JP3510786B2 - 放電プラズマを利用した薄膜形成方法 - Google Patents

放電プラズマを利用した薄膜形成方法

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JP3510786B2 JP10638798A JP10638798A JP3510786B2 JP 3510786 B2 JP3510786 B2 JP 3510786B2 JP 10638798 A JP10638798 A JP 10638798A JP 10638798 A JP10638798 A JP 10638798A JP 3510786 B2 JP3510786 B2 JP 3510786B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属化合物を含む
ガス雰囲気下において、基材を大気圧近傍下で、プラズ
マ放電することを特徴とする放電プラズマを利用した薄
膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、低圧条件下でグロー放電させ
て生じるプラズマを用いて、薄膜形成を行う方法が実用
化されているが、低圧条件下での処理は、真空容器や真
空装置が必要であり、バッチ的に処理を行う毎に、真空
容器の真空を壊して、新たに真空引きを行う必要がある
ため、工業的には大変不利であった。そのため、電子部
品等の高価な物品に対してのみにしか適用されなかっ
た。
【0003】上記のような問題を解消するために、大気
圧近傍の圧力下で放電プラズマを発生させる方法が種々
提案されている。例えば、特公平2−48626号公報
には、大気圧近傍のヘリウムとケトンの混合雰囲気下で
発生させたプラズマを用いて処理を行う方法が開示され
ており、又、特開平4−74525号公報には、アルゴ
ン並びにヘリウム及び/又はアセトンからなる大気圧近
傍の雰囲気下で発生させたプラズマにより処理を行う方
法が開示されている。
【0004】しかし、上記方法は、いずれもヘリウム又
はケトンを含有するガス雰囲気でプラズマを発生させる
方法であって、ガス雰囲気が限定されるのみならず、ヘ
リウムを用いる場合は、ヘリウム自身が高価で工業的に
不利であり、しかも、電子密度の低い放電状態しか達成
できないために、限られた表面処理にのみ利用され、無
機質の薄膜を形成することなどは不可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
な問題を解決するためになされたものであって、大気圧
近傍の圧力下で、基材の表面に効率的に金属含有薄膜を
形成する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の放電プラズマを
利用した薄膜形成方法は、大気圧近傍の圧力下、金属化
合物を含むガス雰囲気中で、対向電極間に放電電流密度
が0.2〜300mA/cm2 となるように電界を印加
することにより、放電プラズマを発生させ、金属含有薄
膜を形成することを特徴とする。
【0007】本発明の薄膜形成方法において、大気圧近
傍の圧力とは、100〜800Torrの圧力をいい、
中でも、圧力調整が容易で装置構成が容易となる700
〜780Torrの圧力範囲とすることが好ましい。
【0008】又、本発明における電極間の放電電流密度
とは、放電により電極間に流れる電流値を、放電空間に
おける電流の流れ方向と直交する方向の面積で除した値
をいい、電極として平行平板型のものを用いた場合に
は、その対向面積で上記電流値を除した値に相当する。
【0009】又、電極間にパルス電界を形成する場合に
は、パルス化された電流が流れるが、この場合にはその
パルス電流の最大値、つまりピーク−ピーク値を、上記
の面積で除した値をいう。
【0010】本発明の薄膜形成方法においては、上記対
向電極の少なくともいずれか一方の対向面に固体誘電体
を設置し、一方の電極の対向面に設置された固体誘電体
と他方の電極との間、又は、対向電極の双方の対向面に
設置された固体誘電体の間に、基材を配置して処理を行
うようにすることが好ましい。
【0011】大気圧近傍の圧力下でのグロー放電では、
下記の理由により、放電電流密度がプラズマ密度を反映
する。金属化合物を含むガス雰囲気の大気圧近傍の圧力
下においては、電極間の放電電流密度を前記した0.2
〜300mA/cm2 の範囲とすることにより、金属化
合物をプラズマ励起させ、且つ、そのプラズマをグロー
放電状態に保ち、金属元素含有薄膜の形成に至らせるこ
とが可能となる。
【0012】一般にプラズマ中の電子密度、所謂、プラ
ズマ密度は、プローブ法や電磁波法によって測定され
る。
【0013】しかし、大気圧近傍の圧力では、電極間の
放電は、元来、アーク放電に移行し易いので、探針をプ
ラズマ中に挿入するプローブ法では、探針にアーク電流
が流れてしまい、正確な測定はできない。
【0014】又、発光分光分析やレーザ吸光分析などに
よる電磁波法は、ガスの種類によって得られる情報が異
なるので分析が困難である。
【0015】一方、大気圧近傍の圧力下におけるグロー
放電においては、低ガス圧放電に比して、ガス分子密度
が大きいので、電離後、再結合までの寿命が短く、電子
の平均自由行程も短い。そのため、グロー放電空間が電
極に挟まれた空間に限定されるという特徴がある。
【0016】それ故に、プラズマ中の電子はそのまま電
極を通して電流値に変換され、電子密度(プラズマ密
度)は放電電流密度を反映した値であると考えられ、本
発明者等の実験によると、この放電電流密度により、薄
膜形成制御が可能であることが判明している。
【0017】図1に、本発明者らが用いた放電プラズマ
発生装置と、その放電電圧および放電電流の測定に用い
た測定回路図を示す。
【0018】この放電プラズマ発生装置においては、平
行平板型の一対の電極1、2間にパルス電源3からkV
オーダーのパルス化された電界を印加することにより、
電極1、2間にパルス電界を形成するとともに、その一
方の電極2の対向面には固体誘電体4を設置した。
【0019】そして、一方の電極2とアース電位間に抵
抗5を直列接続し、その抵抗5の両端をBNC端子6を
介してオシロスコープ7に接続することにより、抵抗5
の両端の電圧値を測定して、その抵抗5の抵抗値を用い
て放電電流に換算した。
【0020】又、放電電圧は、電極1の電位を高圧プロ
ーブ8により1/1000に減衰させた上で、BNC端
子9〜オシロスコープ7によってアース電位との電位差
を計測することによって測定した。
【0021】この測定回路においては、パルス電界によ
る放電電流が高速に通電・遮断を繰り返しているので、
測定に供したオシロスコープ7は、そのパルスの立ち上
がり速度に対応したナノ秒オーダーの測定が可能な高周
波オシロスコープ、具体的には、岩崎通信社製オシロス
コープDS−9122とした。
【0022】又、放電電圧の減衰に用いた高圧プローブ
8は、岩崎通信社製高圧プローブSK−301HVとし
た。
【0023】測定結果を図2に例示する。図2において
波形1が放電電圧であり、波形2が放電電流を表す波形
である。パルス電界の形成による放電電流密度は、この
波形2のピーク−ピーク値の電流換算値を電極対向面の
面積で除した値である。
【0024】さて、本発明の薄膜形成方法において、金
属化合物を含むガス雰囲気中で、且つ、大気圧近傍の圧
力下で、電極間における放電電流密度が、0.2〜30
0mA/cm2 である範囲を比較的に容易に実現するに
は、対向電極間にパルス化された電界を印加する方法を
挙げることができる。
【0025】大気圧近傍の圧力下においては、通常の交
流電界を印加する方法では、上記放電電流密度が0.1
mA/cm2 以下の低い範囲しか達成されず、金属元素
含有薄膜が形成されるような金属化合物のプラズマを維
持することは難しい。実際に大気圧近傍の圧力下では、
ヘリウム、ケトン等の特定のガス以外のガスでは、安定
してグロー放電状態が継続されず、瞬時にアーク放電に
移行してしまうことが知られている。
【0026】そこで、本発明においては、電極間にパル
ス化された電圧を印加することにより、電極間の放電を
グロー放電からアーク放電に移行する前に停止させる。
電極間にこのような周期的なパルス電界を形成すること
により、微視的にパルス的なグロー放電が繰り返し発生
し、結果としてグロー放電状態が継続することになる。
【0027】以上のように、大気圧近傍の圧力下で、し
かも、金属化合物を含有する雰囲気中では、電極間にパ
ルス化した電界を印加することにより、安定したグロー
放電状態で放電電流密度が0.2〜300mA/cm2
である放電プラズマを長期に渡って発生させ、金属元素
含有薄膜の形成に至らせることができるのである。
【0028】本発明において、金属化合物は、特に限定
されないが、グロー放電において、電子密度を大きくし
て、効率的にガスを分解させ、薄膜形成能力を高めると
いう観点から、ジメチルシラン;Si(CH3 )2 H2
、テトラメチルシラン;Si(CH3 )4 、テトラジ
メチルアミノチタン;Ti〔N(CH3 )2 〕4 などの
有機金属化合物、モノシラン;SiH4 、ジシラン;S
i2 H6 などの金属水素化合物、二塩化シラン;SiH
2 Cl2 、三塩化シラン;SiHCl3 、塩化チタン;
TiCl4 などの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシ
シラン;Si(OCH3 )4 、テトラエトキシシラン;
Si(OC2 H5 )4 、テトラエトキシチタン;Ti
(OC2 H5 )4 、テトライソプロポキシチタン;Ti
(OC3 H7)4 などの金属アルコキシドなどを用いる
ことが好ましい。安全性を考慮すると、これらの中で
も、金属水素化合物、金属アルコキシドが、常温、大気
中で、発火、爆発の危険性がないことから好ましく、腐
食性、有害ガスの発生がないことから、金属アルコキシ
ドが更に好ましい。
【0029】金属化合物を放電空間へ導入するには、金
属化合物は、常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状
態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空
間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧等
の手段により気化させて使用される。
【0030】金属化合物を加熱により気化して用いる場
合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタ
ンなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属
アルコキシドが本発明の薄膜形成方法に好適である。上
記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用され
ても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキ
サンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用されて
も構わない。上記の希釈溶媒は、グロー放電において、
分子状、原子状に分解されるため、形成される薄膜に対
する影響は無視できる。
【0031】上述のように、本発明の金属化合物として
は金属アルコキシドを用いることが好ましい。
【0032】上述のように、「金属化合物を含むガス雰
囲気」とは、金属化合物がプラズマ放電するガス雰囲気
に濃度の如何を問わず、一つの成分として含まれている
ことを意味し、ガス雰囲気が金属化合物単独で占有され
ていても構わない。
【0033】しかし、経済性、安全性の観点から、上述
の金属化合物は、単独雰囲気ではなく、以下に例示され
るような希釈ガスによって希釈されていることが好まし
い。
【0034】上記希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオ
ン、アルゴン、キセノン、窒素などが挙げられ、これら
の少なくとも1種の混合物が使用される。
【0035】更に、高密度プラズマを得るには、多くの
電子を有する化合物(分子量の大きい化合物)の存在下
で、ガスを分解することが有効であり、それは、上記希
釈ガスにも適用できる。
【0036】従って、本発明に使用する希釈ガスは、分
子量が10以上であることが好ましい。分子量が10未
満であるヘリウムのような気体を希釈剤として使用した
場合は、グロー放電が継続しても、電子密度の低い放電
状態しか達成できず、薄膜の形成には至らないか又は、
形成速度が遅すぎて不経済な結果となる。
【0037】よって、プラズマ放電を行う雰囲気ガスの
組成は、金属化合物0.005〜10体積%とアルゴン
及び/又は窒素99.995〜90体積%からなる混合
ガスであることが好ましい。金属化合物が0.005体
積%未満の場合は、高密度プラズマが得られ難く、薄膜
形成効率が悪くなり、10体積%を超えても、薄膜形成
速度に著しい向上が現れる訳ではなく、経済的に不利に
なるからである。
【0038】ここで、本発明の薄膜形成方法において、
二酸化珪素(SiO2 )薄膜を形成する場合、テトラエ
トキシシラン、窒素、酸素からなり、テトラエトキシシ
ラン0.005〜60体積%、窒素39〜98.995
体積%、酸素1〜60.995体積%からなり、前記酸
素がテトラエトキシシランの10体積%以上であるガス
雰囲気中で発生させたプラズマにより処理を行うと良好
な薄膜を得ることができ、且つ、薄膜の形成速度も良好
であった。これは、ガス雰囲気中の酸素と窒素が相乗的
に作用した結果であると考えられる。
【0039】上記の結果に、経済的な効果を鑑みると、
二酸化珪素薄膜を形成する場合のガス雰囲気として最も
好ましい組成は、テトラエトキシシラン0.005〜1
0体積%、窒素39〜98.995体積%、酸素1〜6
0.995体積%からなり、前記酸素がテトラエトキシ
シランの10体積%以上である。
【0040】前記したように窒素及び酸素を含有するガ
ス雰囲気で薄膜を形成する場合にあっては、空気の混入
を排除するために装置のラインを気密にする必要がない
ばかりか、むしろ積極的に空気を利用することもでき、
工業上大きな優位性がある。
【0041】また、本発明の薄膜形成方法において、二
酸化チタン(TiO2 )薄膜を形成する場合、雰囲気ガ
スに含有する金属化合物をチタンテトライソプロポキシ
ドとすれば良い。
【0042】この場合、希釈ガスとしてはアルゴンガス
を使用すると良い。ヘリウムガスでは電子密度が低く、
プラズマのエネルギが低くなるため、チタンテトライソ
プロポキシドの分解反応が促進されず、薄膜表面に未反
応の原料が液化する場合がある。一方、窒素ガスでは逆
に電子密度が高く、チタンテトライソプロポキシドの分
解反応が激しくなり、電極間でTiO2 粒子が生成し、
成膜表面に白化部分ができることがある。
【0043】アルゴンガスの濃度は、チタンテトライソ
プロポキシドを加えた全量に対し、95〜99.995
体積%の割合で添加するのがよく、特に97〜99.9
5体積%の割合がよい。
【0044】アルゴンガス濃度が高すぎる場合は薄膜の
生成速度が遅く、放電空間内のチタンテトライソプロポ
キシド濃度が低いため、プラズマ放電が安定しない。濃
度が低すぎる場合は、放電空間内のチタンテトライソプ
ロポキシド濃度が高いため、工業的に不利であるととも
に、薄膜表面に未反応の原料が液化する場合がある。
【0045】また、チタンテトライソプロポキシドは、
薄膜形成に利用される以外に液化して表面に付着するお
それがあるため、雰囲気中に適度に水分を存在させ、分
解反応を促進させるとよい。放電プラズマ空間内の水分
濃度は14〜500ppm、特に30〜300ppmが
好ましい。水分濃度が低すぎると、分解反応が促進され
ず、成膜表面に液化部分が残るため、耐久性試験により
屈折率が変化してしまう。高すぎると、チタンテトライ
ソプロポキシドの分解反応が過剰に進み、成膜表面に白
化部分(TiO2 )が析出し、膜が濁り、透過率が低下
する場合がある。
【0046】本発明の薄膜形成方法において、放電プラ
ズマを発生させるために使用する電極の材質としては、
銅、アルミニウム等の金属単体、ステンレス、真鍮等の
合金、あるいは金属間化合物等を挙げることができる。
【0047】又、上記電極は電界集中によるアーク放電
の発生を避けるために、電極間の距離がほぼ一定となる
構造であることが好ましく、この条件を満たす電極構造
としては、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板
型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構造等を挙げること
ができる。
【0048】又、本発明においては、上記電極の対向面
の一方または双方に固体誘電体を設置することが好まし
い。又、固定誘電体によって覆われずに電極どうしが直
接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じや
すくなるため、固体誘電体はこれを設置する側の電極に
密着し、且つ、接する電極の対向面を完全に覆うように
する。
【0049】上記固体誘電体の形状は、シート状でもフ
ィルム状でもよいが、厚みが0.5〜5mm程度である
ことが好ましく、厚すぎると放電プラズマを発生するの
に高電圧を要し、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起
こりアーク放電が発生する。
【0050】この固体誘電体の材質は、ポリテトラフル
オロエチレンやポリエチレンテレフタレート等のプラス
チック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸
化ジルコニウム、二酸化チタニウム等の金属酸化物、チ
タン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0051】ただし、上記固体誘電体は、比誘電率が2
以上(25℃環境下、以下同)であることが好ましい。
このような誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ガラス、金属酸化膜等を挙げることができる。
【0052】又、放電電流密度が0.2〜300mAで
ある放電プラズマを安定して発生させるためには、比誘
電率が10以上の固定誘電体を用いると有利である。
【0053】比誘電率の上限は特に限定されるものでは
ないが、現実の材料では18,500程度のものが知ら
れている。比誘電率が10以上の固体誘電体としては、
酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニウム50
〜95重量%で混合された金属酸化物被膜、又は、酸化
ジルコニウムを含有する金属酸化物被膜からなり、その
被膜の厚みが10〜1000μmであるものを用いるこ
とが好ましい。
【0054】本発明における一対の電極間の距離は、固
体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマの利用目
的等を考慮して決定されるが、1〜50mmとすること
が好ましい。1mm未満ではその間に発生するプラズマ
を表面処理等に利用する際の基材の配置のための空隙を
設けるのに不充分であり、50mmを越えると均一な放
電プラズマを発生することが困難となる。
【0055】本発明において、電極間にパルス電圧を印
加する場合、そのパルス波形は特に限定されるものでは
ないが、図3(A),(B)に例示するようなインパル
ス型や、(C)に例示するような方形波型、(D)に例
示するような変調型等を用いることができる。この図3
には印加電圧が正負の繰り返しであるものを例示した
が、正、又は、負のいずれかの極性のみのパルス電圧、
所謂、片波状のパルス電圧を印加してもよい。
【0056】本発明において、電極間に印加するパルス
電圧は、そのパルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時
間が短い程、プラズマ発生の際のガスの電離が、効率よ
く行われる。
【0057】特に、電極間に印加するパルス電圧の立ち
上がりは、100μs以下とすることが好ましい。10
0μsをこえると、放電状態がアーク放電に移行し易
く、不安定なものとなる。また、このような高速立上が
り時間のパルス電界によって電子密度の高い放電状態を
実現する効果がある。
【0058】パルス電圧の立ち下がり時間は特に規定さ
れないが、立ち上がり時間と同程度に高速であることが
好ましく、より好ましくは100μs以下である。
【0059】また、立ち上がり/立ち下がり時間の上限
は特に限定しないが、電源装置等を勘案すると40μs
以上が現実的である。
【0060】尚、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧
変化の向きが連続して正である時間をいい、立ち下がり
時間とは、電圧変化の向きが連続して負である時間を指
すものとする。
【0061】又、電極間に形成するパルス電界は、その
パルス波形、立ち上がり及び立ち下がり時間、及び、周
波数を適宜に変調されていてもよい。
【0062】尚、パルス電界は、周波数が高く、パルス
幅が短い方が、高速連続薄膜形成には適している。
【0063】本発明において電極間に印加するパルス電
界の周波数は、0.5kHz〜100kHzの範囲とす
ることが好ましい。0.5kHz未満であると、薄膜形
成速度が遅すぎて現実的ではなく、100kHzを超え
ると、アーク放電が発生し易くなる。パルス電界の周波
数は、より好ましくは1kHzである。
【0064】又、パルス電界におけるパルス継続時間
は、1μs〜1000μsであることが好ましく、より
好ましくは3μs〜200μsである。1μs未満であ
ると放電が不安定なものとなり、1000μsを越える
とアーク放電に移行し易くなる。
【0065】ここで、パルス継続時間とは、図4に例示
するように、ON・OFFが繰り返されるパルス電界に
おける、1つのパルス波形の連続持続時間を言い、図4
(a)の波形ではパルス継続時間=パルスデューティ時
間であるが、図4(b)の波形では複数のパルスを含ん
だ、オンが継続する時間を言う。
【0066】更に、本発明において、パルス電界の強さ
は、放電プラズマの利用目的等によって適宜に選択され
るが、1〜100kV/cmとすることが望ましい。
【0067】1kV/cm未満であると、薄膜形成速度
が遅くなり、100kVを超えると、アーク放電が発生
するために好ましくない。
【0068】以上のような各条件を満足するパルス電界
を形成するための電源回路の構成例を、図5にブロック
図で示し、又、図6にはその動作の原理を等価的な回路
図によって示す。図6においてSW1〜4は、図5にお
けるスイッチングインバータ回路内でスイッチとして機
能する半導体素子であり、これらの各素子として、50
0ns以下のターンオン時間及びターンオフ時間を有す
る半導体素子を用いることにより、電界強度1〜100
kV/cm、且つ、パルスの立ち上がり及び立ち下がり
時間がともに40ns〜100μsの高電圧、且つ、高
速のパルス電界の形成を実現することができる。
【0069】次に、図6を参照しつつその動作原理を簡
単に説明する。+Eは正極性の直流電圧供給部、−Eは
負極性の直流電圧供給部である。SW1〜4は、上記し
た高速半導体素子からなるスイッチング素子である。D
1〜4はダイオードであり、I1 〜I4 は電荷の移動方
向を示している。
【0070】まず、SW1をONにすると、電荷がI1
で示す方向に移動して、放電空間の両端に置かれた一対
の電極の一方側(正極性の負荷)を充電する。
【0071】次に、SW1をOFFにしてから、SW2
を瞬時にONにすることにより、正極性の負荷に充電さ
れた電荷がSW2とD4を通ってI3 の方向に移動す
る。
【0072】次いで、SW2をOFFにした後、SW3
を瞬時にONにすると、電荷がI2の方向に移動して他
方側の電極(負極性の負荷)を充電する。
【0073】更に、SW3をOFFにしてから、SW4
を瞬時にONにすることにより、負極性の負荷に充電さ
れた電荷がSW4とD2を通ってI4 の方向に移動す
る。
【0074】以上の動作を繰り返すことにより、図7に
示した波形の出力パルスを得ることができる。〔表1〕
にこの動作表を示す。この〔表1〕に示した数値は、図
7の波形に付した数値と対応させてある。
【0075】
【表1】
【0076】以上の回路の利点は、負荷のインピーダン
スが高い場合であっても、充電されている電荷を、SW
2とD4、又は、SW4とD2の動作により確実に放電
することができる点、及び、高速ターンオンのスイッチ
ング素子であるSW1,SW3を使って高速に充電を行
うことができる点にあり、これにより、図4に示したよ
うな立ち上がり時間及び立ち下がり時間の極めて短いパ
ルス化された電界を、負荷に対して、つまり一対の電極
間に印加することが可能となる。
【0077】尚、本発明の薄膜形成方法において用いら
れるパルス電界は、直流電界を重畳することを妨げな
い。
【0078】本発明の薄膜形成方法は、以上説明した本
発明に固有の放電プラズマの発生方法により対向電極間
に発生させたプラズマを利用するものであり、対向電極
間、又は、一方の電極の対向面に固体誘電体を設置する
場合には、その固体誘電体と他方の電極の間、もしくは
双方の電極の対向面に固体誘電体を設置する場合には、
その固体誘電体の間に、処理すべき基材を配置する。
【0079】上記基材の材質としては、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレ
ン、アクリル樹脂等のプラスチック、三酢酸セルローズ
(TAC)、ガラス、セラミック、金属等が挙げられ
る。
【0080】基材の形状としては、板状、フィルム状、
シート状のもの等が挙げられるが、特にこれらに限定さ
れるものではなく、本発明の薄膜形成方法によれば、様
々な形状の基材の表面上に容易に薄膜を形成することが
できる。
【0081】本発明の薄膜形成方法においては、放電プ
ラズマ発生空間に存在する気体は、金属化合物以外に、
公知の任意の処理用ガスを併用して、複合機能膜を形成
してもよい。
【0082】本発明の方法において、ガス雰囲気に混合
する各種のガスは、プラズマ発生空間に均一に供給され
ることが好ましい。
【0083】例えば、雰囲気ガスに希釈ガスとの混合気
体を用いて、薄膜形成を行う場合には、不活性ガスは金
属化合物ガスに比べて、一般に軽いので、供給時に不均
一な混合状態となり易い。このことは特に面積の大きな
基材の上に、薄膜形成をする場合には、これを避けるよ
うに工夫することが大切である。
【0084】雰囲気ガスの混合状態を均一にするために
は、例えば、対向電極の内の上部電極を多孔構造を持つ
ものとし、その上部電極に対して、ガス導入管を連結し
て処理用ガスを供給し、この処理用ガスを上部電極の多
数の孔を介して電極間に置かれた基材上方からプラズマ
発生空間に導く。一方、希釈ガスは、これとは別の導入
管並びに吐出口を用いて、プラズマ発生空間に対してそ
の周囲から導く、といった対策を挙げることができる。
【0085】尚、気体が均一に供給できるものであれ
ば、このような対策に限定されず、気体を攪拌したり、
高速で吹きつける等の手段を講じればよい。
【0086】本発明に使用される装置は、通常、対向電
極が容器中に収容され、その容器内部には、雰囲気ガス
が満たされている。容器の材質としては、特に限定され
るものではなく、樹脂、ガラス等が好適に使用され、容
器が電極と絶縁が取れた構造になっていれば、ステンレ
ス、アルミニウム等の金属を用いることもできる。
【0087】本発明の方法においては、薄膜形成処理す
べき基材を加熱したり冷却してもよいが、室温でも充分
に処理できる。
【0088】尚、本発明の方法を、高分子材料などの低
融点材料の薄膜形成に適用する場合には、放電電流密度
の値は、固体誘電体の厚さ、固体誘電体の誘電率、電極
間に形成する電界強度、電極間距離、処理目的等の諸条
件により決定されるが、1〜200mA/cm2 とする
ことが好ましい。
【0089】放電電流密度が1mA/cm2 未満では、
放電が不安定になり易くて、均一なグロー放電が生じに
くく、薄膜中に原料ガスの未分解成分が残存することが
ある。又、放電電流密度が200mA/cm2 を越える
と、処理すべき基材が高密度のプラズマに曝されて、高
温となり、熱変質する場合がある。
【0090】そのため、200mA/cm2 を越える放
電電流密度で処理する場合には、5秒以下の短時間の処
理を行うか、基材を冷却することが好ましい。
【0091】但し、基材がガラス、シリコンなどの無機
材料の場合は、冷却の必要はなく、逆に、基板を加熱し
て、薄膜形成が促進される場合がある。
【0092】
【発明の実施の形態】本発明の薄膜形成方法を更に詳し
く説明するために、以下、実施例、比較例をもって説明
する。 (1)処理装置 使用した放電プラズマ処理装置は、図8に示されるよう
に、容量10リッターのステンレス製の容器82からな
り、直流電源81−1、交流電源81−2、上部電極
4、下部電極85、固体誘電体86(上部電極にも装着
してあるが、図8には記載されていない)、基材87、
ガス導入管88、希釈ガス導入管89、ガス排気口81
0、排気口811から構成されている。 (2)二酸化珪素薄膜の形成<実施例1−1> 上記処理装置において、下部電極85は直径140mm
で、表面を比誘電率16の二酸化ジルコニウム(以下、
ZrO2 と記す)誘電体86で被覆し、その上に処理す
る基材87として、ポリエチレンテレフタレート(以
下、PETと記す)を配置した。
【0093】上部電極84は、直径80mmで、直径1
mmの穴が5mm間隔で配設されており、表面は比誘電
率16のZrO2 誘電体86が被覆してあり、PET基
材表面から2mm上方にを配置した。
【0094】油回転ポンプ(図8に記載されていない)
で、容器内が0.1Torrになるまで、ガス排出口8
11から排気した後、希釈ガス導入管89を通じてアル
ゴン(Ar)ガスを導入し、容器の圧力を760Tor
rとした。
【0095】しかる後に、上部電極84に接続した(反
応)ガス導入管88から気化したテトラエトキシシラン
(以下、TEOSと記す)と酸素の混合気体を導入し、
該混合気体導入後の容器内のガス圧力比(体積比)が、
TEOS:O2 :Ar=1:7:92となるように調整
した。
【0096】上記混合気体を1分間導入した後に、上部
電極84と下部電極85の間に、波高値16kV、周波
数8kHzのパルス電界を印加し、放電プラズマ発生空
間83に3分間放電して二酸化珪素薄膜をPET表面に
形成した。この時の放電電流密度は50mA/cm2
あった。
【0097】成膜後、XPSによって表面状態を測定し
た所、二酸化珪素(SiO2 )に起因するピークが得ら
れ、酸素と珪素の元素比は、O2 /Si=2.2であっ
た。 <実施例1−2>基板をソーダガラス板(屈折率1.5
2)とした以外は、実施例1−1と同様の条件で、酸化
シリコンの薄膜をソーダガラス板に成膜した。
【0098】得られた二酸化珪素薄膜は透明で、これを
エリプソメータ(溝尻光学工業所製、DVA−36V
W)を用いて、屈折率を測定した所、5点平均で、1.
44であった。尚、文献値による石英の屈折率は1.4
5である。 <実施例1−3>下記の条件以外は、実施例1−1と同
様にして、二酸化チタンの薄膜を成膜した。 条件; 基材;実施例2と同じソーダガラス板(屈折率1.5
2) 金属含有反応ガス;テトライソプロポキシチタンを20
重量%含む2−イソプロピルアルコール溶液(以後、希
釈反応ガスと呼ぶ) 混合気体導入後の装置内のガス圧力(体積比)比; 希釈反応ガス:酸素:Ar=1:2:97 実施例1−1のように、パルス電界を印加して、二酸化
チタンの薄膜を成膜する時の放電電流密度を測定した
所、60mA/cm2 であった。
【0099】二酸化チタン薄膜の成膜後、XPSによっ
て表面状態を測定した所、二酸化チタン(TiO2 )に
起因するピークが得られ、酸素とチタンの元素比は、O
2 /Ti=2.3であった。
【0100】又、上記のプラズマ放電処理で得られたガ
ラス基板上の二酸化チタン透明膜の屈折率は、5点平均
で2.14であった。尚、文献値による二酸化チタンの
屈折率は、2.15である。 <比較例1−1>下記の条件以外は、実施例1−1と同
様にして、放電プラズマを利用した薄膜形成方法を試み
た。 条件; 基材;実施例1−2と同じソーダガラス板(屈折率1.
52) 希釈ガス;ヘリウム(He) 金属含有反応ガス;気化したテトラエトキシシラン(T
EOSと記す)と酸素(O2 )との混合気体 混合気体導入後の容器内のガス圧力(体積)比;TEO
S:O2 :He=1:7:92 放電プラズマ条件;1
5kHz、150Wの正弦波を上下電極に印加結果は、
放電は生したが、TEOSは分解には至らず、ガラス基
板の上で、液化した。ガラス基板表面には、薄膜状の干
渉縞が観察されたが、エタノールで洗浄した所、容易に
溶解して、薄膜状の干渉縞が消失した。
【0101】従って、ガラス基板表面には、TEOSの
低分子量体が生成していたと推定される。
【0102】尚、実施例1−1,1−2で得られた薄膜
は、密着性が高く、エタノールの洗浄で、流失すること
はなかった。
【0103】以上の実施例1−1,1−2、及び、比較
例1−1から、本発明の薄膜形成方法によると、金属酸
化物薄膜等の金属含有薄膜を高分子フィルムやガラス基
板の上に成膜させることができ、得られた薄膜は分析結
果からも、理論値に近い良好な薄膜であることが分か
る。
【0104】次に、金属化合物がテトラエトキシシラン
のように、有機成分を多量に含む場合、希釈ガスの他に
酸素ガスを混入させると、炭素の含有率が少ない緻密な
二酸化珪素薄膜が得られることを、実施例1−4〜1−
7、参考例1−1、1−2で示す。 <実施例1−4>実施例1−1と同様な処理装置を用
い、下部電極85は直径140mmで、表面を比誘電率
16の二酸化ジルコニウム(以下、ZrO2 と記す)誘
電体86で被覆し、その上に処理する基材87として、
ソーダガラスを配置した。
【0105】上部電極84も、直径140mmで、Zr
O2 誘電体86が被覆してあり、ソーダガラス基材表面
から2mm上方にを配置した。
【0106】油回転ポンプ(図8に記載されていない)
で、容器内が0.1Torrになるまで、ガス排出口8
11から排気した後、希釈ガス導入管89を通じて窒素
ガス(N2 )ガスを導入し、容器内の圧力を760To
rrとした。
【0107】しかる後に、上部電極84に接続した(反
応)ガス導入管88から気化したテトラエトキシシラン
(以下、TEOSと記す)と酸素の混合気体を導入し、
該混合気体導入後の容器内のガス圧力比が、TEOS:
O2 :N2 =1:20:79となるように調整した。
【0108】上記混合気体を導入した後に、上部電極8
4と下部電極85の間に、波高値16kV、周波数8k
Hzのパルス電界を印加し、放電プラズマ発生空間83
に1分間放電して二酸化珪素薄膜をソーダガラス(屈折
率1.52)表面に形成した。この時の放電電流密度は
50mA/cm2 であった。
【0109】成膜後、XPSによって表面状態を測定し
た所、二酸化珪素(SiO2 )に起因するピークが得ら
れ、酸素と珪素の元素比は、O2 /Si=2.2で、炭
素は4%しか残存していなかった。
【0110】更に、得られた二酸化珪素薄膜をエリプソ
メータ(溝尻光学工業所製、DVA−36VW)を用い
て、屈折率を測定した所、5点平均で、1.455であ
った。尚、文献値による石英の屈折率は1.45であ
る。
【0111】又、40℃、95%RHの高温高湿室に1
000時間放置して、屈折率の変化を測定する高温高湿
耐久性試験を行った結果、△n≦0.034であった。 <実施例1−5>導入する混合気体の組成を、圧力比
で、TEOS:O2 :N2 =1:1:98とした以外
は、実施例1−4と同様にして、二酸化珪素薄膜を形成
した。
【0112】得られた二酸化珪素薄膜は、エリプソメー
タによる屈折率の測定、及び、1000時間高温高湿耐
久性試験を行い、結果を表2に纏めた。 <実施例1−6>導入する混合気体の組成を、圧力比
で、TEOS:O2 :N2 =55:5:40とした以外
は、実施例1−4と同様にして、二酸化珪素薄膜を形成
した。
【0113】得られた二酸化珪素薄膜は、エリプソメー
タによる屈折率の測定、及び、1000時間高温高湿耐
久性試験を行い、結果を表2に纏めた。 <実施例1−7>導入する混合気体の組成を、圧力(体
積)比で、TEOS:O2 :N2 =3:57:40とし
た以外は、実施例1−4と同様にして、二酸化珪素薄膜
を形成した。
【0114】得られた二酸化珪素薄膜は、エリプソメー
タによる屈折率の測定、及び、1000時間高温高湿耐
久性試験を行い、結果を表2に纏めた。 <参考例1−1>導入する混合気体の組成を、酸素を使
用せず、圧力(体積)比で、TEOS:N2 =3:99
とした以外は、実施例1−4と同様にして、二酸化珪素
薄膜を形成した。
【0115】得られた二酸化珪素薄膜は、エリプソメー
タによる屈折率の測定、及び、1000時間高温高湿耐
久性試験を行い、結果を表2に纏めた。 <参考例1−2>導入する混合気体の組成を、酸素を使
用せず、圧力(体積)比で、TEOS:N2 =60:4
0とした以外は、実施例1−4と同様にして、二酸化珪
素薄膜を形成した。
【0116】得られた二酸化珪素薄膜は、エリプソメー
タによる屈折率の測定、及び、1000時間高温高湿耐
久性試験を行い、結果を表2に纏めた。
【0117】
【表2】
【0118】以上、表2に示される様に、実施例1−4
〜1−7、及び、参考例1−1、1−2から、本発明の
薄膜形成方法に於いて、導入する混合気体に酸素を、ガ
ス圧力(体積)比で、TEOSの10分の1以上にする
と、二酸化珪素薄膜の組成が理論値(酸素/珪素のモル
比が2)に極めて近く、炭素含有量が微量で、屈折率も
純粋な二酸化珪素1.46を示し、1000時間高温高
湿耐久性も充分あり、緻密で良質な二酸化珪素薄膜であ
ることが理解できる。
【0119】又、実施例1−4〜1−7で得られた二酸
化珪素薄膜を用いて、JIS K5400(クロスカッ
トテープテスト)を行うと、全て100/100とな
り、基材への密着性が良く、剥離することがなかった。 (3)二酸化チタン(TiO2 )の形成 <実施例2−1>上記(1)に記載した処理装置(図
8)において、下部電極85は直径140mmで、表面
を比誘電率16の二酸化ジルコニウム(以下、ZrO2
と記す)誘電体86で被覆し、その上に処理する基材8
7として、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET
と記す)を配置した。
【0120】上部電極84は、直径80mmで、直径1
mmの穴が5mm間隔で配設されており、表面は比誘電
率16のZrO2 誘電体86が被覆してあり、PET基
材表面から2mm上方にを配置した。
【0121】油回転ポンプ(図8に記載されていない)
で容器内が0.1Torrになるまで排気した後、容器
の内圧が760Torrになるまでアルゴン(Ar)ガ
スを導入管89を通じて容器内に導入し、放電空間内を
希釈ガス置換を行うことで水分濃度を260ppmに調
整した。
【0122】しかる後に、上部電極84に接続した(反
応)ガス導入管88から気化したチタンテトライソプロ
ポキシドを導入し、その混合気体導入後の容器内のガス
圧力比(体積比)が、チタンテトライソプロポキシド:
アルゴン=0.1:99.9となるように調整した。
【0123】上記混合気体を1分間導入した後に、上部
電極84と下部電極85の間に、波高値4kV、周波数
8kHzのパルス電界を印加し、放電プラズマ発生空間
83に3分間放電して二酸化チタン薄膜をPET表面に
形成した。
【0124】成膜後、XPSによって表面状態を測定し
た結果、酸素とTiの元素比は、O/Ti=2.2であ
った。
【0125】上記のプラズマ放電処理で得られた二酸化
チタン薄膜は透明(目視観察)で、これを、エリプソメ
ータ(溝尻光学工業所製、DVA−36VW)を用い
て、屈折率を測定した所、5点平均で、2.14であっ
た。尚、文献値による二酸化チタンの屈折率は2.15
である。
【0126】又、40℃、95%RHの高温高湿室に1
000時間放置して、屈折率の変化を測定する高温高湿
耐久性試験を行った結果、△n≦0.02であった。 <実施例2−2>放電プラズマ空間内の水分濃度を20
ppmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二酸
化チタンの薄膜を形成した。
【0127】得られた二酸化チタン薄膜は透明(目視観
察)で、これをエリプソメータ(溝尻光学工業所製、D
VA−36VW)を用いて、屈折率を測定した所、5点
平均で、2.15であった。又、40℃、95%RHの
高温高湿室に1000時間放置して、屈折率の変化を測
定する高温高湿耐久性試験を行った結果、△n≦0.0
3であった。 <実施例2−3>放電プラズマ空間内の水分濃度;22
0ppmとし、又、混合気体導入後の容器内のガス圧力
比をチタンテトライソプロポキシド:アルゴン=4.
5:95.5とした以外は、実施例2−1と同様にし
て、二酸化チタンの薄膜を形成した。
【0128】得られた二酸化チタン薄膜は透明(目視観
察)で、これをエリプソメータ(溝尻光学工業所製、D
VA−36VW)を用いて、屈折率を測定した所、5点
平均で、2.14であった。又、40℃、95%RHの
高温高湿室に1000時間放置して、屈折率の変化を測
定する高温高湿耐久性試験を行った結果、△n≦0.0
3であった。 <比較例2−1>放電プラズマ空間内の水分濃度を8p
pmとした以外は、実施例2−1と同様にして、二酸化
チタンの薄膜を形成した。
【0129】この条件では、チタンテトライソプロポキ
シドの分解反応が促進されず、得られた二酸化チタン薄
膜の表面に液化部分が観察された。
【0130】又、得られた二酸化チタン薄膜をエリプソ
メータ(溝尻光学工業所製、DVA−36VW)を用い
て屈折率を測定した所、5点平均で、1.70であっ
た。更に、40℃、95%RHの高温高湿室に1000
時間放置して、屈折率の変化を測定する高温高湿耐久性
試験を行った結果、△n≦0.12であった。 <比較例2−2>放電プラズマ空間内の水分濃度を10
00ppmとした以外は、実施例2−1と同様にして、
二酸化チタンの薄膜を形成した。
【0131】この条件では、チタンテトライソプロポキ
シドの分解反応が過剰に進み、得られた二酸化チタン薄
膜の表面に白化部分(TiO2 )が観察された。
【0132】又、得られた二酸化チタン薄膜をエリプソ
メータ(溝尻光学工業所製、DVA−36VW)を用い
て屈折率の測定を試みたが、測定は不可能であった。 <比較例2−3>混合気体導入後の容器内のガス圧力比
をチタンテトライソプロポキシド:アルゴン=0.00
01:99.9999とした以外は、実施例2−1と同
様にして、二酸化チタンの薄膜を形成した。
【0133】この条件で得られた二酸化チタン薄膜は透
明であったが、エリプソメータ(溝尻光学工業所製、D
VA−36VW)による屈折率(5点平均)が1.88
と、純粋な二酸化チタンの屈折率(2.15)からは大
きくかけ離れた値を示した。尚、40℃、95%RHの
高温高湿室に1000時間放置して、屈折率の変化を測
定する高温高湿耐久性試験を行った結果、△n≦0.0
3であった。
【0134】以上の実施例2−1〜2−3、及び、比較
例2−1〜2−3から、本発明の薄膜形成方法におい
て、プラズマ放電を行うガス雰囲気を、チタンテトライ
ソプロポキシド0.005〜5体積%、アルゴンガス9
5〜99.995体積%からなり、放電プラズマ空間内
の水分濃度が14〜500ppmとすると、二酸化チタ
ン薄膜の組成が理論値に極めて近くなるとともに、屈折
率も純粋な二酸化チタン(2.15)に極めて近い値を
示し、更に1000時間高温高湿耐久性も十分にある、
良質な二酸化チタン薄膜が得られることが判る。
【0135】尚、実施例2−1〜2−3で得られた二酸
化チタン薄膜を用いて、JIS K5400(クロスカ
ットテープテスト)を行った所、全て100/100と
なり、基材への密着性が良く、剥離することがなかっ
た。
【0136】
【発明の効果】本発明の薄膜形成方法は、上述のように
構成されているので、従来では、低圧力下で行われてい
た無機質の薄膜の形成が、大気圧近傍でもできるように
なり、更に、高分子材料などの低融点基板の上にも、金
属含有薄膜を短時間に形成できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いた放電プラズマ発生装置とその放
電電圧及び放電電流の測定に用いた測定回路図の一例を
示す説明図である。
【図2】図1の装置により得られた放電電圧(波形1)
と放電電流(波形2)の測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明において一対の電極間に印加するパルス
電圧の波形の例を示す説明図である。
【図4】本発明でいうパルス電界継続時間の説明図であ
る。
【図5】本発明を適用した装置において用いるのに適し
た電源回路の構成例を示すブロック図である。
【図6】等価的な回路図で示す図5の回路の動作原理の
説明図である。
【図7】図6に示された動作原理により得ることのでき
るパルス電圧波形の説明図である。
【図8】本発明の各実施例で用いた放電プラズマ発生装
置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1、2 電極 3 パルス電源 4 固体誘電体 5 抵抗 6、9 BNC端子 7 オシロスコープ 8 高圧プローブ 81−1 直流電源 81−2 交流電源(高電圧パルス電源) 82 ステンレス製容器 83 放電プラズマ発生空間 84 上部電極 85 下部電極 86 固体誘電体 87 基材 88 ガス導入管 89 希釈ガス導入管 810 ガス排出口 811 排気口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日野 守 大阪府三島郡島本町百山2−1 積水化 学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−166355(JP,A) 特開 平3−236475(JP,A) 特開 平9−49083(JP,A) 特開 平9−59777(JP,A) 特開 平6−69196(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 H01L 21/205 H05H 1/46

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】大気圧近傍の圧力下、ガス雰囲気中で、対
    向電極間に放電電流密度が0.2〜300mA/cm 2
    となるように電界を印加することにより、放電プラズマ
    を発生させ、二酸化チタン薄膜を形成する薄膜形成方法
    において、 上記ガス雰囲気が、チタンテトライソプロポキシド、ア
    ルゴンガスからなり、 放電プラズマ空間内に、14〜500ppmの濃度の水
    分が存在することを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 【請求項2】上記ガス雰囲気が、チタンテトライソプロ
    ポキシド0.005〜5体積%、アルゴンガス95〜9
    9.995体積%であることを特徴とする請求項1に記
    載の薄膜形成方法。
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