【図2】実施例1において、回転レンズ鏡の回転に伴いビームが偏向される状態を示す説明図、
【図3】(a),(b)は、非球面レンズを透過するビームの光路図、
【図4】(a),(b),(c)は、ビームスポットの断面強度分布を示す波形図、
【図5】2次ピークの強度変化を示すグラフ、
【図6】結像レンズの副走査断面図、
【図7】結像レンズの冷却速度を示すグラフ、
【図8】プラスチックレンズの屈折率の分布図、
【図9】リブ付きの結像レンズの副走査断面図、
【図10】実施例1の光学系の概念図、
【図11】実施例1の光学系の構成を示す断面図、
【図12】実施例1の収差曲線図、
【図13】実施例1の結像レンズの曲率変化等の関係式の値を示すグラフ、
【図14】実施例1の結像レンズのレンズ面の光軸方向への変位量を示すグラフ、
【図15】実施例1のビームスポット直径を示すグラフ、
【図16】(a)〜(e)は、結像レンズのベンディング状態を示す説明図、
【図17】実施例2の光走査装置の構成を示す斜視図、
【図18】実施例2の光学系の構成を示す断面図、
【図19】実施例2の光学系の収差曲線図、
【図20】実施例2の結像レンズの曲率変化率等の関係式の値を示すグラフ、
【図21】実施例2の結像レンズのレンズ面の光軸方向への変位量を示すグラフ、
【図22】実施例2のビームスポット直径を示すグラフである。
【符号の説明】
1 半導体レーザ
2 コリメータレンズ
3 シリンドリカルレンズ
4 回転レンズ鏡
5 結像レンズ
6 被走査面
Claims (10)
- 光ビームを発生する光源と、前記光ビームを偏向し等角速度で回転する偏向手段と、前記偏向手段により偏向された光ビームを結像し、被走査面上にビームスポットを形成させるための結像レンズとを有し、前記結像レンズが主走査断面で非球面を有する光走査装置において、
前記非球面に関する諸元e,n,w,ρが次の条件式を満足することを特徴とする光走査装置。
ei :レンズ面Si と被走査面との間隔
g :像高0におけるビームスポットの主走査半径
ni :レンズ面Si を形成する結像レンズの屈折率
Si :第iレンズ面
ui :レンズ面Si の入射面、射出面の区別を示す係数
ui =1(入射面)
ui =−1(射出面)
vi (ys ):像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点の光軸からの高
さ
wi :レンズ面Si における、レンズ面Si の光軸に沿って透過する光ビームの主走査断面半径
y :主走査方向への光軸からの高さを示す座標
ys :被走査面における像高
ρi (ys ):像高ys の主光線がレンズ面Si を透過する点における曲率変
化率であり、曲率ci のyによる微分値 - 前記結像レンズの副走査断面において、光軸方向の厚さt,副走査方向の高さをhとすると、
h/t>2
の条件式を満足することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。 - 前記結像レンズの主走査断面の有効部において、光軸方向の厚さの最大値tmax ,最小値をtmin とすると、
tmax /tmin <2
の条件式を満足することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。 - 前記結像レンズに入射する光ビームが、主走査断面において集束光であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
- 前記結像レンズは、主走査方向と副走査方向とで屈折力が異なることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
- 副走査断面において、前記偏向点と前記被走査面とが光学的に共役関係にあることを特徴とする請求項6記載の光走査装置。
- 前記結像レンズの少なくとも1面において、副走査断面に平行な断面の曲率が、前記結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化していることを特徴とする請求項6記載の光走査装置。
- 前記結像レンズの少なくとも1面において、副走査断面が直線であることを特徴とする請求項8記載の光走査装置。
- 前記結像レンズの両面において、副走査断面に平行な断面の曲率が、前記結像レンズの有効部で主走査方向に沿って連続的に変化していることを特徴とする請求項8記載の光走査装置。
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