JP3542858B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波を利用して被検体内の診断部位について断層像を計測し表示する超音波診断装置において、超音波の波長に比べて十分小さい生体組織の反射体群によりさまざまな位相で発生する散乱波が干渉してランダムに小輝点群が見えるスペックルノイズの判定除去回路を備えた超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、超音波診断装置で得られる超音波画像には、スペックルノイズと呼ばれる周期が不規則な雑音が混入している。このスペックルノイズは、超音波の波長に比べて十分小さい生体組織の反射体群によりさまざまな位相で発生する散乱波が干渉してランダムに小輝点群が出現すると考えられている。そして、このスペックルノイズは、Bモード像の全域に本来の反射エコー信号に重畳して出現することが知られている。すなわち、例えば心臓の超音波画像において、心壁等の構造物の反射エコー信号にスペックルノイズが重なって本来の信号を乱し画像のチラツキ等の画質劣化を引き起こすと共に、心腔等の反射体が無い部位等にもスペックルノイズが出現して画質を劣化させるものであった。また、一般に、スペックルノイズは、生体内に分布する微小散乱体の配置により形状が大きく変化するとされており、生体組織が動くと上記スペックルノイズのパターンも変わることが知られている。しかし、そのパターンの変化の度合、方向、輝度などの変わり方は一様ではない。このことから、生体が動いている場合は、スペックルノイズは不規則な変化をすることが確認されている。
【0003】
このような事情に対処して、従来の超音波診断装置においては、図10に示すようなフレーム相関処理回路により経時的に重みを付けた加算平均化処理を行い、動画像のスペックルノイズを低減していた。このフレーム相関処理回路は、従来一般に「フレーム相関」又は「scc(スキャンコリレーション)走査相関」と呼ばれる手法でスペックルノイズを低減処理するもので、図10に示すように、例えば重み付け加算器から成る演算処理回路1と、Bモード像のデータを記録する機能を有するフレームメモリ2と、このフレームメモリ2の入力端子Dに入力される超音波画像のデータに同期して上記フレームメモリ2の番地を順次発生させる制御回路3とから構成されている。
【0004】
上記フレーム相関処理回路において、フレームメモリ2は、制御回路3により選択された番地に記録されていたデータ、つまり1フレーム前のデータを出力端子Eから出力する。この出力端子Eからの出力データは、前記演算処理回路1のB入力に入力する。次に、演算処理回路1は、図示外の超音波本体部から送出されA入力に入力してくる現時点でのデータと、上記B入力に入力する1フレーム前のデータとを相関処理し、その結果を出力端子Cより出力する。すると、この出力端子Cからの出力データは、新しい時相のデータとしてフレームメモリ2の入力端子Dへ送られる。次に、制御回路3は、上記フレームメモリ2に新しい時相のデータが入力された後に、これを前回と同一番地に記録するよう指示を出す。
【0005】
ここで、上記演算処理回路1で行われている相関処理について説明する。いま、演算処理回路1のA入力に入力される数値をaで表し、B入力に入力される数値をbで表し、出力端子Cに出現する演算結果をcとすると、
a・X+b・Y=c …(1)
の関係があるX,Yの相関係数により、重み付け加算平均の処理が行われる場合が多い。ここでは、X<1,Y<1であり、
X+Y=1 …(2)
の関係がある。一般には、被検体の診断部位や雑音の大小により上記相関係数X,Yを選定して使用している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の超音波診断装置におけるフレーム相関処理回路においては、図10に示す演算処理回路1のB入力に入力される画像データは1フレーム前の時相で既に演算処理されたものであるので、上記演算処理回路1の出力端子Cからの演算出力は、経時的に旧フレームの影響が長時間残留してしまうものであった。また、相関をとるフレームの画像データ、例えば輝度レベル等の高低により相関処理後の依存度が大幅に変化してしまうことがあった。すなわち、輝度の高いフレームの画像データは長く影響が残るが、輝度の低いフレームの画像データは非常に短時間で無関係となってしまうものであった。これでは、フレーム間で相関処理する時間間隔が不明となり、フレームの指定が不可能となる。従って、上記相関処理の効果は完全には推定できず、不確定要素となり、スペックルノイズ除去による画質の安定性は不十分であった。さらに、図10に示すフレーム相関処理回路においては、元の超音波画像の輝度レベル等のデータが演算処理回路1の相関処理により順次変化して行き、輝度に応じたフィルタ処理等が実行できないことがあった。そのため、輝度情報により処理のアルゴリズムを変更することができず、前述のように単純な重み付け加算程度しか行えなかった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、超音波画像に混入しているスペックルノイズを有効に判定すると共にこのスペックルノイズのみを除去して画質を向上することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による超音波診断装置は、被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子の駆動による超音波の送受信により得た反射エコー信号を処理し、この処理された反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内の超音波画像のデータを時系列に複数フレームに記録する超音波本体部と、この記録された超音波画像のデータを読み出し超音波ビームの走査線毎に書き込んで画像データを形成するディジタルスキャンコンバータ部と、この形成された画像データを画像として表示する画像表示部と、を有する超音波診断装置において、上記超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部から出力される時系列の複数フレームの画像データを順次書き込む画像メモリと、この画像メモリから読み出した少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均輝度(P)を求める平均輝度算出回路と、上記少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均分散(Q)を求める平均分散算出回路と、上記それぞれの算出回路で求めた算出結果を入力して平均輝度と平均分散との比率(P/Q)を演算しその比率が所定値より小さい場合を対象画像データがスペックルノイズであると判定するスペックルノイズ判定演算回路と、この判定結果を入力して前記超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部からの画像データについて上記スペックルノイズと判定されたデータを除去するスペックルノイズ除去処理回路と、上記各構成要素の動作を制御する制御回路とを備えたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体内の診断部位について断層像を計測し表示するもので、図1に示すように、探触子10と、超音波本体部11と、ディジタルスキャンコンバータ部(以下「DSC部」と略称する)12と、画像表示部13とを有し、さらにスペックルノイズ判定除去回路14を備えて成る。
【0012】
上記探触子10は、被検体内に超音波を送受信するもので、図示省略したがその内部には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信して電気信号に変換する超音波振動子を有している。超音波本体部11は、上記探触子10を駆動して超音波を送受信させると共に得られた超音波画像のデータを記録するもので、図示省略したがその内部には、上記探触子10を駆動して超音波を発生させると共に受信した反射エコー信号を処理する超音波送受信部と、この超音波送受信部からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の超音波画像のデータを時系列に複数フレームに記録するメモリ部とを有している。また、DSC部12は、上記メモリ部からのディジタル信号を超音波ビームの走査線毎に書き込んで画像データを形成するもので、その内部にはディジタルの超音波走査線メモリ群と、そのメモリ制御器とを有している。さらに、画像表示部13は、上記DSC部12から出力される画像データを入力してアナログ変換し画像として表示するもので、その内部にはD/A変換器と、テレビモニタとを有している。
【0013】
ここで、本発明においては、上記超音波本体部11とDSC部12との間にスペックルノイズ判定除去回路14が設けられている。このスペックルノイズ判定除去回路14は、対象画像データについてスペックルノイズであるか否かを判定すると共にスペックルノイズと判定したらそのデータを除去するもので、その内部構成は図2に示すように、データ分配器15と、複数個の画像メモリ16a〜16eと、データ選別器17と、演算処理回路18と、制御回路19とから成る。
【0014】
上記データ分配器15は、前記超音波本体部11から出力された画像データを入力し、制御回路19の制御により複数個の画像メモリ16a〜16eに対して1フレーム毎に切り換えて上記画像データを送出するものである。複数個の画像メモリ16a〜16eは、上記データ分配器15で分配された連続する複数フレームの画像データを1フレーム毎に順次入力して書き込むもので、図2では例えば5個並列に設けられている。なお、この画像メモリは、5個に限られず、処理の目的及び精度等により他の任意の個数としてもよい。データ選別器17は、上記複数個の画像メモリ16a〜16eから読み出された画像データを入力し、制御回路19の制御により経時的に古いものから新しいものへと正しく並び換えて画像データを送出するものである。演算処理回路18は、上記データ選別器17で正しく経時的に配列された複数フレームの画像データを取り込み、それらの画像データを統計処理することにより対象画像データがスペックルノイズであるか否か判定すると共にそのスペックルノイズを除去するもので、その演算処理後の画像データを前記DSC部12へ送出するようになっている。そして、制御回路19は、上記の各構成要素の動作を制御するものである。
【0015】
このような構成のスペックルノイズ判定除去回路14において、複数個の画像メモリ16a〜16eに記録される画像データは周期的に更新され、制御回路19は指定した画像メモリに常に最新のデータが記録されるように制御している。このとき、上記複数個の画像メモリ16a〜16eはそのアドレスが総て共通とされ、記録時には同一番地のデータが出力に現れる方式とされている。すなわち、画像メモリ16a〜16eへのデータ記録時には新旧フレームの同一番地のデータが同時に出力され、データ選別器17へ入力する。しかし、このデータは上記複数個の画像メモリ16a〜16eのうちどれが最新であるかは、制御回路19により指示を受けなければわからない。そこで、上記データ選別器17は、制御回路19から指示を受けて古いデータから新しいデータへと経時的に再配列し、この再配列後のデータを演算処理回路18へ送る。なお、上記データ選別器17は、データ長を例えば6ビットとすると、6ビット×5個で30ビットのデータを選別する能力を要する。従って、図2の実施例では、5×5のマトリックススイッチが6個あればデータ選別を実現することができる。そして、上記演算処理回路18は、データ選別器17から送られた再配列後のデータを入力し、正しく経時的に配列された複数フレームの画像データを比較して統計処理する。この場合は、従来手法と異なり、設定したフレームの枚数、すなわち心時相等の範囲のデータが正しく相関等の演算処理に用いられ、対象画像データがスペックルノイズであるか否か判定すると共にそのスペックルノイズを除去することができる。なお、図2において、データ選別器17は必ずしも設けなくてもよい。
【0016】
図3は上記演算処理回路18の具体的な内部構成例を図示したスペックルノイズ判定除去回路14′のブロック図である。この実施例では、図2に示すデータ分配器15の機能を制御回路19で実行させるものとし、該データ分配器15は省略してある。そして、上記演算処理回路18は、平均輝度算出回路20と、複数個の個別分散回路21a〜21eと、平均分散算出回路22と、スペックルノイズ判定演算回路23と、スペックルノイズ除去処理回路24とから成る。
【0017】
上記平均輝度算出回路20は、複数個たとえば5個の画像メモリ16a〜16eから読み出し経時的に配列された少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均輝度P(後述の式(3)参照)を求めるものである。個別分散回路21a〜21eは、上記平均輝度算出回路20で求めた平均輝度Pと、上記画像メモリ16a〜16eの各々から読み出した各画像データとを入力して、それぞれ両者の差の絶対値を算出して個別分散値を求めるもので、画像メモリ16a〜16eの個数に合わせて例えば5個設けられている。平均分散算出回路22は、上記個別分散回路21a〜21eからそれぞれ出力された個別分散値を入力して全体の平均値を算出することにより経時的に配列された少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均分散Q(後述の式(3)参照)を求めるものである。また、スペックルノイズ判定演算回路23は、上記平均輝度算出回路20と平均分散算出回路22とで、求めた算出結果を入力して平均輝度Pと平均分散Qとの比率S(後述の式(3)参照)を演算しその比率が所定値より小さい場合を対象画像データがスペックルノイズであると判定するものである。さらに、スペックルノイズ除去処理回路24は、上記スペックルノイズ判定演算回路23の判定結果Rを入力して前記超音波本体部11から入力する現時点の画像データについてスペックルノイズを除去するものである。そして、このスペックルノイズ除去処理回路24からの出力データは、前記DSC部12へ送られるようになっている。
【0018】
ここで、上述の平均輝度とは、経時的に配列された複数フレームの画像データについて同一番地のデータの輝度を平均したものである。また、平均分散とは、上記求められた平均輝度と複数フレームの画像データとを用いて、それぞれ両者の差の絶対値を算出して求めた個別分散値の全体の平均値を算出したものである。
【0019】
次に、このように構成された演算処理回路18の動作について、図4に示すタイミング線図を参照して説明する。図4(a)は、図3に示す例えば5個の画像メモリ16a〜16eに対するフレーム更新信号のタイミングを示しており、フレームの書換開始時に出力される。図4(b)は、上記各画像メモリ16a〜16eのフレームデータであり、例えば8ビットのデータが5フレーム使用されており、図中でf1,f2,f3,…はフレーム番号を示している。図4(c)は、第一の画像メモリ16aに入力する書き込み許可信号W1を示している。図4(d)は第二の画像メモリ16bに入力する書き込み許可信号W2を示し、図4(e)は第三の画像メモリ16cに入力する書き込み許可信号W3を示し、…、図4(g)は第五の画像メモリ16eに入力する書き込み許可信号W5を示している。これらの書き込み許可信号W1〜W5は、図3に示す制御回路19から各画像メモリ16a〜16eに送出されるメモリ制御信号S1に含まれる。この図4(a)〜(g)からわかるように、各画像メモリ16a〜16eは、1フレーム毎に経時的にデータが書き込まれて行く。この場合、画像メモリ16a〜16eは例えば5フレームとされており、5フレーム毎に各画像メモリ16a〜16eが書き込み許可される。
【0020】
次に、上記各画像メモリ16a〜16eから読み出されるデータは以下のようになる。まず、図4(h)に示すように、第一の画像メモリ16aにフレーム番号f1のデータが書き込まれてから5フレームの間は、そのデータf1が出力されつづける。同様に、図4(i)に示すように、第二の画像メモリ16bにはフレーム番号f2のデータが書き込まれてから5フレームの間はそのデータf2が出力されつづけ、図4(j)に示すように、第三の画像メモリ16cにはフレーム番号f3のデータが書き込まれてから5フレームの間はそのデータf3が出力されつづけ、…、図4(l)に示すように、第五の画像メモリ16eにはフレーム番号f5のデータが書き込まれてから5フレームの間はそのデータf5が出力されつづける。なお、図4(m)は、各画像メモリ16a〜16eのアドレス信号を示しており、各フレームとも共通であり、符号Adで示すデータが毎フレーム繰り返されている。このアドレス信号Adも、図3に示すメモリ制御信号S1に含まれている。
【0021】
次に、図4(b)のフレームデータがf5になった時間に注目すると、図4(h)〜(l)に示す各画像メモリ16a〜16eの出力としてフレームデータf1〜f5が揃っていることがわかる。そして、これらのデータf1〜f5が図3に示す画像メモリ16a〜16eから同時に平均輝度算出回路20へ送出される。このとき、制御回路19からは平均輝度算出回路制御信号S2が入力して、内部の加算平均回路のタイミングを制御する。これにより、上記平均輝度算出回路20は、画像メモリ16a〜16eからのデータが入力される毎に平均輝度Pを算出する。次に、個別分散回路21a〜21eは、同様に上記画像メモリ16a〜16eからデータが出力される毎に、この画像メモリ16a〜16eからのデータと上記平均輝度算出回路20からの平均輝度Pとを入力して両者の差を計算し、その絶対値を求める。その後、平均分散算出回路22は、上記個別分散回路21a〜21eからの個別分散値が入力する毎にそれらを加算平均して、平均分散Qを算出する。このとき、制御回路19からは個別分散回路制御信号S3及び平均分散算出回路制御信号S4がそれぞれ該当する回路に出力され、それぞれの内部回路のタイミングを制御する。
【0022】
次に、図3において、スペックルノイズ判定演算回路23は、上記平均輝度算出回路20からの平均輝度Pと平均分散算出回路22からの平均分散Qとを入力する毎に、これらの比率を後述の式(3)によって演算し(S=P/Q)、この判定関数Sが所定値より小さい場合をスペックルノイズであると判定する。その後、スペックルノイズ除去処理回路24は、上記スペックルノイズ判定演算回路23からの判定結果Rを入力して超音波本体部11から入力する現時点の画像データについてスペックルノイズ除去の画像処理を行う。このとき、制御回路19からはスペックルノイズ判定演算回路制御信号S5及びスペックルノイズ除去処理回路制御信号S6がそれぞれ該当する回路に出力され、それぞれの内部回路のタイミングを制御する。なお、図3及び図4においては、画像メモリを5個とし5フレームのデータ処理としたが、これに限らず、例えば8個の画像メモリとし8フレームのデータ処理としてもよい。
【0023】
次に、このように構成された超音波診断装置を使用して実施するスペックルノイズ判定方法について、図5〜図8を参照して説明する。このスペックルノイズ判定方法は、前述の超音波診断装置を使用して、図5に示すように記録された時系列の複数フレームf1,f2,…,fnの超音波画像のデータを並列に読み出し、これらの画像データをf1,f2,…,fnのように正しく経時的に配列した後、少なくとも3時相分を含む複数フレームの超音波画像のデータ(f1〜fn)を統計処理することにより、対象画像データがスペックルノイズであるか否かを判定するものである。
【0024】
この場合、図6に示す例えば心臓の断層像5において、心壁6の内部の心腔内に出現するスペックルノイズ7は、上記心壁6などの組織よりも輝度が低い。また、上記スペックルノイズ7の輝度レベルの変化は不規則である。これを横軸を時間(フレーム番号)とし縦軸を輝度として時間変化に対する輝度変化の状況をグラフで示すと、図7のようになる。すなわち、心壁6などの組織の運動等においてはカーブC1に示すように輝度が高くそろっているが、スペックルノイズ7においてはカーブC2に示すように輝度が低くバラツイている。なお、図6において、符号8は生体組織上に出現するスペックルノイズを示している。図7のグラフからわかるように、時系列的に並んだ複数枚(複数フレーム)の画像データをもとに統計的手法を用いてスペックルノイズを判定することができる。
【0025】
ここで、前記複数の画像データの統計処理は、図5において正しく経時的に配列された複数フレームf1,f2,…,fnの画像データについて同一番地(x,y)のデータの平均輝度と平均分散とを求め、この平均輝度と平均分散との比率を演算するものである。すなわち、図5に示すように、ある決められた枚数のフレームメモリの同一番地(x,y)、つまり断層像5の視野の同じ位置の反射エコー信号を輝度変調した情報量からその平均輝度及び平均分散を算出し、これらを利用して演算する。いま、nフレームの同一番地(x,y)のデータについての平均輝度をPとし、平均分散をQとすると、スペックルノイズの判定関数Sは、
S=P/Q …(3)
で与えられる。そして、この判定関数Sが所定値より大きいか否かでスペックルノイズであるかどうかが判定可能となる。すなわち、Sが大きい場合は固定部組織などのデータであり、Sが小さい場合はスペックルノイズであると判定する。換言すると、平均輝度Pが小さくて平均分散Qが大きい場合は、Sの値が小さくスペックルノイズと判定できる。この場合、平均分散Qが大きいということは、図7のカーブC2に示すようにデータが不規則な変化をしていることを意味する。なお、式(3)の判定関数Sに対する所定値は、対象物により自由に選択して用いればよい。
【0026】
また、図7に示す時間変化に対する輝度変化の状況を示すグラフにおいて、カーブC1に示す高輝度を保っていた生体内の組織からの輝度データが特定フレームのみ低い場合は、データの欠落であると判定する。さらに、図7において、カーブC2に示すスペックルノイズの輝度レベルを保っていた輝度データが突然に特定フレームのみ上昇した場合は、その他のノイズであると判定する。以上のことを基準として、複数フレームのデータを比較してスペックルノイズであるか否かの判定を行うことができる。
【0027】
次に、これらの判定基準により(a)スペックルノイズ、(b)データの欠落、(c)その他のノイズの判定を、複数フレームのデータを図8に示すようにグラフの形状で分類して行う場合について説明する。この図8は、例えば5個のフレームf1〜f5の輝度データを用い、(a),(b),(c)図はスペックルノイズの判定を目的とした各フレームf1〜f5の同一番地(x,y)のデータを経時的に示したものである。初めに、図8(a)は、5個のデータf1〜f5が総て低い輝度レベルの範囲に分布している場合を示している。また、それぞれの輝度値はランダムで不規則である。この(a)に示すグラフのパターンは、図6に示すように、心壁6の内部のように反射対象物の存在しない心腔内などに発生しているスペックルノイズ7を特徴付けると判定できる。次に、図8(b)は、特定のフレーム、例えば第3フレームf3のみがスペックルノイズのデータである場合を示す。この(b)の場合は、f3の前後のフレームのデータの大きさからして 、電源回路等のゆらぎなどに起因するいわゆる黒抜けノイズと判定される。次に、図8(c)は、特定フレーム、例えば第3フレームf3のみが高輝度で他のフレームはスペックルノイズの輝度レベルである場合を示す。この(c)の場合は、上記第3フレームf3のデータの大きさからして、電気回路や外乱ノイズによるペッパーノイズと判定される。なお、図8に示す(a),(b),(c)の経時的なデータによるグラフ形状は、実験的に求められるものである。また、図8は超音波画像の視野のある1点に注目したグラフであるが、実際には得られた超音波画像の視野全体について処理を行う。
【0028】
図9は前述の超音波診断装置におけるスペックルノイズ判定除去回路14の他の設置例を示す全体構成のブロック図である。この設置例は、DSC部12と画像表示部13との間にスペックルノイズ判定除去回路14を設けたものである。図1の設置例では、超音波本体部11とDSC部12との間にスペックルノイズ判定除去回路14を設け、上記超音波本体部11より得たデータを超音波信号の送受信タイミングに同期して演算処理していたのに対し、図9の設置例では、DSC部12から出力されるフレーム画として完成されたデータ、すなわちテレビモニタなどに表示するため走査変換した画像データを画像表示部13の表示のタイミングに同期して演算処理するものである。この場合は、図2に示すスペックルノイズ判定除去回路14の内部構成において、複数個の画像メモリ16a〜16eへの書き込み、読み出しのタイミングが走査変換後のタイミング、すなわち画像表示部13のテレビモニタなどへの表示タイミングに従っている。また、上記画像表示部13の表示用のフレーム画として上記複数個の画像メモリ16a〜16eの画像データを使用している。
【0029】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部から出力される時系列の複数フレームの画像データを画像メモリに順次書き込み、この画像メモリから読み出した少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて平均輝度算出回路で同一番地のデータの平均輝度(P)を求め、上記少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて平均分散算出回路で同一番地のデータの平均分散(Q)を求め、上記それぞれの算出回路で求めた算出結果をスペックルノイズ判定演算回路で入力して平均輝度と平均分散との比率(P/Q)を演算しその比率が所定値より小さい場合を対象画像データがスペックルノイズであると判定し、この判定結果をスペックルノイズ除去処理回路で入力して前記超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部からの画像データについて上記スペックルノイズと判定されたデータを除去することができる。これにより、超音波画像に混入しているスペックルノイズのみを除去して画像表示することができる。そして、このスペックルノイズの除去により、超音波画像の画質を向上することができると共に画質の安定性を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】上記超音波診断装置に備えられたスペックルノイズ判定除去回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】上記スペックルノイズ判定除去回路における演算処理回路の具体的な内部構成例を示すブロック図である。
【図4】上記演算処理回路の動作を説明するためのタイミング線図である。
【図5】上記超音波診断装置を使用して実施するスペックルノイズ判定方法の原理を示す説明図である。
【図6】被検体内の診断部位について収集した超音波断層像におけるスペックルノイズの分布状況を示す説明図である。
【図7】収集した超音波画像の時間変化に対する輝度変化の状況を示すグラフである。
【図8】スペックルノイズであるか否かの判定を複数フレームのデータをグラフの形状で分類して行う場合を説明するグラフである。
【図9】本発明の超音波診断装置におけるスペックルノイズ判定除去回路の他の設置例を示す全体構成のブロック図である。
【図10】従来の超音波診断装置においてスペックルノイズを除去するためのフレーム相関処理回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
10…探触子
11…超音波本体部
12…DSC部
13…画像表示部
14,14′…スペックルノイズ判定除去回路
15…データ分配器
16a〜16e…画像メモリ
17…データ選別器
18…演算処理回路
19…制御回路
20…平均輝度算出回路
21a〜21e…個別分散回路
22…平均分散算出回路
23…スペックルノイズ判定演算回路
24…スペックルノイズ除去処理回路
Claims (1)
- 被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子の駆動による超音波の送受信により得た反射エコー信号を処理し、この処理された反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内の超音波画像のデータを時系列に複数フレームに記録する超音波本体部と、この記録された超音波画像のデータを読み出し超音波ビームの走査線毎に書き込んで画像データを形成するディジタルスキャンコンバータ部と、この形成された画像データを画像として表示する画像表示部と、を有する超音波診断装置において、
上記超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部から出力される時系列の複数フレームの画像データを順次書き込む画像メモリと、この画像メモリから読み出した少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均輝度(P)を求める平均輝度算出回路と、上記少なくとも3時相分を含む複数フレームの画像データについて同一番地のデータの平均分散(Q)を求める平均分散算出回路と、上記それぞれの算出回路で求めた算出結果を入力して平均輝度と平均分散との比率(P/Q)を演算しその比率が所定値より小さい場合を対象画像データがスペックルノイズであると判定するスペックルノイズ判定演算回路と、この判定結果を入力して前記超音波本体部又はディジタルスキャンコンバータ部からの画像データについて上記スペックルノイズと判定されたデータを除去するスペックルノイズ除去処理回路と、上記各構成要素の動作を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
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