JP3497209B2 - 硫酸化糖の脱硫酸化方法 - Google Patents

硫酸化糖の脱硫酸化方法

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JP3497209B2 JP20914893A JP20914893A JP3497209B2 JP 3497209 B2 JP3497209 B2 JP 3497209B2 JP 20914893 A JP20914893 A JP 20914893A JP 20914893 A JP20914893 A JP 20914893A JP 3497209 B2 JP3497209 B2 JP 3497209B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硫酸化糖の硫酸基を部
分的又は完全に脱硫酸化する方法に関し、更に詳しくは
硫酸化糖の硫酸エステルのうち、第1級水酸基、第2級
水酸基及びアミノ基の何れの基に結合している硫酸基も
脱硫酸化できる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生物活性を有する脱硫酸化糖を提供する
ために、様々な硫酸化糖の脱硫酸方法が研究されてい
る。硫酸化糖の脱硫酸方法としては、塩化水素/メタノ
−ル中で酸触媒により脱硫酸化する方法が知られている
(Kantor T.G. and Schubert M.,J. Amer. Chem. Soc.
79, 152 (1957) )。しかし、この方法ではグリコシド
結合のメタノリシスによる糖鎖の切断が起こるため低分
子化し、もとの鎖長を有する反応生成物の収量は低下す
る。
【0003】収量よく脱硫酸を行う方法として、ジメチ
ルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド又はピ
リジン等の非プロトン性溶媒中〔Usov A. I., Adamyant
s K.S., Miroshnikova L. I., Shaposhnikova A.A. and
Kochetkov N.K.,Carbohydr. Res. 18,336 (1971)〕又
は少量の水又はメタノ−ルを含むジメチルスルホキシド
中〔Nagasawa K., Inoue Y. and Kamata T., Carbohyd
r. Res., 58, 47 (1977) , Nagasawa K., Inoue Y. and
Tokuyasu T , J. Biochem., 86, 1323 (1979)〕で行う
ソルボリシスがある。このソルボリシスの反応機構は、
非プロトン性の溶媒中で三酸化硫黄とアミンの複合体を
用いて行う硫酸化反応の逆反応であることが知られてい
る。この反応は、反応条件をコントロ−ルすることによ
りN−硫酸基を選択的に脱硫酸化する方法として用いる
ことができる。しかし、第1級又は第2級水酸基に結合
しているO−硫酸基を脱離させることはできなかった。
さらに、この方法をオリゴ糖に適用した場合、DMSO
等の溶媒を反応後に除去する操作が煩雑であること、完
全に脱硫酸化するには反応温度を上昇させる必要があ
り、このような反応条件ではグリコシド結合の切断が起
こること、などの問題点がある。他方、糖類の第1級水
酸基に結合した硫酸基を特異的に脱硫酸化する方法とし
て、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド
(BTSA)を用いる方法があるが、この方法では第2
級水酸基やアミノ基に結合した硫酸基を脱硫酸化するこ
とはできない(Matsuo, M., Takano, R., Kamei-Hayash
i, K. and Hata, S.,Carbohydr. Res. 241,209-215,(19
93) )。また、ヘパリンをBTSAを用いて脱硫酸化し
た場合、脱硫酸化率が高くないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】硫酸化糖の脱硫酸化法
の開発は、ヒトに対して好ましい生物活性を有する医薬
品として有用な硫酸化糖を提供するために非常に重要で
ある。例えば、硫酸化多糖であるデキストラン硫酸、キ
シラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等は、脂質
代謝改善剤、抗血栓剤として使用されているが、人工的
に硫酸基を導入したものは、導入した硫酸基の位置が特
定できず、多量に硫酸基を導入するに従い組織からの出
血傾向が強まる副作用が生ずることも知られている。ま
た、天然由来の硫酸化糖は、起源の違いにより硫酸基の
位置、量がそれぞれ異なり、各硫酸化糖の生理活性も微
妙に異なる。すなわち、硫酸化糖の硫酸基の位置及び硫
酸化率を効率よくコントロールする技術が求められてい
る。本発明者は、硫酸化糖の生物活性を改善することを
目的として、脱硫酸化率が高く、グリコシド結合の切断
等の副反応のない、硫酸化糖の脱硫酸化方法を開発すべ
く鋭意検討し、本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の方法は、硫酸化
糖を、下式(I)
【0006】
【化2】 〔式中、Rは同一又は異なるアルキル基又はアリール基
を示す〕で表されるシリル化剤の存在下に脱硫酸化反応
に付すことを特徴とする広範囲の特定位置が選択的に脱
硫酸化された脱硫酸化糖の製造法である。
【0007】すなわち、本発明の方法によれば、硫酸化
糖の第1級水酸基、第2級水酸基及びアミノ基の何れの
基に結合している硫酸基も効率よく脱硫酸化できる。ま
た、反応条件を制御することによって部分的に脱硫酸化
することもできる。
【0008】本発明の方法が適用される硫酸化糖は、単
糖、オリゴ糖、多糖、複合多糖等の糖類の官能基が硫酸
化されたものである。このような硫酸化糖は天然物から
抽出単離されたものであっても、合成されたものであっ
てもよい。特に本発明は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コ
ンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸等の
硫酸基を有するグリコサミノグリカンに適用し、これら
糖類の生理活性を改変もしくは改善するために、必要な
位置に必要な個数(置換度)の硫酸基が結合した硫酸化
糖を得るために有用である。
【0009】本発明では通常脱硫酸化反応を有機溶媒中
で行うので、硫酸化糖は有機溶媒に可溶性の塩として反
応に供される。この様な有機溶媒可溶性塩としては、硫
酸化糖の有機塩基塩が挙げられ、有機塩基としては、ピ
リジン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の芳香
族アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ
ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、
トリオクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチ
ル−1,8−ナフタレンジアミン等の3級アミン;N−
メチルピリミジン、N−エチルピリミジン、N−メチル
モルホリン、N−エチルモルホリン等のN−アルキル複
素環アミン等が挙げられる。硫酸化糖の有機塩基塩は、
遊離の硫酸化糖を有機塩基と反応させることによって容
易に得ることができる。
【0010】脱硫酸化反応は、通常無水の有機溶媒中、
硫酸化糖に前記式(I)で示されるシリル化剤を作用さ
せることによって達成される。反応に使用する有機溶媒
は、硫酸化糖の塩の形成に使用した前記の有機塩基(ピ
リジン等)が好ましいが、有機塩基の代わりに、アセト
ニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、
ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチル
アセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、1,4
−ジオキサン等の非プロトン性溶媒を使用してもよい。
【0011】シリル化剤である式(I)で表される化合
物において、Rは同一又は異なりアルキル基又はアリー
ル基を示し、好ましくは炭素数1〜6の低級アルキル
基、フェニル基である。すなわち、式(I)における
(R)3SiOとしては、トリメチルシリルオキシ、トリ
エチルシリルオキシ、ジメチルイソプロピルシリルオキ
シ、イソプロピルジメチルシリルオキシ、メチルジ−t
−ブチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキ
シ、t−ブチルジフェニルシリルオキシ、トリイソプロ
ピルシリルオキシ等が例示される。式(I)で表される
シリル化剤として最も好ましいものは、2−トリメチル
シロキシペント−2−エン−4−オンである。
【0012】反応は、室温〜100℃において数分〜数
十時間で終了する。室温より低い温度では反応が十分に
進行せず、100℃以上の温度では硫酸化糖のグリコシ
ド結合が開裂するおそれがある。反応条件、特に反応温
度を変化させることによって脱硫酸化の程度を制御する
ことができる。例えば、70〜80℃、30分〜6時間
程度では存在する硫酸基の部分的な脱硫酸化を行うこと
ができ、85〜100℃、10分〜数時間程度の反応で
は、より完全な脱硫酸化を行うことができる。
【0013】シリル化剤の使用量は、硫酸化糖の全水酸
基(非置換及び置換水酸基の全て)1モルに対して2〜
100倍モル程度である。シリル化剤の使用量を変化さ
せることによっても脱硫酸化の程度を制御することがで
きる。部分的に脱硫酸化を行う場合には2〜16倍モル
程度、より完全に脱硫酸化を行う場合にはそれ以上の量
のシリル化剤を使用すればよい。
【0014】脱硫酸化反応の終了後、未反応のシリル化
剤を非反応性とすることにより反応を停止させる。例え
ば、反応液に水を加え、又は/及び反応液を水に対して
透析することによって目的を達成することができる。
【0015】かくして、硫酸化糖から部分的又は完全に
硫酸基が除去された脱硫酸化糖を得ることができる。な
お、脱硫酸化反応後、脱硫酸化糖の水酸基等の官能基は
シリル化されているが、例えば反応液に水を加え又は/
及び反応液を水に対して透析することによりシリル基除
去される。さらに、必要に応じて常法に従ってシリル基
の除去反応を行うこともできる。この反応は、例えば上
記の処理を行った溶液を、アルカリ条件下又は加熱条件
下に置くことによって行う。
【0016】脱硫酸化糖にアニオン性の官能基が存在す
る場合、それに対する対イオンを溶液中に存在させて塩
を形成させることができる。例えば、シリル基除去反応
後の脱硫酸化糖の水溶液に水酸化アルカリ金属(水酸化
ナトリウム等)を添加し、必要に応じて透析した後、凍
結乾燥等の非加熱条件下における脱水工程に付すことに
よって、脱硫酸化糖のアルカリ金属塩を得ることができ
る。
【0017】
【実施例】以下、実施例及び試験例により本発明を更に
詳細に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら制限
するものではない。硫酸化糖の分析は以下の方法に基づ
いて行った。
【0018】硫酸化糖の分析法 1)硫酸基の定量 硫酸化糖及び脱硫酸化糖の硫酸基の定量は、新生化学実
験講座3,糖質II p37,p81(東京化学同人刊)
に記載の方法に従い、酸加水分解により硫酸基を遊離硫
酸イオンとし、次いで該イオンをイオン交換樹脂に吸着
させた後、溶媒を用いて溶出し、その遊離硫酸イオンを
電気電導度計を用いて検出、定量した。すなわち、30
0μg の硫酸化糖に3N −塩酸1mlを加え、100℃で
18時間加水分解した。その溶液を乾燥した後、1mlの
水に溶解した。ミリポア限外ろ過膜(0.45μm )で
ろ過した後、硫酸イオン含量をHPLC(Waters ILC-
1)によるイオン交換クロマロトグラフィーで分析し
た。カラムに IC Pak Anion(Waters, 4.6mm×5c
m)を用い、1.3mM四ホウ酸ナトリウム、1.5mMグ
ルコン酸ナトリウム、6mMホウ酸、0.25%グリセリ
ン及び12%アセトニトリルの組成の移動相を使用し
て、0.8ml/分の流速で展開した。硫酸イオンの検出
には電気電導度計(Waters 430)を用いた。
【0019】2)13C−NMR 硫酸化糖の水酸基の性質を判定する目的で、骨格炭素の
核磁気共鳴スペクトルを測定した。10%糖の重水溶液
でのスペクトルは、80℃、75.4MHz(General Elec
toric Company, QE-300)で測定した。
【0020】3)酵素消化による構造解析 デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等のグ
リコサミノグリカン(ムコ多糖)は構成二糖単位の種々
の位置が硫酸化されており、本発明による脱硫酸化反応
により、どの位置の硫酸が除去されるかを知ることは、
これらのグリコサミノグリカンの生理活性を改変する際
に重要である。
【0021】このようなグリコサミノグリカンの硫酸基
位置の分析は、次のようにして行うことができる。すな
わち、脱硫酸化反応の処理前後のグリコサミノグリカン
を酵素で消化し、生成した不飽和糖を含む二糖(不飽和
二糖;図1参照)を高速液体クロマトグラフィー(HP
LC)で分析した〔新生化学実験講座3,糖質II p4
9〜62に記載の「2・8グリコサミノグリカン分解酵
素とHPLCを組合せた構造解析」参照〕。なお、コン
ドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸に対してはコンドロ
イチナ−ゼABCを、ヘパリンに対してはヘパリン分解
酵素を用いて酵素消化を行った。
【0022】a)コンドロイチナ−ゼABCによる消化 吉田らの方法〔生化学,57,1189 (1985)〕により、デル
マタン硫酸及びコンドロイチン硫酸の水溶液(10mg/m
l)20μl に、0.4M トリス−塩酸(pH 8.0) 20
μl 、0.4M 酢酸ナトリウム20μl 、0.1%ウシ
血清アルブミン20μl 及び水120μl を加え、コン
ドロイチナ−ゼABC(5U/mL)を20μl 加えて、3
7℃で2時間反応させた。
【0023】b)ヘパリン分解酵素による消化 新実験生化学講座3,糖質II p54〜59(東京化学
同人刊)の方法により、ヘパリン0.1 mg を2mM酢酸
カルシウムを含む20mM酢酸ナトリウム (pH7.0) 2
20μl に溶解して、20mUのヘパリナ−ゼ、20mUの
ヘパリチナ−ゼI及びIIを加えて、37℃で2時間反応
させた。なお、脱硫酸化処理によってアミノ基に結合し
た硫酸基が脱離する。このような脱硫酸化ヘパリンには
ヘパリン分解酵素が作用しなくなる。このため、酵素反
応に先立ってアミノ基をアセチル化する必要がある。N
−アセチル化は炭酸ナトリウムまたはダウエックス(Dow
ex) −1(HCO3 -型)イオン交換樹脂を含む水溶液
中、無水酢酸によって定量的に進行する〔「糖鎖工
学」、(株)産業調査会 バイオテクノロジー情報セン
ター発行、324頁参照〕。
【0024】c)HPLCによる分析 コンドロイチナ−ゼABC又はヘパリン分解酵素消化を
行った後の溶液50μl を、HPLC(医理化、モデル
852型)を用いて分析した。イオン交換カラム(島津
PNH2 カラム,4.0mm×250mm)を使用し、2
32nmでの吸光度を測定した。流速1ml/分で、16mM
リン酸水素ナトリウムを60分間に0%から50%まで
上昇させて溶出した。溶出した種々の位置に硫酸基を有
する不飽和二糖のピーク(図2中の各記号で各ピークに
対応する不飽和二糖を表す)を同定した。
【0025】4)ゲルろ過 硫酸化糖の3%溶液10μl をHPLCによるゲルろ過
で分析した。カラムはTSKgel-G4000PWX1 (東ソ−、
7.8mm×30cm)を用い、溶離液に0.2M硫酸カリ
ウムを使用して、1.0ml/分の流速で展開した。硫酸
化糖の検出には示差屈折計(島津,AID−2A)を用
いた。
【0026】 実施例1 メチル α−ガラクトピラノシド−6硫酸ピリジニウム
塩(Gal−6S;1.142mg/ml)及びメチル α
−ガラクトピラノシド−3硫酸ピリジニウム塩(Gal
−3S;0.849mg/ml)のそれぞれを含む水溶液、
各100μl にガスクロマトグラフィー分析の内部標準
として、メチル α−グルコピラノシド(Me−Gl
c)の水溶液(1.000mg/ml)100μl を加えて
凍結乾燥し、脱硫酸化反応の試料とした。凍結乾燥した
試料に乾燥ピリジン100μl と2−トリメチルシロキ
シペント−2−エン−4−オン(以下TPENONとい
う)各100μl を加え、封管後40℃で5時間加熱し
て脱硫酸化反応を行った。完全にO−トリメチルシリル
化してガスクロマトグラフィー分析を行うために、トリ
メチルシリルイミダゾールを反応液に加えて、80℃で
20分間加熱した。この溶液各1μl をガスクロマトグ
ラフィーで分析し、遊離したメチル α−ガラクトピラ
ノシド量を定量したところ、Gal−6Sの52.24
%、Gal−3Sの10.91%が脱硫酸化されてい
た。また、TPENON処理前後に各硫酸化糖の硫酸基
を定量したところ、処理前のGal−6S及びGal−
3Sの硫酸基含量は何れも35.1%であったが、TP
ENON処理後には、それぞれ16.5%及び30.8
%であった。この結果から明らかなように、TPENO
Nを用いると第1級水酸基及び第2級水酸基に結合した
硫酸基のいずれも脱硫酸化することができる。一方、脱
硫酸化剤として公知のBTSAを用いて同様に反応を行
ったところ、Gal−6Sはほぼ完全に脱硫酸化された
が、Gal−3Sは2.12%しか脱硫酸化されなかっ
た。すなわち、BTSAを用いても第2級水酸基に結合
した硫酸基は、ほとんど脱硫酸化されない。
【0027】実施例2及び比較例1 ヘパリン−ピリジニウム塩(硫酸基の位置及び量比は後
述の表2参照)200mgを乾燥ピリジン20mlに溶か
し、これにTPENON4mlを添加して封管した。70
℃で2時間加熱した後、反応液を大過剰の水に対して1
夜透析した。透析内液に1N 水酸化ナトリウム溶液を加
えてpH9に調整し、再び大過剰の水に対して3日間透析
した。この間、透析外液の水を1日に2回交換した。透
析後、非透析画分を凍結乾燥して部分脱硫酸ヘパリン−
ナトリウム塩を得た(収量138mg)。一方、比較例と
して、ヘパリン−トリブチルアンモニウム塩186mgを
乾燥ピリジン20mlに溶かし、これにBTSA4mlを添
加し、20℃で30分間放置した。反応液を大過剰の水
に対して1夜透析した。透析内液に1N 水酸化ナトリウ
ム溶液を加えてpH9〜10に調整し、再び大過剰の水に
対して3日間透析した。この間、透析外液の水を1日に
2回交換した。透析後、非透析画分を凍結乾燥して部分
脱硫酸ヘパリン−ナトリウム塩を得た(収量140m
g)。上記それぞれの方法で得られた脱硫酸ヘパリン−
ナトリウム塩の各種分析結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】表中、ウロン酸含量は、グルクロノラクト
ンを標準物質とし、カルバゾール−硫酸法(T.Bitter,
H.N.Muirの改良法による)によって測定し、ウロン酸を
−C676 Na−(Mw=198) として計算し
た。硫酸基含量は、ロジゾン酸法によって測定し、硫酸
基を−SO3 Naとして計算した。モル比は、カルバゾ
ール・硫酸法におけるヘパリン中のウロン酸の発色率が
通常の50%増とされているため、これを補正して算出
した。TPENONによって脱硫酸化したヘパリンにつ
いて13C−NMRスペクトルを測定した。なお、比較の
ために未処理のヘパリン、ソルボリシスによってN−脱
硫酸化したヘパリン〔Y.Inoue et al, Carbohydr. Re
s.,46, 87-95(1976)の方法による〕及び完全脱硫酸化ヘ
パリン〔A.Ogamo et al, Carbohydr. Res.,193,165-172
(1989) の方法による〕についても13C−NMRスペク
トルを測定した。その結果、イズロン酸2−硫酸(Id
oA−2S)の硫酸基の一部が脱離したこと(IdoA
−2SのC−1のピークの他にイズロン酸(IdoA)
のC−1のピークが出現した)、グルコサミン部分の6
−硫酸が脱離したこと(グルコサミンのC−6のピーク
が出現した)、グルコサミン部分の6−硫酸の一部が脱
離したこと(N−脱硫酸化ヘパリンのグルコサミン6−
硫酸のC−1のピークと同位置のピークの左側に完全脱
硫酸化ヘパリンのグルコサミンのC−1と同位置のピー
クが出現した)などが判明した。
【0030】実施例3及び比較例2 コンドロイチン硫酸−ピリジニウム塩(鮫由来;6−硫
酸:4−硫酸:4,6−ジ硫酸の量比は後述の表3参
照)200mgを乾燥ピリジン20mlに溶かし、これにT
PENON4mlを添加して封管した。70℃で2時間加
熱した後、実施例2と同じ操作で部分脱硫酸コンドロイ
チン硫酸−ナトリウム塩を得た(収量156mg)。TP
ENON処理前後に硫酸基を定量したところ、処理前の
硫酸基含量は19.8%であったが、TPENON処理
後には3.6%となっていた。一方、比較例2として、
コンドロイチン硫酸−ピリジニウム塩200mgを、BT
SA4mlを使用した他は上記と同じ操作で反応及び精製
を行い、部分脱硫酸コンドロイチン硫酸−ナトリウム塩
を得た。上記各反応生成物及び未処理のコンドロイチン
硫酸について、13C−NMRスペクトルを測定した。そ
の結果、TPENON処理コンドロイチン硫酸では、コ
ンドロイチン4−硫酸に由来するピークが消滅し、全て
脱硫酸化されてコンドロイチンが生じるためにピークが
単純化されたが、BTSA処理コンドロイチン硫酸で
は、6−硫酸が脱硫酸化されて生成したコンドロイチン
及びコンドロイチン4−硫酸の両方のピークが認められ
た。
【0031】実施例4 デルマタン硫酸−ピリジニウム塩(6−硫酸:4−硫
酸:4,6−ジ硫酸の量比は後述の表4参照)200mg
を乾燥ピリジン20mlに溶かし、これにTPENON4
mlを添加して封管した。70℃で2時間加熱した後、実
施例2と同じ操作で部分脱硫酸デルマタン硫酸−ナトリ
ウム塩を得た(収量148mg)。TPENON処理前後
に硫酸基を定量したところ、処理前の硫酸基含量は1
5.3%であったが、TPENON処理後には4.4%
となっていた。上記反応生成物及び未処理のデルマタン
硫酸について、13C−NMRスペクトルを測定した。そ
の結果、脱硫酸化されて生じたN−アセチル−D−ガラ
クトサミンのC−4に由来するピークが出現し、イズロ
ン酸のC−1のピークのパターンが変化していた。
【0032】試験例 (1)酵素消化による構造解析 実施例2〜4で得られた、部分脱硫酸化されたヘパリ
ン、コンドロイチン硫酸及びデルマタン硫酸のそれぞれ
について、更に詳しい構造変化を調べるために、2糖単
位に酵素消化してHPLCにより分析した。また、比較
のために脱硫酸化を行っていない各硫酸化糖も同様に分
析した。酵素消化によって生成した不飽和二糖の各種異
性体(図1)のHPLC分画クロマトグラムを図2に示
す。また、各種異性体のHPLC画分の量比(%)を、
表2にヘパリン、表3にコンドロイチン硫酸、表4にデ
ルマタン硫酸について示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】図2及び表2〜4より以下のことが明かと
なった。すなわち、ヘパリンでは、TPENON処理に
よってウロン酸の2位水酸基、グルコサミンの2位アミ
ノ基及び6位水酸基の全てが硫酸化されたΔDiHS−
tri(U,6,N)Sが殆ど無くなり、殆どもしくは
全く存在しなかったΔDiHs−OS(全てが脱硫酸化
されたもの)及びΔDiHS−di(U,6)S(ウロ
ン酸の2位及びグルコサミンの6位が硫酸化されたも
の)が著しく増加していた。すなわち、2位アミノ基に
結合した硫酸基は著しく減少し、その他の硫酸基も相当
量減少していた。コンドイチン硫酸では、6−硫酸、4
−硫酸、4,6−ジ硫酸等の混合物を用いたが、TPE
NON処理によってガラクトサミンの6位水酸基が硫酸
化されたΔDi−6S及び4位水酸基が硫酸化されたΔ
Di−4Sが相当量減少し、ΔDi−0S(全てが脱硫
酸化されたもの)が著しく増加していた。デルマタン硫
酸では、殆んどが4−硫酸であり、6−硫酸が少量混ざ
っているものを用いたが、TPENON処理によってガ
ラクトサミンの4位水酸基が硫酸化されたΔDi−4S
が相当量減少し、ΔDi0S(全てが脱硫酸化されたも
の)が著しく増加していた。
【0037】(2)ゲルろ過 TPENON処理前後のヘパリン、コンドロイチン硫
酸、デルマタン硫酸について、ゲルろ過によって分子量
変化を調べ、結果を表5に示した。
【0038】
【表5】
【0039】 表5に示したように分子量分布の変化は
殆んど認められず、TPENON処理による硫酸化糖の
グリコシド結合の切断(低分子化)は起こらなかった。
【0040】
【発明の効果】本発明による脱硫酸化反応は、BTSA
を用いる場合とは異なり、アミノ基に結合している硫酸
基を優先的に脱硫酸化するが、第1級水酸基及び第2級
水酸基の何れの基に結合している硫酸基も効率よく脱硫
酸化し、グリコシド結合には影響を与えない方法であ
る。すなわち、第1級水酸基に結合している硫酸基(例
えば、ヘパリン、コンドロイチン6−硫酸の6−O−硫
酸基)に特異的なBTSAによる脱硫酸化とは異なった
機構によって脱硫酸化が進むものと考えられる。また、
BTSAによる脱硫酸化と比較して、より完全な脱硫酸
化を行うことが可能で、反応条件を制御すれば部分的な
脱硫酸化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】グリコサミノグリカンを酵素消化することによ
って生成する各種不飽和二糖の各種異性体の構造と略称
の関係を示すものである。
【図2】酵素消化によって生成した不飽和二糖の各種異
性体のHPLC分画クロマトグラムを示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 37/00,37/18 REGISTRY(STN) CAPLUS(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸化糖を下式(I) 【化1】 〔式中、Rは同一又は異なるアルキル基又はアリール基
    を示す〕で表されるシリル化剤の存在下に脱硫酸化反応
    に付することを特徴とする脱硫酸化糖の製造法。
  2. 【請求項2】 硫酸化糖を有機溶媒可溶性塩とし、反応
    を有機溶媒中で行う請求項1記載の脱硫酸化糖の製造
    法。
  3. 【請求項3】 有機溶媒可溶性塩がピリジニウム塩であ
    り、有機溶媒がピリジンを含む有機溶媒である請求項2
    記載の脱硫酸化糖の製造法。
  4. 【請求項4】 脱硫酸化反応後、更にシリル化された水
    酸基のシリル基を除去する請求項1記載の脱硫酸化糖の
    製造法。
  5. 【請求項5】 硫酸化糖の有機溶媒可溶性塩に、有機溶
    媒中で下式(I)記載のシリル化剤を作用させることに
    より得られうる脱硫酸化された硫酸化糖であって、前記
    硫酸化糖がコンドロイチン硫酸又はデルマタン硫酸であ
    り、脱硫酸化された硫酸化糖が脱硫酸化されたコンドロ
    イチン硫酸の場合、△Di−4Sが5.6%又は△Di
    −0Sが81.2%であり、脱硫酸化されたデルマタン
    硫酸の場合、△Di−4Sが21.1%又ば△Di−0
    Sが71.3%である脱硫酸化糖。 【化3】 〔式中、Rは同一又は異なるアルキル基又はアリール基
    を示す〕
  6. 【請求項6】 ヘパリンの有機溶媒可溶性塩に、有機溶
    媒中で下式(I)記載のシリル化剤を作用させることに
    より得られうる脱硫酸化ヘパリンであって、ヘパリン分
    解酵素による消化産物をHPLCにより解析した際に、
    △DiHS−di(6,N)S又は△DiHS−di
    (U,N)Sが実質的に検出されないことを特徴とする
    脱硫酸化ヘパリン。 【化4】 〔式中、Rは同一又は異なるアルキル基又はアリール基
    を示す〕
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