JP3489943B2 - 耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法 - Google Patents

耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法

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    • C04B16/06Macromolecular compounds fibrous
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐湿熱性と高強度が長
期間要求される漁網、ロープ、テント、土木シートなど
の一般産業資材やセメント、ゴム、プラスチックの補強
材に有効なポリビニルアルコール(以下PVAと略記)
系合成繊維及びその製造法に関するものであり、特にオ
ートクレーブ養生を行うセメント製品の補強に効果を発
揮するPVA系繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】PVA系繊維は汎用繊維の中で最も高強
力高弾性を有し、かつ接着性や耐アルカリ性が良好な
為、特に石綿代替のセメント補強材として脚光を浴びて
いる。しかしながらPVA系繊維は耐湿熱性に乏しく、
一般産業資材や衣料素材として用いられるにしても用途
が制限され、さらに高温でのオートクレーブ養生が不可
能であった。したがって現在セメント補強材にPVA系
繊維を使用する場合は、室温養生に頼っている。しかし
ながら室温養生したセメント製品は寸法安定性や強度が
十分でなく、かつ養生に要する日数が長いなどの欠点を
有していた。
【0003】一方、高温オートクレーブ養生に炭素繊維
が一部用いられているが、セメントマトリックスとの接
着性が悪く、補強効果に乏しく、かつ高価であるなどの
問題点があった。したがってPVA系繊維の耐湿熱性を
改良しようとする試みは古くからなされて来た。たとえ
ば特公昭30−7360号公報や特公昭36−1456
5号公報には、ホルマリンを用い、PVAの水酸基と架
橋反応(ホルマール化)して疎水化することにより染色
や洗濯に耐えられるPVA系繊維が得られることが記載
されている。しかし、これらの繊維は強度が低く、本発
明に言う一般産業資材やセメント、ゴム、プラスチック
の補強材には向かない。また、高強力PVA繊維をホル
マール化することが特開昭63−120107号公報に
開示されているが、ホルマール化度が5〜15モル%と
低く、PVA系繊維の非晶領域の極く一部が疎水化され
ているに過ぎず、耐湿熱性は十分でなく、くり返し長期
間湿熱にさらされる産業資材や高温オートクレーブ養生
されるセメント補強材には到底満足できるものではな
い。
【0004】一方、特開平2−133605号公報や特
開平1−207435号公報には、アクリル酸系重合体
をブレンドするか、又は繊維表面を有機系過酸化物やイ
ソシアネート化合物、ウレタン系化合物、エポキシ化合
物などで架橋せしめる方法が記述されている。しかしア
クリル酸系重合体による架橋はエステル結合であるた
め、セメントのアルカリにより架橋結合が容易に加水分
解してその効果を失うこと、および他の架橋剤も繊維表
面架橋である為、オートクレーブ養生中やくり返し湿熱
にさらされている時に繊維の中心部から膨潤、溶解が起
こるなどの問題点を抱えている。
【0005】他に酸を用いて脱水架橋によりPVA系繊
維の耐湿熱性を向上させる方法が特開平2−84587
号公報や特開平4−100912号公報などに記載され
ているが、本発明者らが追試したところ繊維内部まで架
橋させようとするとPVA系繊維の分解が激しく起こ
り、繊維強度が著しく低下することが判明した。一方、
ジアルデヒド化合物による架橋は特公昭29−6145
号公報や特公昭32−5819号公報などに明記されて
いるが、ジアルデヒド化合物と反応触媒である酸の混合
浴で乾熱延伸後の繊維を処理する方法であるため、繊維
分子が高度に配向結晶化した高強力繊維ではジアルデヒ
ド化合物が繊維内部まで浸透しずらく内部架橋が困難で
あった。
【0006】また特開平5−163609号公報には、
ジアルデヒドを紡糸原糸に付与し、高倍率に乾熱延伸し
たあと酸処理により繊維内部に架橋を生じさせることが
記載されている。しかしながらこれは炭素数が6以下の
脂肪族ジアルデヒドや芳香族ジアルデヒド化合物である
為、耐湿熱性に有効なPVA系分子鎖間の架橋(分子間
架橋)が少ないか又は立体障害で繊維内部まで浸透が難
しく、かつ強度低下が起こり易いなどの問題点を有し、
耐湿熱性と高強度の両方を十分満足するものではない。
もっとも同公報にはジアルデヒドのアセタール化につい
ても記載されているが、具体的に記載されているジアル
デヒドのアセタール化はテトラメトキシプロパンであ
り、このようなジアルデヒド部分の炭素数の少ない化合
物では、上記したのと同一の問題点を有している。
【0007】さらに本発明者らは、先に炭素数6以上の
脂肪族ジアルデヒドのアセタール化合物により架橋され
たPVA系繊維に関して既に出願をしている。確かに、
この出願の技術を用いると従来の技術と比べて格段に高
強度で耐湿熱性のPVA系繊維が得られるが、この技術
でも、繊維内部までの架橋が十分ではないためか、人工
セメント液の溶出量を十分に押さえることが難しく、高
温養生後のスレート板曲げ強度とたわみ量が今一歩であ
った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景を踏まえ
て、本発明者らは如何に高い強度と伸度を維持しかつ耐
湿熱性向上に有効な分子間架橋(PVA分子鎖間の架
橋)を繊維内部まで十分生じさせるか、さらに架橋点を
増加できるか、鋭意検討を重ねた結果、長鎖脂肪族ジア
ルデヒドからなる化合物と、短鎖脂肪族ジアルデヒドか
らなる化合物又はホルムアルデヒドをある範囲でPVA
の水酸基と架橋反応させることが有効と判り、本発明に
至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、水酸基の一部
が下記(A)の化合物と下記(B)の化合物で架橋され
ており、かつ(A)と(B)の重量比が9:1〜5:5
の重量比であるポリビニルアルコール系ポリマーからな
り、単繊維強度が12g/d以上、伸度が5%以上で、
かつ150℃の人工セメント水溶液での2時間処理後の
溶出量が20重量%以下であることを特徴とする耐湿熱
性ポリビニルアルコール系繊維である。 (A)炭素数6以上の脂肪族ジアルデヒドのアセタール
化合物 (B)炭素数4以下の脂肪族ジアルデヒド、そのアセタ
ール化物及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる
少なくとも1種の化合物
【0010】さらにこのような繊維を製造する方法とし
て、ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液を紡糸して
得られる紡糸原糸を乾燥し、総延伸倍率が14倍以上と
なるように乾熱延伸を行いポリビニルアルコール系繊維
を製造するに際し、乾燥までの工程で該紡糸原糸に上記
(A)の化合物と上記(B)の化合物を(A)と(B)
の重量比が9:1〜5:5になるように含有させ乾熱延
伸を行ったのち、酸処理して(A)及び(B)をポリビ
ニルアルコール系ポリマーと反応させることを特徴とす
る耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法であ
り、またポリビニルアルコール系ポリマーの溶液を紡糸
して得られる紡糸原糸を乾燥し、総延伸倍率が14倍以
上となるように乾熱延伸を行いポリビニルアルコール系
繊維を製造するに際し、乾燥までの工程で、該紡糸原糸
に上記化合物(A)を含有させ、乾熱延伸を行ったの
ち、上記化合物(B)と酸を含有する液で処理して、
(A)と(B)の重量比が9:1〜5:5になるように
ポリビニルアルコール系ポリマーの水酸基を架橋させる
ことを特徴とする耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維
の製造方法である。
【0011】以下本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明に言うPVA系ポリマーとは、粘度平均重合
度が1500以上のものであり、ケン化度が98.5モ
ル%以上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度の低
い直鎖状のものである。PVA系ポリマーの平均重合度
が高いほど、結晶間を連結するタイ分子の数が多く、か
つ欠点となる分子末端数が少なくなるので、高強度、高
弾性率かつ高耐湿熱性の繊維が得られやすく、好ましく
は3000以上、さらに好ましくは6000以上であ
る。
【0012】PVA系ポリマーの溶剤としては、例えば
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ブタンジオールなどの多
価アルコール類やジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、ジエチレントリアミン、水及びこれら2種以
上の混合溶剤などが挙げられる。但し、上記の化合物
(A)や化合物(B)を該溶剤に混合添加する場合に
は、該化合物を凝集させたり分離させる溶剤は好ましく
なく、化合物(A)や化合物(B)を均一分散又は溶解
する溶剤が好ましい。この点で上記したジメチルスルホ
キシドやエレングリコール、グリセリンなどの多価アル
コールが好ましい。またPVA系ポリマーを溶剤で溶解
する際に、ホウ酸、界面活性剤、分解抑制剤、染料、顔
料を添加しても支障ないが、紡糸性や延伸性を悪化させ
るものは好ましくない。
【0013】このようにして得られた紡糸原液は常法に
より湿式、乾式、乾湿式のいずれかの方法でノズルより
吐出され固化される。湿式及び乾湿式紡糸方法では、凝
固浴にて吐出液を固化し繊維化させるが、その凝固剤と
してはメタノール、エタノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなど
のケトン類、アルカリ水溶液、アルカリ金属塩水溶液な
どのいずれか又はこれら2種以上の混合液が用いられ
る。なお凝固における溶剤抽出をゆっくりさせて均一ゲ
ル構造を生成させ、より高い強度と耐湿熱性を得るた
め、該凝固剤に該溶剤を10重量%以上混合させるのが
好ましい。特にメタノールで代表されるアルコールと原
液溶剤との混合液が好ましい。なお乾湿式紡糸方法の場
合には、紡糸ノズルと凝固浴液面との間に空気で代表さ
れる気体層が存在する。
【0014】さらに、凝固浴温度を20℃以下にして吐
出液を急冷させるのも均一な微結晶構造のゲル繊維が得
られるため、高強力繊維を得るのに都合が良い。また繊
維間の膠着を少なくし、その後の乾熱延伸を容易にする
為に、凝固浴から取り出した紡糸原糸を溶剤を含んだ状
態で2倍以上の湿延伸をするのが望ましい。なお、アル
カリ凝固の場合は、湿熱延伸の前に張力下で中和を行う
のが良い。
【0015】次いで紡糸原糸からの溶剤抽出を行うが、
抽出剤としてはメタノール、エタノール、プロパノール
などの第1級アルコール類やアセトン、メチルエチルケ
トン、メチルプロヒルケトン、メチルブチルケトンなど
のケトン類やジメチルエーテル、メチルエチルエーテル
などのエーテル類などが使用できる。続いて必要に応じ
油剤などを付与して該抽出剤を乾燥させるか、乾式の場
合は、凝固剤や抽出剤を使用せずに紡糸時及び紡糸後に
紡糸原液の溶剤を蒸発させて乾燥させる。
【0016】本発明の特徴は、前記したように、(A)
炭素数6以上の脂肪族ジアルデヒドのアセタール化合物
と、(B)炭素数4以下の脂肪族ジアルデヒド、そのア
セタール化物及びホルムアルデヒドからなる群から選ば
れる少なくとも1種の化合物を紡糸原液から乾燥直前ま
でのいずれかの工程で紡糸原糸の内部まで含有させ、延
伸後に酸で処理すること、あるいは乾燥までの工程で該
紡糸原糸に上記化合物(A)を含有させ、乾熱延伸を行
ったのち、上記化合物(B)と酸を含有する液で処理す
ることである。乾燥後、乾熱延伸直前までに上記化合物
(A)を付与する場合は、該化合物(A)の分子量が大
きいため繊維内部に該化合物(A)が浸透しずらく、表
面架橋により耐湿熱性は十分満足するものが得難い。好
ましい付与方法は抽出浴のアルコールやケトン類などに
該化合物を溶解し、その中に膨潤状態の糸条、すなわち
湿潤状態の糸条を通過させて繊維内部へ含有させる方法
である。
【0017】本発明に言う炭素数6以上の脂肪族ジアル
デヒドのアセタール化合物(A)とは、例えばヘキサン
ジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナ
ンジアール、デカンジアール、2,4−ジメチルヘキサ
ンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチル
オクタンジアールなどのジアルデヒド類とメタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリ
コール、プロピレングリコールなどのアルコール類を反
応させ両末端又は片末端をアセタール化した化合物であ
る。なお、臭気や揮発性の点から炭素数7以上の脂肪族
ジアルデヒドのアセタール化合物が好ましく、例えば、
ノナンジアールとメタノールが反応した1,1,9,9
−テトラメトキシノナンやノナンジアールとエチレング
リコールが反応した1,1,9,9−ビスエチレンジオ
キシノナンなどが挙げられる。なお炭素数13を越える
脂肪族ジアルデヒドのアセタール化合物は製造上の点で
工業的に入手が難しい。
【0018】一方、(B)炭素数4以下の脂肪族ジアル
デヒド、そのアセタール化物及びホルムアルデヒドから
なる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とは、グリ
オキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒ
ドのジアルデヒド類あるいはそれらとメタノール、エタ
ノール、エチレングリコールなどのアルコール類を反応
させ、両末端又は片末端をアセタール化した化合物、あ
るいはホルマリンを意味し、これらの分子量の小さい化
合物は特にPVA系繊維内部への浸透が良く、繊維の内
部まで多くの架橋点が形成される。さらに前記化合物
(A)と併用されることにより、それぞれを単独で用い
た場合と比べて両者の相乗効果により、繊維の内部まで
分子間架橋が十分に行われることとなる。
【0019】本発明における該化合物(A)と該化合物
(B)の重量比は9:1〜5:5である。化合物(A)
が90重量%を超えると分子間架橋による耐湿熱性は向
上するが繊維内部まで均一に架橋しずらく、かつ架橋点
も少ないため、150℃の人工セメント液中で2時間処
理した後の溶出量が多くなり、ひいては高温オートクレ
ーブ後のスレート板曲げ強度やたわみ量が低下して外壁
材や瓦にした時の耐久性に問題を生じ易い。一方、化合
物(A)が50重量%未満では有効な分子間架橋が少な
く、耐湿熱性が不十分で人工セメント液の溶出量が非常
に多く、かつ化合物(B)が多いことで架橋点が多くな
りすぎ繊維の伸度が低下して、セメント補強材として付
加価値の高いものが得られない。
【0020】またスレート板曲げ強度及びたわみ量を高
めるには、架橋後の単繊維強度が12g/d以上、伸度
が5%以上必要であり、その為に化合物(A)と化合物
(B)の合計付着量はPVA系繊維に対し1〜10重量
%が好ましい。付着量が1重量%未満では目的の耐湿熱
性、すなわち人工セメント液の溶出量が多くひいては高
温耐オートクレーブ性が不十分であり、10重量%を超
えるとPVA分子鎖の配向を乱したりPVAの分解が起
こり、繊維強度と伸度が低下するためスレート板曲げ強
度やたわみ量が小さく、耐久性のあるものは得難い。
【0021】次いで該化合物含有の乾燥後紡糸原糸を2
20℃以上で総延伸倍率が14倍以上、好ましくは16
倍以上となるように乾熱延伸する。ここで言う総延伸倍
率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率を掛け合わせた値を
意味する。14倍未満ではPVA分子鎖の配向が不十分
で架橋後の単繊維強度12g/d以上を得ることは難し
い。なお延伸温度は、PVAの重合度が高いほど高くし
て高倍率を維持するのが好ましいが、260℃を越える
とPVAの溶融や分解が起こり易く好ましくない。一方
220℃未満では高倍率延伸が難しくかつ結晶化もしず
らくなるので架橋処理及びオートクレーブ処理時に繊維
の収縮が起こり易く高強度のものが得難い。
【0022】このようにして得られた上記化合物(A)
と化合物(B)を含有した高強力延伸糸を硫酸、リン
酸、塩酸、硝酸、クロム酸などの無機酸あるいはカルボ
ン酸、スルホン酸などの有機酸で濃度0.05規定以上
の水溶液に60〜90℃で5〜120分浸漬して、化合
物(A)と化合物(B)をPVAのOH基とアセタール
化させて架橋を生じさせる。また、紡糸原糸に化合物
(A)のみを含有させ、乾熱延伸後に酸と化合物(B)
を含有する液で処理し、化合物(A)と化合物(B)が
9:1〜5:5の重量比で架橋させる方法をもちいても
よい。なお化合物(B)が水に溶けない場合は乳化剤を
添加して水エマルジョン液にして処理しても支障ない。
【0023】本発明で得られた架橋PVA系繊維は、単
繊強度12g/d以上、伸度5%以上を有し、150℃
の人工セメント水溶液中で2時間処理後の溶出量が20
重量%以下であり、繊維内部まで架橋しており、高強度
で耐久性のあるセメント補強材として、住宅サイティン
グやビルディングの外壁材あるいは新生瓦などに活用さ
れるものである。また長期間、水や熱にさらされて使用
される漁網、ロープ、土木シートなどの一般産業資材や
ゴム、プラスチックの補強材などにも効果を発揮する。
【0024】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお本発明における各種の物性値は以下の方法で規定さ
れたものである。 1)PVAの粘度平均重合度(PA) 未架橋延伸繊維を1〜10g/lの濃度になるように1
40℃以上の水で加圧溶解して得られた溶液の比粘度η
spをJIS K−6726に基づき、30℃で測定
し、下記式より極限粘度〔η〕を求め、さらに次式
より粘度平均重合度PAを算出した。 〔η〕=lim(C→0)ηsp/c …… PA=(〔η〕×104/8.29)1.613 ……
【0025】2)脂肪族ジアルデヒド又はそのアセター
ル化合物の含有量 未架橋延伸糸を120℃以上の重水素化したジメチルス
ルホキシドに溶解せしめNMRよりPVAのCH2基ピ
ークに対する化合物のピーク面積比を算出し、含有量を
求めた。また延伸後に酸と架橋剤を含有する液で架橋処
理した場合は重量増加率より含有量を求めた。 3)人工セメント液での溶出量(CS) 試料約1gを4〜8mmにカットし、人工セメント水溶
液((KOH3.5g/l+NaOH0.9g/l+C
a(OH)20.4g/l、pH≒13)に150℃で
2時間浸漬したあと、水洗、乾燥して、試料重量の低下
率より溶出量(CS)を求めた。
【0026】4)単繊維の引張強伸度 JIS L=1015に準じ予め調湿された単繊維を試
長10cmになるように台紙に貼り、25℃×65%R
Hに12時間以上放置。次いでインストロン1122で
2kg用チャックを用い、初荷重1/20g/d、引張
速度50%/minにて破断強伸度を求め、n≧10の
平均値を採用した。デニールは1/20g/d荷重下で
30cm長にカットし、重量法によりn≧10の平均値
で示した。なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸度
を測定し、1本ずつデニールと対応させた。 5)耐オートクレーブ性(スレート板の湿潤曲げ強度W
BSとたわみ量) PVA系合成繊維を4〜8mmの長さに切断し、ハチェ
ックマシンで該繊維2重量部、パルプ3重量部、シリカ
38重量部、セメント57重量部の配合で湿式抄造し、
50℃で12時間一次養生したのち160℃×15hr
又は180℃×10hrでオートクレーブ養生を実施
し、スレート板を作成したあと25×70×4mmの試
験片を切り出し、JIS K−6911に準じて3日水
中に浸漬後、オートグラフを用いてスパン長5cm、圧
縮速度2mm/分で曲げ強度(kg/cm2)とたわみ
量(mm)を測定した。
【0027】実施例1,2及び比較例1,2 粘度平均重合度が1700(実施例1)と4000(実
施例2)でケン化度がいずれも99.5モル%のPVA
をそれぞれ濃度16重量%(実施例1)と10重量%
(実施例2)になるようにジメチルスルホキシド(DM
SO)に110℃で溶解し、得られた各溶液を400ホ
ールのノズルより吐出させ、メタノール/DMSO=7
/3(重量比)からなる8℃の凝固浴で湿式紡糸した。
さらに40℃メタノール浴で4倍湿延伸したあと、メタ
ノールで該溶剤をほとんど全部除去した。
【0028】最後のメタノール抽出浴に、化合物(A)
として1,1,9,9−テトラメトキシノナン(TM
N)を4重量%/浴及び化合物(B)として1,1,
3,3−テトラメトキシプロパン(TMP)を2重量%
/浴になるように添加し、均一溶液としたあと、この浴
に繊維を1.5分間滞留させてメタノール含有繊維の内
部及び表面に該ジアルデヒドのアセタール化合物を含有
させて120℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を実施
例1では170℃、200℃、230℃の3セクション
からなる熱風炉で総延伸倍率16.5倍に、実施例2で
は170℃、210℃、240℃の3セクションからな
る熱風炉で総延伸倍率17.2倍になるように延伸し、
約1500d/400fのマルチフィラメントを得た。
次いで両延伸糸を硫酸80g/lの水溶液中で75℃×
30分浸漬して架橋反応を起こさせた。比較例1として
実施例1でTMNのみ6重量%/浴になるように添加し
て同様の延伸と酸処理を行った。また、比較例2では、
実施例2でTMNを2重量%/浴及びTMPを4重量%
/浴になるように添加して同様の延伸と酸処理を行っ
た。得られた繊維中の架橋剤含量や架橋繊維の物性を表
1に示した。
【0029】実施例1の未架橋延伸糸の架橋剤含量はT
MN換算で3.5重量%、TMP換算で1.8重量%で
あった。架橋繊維の単糸強度は13.2g/d、伸度は
5.4%を示し、150℃の人工セメント液中での2時
間処理後の溶出量(CS)は15.9重量%であった。
未架橋延伸糸のCSは96.7重量%でほとんど全部が
溶出したのに比べると耐湿熱性が著しく向上した。また
160℃オートクレーブ後のスレート板曲げ強度WBS
は242kg/cm2、たわみ量は1.0mmを示し、
住宅サイディング用の壁材として優れたものとなった。
実施例2の未架橋延伸糸の架橋剤含量はTMNが3.1
重量%、TMPが1.3重量%であった。架橋後の単繊
維強度は15.9g/d、伸度は5.8%であり、CS
=9.7重量%よりほとんど繊維内部まで架橋している
ことが判明した。また160℃オートクレーブ後のWB
Sは338kg/cm2、たわみ量は1.4mm、18
0℃オートクレーブ後のWBSは271kg/cm2
たわみ量は0.6mmを示し、高温養生に耐える新生瓦
の補強材として価値ある繊維となった。また湿熱が関与
する一般産業資材や衣料素材にも適用できる事が判っ
た。
【0030】比較例1ではTMNのみを含有させたがそ
の量は5.4重量%であり、得られた架橋繊維の強伸度
は実施例1と同等であったが人工セメント液の溶出量は
28.0重量%と多く、繊維内部まで十分に架橋せず、
耐湿熱性に劣っていた。またスレート板のWBSやたわ
み量も実施例1より低くなった。比較例2は実施例2で
TMNよりもTMPの含量を多くしたものであるが、繊
維の伸度が少なく、CSが高い為、スレート板のWBS
やたわみ量が減少して、いずれも実施例2に見劣りする
ものであった。
【0031】
【表1】
【0032】実施例3 粘度平均重合度が8000でケン化度が99.9モル%
のPVAを濃度8重量%になるように170℃でエチレ
ングリコール(EG)に溶解した。得られた溶液を40
0ホールのノズルより吐出させ、乾湿式紡糸によりメタ
ノール/EG=7/3(重量比)からなる0℃の凝固浴
で急冷ゲル化させた。さらに40℃メタノール浴で4倍
湿延伸したあと、メタノールで該溶剤をほとんど全部除
去した。最後のメタノール抽出浴に1,1,9,9−ビ
スエチレンジオキシノナン(BEN)を8重量%/浴に
なるように添加し、均一溶液としたあと繊維を1.2分
間滞留させて繊維の内部及び表面に該アセタール化合物
を含有させ130℃にて乾燥した。得られた紡糸原糸を
180℃、248℃の2セクションからなる輻射炉で総
延伸倍率が18.5倍になるように延伸し、BEN含有
量4.9重量%の1000d/400fのマルチフィラ
メントを得た。次いで硫酸を60g/lおよびマロンジ
アルデヒドを30g/l含有する水溶液で80℃×60
分架橋処理をした。なお重量増加率よりマロンジアルデ
ヒド換算で2.2重量%含有していた。
【0033】得られた架橋繊維の単糸強度は17.7g
/d、伸度は6.0%でありCSは5.9重量%と低
く、耐湿熱性に非常に優れることが判明した。180℃
オートクレーブ後のWBSも305kg/cm2と高
く、たわみ量も0.8mmあり高温養生用FRCとして
従来にない高付加価繊維となった。
【0034】
【発明の効果】本発明は前記したように、2種類のアル
デヒド化合物を特定の割合で付与しPVA繊維を架橋さ
せ、高強度、高伸度を維持しながら繊維内部まで十分に
架橋させることにより従来にない、耐オートクレーブの
FRC用PVA系繊維を得るものである。本発明の繊維
はセメント補強材以外に耐湿熱性と耐久性が要求される
ロープ、漁網、テント、土木シートなどの一般産業資材
や衣料素材などにも幅広く利用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−263311(JP,A) 特開 平5−163609(JP,A) 特開 平6−184810(JP,A) 特開 平5−321020(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 13/137 D01F 6/14

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水酸基の一部が下記(A)の化合物と下
    記(B)の化合物で架橋されており、かつ(A)と
    (B)の重量比が9:1〜5:5の重量比であるポリビ
    ニルアルコール系ポリマーからなり、単繊維強度が12
    g/d以上、伸度が5%以上で、かつ150℃の人工セ
    メント水溶液での2時間処理後の溶出量が20重量%以
    下であることを特徴とする耐湿熱性ポリビニルアルコー
    ル系繊維。 (A)炭素数6以上の脂肪族ジアルデヒドのアセタール
    化合物 (B)炭素数4以下の脂肪族ジアルデヒド、そのアセタ
    ール化物及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる
    少なくとも1種の化合物
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液
    を紡糸して得られる紡糸原糸を乾燥し、総延伸倍率が1
    4倍以上となるように乾熱延伸を行いポリビニルアルコ
    ール系繊維を製造するに際し、乾燥までの工程で該紡糸
    原糸に下記(A)の化合物と下記(B)の化合物を
    (A)と(B)の重量比が9:1〜5:5になるように
    含有させ乾熱延伸を行ったのち、酸処理して(A)及び
    (B)をポリビニルアルコール系ポリマーと反応させる
    ことを特徴とする耐湿熱性ポリビニルアルコール系繊維
    の製造方法。 (A)炭素数6以上の脂肪族ジアルデヒドのアセタール
    化合物 (B)炭素数4以下の脂肪族ジアルデヒド、そのアセタ
    ール化物及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる
    少なくとも1種の化合物
  3. 【請求項3】 ポリビニルアルコール系ポリマーの溶液
    を紡糸して得られる紡糸原糸を乾燥し、総延伸倍率が1
    4倍以上となるように乾熱延伸を行いポリビニルアルコ
    ール系繊維を製造するに際し、乾燥までの工程で、該紡
    糸原糸に下記化合物(A)を含有させ、乾熱延伸を行っ
    たのち、下記化合物(B)と酸を含有する液で処理し
    て、(A)と(B)の重量比が9:1〜5:5になるよ
    うにポリビニルアルコール系ポリマーの水酸基を架橋さ
    せることを特徴とする耐湿熱性ポリビニルアルコール系
    繊維の製造方法。 (A)炭素数6以上の脂肪族ジアルデヒドのアセタール
    化合物 (B)炭素数4以下の脂肪族ジアルデヒド、そのアセタ
    ール化物及びホルムアルデヒドからなる群から選ばれる
    少なくとも1種の化合物
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