JP3520340B2 - 電磁泳動を利用した微粒子と壁面との相互作用力を決定する方法 - Google Patents

電磁泳動を利用した微粒子と壁面との相互作用力を決定する方法

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JP3520340B2 JP2001250459A JP2001250459A JP3520340B2 JP 3520340 B2 JP3520340 B2 JP 3520340B2 JP 2001250459 A JP2001250459 A JP 2001250459A JP 2001250459 A JP2001250459 A JP 2001250459A JP 3520340 B2 JP3520340 B2 JP 3520340B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微粒子に作用する
電磁浮力により壁面へ該微粒子の吸着・脱着挙動を繰り
返し、該吸着・脱着挙動を観察することによって、微粒
子と壁面との相互作用力を決定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】環境化学および生命化学の分野におい
て、液中微粒子の分離、キャラクタリゼーションは非常
に重要なテーマとなっている。現在すでに幅広い領域で
電気泳動法、遠心分離法が用いられているが、全ての範
囲に確実な分離方法であるとは必ずしも言えない。その
ため電気泳動法、遠心分離法とは異なる駆動力を用いた
泳動法により、これまで分離が困難であった微粒子の分
離を容易にし、さらにそれら微粒子の新たな情報を獲得
することが期待されている。
【0003】従来、微粒子と所定の壁面との付着・脱着
等の相互作用力を測るには、原子間力顕微鏡を利用する
ことが考えられたが、いまだに確立した方法は見出され
ていない。特に、溶液内に浮遊する微粒子の吸着力を測
定する方法は、従来有効な方法は知られていなかった。
【0004】新しい泳動法として、現在、磁場を駆動力
として利用する電磁泳動法が研究されている。これまで
の電磁泳動法は、μmオーダーの微粒子を密閉したセル
中で永久磁石を用いてその泳動挙動を観測する予備的実
験方法にすぎなかった。この理由の一つとして、微粒子
に作用する泳動力が小さいことが挙げられる。しかし、
現在は超伝導磁石を用いることで均一強磁場が利用でき
るようになり、これまでよりも大きな泳動力を容易に生
じきせることが可能となった。このような状況下、本発
明者は、様々な条件での電磁泳動実験が行えるようにな
ることにより、磁場を駆動力とする微粒子の分離等が可
能であると考えた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、均一強磁場
を利用することにより、磁場を駆動力とする電磁泳動を
行ない、微粒子と所定壁面との吸着・脱着を観察するこ
とによって、微粒子と壁面との間の相互作用力を決定す
る方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る微粒子と壁
面との間の相互作用力を決定する方法は、微粒子を含む
電解質水溶液を準備し、該電解質水溶液を均一高磁場内
に設置し、該電解質水溶液内に壁体を配置し、該電解質
水溶液に対して磁場と交差する方向に交互に制御した電
流を流し、微粒子に作用する電磁浮力により壁体の壁面
へ該微粒子の吸着・脱着挙動を繰り返し、該吸着・脱着
挙動を観察することによって、微粒子と壁面との相互作
用力を決定することを特徴とする。
【0007】前記微粒子を含む電解質水溶液が容器に入
れられていることが好ましい。また、前記壁体が、容器
の内壁であることが好ましい。また、前記電解質水溶液
に対して磁場と直交する方向に交互に制御した電流を流
すことが好ましい。
【0008】本発明の相互作用力決定方法は、以下の考
察を基に発明されたものである。電磁泳動については、
ある要素:体積V(m)に電流が流れるとき、この電流
とそれに直交する磁場によってこの要素が受ける電磁力
F(N)は次のように表される。 F=μμHjV (1) ここで、μは真空の透磁率(N −2)、μは物
体の透磁率(−)、Hは外部磁界(A −1)、jは物
体内の電流密度(A −2)である。また電磁力Fの方
向は、電流と磁場に対して直角で、正電荷が受けるロー
レンツ力と同じ向きである。
【0009】このような電磁力は、たとえその対象が液
体だとしても同じように働く。セル中に密閉された導電
性の液体に電流が流れ、セル全体が均一磁場中にある場
合には、液体全体に対して均一な磁気力が働くが、液体
はセル中に閉じ込められているため動かない。そのた
め、そこには重力場における静水圧と類似の圧力勾配が
液体に生じることになる。このような状況下で液体中に
粒子が存在すると、この圧力勾配に起因するある種の浮
力のようなものを受けることになる。これが電磁泳動に
おいて非常に重要な概念となる。
【0010】図1は液体中の粒子が電磁泳動する際に受
ける力を示している。ここでは粒子と液体の密度が同じ
であると仮定し、重力および浮力を無視して考えてい
る。試料溶液を入れたセルに対して、図1に示すよう
に、電流iを流し、電流に直角な均一磁場Bを印加する
と、粒子は上下方向に泳動する。このとき粒子が上方向
に泳動するか、あるいは下方向に泳動するかは粒子の電
気伝導度αpと媒体の電気伝導度αfの大小関係によっ
て決まる。これは、電気伝導度が異なることで粒子と媒
体を流れる電流密度に差が生じて、結局は粒子が受ける
力と媒体が受ける力に差が出るためである。電気伝導度
の大小関係による電流密度分布の変化を図2に示した。
【0011】図1にあるように、粒子には二つの力が働
く。これら二つの力は、重力場における力にたとえて、
それぞれ電磁力(Electromagnetic Weight, FEMW)、電
磁浮力(Electromagnetic Buoyancy, FEMB)と呼ばれて
いる。電磁力FEMWは粒子それ自身にかかる力である
が、電磁浮力FEMBは前に述べたように媒体が受ける
電磁力に起因する力である。したがってその大きさは、
粒子と同体積の媒体にかかる力と等しく、方向は電磁力
EMWと逆の向きである。この二つの力、F EMW、
EMBは次のように定義される。 FEMW=μμHjV (2) FEMB=−μμHjV (3) ここで、μ,μは粒子と媒体それぞれの透磁率、j
,jは粒子と媒体それぞれの電流密度である。
【0012】粒子と媒体の電流密度の関係式は、粒子が
球形で、その大きさが媒体で満たされたセルに比べて十
分に小さく、かつ粒子と媒体が一定の電気伝導度を保っ
ている場合には、次のように導くことができる。まず、
粒子と媒体の内部の電場E,E(V −1)は下記
式(4)の関係にある。 ここで、ρ,ρは粒子と媒体それぞれの電気伝導度
(S −1)である。
【0013】両辺にσをかけると(4)式は次のよう
に変形され、 j= Eσであるから、電流密度の関係式(6)を得るこ
とができる。 さらにこの(6)式を用いて、(2)式のjを消去す
ると次の(7)式のようになり、 粒子にかかるトータルの力は次のように表せる。
【0014】粒子の泳動では、(8)式によって表される
力と次の(9)式によって表される流体抵抗力FVがつ
りあいを保っているので、泳動速度vは最終的に(10)式
のようになる。 ここで、Bは磁束密度(T)、ηは媒体の粘度(Pa
s)、rは粒子半径(m)である。またμ,μは1
であると仮定した。この(10)式より、粒子の電磁泳動速
度は二つの外部場、電流、磁場の強さに比例し,また粒
子の半径の二乗に比例すると予想することができる。
【0015】
【実施の態様】以下に、本発明について更に詳細に説明
する。本発明の測定方法を用いて、(1)環境及び保健
分野においては、例えば、環境微粒子と肺胞との相互作
用を測定することができる。例えば、環境微粒子と肺胞
の場合には、肺胞細胞成分を壁面にコーティングして、
コーティングした肺胞細胞成分と環境微粒子との吸脱着
力を測定し、それらの相互作用を測定する。(2)分子
生物学、臨床検査分野では、例えば、血球の吸着性を測
定することができる。例えば、抗原を壁面に付着させ、
その抗原と抗体との吸脱着工程を繰り返すことによっ
て、抗原と抗体との相互作用を測定することができる。
これによって、生体試料中に微量の抗体が含まれている
場合に、本吸着方法を用いて、抗体を抗原抗体反応によ
って除去して純粋な試料を得ることが可能となる。
(3)農芸化学、品種改良分野では、種子の付着力を測
定することができる。これによって、有機微粒子、生体
微粒子と様々な性質の壁面との相互作用力が測定でき
る。
【0016】本発明は超伝導磁石の使用によって高磁場
が得られるようになったことが大きく寄与している。本
発明により、マイクロメータオーダの微粒子の吸着力を
1ヘムトN〜1000pNまでの測定が可能となる。粒
径については特に上限はないが、重力の問題を考慮して
10mm以下、また下限は観察可能であることを考慮し
て0.1μm以上であることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の態様】(1)電解質溶液 電解質は、電流を通すために溶媒中に加えてあるが、電
極の構成イオン、例えば塩素イオンを含む金属及び非金
属の塩を用いることができ、例えば、塩化カリウムを挙
げることができる。また、溶媒としては該塩を電離でき
るものが使用でき、例えば、水を挙げることができる。
【0018】これらのうち、塩化マンガン等の金属化合
物水溶液の濃度は、例えば、1wt%から10wt% の範囲
が好ましい。濃度が低すぎると所望の電流値を確保でき
ず、高濃度すぎると支持液体の密度が高くなりすぎて、
微粒子を浮上させてしまう可能性がある。
【0019】(2)微粒子 本発明が適用できる微粒子としては、形状と大きさが判
定できるものであればよく、高分子、セラミック、半導
体、血球、細胞、DNA,生体微粒子等の固体あるいは
ゲル状粒子を挙げることができる。成就したように、微
粒子の粒径としては、0.1μm〜10mmのものが本
願発明では特に好適に適用できる。
【0020】(3)磁場、電流 均一高磁場については、特に上下限はないが、現実的に
は0.1テラス〜10テラスの範囲の磁場を用いること
が好ましい。磁場と直交することが好ましいが、必ずし
も直交である必要はない。直交成分があって、本発明の
方法が有効に実施できるのであれば、直交に限らない。
即ち、交差する場合には電流あるいはそれに働く磁場の
有効量が少なくなると考えられる。
【0021】電流は、例えば、電解質溶液中に電極を浸
漬してその間に電圧を印加することによって流した。電
流は、例えば0.01Hz〜10Hzの周波数で方向を
交互に変える制御を行なう。電流の強さの上限は、ジュ
ール熱の発生を防止する観点から決定し、例えば1mA
とすることができ、下限は微粒子を移動するに十分な強
さであればよい。また、電流の形状はサイン波、ノコギ
リ波等適宜選択して用いる。
【0022】(4)容器、壁面 容器は、微粒子を含む電解質溶液に対して不活性な材料
で形成し、外部から観察するという観点から透明である
ことが好ましい。容器として、例えば、セルを用い、セ
ルとしてキャピラリー管、ガラスセル、プラスチックセ
ルを用いることができる。キャピラリー管等の寸法は特
に限定されるものではないが、例えば、断面積100μ
mx100μmとすることができる。
【0023】容器の壁面は、容器自体の壁面とすること
もできるし、あるいは、容器の内面に一体的に設けても
良いし、あるいは容器内面と別体として容器内に設ける
こともできる。壁面の材質としては、ガラスやプラスチ
ック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)等を用
いることができる。微粒子は、電解溶液に電流を流し、
それに対して交差、例えば、直交する方向に磁場をかけ
ると、電流の方向および磁場の方向に対して直交する方
向に力を受け、その方向に移動するが、壁面は移動する
微粒子を吸着・脱着可能な位置に配置される。また、壁
面は平面が好ましいが、曲面、不定形面等も用いること
ができる。平面であっても、微視的にジグザク等の形状
は含む。壁面は、当該微粒子に対して相互作用力を測る
ことを意図する材質で形成する。例えば、環境微粒子と
肺胞との相互作用力を測定する場合には、肺胞細胞成分
をコーティングした面を壁面とする。また、抗体微粒子
と抗原との相互作用力を測定する場合には、抗原をコー
ティングした面を壁面とする。
【0024】(5)吸着・脱着挙動観察 吸着・脱着挙動観察は、微粒子観察をするための従来の
装置、例えば光学顕微鏡、超音波検出手段等を用いるこ
とができる。本方法は、血球、細胞(免疫細胞−T細
胞、B細胞、NK細胞等)、DNA等の生体微粒子と、化
学的に修飾した壁面あるいはアフィニティを制御した壁
面との相互作用力を単一粒子レベルで測定することを可
能とするものである。化学的に修飾した壁面あるいはア
フィニティを制御した壁面としては、合成糖鎖含有高分
子材料が種々市販されている。また、吸着・脱着の繰り
返し頻度は、決定すべき相互作用力が明らかになる回数
であれば足り、個々のケースについて決定する。このよ
うな決定自体は当業者であれば容易にできる。
【0025】
【実施例】以下に、本発明を具体的実施例に基づいて詳
細に説明する。本実験は、ポリスチレン粒子を対象と
し、これまで密閉でのみ行われた電磁泳動実験をフロー
系に応用し、フロー中での電磁泳動挙動と泳動速度の観
測を行った。またキャビラリー壁に吸着した粒子の電磁
浮力による脱着実験を行った。
【0026】(1)試料溶液等 試料溶液には、塩化カリウム水溶液を用い、該溶液にμ
mオーダーのポリスチレンラテックス粒子を分散させた
ものを用いた。塩化カリウム水溶液の濃度は1.0Mと
した。この濃度での塩化カリウム水溶液の粘度は0.8
8×10−3Pasであった(文献値)。密度はポリス
チレンラテックス粒子の1.05gcm−3にほぼ一致
するので、媒体と粒子の密度の差による影響は実験には
現れなかった。この1.0M塩化カリウム水溶液に粒径
10μm(3.001±0.044μm)、15μm
(14.571±1.657μm)、22μm(22.
001±2.712μm)の三種類のポリステレンラテ
ックス粒子(フナコシ社製,POLYBEAD-POLYTYR SmENE)を
個別に観測しやすい程度に分散きせて試料溶液とした。
試料溶液は使用しないときは冷蔵保存とし、実験を行う
際に室温(25℃)に合わせ,超音波によりポリスチレン
ラテックス粒子を分散させた。
【0027】(2)測定装置 図3は実験に用いた測定装置を模式拡大図で示す。図
中、容器セル1は断面が100μm×100μm、長さ
が2cmの正方形キャビラリー状をしており、セル1の
両端をAg|AgCl電極3、4とともにテフロン
(R)チューブ5,6にいれ、熱収縮チューブ7,8で
液漏れのないようつなぎ合わせた。壁面はテフロン
(R)チューブ内壁で、テフロン(R)からなってい
る。実験では、キヤピラリーの中央部分を泳動の観測領
域とし、光学顕微鏡で観察した。 Ag|AgCl電極
は、銀線を塩化カリウム水溶液中で電気分解することに
より作製した。その手順は、銀線(直径0.2mm)を電
源の+極につなぎ、白金線を−極につないで、その二本
の金属線を1.0M塩化カリウム水溶液に覆す。それか
ら5Vで5分間電流を流すと、銀線の先端に塩化銀が生
成するので、Ag|AgCl電極が完成する。図中、9
は光学顕微鏡の対物レンズを示す。
【0028】実験装置を図4に示す。超伝導磁石11
(JMT,JMTD−10T100HH1)のボア内の均一磁
場中に設置したセルホルダー12に前述の容器セル1を
固定し、電極3,4は定電流電源(扶桑製作所、HECS
317B)または定電圧電源13(Metronix, HSV
1K−60)に接続した。磁場に対して電流の流れる方向
は直交するようにした。電流を流したときにセル中の溶
液にかかる電圧および流れる電流は、電圧計14(AD
VANTEST,デジタルマルチメーターR6551)、電
流計15(武田理研,デジタルマルチメーターTR6843)
により測定できるようにした。また、テフロン(R)チ
ューブ1の一端にシリンジポンプ16(Harvard Appara
tus, New Harvard Syringe Pump 11)につなぎ、他端に
排出ラインを接続した。シリンジポンプ(HAMILTON, GA
STIGHT ♯1701)は内容積100μmのものを使用し
た。
【0029】ポリスチレン粒子の泳動の泳動挙動は、セ
ルの下から光源18(OLYMPAS,光源MODEL ILV)により
光を入射し、上から顕微鏡19(中央精機製)、 CCD
カメラ20(ELMO,L4E421R)、モニター21により観測
し、ビデオレコーダー22にて録画してその解析を行っ
た。
【0030】(4)吸脱着の測定 セル中の試料溶液に電流を流し、電磁浮力によりキャビ
ラリー第1壁に粒径20μm,15μmのポリスチレン
粒子を吸着させた。このときポリスチレン粒子を吸着さ
せるのに、それぞれ200μA,800μAの電流を5
秒間流した。次に、吸着のときとは逆向きの電流を流し
て壁に吸着しているポリスチレン粒子を脱着させた。こ
のとき電流を0〜1000μA程度まで徐々に大きくし
ていき、粒子が脱着する電流値を測定した。この実験は
フローにより観測領域に入ってきた粒子を吸着させると
フローを止め、媒体が完全に静止した状態で行った。
【0031】(5) 結果と考察 (5−1)電磁泳動挙動と泳動速度 フロー中においても電流を流している間、粒径10μ
m、22μmのポリスチレン粒子はともに泳動すること
が観測することができた。また、その向きは電磁浮力の
向きで、電流の向きを切り替えると泳動の向きも逆転し
た。このことより、フロー系においても密閉系と同様に
ポリスチレン粒子には電磁浮力が作用することが確認で
きた。
【0032】図5は電磁泳動速度の電流値に対する依存
性を示している。ここでは、速度の正の向きを電磁浮力
の向きと合わせてある。実験は粒径10μm、22μm
の二種類のポリステレン粒子について行った。このとき
の超伝導磁石内の均一磁場における磁束密度は10Tで
ある。また、流速は5μl/hrで、電流値の幅は5〜
100μAとした。図5に示されているように、電磁泳
動速度は密閉系と同様に(10)式で予想されたとおり、電
流値に比例し、粒径の大きな粒子ほど大きな泳動速度が
観測された。粒径22μmポリスチレン粒子の泳動速度
は、粒径10μmポリステレン粒子の泳動速度の3.6
2倍であった。
【0033】図6は10μmポリスチレン粒子の電磁泳
動速度の磁束密度に対する依存性を示している。このと
きの電流値は50μAで、流速は5μl/hrとし、磁
束密度を3〜10Tまでの間で設定した。図6から明ら
かなように、粒子の泳動速度は磁束密度に比例してい
る。これは論理式(10)に一致する。
【0034】(5−2)ポリスチレン粒子の吸着状態 図7は粒径15μm、22μmポリスチレン粒子の脱着
率の電流値に対する依存性を示している。脱着率は次の
式で定義している。 脱着率はその電流値までに脱着した粒子の割合を示して
いる。全脱着回数はそれぞれ粒径15μmポリスチレン
粒子が94回、粒径22μmポリスチレン粒子が60回
である。図7より粒径15μm、22μmホ゜リスチレン
粒子それぞれに脱着率が20%付近にかたが現れてお
り、また電流値に対して脱着率が広く分布していること
がわかる。このことより、ポリスチレン粒子のキャビラ
リー壁に対する吸着状態は一段階ではなく複数の段階が
あると考えられる。吸着状態に複数の段階があるのは、
粒子の表面およびキャビラリー壁の表面の状態が一様で
はなく、粒子とキャビラリー壁が接触する場所によって
吸着力に強弱ができているためであると考えられる。
【0035】図7で形がはっきりと現れている粒径15
μmでの170μA、850μAおよび粒径22μmで
の150μAにおけるポリステレン粒子の脱着に要する
力Fvを(8)式に基づいて計算した。このとき、ポリ
スチレン粒子の電気伝導度として、0.0383Scm
−1を用いた。この結果よりポリスチレン粒子の脱着に
要する力は平均値で270pNのオーダーであることが
わかった。
【0036】図8は0〜600μAまでを10μA毎に
区切り、その間の電流値で脱着した粒子の数を示してい
る。縦軸に脱着した数を、横軸に電流値をとってプロッ
トすることにより図示するヒストグラムが得られた。図
8では粒径22μmポリステレン粒子は100μAあた
りで最も多く脱着しており、200μAまでにそのほと
んどが脱着していることがわかる。一方、粒径15μm
ポリスチレン粒子は50−1000μAまで広く分布し
ており、350μAあたりで最も多く脱着している。粒
径22μmポリスチレン粒子が脱着する〜200μAま
での範囲では、粒径15μmポリステレン粒子は全体の
約20%が脱着している。この結果より脱着数の電流値
に対する分布は、微粒子のサイズによって脱着数のピー
ク位置に差ができるため、この差を利用して吸脱着によ
る微粒子の分離が可能であると考えられる。
【0037】
【発明の効果】本発明では、微粒子を含む電解質水溶液
を準備し、該電解質水溶液を均一高磁場内に設置し、該
電解質水溶液内に壁体を配置し、該電解質水溶液に対し
て磁場と交差する方向に交互に制御した電流を流し、微
粒子に作用する電磁浮力により壁体の壁面へ該微粒子の
吸着・脱着挙動を繰り返し、該吸着・脱着挙動を観察す
ることによって、微粒子と壁面との相互作用力を決定す
ることができるので、微粒子の新たな情報を簡便な方法
で得ることが可能となる。
【0038】本発明の方法を用いることによって、環境
微粒子と肺胞との相互作用力、抗体微粒子と抗原との相
互作用力、血球や細胞(免疫細胞等)やDNA等の生体微
粒子の所与の壁面に対する表面アフィニティ等の測定を
行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液体中の粒子が電磁泳動する際に受ける力を
模式的に示す。
【図2】 液体中の粒子が電磁泳動する際の電気伝導度
の大小関係による電流密度分布の変化を示す。
【図3】 粒子の吸着・脱着挙動観察のために用いた測
定装置を模式的に拡大して示す。
【図4】 粒子の吸着・脱着挙動観察のために用いた実
験装置を模式的に示す。
【図5】 粒子を溶液中に浮遊させ、電磁泳動させた際
の電磁泳動速度と電流値との関係を示す図である。
【図6】 粒子を溶液中に浮遊させ、電磁泳動させた際
の電磁泳動速度と磁束密度との関係を示す図である。
【図7】 粒子を溶液中に浮遊させ、電磁泳動させた際
の電流値と粒子の脱着率との関係を示す図である。
【図8】 電流値と脱着粒子の個数の関係を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 容器セル 19 顕微鏡 3,4 電極 20 CCDカメラ 5,6 テフロン(R)チューブ 21 モニター 7,8 熱収縮チューブ 22 ビデオレコ
ーダ 9 光学顕微鏡対物レンズ 11 超伝導磁石 12 セルホルダー 13 定電流(定電圧)電源 14 電圧計 15 電流計 16 シリンジポンプ 18 光源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2002−22704(JP,A) 特開2000−105218(JP,A) 渡會仁、外3名,磁場と電場を用いる 顕微泳動分析法の基礎検討,平成10年度 共同研究中間報告会プロシーディング 共同研究等促進事業,1998年,p. 393−398 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 15/02 G01N 27/447 G01N 27/74 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微粒子を含む電解質水溶液を準備し、該
    電解質水溶液を均一高磁場内に設置し、該電解質水溶液
    内に壁体を配置し、該電解質水溶液に対して磁場と交差
    する方向に交互に制御した電流を流し、微粒子に作用す
    る電磁浮力により壁体の壁面へ該微粒子の吸着・脱着挙
    動を繰り返し、該吸着・脱着挙動を観察することによっ
    て、微粒子と壁面との相互作用力を決定する方法。
  2. 【請求項2】 前記微粒子を含む電解質水溶液が容器に
    入れられていることを特徴とする請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 前記壁体は前記容器の内壁であることを
    特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記電解質水溶液に対して磁場と直交す
    る方向に交互に制御した電流を流すことを特徴とする請
    求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
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渡會仁、外3名,磁場と電場を用いる顕微泳動分析法の基礎検討,平成10年度 共同研究中間報告会プロシーディング 共同研究等促進事業,1998年,p.393−398

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