JP3453825B2 - 被覆切削工具部材及びその製造方法 - Google Patents

被覆切削工具部材及びその製造方法

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JP3453825B2 JP33540793A JP33540793A JP3453825B2 JP 3453825 B2 JP3453825 B2 JP 3453825B2 JP 33540793 A JP33540793 A JP 33540793A JP 33540793 A JP33540793 A JP 33540793A JP 3453825 B2 JP3453825 B2 JP 3453825B2
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秀樹 森口
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面に硬質層を有し耐
摩耗性、耐欠損性に優れ、切削温度が上昇しやすい高
速、高能率の厳しい切削条件にも耐え得る工具用超硬
合金部材又は工具用セラミック部材よりなる被覆切削
具部材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】切削工具において切削中の工具刃先温度
は約600℃以上にもなることが知られている。さら
に、近年はNC工作機の普及、生産コストの低減努力、
労働時間短縮、投資削減の流れから、単位時間および機
械一台あたりの生産性を高めるため、従来よりも高速、
高送りの条件で切削できる切削工具開発に対する要求が
自動車メーカーを中心として、高まっている。そのよう
な切削条件では、工具刃先温度は800℃を超え、工具
材質にとっては、非常に過酷な切削条件となる。刃先温
度が高くなれば切削工具の刃先は熱により塑性変形し、
刃先位置の後退を招くうえ、800℃を超える温度では
超硬合金が被削材と反応して、急激な摩耗を引き起こ
す。このような切削による損傷の改善のために化学的蒸
着法あるいは物理蒸着法により各種硬質被覆層を被覆し
た被覆超硬合金及び被覆セラミックスが使用されてお
り、これにより耐摩耗性を向上させることが可能となっ
た。化学的蒸着法により被覆すると被覆と基体である超
硬合金あるいはセラミックスとの間に拡散を伴うため、
相互の密着強度は非常に強く、被覆の高温硬度が高いこ
とと相まって耐摩耗性は大幅に向上する。しかし、一方
で耐欠損性に対しては、基体の超硬合金及びセラミック
に比べ刃先強度が低下し、工具が欠損しやすくなるとい
う欠点があった。この理由は切削における欠損は被覆膜
の表面を起点として発生した亀裂が基体である超硬合金
及びセラミックへ伝播して発生するが、化学的蒸着法に
より被覆する場合、被覆温度が通常1000℃と高温で
あるため被覆後室温(約20℃)まで冷却すると基体の
超硬合金及びセラミックと被覆膜との熱膨張係数の差に
より被覆膜には引張りの残留応力が働くことになり、こ
の残留応力が亀裂の伝播を助長することになるからであ
る。現在一般に使用されている切削工具の被覆膜の膜厚
が数μmから約10μmであるのは被覆膜の膜厚が厚く
なるほど耐摩耗性は向上するが、上述の理由から耐欠損
性が低下し、これ以上膜厚を厚くすることができないた
めである。従って被覆膜の耐欠損性を向上させることが
できれば、厚膜のコーティングが可能になり、切削温度
の上昇する高速高能率の切削条件での切削が可能な耐摩
耗性に優れる工具を得ることが可能となる。
【0003】表面に硬質被覆層を形成させた被覆切削工
具部材においては、通常、基体である超硬合金の熱膨張
係数(約5.5×10-6-1)及びセラミックの熱膨張
係数(窒化ケイ素系で約3.0×10-6-1)が被覆膜
の熱膨張係数(例えばTiCでは約7.6×10
-6-1、TiNでは約9.3×10-6-1、Al2 3
では7.9×10-6-1)より小さくなっている。この
ため、これらの基体の表面に化学的蒸着法により硬質材
料の被覆膜を数μmから10μm程度被覆した場合、被
覆後、室温まで冷却すると被覆膜に引張りの応力が発生
し、この応力が被覆層の破断強度を越えるために被覆層
には被覆膜厚が2〜10μm程度の場合で亀裂の平均間
隔が100〜400μmの亀裂が発生し一部応力が開放
されている。しかし通常化学的蒸着法により被覆したT
iC、Al2 3 、TiCN、TiN、TiBN、Ti
BCN等の被覆膜には、なお0.5〜1.0GPa程度
の弾性歪が残留しておりこれにより切削時の亀裂の伝播
が助長され工具の刃先強度が低下している。
【0004】化学的蒸着法により被覆した工具の刃先強
度の低下を防ぐために、これまでに、被覆後、工具の刃
先部分の被覆層の膜厚のみ平坦部より薄くする方法(特
開平2−48103号公報)や被覆後ショットピーニン
グ等により被覆層に残留する応力を開放する方法(特開
平2−254144号公報)などが試みられてきた。ま
た、鉄粉、GC砥粒及びAl2 3 等のセラミック粒の
メディアを使ったブラストやGC粒を含むメディアを使
ったバレルによる機械的処理あるいは焼き入れによる熱
衝撃を加える処理を施し、弾性歪を解放する方法(特願
平3−357570号)が提案されている。これらの処
理により被覆膜中に残留する引張応力は解放できるが、
同時に、多数の亀裂が被覆層中に導入されるため、その
亀裂がいわゆるグリフィスの亀裂となって次式 σm -1=σo -1+K×(dc +dη)1/2 (σm は表面に被覆層を持つ超硬合金の抗折力、σo
超硬合金母材の理想的な抗折力、Kは定数、dcは被覆
層の厚み、dηは超硬合金母材のη層の厚み)に従っ
て、被覆厚みとともに強度低下するため、被覆合金の強
度の低下は避けることができなかった。これに対して、
被覆膜と超硬母材に機械的衝撃を与えることにより、圧
縮残留応力を導入する提案もあるが、被覆膜は一般に塑
性変形能が小さく圧縮応力が入りにくいため、この方法
では被覆膜に圧縮残留応力を導入することは実際上でき
ず、母材に導入できた圧縮残留応力も800℃を越える
切削温度では簡単にアニールされてしまうため、切削工
具としての靱性を向上させる効果はほとんど期待できな
かった。さらに、被覆膜に亀裂を高い密度で生成させた
ため、膜の脱落や剥離が生じやすく、耐摩耗性が低下す
るといった問題点が発生した。しかも、切れ刃刃先温度
が1000℃以上となる高速、高送り切削では、高い密
度で形成した亀裂から酸素が侵入し、膜の構成物質であ
るTiC、TiCN、TiN、TiBN、TiBCNな
どの非酸化物及び母材である超硬合金やセラミックが酸
化し、脆化するため、耐摩耗性、耐欠損性が低下し、そ
のような高速、高能率の過酷な切削条件では逆に性能の
低下を招くといった問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
従来技術の問題点を解決し、耐摩耗性、耐欠損性に優
れ、切削温度が上昇しやすい高速、高能率の厳しい切削
条件にも耐え得る被覆切削工具部材及びその製造方法を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、表面に硬
質層を設けた超硬合金部材及びセラミック部材について
鋭意検討の結果、適切な表面処理を施すことにより前記
課題を解決できることを見出し本発明を完成した。すな
わち本発明は、(1)表面に硬質被覆層を設けた被覆超
硬合金部材又は被覆セラミック部材よりなる被覆工具部
材において、被覆工程中もしくは被覆後に生じた被覆層
中の亀裂の少なくとも一部が金属及び/又はセラミック
スよりなる充填材で埋められた構造を有してなることを
特徴とする被覆切削工具部材及び(2)表面に硬質被覆
層を設けた被覆超硬合金部材又は被覆セラミック部材よ
りなる被覆切削工具部材の製造方法において、硬質被覆
層形成後に亀裂を埋める処理を施し、被覆工程中もしく
は被覆後に生じた被覆層中の亀裂の少なくとも一部を、
金属及び/又はセラミックスよりなる充填材で埋めるこ
とを特徴とする被覆切削工具部材の製造方法である。
【0007】本発明の好ましい態様として次の被覆切削
工具部材及びその製造方法がある。 (3)被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋めた充填材
が酸化物セラミックスを主成分とする充填材である前記
(1)の被覆切削工具部材。 (4)被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋めた充填材
がSiO2 を主成分とするガラス状物質である前記
(1)又は(3)の被覆切削工具部材。 (5)被覆層中の亀裂間隔の平均値が被覆層膜厚の1/
3〜3倍の範囲にある前記(1)、(3)又は(4)の
被覆切削工具部材。 (6)室温における被覆層中の残留応力値が−0.2G
Pa以上、0.2GPa以下である前記(1)、
(3)、(4)又は(5)の被覆切削工具部材。 (7)被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋めた充填材
が金属を主成分とする充填材であり、室温における被覆
層中の残留応力が−2GPa以上、0.2GPa以下で
ある前記(1)又は(5)の被覆切削工具部材。 (8)表面に硬質被覆層を設けた被覆セラミック部材が
窒化ケイ素系セラミックスを基材とする被覆セラミック
部材である前記(1)、(3)、(4)、(5)、
(6)又は(7)の被覆切削工具部材。 (9)充填材が金属及び/又はセラミックスに潤滑性物
質を分散させた充填材である前記(1)、(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)の被覆切削
工具部材。 (10)充填材中の金属が使用中の発熱により溶融する
金属である前記(1)、(5)、(6)、(7)、
(8)又は(9)の被覆切削工具部材。 (11)亀裂を埋める処理が液相法であることを特徴と
する前記(2)の被覆切削工具部材の製造方法。 (12)亀裂を埋める処理を500℃以下の温度で行う
ことを特徴とする前記(2)又は(11)の被覆切削
具部材の製造方法。
【0008】(13)被覆切削工具部材が前記(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は
(10)の被覆切削工具部材である前記(2)、(1
1)又は(12)の被覆切削工具部材の製造方法。 (14)硬質被覆層がIVa族金属の炭化物、窒化物、
炭窒化物、炭酸化物、ホウ窒化物、IVa族金属の酸化
物及びAl2 3 のうちの1種の単層あるいは2種以上
の層で構成された層である前記(1)、(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は
(10)の被覆切削工具部材。 (15)被覆切削工具部材が、硬質被覆層をIVa族金
属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、ホウ窒化
物、IVa族金属の酸化物及びAl2 3 のうちの1種
の単層あるいは2種以上の層で構成されたものである前
記(2)、(11)、(12)又は(13)の被覆切削
工具部材の製造方法。 (16)被覆切削工具部材の母材が、1種以上の鉄族金
属を結合金属とし、周期律表のIVa、Va、VIa族
金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及び炭酸窒化物からな
る群から選ばれる1種以上を硬質相とする超硬合金部材
である前記(1)、(3)、(4)、(5)、(6)、
(7)、(9)、(10)又は(14)の被覆切削工具
部材。 (17)被覆切削工具部材が、1種以上の鉄族金属を結
合金属とし、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の
炭化物、窒化物、炭窒化物及び炭酸窒化物からなる群か
ら選ばれる1種以上を硬質相とする超硬合金部材で、母
材を形成されたものである前記(2)、(11)、(1
2)、(13)又は(15)の被覆切削工具部材の製造
方法。
【0009】(18)被覆切削工具部材の母材が、周期
律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、
酸化物、硼化物、炭窒化物、窒化珪素、炭化珪素及び酸
化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上よりな
るセラミック部材である前記(1)、(3)、(4)、
(5)、(6)、(7)、(9)、(10)又は(1
4)の被覆切削工具部材。 (19)被覆切削工具部材が、周期律表のIVa、V
a、VIa族金属の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、
炭窒化物、窒化珪素、炭化珪素及び酸化アルミニウムか
らなる群から選ばれる1種以上よりなるセラミック部材
で、母材を形成されたものである前記(2)、(1
1)、(12)、(13)又は(15)の被覆切削工具
部材の製造方法。 (20)充填材が、周期律表のIIa、IIIa、IV
a、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、II
b、IIIb、IVb族金属からなる群から選ばれる1
種以上の金属及び/又はそれらの合金である前記
(1)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、
(10)、(14)、(16)又は(18)の被覆切削
工具部材。 (21)充填材として、周期律表のIIa、IIIa、
IVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、I
Ib、IIIb、IVb族金属からなる群から選ばれる
1種以上の金属及び/又はそれらの合金を使用する前記
(2)、(11)、(12)、(13)、(15)、
(17)又は(19)の被覆切削工具部材の製造方法。 (22)充填材が、周期律表のIVa、Va、VIa、
VIIa、VIII族金属の炭化物、窒化物、酸化物、
硼化物、硫化物、窒化珪素、炭化珪素、酸化珪素及び酸
化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上のセラ
ミックスである前記(1)、(5)、(6)、(8)、
(9)、(14)、(16)又は(18)の被覆切削
具部材。 (23)充填材として、周期律表のIVa、Va、VI
a、VIIa、VIII族金属の炭化物、窒化物、酸化
物、硼化物、硫化物、窒化珪素、炭化珪素、酸化珪素及
び酸化アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の
セラミックスを使用する前記(2)、(11)、(1
2)、(13)、(15)、(17)又は(19)の被
切削工具部材の製造方法
【0010】本発明の被覆切削工具(以下、単に被覆工
具ともいう)部材は、超硬合金部材又はセラミック部材
よりなる母材の表面にIVa族金属の炭化物、窒化物、
炭窒化物、炭酸化物、ホウ窒化物、IVa族金属の酸化
物及びAl2 3 のうちの1種の単層あるいは2種以上
の層からなる硬質被覆層を設けたものを基本構造とし、
被覆工程中もしくは被覆後に生成した被覆膜中の亀裂の
少なくとも一部が金属及びまたはセラミックスにより埋
められていることを特徴とする。本発明の被覆工具部材
を構成する母材である超硬合金部材としては1種以上の
鉄族金属を結合金属とし、周期律表のIVa、Va、V
Ia族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及び炭酸窒化物
からなる群から選ばれる1種以上を硬質相とするもの
が、またセラミック部材としては周期律表のIVa、V
a、VIa族金属の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、
炭窒化物、窒化珪素、炭化珪素及び酸化アルミニウムか
らなる群から選ばれる1種以上よりなるものが使用でき
る。
【0011】本発明の被覆工具は次のようにして製造す
ることができる。先ず母材である超硬合金部材又はセラ
ミック部材の表面に化学蒸着法、物理蒸着法、焼結法、
溶射法、めっき法など、それ自体公知の方法により硬質
被覆層を形成させる。硬質被覆層の厚みは2〜100μ
mの範囲が好ましい。厚みが2μm未満では硬質被覆層
としての効果が少なく、また100μmを超えると耐欠
損性が低下するので好ましくない。
【0012】このようにして超硬合金部材又はセラミッ
ク部材よりなる母材の表面に硬質被覆層を形成させた場
合、母材の材料の熱膨張係数が硬質被覆層を形成する材
料の熱膨張係数より小さいため、前記のように被覆工程
中もしくは被覆後に被覆膜中に微細な亀裂が発生する。
これらの亀裂が工具の耐欠損性を低下させる原因となる
ので、本発明に係る被覆切削工具においては、被覆層形
成後にこれらの亀裂の少なくとも一部を充填材で埋める
処理を行う。充填材として使用する金属は周期律表のI
Ia、IIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、V
III、Ib、IIb、IIIb、IVb族金属からな
る群から選ばれる1種以上の金属及び/又はそれらの合
金、例えばPb、Sn、Mo、Ni、Co、Fe、C
u、Cr、Al、Znあるいはそれらの合金などであ
る。また、充填材として使用するセラミックスは周期律
表のIVa、Va、VIa、VIIa、VIII族金属
の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、硫化物、窒化珪
素、炭化珪素、酸化珪素及び酸化アルミニウムからなる
群から選ばれる1種以上のセラミックス、例えばTi
C、SiC、WC、SiO2 、CoO、MnO、MoS
2 などである。
【0013】亀裂を埋める処理の方法としては、有機金
属化合物、金属アルコキシドを用いた低温CVD法、液
相法であるゾルゲル法、液相析出法、金属塩やコロイド
溶液を用いた電気化学的方法、無電解メッキ、複合メッ
キなどを用いることができる。特にゾルゲル法は金属の
酸化物や硫化物を数10オングストロームの微粒子で作
成でき、被覆層中の微細な亀裂への埋め込み方法として
優れた方法である。ゾルゲル法以外の方法であっても、
液相が介在する方法の方が気相法よりも被覆膜中の亀裂
への埋め込み性が良好で、0.05μm以下の微細な亀
裂に対しても埋め込み性を確保できるため好ましい。さ
らには、亀裂中の気泡をなくすため、真空中での溶浸処
理を行うとよい。
【0014】本発明の被覆工具は被覆膜中の亀裂が埋め
られた構造となっているため、切削時の発熱で被覆膜が
熱膨張した際に、被覆膜と母材の熱膨張係数の差から、
被覆層に圧縮残留応力が発生するようになり、耐欠損性
が大幅に向上する。これは、通常被覆合金では被覆層の
強度が母材に対して弱いため、被覆層の厚みがグリフィ
スの亀裂となって強度低下するのが、被覆層の強化によ
って母材の強度に依存するようになったためと考えられ
る。さらに,従来技術では被覆層の膜厚が厚くなるほど
被覆合金の強度は低下していたが、本発明では被覆膜そ
のものの強度が切削中に発生する圧縮残留応力により高
められるため、従来、強度が低下するために実用化され
ていなかった20μm以上、100μm程度までの厚膜
コーティング材を工具として利用できるようになった。
しかもこの圧縮残留応力は、PVD法で得られる被覆膜
中の圧縮残留応力のように500℃以上の温度で消失し
てしまう性質のものではなく、構造的に高温域ほど圧縮
残留応力の値は大きくなり、工具のような発熱環境で用
いられる材料として非常に有利である。ただし、上記の
ような圧縮残留応力を切削中に発生させるためには、亀
裂の埋め込み処理を被覆層を形成した時の温度すなわち
1000℃前後の温度よりもできるだけ低い温度で行う
必要があり、500℃以下の温度での処理、好ましく
は、300℃以下での処理が好ましい。
【0015】前述した圧縮残留応力を大きくするために
は、本発明の被覆工具では、被覆層中の亀裂の埋め込み
処理前に被覆膜層中の引張残留応力は解放されているこ
とが好ましく、残留応力は−0.2GPa〜0.2GP
aの範囲であることが好ましい。ここで、−0.2GP
a以上としたのは、被覆膜に−0.2GPaより大きな
圧縮残留応力を導入することは難しく、0.2GPaよ
り大きいと、埋め込み処理による切削時の圧縮残留応力
の導入効果が小さくなるためである。また、亀裂密度も
高いほど、亀裂埋め込み処理後の効果が大きくなる。亀
裂の平均間隔としては、膜厚の1/3〜3倍程度が好ま
しい。特に好ましいのは1/2〜2倍程度である。1/
3より少ないと亀裂導入時に被覆膜の剥離や破壊が生じ
やすく、3倍をこえると埋め込み処理による切削時の圧
縮残留応力の導入効果が小さくなるためである。これら
の引張残留応力解放および亀裂導入処理は公知の方法、
例えば、ショトピーニングやブラストなどの機械的衝
撃を与える方法を用いることができる。従来は、公知の
これらの方法により被覆膜に亀裂を導入し、工具として
用いた場合、被覆膜は脱落や剥離を起こしやすくなり、
耐摩耗性が低下していたが、本発明品は、優れた耐摩耗
性を示す。これは、亀裂両側の被覆膜を接着する形で物
質が埋め込まれているため、被覆膜の脱落、剥離が発生
しにくくなったためと思われる。
【0016】充填材として酸化物セラミックスを主成分
とする物質を使用した場合、被覆膜及び被覆母材への酸
素の侵入が抑えられ、切削温度が1000℃以上となる
ような高速、高能率の切削条件下での耐摩耗性を向上さ
せることができる。さらに、被覆膜中の亀裂をSiO2
を主成分とする酸化物で埋めこんだ場合、耐欠損性が著
しく向上する。これは、SiO2 を主成分とするガラス
状物質は高温で軟化しやすく、塑性変形能が高いため、
切削中に大きな機械的衝撃を受けたときも衝撃を吸収
し、亀裂の発生を抑止するとともに、一旦発生した亀裂
も、埋め込まれたガラス状物質が進展エネルギーを吸収
し、亀裂の進展を阻止するため疲労強度が向上するため
であると思われる。
【0017】被覆膜中の亀裂を埋める充填材中に潤滑性
物質を分散させると、切り屑と工具表面との間の摩擦係
数が低下するため、切削温度が低下するうえ、被覆膜を
引き剥すように働く応力が低下するため耐摩耗性が向上
する。潤滑性物質としてはMo、W、Pb、Zn、S
b、Mnなどの金属の硫化物、窒化ホウ素、グラファイ
ト、B2 3 、フッ素樹脂などの公知の潤滑性物質を用
いることができる。さらに、本発明品では亀裂中に埋め
込まれた金属及び/又はセラミックスよりなる充填材は
被覆膜中に楔状に侵入しているため、アンカー効果によ
って大きな付着力で被覆膜に接着しており、脱落、剥離
が生じにくい。このため、充填材中に分散された潤滑性
物質も脱落、剥離しにくく、単に潤滑性物質を、被覆、
塗布した場合と比べて、その効果は著しい。
【0018】また、被覆層中の亀裂を埋める充填材中に
Sn、Pb、Al、Cu、Zn、Mg、Pなどの低融点
金属もしくは低融点の合金を存在させると、切削熱によ
って、液相が発生し、工具表面の摩擦係数が低下するた
め、切削温度の低下、被覆膜に働くせん断応力の低下が
起こり、耐摩耗性が向上する。さらに、融けた金属が、
切削時の衝撃や疲労によって発生した微小亀裂をふさぐ
ため、自己修復性の機能を期待することもできる。ま
た、融点以下の切削温度では、その優れた塑性変形能に
より耐欠損性が向上する。
【0019】さらに、充填材として金属を用い、埋め込
み処理を行った後、ショットピーニング等の公知の方法
で機械的衝撃を部材表面に与え、被覆中に圧縮残留応力
を与えることも、低速切削条件での耐欠損性向上に有利
である。この処理により、亀裂中に埋め込んだ金属が塑
性変形して歪みエネルギーを持つようになり圧縮応力が
生じ、本発明品は低速から高速までの幅広い切削条件下
において優れた耐欠損性を有するものとなる。圧縮残留
応力として特に好ましいのは2GPa〜0.2GPaの
範囲である。2GPa以上の圧縮残留応力を与えようと
すると、この処理に必要となる機械的衝撃の大きさは非
常に大きくなり、膜自身の破壊が発生する恐れがあり、
性能のばらつきを招くため好ましくない。また、0.2
GPaよりも圧縮残留応力が小さいと切削性能に与える
性能向上効果も小さくなる。
【0020】次に、本発明の被覆工具において、母材に
窒化珪素を用いた場合、窒化珪素の熱膨張係数がAl2
3 やTiCに比べてかなり小さいため、切削時に発生
する圧縮残留応力は特に大きくなり、その切削性能は非
常に優れたものとなる。従来技術でも、窒化珪素の優れ
た高温硬度、耐熱衝撃性を利用して、鋼の高速切削用工
具として、窒化珪素の欠点であるFeとの反応性を抑え
るため化学的蒸着法により、Al2 3 やTi化合物を
被覆した工具が提案(特開昭55−85481、56−
155080各号公報)されていた。しかしながら、こ
れらの工具では、約1000℃で化学的蒸着法によりA
2 3 やTi化合物を被覆した場合、超硬合金上に被
覆したときよりも被覆膜に大きな引張残留応力が発生す
るため、耐欠損性が低下し、鋼切削用工具として実用に
供することができなかった。この引張残留応力を解放す
るため、前述の機械的衝撃を膜に与えることにより、引
張残留応力を解放し、耐欠損性を向上させることを試み
たが、被覆膜に多数の亀裂が導入されたため、膜の脱
落、剥離が発生し、Feと反応しやすい母材が露出した
ため、耐摩耗性が極端に低下した。これに対し、本発明
では、導入された亀裂を充填材が埋め、膜同士を接着し
ているため、被覆膜の脱落、剥離が発生しにくい上、切
削中の被覆膜の熱膨張により、被覆膜に圧縮残留応力が
発生し、耐欠損性も向上するため、窒化珪素母材の優れ
た特性が十分発揮でき、従来使用できなかった鋼の切削
に使用できるようになった。
【0021】本発明の被覆工具部材は、工具表面硬質層
の厚み方向に亀裂を有し、その亀裂が金属及び/又は
ラミックで埋められた構造を有している。このような被
覆工具においては、表面硬質層の熱膨張係数が内部より
も大きい複合構造部材であれば、切削時に発生する熱に
より表面硬質層が内部構成物質よりも大きな熱膨張を示
すため、表面硬質層に圧縮残留応力を発生させることが
できる。したがって、硬質被覆層の製法は、例えば物理
蒸着、焼結法、溶射法、めっき法などの化学的蒸着法以
外の方法であってもよい。なお、本発明の被覆工具部材
切削工具のほか、その特性から使用温度の上昇する
パンチ、ダイス、ロール、金型などの耐摩耗工具として
も好適に使用することができる。
【0022】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるも
のではない。
【0023】(被覆切削工具の作製)通常の化学蒸着法
により蒸着温度1000℃で表1に示す組成の母材と表
2に示す組成の被覆層を、表3に示すように組み合わせ
た被覆切削工具の試料を準備した。チップ形状は、SN
MG120408EMUとした。このようにして準備し
た被覆切削工具は冷却過程において被覆膜と母材の熱膨
張係数の差から被覆膜に亀裂間隔100〜400μmの
亀裂を生じていた。以下の実施例においては、これらの
試料に適当な方法により亀裂の埋め込み処理を施した
後、後述の評価方法により切削試験を行い、被覆切削工
具としての性能評価を行った。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】(実施例1)金属アルコキシドSi(OC
2 5 4 とAl(OC4 9 (SECONDARY) )3を2:
1の割合(モル換算)で常温で混合したアルコキシドの
混合溶液に、水及びエチルアルコールを添加して加水分
解し、ゾル液を作製した。このゾル液中に前記被覆切削
工具の試料を真空中で1時間浸漬し、60℃に昇温して
十分ゲル化させたのち、350℃で5時間加熱処理して
ガラスの焼成を行い、亀裂の埋め込みを行った。焼成時
にはガラス成分の収縮が発生するため、この操作を3回
繰り返して含浸処理を行い、SiO2 −Al2 3 で亀
裂を埋めた被覆切削工具試料を作製した。これらの試料
及び亀裂の埋め込み処理を行う前の試料について表9に
示す切削条件で切削性能評価を行った。その結果を表4
に示す。表4の結果より、埋め込み処理を行った試料
1、3、5、7、9、11は処理を行わなかった試料
2、4、6、8、12と比較して、耐摩耗性、耐欠損性
がともに向上していることがわかる。その中でも、No
3、5、7、9の試料は耐摩耗性、耐欠損性の向上効果
が大きく、5〜100μm程度の膜厚の試料で効果が著
しいことがわかる。
【0028】(実施例2)表3に示す被覆切削工具試料
Cに、フッ化クロム、クエン酸ナトリウム、次亜リン酸
ナトリウム、塩化クロムを用いて75℃にてCrの化学
メッキを行った試料13と、表3に示す被覆切削工具試
料DにNiSO4 、H3 BO3 、(NH42 SO4
用いて30℃で交流電解処理をしてNiを亀裂中に生成
させた試料No14を作製した。これらの試料(No1
3、14)について実施例1と同様に、表9に示す切削
条件で切削テストを行った。その結果を表4に示す。こ
の結果より、金属を亀裂に埋め込んだことにより、耐欠
損性が大幅に向上することがわかる。但し、耐摩耗性は
酸化物であるSiO2 、Al2 3 を埋め込んだ試料
5、7が金属を埋め込んだ試料13、14よりも優れて
いた。これは、1000℃を越える切削温度下で安定な
酸化物の効果がでたものと思われる。
【0029】
【表4】
【0030】(実施例3)表3の被覆切削工具試料C
に、粒径500μmの鋼球を100m/secの条件で
投射して機械的衝撃を与え、亀裂密度の異なる試料C1
〜C6(表5)を作製した後、実施例2と同様の方法で
亀裂中にクロムの埋め込み処理を行い、試料15〜20
を作製した。これらの試料と試料6及び13について測
定した亀裂間隔(試料の断面を樹脂に埋め込み、ラッピ
ングしたのち光学顕微鏡で観察)及び被膜中の引張残留
応力(Cu−Kα線源を用いて、sin2 ψ法により測
定)の値を表5に示す。さらに、これらの試料について
切削性能評価を行った結果を表5に示す。これらの結果
より、被覆層中の亀裂間隔の平均値が被覆層膜厚の1/
3〜3倍の範囲にある試料(16〜19)の耐欠損性
は、その範囲にない試料15、20と比べて優れている
ことがわかる。また、試料20は亀裂間隔が小さくなり
すぎた結果、耐摩耗性が低下しており、被覆膜中の残留
応力が0.2GPa以下である試料(16〜20)の耐
欠損性は0.2GPaより大きい試料13、15よりも
優れていることがわかる。
【0031】
【表5】
【0032】(実施例4)実施例3で作製した試料17
に機械的衝撃を与え、試料21を作製した。この試料を
用いて耐摩耗性テスト、耐欠損テスト1(切削温度90
0℃)を行ったが、特にその差は検出できなかった。し
かし、耐欠損性テスト3を行ったところ、試料21は試
料17に比べて、耐欠損性が大幅に向上することがわか
った。これは、機械的衝撃の付加により、クロムを含浸
した被覆層中に圧縮残留応力が導入され、切削温度の低
いテスト3(切削速度、送りともに小さいため切削温度
は下がる)では熱による圧縮残留応力の解放が起こらな
いため、靱性向上効果が出たものと考えられる。これら
の結果を表6に示す。
【0033】
【表6】
【0034】(実施例5)ゾル液中に平均粒径100オ
ングストロームのMoS2 を,充填材に対し体積比で1
0%となるように添加したほかは実施例1の試料5と同
様にして亀裂の埋め込み、硬化処理を行い試料22を作
製した。作製した試料の断面ラッピングを行い、皮膜の
亀裂中にMoS2 が埋め込まれているかどうかをEPM
Aにより観察したところ、亀裂中および皮膜表面にMo
2 が狙い通り存在していることが確認できた。この試
料について切削性能評価を行った結果は表7に示すとお
りであり、試料5と比べ優れた耐摩耗性、耐欠損性を示
した。これは、MoS2 の優れた潤滑性による効果が現
れたものと思われる。
【0035】(実施例6)TiのアルコキシドTi(O
3 7 4 を用いて、実施例1と同様にしてゾルゲル
法でTiO2 を被覆切削工具試料Cの被覆層の亀裂中に
埋め込んだ試料23を作製し、切削性能評価を行った。
その結果は表7に示すとおりであり、試料6と比較して
TiO2 の埋め込み処理により耐欠損性は大幅に向上す
るものの、SiO2 、Al2 3 を埋め込んだ試料5に
は耐欠損性で及ばないことが明らかとなった。これは、
SiO2 の塑性変形能がTiO2 よりも優れるため、S
iO2 の場合は断続切削時の衝撃を吸収し、亀裂発生源
とならないことが原因と考えられる。
【0036】(実施例7)表3に記載した被覆切削工具
試料G〜Mを珪酸、メチルシリコン、エチルアルコール
からなる溶液中に20℃で真空溶浸したのち、40℃で
乾燥し、75℃で硬化処理を行ない、被覆膜中の亀裂に
SiO2 を埋め込む処理を行ない試料24〜37を得
た。これらの試料を用いて、切削性能評価試験を行っ
た。結果を表7に示す。表7から、亀裂中にSiO2
埋め込んだ試料24、26、28、30、32、34、
36の耐欠損性、耐摩耗性は処理無し品25、27、2
9、31、33、35、37より優れること、試料32
と24、26、28、30の比較より膜厚が2〜50μ
m程度の試料はSiO2 の埋め込み処理の効果が大きい
ことがわかる。また、窒化珪素母材の試料26、28は
SiCウイスカー強度Al2 3 母材の試料34、36
よりも耐摩耗性、耐欠損性がともに優れていることがわ
かる。これは、窒化珪素の優れた高温硬度、耐熱衝撃性
によるものと思われる。
【0037】(実施例8)表3の被覆切削工具試料Nに
ついて、皮膜中の亀裂をSiO2 で埋める処理を行っ
た。先ず金属アルコキシドSi(OC2 5 4 とO2
を原料に用い、それぞれの流量を200sccm、2000
sccmとし、圧力5Toor、成膜温度がそれぞれ150
℃、300℃、450℃の条件で処理し、試料38、3
9、40を作製した。また、実施例7に示した方法でS
iO2 を被覆合金Nに埋め込んだ試料41を作製した。
これらの試料について切削性能評価を行った結果を表7
に示す。表7から、液相法でSiO2 を埋め込んだ試料
41は気相法でSiO2 を埋め込んだ試料38、39、
40よりも耐欠損性が優れており、また、成膜温度の低
い試料ほど耐欠損性に優れることがわかる。また、これ
らの試料の断面をTEMによりSiO2 の埋め込み状況
を調べた結果、気相法で作製した試料38、39、40
では、亀裂中に埋め込みの不完全な空間が大きく残って
おり,液相法で作製した試料41ではほぼ完全に埋め込
みが行われていることがわかった。これらの試料の埋め
込み状況を模式図で表わすと図1のようになる。図1
(a)、(b)、(c)及び(d)はそれぞれは試料3
8、39、40及び41における亀裂の埋め込み状況を
示す。
【0038】(実施例9)無電解Ni−P合金メッキ液
にゾルゲル法で作製した平均粒径50オングストローム
のSiO2 を混合し、強攪拌しながら、80℃、pH7
の条件で表3の被覆切削工具試料Dにメッキを行い、そ
の後、窒素中、400℃で硬化処理を行った試料42を
作製した。比較品として試料Dに実施例1に示したゾル
ゲル法でSiO2 のみを埋め込んだ試料43を作製し
た。これらの試料について切削性能評価を行った結果を
表8に示す。表8から、試料42の方が試料43よりも
耐摩耗性、耐欠損性に優れることがわかる。これは、無
電解めっきで作成したNi−P合金の融点が約900℃
と耐摩耗性テストの切削温度よりも低いと考えられるこ
とから、耐摩耗テスト時に液相が発生して、摩擦係数が
低下したことにより、耐摩耗性が向上したものと思われ
る。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】(切削性能評価)前記の実施例において被
覆切削工具の性能評価は表9に示す条件で切削試験を行
い、耐摩耗性及び耐欠損性を評価することで行った。
【0042】
【表9】
【0043】
【発明の効果】本発明の被覆工具部材は、耐摩耗性、耐
欠損性に優れ、切削温度が上昇しやすい高速、高能率の
厳しい切削条件にも耐え得る高性能の被覆工具部材であ
る。また、本発明の方法によれば前記のような特性を有
する被覆工具部材を、簡単な操作により信頼性よく製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例8の試料38〜41におけるSiO2
埋め込み状況を示す模式図である。
【図2】表9の切削性能評価試験において耐欠損性の評
価に用いた溝付き材の断面形状を表す平面図である。
【符号の説明】
1 硬質被覆層 2 母材 3 亀裂 4 充填材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−177411(JP,A) 特開 平3−87379(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23B 27/14 B23P 15/28 C23C 14/58 C23C 16/56

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に硬質被覆層を設けた被覆超硬合金
    部材又は被覆セラミック部材よりなる被覆工具部材にお
    いて、被覆工程中もしくは被覆後に生じた被覆層中の亀
    裂の少なくとも一部が金属及び/又はセラミックスより
    なる充填材で埋められた構造を有してなることを特徴と
    する被覆切削工具部材。
  2. 【請求項2】 被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋め
    た充填材が酸化物セラミックスを主成分とする充填材で
    あること特徴とする請求項1に記載の被覆切削工具部
    材。
  3. 【請求項3】 被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋め
    た充填材がSiO2を主成分とするガラス状物質である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の切削被覆工具
    部材。
  4. 【請求項4】 被覆層中の亀裂の間隔の平均値が被覆層
    膜厚の1/3〜3倍の範囲にあることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれかに記載の被覆切削工具部材。
  5. 【請求項5】 室温における被覆層中の残留応力値が−
    0.2GPa以上、0.2GPa以下であることを特徴
    とする請求項1〜4のいずれかに記載の被覆切削工具部
    材。
  6. 【請求項6】 被覆層中の亀裂の少なくとも一部を埋め
    た充填材が金属を主成分とする充填材であり、室温にお
    ける被覆層中の残留応力が−2GPa以上、−0.2G
    Pa以下であることを特徴とする請求項1又は4に記載
    の被覆切削工具部材。
  7. 【請求項7】 表面に硬質被覆層を設けた被覆セラミッ
    ク部材が窒化ケイ素系セラミックスを基材とする被覆セ
    ラミック部材であることを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれかに記載の被覆切削工具部材。
  8. 【請求項8】 充填材が金属及び/又はセラミックスに
    潤滑性物質を分散させた充填材であることを特徴とする
    請求項1〜7のいずれかに記載の被覆切削工具部材。
  9. 【請求項9】 充填材中の金属が使用中の発熱により溶
    融する金属であることを特徴とする請求項1、4〜8の
    いずれかに記載の被覆切削工具部材。
  10. 【請求項10】 表面に硬質被覆層を設けた被覆超硬合
    金部材又は被覆セラミック部材よりなる被覆切削工具部
    材の製造方法において、硬質被覆層形成後に亀裂を埋め
    る処理を施し、被覆工程中もしくは被覆後に生じた被覆
    層中の亀裂の少なくとも一部を、金属及び/又はセラミ
    ックスよりなる充填材で埋めることを特徴とする被覆
    工具部材の製造方法。
  11. 【請求項11】 亀裂を埋める処理が液相法であること
    を特徴とする請求項10に記載の被覆切削工具部材の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 亀裂を埋める処理を500℃以下の温
    度で行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の
    被覆切削工具部材の製造方法。
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