JP3516673B6 - 経腸栄養剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、栄養補給のために患者に経管的に投与されて使用される経腸栄養剤に関するものであり、特に、患者に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流する胃食道逆流を抑制する技術の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
患者に栄養を補給する栄養補給法が既にいくつか存在する。
【0003】
栄養補給法は、栄養が投与される人体の部位または器官の違いから、経腸栄養補給法と経静脈栄養補給法とに分類される。経腸栄養補給法は、腸に栄養を投与する方法であり、これに対し、経静脈栄養補給法は、中心静脈または抹消静脈を流れる血液に栄養を投与する方法である。
【0004】
経腸栄養補給法は、体外から体内に栄養が投与される経路の違いから、経口栄養補給法と経管栄養補給法とに分類される。
【0005】
経口栄養補給法は、食物の嚥下が可能な患者に対して施行され、患者に食物を経口的に摂取させる方法である。
【0006】
これに対して、経管栄養補給法は、食物の嚥下に障害を有する患者に対して施行され、栄養剤を栄養チューブを経て患者の胃または腸に注入する方法である。この経管栄養補給法のもとに患者に投与される栄養剤を経腸栄養剤と定義する。この経管栄養補給法は、患者に経腸栄養剤を経管的に投与する方法なのであり、経鼻胃管栄養補給法と経胃瘻栄養補給法と経腸瘻栄養補給法とに分類される。
【0007】
経鼻胃管栄養補給法は、患者の口または鼻において一端が開口する状態で栄養チューブを食道内に挿入し、その栄養チューブを経て経腸栄養剤を胃または腸に注入する方法である。
【0008】
これに対し、経胃瘻栄養補給法は、患者の腹壁と胃壁とに跨って造設された胃瘻の瘻孔に栄養チューブを挿入し、その栄養チューブを経て体外から胃の内部に経腸栄養剤を注入する方法であり、また、経腸瘻栄養補給法は、患者の腹壁と腸壁とに跨って造設された腸瘻の瘻孔に栄養チューブを挿入し、その栄養チューブを経て体外から腸の内部に経腸栄養剤を注入する方法である。
【0009】
特開2000−152975号公報には、経鼻的または経皮的に経腸栄養剤を患者に投与する従来技術として、流動食を経腸栄養剤として投与することが開示されている。
【0010】
国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報には、経腸栄養剤としての流動食が経管的に投与されることが予定された患者に、その流動食を投与する前もしくは後において、またはそれと同時に、増粘剤を含む溶液である嘔吐予防食品を経管的に投与することが従来技術として開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
患者に経腸栄養剤を投与する際に留意すべき事項として、胃内に投与された経腸栄養剤が食道に向かって逆流する現象、すなわち、胃食道逆流を抑制することが挙げられる。胃食道逆流は、患者に逆流性食道炎や嚥下性肺炎を引き起こす原因となるからである。逆流性食道炎は、胃からの逆流物の胃酸の刺激に起因する食道炎であり、これに対し、嚥下性肺炎は、その逆流物が気管に侵入することに起因する肺炎である。
【0012】
胃の内容物が食道に向かって逆流しないように蓋として機能する噴門部が胃には形成されている。経腸栄養補給を必要とするような高齢者の場合には、一般的にその噴門部の機能が低下しているが、たとえその機能が正常であっても、胃食道逆流が起こる可能性が高い。そのため、高齢者である患者に経腸栄養剤を投与することが必要である場合に特に、胃食道逆流を抑制することが強く要望される。
【0013】
しかしながら、経腸栄養剤として液状のものを使用する場合にはもちろんのこと、前記特開2000−152975号公報の開示に従い、流動状のものを使用する場合であっても、胃食道逆流を十分に軽減することができなかった。そのため、患者に対する介護者の負担も大きかった。
【0014】
図5には、液状または流動状の経腸栄養剤を患者に経管的に投与した場合にその経腸栄養剤が胃から食道に向かって逆流する傾向が強いことが模型的に示されている。同図において符号10は患者の頭部、12は足部、14は腹部、16は背部、18は口部、20は胃、22は食道、24は液状または流動状の経腸栄養剤をそれぞれ示している。
【0015】
また、前述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施すれば、患者の胃内において経腸栄養剤としての流動食と増粘剤とが混合されて適当な反応が起こり、それにより、胃の内容物の粘度が上昇した後には、胃食道逆流が抑制されそうである。
【0016】
しかし、流動食と増粘剤との反応前においては、流動食も増粘剤も粘度が低い。このように低粘度の流動食および増粘剤が患者の体内に貯留される期間が存在するため、胃食道逆流が起こる可能性が高い。
【0017】
そのため、上記従来技術を実施しても、流動食および増粘剤の投与工程の初期から末期までの全期間を通じて、胃食道逆流を良好に抑制することは困難である。
【0018】
このような事情を背景として、本発明は、患者に経管的に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流することを抑制することが容易な経腸栄養剤を提供することを課題としてなされたものである。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0020】
(1) 患者の体内に挿入される栄養チューブに患者の体外において接続された容器から前記栄養チューブを経て患者の胃または腸の内部に前記容器の加圧によって投与される経腸栄養剤であって、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する半固形物として形成され、前記形態保持性が、患者の体内への当該経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持されるとともに、当該経腸栄養剤が患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては当該経腸栄養剤が液状化しないように、前記形態保持性が維持される経腸栄養剤。
【0021】
この経腸栄養剤は、液体および流動体としての性質と固形物としての性質とを併有する。その結果、この経腸栄養剤は、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する一方で、強制外力による形態の変化が固形物より容易である。
【0022】
さらに、この経腸栄養剤によれば、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点で液体および流動体とは異なる半固形物として製造されるため、それら液体および流動体より粘度または硬度を高めることが容易である。
【0023】
ここに、「形態保持性」は、外部から経腸栄養剤に自然に作用する重力および大気圧に対抗して自身の初期の形態を維持しようとする性質として定義することが可能である。
【0024】
したがって、本項に係る経腸栄養剤によれば、図4に模型的に示すように、患者に投与されて胃20の内部に貯留した経腸栄養剤130が食道22に向かって逆流する胃食道逆流を容易に抑制し得る。
【0025】
経腸栄養剤の胃食道逆流が抑制されるのであれば、例えば、経腸栄養剤の投与中、患者の***を座位に維持することが不可欠ではなくなる。その結果、患者本人にとっては、経腸栄養剤の投与中に、接触圧が高い臀部や背部に褥瘡が生じてしまう可能性が軽減される。
【0026】
ある経腸栄養剤を使用すると患者に胃食道逆流が起こる可能性が高く、よって、それに起因して患者が嘔吐する可能性が高い場合には、その患者を介護する介護者は、患者への経腸栄養剤の投与中、その患者が嘔吐してその状態が急変したらそのことが直ちに発見できるように患者を絶えず注意深く監視しなければならない。そのため、重い監視負担が介護者に課されることとなってしまう。
【0027】
しかし、患者に投与される経腸栄養剤について胃食道逆流が起こる可能性が軽減されるのであれば、介護者にとっては、患者を監視する負担が軽減される。
【0028】
前述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施する場合には、前述のように、流動食および増粘剤の投与中に、増粘剤による流動食の粘度上昇が起こらないために、胃内容物の粘度が胃食道逆流が起こり難い粘度より低い粘度不足期間が存在し、かつ、その粘度不足期間において胃食道逆流が起こってしまう可能性が高い。
【0029】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤によれば、それの形態保持性が、患者の体内への当該経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持され、その結果、当該経腸栄養剤の投与中に上述の粘度不足期間が存在しないため、当該経腸栄養剤の投与期間の全体にわたり、胃食道逆流を抑制することが容易となる。
【0030】
さらに、上述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施する場合には、患者に最終的に投与されることとなる流動食および増粘剤の全容積が、半固形状の経腸栄養剤の全容積より大きい可能性が高い。前述のように、増粘剤が液状であり、その結果、その増粘剤と流動食との混合物が半固形状の経腸栄養剤より水分を多量に含むことになるからである。
【0031】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤によれば、液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点に関しては固形物と共通する半固形物として形成される。
【0032】
したがって、この経腸栄養剤によれば、患者に最終的に投与されることとなる物質の全容積を容易に減少可能となり、その結果、投与時間を容易に短縮可能となる。投与時間が短縮されれば、患者本人および介護者の負担が軽減されるとともに、外部から経腸栄養剤に細菌が混入する傾向もその混入した細菌が繁殖する傾向も軽減され、それにより、患者に投与される経腸栄養剤の清潔度を高めることが容易となる。
【0033】
この経腸栄養剤は、主に、強制外力による自身の分断によって自身全体の形態を変化させる。一方、この経腸栄養剤は、栄養チューブの通過中にその栄養チューブから作用する強制外力によって分断して自身全体の形態が変化し、その後、患者の体内に投与される。そのため、この経腸栄養剤は、分断状態で患者の体内に存在することとなる。しかし、経腸栄養剤からその分断によって生ずる各部分は依然として形態保持性を有するから、分断状態の経腸栄養剤はそれ全体としても、液体および流動体より強い形態保持性を示すこととなる。
【0034】
すなわち、この経腸栄養剤においては、栄養チューブを経た患者の体内への投与の前後を通じて形態保持性が維持されるのである。
【0035】
さらに、この経腸栄養剤においては、患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては経腸栄養剤が液状化しないように形態保持性が維持される。
【0036】
ところで、栄養補給のために患者が経口的に摂取する食品にあっては、その食品が患者の口腔内に取り込まれたときにある程度液状化することが、患者による嚥下を促進するために必要である。しかし、この液状化は、かえって胃食道逆流を引き起こす可能性を高めてしまう。
【0037】
一方、経腸栄養剤は、経口的に摂取される食品ではないため、投与後に液状化するように製造することは不要である。
【0038】
このような知見に基づき、本項に係る経腸栄養剤は、患者の体内においてその患者の体温によって液状化しないように形態保持性を有する半固形物として形成されている。
【0039】
したがって、この経腸栄養剤によれば、患者への投与を阻害することなく、胃食道逆流を容易に抑制し得る。
【0040】
一般に、経腸栄養剤が形態保持性を強く示すほど、それの流動性すなわち自由変形性を喪失し、このことは、経腸栄養剤が栄養チューブを通過することを阻害する要因となり得る。
【0041】
しかし、本項に係る経腸栄養剤は、患者の体内に挿入される栄養チューブを経て、その栄養チューブのうち患者の体外に位置する部分に接続された容器から患者の胃または腸の内部に、その容器の加圧作用を利用して投与される。
【0042】
したがって、この経腸栄養剤によれば、それが形態保持性を液体および流動体より強く示すにもかかわらず、栄養チューブをスムーズに通過することが容易となる。
【0043】
本項に係る「経腸栄養剤」は、前述の経鼻胃管栄養補給法のもとに使用したり、前述の経胃瘻栄養補給法のもとに使用したり、前述の経腸瘻栄養補給法のもとに使用することが可能である。
【0044】
また、この「経腸栄養剤」を半固形物として製造するために、例えば、液状化栄養剤に半固形化剤を添加することが可能である。この場合、その半固形化剤として、鶏卵の卵白を選択したり、寒天を選択したり、ゼラチンを選択したり、その他の半固形化剤を選択したり、それらを適宜組み合わせて選択することが可能である。
【0045】
本項において「予め定められた半固形化処理」は、例えば、容器内の液状化栄養剤に対する熱処理として定義したり、その液状化栄養剤を単に放置する時効処理として定義することが可能である。
【0046】
また、本項において「容器」は、半固形化状態の経過経腸剤を収容する機能と、その容器内に収容された経腸栄養剤を加圧して栄養チューブ内に注入する機能とを有する限り、物理的形態の如何は問わない。
【0047】
したがって、「容器」は、プランジャがシリンダ内に気密にかつスライド可能に嵌合されて成る注射器としたり、フレキシブルなバッグとすることが可能である。そのバッグは、例えば、アルミニウム製フィルム、合成樹脂製フィルム等のフィルムにより構成したり、雑菌侵入阻止等のために密閉式として構成することが可能である。
【0048】
さらに、「容器」は、経腸栄養剤の実際の投与時期に臨んで経腸栄養剤を主にその投与中に限って保存する第1の形式としたり、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するとともにその投与中にも保存する第2の形式とすることが可能である。
【0049】
ここに、第1の形式を採用する場合には、経腸栄養剤の投与に先立って経腸栄養剤を専ら保存する容器から「容器」に経腸栄養剤を移し変えた後に、その経腸栄養剤を「容器」から患者に投与することとなる。
【0050】
(2) 液状化栄養剤を前記容器と同じかまたはそれとは別の容器内に充填し、その充填状態で、予め定められた半固形化処理を前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤に対して施すことによって製造される(1)項に記載の経腸栄養剤。
【0051】
この経腸栄養剤は、患者の体内への投与後のみならずその投与前においても形態保持性を示す。仮に、そのような半固形化状態の経腸栄養剤を容器内に充填しようとすると、その経腸栄養剤の形態保持性、すなわち、半固形物としての性質が原因となって、その充填がスムーズに行われない可能性がある。
【0052】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤は、容器への充填前においては液状化状態にあり、その容器への充填後にはじめて半固形化状態に移行する。したがって、この経腸栄養剤によれば、容器への充填をスムーズに行うことが容易となる。
【0053】
ここに、「容器」は、前記(1)項における容器、すなわち、栄養チューブに接続された状態で経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する機能を有する容器と同じである場合と、それとは別である場合とがある。
【0054】
「容器」が前記(1)項における容器と同じである場合は、前述の第1または第2の形式を採用する場合に相当する。一方、「容器」が前記(1)項における容器とは別である場合は、「容器」が、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するが、その投与中には保存しない、保存専用の容器である場合に相当することとなる。
【0055】
(3) 前記液状化栄養剤に半固形化剤を添加する添加工程と、その半固形化剤が添加された液状化栄養剤を前記同じ容器または別の容器内に充填する充填工程と、その充填状態で、前記予め定められた半固形化処理を前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤に対して施す処理工程とを実施することによって製造される(2)項に記載の経腸栄養剤。
【0056】
(4) 前記半固形化剤が、鶏卵の卵黄と卵白とのうちの少なくとも卵白を含む(3)項に記載の経腸栄養剤。
【0057】
本項における「少なくとも卵白」の一例は、鶏卵の卵黄と卵白との双方を含む全卵である。
【0058】
(5) 前記処理工程が、前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤の加熱を前記予め定められた半固形化処理として行う加熱工程を含む(4)項に記載の経腸栄養剤。
【0059】
本項における「加熱工程」は、例えば、少なくとも卵白と液状化栄養剤(流動状栄養剤を含む)との混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにする工程を含むものとすることが可能である。
【0060】
ここに「蒸す」という調理法は、スチームを介して素材に熱を加える調理法として定義することが可能であり、これに対し、「蒸し焼き」という調理法は、スチームを介して素材に熱を加えるのと並行して、同じ素材に熱を直に加えて焼く調理法として定義することが可能である。
【0061】
(6) 前記半固形化剤が、寒天を含む(3)項に記載の経腸栄養剤。
【0062】
(7) 前記添加工程が、前記液状化栄養剤と前記寒天との混合物を加熱してその寒天を液状化栄養剤に溶解させる加熱工程を含み、前記処理工程が、前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤の吸熱を前記予め定められた半固形化処理として行う吸熱工程を含む(6)項に記載の経腸栄養剤。
【0063】
(8) 前記栄養チューブが、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入されて使用されるものであり、かつ、患者の口または鼻から患者の食道を経て胃の内部に挿入されて使用される栄養チューブより内径が大きくかつ短いものである(1)ないし(7)項のいずれかに記載の経腸栄養剤。
【0064】
前記(1)ないし(7)項のいずれかに係る経腸栄養剤を前述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用する場合には、前述の経鼻胃管栄養補給法のもとに使用する場合に比較して、経腸栄養剤が通過すべき栄養チューブすなわち投与経路が短くて済む。
【0065】
そのため、前記(1)ないし(7)項のいずれかに係る経腸栄養剤を前述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用する場合には、経腸栄養剤が液体ではなく、液体より濃厚ゆえに、同量の栄養成分を含有し得る容積の減少が容易な半固形物であることとも相まって、一回分の経腸栄養剤を投与するのに必要な投与時間を容易に短縮できる。
【0066】
さらに、経腸栄養剤の投与経路が短くて済むということは、経腸栄養剤の粘度が高いために経管投与時に経腸栄養剤が栄養チューブ内で詰まって残留してしまう事態を容易に回避できることにつながる。
【0067】
さらにまた、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入されて使用される栄養チューブは、一般に、患者の口または鼻から患者の食道を経て胃の内部に挿入されて使用される栄養チューブより短いうえに内径が大きい。
【0068】
そして、患者に経腸栄養剤を経管的に投与する場合には、経腸栄養剤の投与経路の短縮化と大径化とに依存すれば、投与時間の短縮が容易になり、さらに、栄養チューブ内における経腸栄養剤の残留回避も容易になる。
【0069】
このような知見に基づき、本項に係る経腸栄養剤は、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入された栄養チューブを経て体外から胃または腸の内部に投与されて使用される経腸栄養剤とされている。すなわち、この経腸栄養剤は、上述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。
【0070】
患者の腹壁と胃壁とに跨って造設された瘻孔である胃瘻を経て経腸栄養剤を患者に投与する場合、胃瘻から延びて腸に至る栄養チューブ(以下、「経胃瘻的空腸栄養チューブ」という)を使用しないのであれば、経腸栄養剤は胃内に投与され、その後、胃のぜん動によって腸内に送り込まれて投与されることになる。これに対し、経胃瘻的空腸栄養チューブを使用するのであれば、経腸栄養剤は胃内に投与されずに直ちに腸内に投与されることになる。このような栄養補給法を経胃瘻的空腸栄養補給法と称することができる。
【0071】
本項に係る経腸栄養剤はその経胃瘻的空腸栄養補給法のもとに使用することが可能である。
【0072】
一般に、経腸栄養剤をスムーズに栄養チューブ内を通過させたいという要望を満たす観点から、経腸栄養剤の形態保持性の程度と栄養チューブの内径との間に一定の制約が課される場合がある。それは、経腸栄養剤が形態保持性を強く示すほど、経腸栄養剤の栄養チューブ内での変形自由度を高めるべく、栄養チューブの内径を大きくしなければならないという制約である。
【0073】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤は、経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用される栄養チューブを経て患者の体内に投与されるものとされていて、その栄養チューブは、経鼻胃管栄養補給法のもとに使用される栄養チューブより内径が大きい。
【0074】
したがって、この経腸栄養剤によれば、液体および流動体より強い形態保持性を有するにもかかわらず、大径の栄養チューブを経てスムーズに患者の体内に投与することが容易となる。
【0075】
(9) 患者の体内に経管的に投与される経腸栄養剤が容器内に収容されて成る容器付き経腸栄養剤であって、前記経腸栄養剤が、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する半固形物として形成され、前記形態保持性が、患者の体内への前記経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持されるとともに、前記経腸栄養剤が患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては前記経腸栄養剤が液状化しないように、前記形態保持性が維持され、液状化栄養剤を前記容器内に充填し、その充填状態で、予め定められた半固形化処理を前記容器内の液状化栄養剤に対して施すことによって前記経腸栄養剤が製造される容器付き経腸栄養剤。
【0076】
この容器付き経腸栄養剤によれば、前記(1)項に係る経腸栄養剤と同じ原理に従い、同じ作用効果が実現され得る。
【0077】
同じ容器内に同じ経腸栄養剤を液状化状態で充填しようとする場合と半固形化状態で充填しようとする場合とを互いに比較すると、半固形化状態で充填しようとする場合の方が、その経腸栄養剤の形態保持性、すなわち、半固形物としての性質が原因となって、容器内への充填を効率よく行い得ない可能性がある。この可能性は、例えば、経腸栄養剤の形態保持性が強いほど、容器の開口部が狭いほど増大する。
【0078】
これに対し、本項に係る容器付き経腸栄養剤は、容器内への充填前においては液状化状態にあり、その容器内への充填後にはじめて半固形化状態に移行する。したがって、この容器付き経腸栄養剤によれば、容器内への充填を効率よく行うことが容易となる。
【0079】
本項における「容器」は、経腸栄養剤の実際の投与時期に臨んで経腸栄養剤を主にその投与中に限って保存するとともに栄養チューブとの接続状態でその経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する形式とすることが可能である。
【0080】
「容器」は、さらに、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するとともにその投与中にも保存し、かつ、栄養チューブとの接続状態でその経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する形式とすることも可能である。
【0081】
「容器」は、さらにまた、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するがその投与中には保存しない形式とすることも可能である。
【0082】
また、「容器」は、半固形化状態の経過経腸剤を収容する機能と、その容器内に収容された経腸栄養剤を加圧して栄養チューブ内に注入する機能とのうち少なくとも前者の機能を有する限り、物理的形態の如何は問わない。
【0083】
したがって、「容器」は、プランジャがシリンダ内に気密にかつスライド可能に嵌合されて成る注射器としたり、フレキシブルなバッグとすることが可能である。そのバッグは、例えば、アルミニウム製フィルム、合成樹脂製フィルム等のフィルムにより構成したり、雑菌侵入阻止等のために密閉式として構成することが可能である。
【0084】
本項に係る容器付き経腸栄養剤は、前記(2)ないし(8)項のいずれかに記載の特徴的技術と組み合わせて実施することが可能である。
【0085】
(10) (1)ないし(8)項のいずれかに記載の経腸栄養剤を前記患者に投与するために、その経腸栄養剤が充填されるとともにその充填された経腸栄養剤を加圧して射出する注射器であって、前記経腸栄養剤が予め充填された状態でその経腸栄養剤と共に製品化されることにより、当該注射器の使用に先立ち、前記経腸栄養剤を保存する容器として機能する注射器。
【0086】
前記(1)ないし(8)項のいずれかに係る経腸栄養剤を栄養チューブを利用して患者に投与する場合には、経腸栄養剤の形態保持性または粘度に打ち勝つべく、経腸栄養剤を栄養チューブ内に押し込むことが必要となる。この押込みは、経腸栄養剤を注射器により加圧して患者に投与することにより実現可能である。
【0087】
このように、注射器を利用して経腸栄養剤を患者に投与する手法(物質が自然に落下することを利用して患者に投与する自然投与と区別する意味において、強制投与ということができる。)を採用する場合には、一般には、経腸栄養剤と注射器とが別々に製品化され、経腸栄養剤は、専用の容器内に保存された状態で取り引きされる。
【0088】
このように経腸栄養剤と注射器とが別々に製品化される場合には、その経腸栄養剤の投与に先立ち、それが保存されている専用の容器から経腸栄養剤を注射器によって吸引してその注射器のチャンバ内に充填し、その後、その注射器のプランジャをシリンダ内に押し込むことにより、そのチャンバに充填された経腸栄養剤が患者の体内に注入される。
【0089】
これに対し、本項に係る注射器は、経腸栄養剤が予め充填された状態でその経腸栄養剤と一緒に1つの製品として製品化されることにより、当該注射器の使用に先立ち、経腸栄養剤を保存する容器として機能する。この注射器は、プレフィルド型と称することができる。
【0090】
したがって、この注射器によれば、経腸栄養剤の投与に先立ち、それを専用の容器から注射器に移し変えることが不要となり、投与に必要な作業が単純化されるとともに、その投与に必要な時間を容易に短縮可能となる。
【0091】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0092】
本発明の第1実施形態に従う経腸栄養剤は、患者に造設された胃瘻を経て胃内に投与されて使用される。すなわち、この経腸栄養剤は、経胃瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。図1に示すように、胃瘻100は、患者の腹壁102と胃壁104とに跨り、体外の空間106と胃内の空間108とを互いに連通させるように造設される。
【0093】
胃瘻100は、開腹手術によって造設可能であるが、胃内に挿入された内視鏡を用いて経皮的に造設することも可能である。後者の経皮内視鏡的胃瘻造設は、具体的には、内視鏡を用いて体外から胃へのチューブを挿入し、患者の腹壁および胃壁においてそのチューブの周囲に瘻孔を形成するプロセスである。
【0094】
この経皮内視鏡的胃瘻造設は、その施行時に患者に誘発される合併症が少ないという点において開腹手術による胃瘻造設に比して有利であるといわれている。
【0095】
また、この経皮内視鏡的胃瘻造設を施行する場合には、経鼻胃管栄養補給法を実施するために栄養チューブを鼻および食道を経由して胃に到達するように患者に挿入する場合に比較して、患者本人に与える苦痛が少なく、しかも、介護者の負担も軽減されるともいわれている。
【0096】
以上説明した2つの理由などから、この経皮内視鏡的胃瘻造設は、今日、急速に普及しつつある。
【0097】
経胃瘻栄養補給法を実施する場合には、図1に示すように、栄養チューブとしての胃瘻チューブ110が胃瘻100に挿通させられる。胃瘻チューブ110は、それに取り付けられた体外固定板112と胃内固定板114とにより、胃瘻100に対して位置決めされる。
【0098】
経腸栄養剤は、胃瘻チューブ110を通過することにより、体外から胃内に注入される。胃瘻チューブ110は、一般に、前述の経鼻胃管栄養補給法を実施するために栄養チューブとして使用される経鼻胃管チューブと比較し、内腔が広く(内径が大きく)、かつ、長さが短い。一般的な経鼻胃管チューブは、内径が2ないし4[mm]というように内腔が狭く(内径が小さく)、かつ、長さが60[cm]以上であるというように長い。
【0099】
したがって、一般的な経鼻胃管チューブを使用して経腸栄養剤を患者に投与する場合には、経腸栄養剤の流れ易さを確保するために、経腸栄養剤の剤形として液体を採用することが望まれるのに対し、胃瘻チューブ110を使用して経腸栄養剤を患者に投与する場合には、その経腸栄養剤の剤形として、液体より形態保持性が強い半固形物を採用しても、経腸栄養剤の流れ易さを確保し得る。
【0100】
図2には、腹壁102と胃壁104と胃瘻チューブ110との位置関係が部分側面断面図で示されている。
【0101】
経腸栄養剤の胃20の内部への注入は、図3に示すように、注射器120を使用して行われる。注射器120においては、シリンダ122にプランジャ122がスライド可能に嵌合されている。それらシリンダ122とプランジャ124との間にチャンバ126が注射口(同図においては隠れて見えない)に連通した状態で形成されている。そのチャンバ126に、注射器120によって射出されるべき経腸栄養剤130が充填されている。注射器120の注射口は、一般的な注射器のそれより直径が大きいのが一般的である。
【0102】
その充填された経腸栄養剤130は、プランジャ124をシリンダ122内に深く押し込むことにより、胃瘻チューブ110内に射出され、これにより、その胃瘻チューブ110を経て胃20の内部に強制外力により注入される。このように、経腸栄養剤130は、患者の体内に強制的に投与されるのである。
【0103】
経腸栄養剤130は、次のようにして製造される。
【0104】
まず、液状化栄養剤(すなわち、患者に投与すべき栄養成分を含有した液体)を250[ml]、容器内に用意する。次に、その液状化栄養剤に生の全卵を1個加えて攪拌する。その後、それら液状化栄養剤と生の全卵との混合物の一部を、容量が100[ml]である注射器120によって吸引してチャンバ126内に充填する。
【0105】
続いて、そのようにして混合物が充填された注射器120を所定の調理器内にセットし、注射器12と一緒の状態でその混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにする。以上で、経腸栄養剤130が製造される。
【0106】
このようにして製造された経腸栄養剤130は、半固形物として形成されている。ここに、「半固形物」とは、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する性質を有する物質を意味する。この経腸栄養剤130の粘度および硬度は、プリンや茶碗蒸し程度のものとなっている。
【0107】
したがって、この経腸栄養剤130を患者に投与した場合には、図4に模型的に示すように、その経腸栄養剤130の形態保持性に依存することにより、胃20の内容物である経腸栄養剤130が食道22に向かって逆流する胃食道逆流が抑制される。
【0108】
よって、本実施形態によれば、経腸栄養剤130の投与中、患者の***を座位に維持することが不可欠ではなくなり、図4に示すように、患者に負担が少ない仰臥位において経腸栄養剤130の投与を正常に行い得る。
【0109】
ところで、蒸されるかまたは蒸し焼きにされた全卵は、患者の体内においてその患者の体温によって液状化することが抑制される素材として機能する。したがって、経腸栄養剤130が患者の体内においてその患者の体温によって液状化することが抑制される。
【0110】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、液状化栄養剤の粘度を上昇させるために全卵が使用されているが、例えば寒天を使用して本発明を実施してもよい。ただし、全卵を使用する場合のほうが寒天を使用する場合より、経腸栄養剤130の調理が容易である。
【0111】
さらに、本実施形態においては、全卵と液状化栄養剤との混合物を蒸すことまたは蒸し焼きにすることに先立ってその混合物が注射器120に吸引されてその注射器120内に充填され、その混合物が注射器120と一緒に蒸されるかまたは蒸し焼きにされるようになっている。
【0112】
すなわち、液状の混合物が注射器120内に充填された後、その注射器120内の液状の混合物を加熱することにより、その混合物が半固形化されるのである。したがって、本実施形態によれば、開口部が狭い注射器120内に半固形化状態の経腸栄養剤130を充填するプロセスを容易に行い得る。
【0113】
しかし、液状の混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにして経腸栄養剤130を製造した後にそれを注射器120内に充填するようにして本発明を実施することは可能である。
【0114】
さらにまた、本実施形態においては、経腸栄養剤130が予め充填された注射器120が一製品として製造されて出荷される。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、経腸栄養剤130を患者に投与するに先立ち、その経腸栄養剤130を注射器120によって吸引してその注射器120内に充填する作業が省略され、その結果、経腸栄養剤130の投与作業が簡易化されて投与時間も短縮される。
【0116】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0117】
本実施形態に従う経腸栄養剤も、第1実施形態に従う経腸栄養剤130と同様に、患者に造設された胃瘻を経て胃内に投与されて使用される。すなわち、この経腸栄養剤も、経胃瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。
【0118】
第1実施形態に従う経腸栄養剤130は、前述のように、全卵を半固形化剤として使用して製造されるが、本実施形態に従う経腸栄養剤は、寒天を半固形化剤として使用して製造される。寒天は、乾燥した粉末状のものである。
【0119】
このように寒天を半固形化剤として選択した理由は、(a)その入手も調理も容易である点、(b)寒天による経腸栄養剤の半固形化の程度すなわち硬度の調節が容易である点、(c)半固形化した経腸栄養剤は患者の体内においてその体温によって溶解(液状化)しない点、(d)低カロリーで繊維質を多く含有するために患者を健康面で阻害しない点、(e)半固形化した経腸栄養剤の粘稠度が低いために胃瘻チューブ110を経た患者への注入が容易である点などに着目したからである。
【0120】
本実施形態においては、経腸栄養剤を製造するために、市販の液状化栄養剤(すなわち、患者に投与すべき栄養成分を含有した液体)が使用される。この液状化栄養剤は半消化体栄養剤とされている。この液状化栄養剤は、摂取カロリ低下等のための希釈が必要である場合には、必要な量の水分(希釈液の一例)と混合される。その混合物はその後、加熱される。この状態で、粉末状の寒天が上述の液状の混合物に水分200[ml]に対して1[g]の割合で添加される。その後、寒天が混合物内において攪拌されて溶解される。
【0121】
この時点では、寒天が溶解した混合物が液状化状態にあり、その液状化状態の混合物は注射器120によって吸引されてその注射器120内に充填される。
【0122】
その後、液状化状態の混合物を収容した注射器120が冷蔵庫の如き冷処において保存される。それにより、液状化状態の混合物から熱が奪われ、その結果、その混合物が寒天の影響によって凝固する。混合物が寒天の影響によって半固形化するのであり、これにより、半固形化状態の経腸栄養剤が注射器120内に予め充填された状態で完成される。この経腸栄養剤の硬度は、プリン程度の硬さとされる。
【0123】
この経腸栄養剤は、注射器120を利用して胃瘻チューブ110内に注入される。本実施形態においては、経腸栄養剤の一回の必要投与量を注射器120によって一気に患者に投与することが可能であり、その投与時間は数分程度である。
【0124】
本発明者は、この経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果を確認するために数名の患者を対象に治験を施行した。
【0125】
この治験においては、同じ各患者に、半固形化経腸栄養剤と液状化経腸栄養剤とがそれぞれ投与され、それぞれの場合について、胃食道逆流が発生したか否かが評価される。胃食道逆流が発生した各ケースについては、さらに、CT(コンピュータ断層撮影)により得られた画像に基づき、食道に逆流した胃内容物が存在する逆流範囲の長さ(逆流した胃内容物の最上端位置と最下端位置との距離)と、食道に逆流した胃内容物の最上端位置の、噴門からの距離とが測定された。
【0126】
CTにおいては、造影剤を含有した経腸栄養剤を各患者に投与してから30分経過後に、各患者の胸部が1[cm]間隔のスライスによって撮影される。その撮影された画像上、食道内の各部位のCT値(食道内の各部位の高さ位置をスライス数で表現する値)に関連付けて造影剤の有無が判断され、その有無によって胃食道逆流の有無が判断される。
【0127】
造影剤を含有した経腸栄養剤の作製方法については、液状化状態であると半固形化状態であるとを問わず、水溶性造影剤を経腸栄養剤100[ml]当たり5[ml]の割合で混入させ、半固形化経腸栄養剤については、造影剤を混入させた後に半固形化を行った。
【0128】
経腸栄養剤の投与方法については、液状化状態であると半固形化状態であるとを問わず、1回の投与量を400[ml]とし、液状化経腸栄養剤は、1回の投与を15分程度かけて投与し、一方、半固形化経腸栄養剤は、容量が50[ml]である注射器120を利用して一気に投与した。
【0129】
図6には、今回の治験の結果が表形式で示されている。同図の、胃食道逆流の有無を示す欄においては、「−」は胃食道逆流が観察されなかったことを、「+」は胃食道逆流が観察されたことがそれぞれ示している。また、逆流範囲の長さも噴門からの距離も前述のCT値を基準にして測定される。
【0130】
今回の治験は17名の患者を対象に施行された。それら患者はいずれも、ほぼ寝たきりの状態であったが、医学的には安定した状態であった。図6には、各患者がID番号によって互いに識別されるとともに、各患者の属性として年齢と性別が記載され、さらに、各患者の基礎疾患名も記載されている。
【0131】
図6に示す結果によれば、17名の患者のうち、液状化経腸栄養剤の投与後に胃食道逆流が認められたものは10名(58.5%)であった。これに対し、それら患者のうち、半固形化経腸栄養剤の投与後に胃食道逆流が認められたものは4名(23.5%)であった。
【0132】
したがって、本実施形態に従う経腸栄養剤によれば、胃食道逆流が液状化経腸栄養剤に比較して良好に防止されることが確認された。
【0133】
本実施形態に従う経腸栄養剤によれば、液状化経腸栄養剤に比較し、次のような点でも有利である。
【0134】
患者に胃瘻を造設した後、胃食道逆流の発生頻度が増加する症例がすでに報告されている。この原因は未だ確定的に解明されているわけではないが、その原因に関し次のような指摘がなされている。
【0135】
胃瘻造設に伴って胃壁が腹壁に固定されると、胃のぜん動が抑制されて胃の***能が低下する。この***能低下は、経腸栄養剤が胃内に停留する時間の増大を招来し、その結果、胃食道逆流の発生頻度が増加することが既に指摘されているのである。
【0136】
一方、胃の***能に関わる胃のぜん動を助長・抑制する因子には、神経性因子に加えて、各種消化管ホルモンに依存する液性調節という因子も存在する。各種消化管ホルモンの中で胃のぜん動を最も強く亢進させるといわれているホルモンとしてガストリンがあり、このガストリンは胃壁の伸長によって分泌が刺激される。
【0137】
液状化経腸栄養剤を患者の胃内に経鼻胃管的に投与する場合には一般に、投与中の患者の嘔吐を予防する観点から緩やかな速度で液状化経腸栄養剤を滴下することが推奨される。しかし、このような緩徐な滴下速度では、液状化経腸栄養剤によって胃が充満することは困難であり、よって、液状化経腸栄養剤の胃内への投与による胃の伸長量が不足する。そのため、ガストリンの分泌が活発でなく、胃のぜん動も活発でなく、よって、胃の***能が低下し、結果的にはかえって、胃食道逆流を助長しかねない。
【0138】
これに対し、本実施形態によれば、経腸栄養剤が胃瘻を経て胃内に直接に投与されるため、嘔吐の心配なしで、経腸栄養剤を素早く胃内に注入することが可能となる。したがって、経腸栄養剤の胃内への投与によって胃が大きく伸長させられ、ガストリンの分泌が刺激されて、活発な胃のぜん動が期待できる。その結果、胃の***能が向上し、経腸栄養剤が半固形化状であることとも相俟って、経腸栄養剤の胃食道逆流の発生頻度が良好に低減される。
【0139】
患者に胃瘻が造設された後には、胃瘻が経時的に大径化する現象が現れ易く、その結果、その胃瘻に挿入された栄養チューブとの隙間が拡大する。この隙間は、その栄養チューブを経て患者の胃内に注入された経腸栄養剤が胃内の圧力によって体外に漏れる経路となり得る。
【0140】
これに対し、本実施形態によれば、経腸栄養剤が半固形化状態とされているため、液状化状態である場合に比較し、形態保持性が強いゆえに、同じ大きさの隙間を通過する際の抵抗が大きい。したがって、本実施形態によれば、胃内の圧力による経腸栄養剤の漏れという問題を容易に解消し得る。
【0141】
図7には、内視鏡的に胃瘻が造設されたある患者(女性、当時85歳、介護老人保健施設に入所)を対象に、液状化経腸栄養剤を投与した後に、本実施形態に従う半固形化経腸栄養剤を投与する内容の治験を施行した結果が経時的に示されている。
【0142】
同図に示すように、この治験においては、平成12年5月のはじめから10月の中旬までの期間、患者に液状化経腸栄養剤が経胃瘻的に投与された。この期間においては、胃食道逆流が頻繁に発生するとともに、胃瘻と栄養チューブとの隙間を経た経腸栄養剤の漏れも嘔吐も観察された。
【0143】
これに対し、同年10月の中旬以後の期間においては、液状化経腸栄養剤に代えて半固形化栄養剤が同じ患者に投与された。この期間においては、図7に示すように、胃食道逆流も漏れも嘔吐も全く観察されなかった。
【0144】
したがって、本実施形態に従う半固形化経腸栄養剤によれば、液状化経腸栄養剤に比較し、経腸栄養剤の漏れおよび嘔吐を容易に抑制し得る点でも有利であることが確認された。
【0145】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従う経腸栄養剤を患者に経管的に投与するために使用される胃瘻100および胃瘻チューブ110を示す部分側面断面図である。
【図2】図1における胃瘻チューブ110を胃20および腹壁102との位置関係と共に示す部分側面断面図である。
【図3】上記実施形態に従う経腸栄養剤130が予め充填されて製品化されるプレフィルド型の注射器120を示す斜視図である。
【図4】仰臥位にある患者に上記実施形態に従う経腸栄養剤130が経管的に投与された状態においてその経腸栄養剤130について胃食道逆流が抑制される様子を模型的に示す側面断面図である。
【図5】仰臥位にある患者に液状または流動状の従来の経腸栄養剤24が経管的に投与された状態においてその経腸栄養剤24について胃食道逆流が起こり易い様子を模型的に示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に従う経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果を液状化経腸栄養剤と比較しつつ確認するために施行した治験の結果を表形式で表す図である。
【図7】上記第2実施形態に従う経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果と漏れ防止効果と嘔吐防止効果とを液状化経腸栄養剤と比較しつつ確認するために施行した治験の結果を表形式で表す図である。
【符号の説明】
20 胃
22 食道
100 胃瘻
102 腹壁
104 胃壁
100 胃瘻
110 胃瘻チューブ
120 注射器
130 経腸栄養剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、栄養補給のために患者に経管的に投与されて使用される経腸栄養剤に関するものであり、特に、患者に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流する胃食道逆流を抑制する技術の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
患者に栄養を補給する栄養補給法が既にいくつか存在する。
【0003】
栄養補給法は、栄養が投与される人体の部位または器官の違いから、経腸栄養補給法と経静脈栄養補給法とに分類される。経腸栄養補給法は、腸に栄養を投与する方法であり、これに対し、経静脈栄養補給法は、中心静脈または抹消静脈を流れる血液に栄養を投与する方法である。
【0004】
経腸栄養補給法は、体外から体内に栄養が投与される経路の違いから、経口栄養補給法と経管栄養補給法とに分類される。
【0005】
経口栄養補給法は、食物の嚥下が可能な患者に対して施行され、患者に食物を経口的に摂取させる方法である。
【0006】
これに対して、経管栄養補給法は、食物の嚥下に障害を有する患者に対して施行され、栄養剤を栄養チューブを経て患者の胃または腸に注入する方法である。この経管栄養補給法のもとに患者に投与される栄養剤を経腸栄養剤と定義する。この経管栄養補給法は、患者に経腸栄養剤を経管的に投与する方法なのであり、経鼻胃管栄養補給法と経胃瘻栄養補給法と経腸瘻栄養補給法とに分類される。
【0007】
経鼻胃管栄養補給法は、患者の口または鼻において一端が開口する状態で栄養チューブを食道内に挿入し、その栄養チューブを経て経腸栄養剤を胃または腸に注入する方法である。
【0008】
これに対し、経胃瘻栄養補給法は、患者の腹壁と胃壁とに跨って造設された胃瘻の瘻孔に栄養チューブを挿入し、その栄養チューブを経て体外から胃の内部に経腸栄養剤を注入する方法であり、また、経腸瘻栄養補給法は、患者の腹壁と腸壁とに跨って造設された腸瘻の瘻孔に栄養チューブを挿入し、その栄養チューブを経て体外から腸の内部に経腸栄養剤を注入する方法である。
【0009】
特開2000−152975号公報には、経鼻的または経皮的に経腸栄養剤を患者に投与する従来技術として、流動食を経腸栄養剤として投与することが開示されている。
【0010】
国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報には、経腸栄養剤としての流動食が経管的に投与されることが予定された患者に、その流動食を投与する前もしくは後において、またはそれと同時に、増粘剤を含む溶液である嘔吐予防食品を経管的に投与することが従来技術として開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
患者に経腸栄養剤を投与する際に留意すべき事項として、胃内に投与された経腸栄養剤が食道に向かって逆流する現象、すなわち、胃食道逆流を抑制することが挙げられる。胃食道逆流は、患者に逆流性食道炎や嚥下性肺炎を引き起こす原因となるからである。逆流性食道炎は、胃からの逆流物の胃酸の刺激に起因する食道炎であり、これに対し、嚥下性肺炎は、その逆流物が気管に侵入することに起因する肺炎である。
【0012】
胃の内容物が食道に向かって逆流しないように蓋として機能する噴門部が胃には形成されている。経腸栄養補給を必要とするような高齢者の場合には、一般的にその噴門部の機能が低下しているが、たとえその機能が正常であっても、胃食道逆流が起こる可能性が高い。そのため、高齢者である患者に経腸栄養剤を投与することが必要である場合に特に、胃食道逆流を抑制することが強く要望される。
【0013】
しかしながら、経腸栄養剤として液状のものを使用する場合にはもちろんのこと、前記特開2000−152975号公報の開示に従い、流動状のものを使用する場合であっても、胃食道逆流を十分に軽減することができなかった。そのため、患者に対する介護者の負担も大きかった。
【0014】
図5には、液状または流動状の経腸栄養剤を患者に経管的に投与した場合にその経腸栄養剤が胃から食道に向かって逆流する傾向が強いことが模型的に示されている。同図において符号10は患者の頭部、12は足部、14は腹部、16は背部、18は口部、20は胃、22は食道、24は液状または流動状の経腸栄養剤をそれぞれ示している。
【0015】
また、前述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施すれば、患者の胃内において経腸栄養剤としての流動食と増粘剤とが混合されて適当な反応が起こり、それにより、胃の内容物の粘度が上昇した後には、胃食道逆流が抑制されそうである。
【0016】
しかし、流動食と増粘剤との反応前においては、流動食も増粘剤も粘度が低い。このように低粘度の流動食および増粘剤が患者の体内に貯留される期間が存在するため、胃食道逆流が起こる可能性が高い。
【0017】
そのため、上記従来技術を実施しても、流動食および増粘剤の投与工程の初期から末期までの全期間を通じて、胃食道逆流を良好に抑制することは困難である。
【0018】
このような事情を背景として、本発明は、患者に経管的に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流することを抑制することが容易な経腸栄養剤を提供することを課題としてなされたものである。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0020】
(1) 患者の体内に挿入される栄養チューブに患者の体外において接続された容器から前記栄養チューブを経て患者の胃または腸の内部に前記容器の加圧によって投与される経腸栄養剤であって、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する半固形物として形成され、前記形態保持性が、患者の体内への当該経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持されるとともに、当該経腸栄養剤が患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては当該経腸栄養剤が液状化しないように、前記形態保持性が維持される経腸栄養剤。
【0021】
この経腸栄養剤は、液体および流動体としての性質と固形物としての性質とを併有する。その結果、この経腸栄養剤は、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する一方で、強制外力による形態の変化が固形物より容易である。
【0022】
さらに、この経腸栄養剤によれば、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点で液体および流動体とは異なる半固形物として製造されるため、それら液体および流動体より粘度または硬度を高めることが容易である。
【0023】
ここに、「形態保持性」は、外部から経腸栄養剤に自然に作用する重力および大気圧に対抗して自身の初期の形態を維持しようとする性質として定義することが可能である。
【0024】
したがって、本項に係る経腸栄養剤によれば、図4に模型的に示すように、患者に投与されて胃20の内部に貯留した経腸栄養剤130が食道22に向かって逆流する胃食道逆流を容易に抑制し得る。
【0025】
経腸栄養剤の胃食道逆流が抑制されるのであれば、例えば、経腸栄養剤の投与中、患者の***を座位に維持することが不可欠ではなくなる。その結果、患者本人にとっては、経腸栄養剤の投与中に、接触圧が高い臀部や背部に褥瘡が生じてしまう可能性が軽減される。
【0026】
ある経腸栄養剤を使用すると患者に胃食道逆流が起こる可能性が高く、よって、それに起因して患者が嘔吐する可能性が高い場合には、その患者を介護する介護者は、患者への経腸栄養剤の投与中、その患者が嘔吐してその状態が急変したらそのことが直ちに発見できるように患者を絶えず注意深く監視しなければならない。そのため、重い監視負担が介護者に課されることとなってしまう。
【0027】
しかし、患者に投与される経腸栄養剤について胃食道逆流が起こる可能性が軽減されるのであれば、介護者にとっては、患者を監視する負担が軽減される。
【0028】
前述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施する場合には、前述のように、流動食および増粘剤の投与中に、増粘剤による流動食の粘度上昇が起こらないために、胃内容物の粘度が胃食道逆流が起こり難い粘度より低い粘度不足期間が存在し、かつ、その粘度不足期間において胃食道逆流が起こってしまう可能性が高い。
【0029】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤によれば、それの形態保持性が、患者の体内への当該経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持され、その結果、当該経腸栄養剤の投与中に上述の粘度不足期間が存在しないため、当該経腸栄養剤の投与期間の全体にわたり、胃食道逆流を抑制することが容易となる。
【0030】
さらに、上述の、国際公開番号がWO00/13529である再公表特許公報に開示された従来技術を実施する場合には、患者に最終的に投与されることとなる流動食および増粘剤の全容積が、半固形状の経腸栄養剤の全容積より大きい可能性が高い。前述のように、増粘剤が液状であり、その結果、その増粘剤と流動食との混合物が半固形状の経腸栄養剤より水分を多量に含むことになるからである。
【0031】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤によれば、液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点に関しては固形物と共通する半固形物として形成される。
【0032】
したがって、この経腸栄養剤によれば、患者に最終的に投与されることとなる物質の全容積を容易に減少可能となり、その結果、投与時間を容易に短縮可能となる。投与時間が短縮されれば、患者本人および介護者の負担が軽減されるとともに、外部から経腸栄養剤に細菌が混入する傾向もその混入した細菌が繁殖する傾向も軽減され、それにより、患者に投与される経腸栄養剤の清潔度を高めることが容易となる。
【0033】
この経腸栄養剤は、主に、強制外力による自身の分断によって自身全体の形態を変化させる。一方、この経腸栄養剤は、栄養チューブの通過中にその栄養チューブから作用する強制外力によって分断して自身全体の形態が変化し、その後、患者の体内に投与される。そのため、この経腸栄養剤は、分断状態で患者の体内に存在することとなる。しかし、経腸栄養剤からその分断によって生ずる各部分は依然として形態保持性を有するから、分断状態の経腸栄養剤はそれ全体としても、液体および流動体より強い形態保持性を示すこととなる。
【0034】
すなわち、この経腸栄養剤においては、栄養チューブを経た患者の体内への投与の前後を通じて形態保持性が維持されるのである。
【0035】
さらに、この経腸栄養剤においては、患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては経腸栄養剤が液状化しないように形態保持性が維持される。
【0036】
ところで、栄養補給のために患者が経口的に摂取する食品にあっては、その食品が患者の口腔内に取り込まれたときにある程度液状化することが、患者による嚥下を促進するために必要である。しかし、この液状化は、かえって胃食道逆流を引き起こす可能性を高めてしまう。
【0037】
一方、経腸栄養剤は、経口的に摂取される食品ではないため、投与後に液状化するように製造することは不要である。
【0038】
このような知見に基づき、本項に係る経腸栄養剤は、患者の体内においてその患者の体温によって液状化しないように形態保持性を有する半固形物として形成されている。
【0039】
したがって、この経腸栄養剤によれば、患者への投与を阻害することなく、胃食道逆流を容易に抑制し得る。
【0040】
一般に、経腸栄養剤が形態保持性を強く示すほど、それの流動性すなわち自由変形性を喪失し、このことは、経腸栄養剤が栄養チューブを通過することを阻害する要因となり得る。
【0041】
しかし、本項に係る経腸栄養剤は、患者の体内に挿入される栄養チューブを経て、その栄養チューブのうち患者の体外に位置する部分に接続された容器から患者の胃または腸の内部に、その容器の加圧作用を利用して投与される。
【0042】
したがって、この経腸栄養剤によれば、それが形態保持性を液体および流動体より強く示すにもかかわらず、栄養チューブをスムーズに通過することが容易となる。
【0043】
本項に係る「経腸栄養剤」は、前述の経鼻胃管栄養補給法のもとに使用したり、前述の経胃瘻栄養補給法のもとに使用したり、前述の経腸瘻栄養補給法のもとに使用することが可能である。
【0044】
また、この「経腸栄養剤」を半固形物として製造するために、例えば、液状化栄養剤に半固形化剤を添加することが可能である。この場合、その半固形化剤として、鶏卵の卵白を選択したり、寒天を選択したり、ゼラチンを選択したり、その他の半固形化剤を選択したり、それらを適宜組み合わせて選択することが可能である。
【0045】
本項において「予め定められた半固形化処理」は、例えば、容器内の液状化栄養剤に対する熱処理として定義したり、その液状化栄養剤を単に放置する時効処理として定義することが可能である。
【0046】
また、本項において「容器」は、半固形化状態の経過経腸剤を収容する機能と、その容器内に収容された経腸栄養剤を加圧して栄養チューブ内に注入する機能とを有する限り、物理的形態の如何は問わない。
【0047】
したがって、「容器」は、プランジャがシリンダ内に気密にかつスライド可能に嵌合されて成る注射器としたり、フレキシブルなバッグとすることが可能である。そのバッグは、例えば、アルミニウム製フィルム、合成樹脂製フィルム等のフィルムにより構成したり、雑菌侵入阻止等のために密閉式として構成することが可能である。
【0048】
さらに、「容器」は、経腸栄養剤の実際の投与時期に臨んで経腸栄養剤を主にその投与中に限って保存する第1の形式としたり、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するとともにその投与中にも保存する第2の形式とすることが可能である。
【0049】
ここに、第1の形式を採用する場合には、経腸栄養剤の投与に先立って経腸栄養剤を専ら保存する容器から「容器」に経腸栄養剤を移し変えた後に、その経腸栄養剤を「容器」から患者に投与することとなる。
【0050】
(2) 液状化栄養剤を前記容器と同じかまたはそれとは別の容器内に充填し、その充填状態で、予め定められた半固形化処理を前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤に対して施すことによって製造される(1)項に記載の経腸栄養剤。
【0051】
この経腸栄養剤は、患者の体内への投与後のみならずその投与前においても形態保持性を示す。仮に、そのような半固形化状態の経腸栄養剤を容器内に充填しようとすると、その経腸栄養剤の形態保持性、すなわち、半固形物としての性質が原因となって、その充填がスムーズに行われない可能性がある。
【0052】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤は、容器への充填前においては液状化状態にあり、その容器への充填後にはじめて半固形化状態に移行する。したがって、この経腸栄養剤によれば、容器への充填をスムーズに行うことが容易となる。
【0053】
ここに、「容器」は、前記(1)項における容器、すなわち、栄養チューブに接続された状態で経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する機能を有する容器と同じである場合と、それとは別である場合とがある。
【0054】
「容器」が前記(1)項における容器と同じである場合は、前述の第1または第2の形式を採用する場合に相当する。一方、「容器」が前記(1)項における容器とは別である場合は、「容器」が、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するが、その投与中には保存しない、保存専用の容器である場合に相当することとなる。
【0055】
(3) 前記液状化栄養剤に半固形化剤を添加する添加工程と、その半固形化剤が添加された液状化栄養剤を前記同じ容器または別の容器内に充填する充填工程と、その充填状態で、前記予め定められた半固形化処理を前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤に対して施す処理工程とを実施することによって製造される(2)項に記載の経腸栄養剤。
【0056】
(4) 前記半固形化剤が、鶏卵の卵黄と卵白とのうちの少なくとも卵白を含む(3)項に記載の経腸栄養剤。
【0057】
本項における「少なくとも卵白」の一例は、鶏卵の卵黄と卵白との双方を含む全卵である。
【0058】
(5) 前記処理工程が、前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤の加熱を前記予め定められた半固形化処理として行う加熱工程を含む(4)項に記載の経腸栄養剤。
【0059】
本項における「加熱工程」は、例えば、少なくとも卵白と液状化栄養剤(流動状栄養剤を含む)との混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにする工程を含むものとすることが可能である。
【0060】
ここに「蒸す」という調理法は、スチームを介して素材に熱を加える調理法として定義することが可能であり、これに対し、「蒸し焼き」という調理法は、スチームを介して素材に熱を加えるのと並行して、同じ素材に熱を直に加えて焼く調理法として定義することが可能である。
【0061】
(6) 前記半固形化剤が、寒天を含む(3)項に記載の経腸栄養剤。
【0062】
(7) 前記添加工程が、前記液状化栄養剤と前記寒天との混合物を加熱してその寒天を液状化栄養剤に溶解させる加熱工程を含み、前記処理工程が、前記同じ容器または別の容器内の液状化栄養剤の吸熱を前記予め定められた半固形化処理として行う吸熱工程を含む(6)項に記載の経腸栄養剤。
【0063】
(8) 前記栄養チューブが、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入されて使用されるものであり、かつ、患者の口または鼻から患者の食道を経て胃の内部に挿入されて使用される栄養チューブより内径が大きくかつ短いものである(1)ないし(7)項のいずれかに記載の経腸栄養剤。
【0064】
前記(1)ないし(7)項のいずれかに係る経腸栄養剤を前述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用する場合には、前述の経鼻胃管栄養補給法のもとに使用する場合に比較して、経腸栄養剤が通過すべき栄養チューブすなわち投与経路が短くて済む。
【0065】
そのため、前記(1)ないし(7)項のいずれかに係る経腸栄養剤を前述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用する場合には、経腸栄養剤が液体ではなく、液体より濃厚ゆえに、同量の栄養成分を含有し得る容積の減少が容易な半固形物であることとも相まって、一回分の経腸栄養剤を投与するのに必要な投与時間を容易に短縮できる。
【0066】
さらに、経腸栄養剤の投与経路が短くて済むということは、経腸栄養剤の粘度が高いために経管投与時に経腸栄養剤が栄養チューブ内で詰まって残留してしまう事態を容易に回避できることにつながる。
【0067】
さらにまた、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入されて使用される栄養チューブは、一般に、患者の口または鼻から患者の食道を経て胃の内部に挿入されて使用される栄養チューブより短いうえに内径が大きい。
【0068】
そして、患者に経腸栄養剤を経管的に投与する場合には、経腸栄養剤の投与経路の短縮化と大径化とに依存すれば、投与時間の短縮が容易になり、さらに、栄養チューブ内における経腸栄養剤の残留回避も容易になる。
【0069】
このような知見に基づき、本項に係る経腸栄養剤は、患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入された栄養チューブを経て体外から胃または腸の内部に投与されて使用される経腸栄養剤とされている。すなわち、この経腸栄養剤は、上述の経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。
【0070】
患者の腹壁と胃壁とに跨って造設された瘻孔である胃瘻を経て経腸栄養剤を患者に投与する場合、胃瘻から延びて腸に至る栄養チューブ(以下、「経胃瘻的空腸栄養チューブ」という)を使用しないのであれば、経腸栄養剤は胃内に投与され、その後、胃のぜん動によって腸内に送り込まれて投与されることになる。これに対し、経胃瘻的空腸栄養チューブを使用するのであれば、経腸栄養剤は胃内に投与されずに直ちに腸内に投与されることになる。このような栄養補給法を経胃瘻的空腸栄養補給法と称することができる。
【0071】
本項に係る経腸栄養剤はその経胃瘻的空腸栄養補給法のもとに使用することが可能である。
【0072】
一般に、経腸栄養剤をスムーズに栄養チューブ内を通過させたいという要望を満たす観点から、経腸栄養剤の形態保持性の程度と栄養チューブの内径との間に一定の制約が課される場合がある。それは、経腸栄養剤が形態保持性を強く示すほど、経腸栄養剤の栄養チューブ内での変形自由度を高めるべく、栄養チューブの内径を大きくしなければならないという制約である。
【0073】
これに対し、本項に係る経腸栄養剤は、経胃瘻栄養補給法または経腸瘻栄養補給法のもとに使用される栄養チューブを経て患者の体内に投与されるものとされていて、その栄養チューブは、経鼻胃管栄養補給法のもとに使用される栄養チューブより内径が大きい。
【0074】
したがって、この経腸栄養剤によれば、液体および流動体より強い形態保持性を有するにもかかわらず、大径の栄養チューブを経てスムーズに患者の体内に投与することが容易となる。
【0075】
(9) 患者の体内に経管的に投与される経腸栄養剤が容器内に収容されて成る容器付き経腸栄養剤であって、前記経腸栄養剤が、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する半固形物として形成され、前記形態保持性が、患者の体内への前記経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持されるとともに、前記経腸栄養剤が患者の体内に貯留する状態においてはその患者の体温によっては前記経腸栄養剤が液状化しないように、前記形態保持性が維持され、液状化栄養剤を前記容器内に充填し、その充填状態で、予め定められた半固形化処理を前記容器内の液状化栄養剤に対して施すことによって前記経腸栄養剤が製造される容器付き経腸栄養剤。
【0076】
この容器付き経腸栄養剤によれば、前記(1)項に係る経腸栄養剤と同じ原理に従い、同じ作用効果が実現され得る。
【0077】
同じ容器内に同じ経腸栄養剤を液状化状態で充填しようとする場合と半固形化状態で充填しようとする場合とを互いに比較すると、半固形化状態で充填しようとする場合の方が、その経腸栄養剤の形態保持性、すなわち、半固形物としての性質が原因となって、容器内への充填を効率よく行い得ない可能性がある。この可能性は、例えば、経腸栄養剤の形態保持性が強いほど、容器の開口部が狭いほど増大する。
【0078】
これに対し、本項に係る容器付き経腸栄養剤は、容器内への充填前においては液状化状態にあり、その容器内への充填後にはじめて半固形化状態に移行する。したがって、この容器付き経腸栄養剤によれば、容器内への充填を効率よく行うことが容易となる。
【0079】
本項における「容器」は、経腸栄養剤の実際の投与時期に臨んで経腸栄養剤を主にその投与中に限って保存するとともに栄養チューブとの接続状態でその経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する形式とすることが可能である。
【0080】
「容器」は、さらに、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するとともにその投与中にも保存し、かつ、栄養チューブとの接続状態でその経腸栄養剤をその栄養チューブ内に注入する形式とすることも可能である。
【0081】
「容器」は、さらにまた、経腸栄養剤の実際の投与時期とは無関係に、その実際の投与に先立って経腸栄養剤を保存するがその投与中には保存しない形式とすることも可能である。
【0082】
また、「容器」は、半固形化状態の経過経腸剤を収容する機能と、その容器内に収容された経腸栄養剤を加圧して栄養チューブ内に注入する機能とのうち少なくとも前者の機能を有する限り、物理的形態の如何は問わない。
【0083】
したがって、「容器」は、プランジャがシリンダ内に気密にかつスライド可能に嵌合されて成る注射器としたり、フレキシブルなバッグとすることが可能である。そのバッグは、例えば、アルミニウム製フィルム、合成樹脂製フィルム等のフィルムにより構成したり、雑菌侵入阻止等のために密閉式として構成することが可能である。
【0084】
本項に係る容器付き経腸栄養剤は、前記(2)ないし(8)項のいずれかに記載の特徴的技術と組み合わせて実施することが可能である。
【0085】
(10) (1)ないし(8)項のいずれかに記載の経腸栄養剤を前記患者に投与するために、その経腸栄養剤が充填されるとともにその充填された経腸栄養剤を加圧して射出する注射器であって、前記経腸栄養剤が予め充填された状態でその経腸栄養剤と共に製品化されることにより、当該注射器の使用に先立ち、前記経腸栄養剤を保存する容器として機能する注射器。
【0086】
前記(1)ないし(8)項のいずれかに係る経腸栄養剤を栄養チューブを利用して患者に投与する場合には、経腸栄養剤の形態保持性または粘度に打ち勝つべく、経腸栄養剤を栄養チューブ内に押し込むことが必要となる。この押込みは、経腸栄養剤を注射器により加圧して患者に投与することにより実現可能である。
【0087】
このように、注射器を利用して経腸栄養剤を患者に投与する手法(物質が自然に落下することを利用して患者に投与する自然投与と区別する意味において、強制投与ということができる。)を採用する場合には、一般には、経腸栄養剤と注射器とが別々に製品化され、経腸栄養剤は、専用の容器内に保存された状態で取り引きされる。
【0088】
このように経腸栄養剤と注射器とが別々に製品化される場合には、その経腸栄養剤の投与に先立ち、それが保存されている専用の容器から経腸栄養剤を注射器によって吸引してその注射器のチャンバ内に充填し、その後、その注射器のプランジャをシリンダ内に押し込むことにより、そのチャンバに充填された経腸栄養剤が患者の体内に注入される。
【0089】
これに対し、本項に係る注射器は、経腸栄養剤が予め充填された状態でその経腸栄養剤と一緒に1つの製品として製品化されることにより、当該注射器の使用に先立ち、経腸栄養剤を保存する容器として機能する。この注射器は、プレフィルド型と称することができる。
【0090】
したがって、この注射器によれば、経腸栄養剤の投与に先立ち、それを専用の容器から注射器に移し変えることが不要となり、投与に必要な作業が単純化されるとともに、その投与に必要な時間を容易に短縮可能となる。
【0091】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0092】
本発明の第1実施形態に従う経腸栄養剤は、患者に造設された胃瘻を経て胃内に投与されて使用される。すなわち、この経腸栄養剤は、経胃瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。図1に示すように、胃瘻100は、患者の腹壁102と胃壁104とに跨り、体外の空間106と胃内の空間108とを互いに連通させるように造設される。
【0093】
胃瘻100は、開腹手術によって造設可能であるが、胃内に挿入された内視鏡を用いて経皮的に造設することも可能である。後者の経皮内視鏡的胃瘻造設は、具体的には、内視鏡を用いて体外から胃へのチューブを挿入し、患者の腹壁および胃壁においてそのチューブの周囲に瘻孔を形成するプロセスである。
【0094】
この経皮内視鏡的胃瘻造設は、その施行時に患者に誘発される合併症が少ないという点において開腹手術による胃瘻造設に比して有利であるといわれている。
【0095】
また、この経皮内視鏡的胃瘻造設を施行する場合には、経鼻胃管栄養補給法を実施するために栄養チューブを鼻および食道を経由して胃に到達するように患者に挿入する場合に比較して、患者本人に与える苦痛が少なく、しかも、介護者の負担も軽減されるともいわれている。
【0096】
以上説明した2つの理由などから、この経皮内視鏡的胃瘻造設は、今日、急速に普及しつつある。
【0097】
経胃瘻栄養補給法を実施する場合には、図1に示すように、栄養チューブとしての胃瘻チューブ110が胃瘻100に挿通させられる。胃瘻チューブ110は、それに取り付けられた体外固定板112と胃内固定板114とにより、胃瘻100に対して位置決めされる。
【0098】
経腸栄養剤は、胃瘻チューブ110を通過することにより、体外から胃内に注入される。胃瘻チューブ110は、一般に、前述の経鼻胃管栄養補給法を実施するために栄養チューブとして使用される経鼻胃管チューブと比較し、内腔が広く(内径が大きく)、かつ、長さが短い。一般的な経鼻胃管チューブは、内径が2ないし4[mm]というように内腔が狭く(内径が小さく)、かつ、長さが60[cm]以上であるというように長い。
【0099】
したがって、一般的な経鼻胃管チューブを使用して経腸栄養剤を患者に投与する場合には、経腸栄養剤の流れ易さを確保するために、経腸栄養剤の剤形として液体を採用することが望まれるのに対し、胃瘻チューブ110を使用して経腸栄養剤を患者に投与する場合には、その経腸栄養剤の剤形として、液体より形態保持性が強い半固形物を採用しても、経腸栄養剤の流れ易さを確保し得る。
【0100】
図2には、腹壁102と胃壁104と胃瘻チューブ110との位置関係が部分側面断面図で示されている。
【0101】
経腸栄養剤の胃20の内部への注入は、図3に示すように、注射器120を使用して行われる。注射器120においては、シリンダ122にプランジャ122がスライド可能に嵌合されている。それらシリンダ122とプランジャ124との間にチャンバ126が注射口(同図においては隠れて見えない)に連通した状態で形成されている。そのチャンバ126に、注射器120によって射出されるべき経腸栄養剤130が充填されている。注射器120の注射口は、一般的な注射器のそれより直径が大きいのが一般的である。
【0102】
その充填された経腸栄養剤130は、プランジャ124をシリンダ122内に深く押し込むことにより、胃瘻チューブ110内に射出され、これにより、その胃瘻チューブ110を経て胃20の内部に強制外力により注入される。このように、経腸栄養剤130は、患者の体内に強制的に投与されるのである。
【0103】
経腸栄養剤130は、次のようにして製造される。
【0104】
まず、液状化栄養剤(すなわち、患者に投与すべき栄養成分を含有した液体)を250[ml]、容器内に用意する。次に、その液状化栄養剤に生の全卵を1個加えて攪拌する。その後、それら液状化栄養剤と生の全卵との混合物の一部を、容量が100[ml]である注射器120によって吸引してチャンバ126内に充填する。
【0105】
続いて、そのようにして混合物が充填された注射器120を所定の調理器内にセットし、注射器12と一緒の状態でその混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにする。以上で、経腸栄養剤130が製造される。
【0106】
このようにして製造された経腸栄養剤130は、半固形物として形成されている。ここに、「半固形物」とは、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通する性質を有する物質を意味する。この経腸栄養剤130の粘度および硬度は、プリンや茶碗蒸し程度のものとなっている。
【0107】
したがって、この経腸栄養剤130を患者に投与した場合には、図4に模型的に示すように、その経腸栄養剤130の形態保持性に依存することにより、胃20の内容物である経腸栄養剤130が食道22に向かって逆流する胃食道逆流が抑制される。
【0108】
よって、本実施形態によれば、経腸栄養剤130の投与中、患者の***を座位に維持することが不可欠ではなくなり、図4に示すように、患者に負担が少ない仰臥位において経腸栄養剤130の投与を正常に行い得る。
【0109】
ところで、蒸されるかまたは蒸し焼きにされた全卵は、患者の体内においてその患者の体温によって液状化することが抑制される素材として機能する。したがって、経腸栄養剤130が患者の体内においてその患者の体温によって液状化することが抑制される。
【0110】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、液状化栄養剤の粘度を上昇させるために全卵が使用されているが、例えば寒天を使用して本発明を実施してもよい。ただし、全卵を使用する場合のほうが寒天を使用する場合より、経腸栄養剤130の調理が容易である。
【0111】
さらに、本実施形態においては、全卵と液状化栄養剤との混合物を蒸すことまたは蒸し焼きにすることに先立ってその混合物が注射器120に吸引されてその注射器120内に充填され、その混合物が注射器120と一緒に蒸されるかまたは蒸し焼きにされるようになっている。
【0112】
すなわち、液状の混合物が注射器120内に充填された後、その注射器120内の液状の混合物を加熱することにより、その混合物が半固形化されるのである。したがって、本実施形態によれば、開口部が狭い注射器120内に半固形化状態の経腸栄養剤130を充填するプロセスを容易に行い得る。
【0113】
しかし、液状の混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにして経腸栄養剤130を製造した後にそれを注射器120内に充填するようにして本発明を実施することは可能である。
【0114】
さらにまた、本実施形態においては、経腸栄養剤130が予め充填された注射器120が一製品として製造されて出荷される。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、経腸栄養剤130を患者に投与するに先立ち、その経腸栄養剤130を注射器120によって吸引してその注射器120内に充填する作業が省略され、その結果、経腸栄養剤130の投与作業が簡易化されて投与時間も短縮される。
【0116】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0117】
本実施形態に従う経腸栄養剤も、第1実施形態に従う経腸栄養剤130と同様に、患者に造設された胃瘻を経て胃内に投与されて使用される。すなわち、この経腸栄養剤も、経胃瘻栄養補給法のもとに使用されるのである。
【0118】
第1実施形態に従う経腸栄養剤130は、前述のように、全卵を半固形化剤として使用して製造されるが、本実施形態に従う経腸栄養剤は、寒天を半固形化剤として使用して製造される。寒天は、乾燥した粉末状のものである。
【0119】
このように寒天を半固形化剤として選択した理由は、(a)その入手も調理も容易である点、(b)寒天による経腸栄養剤の半固形化の程度すなわち硬度の調節が容易である点、(c)半固形化した経腸栄養剤は患者の体内においてその体温によって溶解(液状化)しない点、(d)低カロリーで繊維質を多く含有するために患者を健康面で阻害しない点、(e)半固形化した経腸栄養剤の粘稠度が低いために胃瘻チューブ110を経た患者への注入が容易である点などに着目したからである。
【0120】
本実施形態においては、経腸栄養剤を製造するために、市販の液状化栄養剤(すなわち、患者に投与すべき栄養成分を含有した液体)が使用される。この液状化栄養剤は半消化体栄養剤とされている。この液状化栄養剤は、摂取カロリ低下等のための希釈が必要である場合には、必要な量の水分(希釈液の一例)と混合される。その混合物はその後、加熱される。この状態で、粉末状の寒天が上述の液状の混合物に水分200[ml]に対して1[g]の割合で添加される。その後、寒天が混合物内において攪拌されて溶解される。
【0121】
この時点では、寒天が溶解した混合物が液状化状態にあり、その液状化状態の混合物は注射器120によって吸引されてその注射器120内に充填される。
【0122】
その後、液状化状態の混合物を収容した注射器120が冷蔵庫の如き冷処において保存される。それにより、液状化状態の混合物から熱が奪われ、その結果、その混合物が寒天の影響によって凝固する。混合物が寒天の影響によって半固形化するのであり、これにより、半固形化状態の経腸栄養剤が注射器120内に予め充填された状態で完成される。この経腸栄養剤の硬度は、プリン程度の硬さとされる。
【0123】
この経腸栄養剤は、注射器120を利用して胃瘻チューブ110内に注入される。本実施形態においては、経腸栄養剤の一回の必要投与量を注射器120によって一気に患者に投与することが可能であり、その投与時間は数分程度である。
【0124】
本発明者は、この経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果を確認するために数名の患者を対象に治験を施行した。
【0125】
この治験においては、同じ各患者に、半固形化経腸栄養剤と液状化経腸栄養剤とがそれぞれ投与され、それぞれの場合について、胃食道逆流が発生したか否かが評価される。胃食道逆流が発生した各ケースについては、さらに、CT(コンピュータ断層撮影)により得られた画像に基づき、食道に逆流した胃内容物が存在する逆流範囲の長さ(逆流した胃内容物の最上端位置と最下端位置との距離)と、食道に逆流した胃内容物の最上端位置の、噴門からの距離とが測定された。
【0126】
CTにおいては、造影剤を含有した経腸栄養剤を各患者に投与してから30分経過後に、各患者の胸部が1[cm]間隔のスライスによって撮影される。その撮影された画像上、食道内の各部位のCT値(食道内の各部位の高さ位置をスライス数で表現する値)に関連付けて造影剤の有無が判断され、その有無によって胃食道逆流の有無が判断される。
【0127】
造影剤を含有した経腸栄養剤の作製方法については、液状化状態であると半固形化状態であるとを問わず、水溶性造影剤を経腸栄養剤100[ml]当たり5[ml]の割合で混入させ、半固形化経腸栄養剤については、造影剤を混入させた後に半固形化を行った。
【0128】
経腸栄養剤の投与方法については、液状化状態であると半固形化状態であるとを問わず、1回の投与量を400[ml]とし、液状化経腸栄養剤は、1回の投与を15分程度かけて投与し、一方、半固形化経腸栄養剤は、容量が50[ml]である注射器120を利用して一気に投与した。
【0129】
図6には、今回の治験の結果が表形式で示されている。同図の、胃食道逆流の有無を示す欄においては、「−」は胃食道逆流が観察されなかったことを、「+」は胃食道逆流が観察されたことがそれぞれ示している。また、逆流範囲の長さも噴門からの距離も前述のCT値を基準にして測定される。
【0130】
今回の治験は17名の患者を対象に施行された。それら患者はいずれも、ほぼ寝たきりの状態であったが、医学的には安定した状態であった。図6には、各患者がID番号によって互いに識別されるとともに、各患者の属性として年齢と性別が記載され、さらに、各患者の基礎疾患名も記載されている。
【0131】
図6に示す結果によれば、17名の患者のうち、液状化経腸栄養剤の投与後に胃食道逆流が認められたものは10名(58.5%)であった。これに対し、それら患者のうち、半固形化経腸栄養剤の投与後に胃食道逆流が認められたものは4名(23.5%)であった。
【0132】
したがって、本実施形態に従う経腸栄養剤によれば、胃食道逆流が液状化経腸栄養剤に比較して良好に防止されることが確認された。
【0133】
本実施形態に従う経腸栄養剤によれば、液状化経腸栄養剤に比較し、次のような点でも有利である。
【0134】
患者に胃瘻を造設した後、胃食道逆流の発生頻度が増加する症例がすでに報告されている。この原因は未だ確定的に解明されているわけではないが、その原因に関し次のような指摘がなされている。
【0135】
胃瘻造設に伴って胃壁が腹壁に固定されると、胃のぜん動が抑制されて胃の***能が低下する。この***能低下は、経腸栄養剤が胃内に停留する時間の増大を招来し、その結果、胃食道逆流の発生頻度が増加することが既に指摘されているのである。
【0136】
一方、胃の***能に関わる胃のぜん動を助長・抑制する因子には、神経性因子に加えて、各種消化管ホルモンに依存する液性調節という因子も存在する。各種消化管ホルモンの中で胃のぜん動を最も強く亢進させるといわれているホルモンとしてガストリンがあり、このガストリンは胃壁の伸長によって分泌が刺激される。
【0137】
液状化経腸栄養剤を患者の胃内に経鼻胃管的に投与する場合には一般に、投与中の患者の嘔吐を予防する観点から緩やかな速度で液状化経腸栄養剤を滴下することが推奨される。しかし、このような緩徐な滴下速度では、液状化経腸栄養剤によって胃が充満することは困難であり、よって、液状化経腸栄養剤の胃内への投与による胃の伸長量が不足する。そのため、ガストリンの分泌が活発でなく、胃のぜん動も活発でなく、よって、胃の***能が低下し、結果的にはかえって、胃食道逆流を助長しかねない。
【0138】
これに対し、本実施形態によれば、経腸栄養剤が胃瘻を経て胃内に直接に投与されるため、嘔吐の心配なしで、経腸栄養剤を素早く胃内に注入することが可能となる。したがって、経腸栄養剤の胃内への投与によって胃が大きく伸長させられ、ガストリンの分泌が刺激されて、活発な胃のぜん動が期待できる。その結果、胃の***能が向上し、経腸栄養剤が半固形化状であることとも相俟って、経腸栄養剤の胃食道逆流の発生頻度が良好に低減される。
【0139】
患者に胃瘻が造設された後には、胃瘻が経時的に大径化する現象が現れ易く、その結果、その胃瘻に挿入された栄養チューブとの隙間が拡大する。この隙間は、その栄養チューブを経て患者の胃内に注入された経腸栄養剤が胃内の圧力によって体外に漏れる経路となり得る。
【0140】
これに対し、本実施形態によれば、経腸栄養剤が半固形化状態とされているため、液状化状態である場合に比較し、形態保持性が強いゆえに、同じ大きさの隙間を通過する際の抵抗が大きい。したがって、本実施形態によれば、胃内の圧力による経腸栄養剤の漏れという問題を容易に解消し得る。
【0141】
図7には、内視鏡的に胃瘻が造設されたある患者(女性、当時85歳、介護老人保健施設に入所)を対象に、液状化経腸栄養剤を投与した後に、本実施形態に従う半固形化経腸栄養剤を投与する内容の治験を施行した結果が経時的に示されている。
【0142】
同図に示すように、この治験においては、平成12年5月のはじめから10月の中旬までの期間、患者に液状化経腸栄養剤が経胃瘻的に投与された。この期間においては、胃食道逆流が頻繁に発生するとともに、胃瘻と栄養チューブとの隙間を経た経腸栄養剤の漏れも嘔吐も観察された。
【0143】
これに対し、同年10月の中旬以後の期間においては、液状化経腸栄養剤に代えて半固形化栄養剤が同じ患者に投与された。この期間においては、図7に示すように、胃食道逆流も漏れも嘔吐も全く観察されなかった。
【0144】
したがって、本実施形態に従う半固形化経腸栄養剤によれば、液状化経腸栄養剤に比較し、経腸栄養剤の漏れおよび嘔吐を容易に抑制し得る点でも有利であることが確認された。
【0145】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従う経腸栄養剤を患者に経管的に投与するために使用される胃瘻100および胃瘻チューブ110を示す部分側面断面図である。
【図2】図1における胃瘻チューブ110を胃20および腹壁102との位置関係と共に示す部分側面断面図である。
【図3】上記実施形態に従う経腸栄養剤130が予め充填されて製品化されるプレフィルド型の注射器120を示す斜視図である。
【図4】仰臥位にある患者に上記実施形態に従う経腸栄養剤130が経管的に投与された状態においてその経腸栄養剤130について胃食道逆流が抑制される様子を模型的に示す側面断面図である。
【図5】仰臥位にある患者に液状または流動状の従来の経腸栄養剤24が経管的に投与された状態においてその経腸栄養剤24について胃食道逆流が起こり易い様子を模型的に示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に従う経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果を液状化経腸栄養剤と比較しつつ確認するために施行した治験の結果を表形式で表す図である。
【図7】上記第2実施形態に従う経腸栄養剤による胃食道逆流防止効果と漏れ防止効果と嘔吐防止効果とを液状化経腸栄養剤と比較しつつ確認するために施行した治験の結果を表形式で表す図である。
【符号の説明】
20 胃
22 食道
100 胃瘻
102 腹壁
104 胃壁
100 胃瘻
110 胃瘻チューブ
120 注射器
130 経腸栄養剤
Claims (2)
- 患者の腹壁と胃壁または腸壁とに跨って造設された瘻孔に挿入される栄養チューブに患者の体外において接続された容器から前記栄養チューブを経て患者の胃または腸の内部に前記容器の加圧によって投与される経腸栄養剤であって、
寒天または全卵を半固形化剤として液状化栄養剤に添加することにより、プリンまたは茶碗蒸しの硬さを有する半固形物であって、形態が自然には変化せずに保持される形態保持性であって外部から当該経腸栄養剤に自然に作用する重力および大気圧に対抗して自身の初期の形態を維持しようとする性質を有する点と液体および流動体より高濃度で栄養成分を含有し得る点とに関しては固形物と共通するが、強制外力による形態の変化が固形物より容易である点に関しては液体および流動体と共通するものとして形成され、
前記形態保持性が、患者の体内への当該経腸栄養剤の投与の前後を通じて維持されるとともに、当該経腸栄養剤が患者の胃または腸の内部に貯留する状態においてはその患者の体温によっては当該経腸栄養剤が液状化しないように、前記形態保持性が維持される経腸栄養剤。 - 請求項1に記載の経腸栄養剤を製造する方法であって、
前記液状化栄養剤と前記半固形化剤との混合物をそれの液状化状態において前記容器と同じかまたはそれとは別の容器内に充填し、その充填状態で、前記同じ容器または別の容器内の混合物をその容器と一緒に、前記半固形化剤が寒天である場合には冷却、全卵である場合には加熱して、前記混合物を半固形化することによって前記経腸栄養剤を製造する経腸栄養剤製造方法。
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