JP3511348B2 - 酸性リン酸エステル混合物の製造方法 - Google Patents

酸性リン酸エステル混合物の製造方法

Info

Publication number
JP3511348B2
JP3511348B2 JP01550897A JP1550897A JP3511348B2 JP 3511348 B2 JP3511348 B2 JP 3511348B2 JP 01550897 A JP01550897 A JP 01550897A JP 1550897 A JP1550897 A JP 1550897A JP 3511348 B2 JP3511348 B2 JP 3511348B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phosphate
mixture
water
phosphoric acid
monoester
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP01550897A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10212294A (ja
Inventor
智 渕上
猛 佐藤
秀樹 大野
能利 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Tokuyama Corp
Original Assignee
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Tokuyama Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TOKUYMA DENTAL CORPORATION, Tokuyama Corp filed Critical TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Priority to JP01550897A priority Critical patent/JP3511348B2/ja
Publication of JPH10212294A publication Critical patent/JPH10212294A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3511348B2 publication Critical patent/JP3511348B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は接着剤、界面活性剤
等の用途に有用な、酸性リン酸エステル混合物、より詳
しくは、リン酸モノエステルとリン酸ジエステルとの酸
性リン酸エステル混合物の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】リン酸モノエステル、リン酸ジエステル
及びそれらの混合物は、重合触媒、界面活性剤、金属結
合溶剤、繊維の帯電防止剤等様々な分野で用いられてい
る。さらに、この中でも、分子中に(メタ)アクリロイ
ル基等の重合性不飽和基を持つ重合性酸性リン酸エステ
ル化合物は、良好な重合性、無機化合物の溶解性、金属
への密着性等の特徴から、繊維処理剤、塗料、接着用前
処理剤、接着剤、歯科材料等で用いられてる。なお、本
発明中では、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステル
はそれぞれ単体を意味し、酸性リン酸エステル混合物は
これら双方の混合物を意味する。また、酸性リン酸エス
テル化合物と称する場合にはこれらの単体及び混合物い
ずれの場合をも含むこととする。 【0003】近年、上記接着材等に高い性能が要求され
るにつれ、リン酸モノエステルとジエステルが特定の割
合で混合された組成物の必要性が高まってきている。 【0004】一方、上記酸性リン酸エステル化合物は一
般に、リン酸あるいはその活性な誘導体とアルコールと
のエステル化反応により合成されるので、合成物は通常
モノ、ジ及びトリエステルの混合物として得られ、リン
酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルを選択的に合
成すること並びにこれらエステルを任意の比で合成する
ことは困難である。 【0005】従って、任意の比でリン酸モノエステルと
リン酸ジエステルを有する組成物を得るためには、従来
カラムクロマトグラフィー等により、高純度のリン酸モ
ノエステル及びリン酸ジエステルの単体を各々得、その
後にそれぞれを所定の割合で混合するという煩雑な操作
が必要性であった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】以上の点から、カラム
クロマトグラフィー精製の如き煩雑な方法を必要とせ
ず、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの比が調
整された混合物を得る方法の開発が望まれていた。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意研究した結果、リン酸エステル混合物、
金属酸化物、水の共存する系において、金属酸化物の有
機化合物に対する吸着能力(活性)は水の存在量が多い
ほど低下する、すなわち金属酸化物が水を含むと活性が
低下するという一般的常識とは逆に、リン酸モノエステ
ルは水の存在下において金属酸化物に特異的に吸着さ
れ、一方リン酸ジエステルはほとんど吸着されないこと
を見いだし、リン酸モノエステルとリン酸ジエステルの
混合物の組成の調整を簡便に行えることを見いだし、本
発明を完成するに至った。 【0008】即ち、本発明は、リン酸モノエステルとリ
ン酸ジエステルの混合物中に金属酸化物と水を存在さ
せ、該混合物中の水の存在量を制御することによりリン
酸モノエステルとリン酸ジエステルの組成比を制御する
ことを特徴とする酸性リン酸エステル混合物の製造方法
である。 【0009】本発明の製造方法を適用できる酸性リン酸
エステル混合物は、その中に含まれるリン酸モノエステ
ル及びリン酸ジエステルの構造は特に制限されるもので
はなく公知の化合物に適用できる。 【0010】この様な酸性リン酸エステル化合物として
は、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化
水素基は側鎖を有していても良い)を有するリン酸モノ
エステルとリン酸ジエステル、炭素数2〜20の芳香族
炭化水素基(以下脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素
基を炭化水素基と総称する)を有するリン酸モノエステ
ルとリン酸ジエステルが挙げられ、さらに該炭化水素基
は、メトキシ基やエトキシ基等のアルコシキ基類、フッ
素や塩素等のハロゲン基類、(メタ)アクリロイルオキ
シ基やビニル基等の重合性不飽和基類で置換されていて
もよい。 【0011】代表的な酸性リン酸エステル化合物の具体
例としては、モノ及びジエチルフォスフェート、モノ及
びジプロピルフォスフェート、モノ及びジブチルフォス
フェート、モノ及びジヘキシルフォスフェート、モノ及
びジオクチルフォスフェート、モノ及びジオレイルフォ
スフェート、モノ及びジラウリルフォスフェート、モノ
及びジミリスチルフォスフェート、モノ及びジステアリ
ルフォスフェート、モノ及びジフェニルフォスフェー
ト、モノ及びジイソプロピルフォスフェート、モノ及び
ビス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、モノ及び
ビス(ブトキシエチル)フォスフェート、モノ及びビス
(ラウリルオキシ)エチルフォスヘート、モノ及びビス
(2−クロロプロピル)フォスフェート、モノ及びビス
(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、モ
ノ及びビス(3−アクリロイルオキシプロピル)フォス
フェート、モノ及びビス(2−アクリロイルオキシプロ
ピル)フォスフェート、モノ及びビス(6−アクリロイ
ルオキシヘキシル)フォスフェート、モノ及びビス(1
0−アクリロイルオキシデシル)フォスフェート、モノ
及びビス(1−クロロメチル−2−アクリロイルオキシ
エチル)フォスフェート、モノ及びビス(2−メタクリ
ロイルオキシエチル)フォスフェート、モノ及びビス
(3−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェー
ト、モノ及びビス(2−メタクリロイルオキシプロピ
ル)フォスフェート、モノ及びビス(6−メタクリロイ
ルオキシヘキシル)フォスフェート、モノ及びビス(1
0−メタクリロイルオキシデシル)フォスフェート、モ
ノ及びビス(1−クロロメチル−2−メタクリロイルオ
キシエチル)フォスフェート、2−メタクリロイルオキ
シエチルフェニルフォスフェート等が挙げられる。 【0012】本発明の方法は、上記酸性リン酸エステル
混合物中でも、重合性不飽和基を有する酸性リン酸エス
テル混合物の様な化合物自体が不安定で、他の製造方法
の適用が困難な化合物に特に適しており、なかでも重合
性不飽和基として、容易に分解する(メタ)アクリル酸
エステル構造をもつ酸性リン酸エステル混合物に最も適
している。 【0013】本発明の方法は、酸性リン酸エステル混合
物中のリン酸モノエステルが有する炭化水素基と、リン
酸ジエステルが有する炭化水素基が異なっていても適用
が可能である。具体的な例としては、フェニルリン酸ジ
クロライドとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとを反
応させて合成したモノフェニルフォスフェートと2−メ
タクリロイルオキシエチル フェニルフォスフェートと
の混合物に、金属酸化物と水を作用させて組成調整を行
うこと等が挙げられる。 【0014】本発明の製造方法において、リン酸モノエ
ステルの吸着によるリン酸モノエステルとリン酸ジエス
テルの比の変化を制御する因子としては、後述する金属
酸化物と水の使用量、作用時間、及び金属酸化物の形状
等が挙げられるが、現状ではこれら因子とリン酸モノエ
ステルの吸着速度の定量的な関係は明らかではなく、経
験的に決定する必要がある。しかし、水の使用量がもた
らす吸着速度への効果が他の効果に比較して格段に大き
く、これを最も厳密に制御する必要がある。 【0015】本発明の製造方法を実施する場合、上記制
御因子である水の使用量、その他作用時間、金属酸化物
の使用量やその形状等を、予め小スケールにて予備的に
実験を行い、その結果を大きなスケールに適用する方法
が代表的である。さらにその上で、大スケールでの実施
段階においても途中サンプリング等してデータを収集
し、微調整を行うことも好ましい。また、これらのデー
タを蓄積しておくことにより、類似の条件であれば事前
の小スケールでの検討が省ける場合もある。 【0016】本発明に使用される金属酸化物としては、
公知のものが特に制限されることなく使用される。この
ような金属酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、チ
タン、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、ストロンチ
ウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム等
の多価金属の単独もしくは複合酸化物が挙げられ、さら
には、それらの金属にさらに、カルシウム、カリウム、
ナトリウム等の単独酸化物にすると著しく不安定な金属
を含んだ複合酸化物類も挙げられる。 【0017】具体的には、酸化ケイ素(以下、シリカゲ
ルと呼ぶ)、酸化アルミニウム(以下、アルミナと呼
ぶ)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、
酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化マンガン、酸
化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム
等の単独金属酸化物類や、ケイ素−チタン複合酸化物、
ケイ素−ジルコニウム複合酸化物、ケイ素−アルミニウ
ム複合酸化物、ケイ素−カルシウム複合酸化物、ケイ素
−ニッケル複合酸化物、ケイ素−コバルト複合酸化物、
ケイ素−ストロンチウム複合酸化物、ケイ素−マンガン
複合酸化物、ケイ素−鉄複合酸化物、ケイ素−銅複合酸
化物、ケイ素−亜鉛複合酸化物、ケイ素−スズ複合酸化
物、ケイ素−マグネシウム複合酸化物、アルミニウム−
チタン複合酸化物、アルミニウム−ジルコニウム複合酸
化物、アルミニウム−ナトリウム複合酸化物、ジルコニ
ウム−イットリウム複合酸化物、コバルト−ニッケル複
合酸化物、アルミニウム−亜鉛−コバルト複合酸化物、
ケイ素−アルミニウム−カルシウム複合酸化物、ケイ素
−アルミニウム−マグネシウム複合酸化物、ケイ素−ア
ルミニウム−鉄複合酸化物、ケイ素−チタン−ナトリウ
ム複合酸化物、ケイ素−ジルコニウム−ナトリウム複合
酸化物、ケイ素−アルミニウム−チタン−マグネシウム
複合酸化物、ケイ素−アルミニウム−チタン−ナトリウ
ム複合酸化物、ケイ素−アルミニウム−チタン−カリウ
ム複合酸化物、ケイ素−アルミニウム−ジルコニウム−
カルシウム複合酸化物等の複合金属酸化物類が挙げられ
る。 【0018】これらの中でも、水、特に酸性の水に対し
て安定な金属酸化物の使用が好ましく、さらにシリカゲ
ル及びアルミナが、事実上有毒性がなく、様々な形状の
物が容易に且つ安価に入手できることから好適に使用さ
れ、シリカゲルが最も好適に使用される。 【0019】本発明で使用する金属酸化物の酸性リン酸
エステル混合物に対する使用量は特に制限されるもので
はなく、その時点における組成調整前の酸性リン酸エス
テル混合物の組成比や目的の組成比等を勘案して決定す
れば良いが、使用量が少なすぎるとリン酸モノエステル
の十分な吸着がなく、目的の組成比に到達しない場合が
あり、また、多すぎる場合には金属酸化物の無駄が多く
なるため、酸性リン酸エステル混合物100重量部に対
し、5重量部〜1000重量部の使用が好ましく、30
重量部〜300重量部の使用がより好ましい。 【0020】本発明で使用する金属酸化物の形状は特に
制限されるものではなく、その時々の条件に従って適宜
選択すればよい。例えば、粒子径の小さな(比表面積の
大きな)金属酸化物はリン酸モノエステルの吸着速度が
大きく、また最終的な吸着量も多いため、目的とする組
成比を得るための使用量が少量ですむ、短時間で組成比
の調整が可能であるといった特徴があり、一方で粒子径
の大きな金属酸化物は取扱が容易であるといった特徴が
ある。操作性や事実上可能な作用時間を考慮すると、平
均粒子径が0.005mm〜10mmの金属酸化物の使用が
好ましく、0.01mm〜5mmの金属酸化物の使用がより
好ましい。 【0021】本発明において水は、リン酸モノエステル
を金属酸化物に吸着させるために必要である。水がない
場合にはリン酸モノエステルの吸着が起こらず、従っ
て、組成比の調整が不可能である。 【0022】本発明で使用する水は特に制限されるもの
ではないが、副反応の発生等を抑制するため、不純物を
含まないものが好ましく、イオン交換水、蒸留水等が好
適に使用される。 【0023】本発明で使用する上記水の酸性リン酸エス
テル混合物に対する使用量は特に制限されるものではな
く、その時々の条件に従って適宜選択すればよい。具体
的には、使用する水の量が多いほどリン酸モノエステル
の吸着が進行し、作用時間や金属酸化物の形状等の他の
条件が同一の場合には、よりリン酸モノエステルの存在
比の小さなものが得られる。一方、使用量が少ない場合
には吸着速度が小さいので微妙な組成調整が可能とな
る。実用上許容されうる作用時間での組成比の調整を行
うためには、使用する水の使用量は、酸性リン酸エステ
ル混合物100重量部に対して1重量部〜50重量部が
好ましく、3重量部〜30重量部がより好ましい。 【0024】本発明における金属酸化物及び水の作用時
間は特に制限されるものではなく、一般的には長時間作
用させればそれだけリン酸モノエステルの吸着が進行
し、最終的にリン酸モノエステルの存在比の小さなもの
が得られる。しかし、リン酸モノエステルの吸着速度は
徐々に減少するので、あまりに長時間の作用は実用的で
はない。逆に作用開始直後は吸着速度が大きいため、あ
まりに短い作用時間ではわずかな作用時間の差で得られ
るリン酸モノエステルの比が大きく異なる可能性があ
る。事実上有効な作用時間は5分間〜48時間であり、
15分間〜24時間の作用時間が好ましい。 【0025】本発明の方法において、通常、酸性リン酸
エステル混合物は粘性の液体であるので、操作性を向上
させるために何らかの有機溶媒により溶液とし、これに
金属酸化物と水を作用させることが好ましい。 【0026】このような有機溶媒はリン酸エステル混合
物との不本意な反応を避けるために水酸基及びカルボキ
シル基を有さないものを用いることが好ましく、さらに
は、酸性の条件下で水及び金属酸化物に対して安定なも
のを用いることが好ましい。 【0027】このような有機溶媒を具体的に例示する
と、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジク
ロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素
類、エチルエーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロ
フラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、ト
ルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ
る。 これら有機溶媒の選択において、対象とする酸性
リン酸エステル混合物が熱、光等に不安定な(メタ)ア
クリル酸エステル構造を有する化合物である場合には、
組成比調整の後、溶媒の除去を容易にするために常圧で
の沸点が100℃以下のものを使用することが好まし
く、70℃以下であることがより好ましい。これらを考
慮するとジクロロメタン、クロロホルム、エチルエーテ
ルが好適に使用され、引火性や生体安全性を考慮する
と、ジクロロメタンの使用が最も好ましい。 【0028】本発明の方法において、酸性リン酸エステ
ル混合物と水及び金属酸化物の作用方法は特に制限され
るものではなく、それら3成分すべてが同一の反応容器
の中で、所定の時間存在するようにすればよく、その時
々の条件に従って適宜決定すればよい。例としては、所
定量の金属酸化物を反応容器中に入れておき、そこへ酸
性リン酸エステル混合物を溶解した溶液を投入した後、
所定量の水を加える方法、酸性リン酸エステル混合物の
溶液に所定量の水を加えておき、それを金属酸化物を予
め入れておいた反応容器に投入する方法、あるいは、酸
性リン酸エステル混合物を先に反応容器中に入れ、そこ
へ水と金属酸化物の所定量を投入する方法等が挙げられ
る。 【0029】本発明の方法においては、リン酸エステル
モノエステルの吸着は、酸性リン酸エステル混合物、
水、金属酸化物すべてがそろわなければ起こらないた
め、本発明における作用時間は同一の反応容器中に投入
されてからの時間となる。たとえば、酸性リン酸エステ
ル混合物と金属酸化物を混合しておいてもそのままでは
安定であり、水をそこへ加えることによりはじめて吸着
が始まるので、予め決定された作用時間は水を加えてか
らの時間として操作を行えばよい。 【0030】本発明の方法においては、酸性リン酸エス
テル混合物に水及び金属酸化物を作用させる時には、撹
拌を行うことが好ましい。撹拌を行わないと系が不均一
な状態になり、小スケールでの予備実験の結果と大スケ
ールでの結果に差異を生じたり、途中サンプリングを行
ってデータを得る場合に錯誤を生じたりする可能性があ
る。該撹拌は作用時間中ずっと行うことが最も好ましい
が、何らかの制限によりそれが困難な場合には、一定時
間おきの撹拌、例えば作用時間5時間に対して、1時間
おきに10分間の撹拌の如き方法も可能である。 【0031】本発明の方法においては、所定の作用時間
が経過し目的の組成比が得られたならば、系から金属酸
化物を除去し、それ以上の吸着による組成比の変化を停
止する。金属酸化物の除去方法は特に制限されることが
なく、公知の方法を用いることができる。具体的には、
濾別、遠心分離、デカンテーション等が挙げられる。 【0032】金属酸化物の除去操作においては、当該操
作に長時間を必要とする場合があるので、金属酸化物及
び水の使用量、作用時間などの条件を検討する際にその
点を考慮し決定することが好ましい。例えば、除去操作
に1時間かかるとした場合には、所定作用時間に対して
±1時間くらいの違いがあっても得られる酸性リン酸エ
ステル混合物の組成比が目的値と誤差範囲以上の違いが
ない条件にすることなどが挙げられる。 【0033】本発明の方法においては、酸性リン酸エス
テル混合物に対して金属酸化物と共に水を作用させてい
るが、酸性リン酸エステル混合物の最終形態としては水
はできる限り含まれていない方が好ましいことが多い。
通常は、水はほとんど金属酸化物に吸着され、金属酸化
物と共に除去される。しかし、使用した水の量がかなり
多かったり、製品として要求される含水量が著しく小さ
い場合等にはさらに水を取り除く操作が必要となる。こ
のような場合の水除去方法としては、酸性リン酸エステ
ル混合物の組成比に影響を与えない方法であれば、公知
の方法が制限なく使用できる。このような方法として
は、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウ
ム等の非酸化物系の乾燥剤を用いる方法や、水と共沸す
る有機溶媒、例えばトルエンや、酢酸エチル、クロロホ
ルム等を用いて除去する方法が挙げられる。本発明の方
法において、前記何らかの有機溶媒を用いて操作を行っ
た場合には、酸性リン酸エステル混合物の溶液が得られ
る。得られた酸性リン酸エステル混合物の引き続いての
使用にあたり、当該溶媒が不必要な場合にはそれを除去
する必要がある。このような溶媒除去方法としては公知
の方法が何ら制限なく使用できる。具体的には、常圧で
当該溶媒の沸点以上に加熱する、あるいは減圧下で加熱
する、または、空気や窒素等を溶液中に吹き込む事によ
り除去する事等が挙げられる。一方で、組成比を調整し
た後、何らかの溶液として当該酸性リン酸エステル混合
物を使用する場合に、金属酸化物と水を作用させる際に
酸性リン酸エステル混合物を溶解する溶媒と、最終的に
使用する溶媒とを同一のものとしておくことが可能であ
れば、そのようにすることが好ましい。これにより溶媒
除去の手間が省ける。 【0034】本発明において、酸性リン酸エステル混合
物に対して、金属酸化物と水を作用させることにより、
リン酸モノエステルのみが特異的に吸着される理由は明
らかではないが、水が存在しないと吸着が起きないこと
から、まず、水と金属酸化物の表面が何らかの反応を起
こし、この反応表面がリン酸モノエステルの有する二つ
のリン酸酸性水酸基と相互作用を起こすのではないかと
考える。 【0035】 【発明の効果】本発明の製造方法によって、リン酸モノ
エステルとリン酸ジエステルからなる酸性リン酸エステ
ル混合物から、リン酸モノエステルの存在量を減少させ
ることによりリン酸モノエステルとリン酸ジエステルの
組成比を制御して、任意の組成の酸性リン酸エステル混
合物を簡便に得ることができる。 【0036】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に示す
が、本発明はこの実施例によって何ら限定される物では
ない。 【0037】なお、以下の実施例中での酸性リン酸エス
テル混合物(その他の成分を含む場合にはそれらも)の
組成比は高速液体クロマトグラフ分析によるピークの積
分値の比である(使用カラム:Inertsil OD
S−2、ガスクロ工業社製、検出:UV 210n
m)。 【0038】本実施例1〜9及び比較例1〜3で使用し
た酸性リン酸エステル混合物は市販の酸性リン酸エステ
ル混合物であるライトエステルPM(共栄社化学製)を
カラムクロマトグラムにより精製し、リン酸モノエステ
ルであるモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォ
スフェート(以下PM)と、リン酸ジエステルであるビ
ス(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート
(以下PM2)とを単離し、各実施例及び比較例ごとに
混合したものである。実地例中10で使用した酸性リン
酸エステル混合物はライトエステルPMをそのまま用い
た。実施例11で使用した酸性リン酸エステル混合物は
市販の酸性リン酸エステル混合物であるホスマーCL
(ユニケミカル株式会社製)をカラムクロマトグラムに
より精製し、リン酸モノエステルであるモノ(1−クロ
ロメチル−2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフ
ェート(以下PM−CL)と、リン酸ジエステルである
ビス(1−クロロメチル−2−メタクリロイルオキシエ
チル)フォスフェート(以下PM2−CL)とを単離
し、混合したものである。 【0039】実施例1 300mlのパイレックスガラス製三角フラスコに、P
MとPM2の組成比が41:100の混合物19.0g
をいれ、ジクロロメタン131gを加えて溶解し、溶液
とした。この溶液にイオン交換水3.0g、シリカゲル
(和光純薬製、シリカゲル 小粒 ホワイト)30gを
入れ、マグネチックスターラーにて撹拌した。1時間経
過後濾紙(5B)を用いてシリカゲルを濾別した。得ら
れた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を
除去し、18.0gの酸性リン酸エステル混合物を回収
した。回収されたもののPMとPM2の組成比は34:
100であった。 【0040】実施例2 使用したイオン交換水の量を4.5gにした以外は実施
例1の方法に準じて行った。回収された酸性リン酸エス
テル混合物の量は17.5g、PM:PM2は30:1
00であった。 【0041】実施例3 作用時間を3時間にした以外は実施例1の方法に準じて
行った。回収された酸性リン酸エステル混合物の量は1
7.2g、PM:PM2は27:100であった。 【0042】実施例4 作用時間を3時間にした以外は実施例2の方法に準じて
行った。回収された酸性リン酸エステル混合物の量は1
6.3g、PM:PM2は21:100であった。 【0043】実施例5 使用したイオン交換水の量を1.5gとし、シリカゲル
使用量を45g、作用時間を3時間として実施例1の方
法に準じて行った。回収された酸性リン酸エステル混合
物の量は18.4g、PM:PM2は37:100であ
った。 【0044】比較例1 イオン交換水を加えない以外は実施例1の方法に準じて
行った。回収された酸性リン酸エステル混合物の量は1
8.9g、PM:PM2は41:100のままであっ
た。 【0045】比較例2 イオン交換水を加えない以外は実施例3の方法に準じて
行った。回収された酸性リン酸エステル混合物の量は1
8.9g、PM:PM2は41:100のままであっ
た。 【0046】 【表1】【0047】実施例1から5及び比較例1、2の結果を
表1にまとめた。実施例1及び2と比較例1の比較、及
び実施例3及び4と比較例2の比較の結果から明らかな
ように、水の存在下においてのみリン酸モノエステルの
吸着が起きており、さらに、実施例1から4までの結果
から、水の使用量と作用時間を制御することにより、得
られる酸性リン酸エステル混合物の組成比が制御可能な
ことが明らかである。また、実施例1に対して水の使用
量が半分の実施例5は、1.5倍量のシリカゲルを使用
し、作用時間を3倍としているのにも関わらず、PMの
吸着量が少なく、水の使用量が最も支配的な要因である
ことがわかる。 【0048】実施例6 実施例1に準じて、PM:PM2の組成比が57:10
0の混合物48gをジクロロメタン260gに溶解した
溶液を調整した。この溶液にイオン交換水6.0g、シ
リカゲル(和光純薬製、シリカゲル 小粒 ホワイト)
60gを加え、マグネティックスータラーにて撹拌し
た。表2に挙げる時間ごとにサンプリングし、組成比を
調べた。結果を表2に示した。 【0049】実施例7 実施例1の方法に準じて、PM:PM2の組成比が5
1:100の混合物46gをジクロロメタン260gに
溶解した溶液を調整した。この溶液にイオン交換水2.
1g、シリカゲル(和光純薬製、シリカゲル 小粒 ホ
ワイト)60gを加え、マグネティックスターラーにて
撹拌した。表2に挙げる時間ごとにサンプリングし、組
成比を調べた。結果を表2に示した。 【0050】 【表2】 【0051】実施例6及び7は金属酸化物と水の作用時
間に対しての、組成比の変化を見たものである。この結
果から明らかな様に、時間の経過とともに組成比は変化
しており、作用時間を制御することによっても、得られ
る酸性リン酸エステル混合物の組成比が制御可能であ
る。また、実施例6と7の比較から作用させる水の量を
少なくすることにより吸着速度を遅くでき、微妙な組成
調整が可能になることがわかる。 【0052】実施例8 実施例1の方法に準じて、PM:PM2の組成比が5
7:100の混合物48gをジクロロメタン260gに
溶解した溶液を調整した。この溶液にイオン交換水6.
0g、シリカゲル(和光純薬製、シリカゲル 中粒 ホ
ワイト)60gを加え、2時間撹拌した。得られた酸性
リン酸エステル混合物の組成比は54:100であっ
た。 【0053】実施例9 金属酸化物としてワコーゲルC−200(和光純薬製)
を用いた以外は実施例8に準じて行った。得られた酸性
リン酸エステル混合物の組成比は38:100であっ
た。 【0054】比較例3 金属酸化物の替わりに硫酸ナトリウム(和光純薬製、試
薬特級)を用いた以外は実施例8に準じて行った。得ら
れた酸性リン酸エステル混合物の組成比は57:100
のままであった。 【0055】実施例8と9及び実施例6のうち作用時間
が2時間のものは使用するシリカゲルの形状の違いを見
たものである。いずれの場合にもリン酸モノエステルの
存在比が減少し、組成の変化が起きているのがわかる。
さらに、使用したシリカゲルの粒子径が小さいほど、リ
ン酸モノエステルの吸着量が多いのがわかる。比較例3
は、シリカゲルと同様水の吸着能は存在するが、金属酸
化物ではない硫酸ナトリウムを用いた場合の結果であ
る。この場合にはリン酸モノエステルの吸着は起こら
ず、組成の調整が不可能である。 【0056】実施例10 PM:PM2の組成比が186:100であり、さらに
不純物としてエチレングリコールジメタクリレート(以
下1G)を含む混合物30g(PM:PM2:1G=1
86:100:105、積分比)をジクロロメタン 1
70gに溶解した溶液を調整した。この溶液にイオン交
換水 2.0g、アルミナ(昭和電工製、アルミナ A
−12 平均粒径60μm)22gを加え、2時間撹拌
した。得られた酸性リン酸エステル混合物の組成比は9
4:100(PM:PM2:1G=94:100:10
5)であった。 【0057】実施例11 PM−CLとPM2−CLの組成比が150:100の
混合物20gをジクロロメタン80gに溶解した。この
溶液にイオン交換水3.5gとシリカゲル(和光純薬
製、シリカゲル、小粒、ホワイト)25gを加え、4時
間撹拌した。得られた酸性リン酸エステル混合物の組成
比は105:100であった。 【0058】実施例10は金属酸化物をシリカゲルから
アルミナに変更した場合の結果であり、実施例11は組
成の調整を行う酸性リン酸エステル混合物の種類を変更
した場合の結果である。何れの場合にもリン酸モノエス
テルとリン酸ジエステルの組成比が変化しており、本発
明の目的である組成比の調整が可能であることがわか
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 能利 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社 トクヤマ内 (56)参考文献 特開 平10−182673(JP,A) 特開 昭58−21687(JP,A) 特開 昭58−192891(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 9/09

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 リン酸モノエステルとリン酸ジエステル
    の混合物中に金属酸化物と水を存在させ、該混合物中の
    水の存在量を制御することによりリン酸モノエステルと
    リン酸ジエステルの組成比を制御することを特徴とする
    酸性リン酸エステル混合物の製造方法。
JP01550897A 1997-01-29 1997-01-29 酸性リン酸エステル混合物の製造方法 Expired - Fee Related JP3511348B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP01550897A JP3511348B2 (ja) 1997-01-29 1997-01-29 酸性リン酸エステル混合物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP01550897A JP3511348B2 (ja) 1997-01-29 1997-01-29 酸性リン酸エステル混合物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10212294A JPH10212294A (ja) 1998-08-11
JP3511348B2 true JP3511348B2 (ja) 2004-03-29

Family

ID=11890761

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP01550897A Expired - Fee Related JP3511348B2 (ja) 1997-01-29 1997-01-29 酸性リン酸エステル混合物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3511348B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114907902A (zh) * 2021-02-08 2022-08-16 联泓(江苏)新材料研究院有限公司 一种高磷酸二酯含量的聚氧乙烯醚磷酸酯组合物及其制备方法和应用

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10212294A (ja) 1998-08-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0486351B1 (fr) Procédé de fabrication d'oxalates doubles de terres rares et d'ammonium et leurs utilisations pour la fabrication d'oxydes de terres rares
AU2010258522B2 (en) Method and apparatus for regeneration of extraction solution in metal extraction processes
IL109596A (en) Method for removal, separation and concentration of thallium lead, alkali metals and alkaline metals are concentrated, using a polystyrene ligand polyether related to anorexic science
JP3511348B2 (ja) 酸性リン酸エステル混合物の製造方法
WO2018180907A1 (ja) カルボキシル基を一つ有するポリエチレングリコールの精製方法
US5612275A (en) Chemically active ceramic compositions with a phospho-acid moiety
CN1257290C (zh) 一种从磷灰石中提取稀土的方法
MX2009001524A (es) Proceso para la preparacion de sal de sodio de ibuprofeno de diferentes tamaños de particula.
JP2003313049A (ja) エッチング液、ガラス基板のエッチング処理方法およびエッチング液の再生処理方法
JP2007031312A (ja) プラバスタチンナトリウムの製造方法
JPH09151390A (ja) 高度不飽和脂肪酸及びその誘導体の精製方法
US4466948A (en) Process for removing heavy metal ions and arsenic from wet-processed phosphoric acid
JPS6310785B2 (ja)
RU2574595C1 (ru) Состав экстракционно-хроматографического материала для селективного выделения и очистки прометия-147 от сопутствующих редкоземельных элементов из азотнокислых растворов
JP3433633B2 (ja) 酸性リン酸エステルの製造方法
JPH07260762A (ja) 高速液体クロマトグラフィー用充填剤及びその製造法
JPH07267966A (ja) テトラフェニルボラートを単離する方法
JP3963531B2 (ja) 光学異性体分離用カラム充填剤の製造法
KR20040038744A (ko) 유기산 금속염 및 이를 함유하는 금속 산화물 박막 형성용도포액
JPH02200689A (ja) 有機珪素化合物の蒸留方法
JP3030724B2 (ja) 高純度チオカーバメイトの製造方法
KR100219887B1 (ko) 아스코르브산 유도체의 제조방법
WO2023022213A1 (ja) エベロリムスの製造方法
JP3840672B2 (ja) アスコルビン酸誘導体の製造法
JPH01270511A (ja) 銀及びパラジウム溶液からのスズの除去方法

Legal Events

Date Code Title Description
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20031224

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130116

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130116

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150116

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150116

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150116

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees