JP3541072B2 - 楽音制御装置、楽音波形記憶方法及び楽音波形再生方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、楽音制御装置に関し、特に楽音の周波数シフトに関する。また、本発明は、楽音波形記憶方法及び楽音波形再生方法に関し、特に楽音の周波数シフトによる楽音波形の記憶方法及び再生方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、楽音の制御の分野においては、楽音波形の周波数帯域につき、周波数上でシフトするという制御を行うことはなかった。しかしながら、楽音波形の周波数帯域につき周波数上でシフトすれば、図12(2)と図12(4)に示すように、音色(音質)の異なった楽音を実現することができる。
【0003】
また従来、楽音波形メモリに記憶された楽音波形を読み出す場合、音高に応じて読み出し速度を変えると、読み出される楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変化する。例えば、音高を2倍にして楽音波形の読み出し速度を2倍にすると、読み出される楽音波形のフォルマントの幅は2倍に拡がり、フォルマントの各周波数成分の密度も1/2になる。
【0004】
さらに従来、楽音波形の記憶の分野においては、発生される楽音波形がサンプリング信号に応じた周期ごとにサンプリングされ、このサンプリングポイントがA−D(アナログ−デジタル)変換され、このデジタルのポイントデータが順次楽音波形メモリに記憶される。また、楽音波形の再生の分野においては、この楽音波形メモリに記憶されたサンプリング楽音波形が音高に応じた速度で順次読み出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記音高に応じた変化を、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで実現できれば、音高に応じて微妙に音色(音質)を変えていくことができる。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、従来にない周波数シフトによる楽音の制御を実現するものである。
【0007】
また、上記楽音波形メモリに記憶された楽音波形を読み出す場合、音高に応じて読み出し速度を変えると、読み出される楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変化する。例えば、音高を2倍にして楽音波形の読み出し速度を2倍にすると、読み出される楽音波形のフォルマントの幅は2倍に拡がり、フォルマントの各周波数成分の密度も1/2になる。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、音高が変わってもフォルマントの幅が変わらない楽音波形の記憶方法及び楽音波形の再生方法を実現するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトするものである。また、本発明は、楽音の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして、このシフトによって発生する複数の同じ形のフォルマントの中から、フィルタ処理によって少なくとも1つのフォルマントを選択抽出して記憶するようにした。また、この記憶された楽音波形を周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして出力するようにした。
【0010】
【作用】
これにより、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数シフトされるため、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し、音色(音質)が微妙に変化していき、従来にない楽音上の制御を行うことができる。また、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変わらないで、周波数シフトされて記憶/再生されるため、どのような音高でもフォルマントの幅が常に一定にされることができる。さらに、上記周波数シフトが楽音波形の周波数が低くされれば、楽音波形の記憶サンプリング周波数が低くて済むため、記憶する楽音波形がデータ圧縮されて記憶される。
【0011】
【実施例】
《1》全体回路
図1は楽音生成装置の全体回路を示す。演奏情報発生部10からは音高情報その他の演奏情報が発生される。この演奏情報発生部10は、マニュアル操作によって演奏される発音指示装置、自動演奏装置またはインターフェイスであって、この演奏情報発生部10から、上記演奏情報すなわち、音高情報(音域情報(上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤を含む))、発音開始からの経過時間情報、演奏パート情報、楽音パート情報、楽器パート情報等の音楽的ファクタ情報が発生される。発音指示装置は、キーボード楽器、弦楽器、吹奏楽器、打楽器、コンピュータのキーボード等である。自動演奏装置は、記憶された演奏情報を自動的に再生する。インターフェイスは、MIDI(ミュージカルインスツルメントデジタルインターフェイス)等、接続された装置からの演奏情報を受け取ったり、送り出したりする装置である。
【0012】
さらに、この演奏情報発生部10には各種スイッチが設けられ、この各種スイッチは音色タブレット、エフェクトスイッチ、リズムスイッチ、ペダル、ホイール、レバー、ダイヤル、ハンドル、タッチスイッチ等であって楽器用のものである。この各種スイッチより、音楽的ファクタ情報が入力され、この音楽的ファクタ情報は音色情報、タッチ情報(発音指示操作の速さ/強さ)、エフェクト情報、リズム情報、音像(ステレオ)情報、クオンタイズ情報、変調情報、テンポ情報、音量情報、フォルマント特性情報、エンベロープ情報、発音開始からの経過時間等である。
【0013】
これら音楽的ファクタ情報も上記演奏情報に含まれ、上記各種スイッチより入力されるほか、上記自動演奏情報に含まれたり、上記インターフェイスで送受される演奏情報に含まれる。なお、上記タッチスイッチは上記発音指示装置の1つ1つに対応して設けられており、タッチの速さと強さとを示すイニシャルタッチデータとアフタタッチデータとが発生される。上記音色情報は、鍵盤楽器(ピアノ等)、管楽器(フルート等)、弦楽器(バイオリン等)、打楽器(ドラム等)の楽器音等に対応している。上記エンベロープ情報は、エンベロープレベル、エンベロープフェーズなどである。上記演奏パート情報、楽音パート情報、楽器パート情報は、例えばメロディ、伴奏、コード、ベース等、または上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤等に対応している。このような音楽的ファクタ情報は、コントローラ20へ送られ、後述の各種信号、データ、パラメータの切り換えが行われる。
【0014】
上記演奏情報はコントローラ20で処理され、各種データがフォルマント制御パラメータ発生部40、フォルマント形状波形発生部50及び累算部70へ送られ、フォルマント合成信号Wj(t)が発生される。コントローラ20はCPU等からなっている。プログラム/データ記憶部21はROM、RAM等の記憶装置からなり、このプログラム/データ記憶部21には、コントローラ20が各種処理を行うためのプログラムや、上述した各種データとその他の各種データが記憶される。この各種データは時分割処理に必要なデータや時分割チャンネルへの割当のためデータ等も含む。
【0015】
フォルマント制御パラメータ発生部40、フォルマント形状波形発生部50及びフォルマント波形制御部60より、フォルマント合成信号Wj(t)が時分割に発生される。Wj(t)の“j”は時分割処理の分割次数またはチャンネルナンバを示す。フォルマント制御パラメータ発生部40からは、フォルマント合成信号Wj(t)を生成するのに必要な各種パラメータ、すなわちフォルマント制御パラメータωcj(t)、ωfj(t)、aj(t)、cj(t)、dj(t)等が発生される。
【0016】
このパラメータの詳細は特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。フォルマント形状波形発生部50及びフォルマント波形制御部60では、入力される上記フォルマント制御パラメータに基づいて、フォルマント合成信号Wj(t)が読み出され発生され合成される。このフォルマント合成信号Wj(t)はシフト・フィルタ部A0で各種制御が行われて、累算部70で系列チャンネルごとに累算合成され、音響出力部80より楽音として放音出力される。この系列は、部分音であるフォルマント合成信号Wj(t)の1楽音、または上述した音楽的ファクタを示す。
【0017】
タイミング発生部30からは、楽音生成装置の全回路の同期を取るためのタイミングコントロール信号が各回路に出力される。このタイミングコントロール信号には、各周期のクロック信号のほか、これらのクロック信号を論理積または論理和した信号、時分割処理のチャンネル分割時間の周期を持つ信号、チャンネルナンバデータjなどがある。
【0018】
プログラム/データ記憶部21のアサインメントメモリ213からコントローラ20などによって時分割に読み出された各周波数ナンバデータFN(音高情報)は、または、フォルマント制御パラメータ発生部40からのフォルマント密度パラメータωfj(t)若しくはフォルマントキャリアパラメータωcj(t)は、調和度制御回路90へ送られる。
【0019】
このデータFN(ωfj(t)、ωcj(t))は、調和度制御回路90で、フォルマント制御パラメータ発生部40からのフォルマントキャリアパラメータωcj(t)及びコントローラ20からのサンプリング修正データSfj(t)及び合成フォルマント調和度Hj(t)が合成され、上記フォルマント密度ωfj(t)として、パラメータフォルマント形状波形発生部50へ送られる。
【0020】
この合成によりフォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)のフォルマントの各周波数成分のそれぞれの周波数の対比値が決定されて、フォルマントの各周波数成分の調和度が制御される。この場合、上記周波数ナンバデータFNは、そのまま調和度制御回路90へ送られたり、演算処理されて調和度制御回路90へ送られる。この演算は他のデータとの演算であって、後述する種々の演算(1)である。
【0021】
図1の各回路10、20、21、30、40、50、60、70、80、90の具体的な構成及び動作などの説明は、すべて特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。従って、これらの回路の具体的な説明は、特願平6−231817号の明細書を参照することとし、本願明細書及び図面では述べられない。この特願平6−231817号の明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとみなす。
【0022】
上記シフト・フィルタ部A0では、入力されるフォルマント合成信号Wj(t)につき、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域のシフト処理とフィルタ処理とが行われ、周波数特性が変更されて出力される。なお、別の例では、このシフト・フィルタ部A0は、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。
【0023】
《2》シフト・フィルタ部A0
図2は、シフト・フィルタ部A0を示す。上記演奏情報発生部10からの音高情報(キーナンバKN)は、アダーA01で周波数変調情報が加算される。この周波数変調情報は上記演奏情報発生部10から入力された音楽的エフェクト情報の中のビブラート等の情報に基づいている。
【0024】
アダーA01からの音高情報等は、周波数ナンバテーブルA03で周波数ナンバデータFNに変換される。この周波数ナンバデータFNはアキュムレータA04で各チャンネルごとに時分割で累算され、楽音波形メモリA05へ送られる。楽音波形メモリA05には、多数の楽音波形データTWj(t)が音色、音域、タッチ等の音楽的ファクタごと、発音経過時間ごと、エンベロープレベル/フェーズごと、操作者の選択データごとに多層的に記憶され、これら音楽的ファクタ等に応じたデータが読み出される。なお、この楽音波形データTWj(t)の読み出し速度は音高に応じていなくてもよい。
【0025】
これら楽音波形データTWj(t)の一部または全部は、周波数帯域がほぼ重複しないまたは場合によって一部重複する複数の部分楽音波形であり、後述する第二周波数シフト部A30を経た後、累算部70で1つの楽音に合成出力される。したがってこれら部分楽音波形は、もともと1つの楽音波形がフィルタ処理によって、複数の周波数帯域に分割された楽音波形とすることができる。これら記憶された楽音波形データTWj(t)の各周波数帯域の中心周波数は後述するように仮想的な周波数“0”とすることができる。楽音波形メモリA05は、楽音生成装置に対して着脱自在であってもよく、CD−ROM/RAMまたはROM/RAMカード等であってもよい。
【0026】
この楽音波形メモリA05から時分割に読み出された楽音波形データTWj(t)は、補間回路(図示せず)で波形の各サンプリングポイントが補間された後、帯域制御フィルタA06へ送られる。この補間回路は後述する図13の補間回路AB3と同じである。この楽音波形データTWj(t)は、上述のフォルマント波形制御部60からのフォルマント合成信号Wj(t)であってもよいし、上述のフォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)またはフォルマントキャリア信号Gfj(t)、cosωcj(t)でもよい。今後これらの信号を総称して楽音波形データTWj(t)と言うことにする。
【0027】
上記帯域制御フィルタA06は、デジタルフィルタであり、上記帯域制御フィルタA06では、後述する図3に示すように楽音波形データTWj(t)の中心周波数から上下に帯域幅BWの周波数帯域のみが抽出され、他の周波数帯域がカットされる。これにより、後述するフォルマント制御フィルタA20でフィルタ処理されるこの楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域だけに制限される。むろん、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が広ければ、上記所定幅はどんな値でもよい。また帯域制御フィルタA06は、バンドパスフィルタであるが、ハイパスフィルタまたはローパスフィルタとすることもできるが、バンドパスフィルタが望ましい。
【0028】
また、入力される楽音波形データTWj(t)の周波数帯域が狭く、またはフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が広くて、楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域に入れば、上記帯域制御フィルタA06は省略できる。この場合、帯域制御フィルタA06を経た楽音波形データTWj(t)が楽音波形メモリA05に記憶されることができる。
【0029】
また、楽音波形データTWj(t)が部分楽音波形であれば、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域の中の狭いエリアだけが使用されることができる。そうすると、フォルマント制御フィルタA20の実際の周波数特性の全体が図9に示すように非直線的であっても、結果的に図5に示す直線的な周波数特性にすることができる。
【0030】
上記帯域制御フィルタA06からの楽音波形データTWj(t)は、第一周波数シフト部A10で周波数帯域全体のシフトが行われる。このシフトによって、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の周波数帯域がフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域までシフトされる。
【0031】
この周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)は、マルチプライヤA41を介してフォルマント制御フィルタA20で周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって徐々に変化するようにフィルタ処理される。
【0032】
このフィルタ処理された楽音波形データTWj(t)は、第二周波数シフト部A30でさらに周波数帯域全体のシフトが行われる。このシフトによって、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の周波数帯域が音高に応じた位置までシフトされる。この周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)は、上記累算部70へ出力される。この場合マルチプライヤを介して上記エンベロープレベルデータ(フォルマント制御パラメータaj(t)、ajk(t))を乗算合成することもできる。これら第一シフトの方向と第二シフトの方向とは、上記指定音高やフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域の周波数位置に応じて、同じであったり異なっていたりする。
【0033】
時分割に発生する周波数シフトデータFSj(t)は、アダーA42でシフト制御データSCが時分割に加算され、アダーA44でエンベロープデータが加算される。アダーA44からの周波数シフトデータFSj(t)は、対数−リニア変換回路A45でリニアな値に変換され、上記第一周波数シフト部A10へ送られる。これにより上述の周波数シフトデータFSj(t)の値に応じた楽音波形データTWj(t)の周波数シフトが行われる。
【0034】
エンベロープジェネレータA46には、エンベロープスピードデータとエンベロープ目標データとが時分割に供給され、これにより上記エンベロープデータが時分割に生成される。このエンベロープデータは上記エンベロープレベルデータ(フォルマント制御パラメータaj(t)、ajk(t))で代用してもよい。
【0035】
この周波数シフトデータFSj(t)は、上記楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の中心周波数とフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域のフィルタ処理に使う部分の中心周波数との差に応じた値である。楽音波形データTWj(t)の中心周波数は、楽音波形データTWj(t)の記憶時の周波数と記憶サンプリング周波数と読み出し周波数との各比に応じて決まったり、または楽音波形データTWj(t)の発生周波数と同じである。
【0036】
発生周波数データGFj(t)は、上記楽音波形データTWj(t)の記憶時の周波数と記憶サンプリング周波数との比に応じたデータであり、この発生周波数データGFj(t)はアダーA47で上記音高情報が加算されて、実際の音高に応じた値となる。この発生周波数データGFj(t)は、上記楽音波形メモリA05に記憶された楽音波形データTWj(t)の各周波数帯域の中心周波数を表わしており、この各周波数帯域の中心周波数が仮想的な周波数“0”であれば、この発生周波数データGFj(t)も“0”となることがある。
【0037】
この発生周波数データGFj(t)+音高情報は、対数−リニア変換回路A48でリニアな値に変換され、サブトラクタA49で上記周波数シフトデータFSj(t)+シフト制御データSCj(t)+エンベロープデータが減算され、上記第二周波数シフト部A30へ送られる。これにより、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の本来の音高への周波数シフト分から、第一周波数シフト部A10での周波数シフト分が差し引かれ、残りの分のみについて第二周波数シフト部A30で周波数シフトが行われる。
【0038】
上記アダーA01からの音高情報はアダーA50で上記帯域幅BWの値が加算され、対数−リニア変換回路A51でリニアな値に変換される。これにより、帯域制御フィルタA06を経て帯域が帯域幅±BWに限定された楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の上端周波数値fj(t)+と下端周波数値fj(t)−とが求められる。この周波数値fj(t)は、サブトラクタA52で上記周波数シフトデータFSj(t)から減算され、またデータシフタ(マルチプライヤ)A53で2倍されてアダーでサブトラクタA52からのデータが加算されて、第一周波数シフト部A10での周波数シフトに応じた修正が行われる。
【0039】
この上端周波数値fj(t)+と下端周波数値fj(t)−とはフィルタゲインテーブルA55に読み出しアドレスデータとして供給され、各周波数値fj(t)に応じたゲインデータgj(t)+、gj(t)−が読み出される。このフィルタゲインテーブルA55は同じものが並列して2つ設けられているが、2つの入力ラッチ、マルチプレクサ、1つのフィルタゲインテーブルA55、デマルチプレクサ、2つの出力ラッチに置き換えて、時分割処理が行われてもよい。
【0040】
このフィルタゲインテーブルA55のゲインデータはフォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示しており、フォルマント制御フィルタA20のフィルタ演算パラメータから演算によって求められるのはいうまでもない。
【0041】
図5に示すように下端ゲインデータgj(t)−は、アダーA56でリンクデータLinkj(t)が加算され、対数−リニア変換回路A59でリニアな値に変換されて、上記マルチプライヤA41へ送られる。一方、上端ゲインデータgj(t)+は、サブトラクタA57で上記下端ゲインデータgj(t)−が減算され、アダーA58で上記リンクデータLinkj(t)が加算されて新たなリンクデータLinkj(t)として出力される。このリンクデータLinkj(t)はラッチA70に記憶され、次のリンクデータLinkj+1(t)として上記アダーA56に入力される。
【0042】
このラッチA70は、上記タイミング制御部30からの一定周期のトリガ信号によってクリアされる。このトリガ信号の周期は、一楽音当たりの部分音が4つであれば、4チャンネル分の分割時間に等しい。なお、上記マルチプライヤA41は、フォルマント制御フィルタA20の出力側に設けてもよい。
【0043】
このようなフィルタゲインテーブルA55及びマルチプライヤA41が設けられているのは、以下の理由からである。上述の楽音波形データTWj(t)は1つの発音指示または1つの楽音につき、上述のように複数存在する部分音である。図1のシフト・フィルタ部A0では、この各部分音である楽音波形データTWj(t)につき、それぞれ図7に示す傾斜の過渡帯域でフィルタ処理等の楽音制御処理が行われる。このため、フォルマント制御フィルタA20での各部分音ごとのフィルタ処理にあたり、図5に示すように各部分音の周波数帯域の境界でゲインの整合をとる必要がある。
【0044】
このため、フィルタゲインテーブルA55、マルチプライヤA41、アダーA56、A58、サブトラクタA57等が設けられている。楽音波形データTWj(t)を部分音に分けない場合は、これらの回路A55、A41、……は必要ない。特に、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が非常に広く、楽音波形データTWj(t)の全周波数帯域がすべて入る場合は必要ない。なお、上記アダーA50からの音高情報(キーナンバKN)または帯域幅BWが変化すると、上記部分楽音波形の境界部分のゲインも変化し、これに応じたゲインの整合が行われる。
【0045】
また、上記楽音波形データTWj(t)が、音高に関係なく一定周波数の信号、例えば上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)であれば、アダーA47が省略されて、音高情報(キーナンバKN)のみが対数−リニア変換回路A48に入力されることができる。この場合、この図2のシフト・フィルタ部A0は、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。このマルチプライヤ66及び652は特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。
【0046】
以上のようにして、周波数シフトによって、音高に応じた楽音を発生させることができる。この音高に応じた楽音は、図12に示すような左右対称のフォルマント形状ではなく、図15のF8に示すような左右非対称のフォルマント形状となる。なお、上記対数−リニア変換回路A45、A48、A51、A59の入力側のアダーでの加算及びサブトラクタでの減算は、対数−リニアの変換によって実際は乗算及び除算となる。むろん、これら対数−リニア変換回路が省略されて上記アダー及びサブトラクタがマルチプライヤ等に置き換えられてもよい。また、上記シフト・フィルタ部A0は複数設けられて、時分割処理が省略されてもよい。この場合、リンクデータLinkj(t)は部分楽音波形の周波数帯域の低い方の回路A0から高い方の回路A0へ送られる。
【0047】
《3》フォルマント制御フィルタA20
図6は上記フォルマント制御フィルタA20の一例を示す。このフィルタは畳み込み演算を行うFIR型デジタルフィルタである。各遅延器A71…は例えばCCDまたはBBDなどで構成され、各タップの出力が各遅延器A71…の出力となる。この各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA72…で乗算データA1、A2、A3、…が乗算され、アダーA73で加算合成されて出力される。
【0048】
各遅延器A71…の遅延時間はサンプリング周波数fsの周期Tsに等しく、このサンプリング信号φs1が上記タイミング発生部30、プログラマブルカウンタまたはプログラマブル発振器等から各遅延器A71…(CCD)に供給される。サンプリング周波数データfs1(Ts1)は、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A74に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs1が上記各遅延器A71…に入力され、これによってカットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数は上記フィルタ係数データA1、A2、A3、…によっても変更かつ決定される。
【0049】
図7は上記フォルマント制御フィルタA20をDSP(デジタルシグナルプロセッサ)またはマイクロコンピュータで実現したときのフローチャートを示す。このフィルタリング処理では、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数A1〜Amが乗算され、これら乗算データと入力楽音波形データTWj(t)との積和が求められ出力される(ステップ2)。
【0050】
そして、DSP内のRAMのレジスタ内のデータH1〜Hnが、n次遅延データHnから順に1つ高い次数の遅延データへと移行されていく(ステップ4〜8)。最後に入力楽音波形データTWj(t)が1次遅延データH1に移行される(ステップ10)。以上の処理が、上記サンプリング周波数fsの周期Tsにてインタラプト処理で繰り返される。
【0051】
図8は上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示す。この特性は、周波数0からカットオフ周波数付近までが通過帯域となり、カットオフ周波数付近以降が阻止帯域となり、この通過帯域と阻止帯域との間のカットオフ周波数付近が過渡帯域となっている。上記第一周波数シフト部A10による周波数シフトによって上記楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、この過渡帯域の中に入り上記フィルタ処理が行われる。
【0052】
この過渡帯域では、減衰特性が徐々に変化するので、フィルタ制御される楽音波形データTWj(t)の周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に徐々に変化していく。このため、楽音波形データTWj(t)の周波数特性の一部だけが変化してしまうことがなくなり、周波数上、全体的な変化を実現することができる。
【0053】
なお、上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性は、サンプリング周波数fsの整数倍の周波数近辺でも通過帯域が存在し、同様に阻止帯域と過渡帯域とが存在する。したがって、上記の例ではローパスフィルタであったが、フィルタ処理するエリアを別の過渡帯域から選択すればハイパスフィルタの過渡帯域としても使用可能である。
【0054】
図9はフォルマント制御フィルタA20の他の周波数特性を示す。この場合フォルマント制御フィルタA20は、複数のフィルタによって構成され、上記楽音波形データTWj(t)は、この複数のフィルタに並列に入力され、各フィルタ出力がアダーで加算合成される。このフォルマント制御フィルタA20は、特開平3−177898号の明細書及び図面に示されるフィルタ演算手段またはフィルタ処理手段を用いてもよく、この特願平3−177898号の明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとする。なお、図9の周波数特性は、この周波数特性の左右対称の周波数特性であってハイパスフィルタの周波数特性であってもよい。
【0055】
図10はシフト・フィルタテーブルA90を示す。上記シフト制御データSCj(t)、周波数シフトデータFSj(t)、サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、A3、…、エンベロープスピードデータ、エンベロープ目標データ、発生周波数データGFj(t)、音楽的エフェクト情報の中のビブラート等の周波数変調情報は、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べたデータSP、O、Min、Ta、Ea、フォルマント形状信号Ffj(t)、フォルマント密度パラメータωfj(t)、フォルマントキャリアパラメータωcj(t)、n組のパラメータωcjk(t)、ajk(t)、cj(t)、フォルマント形状テーブル212またはフォルマント中心テーブル214の記憶と同じように、上記音楽的ファクタごと及び発音開始からの経過時間、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズごとに多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶されている。
【0056】
この音楽的ファクタは上述したように演奏情報発生部10より出力され、発音開始からの経過時間は上述したようにフォルマント制御パラメータValj(場合によっては累算フォルマント密度パラメータΣωfj(t)または累算フォルマントキャリアパラメータΣωcj(t))またはタイムカウントデータが使われ、エンベロープレベルデータは上記フォルマント制御パラメータalj(t)が使われ、エンベロープフェーズはリクエストデータReqのカウント数に基づく。このリクエストデータReqは、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べられた。
【0057】
これら音楽的ファクタ等のデータは、上記テーブルに上位読み出しアドレスデータとして供給される。また、このような音楽的ファクタ等ごとのデータSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…、エンベロープスピードデータ、エンベロープレベルデータ、ビブラート等の情報は、操作者によって演奏情報発生部10のパネルスイッチ群から入力された選択データ(上位読み出しアドレスデータ)によっても選択読み出しされる。また、このデータSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…、エンベロープスピードデータ、エンベロープ目標データ、ビブラート等の周波数変調情報は、操作者によって演奏情報発生部10より入力されたりする。
【0058】
上記音楽的ファクタには、上述のエンベロープ情報にしたがって変化するまたは時間の経過にしたがって変化するフォルマント制御パラメータValj、タイムカウントデータなどが、後述する種々の演算(1)等によって修正合成されてもよい。
【0059】
なお、上記発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルごとの記憶は省略され、上記各データSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…等に対し、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルが修正合成されてもよい。この修正合成は、後述する種々の演算(1)等によるものであり、上記テーブルの出力端に、発音経過時間またはエンベロープレベルを修正合成する演算装置が設けられる。
【0060】
また、上述のようにしてテーブルより読み出された上記データSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…等は、特願平6−231817号の明細書及び図面の中の図26について説明されているアサインメントメモリ213の各チャンネルエリアに書込まれ、順次時分割に読み出されて図2のシフト・フィルタ部A0に供給されてもよい。
【0061】
以上のような制御により、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベル/フェーズに応じて、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域のシフト量が変更される。また、上記サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、A3、…の変更制御により、上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性及びカットオフ周波数などが変更され、これによりフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域自体もシフトされ、この結果過渡帯域の中の楽音波形データTWj(t)がフィルタ制御される部分(エリア)が変更される。
【0062】
《4》第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)
図11は上記第一周波数シフト部A10及び第二周波数シフト部A30を示す。上述の周波数シフトデータFSj(t)等または発生周波数データGFj(t)等は、アキュムレータA70で各チャンネルごとに時分割で累算され、それぞれコサインテーブルA60及びサインテーブルA61へ供給される。ここで、この周波数シフトデータFSj(t)等または発生周波数データGFj(t)等をωsjとすると、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61からは、シフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)が出力される。このシフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)は、マルチプライヤA62、A63へ供給され、楽音波形データTWj(t)に乗算され、フィルタA64、A65を経て、アダーA64で加算合成される。
【0063】
楽音波形データTWj(t)は、フーリエ解析の原理により、以下のように表わすことができる。
【0064】
TWj(t)=ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)
…(A1)
Σは、n=1からn=m(mは任意の数)までの累算を示す記号である。これにシフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)を乗算すると以下のようになる。
【0065】
TWj(t)×cosωsj(t)
={ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)}
×cosωsj(t)
= 1/2×ΣAn×cos{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×ΣAn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn−ωsj)(t)} …(A2)
TWj(t)×sinωsj(t)
={ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)}
×sinωsj(t)
= 1/2×ΣAn×sin{(ωn+ωsj)(t)}
−1/2×ΣBn×cos{(ωn+ωsj)(t)}
−1/2×ΣAn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×cos{(ωn−ωsj)(t)} …(A3)
この2つにつき、ローパスフィルタを経てcos{(ωn+ωsj)(t)}とsin{(ωn+ωsj)(t)}との成分をカットすると以下のようになる。
【0066】
Icj(t)= 1/2×ΣAn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
…(A4)
Isj(t)= 1/2×ΣBn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
−1/2×ΣAn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
…(A5)
この2つを加算合成すると以下のようになる。
【0067】
Iwj(t)−= …(A6)
1/2×(ΣAn+ΣBn)×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×(ΣBn−ΣAn)×sin{(ωn−ωsj)(t)}
これは、振幅を除いて、もとの楽音波形データTWj(t)の周波数帯域すなわち全周波数成分がそっくり−ωsjだけシフトされたことになる。
【0068】
また、上記2つにつき、ハイパスフィルタを経てcos{(ωn−ωsj)(t)}とsin{(ωn−ωsj)(t)}との成分をカットして加算合成すると以下のようになる。
【0069】
Iwj(t)+= …(A7)
1/2×(ΣAn−ΣBn)×cos{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×(ΣAn+ΣBn)×sin{(ωn+ωsj)(t)}
これも、振幅を除いて、もとの楽音波形データTWj(t)の周波数帯域すなわち全周波数成分がそっくり+ωsjだけシフトされたことになる。これらの±ωsjの周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。
【0070】
楽音波形データTWj(t)の周波数シフトが−ωsjにされる場合は、上記フィルタA64、A65は、ローパスフィルタとなり、周波数シフトが+ωsjにされる場合は、ハイパスフィルタとなる。このローパスフィルタ及びハイパスフィルタのカットオフ周波数は、ωsjである。なお通常、シフト角周波数ωsjは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域幅ωn(BW)より大きい値、例えばほぼ同じ値、2倍値、3倍値、…、であるが、周波数帯域幅ωnより小さい値でも可能である。フィルタA64、A65は、例えば上記図6の回路または図7の処理によって実現される。
【0071】
これに応じて、上記帯域幅BWの値はマルチプライヤ(データシフタ)A68で1倍、2倍または3倍…され、アダーA69で上記シフト量ωsjが加算され、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A67に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs2が上記フィルタA64、A65に入力され、これによって上記カットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数はフィルタA64、A65のフィルタ係数データ(A0)、A1、A2、A3、…、B1、B2、B3、…によっても変更かつ決定される。
【0072】
また、マルチプライヤ(データシフタ)A63は省略されてもよい。さらに、上記フィルタA64、A65のフィルタ係数データについても、上記フィルタ係数データA1、A2、A3、…と同じように、多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶され、同様に入力、修正、合成、変更等されることができる。
【0073】
なお、図11のサインテーブルA60、マルチプライヤA62及びフィルタA64が省略されたり、またはコサインテーブルA61、マルチプライヤA63及びフィルタA65が省略されてもよい。これによっても、周波数シフトを行うことができる。
【0074】
図12は、上記楽音波形データTWj(t)が上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)であるとき、この第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)による周波数シフトの状態を示す。フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)とフォルマントキャリア信号Gj(t)とは、マルチプライヤ66で合成されてフォルマント合成信号Wj(t)(楽音信号)として出力される。ここで、フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)のフォルマント形状が図12(1)に示す形状であれば、フォルマント合成信号Wj(t)のフォルマント形状は図12(2)となる。
【0075】
ここでもし、フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)が図12(3)に示されるように周波数シフトされると、フォルマント合成信号Wj(t)のフォルマント形状は図12(4)となる。この周波数シフトされた図12(4)のフォルマント形状と、図12(2)のフォルマント形状とは、周波数成分が異なり、しかもこの周波数帯域の各周波数成分の倍音比も異なり、音色(音質)が異なる。従って、このような周波数シフトによって音色(音質)を変えることができる。この周波数シフトの量は、上述したように音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ等に応じて変化するので、この周波数シフトによる音色(音質)変化も音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ等に応じて変化する。
【0076】
《5》シフト・フィルタ部A0(第2実施例)
図13は、シフト・フィルタ部A0の第2実施例を示す。このシフト・フィルタ部A0は、上記フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。そして、入力される上記楽音波形データTWj(t)は、音高に関係なく一定周波数の信号、例えば上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)である。しかし、この入力される上記楽音波形データTWj(t)は、音高に応じた信号、例えばフォルマント合成信号Wj(t)、フォルマントキャリア信号Gfj(t)、Gj(t)、cosωcj(t)でもよい。この場合、シフト・フィルタ部A0は、上記フォルマント波形制御部60と累算部70との間に設けられる。以下の述べること以外については、上述のシフト・フィルタ部A0の説明が参照される。
【0077】
上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、補間回路AB3、AB3で波形の各サンプリングポイントが補間され、周波数シフト回路A91、A91で周波数シフトされて、アダーA92で加算合成され、エンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、ラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、アダーA95で加算合成され、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66または累算部70へ出力される。なお、エンベロープ制御回路A92またはラウドネス制御回路A93は省略可能である。
【0078】
上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、後述するように上記楽音波形メモリA05に記憶されてもよい。上記補間回路AB3は、特開昭51−8924号、特開昭53−50722号、特開昭53−107815号、特開昭63−98699号、特開平2−126293号、特開平2−240697号、特開平3−204696号の各明細書及び図面に示される装置を用いてもよく、これら各明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとする。
【0079】
《6》周波数シフト部A10(A30)
図14は、上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)を発生する回路を示す。この図14の回路は、アダーA66を除いて上述の図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)と同じである。したがって、図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)でも、この図14に示した動作と同じ動作が実行されている。この図14の回路では各部の楽音信号のフォルマント形状が示されている。以下の述べること以外については、上述の図11の回路の説明が参照される。
【0080】
楽音波形データTWj(t)のフォルマント形状を図14のF1で示すものとする。マルチプライヤA63でcosωsj(t)が乗算された楽音波形データのフォルマント形状はF2のような形状になる。F2のフォルマント形状は、マイナスの周波数成分も仮想的に現れる。またマルチプライヤA62でsinωsj(t)が乗算された楽音波形データのフォルマント形状はF3のような形状になる。F3のフォルマント形状は、マイナスの周波数成分及びマイナスの成分レベルも仮想的に現れる。
【0081】
この場合、楽音波形データTWj(t)の中心角周波数ωcの値とcosωsj(t)及びsinωsj(t)の角周波数シフト量ωsの値とは同じである。これにより周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の中心周波数はゼロとなる。むろん、ωcの値とωsの値とは異なっていてもよい。そして、フィルタ(ローパス)A65、A64を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF4、F5のような形状になる。これにより、上記周波数シフトにより発生された複数の同じ形のフォルマントの中から、周波数がゼロの付近の1つのフォルマントが選択抽出される。
【0082】
こうして、周波数シフトによって、F1のようなフォルマントの楽音波形データTWj(t)が、F4、F5のような中心周波数が“0”のフォルマントの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)に変換される。従って、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)の記憶サンプリング周波数は、楽音波形データTWj(t)の記憶サンプリング周波数より低くてよいため、楽音波形データTWj(t)がデータ圧縮されて記憶される。
【0083】
この楽音波形データIcj(t)、Isj(t)それぞれ、またはこの2つの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)が加算合成または乗算合成された楽音波形データが、上記図2の楽音波形メモリA05に上記楽音波形データTWj(t)として記憶される。
【0084】
この楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)の一部は周波数帯域がほぼ重複しないまたは一部重複する複数の部分楽音波形であり、上記第二周波数シフト部A30または後述するアダーA92を経た後、1つの楽音に合成出力される。楽音波形メモリA05は、楽音生成装置に対して着脱自在であってもよく、CD−ROM/RAMまたはROM/RAMカード等であってもよい。
【0085】
この記憶される多数の楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は多種類、音色、音域、タッチ等の音楽的ファクタごと、発音経過時間ごと、エンベロープレベル/フェーズごと、操作者の選択データごとに多層的に記憶され、これら音楽的ファクタ等に応じたデータが読み出される。
【0086】
なお、この楽音波形データは、第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)で周波数シフトまたはフォルマント制御フィルタA20でフィルタ制御されてもよい。これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)の中心角周波数が“0”であるため、周波数シフトの処理が簡単になる。また、この図14の周波数シフト部A10(A30)を上記補間回路AB3の入力側に設けてもよい。
【0087】
《7》周波数シフト回路A91
図15は、上記周波数シフト回路A91、アダーA92等を示す。マルチプライヤA97、A96では、上記読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)にcosωrj(t)、sinωrj(t)が乗算され、角周波数ωrjの周波数シフトが行われる。このマルチプライヤA97、A96を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF6、F7のように、角周波数ωrjに応じた周波数シフトのされた形状になる。F6、F7のフォルマント形状はマイナス周波数の側にも存在するが省略されている。
【0088】
この周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、上記アダーA92で加算合成され再生されて出力される。これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のプラスの周波数成分とマイナスの周波数成分とが相殺しあって、合成楽音波形データのフォルマントはF8に示すような形状となり、元の楽音波形データTWj(t)のフォルマントF1をそっくり角周波数ωrjだけ周波数シフトしたものとなる。
【0089】
この加算合成された楽音波形データは、マルチプライヤであるエンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、同じくマルチプライヤであるラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、上記アダーA95で他の楽音波形データと加算合成される。このエンベロープ制御回路A93に送られるエンベロープデータとラウドネス制御回路A94に送られるラウドネスデータとは、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べたデータValj(aj(t)、cj(t)、dj(t))のいずれかが使用される。
【0090】
また、この図15の周波数シフト回路A91には、図示しないが、図11のアキュムレータA70、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61と同じ回路が設けられており、このコサインテーブルA60及びサインテーブルA61から上記マルチプライヤA97、A96へ、上記cosωrj(t)、sinωrj(t)が入力される。このアキュムレータA70には、周波数シフトデータωrjが入力される。この周波数シフトデータωrjは、上記周波数シフトデータωsjと全く同じように発生される。
【0091】
したがって、この周波数シフト量ωrjは、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。また、上記エンベロープ制御回路A93に送られるエンベロープデータとラウドネス制御回路A94に送られるラウドネスデータとも、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。
【0092】
さらに、周波数シフト量ωrjは、発生する楽音の音高(キーナンバKN)に応じたものとすることができる。これにより、音高に応じた楽音は、図12の左右対称のフォルマント形状ではなく、図15のF8の左右非対称のフォルマント形状を実現することができる。この場合、この周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化せず、フォルマントの幅も変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。またこの再生時の周波数シフト量ωrjの値は、上記記憶時の周波数シフトデータωsjの値と同じで、プラスマイナス逆であってもよい。
【0093】
《8》シフト・フィルタ部A0(第3実施例)
図16は、シフト・フィルタ部A0の第3実施例を示す。このシフト・フィルタ部A0は、上述の図13の第2実施例のシフト・フィルタ部A0とそっくり入れ代わることが可能なものである。したがって、第2実施例と同じ部分の説明は省略するが、この同じ部分の説明はここでもすべてそっくり記載されているものとする。以下の述べること以外については、上述のシフト・フィルタ部A0の説明が参照される。
【0094】
上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの周波数シフトされたまたは読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、上記補間回路AB3、AB3で波形の各サンプリングポイントが補間され、周波数シフト回路AA1、AA2で周波数シフトされて、上記フォルマント制御フィルタA20、A20でフィルタ制御され、周波数シフト回路AA3、AA4で周波数シフトされて、上記アダーA92で加算合成され、上記エンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、上記ラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、アダーA95で加算合成され、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66または累算部70へ出力される。
【0095】
なお、エンベロープ制御回路A92またはラウドネス制御回路A93は省略可能である。上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)を発生する回路は、図15に示された回路またはアダーA66を除いた図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)と同じである。
【0096】
《9》周波数シフト回路AA1〜AA4
図17は、上記周波数シフト回路AA1、AA2、フォルマント制御フィルタA20、A20、周波数シフト回路AA3、AA4及びアダーA92を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20の説明が参照される。マルチプライヤAA5、AA6では、上記楽音波形データIcj(t)にcosωpj(t)、−sinωpj(t)が乗算され、角周波数ωpjの周波数シフトが行われる。マルチプライヤAA7、AA8では、上記楽音波形データIsj(t)にcosωpj(t)、sinωpj(t)が乗算され、角周波数ωpjの周波数シフトが行われる。
【0097】
上記マルチプライヤAA5、AA8からのデータは、アダーAA9で加算合成され、上記マルチプライヤAA6、AA7からのデータは、アダーAB0で加算合成される。このアダーAA9、AB0を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF9、FAのように、角周波数ωpjに応じた周波数シフトのされた形状になる。マイナス周波数の側のフォルマントの周波数成分はプラス、マイナス相殺しあう。
【0098】
この周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、フォルマント制御フィルタA20、A20で、上述したフィルタ制御が行われる。これにより、フォルマント形状FB、FCに示すように、フォルマントの周波数成分が変化される。この変化分は基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に徐々に変化していく。
【0099】
このフォルマント制御フィルタA20からの楽音波形データは、周波数シフト回路AA3のマルチプライヤAB1で、cosωqj(t)が乗算され、角周波数ωqjの周波数シフトが行われる。もう1つのフォルマント制御フィルタA20からの楽音波形データは、周波数シフト回路AA4のマルチプライヤAB2で、sinωqj(t)が乗算され、角周波数ωqjの周波数シフトが行われる。これら、マルチプライヤAB1、AB2からの楽音波形データはアダーA92で加算合成され再生されて出力される。
【0100】
これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のプラスの周波数成分とマイナスの周波数成分とが相殺しあって、合成楽音波形データのフォルマントはFDに示すような形状となり、元の楽音波形データTWj(t)のフォルマントF1をフィルタ制御して角周波数ωpj+ωqjだけ周波数シフトしたものとなる。
【0101】
この図17の周波数シフト回路AA1〜AA4には、図示しないが、図11のアキュムレータA70、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61と同じ回路が設けられており、このコサインテーブルA60及びサインテーブルA61から上記マルチプライヤAA5〜AA8、AB1、AB2へ、上記cosωpj(t)、±sinωpj(t)、cosωqj(t)、sinωqj(t)が入力される。このアキュムレータA70には、周波数シフトデータωpj、ωqjが入力される。この周波数シフトデータωpj、ωqjは、上記周波数シフトデータωsjと全く同じように発生される。
【0102】
したがって、この周波数シフト量ωpj、ωqjは、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。また、周波数シフト量ωpj、ωqjは、発生する楽音の音高(キーナンバKN)に応じたものとすることができる。これにより、音高に応じた楽音は、図12の左右対称のフォルマント形状ではなく、図17のFDの左右非対称のフォルマント形状を実現することができる。この場合、この周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化せず、フォルマントの幅も変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。またこの再生時の周波数シフト量ωpj+ωqjの値は、上記記憶時の周波数シフトデータωsjの値と同じで、プラスマイナス逆であってもよい。
【0103】
《10》フォルマント制御フィルタA20(第2実施例)
図18は上記フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65の第2実施例を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20、フィルタA64またはA65の説明が参照される。このフィルタは畳み込み演算を行うIIR型デジタルフィルタである。各遅延器A71…は例えばCCDまたはBBDなどで構成され、各タップの出力が各遅延器A71…の出力となる。アダーA76を経た入力楽音波形データTWj(t)、この各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA72…で乗算データA0、A1、A2、A3、…が乗算され、アダーA73で加算合成されて出力される。また、各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA75…で乗算データB1、B2、B3、…が乗算され、アダーA76で上記入力楽音波形データTWj(t)に加算合成される。
【0104】
各遅延器A71…の遅延時間はサンプリング周波数fsの周期Tsに等しく、このサンプリング信号φs1が上記タイミング発生部30、プログラマブルカウンタまたはプログラマブル発振器等から各遅延器A71…(CCD)に供給される。サンプリング周波数データfs(Ts)は、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A74に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs1が上記各遅延器A71…に入力され、これによってカットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数は上記フィルタ係数データA0、A1、A2、A3、…、B1、B2、B3、…によっても変更かつ決定される。
【0105】
図19は上記フォルマント制御フィルタA20をDSP(デジタルシグナルプロセッサ)またはマイクロコンピュータで実現したときのフローチャートを示す。このフィルタリング処理では、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数B1〜Bnが乗算され、これら乗算データと入力楽音波形データTWj(t)とを含めた積和が求められ現在データH0としてDSP内のRAMのレジスタに格納される(ステップ12)。
【0106】
次に上記現在データH0、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数A0〜Amが乗算され、これら乗算データの積和が求められ出力される(ステップ14)。そして、DSP内のRAMのレジスタ内のデータH0〜Hnが、n次遅延データHnから順に1つ高い次数の遅延データへと移行されていく(ステップ16〜20)。以上の処理が、上記サンプリング周波数fs1の周期Ts1にてインタラプト処理で繰り返される。
【0107】
上記サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA0、A1、A2、…、B1、B2、…は、上述のサンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、…とまったく同じように、上記音楽的ファクタごと及び発音開始からの経過時間、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズごとに多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶され、また操作者によって演奏情報発生部10のパネルスイッチ群から入力された選択データによって選択読み出しされ、さらに操作者によって演奏情報発生部10より入力されたりするし、種々の演算(1)等による修正合成も可能である。
【0108】
《11》フォルマント制御フィルタA20(第3実施例)
図20は上記フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65の第3実施例を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20、フィルタA64またはA65の説明が参照される。上記楽音波形データTWj(t)はデマルチプレクサA77を介して、フィルタA78…のいずれかに入力され、フィルタ制御が行われてマルチプレクサA79を介して出力される。フィルタA78…は上述の図6、図7、図18または図19に示されるものである。各フィルタA78…のそれぞれの過渡帯域の周波数上の位置またはカットオフ周波数は、音域(音高)に対応して異なっている。
【0109】
上記アダーA01からの音高情報(キーナンバデータKN)の上位の音域データまたは周波数ナンバテーブルA03からの周波数ナンバデータFNの上位の音域データが、上記デマルチプレクサA77及びマルチプレクサA79に選択(切り換え)データとして供給される。この場合、第一周波数シフト部A10、サブトラクタA49、A52は省略され、フィルタゲインテーブルA55からの出力は上記音域データ(音高情報)に応じて演算修正され、各フィルタA78…のそれぞれの過渡帯域の周波数上の位置に応じた修正が行われる。また、第二周波数シフト部A30での周波数シフトは、音高情報の下位の音名データに応じた周波数シフトのみとなるか、または第二周波数シフト部A30は省略される。
【0110】
本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図2、図11、図14〜図17の上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、上記第一周波数シフト部A10若しくは第二周波数シフト部A30からの楽音波形データTWj(t)、またはマルチプライヤA62、A63、A96、A97、AA5、AA6、AA7、AA8、AB1、AB2、アダーA92、A95、AA9、AB0、フォルマント制御フィルタA20の各箇所から発生された楽音波形データが、上記楽音波形メモリA05に音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示ごとにいったん記憶されてもよい。そして、この発生され記憶された各データは、上記発生箇所以降の回路に入力される。
【0111】
この場合、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示ごとに、読み出される楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)が切り換えられ、または変更される。そして、上記音楽的ファクタには、上述のエンベロープ情報にしたがって変化するまたは時間の経過にしたがって変化するフォルマント制御パラメータValj、タイムカウントデータなどが、後述する種々の演算(1)等によって合成されてもよい。この読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)は、上記発生箇所以降の回路に入力される。
【0112】
なお、上記発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルごとの記憶は省略され、上記各楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)に対し、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルが修正合成されてもよい。この修正合成は、後述する種々の演算(1)等によるものであり、上記楽音波形メモリA05の出力端に、発音経過時間またはエンベロープレベルを修正合成する演算装置が設けられる。
【0113】
上記または下記各所で述べた「後述する種々の演算(1)」とは、アダーでの各データの加算または減算、マルチプライヤでの各データの乗算または除算、アダー及びマルチプライヤでのこれらの組み合わせ演算、各データの他の相加的演算、各データの他の相乗的演算、データシフタでの、あるデータによる他のデータのビットシフト演算、あるデータが上位となり他のデータのデータが下位となる合成演算、演算回路等での演算式に基づく各データの演算、各データの演算データがメモリに記憶され、各データが読み出しアドレスデータとされることによる、演算データの読み出し等である。
【0114】
上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、一方がある楽音波形データTWj(t)の中からコサイン成分のみを抽出した成分波形データであり、他方がある楽音波形データTWj(t)の中からサイン成分のみを抽出した成分波形データであってもよい。このような抽出は、特願昭56−37342号(特公平6−95280号)の明細書及び図面に記載の偶数トランスバーサルフィルタ13と奇数トランスバーサルフィルタ14とによって行われる。これらトランスバーサルフィルタ13及び14に供給される標本化信号(サンプリング信号)の周波数が広い範囲で切り換えられ、これにより全周波数帯域において、コサイン成分とサイン成分とが分けられかつ抽出される。
【0115】
本願明細書及び図面に開示されている他の発明及びその発明者は以下のとおりである。
【0116】
【第2発明−発明者 鈴木隆志、鷲山豊】
本発明は、フィルタの通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域だけにおいて、楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行うものである。これにより、フィルタの過渡帯域では、減衰特性が徐々に変化するので、フィルタ制御される楽音の周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に変化していく。このため、楽音の周波数特性の一部だけが変化してしまうことがなくなり、周波数上、全体的な変化を実現することができ、従来にない楽音上の制御を行うことができる。また、本発明は、楽音波形の周波数帯域が、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで周波数上でシフトされ、フィルタ処理が行われて、さらに音高に応じた周波数へのシフトが行われるものである。これにより、フィルタの特性の特定の箇所を選んで、この箇所でのみフィルタ制御を行うことができ、フィルタ特性を安定して実現ことができる。また、フィルタ処理の後、音高に応じた周波数シフトが行われるので、音高に関係なくフィルタ処理を行うことができる。なお、フィルタの特性は変化させることもできる。
【0117】
【1】楽音波形を発生する楽音波形発生手段と、この楽音波形発生手段で発生された楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段であって、このフィルタ手段はその通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域だけにおいて、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行うものであり、上記楽音波形発生手段から発生される楽音波形の周波数帯域が、上記フィルタ手段の過渡帯域に入るように、この楽音波形の周波数帯域を制限する制限手段と、上記フィルタ手段によってフィルタ制御された楽音波形を楽音として出力する楽音出力手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0118】
【2】楽音制御データを発生する楽音制御データ発生手段と、この楽音制御データ発生手段によって発生された楽音制御データに基づいて、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択される過渡帯域選択手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
【0119】
【3】上記楽音波形の周波数帯域が周波数シフトされることにより、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択される、または上記フィルタ手段の過渡帯域が周波数シフトされることにより、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択されることを特徴とする請求項1または2記載の楽音制御装置。
【0120】
【4】上記楽音波形発生手段は、周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段であり、または上記楽音出力手段は、複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段であることを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
【0121】
【5】上記フィルタ手段の過渡帯域のフィルタ制御の行われる部分の周波数特性は直線的であり、上記複数の部分楽音波形はこの直線的な部分でのみフィルタ制御が行われ、上記フィルタ手段の過渡帯域の実際の周波数特性が非直線的であっても、結果的に直線的になることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
【0122】
【6】上記楽音制御データ発生手段から発生される楽音制御データは、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じていることを特徴とする請求項2または3記載の楽音制御装置。
【0123】
【7】楽音波形を発生する楽音波形発生手段と、この楽音波形発生手段で発生された楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトする第1の周波数シフト手段と、この第1の周波数シフト手段によって周波数シフトされた楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段と、このフィルタ手段によってフィルタ処理された楽音波形を音高に応じた周波数にシフトする第2の周波数シフト手段と、この第2の周波数シフト手段によって周波数シフトされた楽音波形を楽音として出力する楽音出力手段と、上記楽音波形発生手段から発生される楽音波形の周波数帯域が、上記フィルタ手段の過渡帯域に入るように、上記第1の周波数シフト手段での周波数シフトの量を決定する第1の周波数シフトデータを発生して、上記第1の周波数シフト手段へ送る第1の周波数シフトデータ発生手段と、この第1の周波数シフト手段からの第1の周波数シフトデータを、上記音高に応じた周波数シフトデータから修正して、上記第2の周波数シフト手段へ送る第2の周波数シフトデータ発生手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0124】
【8】上記フィルタ手段は、その通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域において、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行う、または、その通過帯域から阻止帯域にわたって、上記楽音波形の周波数帯域につきフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項7記載の楽音制御装置。
【0125】
【9】上記周波数シフト手段は、上記楽音波形発生手段で発生された楽音波形に同じ周波数の正弦波信号と余弦波信号とを乗算合成し、ローパスフィルタ手段またはハイパスフィルタ手段を経て加算合成することを特徴とする請求項7または8記載の楽音制御装置。
【0126】
【10】上記第1の周波数シフトデータ発生手段から発生される第1の周波数シフトデータは、上記フィルタ手段の周波数特性のどこの帯域を使用するかを選択するためのデータであることを特徴とする請求項7、8または9記載の楽音制御装置。
【0127】
【11】上記楽音波形発生手段は、周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段であり、または上記楽音出力手段は、複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段であることを特徴とする請求項7、8、9または10記載の楽音制御装置。
【0128】
【12】上記第1の周波数シフトデータ発生手段から発生される第1の周波数シフトデータは、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じていることを特徴とする請求項7、8、9、10または11記載の楽音制御装置。
【0129】
【第3発明−発明者 石井克氏、鷲山豊】
本発明は、フィルタ処理された複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させるものである。これにより、それぞれの部分楽音波形の各周波数帯域境界部分のゲインの整合がとられ、均整のとれた合成楽音が出力されることができる。
【0130】
【1】周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段と、この部分楽音波形発生手段で発生された複数の部分楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段と、このフィルタ手段でフィルタ処理された複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段と、この合成手段で合成される複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させるゲイン整合手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0131】
【2】上記ゲイン整合手段は、上記フィルタ手段のフィルタ特性に応じたゲイン特性を発生するゲイン特性発生手段と、このゲイン特性発生手段から、上記複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインを取得するゲイン取得手段と、このゲイン取得手段によって取得されたゲインに基づいて、上記境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させる境界ゲイン整合手段とからなることを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
【0132】
【3】上記ゲイン取得手段は、上記境界部分における一方の部分楽音波形の周波数帯域のゲインと、他方の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとを取得し、上記境界ゲイン整合手段は、一方のゲインと他方のゲインとの差を演算し、この差に応じた修正演算を行うことを特徴とする請求項2記載の楽音制御装置。
【0133】
【4】上記部分楽音波形は、発生速度の変化に応じて周波数が変化し、これに応じて上記境界部分のゲインも変化することを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
【0134】
【5】上記部分楽音波形発生手段は、部分楽音波形を記憶する部分楽音波形記憶手段と、この部分楽音波形記憶手段より部分楽音波形を読み出す読み出し手段とからなることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
【0135】
【6】上記フィルタ手段は、その通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域において、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行う、または、その通過帯域から阻止帯域にわたって、上記楽音波形の周波数帯域につきフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の楽音制御装置。
【0136】
【7】上記フィルタ手段のフィルタ特性は、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じて変化することを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の楽音制御装置。
【0137】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトするようにした。したがって、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数シフトされるため、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し、音色(音質)が微妙に変化していき、従来にない楽音上の制御を行うことができる等の効果を奏する。また、本発明は、楽音の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして、このシフトによって発生する複数の同じ形のフォルマントの中から、フィルタ処理によって少なくとも1つのフォルマントを選択抽出して記憶するようにした。また、この記憶された楽音波形を周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして出力するようにした。したがって、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変わらないで、周波数シフトされて記憶/再生されるため、どのような音高でもフォルマントの幅が常に一定にされることができる等の効果を奏する。さらに、上記周波数シフトが楽音波形の周波数が低くされれば、楽音波形の記憶サンプリング周波数が低くて済むため、記憶する楽音波形がデータ圧縮されて記憶される等の効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】楽音生成装置及び楽音制御装置の全体回路図である。
【図2】シフト・フィルタ部A0を示す回路図である。
【図3】帯域制御フィルタA06の周波数特性を示す図である。
【図4】第一周波数シフト部A10及び第二周波数シフト部A30の周波数シフトを示す図である。
【図5】フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域における、楽音波形データTWj(t)の各部分音の周波数帯域の境界についての、ゲインの整合の状態を示す図である。
【図6】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65を示す回路図である。
【図7】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65のフィルタ処理のフローチャートを示す図である。
【図8】フォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示す図である。
【図9】フォルマント制御フィルタA20の別の例の周波数特性を示す図である。
【図10】シフト・フィルタテーブルA90を示す図である。
【図11】第一周波数シフト部A10または第二周波数シフト部A30を示す回路図である。
【図12】周波数シフトによる楽音の音色(音質)の違い示す図である。
【図13】シフト・フィルタ部A0(第2実施例)を示す回路図である。
【図14】周波数シフト部A10(A30)の動作を示す図である。
【図15】周波数シフト回路A91等を示す回路図である。
【図16】シフト・フィルタ部A0(第3実施例)を示す回路図である。
【図17】周波数シフト回路AA1〜AA4等を示す回路図である。
【図18】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第2実施例)を示す回路図である。
【図19】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第2実施例)のフィルタ処理のフローチャートを示す図である。
【図20】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第3実施例)を示す回路図である。
【符号の説明】
A0…シフト・フィルタ部、A05…楽音波形メモリ、A06…帯域制御フィルタ、A10…第一周波数シフト部、A20…フォルマント制御フィルタ、A30…第二周波数シフト部、A55…フィルタゲインテーブル、A60…コサインテーブル、A61…サインテーブル、A67、A74…プログララマブル発振器、A70…アキュムレータ、A77…デマルチプレクサ、A79…マルチプレクサ、A90…シフト・フィルタテーブル、AB3…補間回路、A91、AA1、AA2、AA3、AA4…周波数シフト回路、A93…エンベロープ制御回路、A94…ラウドネス制御回路。
【産業上の利用分野】
本発明は、楽音制御装置に関し、特に楽音の周波数シフトに関する。また、本発明は、楽音波形記憶方法及び楽音波形再生方法に関し、特に楽音の周波数シフトによる楽音波形の記憶方法及び再生方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、楽音の制御の分野においては、楽音波形の周波数帯域につき、周波数上でシフトするという制御を行うことはなかった。しかしながら、楽音波形の周波数帯域につき周波数上でシフトすれば、図12(2)と図12(4)に示すように、音色(音質)の異なった楽音を実現することができる。
【0003】
また従来、楽音波形メモリに記憶された楽音波形を読み出す場合、音高に応じて読み出し速度を変えると、読み出される楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変化する。例えば、音高を2倍にして楽音波形の読み出し速度を2倍にすると、読み出される楽音波形のフォルマントの幅は2倍に拡がり、フォルマントの各周波数成分の密度も1/2になる。
【0004】
さらに従来、楽音波形の記憶の分野においては、発生される楽音波形がサンプリング信号に応じた周期ごとにサンプリングされ、このサンプリングポイントがA−D(アナログ−デジタル)変換され、このデジタルのポイントデータが順次楽音波形メモリに記憶される。また、楽音波形の再生の分野においては、この楽音波形メモリに記憶されたサンプリング楽音波形が音高に応じた速度で順次読み出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記音高に応じた変化を、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで実現できれば、音高に応じて微妙に音色(音質)を変えていくことができる。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、従来にない周波数シフトによる楽音の制御を実現するものである。
【0007】
また、上記楽音波形メモリに記憶された楽音波形を読み出す場合、音高に応じて読み出し速度を変えると、読み出される楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変化する。例えば、音高を2倍にして楽音波形の読み出し速度を2倍にすると、読み出される楽音波形のフォルマントの幅は2倍に拡がり、フォルマントの各周波数成分の密度も1/2になる。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、音高が変わってもフォルマントの幅が変わらない楽音波形の記憶方法及び楽音波形の再生方法を実現するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトするものである。また、本発明は、楽音の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして、このシフトによって発生する複数の同じ形のフォルマントの中から、フィルタ処理によって少なくとも1つのフォルマントを選択抽出して記憶するようにした。また、この記憶された楽音波形を周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして出力するようにした。
【0010】
【作用】
これにより、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数シフトされるため、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し、音色(音質)が微妙に変化していき、従来にない楽音上の制御を行うことができる。また、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変わらないで、周波数シフトされて記憶/再生されるため、どのような音高でもフォルマントの幅が常に一定にされることができる。さらに、上記周波数シフトが楽音波形の周波数が低くされれば、楽音波形の記憶サンプリング周波数が低くて済むため、記憶する楽音波形がデータ圧縮されて記憶される。
【0011】
【実施例】
《1》全体回路
図1は楽音生成装置の全体回路を示す。演奏情報発生部10からは音高情報その他の演奏情報が発生される。この演奏情報発生部10は、マニュアル操作によって演奏される発音指示装置、自動演奏装置またはインターフェイスであって、この演奏情報発生部10から、上記演奏情報すなわち、音高情報(音域情報(上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤を含む))、発音開始からの経過時間情報、演奏パート情報、楽音パート情報、楽器パート情報等の音楽的ファクタ情報が発生される。発音指示装置は、キーボード楽器、弦楽器、吹奏楽器、打楽器、コンピュータのキーボード等である。自動演奏装置は、記憶された演奏情報を自動的に再生する。インターフェイスは、MIDI(ミュージカルインスツルメントデジタルインターフェイス)等、接続された装置からの演奏情報を受け取ったり、送り出したりする装置である。
【0012】
さらに、この演奏情報発生部10には各種スイッチが設けられ、この各種スイッチは音色タブレット、エフェクトスイッチ、リズムスイッチ、ペダル、ホイール、レバー、ダイヤル、ハンドル、タッチスイッチ等であって楽器用のものである。この各種スイッチより、音楽的ファクタ情報が入力され、この音楽的ファクタ情報は音色情報、タッチ情報(発音指示操作の速さ/強さ)、エフェクト情報、リズム情報、音像(ステレオ)情報、クオンタイズ情報、変調情報、テンポ情報、音量情報、フォルマント特性情報、エンベロープ情報、発音開始からの経過時間等である。
【0013】
これら音楽的ファクタ情報も上記演奏情報に含まれ、上記各種スイッチより入力されるほか、上記自動演奏情報に含まれたり、上記インターフェイスで送受される演奏情報に含まれる。なお、上記タッチスイッチは上記発音指示装置の1つ1つに対応して設けられており、タッチの速さと強さとを示すイニシャルタッチデータとアフタタッチデータとが発生される。上記音色情報は、鍵盤楽器(ピアノ等)、管楽器(フルート等)、弦楽器(バイオリン等)、打楽器(ドラム等)の楽器音等に対応している。上記エンベロープ情報は、エンベロープレベル、エンベロープフェーズなどである。上記演奏パート情報、楽音パート情報、楽器パート情報は、例えばメロディ、伴奏、コード、ベース等、または上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤等に対応している。このような音楽的ファクタ情報は、コントローラ20へ送られ、後述の各種信号、データ、パラメータの切り換えが行われる。
【0014】
上記演奏情報はコントローラ20で処理され、各種データがフォルマント制御パラメータ発生部40、フォルマント形状波形発生部50及び累算部70へ送られ、フォルマント合成信号Wj(t)が発生される。コントローラ20はCPU等からなっている。プログラム/データ記憶部21はROM、RAM等の記憶装置からなり、このプログラム/データ記憶部21には、コントローラ20が各種処理を行うためのプログラムや、上述した各種データとその他の各種データが記憶される。この各種データは時分割処理に必要なデータや時分割チャンネルへの割当のためデータ等も含む。
【0015】
フォルマント制御パラメータ発生部40、フォルマント形状波形発生部50及びフォルマント波形制御部60より、フォルマント合成信号Wj(t)が時分割に発生される。Wj(t)の“j”は時分割処理の分割次数またはチャンネルナンバを示す。フォルマント制御パラメータ発生部40からは、フォルマント合成信号Wj(t)を生成するのに必要な各種パラメータ、すなわちフォルマント制御パラメータωcj(t)、ωfj(t)、aj(t)、cj(t)、dj(t)等が発生される。
【0016】
このパラメータの詳細は特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。フォルマント形状波形発生部50及びフォルマント波形制御部60では、入力される上記フォルマント制御パラメータに基づいて、フォルマント合成信号Wj(t)が読み出され発生され合成される。このフォルマント合成信号Wj(t)はシフト・フィルタ部A0で各種制御が行われて、累算部70で系列チャンネルごとに累算合成され、音響出力部80より楽音として放音出力される。この系列は、部分音であるフォルマント合成信号Wj(t)の1楽音、または上述した音楽的ファクタを示す。
【0017】
タイミング発生部30からは、楽音生成装置の全回路の同期を取るためのタイミングコントロール信号が各回路に出力される。このタイミングコントロール信号には、各周期のクロック信号のほか、これらのクロック信号を論理積または論理和した信号、時分割処理のチャンネル分割時間の周期を持つ信号、チャンネルナンバデータjなどがある。
【0018】
プログラム/データ記憶部21のアサインメントメモリ213からコントローラ20などによって時分割に読み出された各周波数ナンバデータFN(音高情報)は、または、フォルマント制御パラメータ発生部40からのフォルマント密度パラメータωfj(t)若しくはフォルマントキャリアパラメータωcj(t)は、調和度制御回路90へ送られる。
【0019】
このデータFN(ωfj(t)、ωcj(t))は、調和度制御回路90で、フォルマント制御パラメータ発生部40からのフォルマントキャリアパラメータωcj(t)及びコントローラ20からのサンプリング修正データSfj(t)及び合成フォルマント調和度Hj(t)が合成され、上記フォルマント密度ωfj(t)として、パラメータフォルマント形状波形発生部50へ送られる。
【0020】
この合成によりフォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)のフォルマントの各周波数成分のそれぞれの周波数の対比値が決定されて、フォルマントの各周波数成分の調和度が制御される。この場合、上記周波数ナンバデータFNは、そのまま調和度制御回路90へ送られたり、演算処理されて調和度制御回路90へ送られる。この演算は他のデータとの演算であって、後述する種々の演算(1)である。
【0021】
図1の各回路10、20、21、30、40、50、60、70、80、90の具体的な構成及び動作などの説明は、すべて特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。従って、これらの回路の具体的な説明は、特願平6−231817号の明細書を参照することとし、本願明細書及び図面では述べられない。この特願平6−231817号の明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとみなす。
【0022】
上記シフト・フィルタ部A0では、入力されるフォルマント合成信号Wj(t)につき、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域のシフト処理とフィルタ処理とが行われ、周波数特性が変更されて出力される。なお、別の例では、このシフト・フィルタ部A0は、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。
【0023】
《2》シフト・フィルタ部A0
図2は、シフト・フィルタ部A0を示す。上記演奏情報発生部10からの音高情報(キーナンバKN)は、アダーA01で周波数変調情報が加算される。この周波数変調情報は上記演奏情報発生部10から入力された音楽的エフェクト情報の中のビブラート等の情報に基づいている。
【0024】
アダーA01からの音高情報等は、周波数ナンバテーブルA03で周波数ナンバデータFNに変換される。この周波数ナンバデータFNはアキュムレータA04で各チャンネルごとに時分割で累算され、楽音波形メモリA05へ送られる。楽音波形メモリA05には、多数の楽音波形データTWj(t)が音色、音域、タッチ等の音楽的ファクタごと、発音経過時間ごと、エンベロープレベル/フェーズごと、操作者の選択データごとに多層的に記憶され、これら音楽的ファクタ等に応じたデータが読み出される。なお、この楽音波形データTWj(t)の読み出し速度は音高に応じていなくてもよい。
【0025】
これら楽音波形データTWj(t)の一部または全部は、周波数帯域がほぼ重複しないまたは場合によって一部重複する複数の部分楽音波形であり、後述する第二周波数シフト部A30を経た後、累算部70で1つの楽音に合成出力される。したがってこれら部分楽音波形は、もともと1つの楽音波形がフィルタ処理によって、複数の周波数帯域に分割された楽音波形とすることができる。これら記憶された楽音波形データTWj(t)の各周波数帯域の中心周波数は後述するように仮想的な周波数“0”とすることができる。楽音波形メモリA05は、楽音生成装置に対して着脱自在であってもよく、CD−ROM/RAMまたはROM/RAMカード等であってもよい。
【0026】
この楽音波形メモリA05から時分割に読み出された楽音波形データTWj(t)は、補間回路(図示せず)で波形の各サンプリングポイントが補間された後、帯域制御フィルタA06へ送られる。この補間回路は後述する図13の補間回路AB3と同じである。この楽音波形データTWj(t)は、上述のフォルマント波形制御部60からのフォルマント合成信号Wj(t)であってもよいし、上述のフォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)またはフォルマントキャリア信号Gfj(t)、cosωcj(t)でもよい。今後これらの信号を総称して楽音波形データTWj(t)と言うことにする。
【0027】
上記帯域制御フィルタA06は、デジタルフィルタであり、上記帯域制御フィルタA06では、後述する図3に示すように楽音波形データTWj(t)の中心周波数から上下に帯域幅BWの周波数帯域のみが抽出され、他の周波数帯域がカットされる。これにより、後述するフォルマント制御フィルタA20でフィルタ処理されるこの楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域だけに制限される。むろん、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が広ければ、上記所定幅はどんな値でもよい。また帯域制御フィルタA06は、バンドパスフィルタであるが、ハイパスフィルタまたはローパスフィルタとすることもできるが、バンドパスフィルタが望ましい。
【0028】
また、入力される楽音波形データTWj(t)の周波数帯域が狭く、またはフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が広くて、楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域に入れば、上記帯域制御フィルタA06は省略できる。この場合、帯域制御フィルタA06を経た楽音波形データTWj(t)が楽音波形メモリA05に記憶されることができる。
【0029】
また、楽音波形データTWj(t)が部分楽音波形であれば、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域の中の狭いエリアだけが使用されることができる。そうすると、フォルマント制御フィルタA20の実際の周波数特性の全体が図9に示すように非直線的であっても、結果的に図5に示す直線的な周波数特性にすることができる。
【0030】
上記帯域制御フィルタA06からの楽音波形データTWj(t)は、第一周波数シフト部A10で周波数帯域全体のシフトが行われる。このシフトによって、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の周波数帯域がフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域までシフトされる。
【0031】
この周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)は、マルチプライヤA41を介してフォルマント制御フィルタA20で周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって徐々に変化するようにフィルタ処理される。
【0032】
このフィルタ処理された楽音波形データTWj(t)は、第二周波数シフト部A30でさらに周波数帯域全体のシフトが行われる。このシフトによって、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の周波数帯域が音高に応じた位置までシフトされる。この周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)は、上記累算部70へ出力される。この場合マルチプライヤを介して上記エンベロープレベルデータ(フォルマント制御パラメータaj(t)、ajk(t))を乗算合成することもできる。これら第一シフトの方向と第二シフトの方向とは、上記指定音高やフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域の周波数位置に応じて、同じであったり異なっていたりする。
【0033】
時分割に発生する周波数シフトデータFSj(t)は、アダーA42でシフト制御データSCが時分割に加算され、アダーA44でエンベロープデータが加算される。アダーA44からの周波数シフトデータFSj(t)は、対数−リニア変換回路A45でリニアな値に変換され、上記第一周波数シフト部A10へ送られる。これにより上述の周波数シフトデータFSj(t)の値に応じた楽音波形データTWj(t)の周波数シフトが行われる。
【0034】
エンベロープジェネレータA46には、エンベロープスピードデータとエンベロープ目標データとが時分割に供給され、これにより上記エンベロープデータが時分割に生成される。このエンベロープデータは上記エンベロープレベルデータ(フォルマント制御パラメータaj(t)、ajk(t))で代用してもよい。
【0035】
この周波数シフトデータFSj(t)は、上記楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の中心周波数とフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域のフィルタ処理に使う部分の中心周波数との差に応じた値である。楽音波形データTWj(t)の中心周波数は、楽音波形データTWj(t)の記憶時の周波数と記憶サンプリング周波数と読み出し周波数との各比に応じて決まったり、または楽音波形データTWj(t)の発生周波数と同じである。
【0036】
発生周波数データGFj(t)は、上記楽音波形データTWj(t)の記憶時の周波数と記憶サンプリング周波数との比に応じたデータであり、この発生周波数データGFj(t)はアダーA47で上記音高情報が加算されて、実際の音高に応じた値となる。この発生周波数データGFj(t)は、上記楽音波形メモリA05に記憶された楽音波形データTWj(t)の各周波数帯域の中心周波数を表わしており、この各周波数帯域の中心周波数が仮想的な周波数“0”であれば、この発生周波数データGFj(t)も“0”となることがある。
【0037】
この発生周波数データGFj(t)+音高情報は、対数−リニア変換回路A48でリニアな値に変換され、サブトラクタA49で上記周波数シフトデータFSj(t)+シフト制御データSCj(t)+エンベロープデータが減算され、上記第二周波数シフト部A30へ送られる。これにより、図4に示すように楽音波形データTWj(t)の本来の音高への周波数シフト分から、第一周波数シフト部A10での周波数シフト分が差し引かれ、残りの分のみについて第二周波数シフト部A30で周波数シフトが行われる。
【0038】
上記アダーA01からの音高情報はアダーA50で上記帯域幅BWの値が加算され、対数−リニア変換回路A51でリニアな値に変換される。これにより、帯域制御フィルタA06を経て帯域が帯域幅±BWに限定された楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の上端周波数値fj(t)+と下端周波数値fj(t)−とが求められる。この周波数値fj(t)は、サブトラクタA52で上記周波数シフトデータFSj(t)から減算され、またデータシフタ(マルチプライヤ)A53で2倍されてアダーでサブトラクタA52からのデータが加算されて、第一周波数シフト部A10での周波数シフトに応じた修正が行われる。
【0039】
この上端周波数値fj(t)+と下端周波数値fj(t)−とはフィルタゲインテーブルA55に読み出しアドレスデータとして供給され、各周波数値fj(t)に応じたゲインデータgj(t)+、gj(t)−が読み出される。このフィルタゲインテーブルA55は同じものが並列して2つ設けられているが、2つの入力ラッチ、マルチプレクサ、1つのフィルタゲインテーブルA55、デマルチプレクサ、2つの出力ラッチに置き換えて、時分割処理が行われてもよい。
【0040】
このフィルタゲインテーブルA55のゲインデータはフォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示しており、フォルマント制御フィルタA20のフィルタ演算パラメータから演算によって求められるのはいうまでもない。
【0041】
図5に示すように下端ゲインデータgj(t)−は、アダーA56でリンクデータLinkj(t)が加算され、対数−リニア変換回路A59でリニアな値に変換されて、上記マルチプライヤA41へ送られる。一方、上端ゲインデータgj(t)+は、サブトラクタA57で上記下端ゲインデータgj(t)−が減算され、アダーA58で上記リンクデータLinkj(t)が加算されて新たなリンクデータLinkj(t)として出力される。このリンクデータLinkj(t)はラッチA70に記憶され、次のリンクデータLinkj+1(t)として上記アダーA56に入力される。
【0042】
このラッチA70は、上記タイミング制御部30からの一定周期のトリガ信号によってクリアされる。このトリガ信号の周期は、一楽音当たりの部分音が4つであれば、4チャンネル分の分割時間に等しい。なお、上記マルチプライヤA41は、フォルマント制御フィルタA20の出力側に設けてもよい。
【0043】
このようなフィルタゲインテーブルA55及びマルチプライヤA41が設けられているのは、以下の理由からである。上述の楽音波形データTWj(t)は1つの発音指示または1つの楽音につき、上述のように複数存在する部分音である。図1のシフト・フィルタ部A0では、この各部分音である楽音波形データTWj(t)につき、それぞれ図7に示す傾斜の過渡帯域でフィルタ処理等の楽音制御処理が行われる。このため、フォルマント制御フィルタA20での各部分音ごとのフィルタ処理にあたり、図5に示すように各部分音の周波数帯域の境界でゲインの整合をとる必要がある。
【0044】
このため、フィルタゲインテーブルA55、マルチプライヤA41、アダーA56、A58、サブトラクタA57等が設けられている。楽音波形データTWj(t)を部分音に分けない場合は、これらの回路A55、A41、……は必要ない。特に、フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域が非常に広く、楽音波形データTWj(t)の全周波数帯域がすべて入る場合は必要ない。なお、上記アダーA50からの音高情報(キーナンバKN)または帯域幅BWが変化すると、上記部分楽音波形の境界部分のゲインも変化し、これに応じたゲインの整合が行われる。
【0045】
また、上記楽音波形データTWj(t)が、音高に関係なく一定周波数の信号、例えば上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)であれば、アダーA47が省略されて、音高情報(キーナンバKN)のみが対数−リニア変換回路A48に入力されることができる。この場合、この図2のシフト・フィルタ部A0は、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。このマルチプライヤ66及び652は特願平6−231817号の明細書及び図面に記載されている。
【0046】
以上のようにして、周波数シフトによって、音高に応じた楽音を発生させることができる。この音高に応じた楽音は、図12に示すような左右対称のフォルマント形状ではなく、図15のF8に示すような左右非対称のフォルマント形状となる。なお、上記対数−リニア変換回路A45、A48、A51、A59の入力側のアダーでの加算及びサブトラクタでの減算は、対数−リニアの変換によって実際は乗算及び除算となる。むろん、これら対数−リニア変換回路が省略されて上記アダー及びサブトラクタがマルチプライヤ等に置き換えられてもよい。また、上記シフト・フィルタ部A0は複数設けられて、時分割処理が省略されてもよい。この場合、リンクデータLinkj(t)は部分楽音波形の周波数帯域の低い方の回路A0から高い方の回路A0へ送られる。
【0047】
《3》フォルマント制御フィルタA20
図6は上記フォルマント制御フィルタA20の一例を示す。このフィルタは畳み込み演算を行うFIR型デジタルフィルタである。各遅延器A71…は例えばCCDまたはBBDなどで構成され、各タップの出力が各遅延器A71…の出力となる。この各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA72…で乗算データA1、A2、A3、…が乗算され、アダーA73で加算合成されて出力される。
【0048】
各遅延器A71…の遅延時間はサンプリング周波数fsの周期Tsに等しく、このサンプリング信号φs1が上記タイミング発生部30、プログラマブルカウンタまたはプログラマブル発振器等から各遅延器A71…(CCD)に供給される。サンプリング周波数データfs1(Ts1)は、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A74に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs1が上記各遅延器A71…に入力され、これによってカットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数は上記フィルタ係数データA1、A2、A3、…によっても変更かつ決定される。
【0049】
図7は上記フォルマント制御フィルタA20をDSP(デジタルシグナルプロセッサ)またはマイクロコンピュータで実現したときのフローチャートを示す。このフィルタリング処理では、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数A1〜Amが乗算され、これら乗算データと入力楽音波形データTWj(t)との積和が求められ出力される(ステップ2)。
【0050】
そして、DSP内のRAMのレジスタ内のデータH1〜Hnが、n次遅延データHnから順に1つ高い次数の遅延データへと移行されていく(ステップ4〜8)。最後に入力楽音波形データTWj(t)が1次遅延データH1に移行される(ステップ10)。以上の処理が、上記サンプリング周波数fsの周期Tsにてインタラプト処理で繰り返される。
【0051】
図8は上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示す。この特性は、周波数0からカットオフ周波数付近までが通過帯域となり、カットオフ周波数付近以降が阻止帯域となり、この通過帯域と阻止帯域との間のカットオフ周波数付近が過渡帯域となっている。上記第一周波数シフト部A10による周波数シフトによって上記楽音波形データTWj(t)のほぼすべての周波数帯域が、この過渡帯域の中に入り上記フィルタ処理が行われる。
【0052】
この過渡帯域では、減衰特性が徐々に変化するので、フィルタ制御される楽音波形データTWj(t)の周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に徐々に変化していく。このため、楽音波形データTWj(t)の周波数特性の一部だけが変化してしまうことがなくなり、周波数上、全体的な変化を実現することができる。
【0053】
なお、上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性は、サンプリング周波数fsの整数倍の周波数近辺でも通過帯域が存在し、同様に阻止帯域と過渡帯域とが存在する。したがって、上記の例ではローパスフィルタであったが、フィルタ処理するエリアを別の過渡帯域から選択すればハイパスフィルタの過渡帯域としても使用可能である。
【0054】
図9はフォルマント制御フィルタA20の他の周波数特性を示す。この場合フォルマント制御フィルタA20は、複数のフィルタによって構成され、上記楽音波形データTWj(t)は、この複数のフィルタに並列に入力され、各フィルタ出力がアダーで加算合成される。このフォルマント制御フィルタA20は、特開平3−177898号の明細書及び図面に示されるフィルタ演算手段またはフィルタ処理手段を用いてもよく、この特願平3−177898号の明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとする。なお、図9の周波数特性は、この周波数特性の左右対称の周波数特性であってハイパスフィルタの周波数特性であってもよい。
【0055】
図10はシフト・フィルタテーブルA90を示す。上記シフト制御データSCj(t)、周波数シフトデータFSj(t)、サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、A3、…、エンベロープスピードデータ、エンベロープ目標データ、発生周波数データGFj(t)、音楽的エフェクト情報の中のビブラート等の周波数変調情報は、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べたデータSP、O、Min、Ta、Ea、フォルマント形状信号Ffj(t)、フォルマント密度パラメータωfj(t)、フォルマントキャリアパラメータωcj(t)、n組のパラメータωcjk(t)、ajk(t)、cj(t)、フォルマント形状テーブル212またはフォルマント中心テーブル214の記憶と同じように、上記音楽的ファクタごと及び発音開始からの経過時間、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズごとに多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶されている。
【0056】
この音楽的ファクタは上述したように演奏情報発生部10より出力され、発音開始からの経過時間は上述したようにフォルマント制御パラメータValj(場合によっては累算フォルマント密度パラメータΣωfj(t)または累算フォルマントキャリアパラメータΣωcj(t))またはタイムカウントデータが使われ、エンベロープレベルデータは上記フォルマント制御パラメータalj(t)が使われ、エンベロープフェーズはリクエストデータReqのカウント数に基づく。このリクエストデータReqは、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べられた。
【0057】
これら音楽的ファクタ等のデータは、上記テーブルに上位読み出しアドレスデータとして供給される。また、このような音楽的ファクタ等ごとのデータSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…、エンベロープスピードデータ、エンベロープレベルデータ、ビブラート等の情報は、操作者によって演奏情報発生部10のパネルスイッチ群から入力された選択データ(上位読み出しアドレスデータ)によっても選択読み出しされる。また、このデータSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…、エンベロープスピードデータ、エンベロープ目標データ、ビブラート等の周波数変調情報は、操作者によって演奏情報発生部10より入力されたりする。
【0058】
上記音楽的ファクタには、上述のエンベロープ情報にしたがって変化するまたは時間の経過にしたがって変化するフォルマント制御パラメータValj、タイムカウントデータなどが、後述する種々の演算(1)等によって修正合成されてもよい。
【0059】
なお、上記発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルごとの記憶は省略され、上記各データSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…等に対し、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルが修正合成されてもよい。この修正合成は、後述する種々の演算(1)等によるものであり、上記テーブルの出力端に、発音経過時間またはエンベロープレベルを修正合成する演算装置が設けられる。
【0060】
また、上述のようにしてテーブルより読み出された上記データSCj(t)、FSj(t)、fs1(Ts1)、GFj(t)、A1、A2…等は、特願平6−231817号の明細書及び図面の中の図26について説明されているアサインメントメモリ213の各チャンネルエリアに書込まれ、順次時分割に読み出されて図2のシフト・フィルタ部A0に供給されてもよい。
【0061】
以上のような制御により、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベル/フェーズに応じて、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域のシフト量が変更される。また、上記サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、A3、…の変更制御により、上記フォルマント制御フィルタA20の周波数特性及びカットオフ周波数などが変更され、これによりフォルマント制御フィルタA20の過渡帯域自体もシフトされ、この結果過渡帯域の中の楽音波形データTWj(t)がフィルタ制御される部分(エリア)が変更される。
【0062】
《4》第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)
図11は上記第一周波数シフト部A10及び第二周波数シフト部A30を示す。上述の周波数シフトデータFSj(t)等または発生周波数データGFj(t)等は、アキュムレータA70で各チャンネルごとに時分割で累算され、それぞれコサインテーブルA60及びサインテーブルA61へ供給される。ここで、この周波数シフトデータFSj(t)等または発生周波数データGFj(t)等をωsjとすると、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61からは、シフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)が出力される。このシフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)は、マルチプライヤA62、A63へ供給され、楽音波形データTWj(t)に乗算され、フィルタA64、A65を経て、アダーA64で加算合成される。
【0063】
楽音波形データTWj(t)は、フーリエ解析の原理により、以下のように表わすことができる。
【0064】
TWj(t)=ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)
…(A1)
Σは、n=1からn=m(mは任意の数)までの累算を示す記号である。これにシフトデータcosωsj(t)、sinωsj(t)を乗算すると以下のようになる。
【0065】
TWj(t)×cosωsj(t)
={ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)}
×cosωsj(t)
= 1/2×ΣAn×cos{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×ΣAn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn−ωsj)(t)} …(A2)
TWj(t)×sinωsj(t)
={ΣAn×cosωn(t)+ΣBn×sinωn(t)}
×sinωsj(t)
= 1/2×ΣAn×sin{(ωn+ωsj)(t)}
−1/2×ΣBn×cos{(ωn+ωsj)(t)}
−1/2×ΣAn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×cos{(ωn−ωsj)(t)} …(A3)
この2つにつき、ローパスフィルタを経てcos{(ωn+ωsj)(t)}とsin{(ωn+ωsj)(t)}との成分をカットすると以下のようになる。
【0066】
Icj(t)= 1/2×ΣAn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×ΣBn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
…(A4)
Isj(t)= 1/2×ΣBn×cos{(ωn−ωsj)(t)}
−1/2×ΣAn×sin{(ωn−ωsj)(t)}
…(A5)
この2つを加算合成すると以下のようになる。
【0067】
Iwj(t)−= …(A6)
1/2×(ΣAn+ΣBn)×cos{(ωn−ωsj)(t)}
+1/2×(ΣBn−ΣAn)×sin{(ωn−ωsj)(t)}
これは、振幅を除いて、もとの楽音波形データTWj(t)の周波数帯域すなわち全周波数成分がそっくり−ωsjだけシフトされたことになる。
【0068】
また、上記2つにつき、ハイパスフィルタを経てcos{(ωn−ωsj)(t)}とsin{(ωn−ωsj)(t)}との成分をカットして加算合成すると以下のようになる。
【0069】
Iwj(t)+= …(A7)
1/2×(ΣAn−ΣBn)×cos{(ωn+ωsj)(t)}
+1/2×(ΣAn+ΣBn)×sin{(ωn+ωsj)(t)}
これも、振幅を除いて、もとの楽音波形データTWj(t)の周波数帯域すなわち全周波数成分がそっくり+ωsjだけシフトされたことになる。これらの±ωsjの周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。
【0070】
楽音波形データTWj(t)の周波数シフトが−ωsjにされる場合は、上記フィルタA64、A65は、ローパスフィルタとなり、周波数シフトが+ωsjにされる場合は、ハイパスフィルタとなる。このローパスフィルタ及びハイパスフィルタのカットオフ周波数は、ωsjである。なお通常、シフト角周波数ωsjは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域幅ωn(BW)より大きい値、例えばほぼ同じ値、2倍値、3倍値、…、であるが、周波数帯域幅ωnより小さい値でも可能である。フィルタA64、A65は、例えば上記図6の回路または図7の処理によって実現される。
【0071】
これに応じて、上記帯域幅BWの値はマルチプライヤ(データシフタ)A68で1倍、2倍または3倍…され、アダーA69で上記シフト量ωsjが加算され、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A67に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs2が上記フィルタA64、A65に入力され、これによって上記カットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数はフィルタA64、A65のフィルタ係数データ(A0)、A1、A2、A3、…、B1、B2、B3、…によっても変更かつ決定される。
【0072】
また、マルチプライヤ(データシフタ)A63は省略されてもよい。さらに、上記フィルタA64、A65のフィルタ係数データについても、上記フィルタ係数データA1、A2、A3、…と同じように、多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶され、同様に入力、修正、合成、変更等されることができる。
【0073】
なお、図11のサインテーブルA60、マルチプライヤA62及びフィルタA64が省略されたり、またはコサインテーブルA61、マルチプライヤA63及びフィルタA65が省略されてもよい。これによっても、周波数シフトを行うことができる。
【0074】
図12は、上記楽音波形データTWj(t)が上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)であるとき、この第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)による周波数シフトの状態を示す。フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)とフォルマントキャリア信号Gj(t)とは、マルチプライヤ66で合成されてフォルマント合成信号Wj(t)(楽音信号)として出力される。ここで、フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)のフォルマント形状が図12(1)に示す形状であれば、フォルマント合成信号Wj(t)のフォルマント形状は図12(2)となる。
【0075】
ここでもし、フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)が図12(3)に示されるように周波数シフトされると、フォルマント合成信号Wj(t)のフォルマント形状は図12(4)となる。この周波数シフトされた図12(4)のフォルマント形状と、図12(2)のフォルマント形状とは、周波数成分が異なり、しかもこの周波数帯域の各周波数成分の倍音比も異なり、音色(音質)が異なる。従って、このような周波数シフトによって音色(音質)を変えることができる。この周波数シフトの量は、上述したように音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ等に応じて変化するので、この周波数シフトによる音色(音質)変化も音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ等に応じて変化する。
【0076】
《5》シフト・フィルタ部A0(第2実施例)
図13は、シフト・フィルタ部A0の第2実施例を示す。このシフト・フィルタ部A0は、上記フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66とフォルマント形状波形発生部50(又はマルチプライヤ652)との間に設けられる。そして、入力される上記楽音波形データTWj(t)は、音高に関係なく一定周波数の信号、例えば上記フォルマント形状信号Ffj(t)、Fj(t)である。しかし、この入力される上記楽音波形データTWj(t)は、音高に応じた信号、例えばフォルマント合成信号Wj(t)、フォルマントキャリア信号Gfj(t)、Gj(t)、cosωcj(t)でもよい。この場合、シフト・フィルタ部A0は、上記フォルマント波形制御部60と累算部70との間に設けられる。以下の述べること以外については、上述のシフト・フィルタ部A0の説明が参照される。
【0077】
上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、補間回路AB3、AB3で波形の各サンプリングポイントが補間され、周波数シフト回路A91、A91で周波数シフトされて、アダーA92で加算合成され、エンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、ラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、アダーA95で加算合成され、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66または累算部70へ出力される。なお、エンベロープ制御回路A92またはラウドネス制御回路A93は省略可能である。
【0078】
上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、後述するように上記楽音波形メモリA05に記憶されてもよい。上記補間回路AB3は、特開昭51−8924号、特開昭53−50722号、特開昭53−107815号、特開昭63−98699号、特開平2−126293号、特開平2−240697号、特開平3−204696号の各明細書及び図面に示される装置を用いてもよく、これら各明細書及び図面のすべての記載内容は、本願明細書にすべてそっくり記載されているものとする。
【0079】
《6》周波数シフト部A10(A30)
図14は、上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)を発生する回路を示す。この図14の回路は、アダーA66を除いて上述の図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)と同じである。したがって、図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)でも、この図14に示した動作と同じ動作が実行されている。この図14の回路では各部の楽音信号のフォルマント形状が示されている。以下の述べること以外については、上述の図11の回路の説明が参照される。
【0080】
楽音波形データTWj(t)のフォルマント形状を図14のF1で示すものとする。マルチプライヤA63でcosωsj(t)が乗算された楽音波形データのフォルマント形状はF2のような形状になる。F2のフォルマント形状は、マイナスの周波数成分も仮想的に現れる。またマルチプライヤA62でsinωsj(t)が乗算された楽音波形データのフォルマント形状はF3のような形状になる。F3のフォルマント形状は、マイナスの周波数成分及びマイナスの成分レベルも仮想的に現れる。
【0081】
この場合、楽音波形データTWj(t)の中心角周波数ωcの値とcosωsj(t)及びsinωsj(t)の角周波数シフト量ωsの値とは同じである。これにより周波数シフトされた楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の中心周波数はゼロとなる。むろん、ωcの値とωsの値とは異なっていてもよい。そして、フィルタ(ローパス)A65、A64を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF4、F5のような形状になる。これにより、上記周波数シフトにより発生された複数の同じ形のフォルマントの中から、周波数がゼロの付近の1つのフォルマントが選択抽出される。
【0082】
こうして、周波数シフトによって、F1のようなフォルマントの楽音波形データTWj(t)が、F4、F5のような中心周波数が“0”のフォルマントの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)に変換される。従って、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)の記憶サンプリング周波数は、楽音波形データTWj(t)の記憶サンプリング周波数より低くてよいため、楽音波形データTWj(t)がデータ圧縮されて記憶される。
【0083】
この楽音波形データIcj(t)、Isj(t)それぞれ、またはこの2つの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)が加算合成または乗算合成された楽音波形データが、上記図2の楽音波形メモリA05に上記楽音波形データTWj(t)として記憶される。
【0084】
この楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)の一部は周波数帯域がほぼ重複しないまたは一部重複する複数の部分楽音波形であり、上記第二周波数シフト部A30または後述するアダーA92を経た後、1つの楽音に合成出力される。楽音波形メモリA05は、楽音生成装置に対して着脱自在であってもよく、CD−ROM/RAMまたはROM/RAMカード等であってもよい。
【0085】
この記憶される多数の楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は多種類、音色、音域、タッチ等の音楽的ファクタごと、発音経過時間ごと、エンベロープレベル/フェーズごと、操作者の選択データごとに多層的に記憶され、これら音楽的ファクタ等に応じたデータが読み出される。
【0086】
なお、この楽音波形データは、第一周波数シフト部A10(第二周波数シフト部A30)で周波数シフトまたはフォルマント制御フィルタA20でフィルタ制御されてもよい。これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)の中心角周波数が“0”であるため、周波数シフトの処理が簡単になる。また、この図14の周波数シフト部A10(A30)を上記補間回路AB3の入力側に設けてもよい。
【0087】
《7》周波数シフト回路A91
図15は、上記周波数シフト回路A91、アダーA92等を示す。マルチプライヤA97、A96では、上記読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)にcosωrj(t)、sinωrj(t)が乗算され、角周波数ωrjの周波数シフトが行われる。このマルチプライヤA97、A96を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF6、F7のように、角周波数ωrjに応じた周波数シフトのされた形状になる。F6、F7のフォルマント形状はマイナス周波数の側にも存在するが省略されている。
【0088】
この周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、上記アダーA92で加算合成され再生されて出力される。これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のプラスの周波数成分とマイナスの周波数成分とが相殺しあって、合成楽音波形データのフォルマントはF8に示すような形状となり、元の楽音波形データTWj(t)のフォルマントF1をそっくり角周波数ωrjだけ周波数シフトしたものとなる。
【0089】
この加算合成された楽音波形データは、マルチプライヤであるエンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、同じくマルチプライヤであるラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、上記アダーA95で他の楽音波形データと加算合成される。このエンベロープ制御回路A93に送られるエンベロープデータとラウドネス制御回路A94に送られるラウドネスデータとは、特願平6−231817号の明細書及び図面で述べたデータValj(aj(t)、cj(t)、dj(t))のいずれかが使用される。
【0090】
また、この図15の周波数シフト回路A91には、図示しないが、図11のアキュムレータA70、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61と同じ回路が設けられており、このコサインテーブルA60及びサインテーブルA61から上記マルチプライヤA97、A96へ、上記cosωrj(t)、sinωrj(t)が入力される。このアキュムレータA70には、周波数シフトデータωrjが入力される。この周波数シフトデータωrjは、上記周波数シフトデータωsjと全く同じように発生される。
【0091】
したがって、この周波数シフト量ωrjは、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。また、上記エンベロープ制御回路A93に送られるエンベロープデータとラウドネス制御回路A94に送られるラウドネスデータとも、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。
【0092】
さらに、周波数シフト量ωrjは、発生する楽音の音高(キーナンバKN)に応じたものとすることができる。これにより、音高に応じた楽音は、図12の左右対称のフォルマント形状ではなく、図15のF8の左右非対称のフォルマント形状を実現することができる。この場合、この周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化せず、フォルマントの幅も変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。またこの再生時の周波数シフト量ωrjの値は、上記記憶時の周波数シフトデータωsjの値と同じで、プラスマイナス逆であってもよい。
【0093】
《8》シフト・フィルタ部A0(第3実施例)
図16は、シフト・フィルタ部A0の第3実施例を示す。このシフト・フィルタ部A0は、上述の図13の第2実施例のシフト・フィルタ部A0とそっくり入れ代わることが可能なものである。したがって、第2実施例と同じ部分の説明は省略するが、この同じ部分の説明はここでもすべてそっくり記載されているものとする。以下の述べること以外については、上述のシフト・フィルタ部A0の説明が参照される。
【0094】
上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの周波数シフトされたまたは読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、上記補間回路AB3、AB3で波形の各サンプリングポイントが補間され、周波数シフト回路AA1、AA2で周波数シフトされて、上記フォルマント制御フィルタA20、A20でフィルタ制御され、周波数シフト回路AA3、AA4で周波数シフトされて、上記アダーA92で加算合成され、上記エンベロープ制御回路A93でエンベロープ制御され、上記ラウドネス制御回路A94でラウドネス制御されて、アダーA95で加算合成され、フォルマント波形制御部60の中のマルチプライヤ66または累算部70へ出力される。
【0095】
なお、エンベロープ制御回路A92またはラウドネス制御回路A93は省略可能である。上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)を発生する回路は、図15に示された回路またはアダーA66を除いた図11の第一(第二)周波数シフト部A10(A30)と同じである。
【0096】
《9》周波数シフト回路AA1〜AA4
図17は、上記周波数シフト回路AA1、AA2、フォルマント制御フィルタA20、A20、周波数シフト回路AA3、AA4及びアダーA92を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20の説明が参照される。マルチプライヤAA5、AA6では、上記楽音波形データIcj(t)にcosωpj(t)、−sinωpj(t)が乗算され、角周波数ωpjの周波数シフトが行われる。マルチプライヤAA7、AA8では、上記楽音波形データIsj(t)にcosωpj(t)、sinωpj(t)が乗算され、角周波数ωpjの周波数シフトが行われる。
【0097】
上記マルチプライヤAA5、AA8からのデータは、アダーAA9で加算合成され、上記マルチプライヤAA6、AA7からのデータは、アダーAB0で加算合成される。このアダーAA9、AB0を経た上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のフォルマント形状はF9、FAのように、角周波数ωpjに応じた周波数シフトのされた形状になる。マイナス周波数の側のフォルマントの周波数成分はプラス、マイナス相殺しあう。
【0098】
この周波数シフトされた楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、フォルマント制御フィルタA20、A20で、上述したフィルタ制御が行われる。これにより、フォルマント形状FB、FCに示すように、フォルマントの周波数成分が変化される。この変化分は基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に徐々に変化していく。
【0099】
このフォルマント制御フィルタA20からの楽音波形データは、周波数シフト回路AA3のマルチプライヤAB1で、cosωqj(t)が乗算され、角周波数ωqjの周波数シフトが行われる。もう1つのフォルマント制御フィルタA20からの楽音波形データは、周波数シフト回路AA4のマルチプライヤAB2で、sinωqj(t)が乗算され、角周波数ωqjの周波数シフトが行われる。これら、マルチプライヤAB1、AB2からの楽音波形データはアダーA92で加算合成され再生されて出力される。
【0100】
これにより、楽音波形データIcj(t)、Isj(t)のプラスの周波数成分とマイナスの周波数成分とが相殺しあって、合成楽音波形データのフォルマントはFDに示すような形状となり、元の楽音波形データTWj(t)のフォルマントF1をフィルタ制御して角周波数ωpj+ωqjだけ周波数シフトしたものとなる。
【0101】
この図17の周波数シフト回路AA1〜AA4には、図示しないが、図11のアキュムレータA70、コサインテーブルA60及びサインテーブルA61と同じ回路が設けられており、このコサインテーブルA60及びサインテーブルA61から上記マルチプライヤAA5〜AA8、AB1、AB2へ、上記cosωpj(t)、±sinωpj(t)、cosωqj(t)、sinωqj(t)が入力される。このアキュムレータA70には、周波数シフトデータωpj、ωqjが入力される。この周波数シフトデータωpj、ωqjは、上記周波数シフトデータωsjと全く同じように発生される。
【0102】
したがって、この周波数シフト量ωpj、ωqjは、音楽的ファクタ、発音経過時間、エンベロープレベル/フェーズ、操作者の設定指示等に応じて変化する。また、周波数シフト量ωpj、ωqjは、発生する楽音の音高(キーナンバKN)に応じたものとすることができる。これにより、音高に応じた楽音は、図12の左右対称のフォルマント形状ではなく、図17のFDの左右非対称のフォルマント形状を実現することができる。この場合、この周波数シフトでは、楽音波形データTWj(t)の周波数帯域の各周波数成分の密度は変化せず、フォルマントの幅も変化しない。しかし、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し音色(音質)が微妙に変化する。またこの再生時の周波数シフト量ωpj+ωqjの値は、上記記憶時の周波数シフトデータωsjの値と同じで、プラスマイナス逆であってもよい。
【0103】
《10》フォルマント制御フィルタA20(第2実施例)
図18は上記フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65の第2実施例を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20、フィルタA64またはA65の説明が参照される。このフィルタは畳み込み演算を行うIIR型デジタルフィルタである。各遅延器A71…は例えばCCDまたはBBDなどで構成され、各タップの出力が各遅延器A71…の出力となる。アダーA76を経た入力楽音波形データTWj(t)、この各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA72…で乗算データA0、A1、A2、A3、…が乗算され、アダーA73で加算合成されて出力される。また、各遅延器A71…の出力H1、H2、H3、…は、それぞれマルチプライヤA75…で乗算データB1、B2、B3、…が乗算され、アダーA76で上記入力楽音波形データTWj(t)に加算合成される。
【0104】
各遅延器A71…の遅延時間はサンプリング周波数fsの周期Tsに等しく、このサンプリング信号φs1が上記タイミング発生部30、プログラマブルカウンタまたはプログラマブル発振器等から各遅延器A71…(CCD)に供給される。サンプリング周波数データfs(Ts)は、プログララマブル発振器(又はプログララマブルカウンタ)A74に入力される。そして、これに応じた周波数のサンプリング信号φs1が上記各遅延器A71…に入力され、これによってカットオフ周波数が決定される。なお、このカットオフ周波数は上記フィルタ係数データA0、A1、A2、A3、…、B1、B2、B3、…によっても変更かつ決定される。
【0105】
図19は上記フォルマント制御フィルタA20をDSP(デジタルシグナルプロセッサ)またはマイクロコンピュータで実現したときのフローチャートを示す。このフィルタリング処理では、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数B1〜Bnが乗算され、これら乗算データと入力楽音波形データTWj(t)とを含めた積和が求められ現在データH0としてDSP内のRAMのレジスタに格納される(ステップ12)。
【0106】
次に上記現在データH0、1〜n次遅延データH1〜Hnにフィルタ係数A0〜Amが乗算され、これら乗算データの積和が求められ出力される(ステップ14)。そして、DSP内のRAMのレジスタ内のデータH0〜Hnが、n次遅延データHnから順に1つ高い次数の遅延データへと移行されていく(ステップ16〜20)。以上の処理が、上記サンプリング周波数fs1の周期Ts1にてインタラプト処理で繰り返される。
【0107】
上記サンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA0、A1、A2、…、B1、B2、…は、上述のサンプリング周波数データfs1(Ts1)、フィルタ係数データA1、A2、…とまったく同じように、上記音楽的ファクタごと及び発音開始からの経過時間、エンベロープレベルまたはエンベロープフェーズごとに多層的にシフト・フィルタテーブルA85に記憶され、また操作者によって演奏情報発生部10のパネルスイッチ群から入力された選択データによって選択読み出しされ、さらに操作者によって演奏情報発生部10より入力されたりするし、種々の演算(1)等による修正合成も可能である。
【0108】
《11》フォルマント制御フィルタA20(第3実施例)
図20は上記フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65の第3実施例を示す。以下の述べること以外については、上述のフォルマント制御フィルタA20、フィルタA64またはA65の説明が参照される。上記楽音波形データTWj(t)はデマルチプレクサA77を介して、フィルタA78…のいずれかに入力され、フィルタ制御が行われてマルチプレクサA79を介して出力される。フィルタA78…は上述の図6、図7、図18または図19に示されるものである。各フィルタA78…のそれぞれの過渡帯域の周波数上の位置またはカットオフ周波数は、音域(音高)に対応して異なっている。
【0109】
上記アダーA01からの音高情報(キーナンバデータKN)の上位の音域データまたは周波数ナンバテーブルA03からの周波数ナンバデータFNの上位の音域データが、上記デマルチプレクサA77及びマルチプレクサA79に選択(切り換え)データとして供給される。この場合、第一周波数シフト部A10、サブトラクタA49、A52は省略され、フィルタゲインテーブルA55からの出力は上記音域データ(音高情報)に応じて演算修正され、各フィルタA78…のそれぞれの過渡帯域の周波数上の位置に応じた修正が行われる。また、第二周波数シフト部A30での周波数シフトは、音高情報の下位の音名データに応じた周波数シフトのみとなるか、または第二周波数シフト部A30は省略される。
【0110】
本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図2、図11、図14〜図17の上記周波数シフト部A10(A30)のフィルタA64、A65からの楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、上記第一周波数シフト部A10若しくは第二周波数シフト部A30からの楽音波形データTWj(t)、またはマルチプライヤA62、A63、A96、A97、AA5、AA6、AA7、AA8、AB1、AB2、アダーA92、A95、AA9、AB0、フォルマント制御フィルタA20の各箇所から発生された楽音波形データが、上記楽音波形メモリA05に音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示ごとにいったん記憶されてもよい。そして、この発生され記憶された各データは、上記発生箇所以降の回路に入力される。
【0111】
この場合、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示ごとに、読み出される楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)が切り換えられ、または変更される。そして、上記音楽的ファクタには、上述のエンベロープ情報にしたがって変化するまたは時間の経過にしたがって変化するフォルマント制御パラメータValj、タイムカウントデータなどが、後述する種々の演算(1)等によって合成されてもよい。この読み出された楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)は、上記発生箇所以降の回路に入力される。
【0112】
なお、上記発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルごとの記憶は省略され、上記各楽音波形データIcj(t)、Isj(t)、TWj(t)に対し、発音開始からの経過時間またはエンベロープレベルが修正合成されてもよい。この修正合成は、後述する種々の演算(1)等によるものであり、上記楽音波形メモリA05の出力端に、発音経過時間またはエンベロープレベルを修正合成する演算装置が設けられる。
【0113】
上記または下記各所で述べた「後述する種々の演算(1)」とは、アダーでの各データの加算または減算、マルチプライヤでの各データの乗算または除算、アダー及びマルチプライヤでのこれらの組み合わせ演算、各データの他の相加的演算、各データの他の相乗的演算、データシフタでの、あるデータによる他のデータのビットシフト演算、あるデータが上位となり他のデータのデータが下位となる合成演算、演算回路等での演算式に基づく各データの演算、各データの演算データがメモリに記憶され、各データが読み出しアドレスデータとされることによる、演算データの読み出し等である。
【0114】
上記楽音波形データIcj(t)、Isj(t)は、一方がある楽音波形データTWj(t)の中からコサイン成分のみを抽出した成分波形データであり、他方がある楽音波形データTWj(t)の中からサイン成分のみを抽出した成分波形データであってもよい。このような抽出は、特願昭56−37342号(特公平6−95280号)の明細書及び図面に記載の偶数トランスバーサルフィルタ13と奇数トランスバーサルフィルタ14とによって行われる。これらトランスバーサルフィルタ13及び14に供給される標本化信号(サンプリング信号)の周波数が広い範囲で切り換えられ、これにより全周波数帯域において、コサイン成分とサイン成分とが分けられかつ抽出される。
【0115】
本願明細書及び図面に開示されている他の発明及びその発明者は以下のとおりである。
【0116】
【第2発明−発明者 鈴木隆志、鷲山豊】
本発明は、フィルタの通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域だけにおいて、楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行うものである。これにより、フィルタの過渡帯域では、減衰特性が徐々に変化するので、フィルタ制御される楽音の周波数特性の変化分が基本波から高調波に向かって、または高調波から基本波に向かって、全体的に変化していく。このため、楽音の周波数特性の一部だけが変化してしまうことがなくなり、周波数上、全体的な変化を実現することができ、従来にない楽音上の制御を行うことができる。また、本発明は、楽音波形の周波数帯域が、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで周波数上でシフトされ、フィルタ処理が行われて、さらに音高に応じた周波数へのシフトが行われるものである。これにより、フィルタの特性の特定の箇所を選んで、この箇所でのみフィルタ制御を行うことができ、フィルタ特性を安定して実現ことができる。また、フィルタ処理の後、音高に応じた周波数シフトが行われるので、音高に関係なくフィルタ処理を行うことができる。なお、フィルタの特性は変化させることもできる。
【0117】
【1】楽音波形を発生する楽音波形発生手段と、この楽音波形発生手段で発生された楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段であって、このフィルタ手段はその通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域だけにおいて、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行うものであり、上記楽音波形発生手段から発生される楽音波形の周波数帯域が、上記フィルタ手段の過渡帯域に入るように、この楽音波形の周波数帯域を制限する制限手段と、上記フィルタ手段によってフィルタ制御された楽音波形を楽音として出力する楽音出力手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0118】
【2】楽音制御データを発生する楽音制御データ発生手段と、この楽音制御データ発生手段によって発生された楽音制御データに基づいて、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択される過渡帯域選択手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
【0119】
【3】上記楽音波形の周波数帯域が周波数シフトされることにより、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択される、または上記フィルタ手段の過渡帯域が周波数シフトされることにより、上記フィルタ手段の過渡帯域の中のどこにおいてフィルタ制御を行うかが選択されることを特徴とする請求項1または2記載の楽音制御装置。
【0120】
【4】上記楽音波形発生手段は、周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段であり、または上記楽音出力手段は、複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段であることを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
【0121】
【5】上記フィルタ手段の過渡帯域のフィルタ制御の行われる部分の周波数特性は直線的であり、上記複数の部分楽音波形はこの直線的な部分でのみフィルタ制御が行われ、上記フィルタ手段の過渡帯域の実際の周波数特性が非直線的であっても、結果的に直線的になることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
【0122】
【6】上記楽音制御データ発生手段から発生される楽音制御データは、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じていることを特徴とする請求項2または3記載の楽音制御装置。
【0123】
【7】楽音波形を発生する楽音波形発生手段と、この楽音波形発生手段で発生された楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトする第1の周波数シフト手段と、この第1の周波数シフト手段によって周波数シフトされた楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段と、このフィルタ手段によってフィルタ処理された楽音波形を音高に応じた周波数にシフトする第2の周波数シフト手段と、この第2の周波数シフト手段によって周波数シフトされた楽音波形を楽音として出力する楽音出力手段と、上記楽音波形発生手段から発生される楽音波形の周波数帯域が、上記フィルタ手段の過渡帯域に入るように、上記第1の周波数シフト手段での周波数シフトの量を決定する第1の周波数シフトデータを発生して、上記第1の周波数シフト手段へ送る第1の周波数シフトデータ発生手段と、この第1の周波数シフト手段からの第1の周波数シフトデータを、上記音高に応じた周波数シフトデータから修正して、上記第2の周波数シフト手段へ送る第2の周波数シフトデータ発生手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0124】
【8】上記フィルタ手段は、その通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域において、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行う、または、その通過帯域から阻止帯域にわたって、上記楽音波形の周波数帯域につきフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項7記載の楽音制御装置。
【0125】
【9】上記周波数シフト手段は、上記楽音波形発生手段で発生された楽音波形に同じ周波数の正弦波信号と余弦波信号とを乗算合成し、ローパスフィルタ手段またはハイパスフィルタ手段を経て加算合成することを特徴とする請求項7または8記載の楽音制御装置。
【0126】
【10】上記第1の周波数シフトデータ発生手段から発生される第1の周波数シフトデータは、上記フィルタ手段の周波数特性のどこの帯域を使用するかを選択するためのデータであることを特徴とする請求項7、8または9記載の楽音制御装置。
【0127】
【11】上記楽音波形発生手段は、周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段であり、または上記楽音出力手段は、複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段であることを特徴とする請求項7、8、9または10記載の楽音制御装置。
【0128】
【12】上記第1の周波数シフトデータ発生手段から発生される第1の周波数シフトデータは、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じていることを特徴とする請求項7、8、9、10または11記載の楽音制御装置。
【0129】
【第3発明−発明者 石井克氏、鷲山豊】
本発明は、フィルタ処理された複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させるものである。これにより、それぞれの部分楽音波形の各周波数帯域境界部分のゲインの整合がとられ、均整のとれた合成楽音が出力されることができる。
【0130】
【1】周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段と、この部分楽音波形発生手段で発生された複数の部分楽音波形をフィルタ処理するフィルタ手段と、このフィルタ手段でフィルタ処理された複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段と、この合成手段で合成される複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させるゲイン整合手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。
【0131】
【2】上記ゲイン整合手段は、上記フィルタ手段のフィルタ特性に応じたゲイン特性を発生するゲイン特性発生手段と、このゲイン特性発生手段から、上記複数の部分楽音波形の各周波数帯域の境界部分のゲインを取得するゲイン取得手段と、このゲイン取得手段によって取得されたゲインに基づいて、上記境界部分のゲインの整合をとり、ある部分楽音波形の周波数帯域のゲインと他の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとをほぼ一致させる境界ゲイン整合手段とからなることを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
【0132】
【3】上記ゲイン取得手段は、上記境界部分における一方の部分楽音波形の周波数帯域のゲインと、他方の部分楽音波形の周波数帯域のゲインとを取得し、上記境界ゲイン整合手段は、一方のゲインと他方のゲインとの差を演算し、この差に応じた修正演算を行うことを特徴とする請求項2記載の楽音制御装置。
【0133】
【4】上記部分楽音波形は、発生速度の変化に応じて周波数が変化し、これに応じて上記境界部分のゲインも変化することを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音制御装置。
【0134】
【5】上記部分楽音波形発生手段は、部分楽音波形を記憶する部分楽音波形記憶手段と、この部分楽音波形記憶手段より部分楽音波形を読み出す読み出し手段とからなることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音制御装置。
【0135】
【6】上記フィルタ手段は、その通過帯域と阻止帯域との間の過渡帯域において、上記楽音波形のほぼすべての周波数帯域につきフィルタ処理を行う、または、その通過帯域から阻止帯域にわたって、上記楽音波形の周波数帯域につきフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の楽音制御装置。
【0136】
【7】上記フィルタ手段のフィルタ特性は、音楽的ファクタ、発音開始からの経過時間、エンベロープレベル、エンベロープフェーズまたは操作者の設定指示に応じて変化することを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の楽音制御装置。
【0137】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトするようにした。したがって、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数シフトされるため、周波数帯域の各周波数成分の倍音比が変化し、音色(音質)が微妙に変化していき、従来にない楽音上の制御を行うことができる等の効果を奏する。また、本発明は、楽音の周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして、このシフトによって発生する複数の同じ形のフォルマントの中から、フィルタ処理によって少なくとも1つのフォルマントを選択抽出して記憶するようにした。また、この記憶された楽音波形を周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトして出力するようにした。したがって、楽音波形の周波数帯域の各周波数成分の密度が変わらないで、周波数シフトされて記憶/再生されるため、どのような音高でもフォルマントの幅が常に一定にされることができる等の効果を奏する。さらに、上記周波数シフトが楽音波形の周波数が低くされれば、楽音波形の記憶サンプリング周波数が低くて済むため、記憶する楽音波形がデータ圧縮されて記憶される等の効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】楽音生成装置及び楽音制御装置の全体回路図である。
【図2】シフト・フィルタ部A0を示す回路図である。
【図3】帯域制御フィルタA06の周波数特性を示す図である。
【図4】第一周波数シフト部A10及び第二周波数シフト部A30の周波数シフトを示す図である。
【図5】フォルマント制御フィルタA20の過渡帯域における、楽音波形データTWj(t)の各部分音の周波数帯域の境界についての、ゲインの整合の状態を示す図である。
【図6】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65を示す回路図である。
【図7】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65のフィルタ処理のフローチャートを示す図である。
【図8】フォルマント制御フィルタA20の周波数特性を示す図である。
【図9】フォルマント制御フィルタA20の別の例の周波数特性を示す図である。
【図10】シフト・フィルタテーブルA90を示す図である。
【図11】第一周波数シフト部A10または第二周波数シフト部A30を示す回路図である。
【図12】周波数シフトによる楽音の音色(音質)の違い示す図である。
【図13】シフト・フィルタ部A0(第2実施例)を示す回路図である。
【図14】周波数シフト部A10(A30)の動作を示す図である。
【図15】周波数シフト回路A91等を示す回路図である。
【図16】シフト・フィルタ部A0(第3実施例)を示す回路図である。
【図17】周波数シフト回路AA1〜AA4等を示す回路図である。
【図18】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第2実施例)を示す回路図である。
【図19】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第2実施例)のフィルタ処理のフローチャートを示す図である。
【図20】フォルマント制御フィルタA20、フィルタA64及びA65(第3実施例)を示す回路図である。
【符号の説明】
A0…シフト・フィルタ部、A05…楽音波形メモリ、A06…帯域制御フィルタ、A10…第一周波数シフト部、A20…フォルマント制御フィルタ、A30…第二周波数シフト部、A55…フィルタゲインテーブル、A60…コサインテーブル、A61…サインテーブル、A67、A74…プログララマブル発振器、A70…アキュムレータ、A77…デマルチプレクサ、A79…マルチプレクサ、A90…シフト・フィルタテーブル、AB3…補間回路、A91、AA1、AA2、AA3、AA4…周波数シフト回路、A93…エンベロープ制御回路、A94…ラウドネス制御回路。
Claims (3)
- 楽音波形を発生する楽音波形発生手段と、
この楽音波形発生手段で発生された楽音波形の周波数帯域につき、この周波数帯域の各周波数成分の密度を変えないで、周波数上でシフトする周波数シフト手段であって、この周波数シフト手段では、上記楽音波形発生手段で発生された楽音波形に、同じ周波数の正弦波信号と余弦波信号とがそれぞれが合成され、このそれぞれがさらに互いに合成されることによって、当該周波数シフトが行われ、しかもこの周波数シフトによって、フィルタ手段の周波数特性の中のフィルタ処理に使用する所望の特定帯域まで、当該楽音波形が周波数シフトされ、
上記楽音波形の周波数帯域を上記フィルタ処理の所望の特定帯域まで周波数シフトするため、この周波数シフト手段での周波数シフトの量を決定する周波数シフトデータを発生して、上記周波数シフト手段へ送り、この周波数シフトデータに基づいて上記同じ周波数の正弦波信号と余弦波信号とを生成させて、上記フィルタ処理する帯域を選択させる周波数シフトデータ発生手段と、
上記周波数シフトされた楽音波形を、上記選択された特定帯域でフィルタ処理するフィルタ手段と、
上記周波数シフト手段によって周波数シフトされ、さらに上記フィルタ手段によってフィルタ処理された楽音波形を、上記フィルタ処理の特定帯域から指定された音高まで周波数シフトすることによって、指定された音高に応じた楽音として出力する楽音出力手段とを備えたことを特徴とする楽音制御装置。 - 上記周波数シフト手段では、上記楽音波形発生手段で発生された楽音波形に、同じ周波数の正弦波信号と余弦波信号とがそれぞれ別個に乗算合成され、この乗算合成されたそれぞれの楽音波形がローパスフィルタ手段またはハイパスフィルタ手段でフィルタ処理され、このフィルタ処理されたそれぞれの楽音波形が加算合成されることを特徴とする請求項1記載の楽音制御装置。
- 上記楽音波形発生手段は、周波数帯域の異なる複数の部分楽音波形を発生する部分楽音波形発生手段であり、しかも上記楽音出力手段は、複数の部分楽音波形を合成して1つの楽音として出力する合成出力手段であることを特徴とする請求項1または2記載の楽音制御装置。
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