JP3510606B2 - 高低圧一体型タービンロータ及びその製造方法 - Google Patents

高低圧一体型タービンロータ及びその製造方法

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JP3510606B2 JP2001147914A JP2001147914A JP3510606B2 JP 3510606 B2 JP3510606 B2 JP 3510606B2 JP 2001147914 A JP2001147914 A JP 2001147914A JP 2001147914 A JP2001147914 A JP 2001147914A JP 3510606 B2 JP3510606 B2 JP 3510606B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタービンロータおよ
びその製造方法に関するものであり、特に火力発電等で
使用する蒸気タービンに使用される、高低圧一体型のタ
ービンロータおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、火力発電用蒸気タービン等のター
ビンロータの一つとして、高圧部から低圧部まで一体化
された素材を使用した高低圧一体型タービンロータが知
られている。蒸気タービンは蒸気の入口側では高温高圧
の蒸気に曝されるが、末端部に近づくにつれて蒸気の温
度と圧力が低下し、体積が大幅に膨張した蒸気に曝され
る。このため高圧部ではタービンブレードの長さも短
く、タービンロータにかかる応力も比較的小さいのでタ
ービンロータの直径も小さいものでよい。一方、低圧部
では多量の蒸気の力を受け止めるためタービンブレード
の長さを長くして、タービンロータの直径を大きくせね
ばならず、タービンロータにかかる応力は大きなものと
なる。従って、高低圧一体型のタービンロータに要求さ
れる特性としては、高圧部では高温強度、特に優れたク
リープ強度が要求され、一方、低圧部では常温における
機械的強度および優れた靱性が求められる。
【0003】従来、高低圧一体型のタービンロータに用
いられる耐熱鋼の例としては、低合金系のCrMoV鋼
や高Cr系の12Cr鋼(特開昭60−165359、
特開昭62−103345参照)が専ら使用されてき
た。そしてCrMoV系の鋼種を使用してタービンロー
タ素材に加工し、タービンロータの高圧部と低圧部に分
けて異なった条件で熱処理を施し、クリープ特性と靱性
を兼ね備えたタービンロータを得る方法が提案されてい
る。例えば特開平5−195068公報には、前記ター
ビンロータ素材の高圧部を低圧部よりも高温に加熱して
焼き入れをした後、タービンロータ素材全体を所定の温
度で焼き戻すことにより、優れた高温クリープ強度と靱
性を兼ね備えた高低圧一体型のタービンロータを得る方
法が開示されている。
【0004】また、特開平8−176671公報にはタ
ービンロータ素材を1000〜1150℃で焼準したの
ちパーライト変態させ、さらに920〜950℃で焼準
したのち、高圧部と低圧部を異なる温度で焼入れし、そ
の後タービンロータ素材全体を焼戻しして優れた高温ク
リープ特性と靱性を兼ね備えた高低圧一体型のタービン
ロータを得る方法が開示されている。
【0005】しかしながら、近年エネルギー効率の一層
の向上が望まれるようになり、タービンに導入される蒸
気温度はますます高くなる傾向にあり、これに伴って発
生する蒸気の量も増大する傾向にあるので、タービンロ
ータに要求される特性も一層厳しいものとなってきた。
このため、従来の低合金鋼製タービンロータでは、その
高圧部における高温機械特性、特にクリープ強度の点で
不十分であり、より高い蒸気温度での使用に耐える材料
を開発する必要がでてきた。
【0006】また、タービンロータの低圧部において
は、従来より大きな応力に耐えかつ靱性に富んだ材料が
要求されるようになってきた。高級材料の12Cr鋼を
用いればこれらの材質的な問題は解決できるが、素材の
製造に長期間を要するため、急なニーズに応えることが
できず、また、高コスト化を招くという欠点がある。
【0007】そこで、低コストかつ高性能の高低圧一体
型タービンを短納期に作り上げるために、安価な低合金
鋼を用い、かつ高圧部における高温機械特性、特にクリ
ープ強度に優れた高低圧一体型タービンロータの開発が
望まれている。しかしながら、上記の特性を備えた低合
金鋼製の高低圧一体型タービンロータは得られていなか
った。
【0008】従来、低合金鋼であるCrMoV鋼は、約
950℃の温度から焼入れして使用されてきた。焼入れ
温度を高めると軟らかい初析フェライト相の析出が抑え
られ、強化元素の固溶も促進されて材料強度は高まる
が、新たにクリープ脆化を起こすという問題が発生する
ので、焼入れ温度を高めることができなかった。また、
各種合金元素の添加や熱処理方法の工夫により脆化を抑
制する試みもなされてきたがまだ満足いくものは得られ
ていない。
【0009】また、焼入れ温度を高めると結晶粒の粗大
化が進み、材料の靱性が劣化するという問題があり、こ
の点からも焼入れ温度を1,000℃以上に高めること
ができなかった。このようにCrMoV鋼の高温強度と
脆性は、製造上は相反する熱処理条件によらねばならな
いという難しさを含んでいる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、材料
成分を最適化するとともに高圧部の焼入れ温度を高め、
平滑クリープ試験において従来の高低圧一体型ロータ材
の高圧部より高いクリープ破断特性を備え、しかもクリ
ープ脆化を起こしにくく、かつ高圧部、低圧部ともに従
来材と同等以上の高い靱性を有する材料を提供し、この
新規な耐熱鋼で構成されたタービンロータを提供しよう
とするものである。
【0011】すでに本発明者らは、材料成分の最適化と
高圧部の焼入れ温度上昇を主な改善点とすることで、平
滑クリープ試験において従来の高低圧一体型ロータ材の
高圧部より高いクリープ破断特性を備え、しかもクリー
プ脆化を起こしにくく、かつ高圧部、低圧部ともに従来
材と同等以上の高い靱性を有する低合金耐熱鋼を提案し
ている。(特願2000−031002)
【0012】先の提案では、高温特性、特にクリープ脆
化特性には不純物の影響が大きいことを突き止め、所定
の合金配合をするのみならず、燐、硫黄、銅、アルミニ
ウム、砒素、錫、アンチモンといった有害な微量不純物
元素を極力低く抑えることで、980℃以上の高温度か
らの焼入れを可能にし、高い靱性を有し、高温特性に優
れた、特にクリープ脆化を起こしにくい低合金耐熱鋼と
その製造方法並びにその低合金耐熱鋼からなるタービン
ロータを提案した。
【0013】また、本発明者らは、主として高圧タービ
ンロータ材として用いることを目的とした低合金耐熱鋼
において、クリープ脆化と結晶粒径とに密接な関係が有
ることを付き止め、結晶粒径を適切な範囲内に制御する
ことでクリープ脆化を回避できることを示した。(特願
2001−61842号)
【0014】ところで、結晶粒を適切な範囲内の粒径に
微細化するためには、強い鍛造や急速加熱処理を施した
り、あるいは熱処理を繰り返し行う等の手段を講じるの
が一般的である。比較的小型部材であれば強鍛造・急速
加熱が可能なので、目標の結晶粒を保つことは比較的容
易であるが、タービンロータのような大型部材では、素
材の鍛造工程において鍛伸と据え込みを繰り返し行った
り、熱処理を繰り返し行うしか方法が無く、工程が長時
間に及ぶために、大幅なコスト高を余儀なくされて実質
的には採用が困難である。
【0015】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であって、高圧部の靭性、低圧部の強度特性や靭性等、
高低圧一体型ロータとして必要な特性は確保した上で、
大型の素材でも高圧部において、その表層部と中心部で
均一な優れた高温特性、特に耐クリープ脆化特性を有す
る強度の高い部材を得ることを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来、強度や靭
性の低下要因とされ、金属組織中に含有されることを避
けられてきた初析フェライト相に着目し、特定の成分系
であれば初析フェライト相を積極的に利用することによ
って強度や靭性を確保したままクリープ脆化を回避でき
ることを突き止めた。
【0017】しかし、タービンロータのような大型部材
では、表層部と中心部とで冷却条件が異なり、表層部近
傍に適量の初析フェライトを析出させるような冷却条件
を採用すると、中心部には必要以上に多量の初析フェラ
イトが析出する不具合があった。また、特に基地強化元
素を固溶させて強度を増すために焼入れ温度を高めた材
料では結晶粒が粗大になり易いため、クリープ脆化を引
き起こす可能性を残していた。
【0018】そこで、所定の合金成分を有する素材の熱
処理過程において、高圧部を従来より高温度領域から冷
却速度を制御しながら焼入れて所定量の初析フェライト
相を析出させ、かつ低圧部を従来と同等またはそれ以上
の温度に加熱した後、冷却効果の大きい手法で冷却する
ことによって、高圧部では優れたクリープ強度を有し、
特にクリープ脆化を起こさず、しかも低圧部においては
高い靱性を有する高低圧一体型のタービンロータを得ら
れることを見出して、本発明を完成させた。
【0019】本発明の高低圧一体型タービンロータにお
いて高圧蒸気で使用される部分(高圧部)は、600℃
で応力176MPaの条件での平滑クリープ破断試験に
おけるクリープ破断時間が2,500時間以上で、かつ
同条件での切欠きクリープ破断試験におけるクリープ破
断時間が5,000時間以上のすぐれた高温特性を有す
るものである。
【0020】また、本発明の高低圧一体型タービンロー
タの低圧蒸気で使用される部分(低圧部)は、0.2%
耐力が686MPa以上で、かつシャルピー衝撃吸収エ
ネルギーが98J以上の優れた靭性を有するものであ
る。
【0021】このように本発明の高低圧一体型のタービ
ンロータは、高圧部の優れたクリープ特性と、低圧部の
優れた靭性とを兼ね備えた特性を有するものである。
尚、本発明者は上記の特性を後述の実施例により検証し
ている。この試験方法及び試験結果については(実施
例)に詳述する。
【0022】本発明の高低圧一体型のタービンロータの
製造方法は、特定組成の合金鋼からなるタービンロータ
素材を、その高圧部に相当する部分と低圧部に相当する
部分においてそれぞれ異なった熱処理をする方法であ
る。すなわち、タービンロータ素材の高圧部に相当する
部分を980℃以上1100℃以下に加熱し、タービン
ロータ素材の低圧部に相当する部分を850℃以上98
0℃未満に加熱した後、タービンロータ素材の高圧部に
相当する部分は900℃から700℃の所定の温度まで
は噴水冷却または衝風冷却のうち1種以上の手法を用い
て冷却し、次いで5分間から5時間空冷した後、300
℃まで噴水冷却または衝風冷却もしくは油冷却のうち1
種以上の手法を用いて冷却し、タービンロータ素材の低
圧部に相当する部分は油焼入れ以上の速度速度が得られ
る手法で冷却する。
【0023】つまり、本発明のタービンロータの製造方
法は、タービンロータ素材の高圧部に相当する部分は高
い温度から焼入れをして高い温度で焼戻しを施し、一
方、低圧部に相当する部分は比較的低い温度から焼入れ
して比較的低い温度で焼戻しする方法を採用している。
【0024】前記高圧部と低圧部に相当する部分に対し
てそれぞれ異なった熱処理を施すことにより、高圧部に
相当する部分は、600℃で応力176MPaの条件で
の平滑クリープ破断試験におけるクリープ破断時間が
2,500時間以上であり、かつ同条件での切欠きクリ
ープ破断試験におけるクリープ破断時間が5,000時
間以上のすぐれた高温特性を有し、また、低圧部は0.
2%耐力が686MPa以上で、かつシャルピー衝撃吸
収エネルギーが98J以上の優れた靭性を有するものと
することができる。
【0025】ここで、前記高温特性のうち、切欠クリー
プ破断強度について説明する。通常、鋼材に応力を加え
ると、比較的低い応力でも高温度の時は非常に徐々にで
はあるが塑性変形を起こして伸びを呈し、やがては急速
に伸びが進行してくびれ、破断に至る。この現象がクリ
ープ現象(クリープ破断現象)である。このクリープ現
象は結晶粒界における粘性流れや結晶内の転位の移動に
よるものと考えられる。高温クリープ破断試験は、高温
度で材料に一定静荷重を長時間作用させて破断するまで
の時間を測定している。試験片は一定断面積を持つ丸棒
が使用され、測定方法はJISのZ−2272に規定さ
れている。JISに規定されているのは平滑クリープ破
断試験であり、試験片の測定部分の標点間は滑らかに削
って仕上げたものが使用される。
【0026】これに対して切欠クリープ破断試験では、
評点間に切欠(ノッチ)を設けた試験片を使用する。引
張られる測定部分の断面積(切欠底の断面積)は平滑ク
リープ破断試験の場合と同じにして応力を定めている。
また、試験片の平行部(上記平滑試験に用いる試験片の
評点間に相当)の直径はノッチ底の直径の1.2倍と
し、ノッチは開き角度60°、ノッチ底の曲率半径0.
13mmとし、引張り方向と垂直に切り込んでいる。上
記平滑クリープ破断試験では、引張応力を加えると標点
間が次第に伸び、標点間がくびれてやがては破断に至
る。これに対して試験片に切欠を設けた切欠クリープ破
断試験では、試験片が引張られた時に、切欠部を変形さ
せまいとする応力が切欠部を取り巻くように働き(いわ
ゆる多軸応力)、均一伸び現象を呈することなく破断に
至る。
【0027】一般に延性の高い材料では、切欠によって
変形が拘束されることによって破断に至るまでの時間が
平滑クリープ破断試験より長くなるが、鋼種によって
は、クリープ破断試験中に材料の脆化が徐々に進み、ボ
イドの発生やその連結によってき裂が生じる現象が加速
されてクリープ破断を起こすものが現れる。この場合は
この切欠クリープ破断試験を行った方が、前記平滑クリ
ープ破断試験を行った場合より短時間で試験片が破断す
る。このような現象を切欠弱化と呼び、クリープ脆化を
示す指標として用いることができる。すなわち、応力や
温度条件をそろえて、平滑クリープ破断試験と切欠クリ
ープ破断試験をそれぞれ行い、両者のクリープ破断時間
を比較することで、クリープ脆化の程度を明確に示すこ
とが可能となる。
【0028】タービンロータは、運転中は応力がかかっ
た状態で長時間高温度に曝されるので、経時的な材料強
度の低下が問題となる。従来、タービンロータに用いる
材料についてはJISに規定された平滑高温クリープ破
断試験のみで品質が評価されていたが、本発明者らは切
欠高温クリープ破断試験を行うことにより、材料の高温
強度特性、特にクリープ脆化特性を評価する手段を見い
だした。この手段により、所定成分のタービンロータ素
材に対して、高圧部の金属組織が従来材と同様にベーナ
イト単相のものと、ベーナイト相に初析フェライト相が
混合した複合組織を有するものの比較評価を行い、体積
%で10%を超え40%以下の初析フェライト相が含ま
れるものにおいてクリープ脆化が抑制されることを明ら
かにした。
【0029】しかしながら、前記高圧部の熱処理時に従
来法による冷却を採用した場合、冷却速度が遅くなるタ
ービンロータ素材の中心部(直径方向の中心部)では所定
量の初析フェライト相を析出させることができるが、表
層部では冷却速度が速いため初析フェライト相は析出し
にくい。そこで本発明者は、この問題を解決するために
鋭意検討を行い、その結果、高圧部の冷却に際しては、
900℃から700℃の所定の温度までは冷却手段とし
て噴水冷却および/または衝風冷却を用いて冷却し、次
いで5分間から5時間空冷した後、300℃まで、噴水
冷却または衝風冷却若しくは油冷却のうち1種以上の冷
却手段を用いて冷却することによって、大型のタービン
ロータ素材の高圧部各位置(最終的に切削加工される表
層部分は除く)において適切量の初析フェライト相を析
出させることを可能とした。
【0030】本発明の成分系の一部では、タービンロー
タの直径が大きいため高圧部に比べて特に冷却速度が遅
くなるタービンロータ素材の低圧部の中心部(直径方向
の中心部)において、体積%で30%以下のフェライト
相が析出するものもあった。しかし、0.2%耐力や衝
撃特性のいずれもタービンロータとしての目標値を上回
っており体積%で30%以下のフェライト相であれば、
タービンロータの低圧部を構成する材料として実質的に
問題が無いことも明らかにした。
【0031】以上の研究に基づき、本発明は以下の構成
を採用した。
【0032】すなわち、請求項1に記載の発明は、高圧
部と低圧部とが一体に形成された高低圧一体型タービン
ロータであって、重量%で炭素:0.20〜0.35
%、珪素:0.15%以下、マンガン:0.05〜1.
0%、ニッケル:0.3%超〜2.5%、クロム:1.
0〜3.0%、モリブデン:0.5〜1.5%、タング
ステン:0.1〜3.0%、バナジウム:0.1〜0.
3%を含み、燐:0.012%以下、硫黄:0.005
%以下、銅:0.15%以下、アルミニウム:0.01
%以下、砒素:0.01%以下、錫:0.01%以下、
アンチモン:0.003%以下であって、残部が不可避
的不純物を含む鉄からなる組成を有し、前記高圧部の金
属組織が、体積%で10%を超え40%以下の初析フェ
ライト相と残部のベーナイト相からなることを特徴とす
る高低圧一体型タービンロータである。上記合金組成に
おいて、ニッケル含有量は、0.3%を超えて2.5%
以下の範囲である。
【0033】本発明の高低圧タービンロータに用いられ
ている合金は従来の高低圧一体型ロータ用低合金耐熱鋼
にWを添加して高圧部の高温強度の向上を図っている。
ここで、高温部のクリープ強度の向上を重視する場合に
は、タングステンの含有量を多めにし、低温部の靱性の
向上を重視する場合には、タングステンの含有量を少な
目にすると良い。そして、高圧部の金属組織は、体積%
で10%を超え40%以下の初析フェライト相と残部の
ベーナイト相からなるよう制御されており、これによっ
て高圧部のクリープ脆化を回避している。
【0034】次に、本発明は、高圧部と低圧部とが一体
に形成された高低圧一体型タービンロータであって、重
量%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.15%
以下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケル:0.
05〜2.5%、クロム:1.0〜3.0%、モリブデ
ン:0.5〜1.5%、タングステン:0.1〜3.0
%、バナジウム:0.1〜0.3%、コバルト:0.1
〜3.0%を含み、燐:0.012%以下、硫黄:0.
005%以下、銅:0.15%以下、アルミニウム:
0.01%以下、砒素:0.01%以下、錫:0.01
%以下、アンチモン:0.003%以下であって、残部
が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を有し、前記高
圧部の金属組織が、体積%で10%を超え40%以下の
初析フェライト相と残部のベーナイト相からなることを
特徴とする高低圧一体型タービンロータを提供する
【0035】上に記載のタービンロータに用いられてい
る合金は、の合金をベースに、コバルトを添加して高
温強度や靭性を高めたものである。高圧部のクリープ強
度を重視する際には、ニッケル量やマンガン量を下げる
と良いが、その分コバルトを添加することで熱処理特性
や材質特性のバランスを保つことができる。この合金も
高圧部の金属組織は体積%で10%を超え40%以下の
初析フェライト相と残部のベーナイト相からなるよう制
御されており、これによって高圧部のクリープ脆化を回
避している。
【0036】次に、請求項に記載の発明は、高圧部と
低圧部とが一体に形成された高低圧一体型タービンロー
タであって、重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪
素:0.15%以下、マンガン:0.05〜1.0%、
ニッケル:0.3%超〜2.5%、クロム:1.0〜
3.0%、モリブデン:0.5〜1.5%、タングステ
ン:0.1〜3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%
を含み、さらにニオブ:0.01〜0.15%、タンタ
ル:0.01〜0.15%、窒素:0.001〜0.0
5%、硼素:0.001〜0.015%のうちから選ば
れたいずれか一種以上を含み、燐:0.012%以下、
硫黄:0.005%以下、銅:0.15%以下、アルミ
ニウム:0.01%以下、砒素:0.01%以下、錫:
0.01%以下、アンチモン:0.003%以下であっ
て、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を有
し、前記高圧部の金属組織が、体積%で10%を超え4
0%以下の初析フェライト相と残部のベーナイト相から
なることを特徴とする高低圧一体型タービンロータであ
る。上記合金組成において、ニッケル含有量は、0.3
%を超えて2.5%以下の範囲である。
【0037】請求項に記載のタービンロータに用いら
れている合金は、高温部のクリープ強度の向上を目標と
し、請求項1のタービンロータに用いられている合金
に、さらにニオブ、タンタル、窒素、または硼素のうち
少なくとも1種の微量元素を添加して、平滑クリープ特
性の一層の向上を図るとともに、高圧部の金属組織を体
積%で10%を超え40%以下の初析フェライト相と残
部のベーナイト相からなるように制御してクリープ脆化
を回避している。
【0038】次に、本発明は、高圧部と低圧部とが一体
に形成された高低圧一体型タービンロータであって、重
量%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.15%
以下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケル:0.
05〜2.5%、クロム:1.0〜3.0%、モリブデ
ン:0.5〜1.5%、タングステン:0.1〜3.0
%、バナジウム:0.1〜0.3%、コバルト:0.1
〜3.0%を含み、さらにニオブ:0.01〜0.15
%、タンタル:0.01〜0.15%、窒素:0.00
1〜0.05%、硼素:0.001〜0.015%のう
ちから選ばれたいずれか一種以上を含み、燐:0.01
2%以下、硫黄:0.005%以下、銅:0.15%以
下、アルミニウム:0.01%以下、砒素:0.01%
以下、錫:0.01%以下、アンチモン:0.003%
以下であって、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる
組成を有し、前記高圧部の金属組織が、体積%で10%
を超え40%以下の初析フェライト相と残部のベーナイ
ト相からなることを特徴とする高低圧一体型タービンロ
ータを提供する
【0039】に記載のタービンロータに用いられてい
る合金は、先に記載のタービンロータの合金にさらにニ
オブ、タンタル、窒素、または硼素のうち少なくとも1
種の微量元素を添加することにより高温部のクリープ強
度を向上させたものであり、特に平滑クリープ特性の一
層の向上を図るとともに、高圧部の金属組織を体積%で
10%を超え40%以下の初析フェライト相と残部のベ
ーナイト相からなるよう制御してクリープ脆化を回避し
ている。
【0040】次に、本発明の請求項に記載の発明は、
のいずれかに記載の高低圧一体型タービンロータにお
いて、前記初析フェライト相中に平均粒径0.5μm以
下の炭・窒化物が微細分散していることを特徴とするも
のである。
【0041】次に、本発明のタービンロータは、前記高
圧部の金属組織の結晶粒度番号が、3以上6以下である
ことを特徴とするものである。
【0042】本発明の高低圧一体型タービンロータの高
圧部は、高温クリープ特性、特に、優れた切欠クリープ
特性と、優れた靱性とを兼ね備えたものである。すなわ
ち、600℃で応力176MPaの条件での平滑クリー
プ破断試験におけるクリープ破断時間が、2,500時
間以上(従来材:2,000時間以下)で、かつ同条件
での切欠きクリープ破断試験におけるクリープ破断時間
が5,000時間以上のすぐれた高温特性を有するもの
である。
【0043】さらに高温クリープ特性は、平滑クリープ
破断時間の長短に加えて、クリープ脆化を起こさないよ
うにするためにクリープ破断時間比を用いて判断がなさ
れた材料である。すなわち、切欠クリープ破断試験にお
けるクリープ破断時間と平滑クリープ破断試験における
クリープ破断時間との比で示されるところのクリープ破
断時間比が、高圧部において最低限2.0以上、好まし
くは2.5以上、より好ましくは3.0以上のものであ
る。
【0044】また、本発明の高低圧一体型のタービンロ
ータの低圧蒸気で使用する部分は、0.2%耐力が68
6 MPa以上で、かつシャルピー衝撃吸収エネルギー
が98J以上の優れた靭性を有するものである。
【0045】以上説明したとおり、優れたクリープ強度
と靱性とを兼ね備えた高低圧一体型タービンロータは、
本発明によって初めてもたらされたものである。
【0046】次に、本発明のタービンロータの製造方法
は、高圧部と低圧部とが一体に形成された高低圧一体型
タービンロータの製造方法であって、所定の組成を有す
るタービンロータ素材の高圧部に相当する部分を980
℃以上1100℃以下に加熱し、該タービンロータ素材
の低圧部に相当する部分を850℃以上980℃未満に
加熱した後、前記タービンロータ素材の高圧部に相当す
る部分は、900℃から700℃の所定の温度までは噴
水冷却または衝風冷却のうち1種以上の冷却手段によっ
て冷却し、次いで5分間から5時間空冷した後、300
℃まで噴水冷却または衝風冷却もしくは油冷却のうち1
種以上の冷却手段によって冷却し、前記タービンロータ
素材の低圧部に相当する部分は、油焼入れ以上の速度が
得られる冷却手段により冷却する製造方法である。
【0047】本発明のタービンロータの製造方法は、高
圧部と低圧部とが一体に形成された高低圧一体型タービ
ンロータを製造するに際して、所定の組成を有するター
ビンロータ素材の高圧部に相当する部分を980℃以上
1100℃以下に加熱し、該タービンロータ素材の低圧
部に相当する部分を850℃以上980℃未満に加熱し
た後、前記タービンロータ素材の高圧部に相当する部分
を、900℃から700℃の所定の温度までは噴水冷却
または衝風冷却のうち1種以上の冷却手段によって冷却
し、次いで5分間から5時間空冷した後、300℃まで
噴水冷却または衝風冷却若しくは油冷却のうち1種以上
の冷却手段によって冷却し、前記タービンロータ素材の
低圧部に相当する部分は、油焼入れ以上の速度が得られ
る冷却手段により冷却する高低圧一体型タービンロータ
の製造方法であって、前記タービンロータ素材を、重量
%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.15%以
下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケル:0.3
%超〜2.5%、クロム:1.0〜3.0%、モリブデ
ン:0.5〜1.5%、タングステン:0.1〜3.0
%、バナジウム:0.1〜0.3%を含み、燐:0.0
12%以下、硫黄:0.005%以下、銅:0.15%
以下、アルミニウム:0.01%以下、砒素:0.01
%以下、錫:0.01%以下、アンチモン:0.003
%以下であって、残部が不可避的不純物を含む鉄からな
る組成を有する合金鋼としたことを特徴とする高低圧一
体型タービンロータの製造方法である。上記合金組成に
おいて、ニッケル含有量は、0.3%を超えて2.5%
以下の範囲である。
【0048】次に、本発明は、に記載の高低圧一体型
タービンロータの製造方法において、前記タービンロー
タ素材を、重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪
素:0.15%以下、マンガン:0.05〜1.0%、
ニッケル:0.05〜2.5%、クロム:1.0〜3.
0%、モリブデン:0.5〜1.5%、タングステン:
0.1〜3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%、コ
バルト:0.1〜3.0%を含み、燐:0.012%以
下、硫黄:0.005%以下、銅:0.15%以下、ア
ルミニウム:0.01%以下、砒素:0.01%以下、
錫:0.01%以下、アンチモン:0.003%以下で
あって、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を
有する合金鋼としたことを特徴とする高低圧一体型ター
ビンロータの製造方法を提供する
【0049】次に、本発明のタービンロータの製造方法
は、高圧部と低圧部とが一体に形成された高低圧一体型
タービンロータを製造するに際して、所定の組成を有す
るタービンロータ素材の高圧部に相当する部分を980
℃以上1100℃以下に加熱し、該タービンロータ素材
の低圧部に相当する部分を850℃以上980℃未満に
加熱した後、前記タービンロータ素材の高圧部に相当す
る部分を、900℃から700℃の所定の温度までは噴
水冷却または衝風冷却のうち1種以上の冷却手段によっ
て冷却し、次いで5分間から5時間空冷した後、300
℃まで噴水冷却または衝風冷却若しくは油冷却のうち1
種以上の冷却手段によって冷却し、前記タービンロータ
素材の低圧部に相当する部分は、油焼入れ以上の速度が
得られる冷却手段により冷却する高低圧一体型タービン
ロータの製造方法であって、前記タービンロータ素材
を、重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.
15%以下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケ
ル:0.3%超〜2.5%、クロム:1.0〜3.0
%、モリブデン:0.5〜1.5%、タングステン:
0.1〜3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%を含
み、さらにニオブ:0.01〜0.15%、タンタル:
0.01〜0.15%、窒素:0.001〜0.05
%、硼素:0.001〜0.015%のうちから選ばれ
たいずれか一種以上を含み、燐:0.012%以下、硫
黄:0.005%以下、銅:0.15%以下、アルミニ
ウム:0.01%以下、砒素:0.01%以下、錫:
0.01%以下、アンチモン:0.003%以下であっ
て、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を有す
る合金鋼としたことを特徴とする高低圧一体型タービン
ロータの製造方法である。上記合金組成において、ニッ
ケル含有量は、0.3%を超えて2.5%以下の範囲で
ある。
【0050】次に、本発明は、先に記載の高低圧一体型
タービンロータの製造方法において、前記タービンロー
タ素材を、重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪
素:0.15%以下、マンガン:0.05〜1.0%、
ニッケル:0.05〜2.5%、クロム:1.0〜3.
0%、モリブデン:0.5〜1.5%、タングステン:
0.1〜3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%、コ
バルト:0.1〜3.0%を含み、さらにニオブ:0.
01〜0.15%、タンタル:0.01〜0.15%、
窒素:0.001〜0.05%、硼素:0.001〜
0.015%のうちから選ばれたいずれか一種以上を含
み、燐:0.012%以下、硫黄:0.005%以下、
銅:0.15%以下、アルミニウム:0.01%以下、
砒素:0.01%以下、錫:0.01%以下、アンチモ
ン:0.003%以下であって、残部が不可避的不純物
を含む鉄からなる組成を有する合金鋼としたことを特徴
とする高低圧一体型タービンロータの製造方法を提供す
【0051】タービンロータの高圧部に相当する部分を
高温度に加熱するのは、合金元素を十分に溶け込ませる
ためである。一方、タービンロータの低圧部を高圧部よ
り低温に加熱するのは、結晶粒を微細にして靭性を高め
るためである。
【0052】上記高低圧一体型タービンロータの製造方
法によれば、上記のようにタービンロータ素材を冷却す
ることにより、タービンロータ素材の高圧部に相当する
部分がベーナイト相に体積%で10%を超え40%以下
の初析フェライト相を含む金属組織に制御され、タービ
ンロータ素材の低圧部に相当する部分がベーナイト単相
もしくはベーナイト相に体積%で30%以下の初析フェ
ライト相を含む金属組織に制御される。そして、冷却後
に前記高圧部に相当する部分、低圧部に相当する部分の
それぞれに設定された所定温度に再加熱・保持(焼戻し
処理)して、所定の材料特性が得られるように調整され
た後、高圧一体型タービンロータの素材として供せられ
る。
【0053】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定される
ものではない。まず、本発明で使用する合金における各
成分範囲の限定理由を説明する。
【0054】炭素(C): 炭素は熱処理時の焼入れ性
を確保するとともに材料強度を高める効果がある。ま
た、炭化物及び/または炭窒化物を形成して高温におけ
るクリープ破断強度の向上に寄与する。本合金系では
0.20%未満の含有量では材料強度が十分でないの
で、下限値を0.20%とする。一方、炭素の含有量が
多すぎると靱性が低下するとともに、高温度で使用中に
炭化物及び/または炭窒化物が凝集して粗大化し、クリ
ープ破断強度の低下やクリープ脆化の原因となる。従っ
て炭素含有量の上限は0.35%とする。材料強度と靱
性を兼ね備えるために特に好ましい範囲は0.22〜
0.30%である。
【0055】珪素(Si): 珪素は脱酸材としての効
果がある反面、素材の基地を脆化させる。珪素は製鋼原
料から入って来るものであり、極端に珪素を低くするた
めには原料の厳選が必要となり、コスト高を招くため、
0.15%までの含有は許容する。好ましい範囲は0.
10%以下である。
【0056】マンガン(Mn): マンガンは脱酸材と
して作用するとともに鍛造時の熱間割れを防止する効果
を有する。又熱処理時の焼入れ性を高める効果もある。
しかし、マンガン含有量が多くなるとクリープ破断強度
が劣化するため、最大量を1.0%とした。ただし、マ
ンガン含有量を0.05%未満に抑えるには原料の厳選
と過度の精錬工程が必要となり、コスト高を招くので最
低量は0.05%とする。したがって、マンガンの含有
量の範囲は0.05〜1.0%とし、好ましくは0.1
5〜0.9%とする。
【0057】ニッケル(Ni): ニッケルは熱処理時
の焼入れ性を高め、引張強さや耐力を向上させるほか、
特に靱性を高める効果がある。その含有量が0.3%に
満たないと効果が認められない。しかしその一方で長時
間クリープ破断強度はニッケル添加により低下する。本
発明のタービンロータに用いる合金では、ニッケル添加
による焼入れ性や靱性向上にはあまり期待せず、逆に長
時間クリープ破断強度に及ぼすニッケルの悪影響を排除
するために、ニッケル含有量の上限を2.5%以下に抑
えることとした。
【0058】クロム(Cr): クロムは熱処理時の焼
入れ性を高めるとともに、炭化物及び/又は炭窒化物を
形成してクリープ破断強度の改善に寄与し、かつマトリ
ックス中に溶け込んで耐酸化性を改善する。またマトリ
ックス自体を強化してクリープ破断強度を向上させる効
果を有する。クロム含有量は1.0%未満では効果が十
分でなく、3.0%を越える量を含有するとかえってク
リープ破断強度が低下する。したがってクロムの含有量
の範囲は1.0〜3.0%、好ましくは2.0〜2.5
%とした。
【0059】モリブデン(Mo): モリブデンは熱処
理時の焼入れ性を高めるとともに、マトリックス中や炭
化物及び/又は炭窒化物中に固溶してクリープ破断強度
を向上させる効果を有する。その含有量が0.5%未満
では効果が十分認められず、1.5%を越えて添加して
もかえって靱性が低下し、コスト高にもなる。したがっ
てモリブデンの含有量は0.5〜1.5%、好ましくは
0.9〜1.3%とした。
【0060】バナジウム(V): バナジウムは熱処理
時の焼入れ性を高めるとともに炭化物及び/又は炭窒化
物となってクリープ破断強度を改善する効果を有する。
その含有量が0.1%未満では十分な効果が得られな
い。また0.3%を越えて含有するとクリープ破断強度
がむしろ低下する。したがって、バナジウムの含有量は
0.1〜0.3%、好ましくは0.21〜0.28%と
した。
【0061】タングステン(W): タングステンはマ
トリックス中や炭化物中に固溶してクリープ破断強度を
改善する効果を有する。その含有量が0.1%未満では
十分な効果が得られない。また3.0%を越えて含有す
ると偏析する恐れが有り、フェライト相が出やすくなっ
て強度が低下する。従って、タングステンを使用する場
合は、その含有量は0.1〜3.0%が適当である。
【0062】コバルト(Co): コバルトはニッケル
と同様に熱処理時の焼入れ性を高め、引張強さや耐力を
向上させるほか、特に靱性を高める効果を有する。ま
た、ニッケルとは異なり、3.0%以下の添加であれば
クリープ強度特性に悪影響を及ぼさない。従って、機械
的強度、クリープ強度および靱性のバランスをとるのに
有効である。コバルトはその添加量が0.1%未満では
効果が現れず、3.0%を越えると炭化物の析出を促進
してクリープ特性を劣化させる。したがってコバルトの
含有許容範囲は0.1%〜3.0%とする。より好まし
くは0.5〜2.2%である。
【0063】ニオブ(Nb): ニオブは焼入れ性を高
めるとともに炭化物及び/又は炭窒化物を形成してクリ
ープ破断強度を向上させる。また、高温加熱時の結晶粒
の成長を抑制し、組織の均質化に寄与する効果を有す
る。その添加量が0.01%未満ではその効果は認めら
れず、また、0.15%を越えると鋼塊の凝固時に著し
い偏析を生じたり、靱性の著しい低下を招く。したがっ
てニオブの含有許容量は0.01%〜0.15%とし
た。好ましくは0.05〜0.10%の範囲である。
【0064】タンタル(Ta): タンタルもニオブと
同様に焼入れ性を高めるとともに、炭化物及び/又は炭
窒化物を形成してクリープ破断強度を向上させる効果を
有する。その添加量が0.01%未満では前記効果は認
められず、また、0.15%を越えると鋼塊の凝固時に
著しい偏析を生じたり、靱性の著しい低下を招く。した
がってタンタルの含有許容量は0.01%〜0.15%
とした。好ましくは0.05〜0.1%の範囲である。
【0065】窒素(N): 窒素は炭素とともに合金元
素と結合して炭窒化物を形成して、クリープ破断強度の
向上に寄与する効果を有する。その添加量が0.001
%未満では炭窒化物を生成することができないため前記
効果は認められず、0.05%を越えると長時間の間に
炭窒化物が凝集して粗大化するので十分なクリープ強度
が得られない。したがって窒素の含有許容量は0.00
1%〜0.05%とした。好ましくは0.005〜0.
01%の範囲である。
【0066】硼素(B): 硼素は焼入れ性を高めると
共に、粒界強度を高めてクリープ破断強度の向上に寄与
する効果を有する。その添加量が0.001%未満では
前記効果は認められず、また、0.015%を越えると
焼入れ性がかえって悪化する。したがって硼素の含有許
容量は0.001%〜0.015%とした。好ましくは
0.003〜0.010%の範囲である。
【0067】次に、有害な不純物である燐、硫黄、銅、
アルミニウム、砒素、錫、アンチモンについて説明す
る。鋼材の機械的性質にとってこれらの不純物は低い方
が好ましいことは論を待たない。しかし一般に鋼材中の
不純物として含有許容量が規格化されているのは、製鋼
原料から必然的に持ち込まれる燐と硫黄のみにすぎな
い。燐と硫黄は鋼材の材質を脆くすることから、おおか
たの鋼種で許容量を定めているが、精錬の困難さからか
なり高い水準に定められている。
【0068】本発明者らはタービンロータ用のCrMo
V鋼の高温特性、特に切欠クリープ破断強度の向上を目
指して鋭意研究した結果、微量不純物が切欠クリープ破
断強度に大きな影響を与えることを見出した。また、前
記微量不純物としては、燐、硫黄ばかりでなく、銅、ア
ルミニウム、砒素、錫、アンチモン等も悪影響を及ぼす
ことが判明した。これまで微量不純物は漠然と低い方が
良いと認識されているのみで、具体的な許容量は明らか
にされていなかったが、本発明者らはこれら不純物につ
いて詳細に検討し、温度:600℃、応力178MPa
の条件における切欠クリープ破断試験での破断時間5,
000時間以上を目標に、これらの含有量の許容量を具
体的に示すこととした。
【0069】燐(P)、硫黄(S): 燐と硫黄はとも
に製鋼原料から持ち込まれる不純物であり、鋼材の中で
燐化物や硫化物を形成して鋼材の靱性を著しく低下させ
る有害な不純物である。本発明者らの研究では、高温特
性にも悪影響を及ぼすことが判明した。燐は偏析しやす
く、二次的に炭素の偏析も招来し材質を脆化させる。特
に高温で高い応力を長時間負荷した場合の脆化に大きな
影響を及ぼすことが判明した。
【0070】燐や硫黄の含有量を極端に低下させるのは
製鋼工程の負担が大きくなるので、温度:600℃、応
力178MPaの条件における切欠クリープ破断試験の
破断時間5,000時間以上を目途に上限を求めた結
果、燐についてはその含有量の上限を0.012%、硫
黄の上限は0.005%とした。より好ましくは燐は
0.010%以下、硫黄は0.002%以下である。
【0071】銅(Cu): 銅は鋼材中の結晶粒界に沿
って拡散して、材質を脆化させる。特に高温特性を劣化
させる。切欠クリープ破断試験の結果から銅の含有量の
上限は0.15%とした。より好ましくは0.04%以
下である。
【0072】アルミニウム(Al): アルミニウム
は、主として製鋼工程の脱酸材からもたらされるもので
あり、鋼材中で酸化物系の介在物を形成して、材質を脆
化させるものである。切欠クリープ破断試験の結果から
アルミニウムの含有量の上限は0.01%とした。より
好ましくは0.005%以下である。
【0073】砒素(As)、錫(Sn)、アンチモン
(Sb): 砒素、錫、アンチモンは製鋼原料から混入
する場合が多く、ともに結晶の粒界に沿って析出して材
質の靱性を低下させるものである。特にこれらの元素は
高温になると結晶粒界への凝集が著しくなり、合金は急
速に脆化する。切欠クリープ破断試験の結果からこれら
不純物の含有量の上限は、砒素は0.01%、錫は0.
01%、アンチモンは0.003%とした。より好まし
くは砒素は0.007%以下、錫は0.007%以下、
アンチモンは0.0015%以下である。
【0074】(高低圧一体型タービンロータの製造方
法)次に、本発明の高低圧一体型タービンロータの製造
方法について説明する。
【0075】本発明の高低圧一体型タービンロータの製
造方法は、上述の如く、先ず所定の合金組成となるよう
に母材を溶製する。ここで微量不純物を下げる方法は特
に制限はなく、原材料の厳選を含めて公知のあらゆる精
錬方法を利用することができる。
【0076】次に、所定の組成に溶解した合金溶湯を公
知の方法で鋼塊に鋳造し、所定の鍛造・成形加工を施し
てタービンロータ素材とする。
【0077】次いで、このタービンロータ素材を、ター
ビンロータの高圧部に相当する部分と低圧部に相当する
部分の2区分に分けて熱処理する。前記2区分に分けて
熱処理するには、熱処理炉のそれぞれの部分が収容され
る空間の間に耐熱性の隔壁を設け、熱処理炉内を2室に
区分してそれぞれの室内を独立して温度制御することに
より達成することができる。
【0078】このように構成した熱処理炉内に、前記タ
ービンロータ素材を収容し、高圧部に相当する部分は9
80℃以上1100℃以下の温度に加熱する。また、低
圧部に相当する部分は850℃以上980℃未満の温度
に加熱する。高圧部は980℃以上に加熱しないと高温
クリープ強度が不十分であり、また、1100℃を越え
た加熱は設備上の制約が大きくコスト高を招くとともに
靱性も低下するため、この高圧部に相当する部分の加熱
温度範囲を980℃以上1100℃以下とした。低圧部
は850℃以上に加熱しないと炭化物の固溶が進まない
ため強度や靱性が不十分となり、980℃以上に加熱す
ると結晶粒が粗大化して靱性が低下するため、この低圧
部に相当する部分の加熱温度範囲を850℃以上980
℃以下とした。
【0079】次に、上記の温度範囲に加熱したタービン
ロータ素材の高圧部に相当する部分は、900℃から7
00℃の所定の温度までは噴水冷却はたは衝風冷却のう
ち1種以上の冷却手段を用いて冷却し、次いで5分間か
ら5時間空冷した後、300℃まで噴水冷却または衝風
冷却もしくは油冷却のうち1種以上の冷却手段を用いて
冷却し、タービンロータ素材の低圧部に相当する部分は
油焼入れ以上の速度が得られる冷却手段により冷却す
る。この油焼入れ以上の速度で冷却できる冷却手段とし
ては、油冷、水冷又は噴水冷却等が挙げられる。
【0080】前記本発明の熱処理方法における温度の管
理は、最終製品の製品形状における最表層部に相当する
位置で行うこととされている。熱処理時のタービンロー
タ素材はおおよそ30〜200mmの余肉を付けた状態
とされているので、その余肉を除いた製品の最表層部と
なる位置で温度管理する。温度管理にあたっては、管理
位置の温度を直接計測する方法、前記タービンロータ素
材の別の場所と管理位置との対応関係を予め把握してお
き、別の位置の温度で管理する方法、予め取得していた
データや熱計算シミュレーションに基づいて、冷却媒体
の放出量・放出速度や放出時間を管理する方法等を、自
由に選択することができる。
【0081】このように冷却パターンを制御するのは、
適正範囲内の量の初析フェライト相を析出させるためで
ある。本発明の範囲内の各種合金成分の量やタービンロ
ータ素材の大きさに応じて、空冷を開始する温度、空冷
の時間およびその前後の冷却速度を本発明で規定する範
囲内で適切に組合わせることによって狙いの量の初析フ
ェライト相を得ることができる。
【0082】そして、上記の焼入れ処理を施したロータ
素材には、焼戻しをして結晶組織を整え、その機械的性
質を調整する処理が施される。この焼戻し処理は、高圧
部に相当する部分においては、0.2%耐力の値が58
8〜686MPaの特性を得ることを目標とし、低圧部
に相当する部分においては0.2%耐力の値が686〜
784MPaの特性を得ることを目標とする。具体的に
は高圧部に相当する部分に対しては、600℃〜750
℃の温度で焼戻しを行い、低圧部に相当する部分に対し
ては、550℃〜700℃の温度で焼戻しを行うのが好
ましい。
【0083】なお、前記焼戻し処理は1回に限らず、2
回以上繰り返しても良い。このような一連の熱処理を行
うことにより、高圧部と低圧部に相当する部分がそれぞ
れ所定の機械特性を具備した高低圧一体型タービンロー
タを得ることができる。
【0084】次に、本発明の高低圧一体型タービンロー
タの顕微鏡組織について図1を参照して説明する。図1
は、本発明に係るタービンロータの高圧部分の顕微鏡像
を示す図である。
【0085】前述のような熱処理を施した本発明の高低
圧一体型タービンロータの顕微鏡組織は、前記高圧部が
体積%で10%を超え40%以下の初析フェライト相を
含むベーナイト相、前記低圧部がベーナイト単相もしく
は体積%で30%以下の初析フェライト相を含むベーナ
イト相に制御されている。しかも、本発明の合金は焼入
れ性が良好であるため、初析フェライト相は通常の鋼よ
り低い温度で析出し、通常の初析フェライト相より微細
に分散している。
【0086】さらに、タングステンやモリブデンをはじ
めとする炭・窒化物形成元素を多量に含有しているた
め、初析フェライト相を焼戻すと、図1に示すような平
均粒径0.5μm以下の微細な炭・窒化物が初析フェラ
イト相内に微細析出する。一般に初析フェライト相は軟
質であり、多量に析出すると0.2%耐力やクリープ破
断強度を低下させてしまう。しかし、本発明に係るター
ビンロータにおいては、この初析フェライト相に炭・窒
化物が微細分散しているため、ベーナイト相と比較して
もさほど遜色の無い強度特性を有している。この点は本
発明に係るタービンロータの大きな特徴である。なお、
顕微鏡組織中でフェライト相の占める割合は、通常用い
られる画像解析装置で判定することができる。
【0087】一方、上記の初析フェライト相の析出によ
って、タービンロータの金属組織は、もとのオーステナ
イト結晶粒径に比べて結晶粒が微細化され、このことが
クリープ脆化を抑制する大きな要因となっている。本発
明では元のオーステナイトの結晶粒に比べて結晶粒が微
細になっており、初析フェライト粒とベーナイト粒(そ
の大きさは初析フェライトが析出し終わった時点のオー
ステナイト粒の大きさに相当)の大きさが、平均して結
晶粒度番号で3乃至6となっていることが好ましい。結
晶粒度番号が3未満では粗粒過ぎてクリープ脆化を起こ
す恐れがある。また、結晶粒度番号が6を越えると微細
になりすぎて高温強度が低下する場合がある。したがっ
て、適当な結晶粒の大きさは結晶粒度番号で3乃至6の
範囲、より好ましくは3.2乃至4.5の範囲である。
【0088】尚、ここでいう結晶粒とは、ベーナイト相
と初析フェライト相の境界、初析フェライト相同士の境
界、ベーナイト相に変態した旧オーステナイト粒同士の
境界を結晶粒界と定義した場合に、この結晶粒界で囲ま
れた部分である。
【0089】ここで、前記結晶粒の結晶粒度の測定方法
について説明する。結晶粒度の測定方法については、JI
S G 0551(1998)に「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方
法」が、またJIS G 0552(1998)に「鋼のフェライト結晶
粒度試験方法」が規定されている。本発明の低合金耐熱
鋼は、オーステナイト安定領域の高温度から焼入れを施
し、初析フェライト相を析出させてフェライト相とベー
ナイト相が混在した金属組織を呈するものとなってい
る。したがって、本発明ではフェライト相とベーナイト
相が混在した複合組織について結晶粒度を規定するのが
合理的である。前述の定義のとおり、ベーナイト相と初
析フェライト相の境界、初析フェライト相同士の境界、
ベーナイト相に変態した旧オーステナイト粒同士の境界
を結晶粒界とし、これらの結晶粒界で囲まれた部分の大
きさを結晶粒度とする。結晶粒度の測定方法はJIS G 05
52(1998)「鋼のフェライト結晶粒度試験方法」に規定さ
れている「混粒の場合」の測定方法に準ずる。すなわ
ち、試験片の腐食面に現れた結晶粒を顕微鏡写真に撮影
し、交差線分(粒径)による判定方法を用いて決定して
いる。なお、結晶粒度番号は、その値が小さいほど、結
晶粒度が大きいことを示している。
【0090】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、以下の実施例は本発明の内容を限定する
ものではない。
【0091】(実施例1)タービンロータ高圧部の材料
特性に及ぼす熱処理条件や初析フェライト相量および結
晶粒度の影響について検討するため、表1に示す合金番
号1の組成の合金材を用いて種々の熱処理を行い、0.
2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び600℃
−176MPaにおけるクリープ破断時間を平滑試料と
切欠試料について測定し、それに基づいてクリープ破断
時間比を計算した。
【0092】各試料に対する焼入温度および冷却方法を
表2に示す。また、上記の測定の結果を表3に示す。
尚、本例の各試験では、胴径1200mmのタービンロ
ータ素材(高圧部に相当)を想定しており、前記熱処理
は、それぞれの冷却を施した場合のタービンロータ高圧
部の中心部(直径方向の中心部)の位置を模擬して行っ
た。
【0093】表2,3に示すように、焼入れ温度以外の
熱処理条件を揃えた、試料番号1A(比較材)、試料番
号1B,試料番号1Dを比較すると、焼入れ温度が95
0℃(試料番号1A)の試料は平滑クリープ強度、切欠
クリープ強度ともに目標値を満たさないのに対して、焼
入れ温度を980℃以上に上げた試料(試料番号1B,
試料番号1D)は、平滑クリープ強度、切欠クリープ強
度ともに目標値を上回り、しかも0.2%耐力、衝撃吸
収エネルギー、クリープ破断時間比も目標値を上回って
いることがわかる。
【0094】尚、これらの目標値は、600℃で応力1
76MPaの条件での平滑クリープ破断試験におけるク
リープ破断時間が2,500時間以上であり、かつ同条
件での切欠きクリープ破断試験におけるクリープ破断時
間が5,000時間以上である。また、0.2%耐力が
686MPa以上で、かつシャルピー衝撃吸収エネルギ
ーが98J以上であり、クリープ破断時間比が高圧部に
おいて最低限2.0以上、好ましくは2.5以上、より
好ましくは3.0以上である。
【0095】次に、焼入れ温度を1050℃一定とし
た、試料番号1C(比較材)、試料番号1D,試料番号
1E,試料番号1F、試料番号1G(比較材)の試料を
比較すると、初析フェライト相量および結晶粒径が材料
特性に及ぼす影響が明らかとなる。すなわち、初析フェ
ライト相を全く含まない金属組織を有し、結晶粒度番号
も3.0より小さい(粗粒であることを示す)試料番号
1Cの試料は、平滑クリープ破断時間は他のものより優
れているが、切欠クリープ破断時間は短く、クリープ破
断時間比が2.0を大幅に下回っており、クリープ脆化
を引き起こすおそれのある材料であることが分かる。ま
た、初析フェライト相量が40%を越える試料番号1G
の試料は、0.2%耐力が確保できず、また平滑クリー
プ破断時間も目標値に達していない。その一方で、初析
フェライト相の量が体積%で10%を越え40%以下の
範囲内にある試料番号1D、試料番号1E、試料番号1
Fの試料は、いずれの材料特性もタービンロータの高圧
部に用いる合金材としての目標値を上回っている。
【0096】以上のことから、高低圧一体型タービンロ
ータの高圧部用いるための合金材として本発明が狙いと
する優れた材料特性の目標値を満たすためには、焼入れ
温度を980℃以上にすること、初析フェライト相量を
体積%で10%を越え40%以下にすることが必要であ
ることが分かる。
【0097】(実施例2)表1に実施例2に供した材料
(合金番号1〜3)および比較材料(合金番号4〜5)
の化学組成を示す。また、胴径1200mmのタービン
ロータ素材(高圧部に相当)および胴径2000mmの
タービンロータ素材(低圧部に相当)を想定し、各冷却
を施した場合のタービンロータの中心部(直径方向の中
心部)および表層部の位置を模擬して熱処理を施して試
料を作製した。各試料における焼入温度と冷却方法を表
4に示す。
【0098】次いで、前記の各試料について初析フェラ
イト相量、結晶粒度番号、0.2%耐力、シャルピー衝
撃吸収エネルギー及び600℃−176MPaにおける
クリープ破断時間(平滑試料と切欠試料)の測定結果、
および平滑試料と切欠試料のクリープ破断時間に基づい
て計算したクリープ破断時間比を表5に示す。
【0099】表5に示すように、本発明が規定する成分
範囲の合金を用いた試料に、本発明が規定する範囲の適
切な熱処理を行うことで、高圧部はタービンロータ素材
の中心部および表層部ともに体積%で10%を越え40
%以下の初析フェライト相が得られ、その結果、結晶粒
径度番号も3.5以上に制御されている。また、0.2
%耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び600℃−
176MPaにおけるクリープ破断時間(平滑試料と切
欠試料)、クリープ破断時間比はすべて高圧部としての
目標値を上回っており、従来にない優れた材料特性を有
していることが分かる。
【0100】一方、低圧部を想定して作製した試料につ
いては、表層部には初析フェライト相は無く、一部の試
料で中心部に体積%で30%以下の初析フェライト相が
析出している。ただし、前記初析フェライト相の析出の
有無に係らず0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネル
ギーはタービンロータの低圧部として必要な目標値
(0.2%耐力:686MPa以上、シャルピー衝撃吸
収エネルギー:98J以上)を確実に上回っている。
【0101】一方、炭素量やバナジウム量が本発明が指
定する成分範囲を下回る合金番号4の合金を用いた試料
では、高圧部、低圧部ともに多量の初析フェライト相が析
出し、0.2%耐力や衝撃吸収エネルギー、クリープ強
度(平滑試験および切欠試験)が目標値を下回ってい
る。炭素量、珪素量、マンガン量、クロム量、タングステ
ン量が成分範囲を上回る合金番号5の合金を用いた試料
では、高圧部、低圧部とも衝撃吸収エネルギーの目標値
に達することができず、また高圧部のクリープ破断時間
比が目標値の2.0を大きく下回ってクリープ脆化が生
じることを示唆している。
【0102】このように、本発明の要件を満たす合金組
成及び金属組織を有する高低圧一体型タービンロータ
は、高圧部では優れた高温クリープ強度を有し、かつク
リープ脆化も起さず、低圧部では優れた強度と靱性を兼
ね備えたものであることが確認された。
【0103】(実施例3)次に、表6に実施例3で使用
した合金(合金番号6,7)の化学組成を示す。実施例
3では上記実施例2の合金番号2の合金をベースに、さ
らにコバルトを添加した合金を使用した。
【0104】合金番号6の合金は、タービンロータの高
圧部における高温クリープ強度の更なる改善を狙って、
先の合金番号2の合金のニッケル量、マンガン量を減
じ、代わりにコバルトを添加したものである。試料番号
7の合金は、高圧部の高温クリープ強度をある程度保っ
たままタービンロータ素材の高圧部および低圧部の靭性
を改善することを狙って、先の試料番号2の合金をベー
スに、タングステンの僅かな増量とコバルトの添加を行
ったものである。
【0105】上記の合金を用いた試料に、胴径1200
mmのロータ素材(高圧部に相当)および胴径2000
mmのロータ素材(低圧部に相当)を想定し、各冷却を
施した場合のロータの中心部(直径方向の中心部)および
表層部の位置を模擬して熱処理を施した。それぞれの焼
入温度及び冷却方法を表7に示す。
【0106】次に、初析フェライト相量、結晶粒度番
号、0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び
600℃−176MPaにおけるクリープ破断時間(平
滑試料と切欠試料)の測定を行った結果、および平滑試
料と切欠試料のクリープ破断時間に基づいて計算したク
リープ破断時間比を表8に示す。
【0107】表8に示すように、本発明が規定する成分
範囲の合金を用いた試料に、本発明が規定する範囲の適
切な熱処理を行うことで、高圧部は素材の中心部および
表層部ともに体積%で10%を越え40%以下の初析フ
ェライト相が得られ、その結果、結晶粒径度番号も3.
5以上に制御されることがわかる。
【0108】また、表8に示す本発明材では、0.2%
耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び600℃−1
76MPaにおけるクリープ破断時間(平滑試料と切欠
試料)、クリープ破断時間比はすべて高圧部の目標値を
上回っており、従来にない優れた材料特性を有している
ことが分かる。特に先に示した表5の試料記号2A,2
Bと比較すると、合金番号6を用いた試料6A,6Bの
クリープ破断時間は平滑試験、切欠試験ともに長くなっ
ており、コバルトの添加を中心とした成分の変更がクリ
ープ特性の改善に有効に作用していることを示唆してい
る。
【0109】一方、低圧部を想定して作製した試料は、
初析フェライト相は無く0.2%耐力、シャルピー衝撃
吸収エネルギーは低圧部として必要な目標値(0.2%
耐力:686 MPa以上、シャルピー衝撃吸収エネル
ギー:98J以上)を確実に上回っている。特に先に示
した表5の試料記号2A,2B、2C、2Dと比較する
と、合金番号7を用いた試料7A,7B、7C、7Dの
衝撃吸収エネルギーはいずれの部位でも大きな値を示し
ており、コバルトの添加を中心とした成分の変更が靭性
の改善に有効に作用していることを示唆している。
【0110】以上から、本発明の要件を満たす合金組成
の高低圧一体型タービンロータは、高圧部では優れた高
温クリープ強度を有し、かつクリープ脆化も起さず、低
圧部では優れた強度と靱性を兼ね備えたものであること
が確認された。また、コバルトの添加により、高圧部で
はクリープ特性の改善、低圧部では靱性の改善効果が得
られることが確認された。
【0111】(実施例4)次に、表9に実施例4で使用
した合金の化学組成を示す。実施例4では表1に示す実
施例2の合金番号1をベースに、さらにニオブ、タンタ
ル、窒素、硼素のいずれか一種以上を適宜添加した合金
を使用した。
【0112】合金番号8の合金は、高圧部の高温クリー
プ強度の更なる改善を狙って、先の合金番号1の合金に
ニオブおよび窒素を添加したものである。試料番号9の
合金は、高圧部の高温クリープ強度の更なる改善を狙っ
て、先の合金番号1の合金にニオブ、タンタルおよび窒
素を添加したものである。試料番号10の合金は、高圧
部の高温クリープ強度の更なる改善を狙って、先の合金
番号1の合金にニオブおよび硼素を添加したものであ
る。試料番号11の合金は、高圧部の高温クリープ強度
の更なる改善を狙って、先の合金番号1の合金にタンタ
ルおよび硼素を添加したものである。
【0113】上記各試料に対して、胴径1200mmの
タービンロータ素材(高圧部に相当)および胴径200
0mmのタービンロータ素材(低圧部に相当)を想定
し、各冷却を施した場合のロータの中心部(直径方向の
中心部)および表層部位置を模擬して熱処理を施した。
各試料に対する焼入温度及び冷却方法を表10に示す。
【0114】次に、初析フェライト相量、結晶粒度番
号、0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び
600℃−176MPaにおけるクリープ破断時間(平
滑試料と切欠試料)の測定結果、および平滑試料と切欠
試料のクリープ破断時間に基づいて計算したクリープ破
断時間比を表11に示す。
【0115】表11に示すように、本発明の規定する成
分範囲の試料に、本発明が規定する範囲の適切な熱処理
を行うことで、高圧部においてはタービンロータの中心
部および表層部ともに体積%で10%を越え40%以下
の初析フェライト相が得られ、その結果、結晶粒径度番
号も3.5以上に制御されていることが分かる。
【0116】また、0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収
エネルギー及び600℃−176MPaにおけるクリー
プ破断時間(平滑試料と切欠試料)、クリープ破断時間
比はすべて高圧部の目標値を上回っており、従来にない
優れた材料特性を有していることが分かる。
【0117】特に先に示した表3の試料記号1A,1B
の試料と比較すると、合金番号8の合金を用いた試料番
号8A,8Bの試料、合金番号9の合金を用いた試料番
号9A,9Bの試料、合金番号10の合金を用いた試料
番号10A,10Bの試料および合金番号11の合金を
用いた試料番号11A,11Bの試料のクリープ破断時
間は平滑試験、切欠試験ともに長くなっており、ニオブ、
タンタル、窒素、硼素のいずれか一種以上を適宜添加し
たことがクリープ特性の改善に有効に作用していること
を示している。
【0118】一方、低圧部を想定して作製した試料で
は、初析フェライト相は無く0.2%耐力、シャルピー
衝撃吸収エネルギーは低圧部として必要な目標値(0.
2%耐力:686 MPa以上、シャルピー衝撃吸収エ
ネルギー:98J以上)を確実に上回っている。
【0119】以上から、本発明の要件を満たす高低圧一
体型タービンロータは、高圧部では優れた高温クリープ
強度を有し、かつクリープ脆化も起さず、低圧部では優
れた強度と靱性を兼ね備えたものであることが確認され
た。また、ニオブ、タンタル、窒素、硼素のいずれか一
種以上を添加することにより、本発明のタービンロータ
においては高圧部におけるクリープ特性の改善効果が得
られることが確認された。
【0120】(実施例5)次に、表12に実施例5で使
用した合金の化学組成を示す。実施例5では表6に示す
実施例3の合金番号6の合金をベースに、さらにニオ
ブ、タンタル、窒素、硼素のいずれか一種以上を適宜添
加した合金を使用した。
【0121】合金番号12の合金は、高圧部の高温クリ
ープ強度の更なる改善を狙って、先の合金番号6の合金
にニオブ、タンタルおよび窒素を添加したものである。
合金番号13の合金は、高圧部の高温クリープ強度の更
なる改善を狙って、先の合金番号6の合金にタンタルお
よび硼素を添加したものである。合金番号14の合金
は、高圧部の高温クリープ強度の更なる改善を狙って、
先の合金番号6の合金にニオブ、タンタルおよび硼素を
添加したものである。
【0122】上記各合金を用い、胴径1200mmのロ
ータ素材(高圧部相当)および胴径2000mmのロー
タ素材(低圧部相当)を想定し、各冷却を施した場合の
ロータの中心部(直径方向の中心部)および表層部位置を
模擬して熱処理を施した。各試料に対する焼入温度及び
冷却方法を、表13に示す。
【0123】また、上記各試料の初析フェライト相量、
結晶粒度番号、0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネ
ルギー及び600℃−176MPaにおけるクリープ破
断時間(平滑試料と切欠試料)の測定結果、および平滑
試料と切欠試料のクリープ破断時間に基づいて計算した
クリープ破断時間比を表14に示す。
【0124】表14に示すように、本発明が規定する範
囲の合金組成を有する試料に、本発明が規定する範囲の
適切な熱処理を施すことで、高圧部ではタービンロータ
素材の中心部および表層部ともに体積%で10%を越え
40%以下の初析フェライト相が得られ、その結果、結
晶粒径度番号も3.5以上に制御されていることが確認
された。
【0125】また、高圧部を想定して作製した試料で
は、0.2%耐力、シャルピー衝撃吸収エネルギー及び
600℃−176MPaにおけるクリープ破断時間(平
滑試料と切欠試料)、クリープ破断時間比はすべて高圧
部の目標値を上回っており、従来にない優れた材料特性
を有していることが分かる。
【0126】特に先に示した表8の試料記号6A,6B
の試料と比較すると、合金番号12の合金を用いた試料
番号12A,12Bの合金、合金番号13の合金を用い
た試料番号13A,13Bの試料および合金番号14の
合金を用いた試料番号14A,14B試料のクリープ破
断時間は平滑試験、切欠試験ともに長くなっており、ニオ
ブ、タンタル、窒素、ホウ素のいずれか一種以上を適宜
添加したことがクリープ特性の改善に有効に作用してい
ることを示している。
【0127】一方低圧部を想定して作製した試料では、
初析フェライト相は無く、0.2%耐力、シャルピー衝
撃吸収エネルギーは低圧部として必要な目標値(0.2
%耐力:686 MPa以上、シャルピー衝撃吸収エネ
ルギー:98J以上)を確実に上回っている。
【0128】以上から、本発明の高低圧一体型タービン
ロータは、高圧部では優れた高温クリープ強度を有し、
かつクリープ脆化も起さず、低圧部では優れた強度と靱
性を兼ね備えたものであることが確認された。また、コ
バルトを添加した合金に、さらにニオブ、タンタル、窒
素、硼素のいずれか一種以上を添加することにより、さ
らなるクリープ特性の改善効果が得られることが確認さ
れた。
【0129】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の高
低圧一体型タービンロータは、重量%で炭素:0.20
〜0.35%、珪素:0.15%以下、マンガン:0.
05〜1.0%、ニッケル:0.3%超〜2.5%、ク
ロム:1.0〜3.0%、モリブデン:0.5〜1.5
%、タングステン:0.1〜3.0%、バナジウム:
0.1〜0.3%を含み、燐:0.012%以下、硫
黄:0.005%以下、銅:0.15%以下、アルミニ
ウム:0.01%以下、砒素:0.01%以下、錫:
0.01%以下、アンチモン:0.003%以下であっ
て、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を有
し、前記高圧部の金属組織が、体積%で10%を超え4
0%以下の初析フェライト相と残部のベーナイト相から
なる構成としたので、高圧部では優れた強度と高温クリ
ープ特性を備え、低圧部では優れた強度と靱性を兼ね備
えるタービンロータである。従って、より高温で大容量
の蒸気タービンでの使用が可能となり、エネルギー効率
の高い発電プラントが実現できるので極めて有用であ
る。
【0130】次に、本発明の高低圧一体型タービンロー
タにおいて、0.1〜3.0重量%のコバルトを添加し
た合金を採用するならば、高圧部ではクリープ特性の改
善、低圧部では靱性の改善効果を得ることができる。
【0131】次に、本発明の高低圧一体型タービンロー
タにおいて、ニオブ:0.01〜0.15%、タンタ
ル:0.01〜0.15%、窒素:0.001〜0.0
5%、硼素:0.001〜0.015%のうちから選ば
れたいずれか一種以上を含む合金を採用するならば、高
圧部におけるクリープ特性の改善効果を得ることができ
る。
【0132】次に、本発明の高低圧一体型タービンロー
タにおいて、0.1〜3.0重量%のコバルトと、ニオ
ブ:0.01〜0.15%、タンタル:0.01〜0.
15%、窒素:0.001〜0.05%、硼素:0.0
01〜0.015%のうちから選ばれたいずれか一種以
上を含む合金を採用するならば、低圧部における靱性の
改善効果とともに、高圧部においては、さらなるクリー
プ特性の改善効果を得ることができる。
【0133】また、本発明の高低圧一体型タービンロー
タ製造方法によれば、所定の組成を有するタービンロー
タ素材の高圧部に相当する部分を980℃以上1100
℃以下に加熱し、該タービンロータ素材の低圧部に相当
する部分を850℃以上980℃未満に加熱した後、前
記タービンロータ素材の高圧部に相当する部分を、90
0℃から700℃の所定の温度までは噴水冷却または衝
風冷却のうち1種以上の冷却手段によって冷却し、次い
で5分間から5時間空冷した後、300℃まで噴水冷却
または衝風冷却若しくは油冷却のうち1種以上の冷却手
段によって冷却し、前記タービンロータ素材の低圧部に
相当する部分は、油焼入れ以上の速度が得られる冷却手
段により冷却する構成としたので、高圧部を980℃以
上1100℃以下の高温度領域からの焼入れてもクリー
プ脆化を起こさない高低圧一体型タービンロータを容易
に製造することができる。
【0134】また、0.2%耐力に優れ、シャルピー衝
撃値も高く、靱性に優れた低圧部を備えた高低圧一体型
タービンロータが容易に得られる。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
【表11】
【0146】
【表12】
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る高低圧一体型タービン
ロータ素材の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 初析フェライト相 2 ベーナイト相 3 結晶粒界 4 炭・窒化物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F01D 5/28 F01D 5/28 (56)参考文献 特開2002−256378(JP,A) 特開 平9−194946(JP,A) 特開 平9−268343(JP,A) 特開 昭60−17016(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/28

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高圧部と低圧部とが一体に形成された高
    低圧一体型タービンロータであって、 重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.15
    %以下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケル:
    0.3%超〜2.5%、クロム:1.0〜3.0%、モ
    リブデン:0.5〜1.5%、タングステン:0.1〜
    3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%を含み、燐:
    0.012%以下、硫黄:0.005%以下、銅:0.
    15%以下、アルミニウム:0.01%以下、砒素:
    0.01%以下、錫:0.01%以下、アンチモン:
    0.003%以下であって、残部が不可避的不純物を含
    む鉄からなる組成を有し、 前記高圧部の金属組織が、体積%で10%を超え40%
    以下の初析フェライト相と残部のベーナイト相からなる
    ことを特徴とする高低圧一体型タービンロータ。
  2. 【請求項2】 高圧部と低圧部とが一体に形成された高
    低圧一体型タービンロータであって、 重量%で炭素:0.20〜0.35%、珪素:0.15
    %以下、マンガン:0.05〜1.0%、ニッケル:
    0.3%超〜2.5%、クロム:1.0〜3.0%、モ
    リブデン:0.5〜1.5%、タングステン:0.1〜
    3.0%、バナジウム:0.1〜0.3%を含み、さら
    にニオブ:0.01〜0.15%、タンタル:0.01
    〜0.15%、窒素:0.001〜0.05%、硼素:
    0.001〜0.015%のうちから選ばれたいずれか
    一種以上を含み、燐:0.012%以下、硫黄:0.0
    05%以下、銅:0.15%以下、アルミニウム:0.
    01%以下、砒素:0.01%以下、錫:0.01%以
    下、アンチモン:0.003%以下であって、残部が不
    可避的不純物を含む鉄からなる組成を有し、 前記高圧部の金属組織が、体積%で10%を超え40%
    以下の初析フェライト相と残部のベーナイト相からなる
    ことを特徴とする高低圧一体型タービンロータ。
  3. 【請求項3】 前記初析フェライト相中に平均粒径0.
    5μm以下の炭・窒化物が微細分散していることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の高低圧一体型タービンロ
    ータ。
  4. 【請求項4】 高圧部と低圧部とが一体に形成された高
    低圧一体型タービンロータを製造するに際して、 所定の組成を有するタービンロータ素材の高圧部に相当
    する部分を980℃以上1100℃以下に加熱し、該タ
    ービンロータ素材の低圧部に相当する部分を850℃以
    上980℃未満に加熱した後、 前記タービンロータ素材の高圧部に相当する部分を、9
    00℃から700℃の所定の温度までは噴水冷却または
    衝風冷却のうち1種以上の冷却手段によって冷却し、 次いで5分間から5時間空冷した後、300℃まで噴水
    冷却または衝風冷却若しくは油冷却のうち1種以上の冷
    却手段によって冷却し、 前記タービンロータ素材の低圧部に相当する部分は、油
    焼入れ以上の速度が得られる冷却手段により冷却する高
    低圧一体型タービンロータの製造方法であって、 前記タービンロータ素材を、重量%で炭素:0.20〜
    0.35%、珪素:0.15%以下、マンガン:0.0
    5〜1.0%、ニッケル:0.3%超〜2.5%、クロ
    ム:1.0〜3.0%、モリブデン:0.5〜1.5
    %、タングステン:0.1〜3.0%、バナジウム:
    0.1〜0.3%を含み、燐:0.012%以下、硫
    黄:0.005%以下、銅:0.15%以下、アルミニ
    ウム:0.01%以下、砒素:0.01%以下、錫:
    0.01%以下、アンチモン:0.003%以下であっ
    て、残部が不可避的不純物を含む鉄からなる組成を有す
    る合金鋼としたことを特徴とする高低圧一体型タービン
    ロータの製造方法。
  5. 【請求項5】 高圧部と低圧部とが一体に形成された高
    低圧一体型タービンロータを製造するに際して、 所定の組成を有するタービンロータ素材の高圧部に相当
    する部分を980℃以上1100℃以下に加熱し、該タ
    ービンロータ素材の低圧部に相当する部分を850℃以
    上980℃未満に加熱した後、 前記タービンロータ素材の高圧部に相当する部分を、9
    00℃から700℃の所定の温 度までは噴水冷却または
    衝風冷却のうち1種以上の冷却手段によって冷却し、 次いで5分間から5時間空冷した後、300℃まで噴水
    冷却または衝風冷却若しくは油冷却のうち1種以上の冷
    却手段によって冷却し、 前記タービンロータ素材の低圧部に相当する部分は、油
    焼入れ以上の速度が得られる冷却手段により冷却する高
    低圧一体型タービンロータの製造方法であって、 前記タービンロータ素材を、重量%で炭素:0.20〜
    0.35%、珪素:0.15%以下、マンガン:0.0
    5〜1.0%、ニッケル:0.3%超〜2.5%、クロ
    ム:1.0〜3.0%、モリブデン:0.5〜1.5
    %、タングステン:0.1〜3.0%、バナジウム:
    0.1〜0.3%を含み、さらにニオブ:0.01〜
    0.15%、タンタル:0.01〜0.15%、窒素:
    0.001〜0.05%、硼素:0.001〜0.01
    5%のうちから選ばれたいずれか一種以上を含み、燐:
    0.012%以下、硫黄:0.005%以下、銅:0.
    15%以下、アルミニウム:0.01%以下、砒素:
    0.01%以下、錫:0.01%以下、アンチモン:
    0.003%以下であって、残部が不可避的不純物を含
    む鉄からなる組成を有する合金鋼としたことを特徴とす
    る高低圧一体型タービンロータの製造方法。
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