JP3496577B2 - 特に大型製品に適合した亜共晶系高クロム鋳鉄材およびその製造方法 - Google Patents

特に大型製品に適合した亜共晶系高クロム鋳鉄材およびその製造方法

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JP3496577B2 JP16227899A JP16227899A JP3496577B2 JP 3496577 B2 JP3496577 B2 JP 3496577B2 JP 16227899 A JP16227899 A JP 16227899A JP 16227899 A JP16227899 A JP 16227899A JP 3496577 B2 JP3496577 B2 JP 3496577B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高クロム鋳鉄材、特
に大型の耐摩耗部材、たとえば肉厚200mmにも及ぶ
ような大型部材の高クロム鋳鉄に係る。
【0002】
【従来の技術】古来、建設機械、窯業、砕石、採鉱、電
力、浚渫などの設備や産業用機械においては、取り扱う
原料、素材との接触、擦過する部材の摩耗が著しく、構
造物としての物理的強度の他に、耐摩耗性が重要な条件
となって各種の耐摩耗材が開発され用途に応じて使い分
けされている。
【0003】耐摩耗材はある期間の使用によって自らも
摩耗退入し所定の作業効率を挙げることができなくなる
から当然取り替えなければならない。そのため一層長期
間の使用に耐えてより多量の原料を破砕、粉砕、搬送な
ど目的の処理を施すための高度な耐摩耗性と、構造部材
として所定の機械的強度を満足できる材料が求められ、
高クロム鋳鉄が耐摩耗材の内でも広範に多用された。
【0004】表1は周知のASTM:A532/A53
2Mに規定する高クロム鋳鉄材の化学成分の抜粋であ
り、クラス1はいわゆるニハード(Ni−Hard)
材、クラス2および3は高クロム材であり、亜共晶の範
囲にあるC値にCrを主体にNi、Moを添加して高硬
度の炭化物を析出して基地内に分散し、全体として緻密
で強固な耐摩耗組織を形成することが基本的な原則であ
る。
【0005】
【表1】
【0006】しかし、耐摩耗材も機械、装置を構成する
部材としての役割を分担しているから、機械的な強度、
特に靭性の面からも組織や成分を選択して耐摩耗性と靭
性の両要件を併立しなければないらない。CとCrの含
有量比を操作することによって耐摩耗性の向上に有効な
高硬度の炭化物量を適当量晶出させることが出来るが、
炭化物量比が高くなると靭性低下による機械的強度が保
証出来なくなり、逆に炭化物量比を下げると耐摩耗性が
低下する。このため、CとCr比により規定される共晶
点を少し下回る亜共晶狙いの組成とし、且つ硬化焼入れ
熱処理により基地硬度を高めた材料が一般に用いられて
いる。
【0007】従来の高クロム鋳鉄系材料は、C2.5〜
3.3重量%、Cr15.0〜30.0重量%を主成分
とし、これに数%台のNi、Moおよび若干量の炭化物
形成元素(W・V・等)を添加した材料が適用されて来
たのは、現地における使用結果や研究開発によって得ら
れた結論であり、この基本材料から出発して後述のよう
な多数の従来技術に発展している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年、作業効率、省
力、省人化によるコストダウンの要求が一段と高まり、
当然、処理能力の向上を求めて装置、機械の大型化が進
む趨勢にある。このことは必然的に個別の耐摩耗部材自
体の大型化を意味し、部材の機能、すなわち耐摩耗性の
一層の向上を迫られる一方、大型化のために新たに発生
する大きな課題と直面する。すなわち耐摩耗部材が厚肉
化および超重量化されて来ると、凝固過程で晶出する炭
化物量は確保出来ても部材の質量効果から焼入れによる
素地硬化の確保が難しくなり、結果的には素地の焼入れ
が不十分のまま、即ち基地硬度が低いまま、主として炭
化物量による耐摩耗性のみを期待した材料の適用に留ま
ざるを得ないという限界に突き当たる。
【0009】一般に熱処理により金属材料の焼入れ性を
確保するには、冷却速度を早めるか、或いは低合金調質
鋼で処理されるように焼入れ硬化能が高い合金元素を添
加する手段が講じられる。しかし、高クロム鋳鉄系材料
は脆性なクロム炭化物が30〜40%面積率で晶出して
いるため、水、油等による急激な焼入れ手段を採ること
が出来ないから空冷焼入れを行わざるを得ないが、対象
部材が厚肉化、超重量化すると焼入れ性を確保すること
が出来ず、肉厚中央部では所望の基地硬度に達しない
し、ブロアー等による強制空冷焼入れで冷却速度を高め
れば、表面と内部の冷却速度の差異に基づく熱応力で焼
き割れを生じることが多くなる。また硬化能が高いとさ
れているMo・Mnは炭化物形成元素でもあるため、多
量に添加すると塊状の炭化物が形成されて材料の脆化を
促し、基地の焼入れ性は改善されても逆に焼割れが生じ
易くなる。
【0010】製品の大型化に対応するための従来技術と
して、特開平2−115343号公報ではC:2.8〜
3.5、Mo:1.0〜3.0、Cr:15〜25、N
i:0.5〜2.0(何れも重量%)よりなる高クロム
鋳鉄に、Ti:2〜5重量%とNを含有させてTiC、
TiCNを組織内に分散させ、きわめて高硬度の炭化物
よりなる材料(MC形炭化物)を得たとあり、特開昭6
1−42553号公報でもC:2.5〜3.5、Cr:
10〜25、Ni:3.0以下、Mo:3.0以下、T
i:5.0〜20.0(何れも重量%)を含み、靭性、
耐摩耗性の両者が優れた合金鋳鉄を開発したと謳う。さ
らに特開平6−240403号公報ではC:2.8〜
3.6、Cr:10〜20,Ni:0.5〜1.5、M
o:1.0〜2.0、W:0.2〜0.8、V:0.5
〜1.2、B:0.2以下(何れも重量%)を含み、焼
入れ温度T(℃)=Cr(重量%)×7+865±20
の範囲に限定することによって、すなわち、低いCr%
では比較的低い焼入れ温度に抑えることによって最高硬
度の得られる焼入れ温度とCr%との相関性を確立し
た。
【0011】しかしながら、これら3件の従来技術はす
べて析出する炭化物の硬度をさらに向上することにのみ
着目した改良であるから、製品の大型化に伴って基地の
中央部と表層面付近との間における冷却速度の差や、こ
れに伴う焼割れ、または硬度の大きなバラツキについて
は何の解決を示唆することも出来ず、厚肉の中央部と表
層面近くにおける耐摩耗性の差を縮めるという本発明の
課題解決には無縁と言わざるを得ない。加えて前2件は
高価なTiを相当な配合率で添加することを要件とする
から、原価上の大きな負担増も無視できない。
【0012】本発明は以上の課題を解決するために、た
とえば肉厚が最大部分では200mmを超え、単重が1
0トン近くに及ぶ大型部材であっても、肉厚の中央部分
も表層近くの部分もほぼ同じレベルの高い基地硬度を保
ち、それゆえに従来技術に比べて一段と耐摩耗性の優れ
た大型部材用の高クロム鋳鉄材を提供することを目的と
する。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る最大肉厚2
00mmに及ぶ大型製品に適合した高クロム鋳鉄材は
C:2.80〜3.50%、Si:0.30〜1.20
%、Mn:0.70〜1.80%、Cr:15.0〜3
0.0%、Mo:2.00〜4.00%、Ni:0.7
0〜2.00%、N:0.20〜0.40%(何れも重
量%)および不可避的不純物、残りFeよりなる亜共晶
系高クロム鋳鉄において、γ−Fe中へ固溶したNがベ
イナイト変態完了時間を長くすることにより最大肉厚2
00mmに及ぶ大型鋳造品においても肉厚中央部、表層
部を問わず基地硬度がマイクロビッカース硬さ(以下H
mVで表す)800以上で、肉厚断面の全域に亘って
その基地硬度が変らないことによって前記の課題を解決
した。
【0014】 また本発明に係る高クロム鋳鉄材の製造
方法はC:2.80〜3.50%、Si:0.30〜
1.20%、Mn:0.70〜1.80%、Cr:1
5.0〜30.0%、Mo:2.00〜4.00%、N
i:0.70〜2.00%、N:0.20〜0.40%
(何れも重量%)および不可避的不純物、残りFeより
なる亜共晶系高クロム鋳鉄の溶湯を鋳造し、鋳放し手入
れを完了後、最大肉厚200mmに及ぶ大型製品でも焼
割れを生じない冷却速度で緩冷し、Nのオーステナイト
安定化作用によって相変態を長時間側へ移行して前記冷
却速度でも基地の焼入性を維持して肉厚の中央部と表層
部とが共に等しく高硬度を確保して少なくともHmV:
800以上の高硬度基地を形成し、該基地全体に分散析
出した超高硬度炭化物と相まって、耐摩耗組織を肉厚断
面の全域に亘って形成することによって前記の課題を解
決した。
【0015】本発明の高クロム鋳鉄材は一定の靭性も具
えることを前提に亜共晶範囲のC−Crに抑え、耐摩耗
性の根源を形成する高硬度を得るためにバランスするC
r、Ni、Moを添加して炭化物を分散析出させる点で
は従来技術の一般原則の範疇に入る。最大の技術的特徴
は基地の強化にあり、厚肉大型製品に適合して肉厚断面
の全域に亘って硬度のバラツキが小さく、しかも全体と
しては従来技術の基地硬度を大幅に凌駕するレベル(H
mV800以上)を保持することを以て前記課題を解決
する。
【0016】この基地硬度の均等な、かつ大幅な向上作
用は、オーステナイト安定化元素、特にNが冷却速度の
遅い場合でも安定して基地の焼入れ性を確保することに
よって発揮される。すなわち、N、Mn、Niなどのオ
ーステナイト安定元素は基地組織の連続冷却変態曲線で
見られる相変態、すなわちマルテンサイト〜ベイナイト
出現曲線を長時間側へ移行させる作用がある。特にNの
場合、侵入型としてFeのγ−格子に固溶するN原子
が、相変態を抑制しγ−Feを安定にすることが知られ
ており、固溶NはS曲線を右にずらすと共にα結晶粒の
核発生を遅らせ、Fe−C系で生ずる550℃のノーズ
を低温側へ下げ、ベイナイト変態を完了する時間も長く
なるという報告が見いだされる。(たとえばEleme
nt ofHardenability ASM[19
50]:150など)本発明ではこの観点から種々の亜
共晶系高クロム鋳鉄材についてγ〜α変態を長時間側へ
移行させる成分の適量添加が厚肉大型製品の品質の安定
強化、特に耐摩耗性の均等性とレベルアップに最適であ
ることを見出した点に最大の特徴がある。
【0017】つぎに本発明に係る亜共晶系高クロム鋳鉄
材の化学成分の限定理由について説明する。CはCr、
Mo,Wなどと結合して硬質な炭化物を晶出、または熱
処理によって二次析出させる元素であるが、2.80重
量%未満では上記炭化物の生成量(晶出、析出)が不足
し、耐摩耗性を低下させる。一方、3.50重量%を超
えると炭化物が過剰に生成、またはCr含有量によって
は過共晶域となって靭性低下による構造部材としての機
械的強度が保証できなくなる。よってC:2.80〜
3.50重量%とした。
【0018】Siは脱酸および溶湯の流動性など鋳造性
を確保するために必要な元素であるが、0.30重量%
以下ではその効果がなく、1.20重量%を超えると靭
性の低下と共に焼入れ性の阻害、ならびに厚肉、超重量
部材では凝固過程で相変態(トルースタイト)による凝
固割れを来すため、0.30〜1.20重量%に限定し
た。
【0019】Mnは脱酸および不可避的不純物元素であ
るSの固定作用と共に、オーステナイト安定化による焼
入れ性確保に有効な元素であるが、0.70重量%未満
ではその効果が見られず、一方、1,80重量%を超え
るとオーステナイト安定化により焼入れ性を阻害し基地
硬度が低下する。これにより0.70〜1.80重量%
に限定した。
【0020】NiもMnと同様オーステナイト安定化に
よる焼入れ性確保、ならびに凝固過程の相変態防止に有
効な元素であるが、0.70重量%未満ではその効果が
見られず、2.00重量%を超えると焼入れ性を阻害
し、基地硬度の低下を来すので0.70〜2.00重量
%とした。
【0021】 さらにNについてもオーステナイト安定
化による焼入れ性確保に不可欠な元素であるが、0.2
重量%未満ではその効果が見られず、0.40重量%
を超えると過飽和なNが凝固過程で放出されガスによる
鋳造欠陥を生じやすくする。よって0.20〜0.40
重量%に限定した。
【0022】CrはCと結合して硬質な炭化物を晶出さ
せ耐摩耗性を確保すると共に、基地に固溶して焼入れ性
ならびに機械的強度を高める重要な元素である。15重
量%未満では生成炭化物量が不足し、一方、30重量%
を超えると炭化物が過剰に生成(晶出、析出)し、また
はC含有量によっては過共晶域となって、共に靭性低下
による構造部材としての機械的強度が保証できなくな
る。よってCrは15.0〜30.0重量%に限定し
た。
【0023】Moは晶出炭化物に固溶し硬度を高めると
共に基地の焼入れ性改善に効果が高い元素であるが、
2.00重量%ではその効果が期待できず、4.00重
量%を超えると過剰な炭化物が形成されて脆化を促し、
焼割れを生じやすくする。よってMoは2.00〜4.
00重量%に限定した。
【0024】W、V、Nb、Ti、Bなど炭化物形成元
素は晶出炭化物に固溶し硬度を高めると共に、一部基地
に固溶して硬質、微細な炭化物を脆化に影響しないよう
基地中に二次析出させ、かつ二次炭化物の析出により基
地オーステナイトを不安定化しマルテンサイト〜ベイナ
イト変態を促進しやすくするが、0.20重量%以下で
はその効果が見られず、合計で1.00重量%を超える
複合添加は二次炭化物が多量に析出し、基地中のCを枯
渇させてマルテンサイト〜ベイナイト変態による基地硬
度の低下を招く。よって炭化物形成元素の複合添加は合
計で0.20〜1.00重量%の範囲に限定した。
【0025】
【発明の実施の形態】表2は本発明の作用を確認するた
めに実施した実施例および比較例の化学成分であり、比
較例は表1に示したASTMクラス2の基準に従った汎
用材1〜3と、該汎用材へさらに公知の炭化物の硬化促
進元素を増量添加した改良材4〜6よりなり、本発明の
実施例1〜3はCr:15〜30%の各レベルをNi、
Moで強化した公知の構成へ、特にS曲線を長時間側へ
移行させる目的でNを配合した成分よりなっている。
【0026】
【表2】
【0027】これらの比較例、実施例の成分よりなる試
験片を1000℃まで加熱した後、合計4.75hrか
けて緩冷した。この冷却速度の根拠は最大肉厚200m
m、製品単重8トンのローラタイヤ実体の空冷速度、す
なわち焼割れを生じない限度における放冷焼入れとし
て、1000℃〜600℃:20分、600℃〜400
℃:1.1hr、400℃〜150℃:3.3hr、合
計4.75hrの緩冷の熱処理曲線を想定して決定した
ものである。
【0028】表3は表2の成分よりなる比較例、実施例
のそれぞれを前記放冷焼入を想定した緩冷速度で到達し
た最終の基地硬度と、それぞれの試験片を3種類の異な
る摩耗試験に供して得られた結果を汎用基準材と比較し
た耐摩耗倍数である。汎用基準材とは従来技術の代表と
して汎用の亜共晶26%高クロム鋳鉄材から30mmの
厚さに切り出し、基準熱処理である空冷焼入を施した試
験片の試験結果の数値を1.0としてそれぞれの試験片
の数値を指数化して表示したものである。
【0029】
【表3】
【0030】ここで前記3種類の摩耗試験機の概要は、
図2(加圧)、図3(衝撃)、図4(引掻き)にそれぞ
れ示している。図2の加圧摩耗試験機はラバーホィル1
の円周接線上へ6号珪砂Sを自動供給し、試験片TPを
このラバーへ押し当てて摩耗量を測定する。図3の衝撃
摩耗試験機は回転する4本のアーム2に試験片TPを取
り付け、所定時間、岩石(石英斑岩)Rを衝突させて摩
耗量を測定する。図4の引掻き摩耗試験機は4本のアー
ム3に試験片TPを取り付け、金属シリコンM内で回転
して所定時間当たりの攪拌摩耗量を測定する。なお、そ
れぞれの摩耗試験機の作動条件は表4に一括して示す。
【0031】
【表4】
【0032】表3の結果を整理して縦軸に耐摩耗倍数、
横軸に基地硬度(HmV)を目盛って各摩耗試験毎にプ
ロットしたのが図1であり、基地硬度と耐摩耗性との相
関関係を明確に表している。特に引掻き摩耗においてそ
の傾向は最も顕著であり、アブレージョン摩耗に対抗す
る耐摩耗性の決定的な要件が基地硬度に支配される事実
を最も直接的に表示しているデータである。
【0033】表3で認められることは比較例の1〜6は
何れもほぼ同じ成分の基準材に対し基地硬度が格段に低
下し、これと共に各種摩耗試験についても同じ傾向を記
録して両者の相関を立証している。一方、本発明実施例
は該基準材よりも基地硬度が遥かに優越し、これに伴っ
て耐摩耗倍数においても明らかに優位に立つという相関
性が成立する。比較例、実施例ともにC,Crを主体に
Ni,Moを添加した亜共晶系の高クロム鋳鉄材である
点で共通し、かつ、Nb,Wなど炭化物強化元素を添加
した試験片もあることから、析出した炭化物の性状自体
にさほどの差があるわけではなく、比較例、実施例の基
地硬度の差がそのまま耐摩耗性の差に直結した点は疑問
の余地が少ない。このことから本発明の要旨であるオー
ステナイト安定元素、特にNによる相変態の長時間側へ
の移行作用が緩冷条件における基地の高硬度形成を誘起
する最大の原動力であるとする発想の正しさを裏付けて
いる。
【0034】表5は石炭粉砕用ロールタイヤの実体につ
いて行った実施試験に供した材料の化学成分、焼入後の
硬度、耐摩耗性を従来適用されてきた汎用材と比較対照
して示したものである。実施例、汎用材共に適用した製
品は最大肉厚200mm、平均肉厚150mm、タイヤ
直径2330mm、製品重量8トンの大型鋳造品であ
り、すでに述べた緩慢な空冷速度で焼割れの発生を防止
しつつ可能な限度において焼入硬化を施したものであ
る。表のように基地硬度は本発明実施例では表層近くの
20mmにおいても、また肉厚中心部付近においてもほ
とんど差がなく、しかもHmV:800以上の高レベル
を記録しているのに対し、汎用材(従来技術)では表層
付近でもHmV:700に届かない水準に過ぎず、さら
に中央部に至りHmV:600に接近するまで落ち込む
ことが直接耐摩耗性の各種試験の結果に連動しており、
試験片だけによる既述の結果と軌を一にする結果によっ
て先の試験片の考察を裏付ける有力な傍証となることは
衆目の一致するところである。
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】本発明に係る亜共晶高クロム鋳鉄材は、
特に装置や設備の大型化に伴う耐摩耗性部材の大型化に
対応し、肉厚や全重量の増大にも拘わらず部材全体とし
てほぼ均等な硬度と不変の耐摩耗性を維持し、しかも、
その維持するレベルが従来技術の標準品を遥かに超える
高度な水準にあるという理想的な二面性を具えている。
これは従来技術において析出炭化物自体の一層の硬度ア
ップこそが耐摩耗性アップの要諦であると捉えてきたの
に対し、炭化物自体は従来技術と同一レベルにあっても
ベースとなる基地硬度こそが厚肉製品の耐摩耗性を決定
付ける要件であることに着目し、その要件を理想的に実
現するために相変態速度の曲線(S曲線)を長時間側へ
移行させるという画期的な手段を採ったため、従来技術
より格段に優れた耐摩耗性を享受できる効果が得られ
た。高クロム鋳鉄材の耐摩耗性向上の上できわめて独創
性の高い発明として当該技術分野の発展に寄与するもの
と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例、比較例の試験結果をまとめた基
地硬度(HmV)と耐摩耗倍数の関係図である。
【図2】本発明の効果確認に使用した加圧摩耗試験機の
略図である。
【図3】同じく衝撃摩耗試験機の略図である。
【図4】同じく引掻き摩耗試験機の略図である。
【符号の説明】
1 ラバーホィル 2 アーム 3 アーム S 6号珪砂 R 石英斑岩 M 金属シリコン TP 試験片
フロントページの続き (72)発明者 新宮 良明 大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式 会社栗本鐵工所内 (56)参考文献 特開 昭59−129720(JP,A) 特開 平2−115343(JP,A) 特開 平6−240403(JP,A) 特開 平8−291358(JP,A) 特表 平8−510298(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 37/08 C22C 33/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:2.80〜3.50%、Si:0.
    30〜1.20%、Mn:0.70〜1.80%、C
    r:15.0〜30.0%、Mo:2.00〜4.00
    %、Ni:0.70〜2.00%、N:0.20〜0.
    40%(何れも重量%)および不可避的不純物、残りF
    eよりなる亜共晶系高クロム鋳鉄において、γ−Fe中
    へ固溶したNがベイナイト変態完了時間を長くすること
    により最大肉厚が200mmに及ぶ大型鋳造品において
    も肉厚中央部、表層部を問わず基地硬度がマイクロビッ
    カース硬さ(HmV)800以上で、肉厚断面の全域
    に亘ってその基地硬度が変らないことを特徴とする最
    肉厚200mmに及ぶ大型製品に適合した亜共晶系高ク
    ロム鋳鉄材。
  2. 【請求項2】 請求項1において亜共晶系高クロム鋳鉄
    の前記基本成分に加え、さらにW、V、Nb、Ti、B
    の炭化物形成元素から選んだ1または2以上の成分を合
    計で0.20〜1.00重量%の範囲で添加し、析出、
    晶出した炭化物硬度を高めたことを特徴とする最大肉厚
    200mmに及ぶ大型製品に適合した亜共晶系高クロム
    鋳鉄材。
  3. 【請求項3】 C:2.80〜3.50%、Si:0.
    30〜1.20%、Mn:0.70〜1.80%、C
    r:15.0〜30.0%、Mo:2.00〜4.00
    %、Ni:0.70〜2.00%、N:0.20〜0.
    40%(何れも重量%)および不可避的不純物、残りF
    eよりなる亜共晶系高クロム鋳鉄の溶湯を鋳造し、鋳放
    し手入れを完了後、最大肉厚200mmに及ぶ大型製品
    でも焼割れを防止する限度の緩慢な速度で冷却し、Nの
    オーステナイト安定化作用によって相変態を長時間側へ
    移行して前記冷却速度でも基地の焼入性を維持し、肉厚
    の中央部と表層部とが共に等しく高硬度を確保して少な
    くともマイクロビッカース硬さ(HmV)が800以上
    の高硬度基地を形成し、該基地全体に分散析出、晶出し
    た超高硬度炭化物と相まって、耐磨耗組織を肉厚断面の
    全域に亘って形成することを特徴とする最大肉厚200
    mmに及ぶ大型製品に適合した亜共晶系高クロム鋳鉄材
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において亜共晶系高クロム鋳鉄
    の前記基本成分に加え、さらにW、V、Nb、Ti、B
    の炭化物形成元素から選んだ1または2以上の成分を合
    計で0.20〜1.00重量%の範囲で添加し、析出、
    晶出した炭化物硬度を高めたことを特徴とする最大肉厚
    200mmに及ぶ大型製品に適合した亜共晶系高クロム
    鋳鉄材の製造方法。
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