JP3467940B2 - 複合膜、その製造方法および使用方法 - Google Patents

複合膜、その製造方法および使用方法

Info

Publication number
JP3467940B2
JP3467940B2 JP32817195A JP32817195A JP3467940B2 JP 3467940 B2 JP3467940 B2 JP 3467940B2 JP 32817195 A JP32817195 A JP 32817195A JP 32817195 A JP32817195 A JP 32817195A JP 3467940 B2 JP3467940 B2 JP 3467940B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
membrane
layer
water
composite membrane
composite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP32817195A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09141071A (ja
Inventor
良成 房岡
勝文 大音
尚士 南口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP32817195A priority Critical patent/JP3467940B2/ja
Publication of JPH09141071A publication Critical patent/JPH09141071A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3467940B2 publication Critical patent/JP3467940B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体混合物を分離する
ための高性能な複合膜とその製造方法、およびその使用
方法に関するものである。本発明の複合膜は海水の淡水
化、かん水の脱塩、排水の処理および有価物の濃縮、回
収に用いることができる。特に、高濃度の非分離液を高
圧で分離する際に本発明の複合膜は有効である。
【0002】
【従来の技術】従来、工業的に利用されている半透膜に
は非対称膜型の酢酸セルロース膜があった(例えば、米
国特許第3、133、132号明細書、同第3、13
3、137号明細書)。しかし、この膜は耐加水分解
性、耐微生物性などに問題があり、塩排除率、水透過性
も十分ではなかった。このため、酢酸セルロース非対称
膜は一部の用途には使用されているが広範囲の用途に実
用化されるには至っていない。
【0003】これらの欠点を補うべく非対称膜とは形態
を異にする半透膜として微多孔性支持膜上に異なる素材
で実質的に膜分離性能をつかさどる分離機能膜を被覆し
た複合膜が考案された。複合膜では、分離機能膜と微多
孔性支持膜の各々に最適な素材を選択する事が可能であ
り、製膜技術も種々の方法を選択できる。
【0004】現在市販されている複合膜の大部分は微多
孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した分離機能膜
を有するものと、微多孔性支持膜上でモノマーを界面重
縮合した分離機能膜を有するものの2種類である。前者
の具体例としては、特開昭49−13282号公報、特
公昭55−38164号公報、PBレポート80−18
2090、特公昭59−27202号公報、同61−2
7102号公報などがある。後者の具体例としては米国
特許第3,744,942号明細書、同第3,926,
798号明細書、同第4,277,344号明細書、特
開昭55−147106号公報、同58−24303号
公報、同62−121603号公報などがある。
【0005】これらの複合膜では酢酸セルロース非対称
膜よりも高い脱塩性能が得られている。さらにこれらの
膜は殺菌に用いられる塩素、過酸化水素に対する耐久性
も向上されつつあり用途が広がってきている段階にあ
る。この型の膜の問題としては、水透過性を高めようと
すると (低圧高造水量化)、分離機能膜を非常に薄く
塗るため、微多孔性支持膜の傷、あるいは異物などによ
って、欠点を生じやすいこと、また平膜状の複合膜の場
合には、スパイラル、プレートアンドフレーム型のエレ
メントとして使用するにあたり、エレメント製造時の作
業中に分離機能膜に傷がつき、膜本来の脱塩性能に対し
てエレメントの脱塩性能が低下する現象がしばしば生じ
た。これらは最近特に要望が強くなってきている高排除
性の妨げになっている。これらの問題は製造技術の向上
によって解決されつつあり、この高い性能の複合膜が市
販されている段階にある。
【0006】特に、ある一定濃度以下の透過液を得るた
めには分離対象液の濃度が高いほど、高い排除率が必要
となる。例えば1%の溶液から100ppmの透過液を
得る場合には、排除率は99%で良いが、4%の溶液か
ら100ppmの透過液を得るためには99.75%の
排除率が必要になり、高排除率膜の要望はますます強く
なってきている。
【0007】さらに、逆浸透膜による分離を行なうに際
しては、供給液の浸透圧と透過液の浸透圧の差以上の圧
力を供給液側にかけることが必要であり、特に供給液の
濃度が高く、浸透圧が高い場合には高い圧力を操作圧力
として必要とする。さらに、供給液に対する透過液の量
の割合(これを収率という)が高くなると濃縮液の濃度
が高くなる。例えば海水の淡水化の場合、海水の濃度
3.5%に対応する浸透圧は25.4atmであり、収
率40%で淡水化を行なうと濃縮水の濃度は約6%で濃
縮水の濃度6%に対応する浸透圧、約45atm以上の
操作圧力が必要である。透過水の水質と水量を充分に得
るためには、実際には濃縮水濃度に対応する浸透圧より
も約20atm(この圧力を有効圧力と呼ぶ)程度高め
の圧力を逆浸透膜に加えることが必要である。従来、一
般的には海水淡水化は60から65atm程度の圧力を
かけて収率40%程度の条件で運転されている。
【0008】一方、高濃度溶液の分離・濃縮の場合など
では70atm以上の圧力で短期間、逆浸透膜装置が運
転されている例がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】海水淡水化の場合、得
られる透過水のコストは収率に左右され、収率を高くす
る方が好ましい。しかし、実際の運転では収率を上げる
ことは操作圧力を高くすることに相当する。従来の膜は
主に10〜30atmの中圧で使用されるものであり、
海水淡水化や高濃度溶液の分離・濃縮に用いられる膜で
も60〜70atmで使用されるものがほとんどであっ
た。これらの膜は、70atm程度までの耐圧性を有し
ており、これ以下の圧力で使用するには充分な膜性能を
発揮するが、これ以上の圧力で使用しようとすると充分
な膜性能を発揮できないものであった。
【0010】一般に膜に圧力をかけると膜は圧密化を起
こすが、圧力を除くともとの形態に戻る。しかし、限界
圧力以上の圧力を加えると非対称膜あるいは支持膜のボ
イドがつぶれたり、分離機能膜がさらに緻密化して膜形
態、膜性能が変化する。具体的には膜透過係数が小さく
なり、本来の膜透過係数から予測される透過水量よりも
小さくなってしまう。一方では、膜面の凹凸が強調され
るため分離機能膜が凹凸に添って引き伸ばされたり傷が
入りやすくなったりして溶質透過係数が大きくなり予想
される排除率よりも低下する。
【0011】本発明は、耐圧性が高く70atm以上の
圧力をかけても、膜の分離特性の変化が小さく、かつ7
0atm以上の圧力で運転した際の性能の経時変化が小
さい複合膜およびその使用方法を提供することを目的と
する。さらに、70atm以上での耐圧性が向上すれ
ば、従来の使用圧力である50〜70atmにおいても
性能安定性の向上が期待できる。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は基本的には下記の構成を有する。
【0013】すなわち、「分離機能膜と微多孔性支持膜
からなる複合膜において、等価円直径が150nm以下
のひだを有する分離機能膜を有することを特徴とする複
合膜。」である。
【0014】本発明において、微多孔性支持膜とは実質
的には分離性能を有さない層であり、複合膜においては
実質的に分離性能を有する分離機能膜に強度を与えるた
めに支持膜として用いられるものである。微多孔性膜は
均一な微細な孔あるいは片面に緻密で微細な孔を持ち、
もう一方の面まで徐々に大きな微細な孔をもつ非対称構
造で、その微細孔の大きさはその緻密な片面の表面で1
00nm以下であるような構造が好ましい。
【0015】本発明では、微多孔性支持膜に分離機能膜
を被覆して、複合半透膜を製造する。本発明において、
分離機能膜とは複合膜において実質的に分離機能を有す
るごく薄い層のことで、分離機能層、活性層、超薄膜、
超薄膜層と呼ぶこともある。分離機能膜の素材としては
架橋あるいは線状の有機物のポリマーを使用することが
できる。複合膜が高い分離性能を発現するためには、ポ
リマーはポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポ
リエステル、セルロースエステル、ポリイミド、ポリア
ミック酸、ビニルポリマーが好ましく、さらに好ましく
はポリアミド、特に芳香族ポリアミドが好ましい。ま
た、さらに複合膜全体の耐圧性を高くし、70atm以
上の圧力でも高い排除率をさらに維持するためには、こ
れらのポリマーが架橋ポリマーであることが好ましい。
特に本発明にあるひだ構造を有する分離機能膜を得るた
めには、架橋芳香族ポリアミドおよびその共重合体が好
ましい。
【0016】本発明の分離機能膜の厚みは1〜1000
nmであり、好ましくは5〜800nm、さらに好まし
くは10〜500nmである。分離機能膜の厚みが小さ
すぎると製膜時の欠点の発生が多くなったり取り扱い時
に傷つきやすくなったりし、圧力をかけた際にも欠点が
発生したりして排除率の低下を招く。また分離機能膜の
厚みが大きすぎると透過速度係数が極端に低下して充分
な透過量が得られない。
【0017】分離機能膜のひだは、高さ1〜600n
m、直径1〜500nmの小突起であり、以下に示す分
離機能膜表面あるいは断面の走査型電子顕微鏡写真や透
過型電子顕微鏡写真で観察することができる。さらに電
子顕微鏡観察写真を解析して個々のひだの大きさやその
分布を求めることができる。例えば走査型電子顕微鏡の
表面写真の場合は膜サンプルの表面に白金または4酸化
ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーテ
ィングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型
走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。
高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−90
0型電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は5,00
0〜100,000倍が好ましく、ひだの大きさの分布
を求めるには10、000〜50,000倍が好まし
い。得られた電子顕微鏡写真から観察倍率を考慮してひ
だの大きさをスケールなどで直接測ることができる。
【0018】また、本発明における等価円直径とは、複
合膜表面の電子顕微鏡観察写真で観察される分離機能膜
のひだを閉じた曲線で囲んだときの、該曲線で囲まれた
面積と同じ面積の円の直径である。等価円直径は、例え
ば次の方法で求めることができる。得られた20,00
0倍の膜表面走査型電子顕微鏡写真を一辺10cmの正
方形で区切る。実際の面積としては5μm四方の正方形
で面積は25μm 2 となる。次にこの正方形の中にある
ひだを上からトレースしてひだの一つ一つを閉じた曲線
で表し、面積を求める。面積はグラフ用紙の升目を数え
ても良いし、図形を切り取ってその重さから求めても良
い。この曲線の面積と同じ面積を有する円が等価円であ
りその直径が等価円直径である。正方形の中の全てのひ
だの面積と等価円直径を求め、平均の等価円直径、等価
円直径の分布を求めることができる。また、透過円直径
及びその分布は電子顕微鏡写真または電子顕微鏡写真か
らトレースしたひだの形態図をコンピュータに取り込ん
で、画像処理して求めることもできる。例えば株式会社
ピアス製”PIAS−IV”装置を用いて、画像処理ソフ
トウエア”P´−Analyzer”で計算することが
できる。さらに、これらの方法で電子顕微鏡写真に写っ
ている全てのひだの等価円直径を求めたのち、これらの
数値からひだの大きさすなわち等価円直径の分布を計算
することができる。本発明において等価円直径の平均値
とはここで求めた任意の5μm四方内のひだの等価円直
径の平均値であり、また本発明において150nmある
いは120nm以下のひだの数の割合とは該等価円直径
の分布における150nmあるいは120nm以下のひ
だの割合のことである。なお、前記電顕観察可能限界以
下のひだは切り捨てて計算しても問題はなく、下限値は
特に限定されるものではないが、好ましくはおおよそ5
nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好まし
くは20nm以上である。
【0019】従来、界面重縮合法で製膜した複合膜では
このようなひだ構造が観察されることが報告されている
が、その大きさは平均150nmよりも大きなもので、
本発明で見出だされた平均150nm以下の小さなひだ
は見出だされていなかった。種々検討の結果、特に高圧
で使用する複合膜の場合には、ひだの大きさが小さい方
が分離性能、耐圧性が高く好ましいことを見出だした。
ひだの大きさは、等価円直径の平均値で150nm以下
のものが好ましく、その分布としては、等価円直径15
0nm以下のひだの数の割合が60%以上であるものが
好ましい。さらに好ましくは、等価円直径が120nm
以下のものが60%以上である。また、これら等価円直
径の分布も狭い方が好ましく、150nm以上のものが
10%以下であることが好ましい。
【0020】本発明の微多孔性支持膜の厚みは1μm〜
数mmであり、膜強度の面から10μm以上、扱いやす
さやモジュール加工のしやすさの面で100μm以下が
好ましい。
【0021】微多孔性支持膜の素材にはポリスルホン、
ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビ
ニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニ
レンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポ
リフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポ
リマーを単独であるいはブレンドして使用することがで
きる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロ
ース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリア
クリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホ
ン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸
セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、
ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド
スルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好まし
い。さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱
的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスル
ホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィ
ドスルホン、ポリフェニレンスルホンが好適に使用でき
る。また、これら微多孔性支持膜は、布、不織布、紙な
どで裏うちされていてもよい。
【0022】本発明の微多孔性支持膜は例えば、ポリス
ルホンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を密に織
ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに
注型し、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、水
などの凝固液中で凝固させることによって得ることがで
きるが本発明の微多孔性支持膜はこれらの作製方法で限
定されるものではない。
【0023】かかる支持膜としては特に限定されるもの
ではないが、分離機能膜と同等の構造サイズ、耐圧性を
有するものが好ましい。好ましい支持膜の具体例を挙げ
るならば、例えば、細孔径が主に200nm以下のA層
と、主に200nm以上のB層の2層を有し、A層の厚
さが2μm以上、B層の厚さが8μm以上で、かつA層
とB層の厚さの合計に対するA層の厚さの割合Xが20
%以上であることを特徴とする微細孔層を有する膜が挙
げられる。
【0024】かかる支持膜において、細孔径の判定は断
面の電子顕微鏡写真による。断面の電子顕微鏡は次の手
順で観察写真を解析して測定できる。まず、タフタや不
織布などの膜の裏うち材が存在する場合はこれらを剥が
した後、中空糸膜などの場合はそのまま、凍結割断法で
切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白
金または4酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウ
ムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分
解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SE
M)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡
は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
電子顕微鏡の倍率としては、1000〜50000倍程
度が好ましい。特に、細孔径と層の厚みを測定する場合
には5000〜20000倍が好ましい。得られた電子
顕微鏡写真から観察倍率を考慮して細孔径を直接測るこ
とができる。例えば、5000倍の電子顕微鏡写真で長
さ10cmの断面に平行な直線を断面の任意の位置に引
き、その直線上でポリマーの部分とポリマーのない部分
即ち細孔部分を区別し、各々の細孔部分の長さを測定す
ることができる。この各々の細孔部分の長さが細孔径で
ある。
【0025】また、主な細孔径が200nm以下とは、
膜面に平行な直線上で測定した細孔径が200nm以下
の細孔の数が10cmの直線上の全細孔の数の半分以上
であることをいい、数平均の細孔径が200nm以下で
あっても良い。更に、主な細孔径が200nm以下のA
層の厚みとは、上記直線上で200nm以下の細孔の数
が全細孔の半分になる境界の直線あるいは数平均の細孔
径が200nm以上になる境界の直線と細孔径が小さい
方の膜表面との距離をいう。同様にしてB層の厚みは該
境界の直線と細孔径が大きい方の膜表面との距離であ
る。
【0026】A層の厚みは2μm以上であり、好ましく
は2〜100μm、更に好ましくは2〜50μmであ
る。A層の厚みが小さすぎると分離性能や耐圧性が十分
でなく大きすぎると透過性が小さくなりすぎる。また、
B層の厚みは8μm以上であり、好ましくは8〜400
μm、更に好ましくは8〜200μmである。A層とB
層の厚みの合計は、10μm〜数mmであり、膜強度の
面から10μm以上、扱い易さやモジュール加工のし易
さの面で400μm以下が好ましい。また、本発明の分
離膜が高圧で十分な耐圧性を有するためにはA層とB層
の厚みの合計に対するA層の厚みの割合Xは、20%以
上であることが必要である。好ましくはXは30%以上
であり、更に好ましくは50%以上である。
【0027】なお、A層やB層の境界が不明瞭であった
り、複雑に入り組んでいたり、あるいは明確に層を形成
していない場合は、細孔径をカウントして、200nm
を境にして、以下のものをAグループ、以上のものをB
グループに分類して、A、BグループをそれぞれA、B
層に仮想的に再構成して、仮の層厚さや割合Xを算出す
ることにより判定すればよい。
【0028】前記においては、細孔径で規定している
が、逆にポリマー実質からも本発明を把握することがで
きる。即ち、かかる微細孔層を有する膜は、そのポリマ
ー実質はポリマーの粒子状物あるいは円柱状物が凝集あ
るいは融着した微細構造を有する。そして、直径が1〜
100nmの範囲内にあるポリマーの粒子状物あるいは
円柱状物が凝集あるいは融着した微細構造の厚みが全膜
厚の20%以上であることが好ましい。
【0029】これら粒子状物あるいは円柱状物の平均径
は5〜80nm、好ましくは10〜70nm、さらに好
ましくは15〜50nmである。平均径が小さすぎると
分離膜の透過性が小さくなり好ましくない。また、平均
径が大きすぎると膜表面に凹凸ができやすくなり好まし
くない。
【0030】本発明における粒子状物または円柱状物が
凝集あるいは融着した微細孔層の厚みは該微細孔層を有
する膜の全厚みの20%以上であり、好ましくは30%
以上、さらに好ましくは50%以上である。厚みの割合
が小さいと細孔径200nm以上の細孔を有する層の相
対膜厚が多くなり、また圧力をかけた時に膜全体の圧密
化が大きく、そのため分離膜の膜性能の変化が大きく好
ましくない。また、該粒子状物または円柱状物が凝集あ
るいは融着した層の厚みの絶対値は該微細孔層を有する
膜の全膜厚によって異なるが1〜50μm、好ましくは
5〜40μm、さらに好ましくは10〜40μmであ
る。厚みの絶対値が小さすぎると分離膜の耐圧性が充分
でなく、また厚みの絶対値が大きすぎると膜の透過速度
が小さくなりすぎて好ましくない。
【0031】かかる微細孔層を有する膜とは、膜の少な
くとも一部に微細孔層を有する膜であり、これ以外にマ
クロボイド層、均一層等も含んでいても良い。
【0032】分離機能膜は緻密なA層表面に形成される
ことが好ましい。A層の表面は平均細孔径100nm以
下の緻密層であることが好ましい。特に、膜の各部分が
同一素材からなる非対称膜の場合は、該緻密層の平均細
孔径は50nm以下であることが好ましく、更に好まし
くは10nm以下である。
【0033】本発明の複合膜の微多孔性支持膜は、粒子
状物または円柱状物の直径が1〜100nmの範囲に含
んでいることが好ましい。さらにかかる粒子状物または
円柱状物が凝集あるいは融着した微多孔層の厚みが微多
孔性支持膜の全厚みの20%以上であることが好まし
い。
【0034】本発明の微多孔性支持膜の全厚みは1μm
〜数mmであり、膜強度の面から10μm以上、扱いや
すさやモジュール加工のしやすさの面で100μm以下
が好ましい。
【0035】また、細孔径とは中に存在する空孔(ボイ
ド)およびポリマーの粒子状物あるいは円柱状物の隙間
のことである。該細孔径200nm以上の細孔が存在す
る層の厚みは全膜厚の80%以下であることが好まし
い。より好ましくは70%以下、さらに好ましくは50
%以下であり、80%よりも厚みの割合が大きいと空孔
率が大きすぎて分離膜の耐圧性が低くなる。
【0036】また、本発明の多孔性支持膜は、細孔径1
00nm以下の細孔の細孔体積空孔率が25%以上でで
あることが好ましい。より好ましくは35%以上、さら
に好ましくは50%以上である。細孔径100nm以下
の細孔の細孔体積空孔率が25%よりも小さいと圧力を
かけた時の分離膜全体の圧密化が大きく膜性能の変化が
大きい。
【0037】ここで細孔体積空孔率は、DSC(示差走
査熱量)測定あるいはガス吸着測定と分離膜の含水量測
定の結果から求めることができる。
【0038】DSC測定では細孔径の大きさによって細
孔内の水の凝固点が変化することを利用してDSC曲線
から細孔の径と細孔内に存在する水の重量を測定するこ
とができる。細孔内の水の比重を考慮すると、ここから
細孔分布曲線を得ることができる。細孔分布曲線は細孔
径とそれに対応する細孔のトータルの体積を示したもの
であり、この曲線の細孔径100nm以下の部分を積分
することによって100nm以下の孔径の細孔の全体積
を計算することができる。DSC法の測定は、次の通り
にして行なえる。まず、水中に保存してある膜サンプル
をを取り出し、軽く付着水を除いた後、少量のサンプル
を密閉パンに詰めて、秤量する。これを示差走査熱量計
(Perkin−Elmer社製DSC−2)に装填す
る。試料は、一旦冷却してから、再昇温して−0.3℃
で保持し、ここから0.5℃/分以下の降温速度で冷却
過程の測定をおこなう。このようにしてDSC測定を行
なうと、細孔半径に対応した温度にピークを持つ凍結曲
線が得られる。細孔水の融点降下度あるいは凝固点降下
度ΔTは、細孔半径rと次の関係が成立する。
【0039】r=α/ΔT+t ここでαは水/氷の界面張力に関係する比例定数であ
り、tは不凍水の厚みである。不凍水とは膜のポリマー
表面に吸着して凍らない水のことである。tを1nmと
仮定してDSC曲線の横軸を細孔半径に、縦軸の熱流束
dq/dtを比重を考慮して細孔体積変化率dV/dr
に変換することによってDSC曲線から細孔径分布曲線
を算出できる。この曲線について細孔径100nm以下
の部分を積分すると細孔径100nm以下の細孔の全細
孔体積を求めることができる。
【0040】一方、ガス吸着法では、凍結乾燥したサン
プルの一定量を測定セル内に入れ、窒素ガスを用いてD
H法(Dollimore and Heal法)で細
孔分布曲線を求めることができる。ただし、サンプルに
よっては凍結乾燥時に形態が変化し、細孔径などが変わ
るので用いるサンプル、処理方法に注意が必要である。
【0041】このようにして求めた絶乾サンプル単位重
量当たりの細孔体積を絶乾サンプルの単位重量当たりの
空孔体積で割って細孔体積空孔率を求めることができ
る。
【0042】さらに、分離膜の含水量は、水に浸漬した
サンプルに付着した水分を注意深く拭き取ったたのち、
秤量し、サンプルの絶乾重量との差を水分量とし、単位
絶乾重量にたいする水分の量で計算する。さらに、水の
比重を考慮してサンプルの単位重量当たりの空孔体積を
求めることができる。
【0043】かかる微細孔層を有する膜は非対称膜であ
ることが好ましい。また、本発明におけるA層又はB層
はそれぞれ均一な細孔径の微細孔を有する構造であって
も良いが、非対称構造であることが好ましい。非対称構
造とは片面にち密で微細な孔を持ち、もう一方の面まで
徐々に大きな微細な孔を持つ構造である。更にA層とB
層は連続的に細孔径が変化しており、A層及びBが一体
となった非対称構造の膜が好ましい。
【0044】非対称膜あるいは微多孔性支持膜は例え
ば、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサ
ーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポ
ート”No.359(1968)に記載された方法に従っ
て製造することができる。具体的には、ポリスルホンの
ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を密に織ったポリ
エステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、
一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、水などの凝
固液中で凝固させることによって得ることができるがか
かる微多孔性支持膜はこれらの作製方法で限定されるも
のではない。
【0045】本発明の分離機能膜の被覆はポリマーをコ
ーティングする方法、コーティングしたポリマーをさら
に架橋する方法、モノマーを微多孔性支持膜の膜面で重
合する方法、あるいは微多孔性支持膜の膜面で界面重縮
合する方法で行なうことができる。特に、本発明のひだ
構造の分離機能膜は微多孔性支持膜の膜面で界面重縮合
する方法で容易に得ることができる。この際、界面重縮
合の各溶液の濃度、添加剤を変えることによってひだの
大きさすなわち等価円直径を制御することができる。特
に、界面反応の際に多官能水溶性有機物の水溶液を支持
膜に塗布した後、支持膜上で該水溶液の濃縮を行ない、
多官能水溶性有機物と反応する多官能有機物を水と非混
合の溶媒に溶解した溶液と反応することによって等価円
直径を小さくすることができる。また、水と非混合の溶
媒に炭素数7以上の炭化水素を用いることも本発明の分
離機能膜を得るために効果がある。
【0046】多官能水溶性有機物は、2個以上の反応性
基を有する芳香族であり、実質的に水に可溶であり多官
能試薬と反応し水不溶性の架橋ポリマを形成するもので
あればいずれでもよく、反応基はアミノ基、水酸基など
であり2個以上の反応性基が同一でもまた異なっていて
もよい。一般的には例えばm−フェニレンジアミン、p
−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼ
ン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族アミン類、ジ
ヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼンなどの芳
香族アルコール類が用いられる。これらの中では反応
性、得られた膜の性能の面から芳香族アミン類、特にm
−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,
3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。これらの一分
子中に2個以上の反応性基を有する水溶性化合物は単独
であるいは混合して用いることが出来る。これら水溶性
化合物は重量濃度で0.1〜20%の水溶液として使用
する。水溶液には必要に応じてDMAc、DMSO、D
MF、NMPなどの極性溶媒など、他の水溶性化合物を
混合してもかまわない。
【0047】また、上記水溶性化合物と反応しうる多官
能性反応試薬としては多官能の酸ハロゲン化物、多官能
のイソシアネート化合物などを用いることが出来る。例
えば多官能酸ハライドの例としては、トリメシン酸ハラ
イド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ハライド、トリ
メット酸ハライド、ピロメット酸ハライド、イソフタル
酸ハライド、テレフタル酸ハライド、ナフタレンジカル
ボン酸ハライド、ジフェニルジカルボン酸ハライド、ピ
リジンジカルボン酸ハライド、ベンゼンジスルホン酸ハ
ライド、クロロスルホニルイソフタル酸ハライドなどの
芳香族系多官能酸ハロゲン化物、イソシアネート化合物
としてはトルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソ
シアネート化合物が用いられる。これらの化合物の中で
は反応のしやすさ、得られた膜の分離性能の面から芳香
族酸クロライド、特にイソフタル酸クロライド、テレフ
タル酸クロライド、トリメシン酸クロライド、及びこれ
らの混合物が好ましい。多官能性反応性試薬を溶解する
溶媒は水と非混和性であり、かつ多官能性反応試薬を溶
解し微多孔性支持膜を破壊しないことが必要であり、界
面重縮合により架橋ポリマを形成し得るものであればい
ずれであっても良い。好ましい例としては、炭化水素化
合物、シクロヘキサン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2トリフ
ルオロエタンなどが挙げられるが、環境保全性、反応速
度、溶媒の揮発性からは好ましくはヘプタン、オクタ
ン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、などであ
る。多官能性反応試薬の溶液には必要に応じて該溶液に
混和可能な他の化合物を混合しても構わない。
【0048】得られた超薄膜の厚みは5nmから10μ
mであるが、半透性複合膜の水透過性の面から、1μm
以下が好ましい。これより厚くなると水透過性が低くな
る恐れがあり好ましくない。また、5nmより薄いと耐
久性、傷、欠点が入りやすいなどの問題点がある。
【0049】次に製膜方法について述べる。
【0050】最初に、微多孔性支持膜上に反応性基を2
個以上持つ水溶性化合物(以下水溶性化合物と略す)を
含む水溶液(以下組成物という)を被覆する。過剰な組
成物を除去した後、該微多孔性支持膜の表面および膜中
の水の一部を加熱あるいは熱風の吹き付けにより蒸発
し、次に多官能性反応試薬の有機溶媒溶液を塗布し、i
n situ界面重縮合反応によって超薄膜を被覆す
る。過剰な有機溶媒溶液を除去し、有機溶媒を揮発させ
た後、本発明の半透性複合膜を得る。得られた半透性複
合膜は必要に応じてこの後純水による洗浄など後処理を
行なっても良い。
【0051】組成物の被覆方法としてはコ−ティングす
る方法あるいは微多孔性支持膜を組成物中に浸漬する方
法がある。組成物を微多孔性支持膜に被覆した後、余分
な組成物を除去するために液切り工程を設けるのが一般
的であり、液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方
向に保持して自然流下させる方法などがある。
【0052】液切りを行なった後、微多孔性支持膜の表
面および膜中の水の一部を蒸発させる。
【0053】水の蒸発方法としては、膜の表面および/
または裏面に熱板あるいは加熱ロ−ルを接触させて膜を
加熱する方法、加熱した容器内に膜を置いて膜を加熱す
る方法、赤外線、ヒ−タ−などを用いて膜を加熱する方
法、加熱気体を膜の表面および/または裏面に吹き付け
て膜を加熱する方法などがある。
【0054】加熱の温度は30〜150℃、好ましくは
60〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃であ
る。温度が30℃未満の場合、水の蒸発が少なく、効果
がない。また、150℃を越える場合は、膜中の水分が
大部分蒸発してしまい、膜性能が低下する。さらに10
0℃以上で長時間加熱すると、蒸発量が大きく、膜性能
が低下する可能性がある。
【0055】加熱時間は、加熱温度との関係で、低温で
あれば長時間でも構わないが、高温の場合は短時間の方
が良い。具体的には、10秒から2分の間が好ましい。
さらに好ましくは10秒から1分である。10秒未満で
は水分蒸発量が少なく、効果がない。また、2分以上、
あるいは高温で1分以上の場合は、蒸発し過ぎて性能が
低下する可能性がある。さらに、あまりに長時間、加熱
を行なうことは生産性も悪い。
【0056】熱風を吹き付ける場合、熱風の温度は25
℃〜150℃、好ましくは60〜100℃、さらに好ま
しくは60〜80℃である。加熱の温度と同じく、低温
では効果がなく、高すぎると性能が低下する。
【0057】吹き付けの時間は10秒〜2分、好ましく
は10秒〜1分である。これも加熱する場合と同じく、
短時間では効果がなく、長時間行なうと、膜性能が低下
する恐れがある。
【0058】熱風はファンなどを用いて、吹き出し口あ
るいはノズルから膜面に吹き付けるが、その風速は0.
5〜20m/sec、好ましくは5〜15m/secで
ある。風速が低いと蒸発効果が低く、高すぎると蒸発し
過ぎて膜性能の低下を引き起こす可能性がある。
【0059】熱風に用いる気体は、空気および窒素、ア
ルゴンなどの不活性ガスが使用できる。また、水分を蒸
発させるという目的から乾燥気体を用いるのが好まし
い。
【0060】次に組成物と多官能性反応試薬のin s
itu界面重縮合反応によって超薄膜を被覆する。多官
能性反応試薬は上に示したように多官能酸ハライドが好
ましい。また、有機溶媒は、前述のとおり水と非混和性
であり、かつ試薬を溶解し微多孔性支持膜を破壊しない
ことが必要であり、界面重縮合により架橋ポリマを形成
し得るものであればいずれであっても良い。 試薬の濃
度は特に限定されるものではないが、少なすぎると活性
層である超薄膜の形成が不十分となり欠点になる可能性
があり、多いとコスト面から不利になるため、好ましく
は0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.1〜
0.5重量%程度である。
【0061】過剰な多官能性反応試薬の有機溶媒溶液は
次の液切り工程により除去され、一般的にはこの間に有
機溶媒は蒸発する。場合によっては、さらに風などをあ
て積極的に有機溶媒を揮発させることにより、本発明の
半透性複合膜を得る。
【0062】上記のようにして得られた複合半透膜はこ
のままでも使用できるが、使用する前に水洗などによっ
て未反応残存物を取り除くことが好ましい。また、必要
に応じて、薬液と接触したり、熱処理を行っても良い。
【0063】本発明の複合膜の形態は平膜でも、中空糸
でも構わない。また、得られた複合膜は平膜は、スパイ
ラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモ
ジュールに組み込んで、また中空糸は束ねた上でモジュ
ールに組み込んで使用することができるが、本発明はこ
れらの膜の使用形態に左右されるものではない。
【0064】本発明の複合膜は10atm程度の操作圧
力でも使用することができるが50atm以上、好まし
くは70atm以上、さらに好ましくは90atm以上
の圧力で使用する場合には耐圧性の効果が発揮でき、か
つ高い透過速度を得ることができる。高圧ポンプの能
力、配管材料、膜エレメントあるいはモジュールの部材
の耐圧性を考慮すると、使用圧力としては60〜200
atm、好ましくは70〜150atmである。
【0065】本発明における高濃度溶液とは溶質濃度が
重量%で0.1%以上の溶液であり、前述の通り逆浸透
法では浸透圧以上の圧力で分離を行なう必要があるた
め、浸透圧の高い0.5重量%以上の濃度の溶液、好ま
しくは3%以上、さらに好ましくは5%以上の濃度の溶
液の分離に効果がある。また、淡水の収率としては、1
0%以下の収率でも本発明の膜、分離方法は安定運転
の、耐久性の効果があるが、好ましくは10%以上、さ
らに好ましくは20%以上の収率で運転する場合に効果
が大きい。分離する溶液の種類としては水溶液が好まし
く、特に高濃度かん水、海水、濃縮海水の淡水化に効果
が大きい。
【0066】
【実施例】以下に実施例によって本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定
されるものではない。
【0067】なお、以下の実施例において複合膜の排除
率(R)は次式1で計算されるものであり、複合膜の透
過速度(F)は次式2で計算されるものである。
【0068】 R(%)={(供給液の濃度−透過液の濃度)/供給液の濃度}×100 (1) F(m3/m2・日)=(一日の透過液量)/(膜面積) (2) 一方、溶液透過係数(Aで表わす)とは単位時間、単位
膜面積に単位有効圧力で膜を透過する溶液の重量を表わ
したもので、次の式で計算できる。
【0069】A(g・cm-2・ sec-1・ atm-1) =F/(P−π1+π2)× 115.7×10-5 (3) ここでFとは膜1m2あたり1日に透過する量をm3単位
で示したものであり、透過流束、造水量と呼ぶ。Pはa
tmで表わした操作圧力である。また、π1は供給液の
浸透圧であり、π2は透過液の浸透圧である。
【0070】さらに膜の溶質透過係数(Bで表わす)は
単位膜面積、単位時間あたりに膜両面の単位濃度差で透
過する溶質の量を表わしたもので、次式によって計算で
きる。
【0071】 B(cm・ sec-1)=(1−R)×A×(P−π1+π2)/R (4) ここでRは膜の溶質排除率であり、供給液の濃度と透過
液の濃度の差を供給液濃度で割った値(%)である。
【0072】実施例1 タテ30cm、ヨコ20cmの大きさのポリエステル繊維か
らなるタフタ(タテ糸、ヨコ糸とも150デニ−ルのマ
ルチフィラメント糸、織密度タテ90本/インチ、ヨコ
67本/インチ、厚さ160μ)をガラス板上に固定
し、その上にポリスルホン(アモコ社製のUdel P
−3500)の15重量%ジメチルホルムアミド(DM
F)溶液を200μの厚みで室温(20℃)でキャスト
し、しばらく空気中で放置した後、純水中に浸漬して5
分間放置することによってポリスルホン微多孔性支持膜
を作製した。
【0073】得られた微多孔性支持膜をm−フェニレン
ジアミンの2重量%水溶液に1分間浸漬した。微多孔性
支持膜表面から余分な該水溶液を取り除いた後、熱風乾
燥機で80℃の1分間水溶液の濃縮を行ない、その後、
トリメシン酸クロライドの0.1重量%n−デカン溶液
を表面が完全に濡れるようにコ−ティングして1分間静
置した。次に膜を垂直にして余分な該溶液を液切りして
除去した後、水洗した。得られた複合膜表面を電子顕微
鏡(UHR−FE−SEM)で観察すると、分離機能層
は細かなひだが存在した。写真をトレースした後、株式
会社ピアス製”PIAS−IV”装置でコンピュータに取
り込み、画像処理ソフトウエア”P´−Analyze
r”で画像解析した。ひだの等価円直径の平均値は13
2.9nmでその分布は150nm以下のひだの数が全
体の65%、120nm以下のひだの数が全体の55%
であった。
【0074】このようにして得られた複合膜を3.5%
の塩化ナトリウム水溶液を用いてpH6.5、25℃、
56atmの条件下で逆浸透評価を行なった結果、排除
率99.6%、造水量0.6m3 /m2・日の性能が得
られた。この時の透過速度係数Aは2.48×10-5
溶質透過係数Bは2.79×10-6であった。同じ複合
膜を用いて3.5%塩化ナトリウム水溶液pH6.5、
25℃、90atmで逆浸透評価を行なった結果、排除
率99.73%、透過水量1.06m3 /m2・日であ
った。この時の透過速度係数Aは1.98×10-5、溶
質透過係数Bは3.32×10-6であり、90atmに
した時の56atmに対するAおよびBの値の比率はそ
れぞれ0.8、1.19であった。
【0075】さらに6%の塩化ナトリウム水溶液を用い
てpH6.5、25℃、90atmの条件下で逆浸透評
価を行なった結果、排除率99.6%、造水量0.7m
3/m2・日の性能が得られた。
【0076】実施例2 実施例1で得られた微多孔性支持膜をm−フェニレンジ
アミンと1,3,5−トリアミノベンゼンの3重量%水
溶液に1分間浸漬した。微多孔性支持膜表面から余分な
該水溶液を取り除いた後、熱風乾燥機で80℃の1分間
水溶液の濃縮を行ない、その後、イソフタル酸クロライ
ドとトリメシン酸クロライドの0.2重量%n−デカン
溶液を表面が完全に濡れるようにコ−ティングして1分
間静置した。次に膜を垂直にして余分な該溶液を液切り
して除去した後、水洗した。得られた複合膜表面を電子
顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察すると、分離機
能層は細かなひだが存在した。写真を実施例1と同様に
して画像解析してひだの等価円直径を求めたところ等価
円直径の平均値は92.8nmで150nm以下のひだ
の数が全体の95%、120nm以下のひだの数が全体
の90%であった。このようにして得られた複合膜を
3.5%の塩化ナトリウム水溶液を用いてpH6.5、
25℃、56atmの条件下で逆浸透評価を行なった結
果、排除率99.7%、造水量0.65m3/m2・日の
性能が得られた。この時の透過速度係数Aは2.69×
10-5、溶質透過係数Bは2.27×10-6であった。
同じ複合膜を用いて3.5%塩化ナトリウム水溶液pH
6.5、25℃、90atmで逆浸透評価を行なった結
果、排除率99.8%、透過水量1.23m3/m2・日
であった。この時の透過速度係数Aは2.29×1
-5、溶質透過係数Bは2.84×10-6であり、90
atmにした時の56atmに対するAおよびBの値の
比率はそれぞれ0.85、1.24であった。
【0077】さらに6%の塩化ナトリウム水溶液を用い
てpH6.5、25℃、90atmの条件下で逆浸透評
価を行なった結果、排除率99.7%、造水量0.83
3/m2・日の性能が得られた。 比較例1 実施例1と同様にして微多孔性支持膜を得た。得られた
微多孔性支持膜をm−フェニレンジアミンと1,3,5
−トリアミノベンゼンの2重量%水溶液に1分間浸漬し
た。微多孔性支持膜表面から余分な該水溶液を取り除い
た後、トリメシン酸クロライドとイソフタル酸クロライ
ドの0.1重量%n−デカン溶液を表面が完全に濡れる
ようにコ−ティングして1分間静置した。次に膜を垂直
にして余分な該溶液を液切りして除去した後、水洗し
た。得られた複合膜表面を電子顕微鏡(UHR−FE−
SEM)で観察すると、分離機能層は比較的大きなひだ
が存在した。写真を実施例1と同様にして画像解析して
ひだの等価円直径を求めたところ等価円直径の平均値は
170.2nmで150nm以下のひだの数が全体の3
7%、120nm以下のひだの数が全体の17%であっ
た。
【0078】このようにして得られた複合膜を3.5%
の塩化ナトリウム水溶液を用いてpH6.5、25℃、
56atmの条件下で逆浸透評価を行なった結果、排除
率99.0%、造水量0.96m3 /m2・日の性能が
得られた。この時の透過速度係数Aは3.97×1
-5、溶質透過係数Bは1.12×10-5であった。同
じ複合膜を用いて3.5%塩化ナトリウム水溶液pH
6.5、25℃、90atmで逆浸透評価を行なった結
果、排除率99.1%、透過水量1.53m3 /m2
日であった。この時の透過速度係数Aは2.86×10
-5、溶質透過係数Bは1.59×10-5であり、90a
tmにした時の56atmに対するAおよびBの値の比
率はそれぞれ0.72、1.42と変化が大きかった。
【0079】さらに6%の塩化ナトリウム水溶液を用い
てpH6.5、25℃、90atmの条件下で逆浸透評
価を行なった結果、排除率98.7%、造水量1.03
3/m2・日の性能が得られ、低脱塩率であった。
【0080】
【発明の効果】本発明の複合膜およびその使用方法によ
って、60atmを越える圧力で逆浸透分離を行なうに
際して高い分離性能で、高濃度溶液の分離を行なうこと
ができる。特に海水の淡水化においては海水及び高濃度
海水を高い収率で、また低いエネルギー、少ないコスト
で淡水化することができ、得られる水は水質が良く、か
つ水量もおおくなる。さらに、本発明の複合膜は耐久性
が高く長時間安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の複合膜の粒子構造電子顕微鏡写真
(20000倍)
【図2】 実施例1の複合膜の粒子構造電子顕微鏡写真
(50000倍)
【図3】 比較例1の複合膜の粒子構造電子顕微鏡写真
(20000倍)
【図4】 比較例1の複合膜の粒子構造電子顕微鏡写真
(50000倍)
【図5】 実施例1、実施例2および比較例1の複合膜
の粒子構造電子顕微鏡写真の画像解析によるひだ等価円
直径の分布
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 67/00 - 71/82 510

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分離機能膜と微多孔性支持膜からなる複合
    膜において、等価円直径の平均値が150nm以下のひ
    だを有する分離機能膜を有することを特徴とする複合
    膜。
  2. 【請求項2】該分離機能膜の等価円直径150nm以下
    のひだの数がひだの総数の60%以上であることを特徴
    とする請求項1記載の複合膜。
  3. 【請求項3】該分離機能膜の等価円直径120nm以下
    のひだの数がひだの総数の50%以上であることを特徴
    とする請求項1または2記載の複合膜。
  4. 【請求項4】該分離機能を形成するポリマーが界面反
    応で得られる架橋ポリマーであることを特徴とする請求
    項1記載の複合膜。
  5. 【請求項5】該分離機能を形成するポリマーが架橋芳
    香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1記載の
    複合膜。
  6. 【請求項6】該微多孔性支持膜が非対称構造であること
    を特徴とする請求項1記載の複合膜。
  7. 【請求項7】該微多孔性支持膜は、細孔径が主に200
    nm以下のA層と主に200nm以上のB層の2層を有
    し、A層の厚さが2μm以上、B層の厚さが8μm以上
    で、かつA層とB層の厚さの合計に対するA層の厚さの
    割合Xが20%以上であることを特徴とする請求項1記
    載の複合膜。
  8. 【請求項8】該微多孔性支持膜がポリスルホン、ポリア
    ミド、ポリエステル、ビニルポリマー、ポリフェニレン
    スルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリ
    フェニレンオキシドから選ばれる少なくとも一種からな
    ることを特徴とする請求項1記載の複合膜。
  9. 【請求項9】界面反応において芳香族の多官能水溶性有
    機物の水溶液を微多孔性支持膜に塗布した後、支持膜上
    で該水溶液の濃縮を行い、多官能水溶性有機物と反応す
    る多官能有機物を水と非混合の溶媒に溶解した溶液と反
    させることにより製造されたことを特徴とする請求項
    1〜8いずれかに記載の複合膜
  10. 【請求項10】水と非混合の溶媒に炭素数7以上の炭化
    水素を用いて製造されたことを特徴とする請求項記載
    の複合膜。
  11. 【請求項11】濃度溶液を、請求項1〜10いずれか
    に記載の複合膜を用い、50atm以上の操作圧力で膜
    分離することを特徴とする複合膜の使用方法。
  12. 【請求項12】高濃度溶液が溶質濃度0.5%以上の溶
    液であることを特徴とする請求項11記載の複合膜の使
    用方法。
JP32817195A 1995-11-22 1995-11-22 複合膜、その製造方法および使用方法 Expired - Fee Related JP3467940B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32817195A JP3467940B2 (ja) 1995-11-22 1995-11-22 複合膜、その製造方法および使用方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32817195A JP3467940B2 (ja) 1995-11-22 1995-11-22 複合膜、その製造方法および使用方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09141071A JPH09141071A (ja) 1997-06-03
JP3467940B2 true JP3467940B2 (ja) 2003-11-17

Family

ID=18207281

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32817195A Expired - Fee Related JP3467940B2 (ja) 1995-11-22 1995-11-22 複合膜、その製造方法および使用方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3467940B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008253906A (ja) * 2007-04-03 2008-10-23 Nitto Denko Corp 乾燥複合半透膜
KR100766569B1 (ko) * 2007-04-12 2007-10-12 주식회사 디엠퓨어텍 수처리용 막 모듈
WO2009054495A1 (ja) * 2007-10-25 2009-04-30 Toyo Boseki Kabushiki Kaisha 高分子多孔質膜
JP2009178915A (ja) * 2008-01-30 2009-08-13 Tokushu Paper Mfg Co Ltd シート状物
JP5263104B2 (ja) * 2009-09-24 2013-08-14 東レ株式会社 複合半透膜の製造方法
WO2011102124A1 (ja) 2010-02-16 2011-08-25 日東電工株式会社 複合分離膜およびこれを用いた分離膜エレメント
EP2805761B1 (en) 2012-01-16 2020-06-17 Toray Industries, Inc. Composite semipermeable membrane and method for manufacturing same
EP2962748B1 (en) 2013-02-28 2021-05-19 Toray Industries, Inc. Composite semipermeable membrane and production thereof
JPWO2014208603A1 (ja) * 2013-06-28 2017-02-23 東レ株式会社 複合分離膜および分離膜エレメント
JP6014574B2 (ja) * 2013-11-29 2016-10-25 濱田重工株式会社 転炉スラグ中の遊離石灰の定量方法
JPWO2016002821A1 (ja) * 2014-06-30 2017-04-27 東レ株式会社 複合半透膜
CN106621844A (zh) * 2016-12-28 2017-05-10 前沿新材料研究院(深圳)有限公司 抗生物污染的反渗透膜及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09141071A (ja) 1997-06-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4340480A (en) Process for preparing liquophilic polyamide membrane filter media and product
US4340479A (en) Process for preparing hydrophilic polyamide membrane filter media and product
KR100355726B1 (ko) 셀룰로스계한외여과막
JP6197649B2 (ja) 複合半透膜
EP0207721B1 (en) Anisotropic membranes for gas separation
JP3467940B2 (ja) 複合膜、その製造方法および使用方法
EP2695670A1 (en) Composite semipermeable membrane, composite semipermeable membrane element, and method for manufacturing composite semipermeable membrane
JP6237233B2 (ja) 複合半透膜および複合半透膜エレメント
JP3385824B2 (ja) 複合膜
EP0247597B1 (en) Process for producing porous membranes
JP4284767B2 (ja) 複合半透膜およびそれを用いた造水方法、流体分離素子
JP3999367B2 (ja) シート状分離膜の製造法
JPH09313905A (ja) ポリスルホン多孔質分離膜
US5324430A (en) High performance pan composite membranes
JP2000061276A (ja) 複合膜
JP3242185B2 (ja) ポリアミド系複合中空糸型逆浸透膜の製造方法
JP3438278B2 (ja) 半透性複合膜およびその製造方法
JPH055529B2 (ja)
WO2023145845A1 (ja) 複合半透膜及び複合半透膜の製造方法
JP2000070939A (ja) 造水方法
JP3588886B2 (ja) 複合逆浸透膜の製造方法及びその装置
JP3536501B2 (ja) 複合半透膜の製造方法及びその装置
Alsaery Development of highly porous flat sheet polyvinylidene fluoride (PVDF) membranes for membrane distillation
JPS647802B2 (ja)
JP2014188407A (ja) 複合半透膜

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees