JP3542207B2 - アルミニウム含有金属材料表面処理方法 - Google Patents
アルミニウム含有金属材料表面処理方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム含有金属材料の表面を塗装する前に、この表面を低コストで且つ安定に洗浄し、かつ化成処理を施して、この金属材料表面に優れた耐食性と塗料密着性を付与する新規なアルミニウム含有金属材料表面処理方法に関するものである。本発明方法が特に効果的に適用される分野はアルミニウム含有金属DI缶の表面処理である。すなわち、アルミニウム含有金属板に絞りしごき加工(Drawing & Ironing)を施すことにより形成されたDI缶に塗装・印刷を施す前に、アルカリ性水性洗浄液により、当該缶上に残存する油分や摩耗粉を、低コストで且つ安定に洗浄除去し、その後、化成処理液により、洗浄された缶の表面に優れた耐食性と塗料密着性を付与し、且つ、缶のコンベヤー移送の円滑化に必要なすべり性(以下単にすべり性と記す)を当該缶に付与するために、本発明の表面処理方法は特に有効なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アルミニウム含有金属材料用洗浄剤として酸系、およびアルカリ系のものが考案され実用化されている。しかしながら、前述のアルミニウムDI缶に対して現在、商業的に使用されている洗浄剤は、そのほとんどが酸系の洗浄剤である。このような酸系の洗浄剤は、フッ素を含有している硫酸−フッ化水素酸系の洗浄剤と、硫酸−鉄系の洗浄剤とに大別される。商業的に使用されているこれらの洗浄剤は非常に有効で且つ多くの利点を有しているが、反面、幾つかの欠点をも有している。その欠点は、例えば硫酸−フッ化水素酸系の場合には、工業的に排出される洗浄液廃液にフッ素が含まれるので、廃水処理コストが高いという点にある。このため、近年の環境対策として、フッ素を含有しないものが望まれている。また、硫酸−鉄系の洗浄剤の欠点は、アルミニウム含有金属材料表面を完全に洗浄するためには65℃以上の比較的高い温度を必要とし、エネルギーコストおよび作業性において不満足であるという点である。また、これら酸系の洗浄剤には、使用される洗浄装置(一般にステンレススチール製)、および洗浄剤を自動的にコントロールするための自動管理装置の電極を腐食するという欠点がある。また、これら酸系の洗浄剤は、一般のアルカリ性洗浄剤に比べるとコストが高いという欠点もある。
【0003】
アルミニウム含有金属DI缶(以下アルミニウムDI缶と記す)は、絞りしごき加工(Drawing & Ironing)することにより形成されるが、この絞りしごき加工を容易にし、加工する工具を冷却するために潤滑剤を含んだクーラントと呼ばれる液が使用される。したがって、洗浄剤の役割は、アルミニウムDI缶の表面には、潤滑剤を含んだクーラントと、また、加工した際に発生する摩耗粉が残存する。これらの汚れ物質を表面から除去し、缶表面を、後に施される化成処理に適した状態に調整することにある。
【0004】
上記問題点を解決するために、アルカリ水系洗浄剤の適用が試みられている。アルカリ水系洗浄剤として種々のものが提案され、例えば、特公昭50−1689号公報および特公昭48−20012号公報などの発明を挙げることができる。しかしながら、これら従来のアルカリ水系洗浄剤をアルミニウムDI缶に適用してみると、アルミニウムDI缶を不均一にエッチングしたり、洗浄後に、アルミニウムDI缶表面に水酸化物層が生長したり、黒色のスマットが表面に析出したりすると言う問題が発生している。このような水酸化物層の成長は、後の化成処理に悪影響をもたらす。また、従来のアルカリ性洗浄を酸性洗浄と比較すると従来のアルカリ性洗浄液は、アルミニウム合金成分の偏析物、特にマグネシウムを除去できず、後の塗料密着性が劣る等の問題を生ずる。また、アルカリ性洗浄液を使用する場合には、後の化成処理の種類が限定されてしまうと言う問題もある。例えば、アルカリ性洗浄剤に後述のジルコニウム系のノンクロメート化成剤を組み合わせた場合を考えてみる。商業的な装置の場合には、アルカリ性洗浄液が、少なからず、次工程の水洗を経て、化成処理液中に持ち込まれる。ジルコニウム系化成処理液にアルカリ性の洗浄液が混入すると、ジルコニウム系化成処理液の成分の一部が沈澱するという不都合を生ずる。このため、化成処理液組成のバランスが崩れ、良好な化成処理効果を得ることができなくなる。したがって、従来のアルカリ水系洗浄剤では上記問題を十分に解決することはできなかったのである。
【0005】
次にアルミニウム含有金属材料の表面処理液は、クロメートタイプとノンクロメートタイプに大別できる。クロメートタイプの表面処理液の代表的なものとしては、クロム酸クロメート化成処理液とりん酸クロメート化成処理液とがあり、クロム酸クロメート化成処理液は1950年頃に実用化され、現在も熱交換器のフィン材などに広く使用されている。この化成処理液は、クロム酸(CrO3 )とフッ化水素酸(HF)とを主成分として含み、さらに促進剤が添加されているものであって、若干の6価クロムを含有する皮膜を形成する。りん酸クロメート化成処理液は1945年のU.S. Patent 2,438,877 の発明によるものであり、この化成処理液はクロム酸(CrO3 )、りん酸(H3 PO4 )、フッ化水素酸(HF)を含み、形成される皮膜は水和したりん酸クロム(CrPO4 ・4H2 O)を主成分とするものである。この皮膜は、6価クロムを含有しないことから、飲料缶のボディー(アルミニウムDI缶)および蓋材の塗装下地処理に現在も広く使用されている。
【0006】
また、ノンクロメートタイプの表面処理液代表的なものとしては、特開昭526−131937号公報に開示の処理液が挙げられる。この処理液は、ジルコニウムまたはチタンあるいはこれらの混合物、ホスフェートおよびフッ化物を含有し、且つ、約1.0〜4.0のpH値を有する酸性の水性コーティング溶液である。この化成処理液を用いて処理を行うと、アルミニウム含有金属材料の表面上に、ジルコニウムあるいはチタンの酸化物を主成分とする化成皮膜が形成される。ノンクロメートタイプの処理液は6価クロムを含有しないという利点を有しているが、クロメートタイプの処理液に比べて、得られる皮膜の耐食性および塗料密着性が劣るという欠点を有している。また、従来のクロメートタイプ、およびノンクロメートタイプ表面処理液は、ともにフッ素を含有しているので、近年、環境保護の観点からフッ素を含有しない表面処理液が望まれている。
【0007】
一方、水溶性樹脂を用いた耐食性および塗料密着性の付与を目的とする処理液や処理方法は、特開昭61−91369号公報、特開平1−172406号公報、特開平1−177379号公報、特開平1−177380号公報、特開平2−608号公報、および特開平2−609号公報などに開示されている。これら従来の処理方法は、金属表面を多価フェノール化合物の誘導体を含む溶液で処理するものである。しかしながら、これら従来の方法では、アルミニウム含有金属表面に、充分に安定した皮膜を形成することが困難であり、また優れた耐食性が得られないという問題点がある。このような多価フェノール化合物の誘導体を用いる処理方法を改善した特開平4−66671号公報の発明方法においても、それに用いられる塗料には、充分な密着性が得られないものが包含されているという問題を有している。
【0008】
現在、アルミニウムDI缶の表面処理には、上記のりん酸クロメートとジルコニウム系のノンクロメートとが主として使用されている。アルミニウムDI缶において、そのボトム外面は塗装されずに高温殺菌(温水浸漬、またはレトルトと称される高温高圧処理)されるが、この際に、耐食性が乏しいとアルミニウム含有金属材料の表面が酸化して外観が黒く、或は白く変色する。この現象は一般に黒変や白化と言われている。このような黒変又は白化を防止するためには、表面処理により形成される皮膜自身(未塗装)に高い耐食性が必要とされている。また、製缶工程において、缶のコンベヤー移送の際、缶外面の高い摩擦係数により缶表面のすべりが悪く、缶が横転して移送障害を生ずるという問題がある。特に缶の移送性は、缶をプリンターに搬送しようとするときに問題となる。したがって、製缶工業において、缶に塗装されるペイントやインクの密着性に悪影響を与えることなく、缶の静摩擦係数を低下させることが必要である。このすべり性を向上させる方法としては、特開昭64−85292号公報に開示されている方法が挙げられる。この方法はりん酸エステル類、アルコール類、一価または多価脂肪酸、脂肪酸誘導体類およびそれらの混合物から選択された水溶性有機物質を含む金属缶用表面処理材を用いるものであるが、この方法では、すべり性の向上は認められているが、耐食性および塗料密着性の向上は認められない。また、すべり性を向上させる他の方法として、りん酸エステルを使用する特開平5−239434号公報の方法が知られているが、この方法でも、すべり性の向上は認められているが、耐食性および塗料密着性の向上は認められていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術の有する前記問題点を解決するためのものであり、より具体的にはアルミニウム含有金属材料の表面を、低コストで且つ安定に洗浄し、この表面に優れた耐食性と塗料密着性を付与し、特にアルミニウムDI缶に適用した際に優れたすべり性をも付与し得るアルミニウム含有金属材料の表面処理方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の上記問題点を解決するための手段について鋭意検討した。その結果、特定組成のアルカリビルダー、有機ホスホン酸化合物、アルミニウムイオン封鎖剤および界面活性剤を含有し、かつ特定範囲のpHの値を有する水性アルカリ性洗浄液を用いてアルミニウム含有金属材料の表面を洗浄し、表面を清浄にした後、特定量のりん酸イオンと縮合りん酸イオンと特定化学構造を有する水溶性重合体を含有し、かつ、特定範囲のpH値を有する化成処理液を用いて、前記洗浄されたアルミニウム含有金属材料の表面を化成処理し、その後、これを水洗して加熱乾燥させることにより、アルミニウム含有金属の表面を、低コストで且つ安定に洗浄し、かつこの表面に、優れた耐食性と塗料密着性を付与し、特に、アルミニウムDI缶に適用した際には、優れたすべり性をも付与し得ることを見いだし、本発明方法を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るアルミニウム含有金属材料の表面処理方法は、アルミニウム含有金属材料の表面を、下記成分:
(a)アルカリビルダー、
(b)アミノアルキルホスホン酸及びヒドロキシアルキルホスホン酸から選ばれた少なくとも1種の有機ホスホン酸化合物、
(c)アルミニウムイオン封鎖剤、および
(d)界面活性剤、
を含み、前記成分の重量比(a):(b):(c):(d)が0.5〜10.0:0.1〜10.0:0.1〜3.0:0.1〜5.0であり、かつ8.0〜12.0のpH値を有するアルカリ性水性洗浄液に接触させて洗浄し、
前記洗浄された金属材料表面を下記成分:
(e)りん酸イオン、
(f)縮合りん酸イオン、および
(g)下記式(I):
【化3】
〔但し、式(I)において、X1 およびX2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、C1 〜C5 アルキル基、または、C1 〜C5 ヒドロキシアルキル基を表し、Y1 およびY2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、または、下記式(II)および(III)により表されるZ基:
【化4】
(但し、式(II)および(III)中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 およびR5 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、C1 〜C10アルキル基、または、C1 〜C10ヒドロキシアルキル基から選ばれた1員を表す)を表し、前記重合体分子のベンゼン環に結合しているZ基の各々は、互いに他から異なっていてもよく、あるいは他と同一であってもよく、前記重合体分子中の各ベンゼン環の前記Z基置換数の平均値は0.2〜1.0である〕
により表される重合単位を2〜50の平均重合度で含む水溶性重合体
を含有し、前記成分の重合比(e):(f):(g)が、0.1〜30:0.1〜10:0.1〜20であり、かつ2.0〜6.5のpH値を有する水性化成処理液に接触させて化成処理し、
この化成処理された金属材料表面を洗浄し、乾燥する、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の表面処理方法において、前記アルミニウム含有金属材料表面と前記アルカリ性水性洗浄液との接触は、35〜70℃の温度において2〜120秒間行われることが好ましい。
【0013】
また、本発明の表面処理方法において、前記洗浄されたアルミニウム含有金属材料表面と前記水性化成処理液との接触は、35〜65℃の温度において2〜60秒間行われることが好ましい。
【0014】
また、本発明方法において、前記アルカリ性水性洗浄液は、0.5〜10.0g/リットルの前記アルカリビルダー(a)、0.1〜10.0g/リットルの前記ホスホン酸化合物(b)、0.1〜3.0g/リットルの前記アルミニウムイオン封鎖剤(c)、および
0.1〜5.0g/リットルの前記界面活性剤(d)とを含むことが好ましい。
【0015】
さらに本発明の表面処理方法において、前記水性化成処理液は0.1〜30g/リットルの前記りん酸イオン(e)、0.1〜10g/リットルの前記縮合りん酸イオン(f)、および0.1〜20g/リットルの前記水溶性化合物(g)を含むことが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の表面処理方法に用いられるアルミニウム含有金属材料用洗浄液、アルカリ性水性洗浄剤である。本発明方法においては、アルミニウム含有金属材料用アルカリ性水性洗浄液の抱える問題を解決するために、アルカリ性水性洗浄液に下記成分を含有させた点が重要である。
(a)アルカリビルダー
アルミニウム含有金属材料表面に対するエッチング力を適切にするために、カリウムおよびナトリウムの水酸化物、炭酸塩及び無機りん酸塩のからなるアルカリをベースとして含有する。
(b)有機ホスホン酸化合物
アミノアルキルホスホン酸および/またはヒドロキシアルキルホスホン酸を主成分として含有することによって、アルミニウム含有金属材料表面に、そのエッチングにより生じる黒色スマットの生成を抑止し、表面の洗浄後の水酸化物層生成を、酸性洗浄液を用いたときと同等程度に抑制し、金属材料表面に偏析する金属、一般にはマグネシウム、を除去することができる。
(c)アルミニウムイオン封鎖剤
アルミニウムイオン封鎖剤を添加することによって、アルミニウム含有金属材料表面に対する洗浄剤のエッチング効果を高いレベルに持続させることができる。
(d)界面活性剤
界面活性剤を含有させることによって、洗浄液のアルミニウム含有金属材料表面に対するなどの効果を向上させることができる。
【0017】
本発明方法に用いられるアルカリ性水性洗浄液において、アルカリビルダー(a)、有機ホスホン酸化合物(b)、アルミニウムイオン封鎖剤(c)および界面活性剤(d)の配合重量比(a):(b):(c):(d)は0.5〜10.0:0.1〜10.0:0.1〜3.0:0.1〜5.0であり、好ましくは1.0〜5.0:0.5〜5.0:0.3〜1.5:0.5〜2.5である。
【0018】
成分(a),(b),(c)および(d)の配合比率が上記範囲で逸脱すると、得られる洗浄液の、アルミニウム含有金属材料表面に対するエッチング効果、黒色スマット抑制効果、油分および偏析金属除去効果、並びにコストの適正性などのバランスが不良になり、所望の効果が得られなくなる。
【0019】
アルカリビルダー(a)に含まれるアルカリ金属化合物としては、カリウムまたはナトリウムの水酸化物、炭酸塩および無機りん酸塩、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、りん酸三ナトリウムおよび水酸化カリウム等の少なくとも1種が用いられる。これらアルカリ成分の濃度は、そのエッチング性から判断して、0.5〜10.0g/リットルであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0g/リットルである。成分(a)の濃度が0.5g/リットル未満では、得られる洗浄液のエッチング不足によりアルミニウム表面が不均一になることがあり、またそれが10.0g/リットルを超えると、エッチング効果および性能が飽和し、コスト高になり経済的に不利になることがある。
【0020】
洗浄液の成分(b)として用いられるアミノアルキルホスホン酸としては、アミノトリメチレンホスホン酸〔式(IV)〕またはエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸〔式(V)〕が用いられ、またヒドロキシアルキルジホスホン酸としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸〔式(VI)〕が用いられる。成分(b)の洗浄液中の濃度は0.1g/リットル〜10.0g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0g/リットルである。成分(b)の濃度が0.1g/リットル未満では、得られる洗浄液の黒色スマット生成の抑制効果が不十分になることがあり、またそれが10.0g/リットルを超える量を含有させても、その効果が飽和し、コスト高になり経済的に不利になることがある。
【0021】
【化5】
【0022】
アルミニウムイオン封鎖剤(c)としては、グルコン酸アルカリ金属塩、ヘプトグルコン酸アルカリ金属塩、蓚酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、またはソルビトールが挙げられ、これら化合物の中から少なくとも1種を任意に選ぶことができる。洗浄液中におけるアルミニウムイオン封鎖剤(c)の濃度は、0.1〜3.0g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.5g/リットルである。成分(c)の濃度が0.1g/リットル未満では、アルミニウム含有金属材料の洗浄時に、その表面から溶出してくるアルミニウムイオンを十分に封鎖する効力が不十分となりアルミニウムイオンがアルカリ性洗浄液中に蓄積し、その結果、洗浄液のエッチング効果およびスマット除去効果が不十分になることがあり、またそれが、3.0g/リットルを超えると、その効力が飽和し、効果の向上が望めず、経済的に不利になることがある。
【0023】
界面活性剤(d)の種類に制限はなく、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤または非イオン界面活性剤から適宜に選ぶことができる。例えばノニオン型界面活性剤としては、炭化水素誘導体、アビエチン酸誘導体、第1級エトキシ化アルコール、変性ポリエトキシ化アルコールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有させることができる。洗浄液中の界面活性剤の濃度は0.1〜5.0g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5g/リットルである。成分(d)の濃度が0.1g/リットル未満では、得られる洗浄液の、潤滑剤等の油分の除去効果が不十分となることがあり、またそれが5.0g/リットルを超えると、その効果が飽和し、コスト高となり経済的に不利とすることがある。
【0024】
本発明方法に用いられるアルカリ性水性洗浄液のpH値は8.0〜12.0の範囲に調整される。pH値が8.0未満では得られる洗浄液のエッチング効果が不十分になり、このためアルミニウム含有金属材料の表面状態が不均一になり、また、アルミニウムDI缶の場合、その表面に付着している摩耗粉を十分に除去することができない。また、pH値が12.0を超えるとエッチング過多により金属材料表面に微量の黒色スマットが生成するという不都合を生ずる。
【0025】
本発明のアルカリ性水性洗浄液を、アルミニウム含有金属材料表面に接触させる工程においてこの接触温度に特に制限はないが、35〜70℃であることが好ましく、より好ましくは、40〜60℃の範囲である。接触温度が35℃未満では、洗浄液のエッチング効果が不十分になることがある。また、それが70℃を超えると、洗浄液の効果が飽和し、加温に多くのエネルギーコストがかかり、経済的に不利になることがある。
【0026】
本発明方法においてアルカリ性水性洗浄液をアルミニウム含有金属材料表面に接触させる時間に特に制限はないが、2〜120秒であることが好ましく、20〜60秒であることがより好ましい。本発明方法において、金属材料表面と、洗浄液とを接触させる方法としては、スプレー法、浸漬法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。接触時間が2秒未満では、エッチング不足となり充分な洗浄効果を得ることができないことがあり、また、それが120秒を超えると、洗浄効果は飽和し、却って経済的に不利になることがある。
【0027】
本発明方法において、上記アルカリ性水性洗浄液で洗浄されたアルミニウム含有金属材料表面は、必要により水によりすすぎ洗いされる。この水洗は、アルカリ性水性洗浄液を金属材料表面から除去する目的で行われるものであるから、当該表面が清浄になればよく、水洗方法等には特に限定はない。
【0028】
次に、本発明方法における化成処理について説明する。
本発明方法において、洗浄されたアルミニウム含有金属材料表面に対する化成処理は、下記成分を含む水性化成処理液を用いて行われる。
(e)りん酸イオン、
(f)縮合りん酸イオン、および
(g)前記式(I)により表される重合単位を、2〜50の平均重合度で含む水溶液重合体。
上記成分の配合重量比(e):(f):(g)は、0.1〜30:0.1〜10:0.1〜20であり、0.2〜5:0.3〜3:0.5〜5であることが好ましい。上記成分(e),(f),(g)の配合重量比が上記範囲から逸脱すると、得られる化成処理液の、化成皮膜形成性、エッチング性、およびコストの適正性などのバランスが不良となり所望の効果を得ることができない。また、本発明方法に用いられる水性化成処理液は、2.0〜6.5のpH値、好ましくは3.0〜5.0のpH値を有するものである。
【0029】
水性化成処理液中にりん酸イオンを含有させるにはりん酸、りん酸ナトリウムなどを使用することができる。水性化成処理液中の成分(e)の濃度は0.1〜30g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.2〜5g/リットルの範囲である。成分(e)の濃度が0.1g/リットル未満では得られる化成処理液の反応性が不十分であって皮膜が十分に形成されないことがある。また、それが30g/リットルを超えると、良好な皮膜は形成されるがその効果は飽和し、化成処理液のコストが高くなり経済的に不利になることがある。
【0030】
本発明方法に用いられる縮合りん酸イオン(f)は、ピロりん酸イオン、トリポリりん酸イオン、テトラポリりん酸イオンを包含し、これらの少なくとも1種を含むものである。縮合りん酸イオン(f)を化成処理液中に含有させるには、縮合りん酸あるいはその塩を使用することができる。例えば、ピロりん酸イオンを含有させるには、ピロりん酸、ピロりん酸ナトリウムなどを使用することができる。化成処理液中の成分(f)の濃度は、0.1〜10g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0g/リットルの範囲である。成分(f)の濃度が0.1g/リットル未満では、得られる化成処理液のエッチング作用が弱く、十分に皮膜を形成することができないことがある。また、それが10g/リットルを超えると、エッチング作用が強すぎて皮膜形成反応を阻害することがある。
【0031】
本発明方法に用いられる水溶性重合体(g)は、下記式(I)の重合単位を有し、平均重合度が2〜50のポリマー(オリゴマーを包含する)である。
【化6】
【0032】
上記式(I)において、X1 およびX2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、C1 〜C5 アルキル基、または、C1 〜C5 ヒドロキシアルキル基を表し、Y1 およびY2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、または、下記式(II)および(III)により表されるZ基:
【化7】
(但し、式(II)および(III)中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 およびR5 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、C1 〜C10アルキル基、または、C1 〜C10ヒドロキシアルキル基から選ばれた1員を表す)を表すものである。
式(I)の重合単位を、2〜50の平均重合度で有する前記重合体分子において、そのベンゼン環に結合しているZ基の各々は、互いに他から異なっていてもよく、あるいは他と同一であってもよく、前記重合体分子中の各ベンゼン環の前記Z基置換数の平均値は0.2〜1.0である。
【0033】
水溶性重合体(g)の分子において、式(I)の各重合単位に含まれているY1 ,Y2 基は、互いに同一であってもよく或は、異なっていてもよく、また重合体分子のベンゼン環に結合しているZ基の各々は、互いに他から異なっていてもよく、或は同一であってもよい。しかしながら、式(I)の重合体分子は、Z基により置換されたベンゼン環を必ず含み、各ベンゼン環の、Z基置換数の平均値は、0.2〜1.0である。このZ基の置換数の平均値を、以下「平均Z基置換数」と記す。
【0034】
式(I)の重合体において、平均重合度が2未満のときは、得られる表面皮膜の耐食性の向上効果が不満足になり、また、それが50を超えると、得られる表面処理組成物、および表面処理液の安定性が不十分になり、実用上の不都合を生ずる。
【0035】
X1 および/又はX2 により表わされるアルキル基、又はヒドロキシアルキル基の炭素原子数は1〜5であり、それが、6以上になると、得られる重合体分子が過度にバルキーになり、立体障害を発生するため、緻密で、耐食性にすぐれた皮膜を形成することが困難になる。
【0036】
Y1 、および/又はY2 は、水素原子又は式(II)および(III)のZ基である。式(I)の重合体はZ基を置換基として含むものであって、重合体分子の各ベンゼン環における平均Z基置換率は、0.2〜1.0である。例えば、重合度n=10の重合体は、20個のベンゼン環を含み、この20個のベンゼン環のうちの10個のみがそれぞれ1個のZ基により置換されているときは、この重合体の平均Z基置換数は、
〔(1×10)+(0×10′)〕/20=0.5
である。平均Z基置換数が0.2未満のときは、得られる重合体の水溶性が不十分になり、得られる表面処理組成物および表面処理液の安定性が不十分になる。また、平均Z基置換数が、1.0を超えるとき(2個以上のZ基により置換されたベンゼン環を含む場合)には、得られる重合体の水溶性が過度に高くなり、表面皮膜の形成が困難になる。
【0037】
式(II)および(III)において、R1 ,R2 ,R3 ,R4 、およびR5 により表されるアルキル基又はヒドロキシアルキル基は、1〜10個の炭素原子を有するものである。この炭素原子数が、11以上になると、得られる重合体分子が過度にバルキーになり、得られる皮膜の密度が粗になり、その耐食性向上効果が不十分になる。
【0038】
本発明方法において、水性化成処理液に含まれる水溶性重合体(g)の濃度は固形分として0.1〜20g/リットルであることが好ましい。成分(g)の濃度が、0.1g/リットル未満では濃度が低すぎるため金属材料表面に安定して皮膜を形成することが困難となることがあり、また、それが20g/リットルを超えると、処理効果が飽和し、処理液のコストが高くなり経済的に不利になることがある。
【0039】
化成処理液のpH値は2.0〜6.5に調整される。pH値が2.0未満では化成処理液によるエッチング作用が過度になるため、皮膜を形成することが困難となり、またそれが6.5を超えると、水溶性重合体(g)が過度に沈澱析出しやすくなるため、処理液の寿命が短くなる。したがって、化成処理液のpH値は2.0〜6.5の範囲に制御されなければならない。化成処理液のpH値を調整のためには、りん酸、硝酸、塩酸などの酸、および水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリを使用すればよい。廃水処理が問題にならない場合には、フッ化水素酸を使用してもよい。
【0040】
本発明方法に用いられる化成処理液は下記方法により調整することができる。すなわち、りん酸イオン(e)と縮合りん酸イオン(f)とを前記配合割合で採取し、必要に応じ所定量水に溶解させ充分に撹拌する。この液のpHが7以下でない場合には前記の適宜の酸でpH値を7以下に調整する。次に撹拌しながら、前記水溶性重合体(g)を添加し完全に溶解させ、pH値を前述の方法で6.5以下に調整する。
【0041】
また、化成処理液中に、素材より溶出したアルミニウムイオンが混入すると、水溶性重合体(g)とアルミニウムとが錯体を形成し、沈澱を生じる場合がある。このような沈澱生成を防止するために、化成処理液にアルミニウム封鎖剤を添加するとよい。アルミニウム封鎖剤としては、例えば、EDTA、Cy−DTA、トリエタノールアミン、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、しゅう酸、酒石酸、りんご酸および有機ホスホン酸などが有用であるが、特にこれらに限定されるわけではない。廃水処理にてフッ化水素酸が問題にならない場合には、これも封鎖剤として有効である。
【0042】
さらに本発明においては化成処理液中に反応促進剤として酸化剤を添加してもよい。酸化剤には特に限定はないが、例えば、過酸化水素を用いることが好ましく、その他の酸化剤としては塩素酸塩および亜硝酸塩などを用いることができる。化成処理液中の酸化剤の濃度は0.1〜2g/リットルであることが好ましい。酸化剤には、化成処理液の腐敗およびかび発生を防止する効果もある。
【0043】
また、アルミニウム含有金属材料表面と、化成処理液との接触をスプレー処理により施す場合に、化成処理液が発泡して問題を生ずる場合がある。発泡は装置条件に大きく依存するが、装置条件の変更で発泡を防止できない場合には、化成処理液に消泡剤を添加すればよい。消泡剤には特に限定はなく、得られる皮膜と塗料との密着性を損なうようなものでない限り適宜に選定使用することができる。
【0044】
本発明方法において、化成処理液をアルミニウム含有金属材料表面に接触させる温度には特に制限はないが、35〜65℃であることが好ましい。この接触温度が35℃未満では化成処理液の反応性が不十分であり、良好な皮膜が形成されないことがある。また、それが65℃を超えると、良好な皮膜は形成されるが、その効果は飽和し、加温のエネルギーコストが高くなり経済的に不利になることがある。
【0045】
本発明方法に用いられる化成処理液と、アルミニウム含有金属材料表面との接触時間にも制限はないが、2〜60秒であることが好ましい。接触方法としては、スプレー法、浸漬法等が用いられるが、これらに限定されるものではない。接触時間が2秒未満では、化成処理液が十分反応することができないため、耐食性の優れた皮膜は形成されない。また、それが60秒を超えると得られる皮膜の性能が飽和してしまうことがある。
【0046】
上記、化成処理液で化成処理されたアルミニウム含有金属材料表面は水によりすすぎ洗いされる。この水洗は化成処理液を除去する目的で行われるから、金属材料表面から未反応の化成処理液がなくなればよく、水洗方法等には特に制限はない。
【0047】
その後、上記方法により水洗されたアルミニウム含有金属材料表面上の皮膜は乾燥される。この乾燥の目的は、皮膜上の水洗水を除去することにあるので、乾燥温度や乾燥時間などの乾燥方法には制限はなく、適宜に選定使用すればよい。
【0048】
次に、本発明方法の化成処理液によりアルミニウム含有金属材料表面上に形成される皮膜について概説する。この化成皮膜は、りん酸イオン(e),および縮合りん酸イオン(f)と重合体(g)とから形成される有機−無機複合皮膜である。りん酸イオン(e)と縮合りん酸イオン(f)によりアルミニウム含有金属材料表面がエッチングされ、その際に界面で局部的なpH上昇が発生し、りん酸塩が金属材料の表面に析出する。また、重合体(g)のアミノ基は、キレート作用を有し、これがエッチングにより生成する素地の新生面と一種の配位化合物を形成する。基本的には上記2つの作用により、有機−無機複合皮膜が形成されるのであるが、化成処理液中に縮合りん酸イオン(f)を共存させると、重合体−金属の配位化合物がより形成しやすくなり、この結果、広いpH範囲で安定して有機−無機複合皮膜を表面に形成することが可能となるのである。また、形成された表面皮膜を加熱することにより、表面上のキレート重合体をさらに重合させることも可能である。特に高い耐食性が要求される場合には、皮膜を加熱して表面上で重合体をさらに高分子化させるとよい。このときの加熱条件としては、200℃−1分間以上(雰囲気条件)が適当である。
【0049】
本発明方法に用いられるアルミニウム含有金属材料は、アルミニウム、並びに、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−シリコン合金などのアルミニウム含有合金からなる材料、例えば板材、棒材、管材、および線材などを包含する。この金属材料の寸法、形状には全く制限がない。
【0050】
【実施例】
本発明の表面処理方法を、下記実施例により更に説明する。なお、洗浄処理液組成、洗浄方法、化成処理液組成、化成処理方法については、実施例、比較例ごとに個別に記載する。
【0051】
実施例において得られた製品の性能を下記方法により測定評価した。
評価方法
▲1▼ 耐食性
アルミニウムDI缶の耐食性(耐レトルト白化性)を、処理されたアルミニウムDI缶を、レトルト殺菌装置にセットし、120℃−30分間の蒸気処理を施した後の変色(白変)の度合により評価した。白変なしを "○" 、一部白変を "△" 、全面白変を "×" で示した。
【0052】
▲2▼ 塗料密着性
塗料密着性を下記方法によりテストした。処理缶の表面にエポキシ尿素系の缶用塗料を塗膜厚さ:5〜7μmに塗装し、215℃で4分間焼付け、この缶を5×150mmの短冊状に切断し、ポリアミド系のフィルムを熱圧着し試験片とした。このフィルムを、試験片から180度ピール試験法により剥離し、その際のピール強度を測定評価した。したがって、ピール強度が大きいほど塗料密着性は優れている。一般に4.0 kgf/5mm幅以上のピール強度を有していれば実用上良好と評価される。
【0053】
▲3▼ すべり性
アルミニウムDI缶のすべり性は、缶外面の静摩擦係数を測定して評価した。したがって、静摩擦係数が低いほどすべり性は優れている。一般に1.0以下の静摩擦係数を有していれば実用上良好と評価される。
【0054】
▲4▼ 耐装置腐食性
表面を研磨したステンレス鋼(SUS304)を、それを下記実施例の各々に示す洗浄温度に加温した洗浄液に浸漬し、1週間後の状態を目視により評価した。腐食なしを "○" 、腐食ありを "×" で示した。
【0055】
実施例1
アルミニウム合金板(A3004)をDI加工して作製したアルミニウムDI缶を下記組成を有する洗浄液1を用いるスプレー処理により洗浄し、水洗して、清浄化した。次に下記組成を有する化成処理液1を用いるスプレー処理を施し、水道水で水洗し、さらに3000,000Ωcm以上の脱イオン水で10秒間スプレー洗浄した後、これを180℃の熱風乾燥炉内で2分間乾燥した。
【0056】
【0057】
【0058】
実施例2
実施例1と同様にしてアルミニウムDI缶を、下記組成を有する洗浄液2で洗浄し、水洗清浄後、下記組成を有する化成処理液2を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0059】
【0060】
【0061】
実施例3
実施例1と同様にしてアルミニウムDI缶を、下記組成を有する洗浄液3で洗浄し、水洗清浄後、下記組成を有する化成処理液3を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0062】
【0063】
【0064】
実施例4
実施例1と同様にして、アルミニウムDI缶を、下記組成を有する洗浄液4で洗浄し、水洗清浄後、下記組成を有する化成処理液3を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0065】
【0066】
【0067】
実施例5
実施例1と同様にして、アルミニウムDI缶を、下記組成を有する洗浄液5で洗浄し、水洗清浄後、下記組成を有する化成処理液5を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0068】
【0069】
【0070】
比較例1
実施例1と同様にしてアルミニウムDI缶を下記組成を有する洗浄液6で洗浄し、水洗清浄後、前記化成処理液4を用い化成処理(60℃、10秒)した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0071】
【0072】
比較例2
実施例1と同様にしてアルミニウムDI缶を前記洗浄液3で洗浄し(35℃、20秒)、水洗清浄後、下記組成を有する化成処理液6を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
【0073】
比較例3
実施例1と同様にしてアルミニウムDI缶を、前記洗浄液3を用いて洗浄し、水洗後、下記組成を有する化成処理液7を用いて化成処理した。化成処理の後、実施例1と同様にして水洗、乾燥した。
【0074】
比較例4
実施例1と同様にアルミニウムDI缶を市販の酸性洗浄剤(商標:パルクリーン500、硫酸をベースとする酸性クリーナー、日本パーカライジング株式会社製)の4%水溶液で洗浄し、水洗清浄後、市販の化成処理液(商標:アロジン404、りん酸ジルコニウム系化成皮膜剤、日本パーカライジング株式会社製)2%水溶液を用い化成処理した。処理後、実施例1と同一条件で水洗、乾燥した。
洗浄処理温度:70℃
洗浄処理時間:50秒
化成処理温度:40℃
化成処理時間:20秒
【0075】
上記実施例1〜5および比較例1〜4の評価テスト結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果より明らかなように、本発明の表面処理方法を用いた実施例1〜5において、耐食性、密着性、すべり性および装置腐食性のすべてにおいて優れた皮膜が得られることが確認された。一方、比較例1において、洗浄液が有機ホスホン酸(b)を含まない場合は、得られる化成皮膜の耐食性および塗料密着性が不良であり、かつ静摩擦係数も高く不満足なものであった。比較例2において、化成処理液が水溶性重合体(g)を含まない場合は、得られる化成皮膜の耐食性および塗料密着性が著しく低く、静摩擦係数が高く、化成処理アルミニウムDI缶のすべり性が不良であった。比較例3において、化成処理液が縮合りん酸イオン(f)を含まない場合は、得られる皮膜の耐食性および塗料密着性が不良であり、かつ静摩擦係数が高く、化成処理アルミニウムDI缶のすべり性が不良であった。市販酸性洗浄液および化成処理液を用いた比較例4においては、耐装置腐食性が不良であり、得られた化成処理アルミニウムDI缶のすべり性が不良であった。
【0078】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明に係る表面処理方法により、アルミニウム含有金属材料の表面を低コストでかつ安定に洗浄し、その洗浄面上に耐食性と塗料密着性とに優れ静摩擦係数の低い化成皮膜を形成することができる。また、本発明の表面処理方法をアルミニウムDI缶に適用することにより、塗装・印刷前のアルミニウムDI缶表面に優れた耐食性、塗料密着性を付与し、且つ、缶のコンベヤー移送の円滑化に必要な優れたすべり性をも付与する皮膜が形成されるという優れた効果を奏する。
Claims (5)
- アルミニウム含有金属材料の表面を、下記成分:
(a)アルカリビルダー、
(b)アミノアルキルホスホン酸及びヒドロキシアルキルホスホン酸から選ばれた少なくとも1種の有機ホスホン酸化合物、
(c)アルミニウムイオン封鎖剤、および
(d)界面活性剤、
を含み、前記成分の重量比(a):(b):(c):(d)が0.5〜10.0:0.1〜10.0:0.1〜3.0:0.1〜5.0であり、かつ8.0〜12.0のpH値を有するアルカリ性水性洗浄液に接触させて洗浄し、
前記洗浄された金属材料表面を、下記成分:
(e)りん酸イオン、
(f)縮合りん酸イオン、および
(g)下記式(I):
により表される重合単位を2〜50の平均重合度で含む水溶性重合体
を含有し、前記成分の重合比(e):(f):(g)が、0.1〜30:0.1〜10:0.1〜20であり、かつ2.0〜6.5のpH値を有する水性化成処理液に接触させて化成処理し、
この化成処理された金属材料表面を洗浄し、乾燥する、ことを特徴とする、アルミニウム含有金属材料表面処理方法。 - 前記アルミニウム含有金属材料表面と前記アルカリ性水性洗浄液との接触が2〜120秒間行われる、請求項1に記載の表面処理方法。
- 前記洗浄されたアルミニウム含有金属材料表面と前記水性化成処理液との接触が、2〜60秒間行われる、請求項1に記載の表面処理方法。
- 前記アルカリ性水性洗浄液が、0.5〜10.0g/リットルの前記アルカリビルダー(a)、0.1〜10.0g/リットルの前記ホスホン化合物(b)、0.1〜3.0g/リットルの前記アルミニウムイオン封鎖剤(c)、および
0.1〜5.0g/リットルの前記界面活性剤(d)とを含む、請求項1に記載の表面処理方法。 - 前記水性化成処理液が0.1〜30g/リットルの前記りん酸イオン(e)、0.1〜10g/リットルの前記縮合りん酸イオン(f)、および0.1〜20g/リットルの前記水溶性化合物(g)を含む、請求項1に記載の表面処理方法。
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