JP3539838B2 - 無人車搬送制御装置および無人車搬送制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工場などの無人搬送システムにおいて、待機中の無人車に対して、配車割り付けを行う無人車搬送制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場などの自動搬送システムは、生産量の増大に伴い、複数台の無人搬送車(以下、無人車)を効率的に運行させる必要が生じている。ところが、狭隘な走行路に無数の無人車を投入した場合、無人車同士の干渉が発生し、搬送能力の低下を引き起こすため、干渉を回避できる無人車制御が求められている。
【0003】
図9は、複数台の無人車を走行制御する、従来例としての無人車の最適経路決定装置の構成を示すブロック図である(特開平06−289929参照)。図9は、最適経路決定装置100の構成を示すブロック図である。
【0004】
地図データメモリ200は、走行路の地図データが記憶されている。すなわち、走行路上において無人車が停止可能なノードの座標や、その接続関係のデータが記憶されている。また、無人車データメモリ201は、無人車のデータが記憶されている。最適経路生成器202は、図示しない制御局から無人車に搬送指示が送られると、与えられた搬送指示から出発ノードと目標ノードとを決める。
【0005】
また、グラフ生成器203における静的グラフ生成部204は、地図データメモリ200に記憶されている地図データより経路のコストを計算し、コストデータを探索グラフメモリ205へ書き込む。さらに、角度ポテンシャル計算部205は、無人車データメモリ201に記憶されている無人車の速度データから角度ポテンシャルコストを計算し、探索グラフデータメモリ205へ書き込む。
【0006】
そして、最適経路生成器202は、探索グラフデータメモリ205に記憶されているコストデータと角度ポテンシャルコストのデータとに基づき、与えられた搬送指示に対応した無人車の最適経路を求める。
【0007】
つぎに、図10および図11を用いて、上述した従来例における無人車に対する配車割り付けの動作について説明する。図10は、無人車の梯子型走行路の構造を示す図である。通常、無人車の走行路としては、図10に示す梯子型、および正方格子型のように規則性を有する場合がほとんどである。
【0008】
図11は、図10の梯子型走行路における配車要求時の状況を示す図である。たとえば、走行路には、無人車#1、無人車#2および無人車#3が運行している。無人車#1は、ノード18からノード21へ、経路ノード18→ノード19→ノード20→ノード21の順に進行している。また、無人車#2は、ノード16において待機中である。同様に、無人車#3は、ノード22において待機中である。
【0009】
以下、前述した前提条件における、図9に示す最適経路決定装置100により、行われる配車割り付けについて説明する。
ここで、ノード20において、荷物の積み込み要求が発生した場合、最適経路決定装置100は、荷物を積み込むための配車割り付けを行う。上述の条件下において、この積み込み要求に対しては、待機中の無人車#2と無人車#3とのどちらかが、最適経路決定装置100により、荷物の積み込みへ割り付けられる。そして、ここでの問題は、無人車#2と無人車#3とのどちらが割り付けられるかである。
【0010】
まず、配車割り付けに際して、最適経路決定装置100は、待機している無人車#2の出発点から目標点までの移動距離が最短となる経路を抽出する。同様に、最適経路決定装置100は、待機している無人車#3の出発点から目標点までの移動距離が最短となる経路を抽出する。
【0011】
次に、最適経路決定装置100は、出発点から目標点までの移動距離を基にして、抽出された経路の評価値を算定する。その結果、無人車#2と無人車#3とにおいて、最適経路決定装置100は、評価値の良い方に、荷物の積み込みに対する割り付けを行う。
【0012】
上述した割り付けの基準となる評価値には、大別して距離に基づく評価値Aと、時間に基づく評価値Bとの2種類がある。評価値Aを用いて、配車割り付けを行った場合、得られる結果は、出発地から目的地までの無人車の最短移動距離の経路である。すなわち、割り付けされる無人車は、出発点から目標点までの移動距離の積算値が最小となる位置で待機している無人車である。
【0013】
また、評価値Bを用いて、配車割り付けを行った場合、得られる結果は、出発点から目標点までの無人車が移動に要する時間において、最短移動時間の経路が得られる。すなわち、割り付けされる無人車は、出発点から目標点までの無人車の移動時間の積算値が最小となる位置で待機している無人車である。
【0014】
ここで、図10の梯子型走行路における各ノードの座標データを示す図12の表に基づき、最適経路決定装置100は、図13の示す探索グラフを作成する。この探索グラフは、時間を’msec’単位で評価値とした場合に得られる。
【0015】
また、距離を’mm’単位で評価値とした場合の探索グラフは、図13の探索グラフの垂直方向の経路に対するコストを’3333’から’1000’に置き換えたグラフである。この図13に示す探索グラフには、最適経路決定装置100が、最適な無人車の経路を探索するための基となる評価値が示されている。
【0016】
図13が示す探索グラフで、最適経路決定装置100は、最適な無人車の運行する経路の探索を行う。しかし、図10に示す梯子型走行路において求められる最適な経路は、評価値Aと評価値Bとのどちらを用いて求めても差がない。そこで、以下の説明における経路探索は、図13に示す評価値Bを用いて行う。
【0017】
最適経路決定装置100は、上述した経路探索により無人車#2の最短経路を「ノード16→ノード17→ノード18→ノード19→ノード20」と求めている。この経路の移動時間の積算値は、「9000(msec)」である。
【0018】
また、最適経路決定装置100は、無人車#3の最短距離を「ノード22→ノード21→ノード20」と求めている。この経路の移動時間の積算値は、「6000(msec)」である。結果として、最適経路決定装置100は、荷物の積み込みに対して無人車#3を割り付ける。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の無人車搬送制御装置により割り付けられた無人車#3の経路は、図11で示す無人車#1が運行する経路に対して、ノード20とノード21との間で逆向きに重なり合う。図11に示す状況の場合、走行中の無人車#1は、無人車同士の衝突を防止するため、ノード21までのノードに対する進入許可が与えられている。
【0020】
そのため、無人車#1は、作業を行うために、ノード21へ進入する。そして、無人車#1が、作業を終了してノード21を出発するまで、無人車#3は、ノード22において待機することになる。
また、逆に無人車#3がノード19へ進入すると、無人車#1は、ノード18で待機することになる。
【0021】
上述したように、無人車#1の走行する経路と、無人車#3の走行する経路とが、競合するため、無人車#1および無人車#3のどちらか一方は、他方の作業が終了するまで待機させられることになる。
【0022】
すなわち、走行中の無人車#1の経路に対して、走行方向が逆の経路となる無人車#3に、配車の割り付けが行われると、無人車#1と無人車#3とのどちらか一方は、他方の作業が終了するまで待機する。そのため、搬送に利用されている無人車全体の搬送能力は、低下する。
【0023】
本発明はこのような背景の下になされたもので、走行中の無人車の経路などに基づき、待機中の無人車の中から、目標点へ最短の時間で到達可能な無人車に配車の割り付けが行える無人車搬送制御装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を、与えられた走行経路に従い走行する複数の無人車の運行を、前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御装置において、所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段から運行候補の待機中の無人車を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出された待機中の無人車に与えられる運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションして、このシミュレーション結果により最適な走行経路を探索する探索手段と、この探索された走行経路に対する評価値を求める評価手段と、この評価手段による、待機中の無人車の評価値を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車のおのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する選択手段とを具備してなることを特徴とする。
【0025】
請求項2記載の発明は、停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を走行する複数の無人車の運行を前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御方法において、所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶手段に記憶する第一のステップと、第一のステップにおいて記憶手段に記憶された複数の無人車の中から運行候補の待機中の無人車を抽出する第二のステップと、この第二のステップにおいて抽出された待機中の無人車に与えられる、運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションする第三のステップと、第三のステップのシミュレーション結果により、最適な走行経路を探索する第四のステップと、この第四のステップで求められる走行経路に対する評価値を求め、得られた待機中の無人車の評価値のデータを記憶手段に記憶する第五のステップと、第五のステップにおいて、前記記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車のおのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する第六のステップとを有することを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の無人車搬送制御装置において、所定の時刻における前記複数の無人車の確定走行経路および与えられた作業内容を記憶する計画指示記憶手段と、前記各無人車の状態を監視する第1の処理と、与えられた作業を完了した無人車が発生する度に、前記計画指示記憶手段に新たな作業を設定し、前記第1の手段および前記第2の手段を起動して走行経路を探索させる第2の処理と、該探索の結果に基づいて前記各無人車に動作指示を与える第3の処理を並列かつ周期的に行うことで、前記複数の無人車の運行を制御する運行制御手段とを具備してなることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による無人車搬送制御装置1の構成を示すブロック図である。この図において、2は、配車割付部であり、CPU(中央処理装置)、ROM(リードオンメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)などから構成される処理装置である。
【0028】
運行計画部3は、CPU等により構成され、各無人車の最適な走行経路および動作順序を決定する。
【0029】
4は、搬送実行テーブルメモリ4であり、無人搬送システムに与えられる仕事に関するデータをプールしておく記憶領域である。5は、評価値格納メモリであり、運行計画部3において計画された各無人車の確定経路、及び、走行路上において無人車が停止可能な各ノードに関する予約シーケンス等を記憶する領域である。配車割付部2は、評価値格納メモリ5内のデータをチェック・参照し、各無人車への走行指示を出力する。
【0030】
6は、計画指示データメモリであり、各無人車をどのように扱うかを指示するデータ、具体的には、経路確定レベル、目的ノード(目標点)、作業時間の各データが格納されている。運行計画部3は、これらのデータに基づいて、経路計画および動作計画を立てる。各データについて以下に説明する。
【0031】
経路確定レベル: 各無人車の走行経路の確定状況を示すデータであり、「未定」、「目的ノードまで確定」、「退避先ノードまで確定」の3種類がある。
「未定」は、現在ノードから目的ノードまでの経路は確定しておらず、故にその経路を求める必要があることを示す。
【0032】
「目的ノードまで確定」は、現在ノードから目的ノードまでの経路が確定していることを意味する。目的ノード以降の経路については、運行計画部2において退避先ノードが付け加えられることによって、そこまでの経路が追加される可能性がある。退避先ノードを決定する退避動作については、後述する。
【0033】
「退避先ノードまで確定」は現在ノードから目的ノードを経て退避先ノードまでの経路が確定していることを意味する。退避先ノード以降の経路については、運行計画部3においてさらに退避先ノードが追加されることによって、そこまでの経路が追加される可能性がある。
【0034】
7は各無人車の状態に関するデータメモリであり、無人車が待機状態にあるのか、運行状態にあるのか等の無人車の状態に関するデータが記憶されている。
【0035】
8は、走行路データメモリであり、走行路上において無人車が停止可能な各ノードの座標と、その接続関係およびコストなどに関するデータが納められている。
【0036】
配車割付部2は、搬送実行テーブルメモリ4および無人車データメモリ7を参照して、未割当の仕事の存在および仕事を持たない無人車の存在を確認した場合、その参照データを元に、計画指示データメモリ6に経路確定レベル・目的ノード・作業時間をセットし、運行計画部3を起動する。
【0037】
次に、運行計画部3の動作について、説明する。
まず、運行計画部3は、自身内部に記憶される経路探索指示に従って、各無人車の出発ノードおよび目標ノードを結ぶ経路を全て求める。次に、走行路データメモリ8に記憶されたコスト(図14参照)から、各経路のコストをそれぞれ積算し、そのコストが最小となる経路を最適経路に選択する。ただし、経路探索指示に後述する方向付けの方向情報が含まれる場合には、方向付けされたアークを逆方向に走行する経路は選択されない。同様に、経路探索指示に後述する通行禁止の方向情報が含まれる場合には、通行禁止のアークを通る経路は選択されない。
以上の方法で求めた経路およびそのコストは、自身の内部記憶部へ記憶される。ただし、ここで作成された経路は、他の無人車の走行経路は考慮されていず、走行路の競合がない場合にのみ最適な経路となる。
【0038】
また、運行計画部3は、木の探索手法を用いて逆走行区間のない走行経路を求め、その結果を自身の内部記憶部へ記憶する。
ここでいう「木」は、図15に示すような下方にかけて分岐を行う構成をとる。ここで、N1、N2、・・・は分岐条件が入った分岐点であり、このうち分岐点N1は分岐を開始するルート分岐点である。また、例えば、分岐点N2を現在の分岐点とすると、分岐点N1は分岐点N2の親分岐点となり、分岐点N3およびN4は分岐点N2の子分岐点となる。探索は、基本的に上位の分岐点から下位の分岐点にかけて行われるが、探索不能の場合には、一旦親分岐点に戻り(以降、バックトラックと呼ぶ)、他の分岐点へ分岐する。
【0039】
図16は、運行計画部3の行う経路計画処理を示すフローチャートであり、この図をもとに以下で説明を行う。
まず、ステップ1において、運行計画部3は、経路計画処理を開始する。
【0040】
ステップSP2において、運行計画部3は、内部に記憶された探索指示に基づき、各無人車の走行経路を求める。ここで、運行計画部3は、上述した方法により経路を探索し、その結果である初期経路を自身の内部記憶部へ記憶する。なお、この探索指示には、計画指示データメモリ6に記憶されたデータにより決まる無人車の目標ノードが含まれる。
【0041】
ステップSP3において、運行計画部3は、木のルート分岐点を空にする。
【0042】
ステップSP4において、運行計画部3は、内部に記憶される各無人車の走行経路に基づいて、任意の二つの無人車が互いに逆方向に移動を行う区間(逆方向区間)を求め、これを無人車の全ての組み合わせについて行う。
【0043】
ステップSP5において、ステップSP4の結果により、運行計画部3は、逆方向区間が無ければ処理を終了し(ステップSP17)、逆方向区間がある場合には次のステップSP6へ進む。また、逆方向区間が無い場合は、そのときの走行経路が最終的な走行経路となる。
【0044】
ステップSP6では、運行計画部3は、各無人車の経路の逆方向区間のコストを積算する。ここで、逆方向区間のコストは走行路データメモリ105から読み出される。また、ある逆方向区間で他の複数の無人車の経路と逆向きの競合を起こしている場合には、その競合の回数分コストを積算する。ただし、走行路上の隣り合う2点間を結ぶ経路がそれ以外に存在しない場合には、その区間は逆方向区間に含めない。
【0045】
ステップSP7において、運行計画部3は、各無人車に付けられた符号を、逆走行区間のコストの大きい順に並べた競合無人車集合を作成する。
【0046】
ステップSP8において、運行計画部3は、この競合無人車集合を持った分岐点を運行計画部3は、親分岐点の下に加える。ただし、このステップSP8が始めて処理される場合、ルート分岐点に上記競合無人車集合を設定する。
【0047】
ステップSP9において、運行計画部3は、競合無人車集合から着目無人車を決定する。この着目無人車は、コストの大きい順に並んだ競合無人車集合の最初の無人車から順次選択されていく。また、次の無人車が無い場合、運行計画部3は、着目無人車なしとする。
【0048】
ステップSP10において、運行計画部3は、前ステップSP9の処理において着目無人車が無かった場合、次のステップSP11へ進み、着目無人車がある場合にはステップSP13へ分岐する。
【0049】
ステップSP11において、運行計画部3は、現在の分岐点がルート分岐点前であるかどうかを調べ、ルート分岐点でない場合、次のステップSP12へ進み、ルート分岐点の場合、つまりルート分岐点の競合無人車集合の全てにおいて経路整理が失敗した場合、経路整理失敗で全処理を終了する(ステップSP17)。
【0050】
ステップSP12において、運行計画部3は、現在の分岐点の処理を親分岐点へ移す(バックトラック)と共に、ステップSP9の処理へ戻る。また、現在の分岐点へ分岐するときに行った方向付けはこの時に解除する。
【0051】
ステップSP13において、運行計画部3は、走行路のうち、着目無人車の経路の逆方向区間を同無人車の移動方向の逆方向に方向付けし(一方通行とする)、方向情報に加える。
【0052】
ステップSP14において、運行計画部3は、経路探索部110へ探索指示を出し、この方向付けされた走行路において全ての無人車の経路を求め直す。
【0053】
ステップSP15において、運行計画部3は、前ステップSP14の経路探索において求められない経路が存在するかどうかを調べ、存在する場合には次のステップSP16へ進み、存在しない場合にはステップSP4へ戻る。
【0054】
ステップSP16において、運行計画部3は、ステップSP13で行われた走行路の方向付けを解除した後、ステップSP9へ戻る。
以上説明した処理によって、コストが小さく逆走行区間が無い複数の無人車の経路(以降、基本経路)が得られる。
【0055】
運行計画部3は、内部記憶部に記憶される基本経路に基づいて各無人車の移動を時間的に調べ、移動順序を調整したり、必要に応じて経路を変更、追加するなどして、全無人車の目標ノードまでの移動動作を計画する。また、その計画はペトリネットを用いたシミュレーションにより行われる。運行計画部3の行う動作計画処理を説明する前に、ペトリネットおよび動作計画に含まれる各種処理の説明を具体例を挙げて行う。
【0056】
(1)ペトリネット
図17(a)は、ペトリネットの説明に用いる運行図であり、この図において走行路111のノード2、6上には無人車#1、#2がそれぞれ待機している。また、図17(b)は、無人車#1、#2のそれぞれの出発ノード、目標ノード、および目標ノードまでの経路を示した図であり、[]内はノード間の移動時間(秒)を示す。すなわち、無人車#1はノード2からノード3、4の順で移動を行い
、それぞれの移動時間はノード2からノード3までが1秒、ノード3、4間が3秒である。また、無人車#2についても同様である。
【0057】
図18は、上述した運行図(図17(a))をペトリネットでモデル化した図である。この図において、P1、P2、・・・、P8 はそれぞれノードプレースであり、走行路111の各ノード1ないし8に対応し、各ノードの占有状態を示す。また、これらのプレースP1ないしP8には、対応するノードに無人車がいる場合には、丸印内に黒トークン(黒丸)が置かれ、ノードが予約されている場合には、白トークン(白丸)が置かれる。初期状態では、無人車#1はノード2に、無人車#2はノード6にいるので、プレースP2、P6に各々黒トークンが置かれる。
【0058】
また、T12、T23、・・・はトランジションであり、無人車の移動の状態を示す。また、同トランジションには、それに入る入力アークと、それから出る出力アークが一本ずつ付いており、これらのアークにより隣接する2つのプレースが結ばれる。例えば、入力ノード5、出力ノード6のトランジションはT56であり、逆に、ノード6からノード5への移動に対応するトランジションはT65である。また、ノード5からノード6への移動時には、このトランジションT56を発火させ、無人車が移動中であることを示す。また、トランジションは一度発火すると、対応するアークの移動時間などに基づいて有限時間その発火を持続する。
【0059】
また、これから移動を行う経路上のトランジションをその発火順に並べたものを発火予定トランジション系列といい、図17(b)の基本経路の場合、無人車#1および#2の発火予定トランジション系列は以下のようになる。
発火予定トランジション系列(無人車#1)={T23、T34}
発火予定トランジション系列(無人車#2)={T67、T73、T34}
【0060】
次にトランジションTstの発火に関する処理を説明する。
▲1▼ 発火可能条件
トランジションTstは、入力側プレースPs に黒トークンがあり、出力側プレースPt に黒トークンが無く、なおかつこれに先立って先行トランジション(後述)が全て発火しているとき、発火可能となる。
【0061】
▲2▼ 発火処理
発火可能なトランジションTstが発火するとノードNsからノードNtまでの移動時間を現在時間に加算し、トランジション番号と共に、その無人車の完了時刻にセットする。また、ノードNt で作業する場合には、作業時間をさらに完了時刻に加算する。そして、出力プレースPt に白トークンを置く。
【0062】
▲3▼ 発火完了処理
発火中のトランジションTstの入力側プレースPs から黒トークン、出力側プレースPtから白トークンをそれぞれ除き、プレースPt に黒トークンを置く。なお、上述した発火可能条件において、無人車が単線区間(迂回路がない区間)を通るときは、トランジションを一括して発火可能か調べる。例えば、発火予定トランジション系列が{T1、T2、・・・、Tn }であり、このうちのトランジションTi、Ti+1、・・・、Tj が単線区間である場合、トランジションTi-1 はトランジションTi、・・・、Tjがすべて発火可能な場合のみ、発火できる。これは、トランジションTi-1 の発火によって、単線区間に存在する他の無人車の出口を塞がないようにするためである。
【0063】
(2)退避動作の計画
退避動作は、移動中のある無人車の移動先に作業を終えて待機状態にある他の無人車が存在する場合に、その待機状態の無人車を他のノードに移動(退避)させる動作である。図19は、この退避経路を見つける退避経路探索処理のフローチャートであり、以下でこの説明を行う。
【0064】
退避動作が開始されると、ステップSa2において、運行計画部3は、ある無人車の回りのノードを調べ、その無人車の退避できるノードを全て求める。ここで、退避できるノードとは以下の条件を満たすノードである。
▲1▼そのノードへの移動が禁止されていない。
▲2▼待機状態でない無人車に占有されていない。
【0065】
次に、ステップSa3において、運行計画部3は、退避できるノードに対し、移動時間などの基本コストを積算する。ただし、待機状態の無人車がいるノードについては、例えばコストを100倍するなどして、なるべく選ばれないようにする。
【0066】
ステップSa4において、運行計画部3は、ステップSa3の結果のうちコストの一番小さいノードを退避ノードとし、現在ノードから退避ノードまでの区間を無人車の走行経路に追加する。
【0067】
図20は、以上の退避経路探索の一例を示す運行図である。この図において、無人車#1および#3は待機中(移動予定なし)であり、無人車#2はノード3へ移動しようとしている。この場合、無人車#2の邪魔となる無人車#1が退避の対象となる。この無人車#1の退避できるノードはノード2およびノード7であり、その両ノードへの退避経路のコストを調べる。
【0068】
ノード2への移動時間は1秒であるが、無人車#3がノード2で待機中のため、基本コストは、その移動時間の100倍の100となる。また、ノード7への移動時間は4であり、基本コストも4となる。よって、コストの小さいノード7が退避ノードに選択され、ノード3→7が無人車#1の経路に追加される。
【0069】
(3)デッドロック
複数の無人車が狭い領域に密集してしまい、上述した退避動作を行っても予定していた経路で進むことができないデッドロックの状況に陥った場合には、後述する発火順序調整、迂回経路探索、待避経路探索が行われる。ここでは、デッドロックの状態を把握する方法について述べる。図21は、このデッドロック把握処理を示すフローチャートであり、以下でこの説明を行う。
【0070】
まず、ステップSb2において、運行計画部3は、まだ以下の処理を行っていない無人車を選びその無人車が待機中であるかを調べる。もし、待機中の無人車でない場合にはステップSb3へ進み、待機中である場合にはステップSb4へ分岐する。
【0071】
ステップSb3において、運行計画部3は、対象としている無人車の走行経路上にある最も近い無人車を邪魔な無人車とし、ステップSb5へ進む。
【0072】
ステップSb4において、運行計画部3は、対象としている無人車の周辺にいる全ての無人車を邪魔な無人車とし、次のステップSb5へ進む。
【0073】
ステップSb5において、運行計画部3は、全ての無人車に対し以上の処理が終了したかどうかを調べ、まだ未処理の無人車がある場合には、ステップSb2へ戻る。
【0074】
ステップSb6において、運行計画部3は、適当な待機中でない無人車を選び、その無人車が邪魔としている無人車、その邪魔とされている無人車が邪魔としている無人車、・・・というふうに辿っていき、その中から2台以上のループを見つける。そして、これを全ての組み合わせについて行う。
【0075】
ステップSb7において、運行計画部3は、得られたループのうち最も多くの無人車を含むループを競合ループに選択する。
【0076】
ステップSb8において、運行計画部3は、ステップSb7の処理で競合ループが得られないときは、デッドロック把握失敗で本処理を終了する(ステップSb10)。
【0077】
ステップSb9において、運行計画部3は、競合ループの各無人車について、その無人車が動ける隣接ノードすなわち他の無人車がいないノードを求め、本処理を終了する(ステップSb10)。
【0078】
図22は、走行路101におけるデッドロックの一例を示した図であり、同図(a)はその初期状態の運行図、(b)はデッドロック状態の運行図を示している。また、この図において、待機中でない無人車はあみかけで示し、待機中の無人車は白ぬきで示す。ここで、無人車#1ないし#6の移動経路は次の通りである。
無人車#1:6→5→4
無人車#2:5→4
無人車#3:17→18→4
無人車#4:2→3→16
無人車#5:16→17
無人車#6:15→16→17
上記の経路に従って、無人車#1ないし#6が図22(a)の初期経路から1区間だけ移動すると、同図(b)に示すようなデッドロックの状態となる。ここで、無人車#2および#5は待機状態であるが、前述した退避経路は見つからない。
【0079】
そこで、無人車#1ないし#6のそれぞれが邪魔な無人車を調べ、図22(c)に示すような結果を得る。この図において、例えば無人車#1の邪魔となるのは無人車#2であり、デッドロック時に無人車#1の移動可能な空きノードはノード6である。この結果を基に邪魔な無人車あるいは邪魔となる無人車のループを探すと、
ループ1:無人車#1(5)→#2(4)
ループ2:無人車#3(18)→#2(4)
ループ3:無人車#6(16)→#5(17)
ループ4:無人車#3(18)→#2(4)→#4(3)→#6(16)→#5(17)→#3
の4つのループが得られる。そして、このうちの最も多く無人車を含むループ4が競合ループに選択される。なお、()内はデッドロック時の各無人車の現在位置(ノード)である。
【0080】
(4)発火順序調整
上述したデッドロックに陥った場合、まずトランジションの発火順序を調整し、その解消を試みる。つまり、ノードの予約順序を変えることによってデッドロックが回避できないかを探る。図23は、この発火順序調整処理を示すフローチャートであり、以下でこの説明を行う。
【0081】
まず、ステップSc2において、運行制御部3は、競合ループに属す非待機の各無人車の現在ノードを、他の無人車が今後通過する回数をカウントする。
【0082】
ステップSc3において、運行制御部3は、上記通行回数が「0」かどうかを調べ、「0」の場合には本処理を終了し(ステップSc9)、「0」でない場合には、次のステップSc4へ進む。
【0083】
ステップSc4において、運行制御部3は、各ノードの通行回数が前回の発火順序調整処理の時と異なる新しい状態であるかどうかを調べ、新しい状態ならば次のステップSc5へ進み、前回と同じ状態ならば、本処理を終了する(ステップSc9)。これは、状態が複雑になると、発火順序を何回も変えて結局前の状態へ戻ることがあるためでる。
【0084】
ステップSc5において、運行制御部3は、そこにいる無人車は、自分を邪魔としている無人車の現在ノードを通過していないかどうかを調べ、通過しない場合には次のステップSc6へ進み、通過する場合には処理を終了する(ステップSc9)。これは、同じ区間を通ってきた無人車においては後からきた無人車を先にやれなくなるので、合流点(ノード)をチェックするためである。
【0085】
ステップSc6において、運行制御部3は、ステップSc2の結果である通行回数を評価値とする。ただし、運行制御部3は、ある無人車を邪魔としている無人車が待機状態のとき、前述した評価値を上げる。また、以上のステップSc2〜Sc6の処理は、競合ループに属する非待機の無人車がいる全てのノードについて行われる。
【0086】
ステップScにおいて、運行制御部3は、ステップSc6で求めた各ノードの評価値が最小となるノードを競合ノードに選択する。
【0087】
ステップSc8において、運行制御部3は、その競合ノードにいる無人車を邪魔とする無人車が先に通るようトランジション発火制御データに加える。このトランジション発火制御データは、特定ノードにおける無人車の移動順序を規制するものであり、これによってトランジションの発火が規制される。
【0088】
以上で説明した発火順序調整の処理を上述した図22の運行図を用いて説明する。まず、競合ループ中の非待機の無人車#3、#4、#6がいるノード18、3、16(図22(b))の各々について通行回数を求める。この結果、ノード16が1回、その他のノードは0回なので、ノード16は、競合ノードに選ばれる。
【0089】
このノード16を出力先に持つトランジションは、トランジションT15・16およびT3・16 であり、これらの発火順序を逆にする。つまりトランジションT3・16を先行トランジションとし、トランジションT15・16 よりも先に発火させる。これにより、無人車#6をノード16へ移動させる前に、無人車#4をノード16まで移動させ、ノード3が空くので待機中の無人車#2をノード3へ退避させることができる。このように、トランジションの発火順序を調整することで、デッドロックを解消できる場合がある。
【0090】
図24は、この具体例の最終結果を示す図であり、同図(a)は無人車#1ないし#6の出発ノードから目標ノードまでの経路を示し、同図(b)はノード予約シーケンスを示す。同図(a)の()内は目標ノードであり、このノード以降の経路は上述した退避経路である。また、ノード予約シーケンス(同図(b))は、各ノードを無人車が予約する順序を示すもので、この図において例えば、ノード5は無人車#2、#1の順で予約が行われる。
【0091】
(5)迂回動作の計画
基本経路に従ってデッドロックの状況を解消できない場合には、適当な無人車が迂回経路をとるように計画する。図25は、この迂回経路探索処理を示すフローチャートであり、以下でこの説明を行う。
【0092】
まず、ステップSd2において、運行制御部3は、競合ループに属し、非待機の無人車について、移動可能な隣接ノードがあるかどうかを探索する。ここで、運行制御部3は、移動可能な隣接ノードがある場合に、次のステップSd3の処理へ進み、一方、無い場合には迂回経路探索失敗で、本処理を終了する(ステップSd9)。
【0093】
ステップSd3において、運行制御部3は、前ステップで選ばれた無人車に関して以下のアークを一時的に通行禁止にする。
▲1▼その無人車の現在ノードから次のノードへのアーク
▲2▼現在ノードから動けない方向へのアーク
【0094】
ステップSd4において、運行制御部3は、現在ノードを出発ノード、次のノードを目標ノードに設定する。
【0095】
ステップSd5において、運行制御部3は、ステップSd3および4の設定に基づいて経路探索処理(ステップSa1)を行う。
【0096】
ステップSd6において、運行制御部3は、ステップSd3で行ったアークの通行禁止を解除する。
【0097】
ステップSd7において、運行制御部3は、ステップSd5の経路探索処理において迂回経路が求められたかどうかを調べ、迂回経路がある場合には次のステップSd8へ進み、迂回経路が無い場合には迂回経路探索失敗で本処理を終了する(ステップSd9)。
【0098】
ステップSd8において、運行制御部3は、対象としている区間の経路を迂回経路に差し替えて本処理を終了する(ステップSd9)。
【0099】
図26は、デッドロックの状況を例示した図であり、同図(a)はデッドロックの状態を示す運行図である。以下、この図に基づいて上述した迂回経路探索処理を説明する。
【0100】
まず、無人車#1が最初に選ばれたとすると、ノード4→3、4→18のアークを通行禁止にして迂回経路を求めようとする。この場合の無人車#1の迂回経路としてはノード5→6→20→19→18→17・・・の経路が考えられるが、ノード18→17が無人車#4の経路と逆行するため基本的にはこの経路は選択されない。ただし、後述する動作計画(図29)の2回目の試行においては、逆走行区間が通行禁止にならないため、選ばれるかもしれない。
【0101】
次に、無人車#2で迂回経路探索をすればノード3→2→1→15→16が得られる。そして、この経路が迂回経路となると共に無人車#2の経路(3→16)の間に挿入される(図26(b))。
【0102】
(6)待避動作の計画
デッドロックの状況において迂回動作がとれない場合は、適当な無人車が一旦別のノードへ退き(待避)、他の無人車に道を譲った後、再び元の経路で移動を行う。図27は、この待避動作を示す待避経路探索であり、以下でこの説明を行う。
【0103】
まず、ステップSe1において、運行制御部3は、競合ループに属しまだ目標ノードまで到着していない無人車(非待機無人車)について、移動できる隣接ノードがあるかどうかを調べ、ある場合には次のステップSe3へ進み、無い場合には待避経路探索失敗で本処理を終了する(ステップSe10)。
【0104】
ステップSe3において、運行制御部3は、その無人車の現在ノードから次のノードへのアークを一時的に通行禁止にする。
【0105】
ステップSe4において、運行制御部3は、現在ノードを出発ノードに、他の全てのノードを目標ノードに設定する。
【0106】
ステップSe5において、運行制御部3は、ステップSe3および4において設定された条件で経路探索処理(ステップSa1)を行う。
【0107】
ステップSe6において、運行制御部3は、ステップSe5で得られた全ての経路の内、最もコストが小さい経路を選択し、その目標ノードを待避ノードとする。ただし、待避ノードの選択では単線区間に存在するノードは除く。
【0108】
ステップSe7において、運行制御部3は、ステップSe3で行った通行禁止を解除する。
【0109】
ステップSe8において、運行制御部3は、ステップSe6の結果で待避ノードが無い場合には、待避経路探索失敗で本処理を終了し(ステップSe10)、待避ノードがある場合には、次のステップSe9へ進む。
【0110】
ステップSe9において、運行制御部3は、現在ノードから待避ノード、さらにそこから現在ノードまでの経路(待避経路)を、現在持っている経路に挿入し、本処理を終了する。
【0111】
図28(a)は、デッドロックの状況を例示した運行図であり、この図に基づいて待避経路探索処理を説明する。
まず、無人車#1が最初に選ばれたとすると、ノード4→3を一時通行禁止にして経路探索を行い、ノード5が最もコストの小さい待避ノードに選択される。ここで、この無人車#1の移動可能な隣接ノードは、ノード5の他にノード18があるが、コスト(図14参照)の小さいノード5が待避ノードに選ばれる。
【0112】
次に、ノード5からノード4への経路を探索し、ノード4→5→4が待避経路として求まる。最後にこの待避経路を元の経路に挿入し無人車#1の経路(ノード4→5→4→3→2)が得られる(図28(b))。
【0113】
(7)動作計画
運行計画部3は、上述した(1)〜(6)の各種処理を用いて全無人車の経路の決定および移動順序の計画を行う。図29、30、31は、この動作計画処理を示すフローチャートであり、以下でこの説明を行う。
まず、ステップSf1(図29参照)において、運行計画部3は、ペトリネットを用いて走行路のモデル化を行う。
【0114】
ステップSf2において、運行計画部3は、試行回数に1をセットする。
【0115】
ステップSf3において、運行計画部3は、各無人車の経路を、経路計画で得た基本経路に設定する。
【0116】
ステップSf4において、運行計画部3は、試行回数を調べ、試行回数が「1」であるならば次のステップSf5へ進み、「1」以外の値ならばステップSf6へ進む。
【0117】
ステップSf5において、運行計画部3は、上述した基本経路の各経路と逆行するアークを全て通行禁止にする。これにより、以下に示される処理で逆方向区間が発生することがなくなる。また、ループ▲1▼により処理が戻り試行回数が2(図31参照、ステップSf31)となる場合には、このステップSf5は実行されず、経路探索処理においてこの通行禁止の制限は加えられない。
【0118】
ステップSf6において、運行計画部3は、現在時刻を0に初期設定する。
【0119】
ステップSf7において、運行計画部3は、各無人車を出発点に置き、その各経路から発火予定トランジション系列をそれぞれ求める。
【0120】
ステップSf8において、運行計画部3は、各無人車の完了時刻を−1に初期設定する。
【0121】
ステップSf9において、運行計画部3は、発火トランジション系列を空に初期設定する。この発火トランジション系列は、実際に発火を行うトランジションの系列であり、必ずしも発火予定トランジション系列と一致しない。
【0122】
ステップSf10において、運行計画部3は、各無人車に対して完了時刻が現在時刻と同じであるかどうかを調べ、同じである場合には次のステップSf11へ処理を進め、同じでない場合、ステップSf12へ処理を進める。
【0123】
ステップSf11において、運行計画部3は、ステップSf10の条件を満たす全ての無人車の発火予定トランジションから先頭のトランジションを取り出し、発火完了処理を行う。
【0124】
ステップSf12において、運行計画部3は、各無人車に対して完了時刻が現在時刻以前であるかどうかを調べ、現在時刻以前である場合には次のステップSf13へ処理を進め、現在時刻以前でない場合にはステップSf20へ処理を進める。
【0125】
ステップSf13において、運行計画部3は、発火予定トランジションの先頭のトランジションが、発火可能であるかどうかを調べ、発火できる場合はステップSf14へ処理を進め、発火できない場合にはステップSf17へ処理を進める。
【0126】
ステップSf14において、運行計画部3は、ステップSf13で発火可能とされた全てのトランジションを取り出して発火処理を行う。
【0127】
ステップSf15において、運行計画部3は、完了時刻に発火したトランジションの移動時間を加算し、完了時刻を更新する。
【0128】
ステップSf16において、運行計画部3は、ステップSf14で発火処理を行ったトランジションを各々対応する発火トランジション系列へ登録(追加)し、ステップSf20へ処理を進める。
【0129】
一方、ステップSf17において、運行計画部3は、発火できないトランジションに対応する邪魔な無人車に移動可能な隣接ノードがあるかどうかを調べる。つまり、運行計画部3は、ある無人車の運行に邪魔な無人車を他のノードへ追い出せるかどうかを調べる。この結果、追い出し可能の場合には次のステップSf18へ処理を進め、追い出し可能でない場合にはステップSf20へ処理を進める。
【0130】
ステップSf18において、運行計画部3は、ステップSf17で追い出し可能とされた無人車が待機中であるかどうかを調べ、待機中の場合には次のステップSf19へ処理を進め、待機中でない場合にはステップSf20へ処理を進める。
【0131】
ステップSf19において、運行計画部3は、ステップSf17および18の条件を満たす無人車に対し退避経路処理(図19、ステップSa1)を行い、退避経路を求める。
【0132】
ステップSf20において、運行計画部3は、全ての無人車に対応する発火トランジションの完了時刻が現在時刻以前であるかどうかを調べ、現在時刻以前ならばステップ22へ処理を進め、現在時刻以前でないならステップSf21へ処理を進める。
【0133】
ステップSf21において、運行計画部3は、全無人車のなかから最も近未来の完了時刻を持つ無人車を見つけ、その完了時刻を現在時刻に設定する。そして、ステップSf10(図29)へ戻る。
【0134】
ステップSf22において、運行計画部3は、全ての無人車の発火予定トランジション系列が空であるかどうかを調べ、空ならばステップSf32(図31参照)へ処理を進め、空でないならば次のステップSf23へ処理を進める。
【0135】
ステップSf23において、運行計画部3は、前述したデッドロック把握処理(図21参照、ステップSb1)によってデッドロックの状況を調べる。
【0136】
ステップSf24において、運行計画部3は、ステップSf23の処理で得られた競合ループに基づいて、前述した発火順序調整処理(図23参照、ステップSc1)によって各トランジションの発火順序を調整する。
【0137】
ステップSf25において、運行計画部3は、前ステップSfの発火順序の調整が成功したかどうかを調べ、失敗の場合には次のステップSf26へ処理を進め、成功の場合つまりデッドロックが解消された場合にはステップSf6(図29参照)へ処理を戻す。
【0138】
ステップSf26において、運行計画部3は、迂回経路探索処理(図25参照、ステップSd1)によって、迂回経路を探索する。
【0139】
ステップSf27において、運行計画部3は、前ステップにおける迂回経路探索が成功したかどうかを調べ、失敗の場合には次のステップSf28へ処理を進め、成功の場合にはステップSf6(図29参照)へ処理を戻す。
【0140】
ステップSf28において、運行計画部3は、待避経路探索(図27参照、ステップSe1)によって、待避経路を探索する。
【0141】
ステップSf29において、運行制御部3は、前ステップの待避経路探索が成功したかどうかを調べ、失敗の場合には次のステップSf30へ進み、成功の場合にはステップSf6(図29参照)へ処理を戻す。
【0142】
ステップSf30において、運行計画部3は、現在の試行回数を調べ、それが「1」の時は次のステップSf31へ進み、「1」でない場合には動作計画失敗で全処理を終了する(ステップSf34)。
【0143】
ステップSf31において、運行計画部3は、試行回数を2に増やした後、ステップSf3(図29参照)へ処理を戻す。
【0144】
ステップSf32において、運行計画部3は、無人車の動作計画が成功した場合に実行され、現在の経路を無人車の最終経路に設定する。
【0145】
ステップSf33において、運行計画部3は、発火トランジション系列をもとに、各ノードを占有する無人車の順序(ノード予約シーケンス)を作成し、全処理を終了する(ステップSf34)。
【0146】
(8)ペトリネットシミュレーションの処理例
次に、以上のペトリネットシミュレーションの具体例を、前述した図17の運行図(a)、経路(b)の条件において説明する。図32は、シミュレーションの過程を示すペトリネット図である。
【0147】
まず、初期状態(図32(a))で、まず発火処理(ステップSf14)により無人車#1に対応するトランジションT23が、無人車#2に対応するトランジションT67がそれぞれ発火する。それらの完了時刻は各々1、2秒になる。そして、プレースP3およびP4に白トークンが置かれる。
【0148】
次に、ステップSf21において、運行計画部3は、現在時刻を無人車#1の完了時刻つまり1秒に更新し、ステップSf10へ処理を戻す。運行計画部3は、ステップSf11の発火完了処理によって、プレースP2から黒トークンを、プレースP3から白トークンを除き、プレースP3に黒トークンを置く(図32(b)参照)。この状態は、無人車#1がノ ード3へ到着したことを意味する。ここで、発火中のトランジションT67は、長方形で囲まれる。
【0149】
次に、ステップSf14において、運行計画部3は、無人車#1に対応するトランジションT34を発火させ、ステップSf15において、無人車#1の完了時刻を4秒にセットする。
【0150】
次に、ステップSf21において、運行計画部3は、現在時刻を無人車#2の完了時刻の3秒に更新し、ステップSf10を経由して再び戻ったステップSf11でトランジションT67の発火完了処理を行う。
【0151】
ステップSf13において、無人車#2のトランジションT73が調べられるが出力先のプレースP3に黒トークンがあるため発火できない。これは無人車#1がノー ド3を占有しいているためである。無人車#1は現在ノード3から4へ移動中なので追い出せない。このため、無人車#2はノード7で待つことになる。ステップSf21で無人車#1の完了時刻すなわち4秒に、現在時刻が更新される。
【0152】
ステップSf14でトランジションT34の発火処理が行われて無人車#1が目標ノード4に到着する。次に、無人車#1がノード3を開放したので、ステップSf14でトランジションT73の発火処理が行われる(図32(d))。
【0153】
トランジションT73の発火処理が終わった時点(図33(a))で、ステップSf14において、運行計画部3は、最後のトランジションT34を発火させようとするが発火できないため、無人車#1に追い出しをかける。
【0154】
退避経路探索処理(ステップSf19)により、無人車#1の退避経路(ノード4→8)が求まり対応するトランジションT48が発火すべきトランジションに加えられ、発火する。
以下、同様の処理でシミュレーションが進行し、図33(c)まで進むと発火すべきトランジションが無くなり、ステップSf32の処理に入る。
トランジションの発火系列 = {T23(#1),T67(#2),T34(#1),T73(#2),T48(#1),T34(#2)}から、各ノードを占有する無人車の先行関係を調 べ、図34(a)に示すようなノード予約シーケンスを作成する。
【0155】
また、このノード予約シーケンスから、同図(b)に示すような運行計画図が作成される。この図において、無人車#1および#2は実線と破線にそれぞれ対応している。また、矢印は各無人車の移動を示し、水平線はノードが予約されている期間を示す。例えば、無人車#1はノード2から1秒でノード3へ移動し、さらに3秒でノード4へ移動を行う。この間、ノード3は、時刻0から4まで無人車#1に予約される。
【0156】
全体の動作例1:
以下で、図41に示した搬送路101における運行管理制御装置1(図1)の動作を説明する。以下の図において、図41と対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。また、この動作例における出発点および目標点を図35(a)に示す。
まず、運行計画部3は、自身内部に記憶している探索指示(図35(a)に基づき、各無人車#1ないし#5の搬送経路(初期経路)を探索し、その結果である初期経路を自身内部へ記憶する。図36(a)は、この初期経路を示した運行図であり、同図において無人車#1ないし#7の経路はそれぞれ、点線、長い一点鎖線、二点鎖線、一点鎖線、破線、実線、長い破線で示されている。
【0157】
運行計画部3は、この図36(a)に示す初期経路において、ノード2、3間、ノード4〜6間、およびノード8〜10間が逆方向区間となっているため、コストに応じて走行路の特定区間の方向付けを行い、再び経路探索の処理を行う。以上の動作が逆方向区間が無くなるまで行われ、図35(b)および図36(b)に示すような基本経路が得られる。運行計画部3は、この基本経路を自身の記憶部へ記憶する。
【0158】
運行計画部3は、この基本経路に基づいて上述した動作計画処理(図29、30、31参照)を行う。また、この処理の間に、運行計画部3は、同時に、迂回経路などの経路探索を行う。出発ノード、目標ノードおよび通行禁止区間は、運行計画部3内部の記憶部へ記憶される。
以上の処理によって、図35(c)および図36(c)に示すような最終経路が得られる。この最終経路では、基本経路(図35(b))に対して、無人車#1の退避経路(ノード20→6)が追加されている。また、図37は、この時の無人車#1ないし#7の各々の移動を時間的に示した運行計画図である。
【0159】
全体の動作例2:
次に、上述した搬送路101のノード20、21間が通行禁止である場合の動作例について説明する。ただし、この動作例における各無人車#1ないし#7の現在地および目標地は上述した動作例1と同一である(図35(a))。また、この場合、ノード6、7間、ノード7、8間、ノード21、22間は、これを結ぶ経路以外に迂回する経路が存在しないので、逆方向区間に含めない。
【0160】
ここでも動作例1と同様な処理が行われ、まず、経路探索部110において図39(a)の運行図に示すような初期経路が得られる。次に経路計画部109によって、図38(b)および図39(b)に示すような基本経路が作成される。これらの図において、初期経路(図39(a))にあった逆走行区間は無くなっている。
【0161】
そして、運行計画部3において、図38(c)および図39(c)に示すような最終経路が作成される。この最終経路では、基本経路(図39(b))に対して、無人車#1の退避経路(ノード20→6)および無人車#5の退避経路(ノード8→22→23→24→10→9)が追加されている。また、図40は、この時の運行計画図であり、この図において、無人車#1ないし#7のノード予約は図35と同一の線種で示されている。
【0162】
上述の説明をまとめると、運行計画部3は、計画指示データメモリ6及び無人車データメモリ7を参照して、各無人車に対する走行経路を作成する。この作成動作は、他の無人車の作業完了を待たず、作業が完了した無人車に対して直ちに行われる。従って、運行計画部3が基本経路(逆方向区間の無いコスト最小経路)を求める時には、走行が確定している経路がすでにいくつか存在していることになる。
【0163】
運行計画部3は、起動時において、特定の経路に対し、方向付けおよび通行禁止の情報を探索時条件として指示することが可能である。また、運行計画部3は、計画指示データメモリ6内の経路確定レベルが「未定」の無人車に対してのみ初期経路(無人車同士の競合を考慮しない、コストが最小となる経路)を求める。
【0164】
一方、計画指示データメモリ6内の経路確定レベルが「目的ノードまで確定」または「退避先ノードまで確定」の無人車は、すでに目的ノードまたは退避先ノードまでの経路が確定しており、この確定経路は固定条件となる。
【0165】
運行計画部3は、求められた基本経路に基づいて各無人車の時間的な移動を調べ、移動順序を調整したり、必要に応じて経路を変更、追加するなどして、全無人車の目標ノードまでの最も効率的な運行を計画する。
【0166】
運行計画の1つとして、退避動作がある。退避動作は、移動中のある無人車の移動先に作業を終えて待機状態にある他の無人車が存在する場合に、その待機状態の無人車を他のノードに移動(退避)させる動作である。退避先として可能なノードは、以下の条件を満たすノードである。
▲1▼そのノードへの移動が禁止されていない。
▲2▼待機状態でない無人車に占有されていない。
【0167】
運行計画部3における退避経路追加は目的ノードに到達後にのみ、必要ならば行われる。また、退避先ノードまでの経路が確定すると、その退避先ノードより前に新たな退避先ノードおよび経路を挿入することも行わない。即ち、各無人車の走行経路がどの程度まで確定しているのかを常に把握する必要があり、計画指示データメモリ6に記憶された、上述した「経路確定レベル」が参照される。
【0168】
また、他の運行計画として、逆方向に運行する無人車同士の同一な運行経路の除外がある。運行計画部3は、他の無人車の走行経路を考慮し、目標ノードへ向かう無人車の経路の逆方向区間をこの無人車の移動方向の逆方向として方向付け(一方通行とする)する。そして、運行計画部3は、方向情報の一つとして無人車の経路を求め直し、無人車同士の逆方向経路を運行計画から除外する。
【0169】
さらに、他の運行計画として、一箇所に無人車が複数集中し、無人車の動きがとれなくなる場合に迂回経路の探索がある。このとき、運行計画部3は、適当な無人車が、他の無人車の集中している経路を避けて、他の経路を回り道する、すなわち迂回する経路の探索を行う。
【0170】
上記運行管理制御装置1によれば、無人車が移動を開始する前に、予め無人車同士の干渉を考慮して全ての無人車の走行経路および走行順序を得ることができるので、多数の無人車が走行路上で頻繁に干渉する可能性がある場合にもスムーズな移動が可能となり、従って無人車の搬送効率を向上させることができる。
【0171】
また、周期的に各無人車の状態を監視し、作業を完了した無人車が発生すると、その無人車に関して新たな作業を設定して他の無人車の状態を考慮して走行経路探索を行う。従って、時々刻々と変化する各無人車の状況の元で、作業を完了した無人車に直ちに新たな作業および動作指示を与えることができるので、無人車の搬送効率を向上させることができる。
【0172】
次に、図1および図2を参照して、無人車搬送制御装置1の動作について説明する。図2は、無人車搬送制御装置1の配車割付処理を示すフローチャートである。ここで、配車割付とは、以下の動作を示す。新たな荷物の搬送処理が発生した場合、配車割付部2は、運行制御部3を起動する。そして、運行制御部2は、所定のノードで待機中の無人車の走行経路の評価を行い、評価値格納メモリ5に評価結果のデータを記憶させる。
【0173】
そして、配車割付部2は、評価結果格納メモリ5に記憶される評価結果に基づいて、所定のノードに待機中の無人車のなかから最も適する無人車を選択する。以下、上述の処理について説明する。
【0174】
まず、ステップS1において、配車割付部2は、搬送実行テーブル4を参照する。その結果、配車割付部2は、次に実行すべき搬送要求のデータを搬送実行テーブル4から読み出す。ここで、配車割付部2の読み出すデータは、搬送実行テーブル4に記憶される最も優先度の高い要求である。
【0175】
そして、配車割付部2は、読み出された搬送要求に対応し、待機中の無人車を確認するために無人車データメモリ7を検索する。これにより、配車割付部2は、所定のノードにおいて、待機中の無人車を全て抽出する。そして、配車割付部2は、抽出した待機中の無人車の待機無人車データリストを配車割付部2内の記憶部へ作成する。
【0176】
次に、ステップS2において、配車割付部2は、ステップ1において作成された待機無人車データリストの先頭から、無人車のデータを取り出し、搬送要求にたいする割付候補とする。
【0177】
そして、配車割付部2は、搬送要求の最初の目標点である、荷物を移載するノードのデータと、このノードにおける荷物の積み込みに要する作業時間のデータとを、取り出した待機中の無人車のデータに対応させ、計画指示データメモリ6へ記憶させる。ここで、配車割付部2は、待機無人車データリストにおける他の待機中の無人車に対応するデータの目標点を記憶させる部分へ目標点なしを示すデータを書き込む。
【0178】
次にステップS3において、配車割付部2は、運行計画部3を起動する。そして、運行計画部3は、走行路データメモリ8、無人車データメモリ7および計画指示データメモリ6それぞれから、待機無人車リストから取り出した待機中の無人車に対応するデータを抽出し、運行計画条件のデータとしてまとめる。
【0179】
そして、運行計画部3は、運行計画条件に基づき、対応する無人車の出発点のノードと目標点のノードとを結ぶ経路を全て求める。これにより、運行計画部3は、走行路データメモリ8に記憶されている図13に示すようなコストから、各経路のコストをそれぞれ積算し、積算したコストが最小となる経路を最適経路として選択する。
【0180】
また、運行計画部3は、上述した運行計画部3の動作においての経路計画を作成する処理により、すなわち、上述した経路を求める時、走行中の無人車の経路に対しての逆走行区間および干渉を考慮し、かつ、無人車の移動時間に基づき、無人車の移動順序の変更を行いながら上述の経路を求める処理を行う。
【0181】
次に、ステップS4において、運行計画部3は、求めた経路に基づき、対応する無人車が目標点のノードに到達するまでの所要時間を見積もり、積算する。
そして、運行計画部3は、積算した値の中で最も大きい所要時間を、選択された経路の評価値として、評価格納メモリ5へ記憶させる。これにより、配車割付部2は、待機無人車リストから取り出した無人車の評価値を評価値格納メモリ5から読み出せる。
【0182】
次に、ステップS5において、配車割付部2は、待機無人車待機リストの次の無人車のデータを読み出す。ここで、配車割付部2は、待機無人車リストに無人車のデータが無ければステップS6へ、処理を進める。
【0183】
また、配車割付部2は、待機無人車リストに無人車のデータが存在すれば、ステップS2へ処理を戻す。
ここで、待機無人車リストに無人車データが残って入りとすると、ステップ2において、配車割付部2は、待機無人車リストから次の無人車のデータを取り出し、搬送要求にたいする割付候補とする。
【0184】
そして、配車割付部2は、搬送要求の最初の目標点である、荷物を移載するノードのデータと、このノードにおける荷物の積み込みに要する作業時間のデータとを、取り出した待機中の無人車のデータに対応させ、計画指示データメモリ6へ記憶させる。
【0185】
ここで、配車割付部2は、待機無人車データリストにおける他の待機中の無人車に対応するデータの目標点を記憶させる部分へ目標点なしを示すデータを書き込む。
【0186】
そして、配車割付部2は、待機無人車リストの無人車データが空になるまで、ステップS2からステップS5間での処理を繰り返して行う。
最後に、配車割付部2は、待機無人車リストがステップS5において、空であると確認すると、ステップS6へ処理を進める。
【0187】
次に、ステップS6において、配車割付部2は、評価値格納メモリ5から得られる、待機無人車リストにあるそれぞれの無人車の評価値を比較する。これにより、配車割付部2は、現在待機中の無人車の中から最も小さい評価値(無人車の経路における所用時間)の割付候補を、搬送要求に対する最適な無人車として、搬送実行テーブルメモリ4へ記憶させる。
【0188】
次に、図10に示す梯子型走行路を用いて、実際の無人車の割付処理の一例を説明する。図11で示される無人車の状況において、搬送実行テーブルメモリ4は、図3に示す搬送実行テーブルのデータを記憶していたとする。
【0189】
ここで、「NO.」の欄にある番号「1」は、無人車#1に割り付けられている搬送要求の番号である。番号「1」の搬送要求は、ノード18で荷物を積み込み、ノード18からノード21まで、積み込んだ荷物を搬送し、ノード21において荷物を下ろす作業の流れを示している。そして、現在、無人車#1は、ノード18において、荷物を積み込み、ノード18とノード21との間で走行中である。
【0190】
また、「NO.」の欄にある番号「2」および「3」は、無人車に対する搬送処理の割付が行われていない搬送要求の番号である。まず、配車割付部2は、優先度の高い要求として、番号「2」の搬送要求を選択する。また、同時に、配車割付部2は、無人車データメモリ7を参照して、無人車#2と無人車#3とが待機中であることを確認し、待機無人車リストとして{#2、#3}を配車割付部2内の記憶部へ作成する。
【0191】
次に、配車割付部2は、待機無人車リスト{#2、#3}から、待機無人車リストの上位にある無人車#2を示すデータ「#2」を読み出す。これにより、配車割付部2は、無人車#2を搬送要求番号「2」に対する割付候補とする。無人車#2の走行の目標点は、荷物を積み込むノード20となる。そして、配車割付部2は、無人車#2の目標点ノード20を示すデータと、ノード20における作業時間を示すデータとを計画指示データメモリ6に書き込む。
【0192】
また、配車割付部2は、計画指示データメモリ6へ無人車#3の目標点がないことを示すデータを書き込む。このことにより、無人車#3の待機状態は、継続される。
【0193】
そして、配車割付部2は、搬送実行テーブルメモリ4に示される無人車#1、無人車#2および無人車#3の走行経路のデータと、無人車データメモリ7に記憶されている無人車データとに基づき、図4に示す各無人車の運行計画条件の表を作成する。次に、配車割付部2は、この図4に示す運行計画条件の表のデータを計画指示データメモリ6へ書き込む。
【0194】
そして、配車割付部2は、運行計画部3を起動する。これにより、運行計画部3は、計画指示データメモリ6に記憶される図4に示す運行計画条件の表のデータに基づき、各無人車の運行に関する図5に示す経路計画を作成する。この図5に示す経路計画において、無人車#3は、出発点と目標点とが同一であり、荷物の搬送に関する作業が無く、待機状態となっている。
【0195】
次に、運行計画部3は、この経路計画に基づき、各無人車が出発点から目標点まで運行する所要時間の見積もりを行う。この見積もりは、運行計画部3により、ノードからノードまでの各経路区間毎の所要時間(以下に示される括弧内の数値:単位は秒)が積算されて求められる。
【0196】
となり、無人車#2の評価値は、「10.5秒」となる。この得られた無人車#2の評価値「10.5」は、評価値格納メモリへ記憶される。
【0197】
ここで、上記括弧内の移動時間の数値は、図13(A)に示されているノードとノードとの間の距離を、対応する図12(B)に示されているノードからノードまでの区間における移動速度で除算された数値である。
【0198】
次に、配車割付部2は、待機無人車リスト{#2、#3}から、待機無人車リストの2番目にある無人車#3を示すデータ「#3」を読み出す。これにより、配車割付部2は、無人車#3を搬送要求番号「3」に対する割付候補とする。無人車#3の走行の目標点は、荷物を積み込むノード22となる。そして、配車割付部2は、無人車#3の目標点ノード22を示すデータと、ノード22における作業時間を示すデータとを計画指示データメモリ6に書き込む。
【0199】
また、配車割付部2は、計画指示データメモリ6へ無人車#2の目標点がないことを示すデータを書き込む。このことにより、無人車#2の待機状態は、継続される。
【0200】
そして、配車割付部2は、搬送実行テーブルメモリ4に示される無人車#1、無人車#2および無人車#3の走行経路のデータと、無人車データメモリ7に記憶されている無人車データとに基づき、図6に示す各無人車の運行計画条件の表を作成する。次に、配車割付部2は、この図6の示す運行計画条件の表のデータを計画指示データメモリ6へ書き込む。
【0201】
そして、配車割付部2は、運行計画部3を起動する。これにより、運行計画部3は、計画指示データメモリ6に示される図6に示す運行計画条件の表のデータに基づき、各無人車の運行に関する図7に示す経路計画を作成する。この図7に示す経路計画において、無人車#2は、出発点と目標点とが同一であり、荷物の搬送に関する作業が無く、待機状態となっている。
【0202】
次に、運行計画部3は、この経路計画に基づき、各無人車が出発点から目標点まで運行する所要時間の見積もりを行う。この見積もりは、運行計画部3により、ノードからノードまでの各経路区間毎の所要時間(以下に示される括弧内の数値:単位は秒)が積算されて求められる。
【0203】
となり、無人車#3の評価値は、「12.7秒」となる。この得られた無人車#3の評価値「12.7」は、評価値格納メモリへ記憶される。
【0204】
次に、配車割付部2は、評価値格納メモリ5に記憶される待機中の無人車#2および無人車#3の評価値を読み出す。そして、無人車#2の評価値と、無人車#3の評価値とを比較し、数値の小さい方、すなわち無人車#2を番号「2」の搬送要求に対応させる最適無人車とする。次に、配車割付部3は、番号「2」の搬送要求に対応させる無人車#2のデータを搬送実行テーブルメモリ4へ書き込む。
【0205】
これにより、搬送実行テーブルメモリ4に記憶されていた図3に示す搬送実行テーブルは、図8に示す搬送実行テーブルへ変更される。上述したように、無人車搬送制御装置1は、待機無人車のなかから、搬送要求に対応して、最も最適な無人車を選択する。また、図8の示す表において、この時点では、無人車#2は、移動を開始しておらず、番号「3」の搬送要求は、処理されていない。さらに、無人車#3は、ノード22において待機中である。
【0206】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を、与えられた走行経路に従い走行する複数の無人車の運行を、前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御装置において、所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段から運行候補の待機中の無人車を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出された待機中の無人車に与えられる運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションして、このシミュレーション結果により最適な走行経路を探索する探索手段と、この探索された走行経路に対する評価値を求める評価手段と、この評価手段による、待機中の無人車の評価値を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車のおのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する選択手段とを具備してなるため、走行中の無人車の経路を考慮し、待機中の無人車のなかから、搬送要求の目標点まで最も早く到達可能な無人車を選択するので、搬送要求に対して無駄な待ち時間の少ない効率的な配車制御ができ、所定の走行路における無人車の搬送能力を向上させる効果がある。
【0207】
請求項2記載の発明によれば、停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を走行する複数の無人車の運行を前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御方法において、所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶手段に記憶する第一のステップと、第一のステップにおいて記憶手段に記憶された複数の無人車の中から運行候補の待機中の無人車を抽出する第二のステップと、この第二のステップにおいて抽出された待機中の無人車に与えられる、運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションする第三のステップと、第三のステップのシミュレーション結果により、最適な走行経路を探索する第四のステップと、この第四のステップで求められる走行経路に対する評価値を求め、得られた待機中の無人車の評価値を記憶手段に記憶する第五のステップと、第五のステップにおいて、前記記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車おのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する第六のステップとを有するため、走行中の無人車の経路を考慮し、待機中の無人車のなかから、搬送要求の目標点まで最も早く到達可能な無人車を選択するので、搬送要求に対して無駄な待ち時間の少ない効率的な配車制御ができ、所定の走行路における無人車の搬送能力を向上させる効果がある。
【0208】
請求項3記載の発明によれば、所定の時刻における前記複数の無人車の確定走行経路および与えられた作業内容を記憶する計画指示記憶手段と、前記各無人車の状態を監視する第1の処理と、与えられた作業を完了した無人車が発生する度に、前記計画指示記憶手段に新たな作業を設定し、前記第1の手段および前記第2の手段を起動して走行経路を探索させる第2の処理と、該探索の結果に基づいて前記各無人車に動作指示を与える第3の処理を並列かつ周期的に行うことで、前記複数の無人車の運行を制御する運行制御手段とを具備してなるため、時々刻々と変化する各無人車の状況に基づき、作業を完了した無人車に直ちに新たな作業および動作指示を与えることができるため、無人車の搬送効率を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による無人車搬送制御装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による無人車搬送制御装置1の配車割付の動作を示すフローチャートである。
【図3】無人車の割付け前の搬送実行テーブル4に記憶されている搬送実行テーブルを示す図である。
【図4】無人車搬送制御装置1における運行計画部3に記憶される運行計画条件の表を示す図である。
【図5】運行計画条件の表のデータに基づいて作成された経路計画を示す図である。
【図6】無人車搬送制御装置1における運行計画部3に記憶される運行計画条件の表を示す図である。
【図7】運行計画条件の表のデータに基づいて作成された経路計画を示す図である。
【図8】無人車の割付け後の搬送実行テーブル4に記憶されている搬送実行テーブルを示す図である。
【図9】従来の最適経路決定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】梯子型走行路を示す図である。
【図11】無人車の走行状態を示す図である。
【図12】図10に示す梯子型走行路の座標および無人車の走行速度のデータを示す図である。
【図13】図10に示す梯子型走行路のコスト計算および従来例における最短経路選択結果を示す図である。
【図14】図41に示す走行路101のコストを示す図である。
【図15】経路計画に用いる木を示した図である。
【図16】運行計画部3の経路計画処理を示すフローチャートである。
【図17】動作計画処理の動作例を示す運行図である。
【図18】図17の運行図をモデル化したペトリネット図である。
【図19】運行計画部3の退避経路探索処理を示すフローチャートである。
【図20】退避経路探索処理を示す運行図である。
【図21】運行計画部3のデッドロック把握処理を示すフローチャートである。
【図22】デッドロック把握処理の動作例を示す運行図である。
【図23】運行計画部3の発火順序調整処理を示すフローチャートである。
【図24】発火順序調整処理の動作例を示す図である。
【図25】運行計画部3の迂回経路探索処理を示すフローチャートである。
【図26】迂回経路探索処理の動作例を示す運行図である。
【図27】運行計画部3の退避経路探索処理を示すフローチャートである。
【図28】退避経路探索処理の動作例を示す運行図である。
【図29】運行計画部3の動作計画処理(メイン処理)を示すフローチャートである。
【図30】運行計画部3の動作計画処理(メイン処理)を示すフローチャートである。
【図31】運行計画部3の動作計画処理(メイン処理)を示すフローチャートである。
【図32】運行計画部3の動作例を示すペトリネット図である。
【図33】運行計画部3の動作例を示すペトリネット図である。
【図34】運行計画部3の動作例における結果を示す図である。
【図35】運行管理制御装置1の動作例1における経路を示す図である。
【図36】運行管理制御装置1の動作例1における運行図である。
【図37】運行管理制御装置1の動作例1における運行計画図である。
【図38】運行管理制御装置1の動作例2における経路を示す図である。
【図39】運行管理制御装置1の動作例2における運行図である。
【図40】運行管理制御装置1の動作例1における運行計画図である。
【図41】無人搬送システムのシステム構成図である。
【符号の説明】
1 無人車搬送制御装置
2 配車割付部
3 運行計画部
4 搬送実行テーブルメモリ
5 評価値格納メモリ
6 計画指示データメモリ
7 無人車データメモリ
8 走行路データメモリ
Claims (3)
- 停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を、与えられた走行経路に従い走行する複数の無人車の運行を、前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御装置において、
所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶する記憶手段と、
この記憶手段から運行候補の待機中の無人車を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された待機中の無人車に与えられる運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションして、このシミュレーション結果により最適な走行経路を探索する探索手段と、
この探索された走行経路に対する評価値を求める評価手段と、
この評価手段による、待機中の無人車の評価値を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車のおのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する選択手段と、
を具備してなることを特徴とする無人車搬送制御装置。 - 停止位置である複数のノードと、前記ノード間を接続する接続路からなる走行路を走行する複数の無人車の運行を前記ノードの配列に関する情報に基づいて制御する無人車搬送制御方法において、
所定のノードにおいて、停止している待機中の複数の無人車の情報を記憶手段に記憶する第一のステップと、
第一のステップにおいて記憶手段に記憶された複数の無人車の中から運行候補の待機中の無人車を抽出する第二のステップと、
この第二のステップにおいて抽出された待機中の無人車に与えられる、運行先の目標ノードの情報と、運行中の他の無人車の前記走行路における走行経路の情報と、前記ノードの配置に関する情報とに基づき、前記走行路に対応して、無人車の走行をシミュレーションする第三のステップと、
第三のステップのシミュレーション結果により、最適な走行経路を探索する第四のステップと、
この第四のステップで求められる走行経路に対する評価値を求め、得られた待機中の無人車の評価値のデータを記憶手段に記憶する第五のステップと、
第五のステップにおいて、前記記憶手段に記憶される、複数の運行候補の待機中の無人車のおのおのの前記評価値に基づき、最適な評価値を有する待機中の無人車を選択する第六のステップと、
を有することを特徴とする無人車搬送制御方法。 - 所定の時刻における前記複数の無人車の確定走行経路および与えられた作業内容を記憶する計画指示記憶手段と、
前記各無人車の状態を監視する第1の処理と、与えられた作業を完了した無人車が発生する度に、前記計画指示記憶手段に新たな作業を設定し、前記第1の手段および前記第2の手段を起動して走行経路を探索させる第2の処理と、該探索の結果に基づいて前記各無人車に動作指示を与える第3の処理を並列かつ周期的に行うことで、前記複数の無人車の運行を制御する運行制御手段と
を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の無人車搬送制御装置。
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