JP3505680B2 - 射出成形機の保圧制御方法及び保圧制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は射出成形機の保圧制
御方法及び保圧制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】射出成形機における保圧工程は、一定時
間金型内の樹脂に圧力をかけ続け、その間に成形品の冷
却に伴い収縮する樹脂の体積を補うため、金型内に必要
な樹脂を補給する工程である。また、成形品の形状や樹
脂の特性によりその成形品に適した保圧設定が存在す
る。そのため、保圧工程は良品の完成度を左右しやす
い。

【０００３】現在の射出成形機では不良品が発生した場
合の対処として、保圧圧力の立ち上がり・立ち下がり特
性を規定する加減圧力応答の変化率を選択設定できるよ
うにしている。また、保圧工程の設定は、一般的には２
段階程度の設定で行うが、バリなどの発生しやすい金型
や超厚肉成形品では３〜４段階の設定が有効である。そ
して、このような多段の保圧工程で成形する場合に各段
に共通の加減圧力応答による設定モードを用いて不良防
止を図っている。

【０００４】図４は、保圧工程を４段に分割設定した従
来の保圧制御装置の構成の一例を示す。図４において、
この保圧制御装置は、モード設定部４１、パターン記憶
部４２、圧力設定部４３を備えている。モード設定部４
１は、４段の各段に共通のモードを選択設定する手段で
あり、ここでのモードは、加減圧力応答を「低応答」
（ソフト）、「中応答」（スタンダード）、「高応答」
（シャープ）の３種類から選択するようにされている。
パターン記憶部４２は、上記の「低応答」、「中応
答」、「高応答」の別に対応した圧力変化パターンを記
憶しており、モード設定部４１で選択されたモードに対
応した圧力変化パターンを出力する。この圧力変化パタ
ーンは、「低応答」、「中応答」、「高応答」の別に応
じて立ち上がりあるいは立ち下がりの特性が異なる。す
なわち、「低応答」であれば立ち上がりあるいは立ち下
がりが緩やかであり、「高応答」であれば立ち上がりあ
るいは立ち下がりが急峻になる。

【０００５】圧力設定部４３は、１段圧力設定部４３−
１、２段圧力設定部４３−２、３段圧力設定部４３−
３、及び４段圧力設定部４３−４から成り、オペレータ
により各段毎に保圧圧力が設定される。例えば、１段圧
力設定部４３−１について言えば、オペレータにより設
定された１段目の保圧圧力にパターン記憶部４２からの
圧力変化パターンを掛け合わせて１段目の圧力指令を出
力する。

【０００６】なお、上記の保圧制御装置は、保圧制御専
用に射出成形機に独立して備えられるものではなく、射
出成形機に備えられている制御装置、設定条件入力装
置、記憶装置等で実現されるものであり、図４はいわ
ば、その機能構成ブロック図であると言える。

【０００７】いずれにしても、上記の説明で明らかなよ
うに、モード設定部４１で選択設定される加減圧力応答
の変化率は４段の各段に共通である。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、保圧工
程の各段には「バリ防止」、「エア抜き」、「収縮防
止」、「寸法精度」、「応力抜き」などそれぞれ個別の
役割がある。これに対して上記の装置では、各段に適し
た加減圧力応答の変化率を選択しているとは言えず、成
形の自由度を発揮できていない。

【０００９】そこで、本発明の課題は、保圧工程におい
て分割設定された複数段の各段において詳細な保圧設定
を可能とすることで、成形品の完成度を高めるためのよ
り自由度の高い成形を実現できるようにすることにあ
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、射出成
形機の保圧制御方法において、保圧工程を複数段に分割
して、各段の保圧圧力を個別に設定できるようにすると
共に、各段における加減圧力応答の変化率を個別に設定
可能としたことを特徴とする。

【００１１】本発明によればまた、保圧工程を複数段に
分割し、各段を個別の保圧圧力で制御できるようにした
射出成形機の保圧制御装置において、前記各段における
加減圧力応答の変化率を段毎に選択設定するモード設定
手段と、段毎に備えられて前記モード設定手段により選
択設定された加減圧力応答の変化率に応じた圧力変化パ
ターンを出力するパターン出力手段と、前記段毎に出力
された圧力変化パターンと個別に設定された前記保圧圧
力とにより各段の圧力指令値を出力する手段とを備えた
ことを特徴とする射出成形機の保圧制御装置が提供され
る。

【００１２】上記の保圧制御方法及び保圧制御装置のい
ずれにおいても、前記モード設定手段は、前記加減圧力
応答の変化率の種類を、「低応答」、「中応答」、「高
応答」の３種類の中から任意に選択可能である。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１〜図３を参照して、本発明の
実施の形態について説明する。図１は、保圧工程を４段
に分割設定する場合の制御装置の構成を示している。勿
論、この保圧制御装置も、保圧制御専用に射出成形機に
独立して備えられるものではなく、射出成形機に備えら
れている制御装置、設定条件入力装置、記憶装置等で実
現されるものであり、図１はいわば、その機能構成ブロ
ック図であると言える。

【００１４】図１において、４段の各段における加減圧
力応答の変化率を段毎に選択設定するモード設定部１１
と、段毎に備えられてモード設定部１１により選択設定
された加減圧力応答の変化率に応じた圧力変化パターン
を出力するパターン記憶部１２と、段毎に出力された圧
力変化パターンとオペレータにより個別に設定された段
毎の保圧圧力とにより各段の圧力指令値を出力する圧力
設定部１３とを備えている。

【００１５】モード設定部１１は、１段モード設定部１
１−１、２段モード設定部１１−２、３段モード設定部
１１−３、及び４段モード設定部１１−４から成り、パ
ターン記憶部１２は１段モード設定部１１−１〜４段モ
ード設定部１１−４のそれぞれに対応するように接続さ
れた１段パターン記憶部１２−１、２段パターン記憶部
１２−２、３段パターン記憶部１２−３、及び４段パタ
ーン記憶部１２−４から成る。同様に、圧力設定部１３
は、１段パターン記憶部１２−１〜４段パターン記憶部
１２−４のそれぞれに対応するように接続された１段圧
力設定部１３−１、２段圧力設定部１３−２、３段圧力
設定部１３−３、及び４段圧力設定部１３−４から成
る。

【００１６】１段モード設定部１１−１〜４段モード設
定部１１−４においてはそれぞれ、加減圧力応答の変化
率を「低応答」（ソフト）、「中応答」（スタンダー
ド）、「高応答」（シャープ）の３種類の中から選択設
定することができる。１段パターン記憶部１２−１〜４
段パターン記憶部１２−４においてはそれぞれ、「低応
答」、「中応答」、「高応答」の別に対応した圧力変化
パターンを記憶しており、対応するモード設定部で選択
されたモード、すなわち加減圧力応答の変化率に対応し
た圧力変化パターンを出力する。

【００１７】１段圧力設定部１３−１〜４段圧力設定部
１３−４はそれぞれ、対応するパターン記憶部から出力
された圧力変化パターンとオペレータにより設定された
各段における保圧圧力設定値とにより各段の圧力指令値
を出力する。

【００１８】以上の説明で明らかなように、本形態で
は、保圧工程において分割設定された４段の保圧設定を
用いた成形において、各段に適した加減圧力応答の変化
率が必要な場合に、加減圧力応答の変化率を各段個別に
保圧動作モードとして設定可能であることが従来の構成
と大きく異なる。

【００１９】図２に圧力設定部１３において設定される
４段の保圧設定例を示す。図２では、１段圧力設定部１
３−１で「バリ防止」のための「エア抜き」を重視した
低圧の保圧圧力が設定され、２段圧力設定部１３−２で
は「収縮防止」を重視した中圧の保圧圧力が設定されて
いる。また、３段圧力設定部１３−３では「寸法精度」
を重視した高圧の保圧圧力が設定され、４段圧力設定部
１３−４では「応力抜き」を重視した低圧の保圧圧力が
設定されている。

【００２０】図３は、各段の保圧圧力検出例を示してお
り、ここでは、１段モード設定部１１−１において「中
応答」、２段モード設定部１１−２において「低応
答」、３段モード設定部１１−３において「高応答」、
４段モード設定部１１−４において「低応答」がそれぞ
れ選択設定された場合について示している。２段目及び
４段目では、立ち上がりあるいは立ち下がりが最も緩や
かであり、３段目では最も立ち上がりが急峻であり、１
段目ではそれらの中間程度の特性を呈していることが理
解できよう。勿論、保圧工程を何段に分割するかは任意
である。

【００２１】言い換えれば、成形品の状態を観測しなが
ら、樹脂や成形品に適したより詳細な保圧条件の見直し
設定を行うことができる。このため、自由度の高い成形
が可能となり、不良品発生防止の改善など成形品品質の
向上に役立つ。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、保圧工程において分割
設定された複数段の各段において詳細な保圧設定を可能
としたことにより、成形品の完成度を高めるためのより
自由度の高い成形を実現することができ、成形品の品質
向上に寄与せしめることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による保圧制御装置の構成を示したブロ
ック図である。

【図２】図１に示された圧力設定部において設定される
４段の保圧設定例を示した図である。

【図３】本発明において４段の場合の各段の保圧圧力検
出例を示した図である。

【図４】従来の保圧制御装置の構成を示したブロック図
である。

【符号の説明】

１１、４１ モード設定部 １２、４２ パターン記憶部 １３、４３ 圧力設定部

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 45/00 - 45/84 B22D 17/32

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 射出成形機の保圧制御方法において、保
   圧工程を複数段に分割して、各段の保圧圧力を個別に設
   定できるようにすると共に、各段における加減圧力応答
   の変化率を個別に設定可能としたことを特徴とする射出
   成形機の保圧制御方法。
2. 【請求項２】 請求項１記載の保圧制御方法において、
   前記加減圧力応答の変化率の種類を、「低応答」、「中
   応答」、「高応答」の３種類の中から任意に選択可能と
   したことを特徴とする射出成形機の保圧制御方法。
3. 【請求項３】 保圧工程を複数段に分割し、各段を個別
   の保圧圧力で制御できるようにした射出成形機の保圧制
   御装置において、 前記各段における加減圧力応答の変化率を段毎に選択設
   定するモード設定手段と、 段毎に備えられて前記モード設定手段により選択設定さ
   れた加減圧力応答の変化率に応じた圧力変化パターンを
   出力するパターン出力手段と、 前記段毎に出力された圧力変化パターンと個別に設定さ
   れた前記保圧圧力とにより各段の圧力指令値を出力する
   手段とを備えたことを特徴とする射出成形機の保圧制御
   装置。
4. 【請求項４】 請求項３記載の保圧制御装置において、
   前記モード設定手段は、前記加減圧力応答の変化率の種
   類を、「低応答」、「中応答」、「高応答」の３種類の
   中から任意に選択可能であることを特徴とする射出成形
   機の保圧制御装置。