JP3451079B2 - 磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体及び
その製造方法並びに磁気記憶装置に関し、更に詳細に
は、ハードディスク、フロッピーディスク(登録商標)
のようにヘッドが一時的または定常的に接触するタイプ
の磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度情報化社会の進展に対応し
て、情報記録装置の大容量化・高密度化に対するニーズ
は高まる一方である。かかるニーズに応える情報記録装
置の一つとして磁気記憶装置が知られている。磁気記憶
装置は、例えば、大型サーバー、並列型コンピュータ、
パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバー、ムー
ビーサーバー、モバイルPC等の大容量記憶装置として
使用されている。磁気記憶装置は、情報が記録される磁
気記録媒体と、磁気記録媒体の情報を記録再生するため
の磁気ヘッドを備える。磁気記録媒体は、円板状の基板
の上に記録層としてコバルト合金などの強磁性薄膜がス
パッタ法などにより形成されており、記録層上には、耐
摺動性、耐食性を高めるために、保護膜と潤滑膜が形成
されている。
【0003】磁気記憶装置の大容量化に伴って、磁気記
録媒体の記録層に微細な記録磁区を記録することによる
磁気記録媒体の記録密度の向上が進められており、記録
磁区を微細に記録するための方法として垂直磁気記録方
式が注目されている。垂直磁気記録方式では、垂直磁化
を示す記録層を有する磁気記録媒体を用いて、記録層に
垂直磁化を有する磁区を形成することによって磁気記録
を行なう。かかる垂直磁気記録方式では記録層に微細な
磁区を形成できるため磁気記録媒体の記録密度を高める
ことができる。
【0004】かかる垂直磁気記録方式に従う磁気記録媒
体の記録層の材料としては、従来、Co−Cr系の多結
晶膜が用いられてきた。この多結晶膜は、強磁性を有す
るCoリッチな領域と非磁性のCrリッチな領域とが互
いに分離された構造を有し、非磁性領域が、隣り合う強
磁性領域の間で働く磁気的相互作用を断ち切っている。
【0005】磁気記録媒体の面記録密度を更に向上させ
るためには、媒体ノイズを低減させる必要がある。その
ためには、磁化反転単位の微細化や読み取りヘッドの高
感度化が有効なことがわかっている。このうち、磁化反
転単位の微細化は、磁性結晶粒の微細化が有効であるこ
とがわかっている。しかし、磁性結晶粒をあまり微細化
してしまうと、磁性結晶粒の磁化状態が熱的に不安定に
なる、いわゆる熱減磁を起こしてしまう。これを防ぐた
めに、例えば、特開平8−30951号公報には、非磁
性基板上に、軟磁性層、炭素からなる第1中間層、第2
中間層及び人工格子構造を持つ記録膜を順に積層した磁
気記録媒体が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、人工格子多
層膜や規則格子合金膜は高い磁気異方性を有するため、
熱擾乱に対して高い耐性が期待される。しかし、これら
の膜はCo−Cr系多結晶膜と異なり、面内方向(基板
表面に対して平行な方向)の磁気的相互作用が強いため
に小さな磁区が形成できす、転移性の媒体ノイズが大き
いという欠点があった。前述の特開平8−30951号
公報に開示されている磁気記録媒体では、軟磁性層上に
形成した炭素からなる第1中間層の上にPtまたはPd
からなる第2中間層を設け、その上にCo/Ptあるい
はCo/Pd人工格子層を形成することにより、人工格
子層の結晶配向を向上させ、垂直磁気異方性を高くして
保磁力を向上させている。しかしながら、かかる磁気記
録媒体では、記録層の面内方向の磁気的交換結合力が強
くなり、線記録密度が高くなったときにジッターとして
現れる遷移ノイズが高くなってしまい、高記録密度の記
録再生は困難であった。また、第1中間層と第2中間層
の2つの中間層を用いているため、磁気ヘッドからの書
き込み磁界が軟磁性層まで有効に到達せず、飽和記録特
性が劣るという問題があった。
【0007】本発明は、上記従来技術の問題を解決する
ためになされたものであり、その目的は、記録層の面内
方向の磁気的交換結合力が低く、遷移ノイズの低減され
た磁気記録媒体及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0008】本発明の別の目的は、優れた耐熱擾乱特性
を備え、高い面記録密度で情報を記録してもその情報を
高S/Nで再生できる磁気記憶装置を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、基板と;該基板上に、直接または間接的に形成さ
れた中間層であって、Pd、Si及びNとを含み、さら
にCoを1at%〜10at%含む中間層と;該中間層上に
直接形成されたPd層とCo層とを交互に積層して形成
された記録層と;を備え磁気記録媒体が提供される。
【0010】本発明の磁気記録媒体は、記録層の下地と
して、Pd、Si及びNに加え1at%〜10at%のCo
を含む中間層を備えている。かかる中間層は、その上に
形成される交互積層構造の記録層の結晶配向を最適に制
御することができる。すなわち、中間層は記録層の結晶
配向性を制御するためのシード層としての機能を有して
いる。
【0011】ところで、中間層を、例えば、Pd結晶の
みから形成した場合、中間層上には粒界が不明瞭な記
層が形成され、記録層の結晶粒子間で働く面内方向にお
ける磁気的交換結合力が強くなる。それゆえ、記録層に
形成される記録磁区のサイズが大きくなってしまい、微
細な記録磁区を形成することができなかった。一方、中
間層を、Pd、Si、N及び微量のCoを用いて構成す
ると、PdがSiN(或いはSiN網構造)中に微結晶
或いは部分的非晶質構造として分散して存在すると考え
られる。そして、中間層上に成長する記録層は、分散し
たPdを核として成長するため粒界の明瞭な層が形成さ
れると考えられる。このため記録層の結晶粒子間で働
く面内方向の磁気的交換結合力が低減される。特に微量
のNは、Siと結合することにより、Pdの分散を更に
促進させることができるため、記録層の面内方向の磁気
的交換結合力を更に弱めることができる。これにより遷
移性ノイズをより一層低減することができる。また、中
間層中のPdSi及びCoの比率を所定の値に制
御することにより、記録層の結晶配向と面内方向の磁気
的交換結合力とを最適化することができる。したがっ
て、記録層に微細な記録磁区を確実に形成することがで
きるとともに、磁化遷移領域も明瞭となるためノイズを
低減することができる。すなわち、本発明の磁気記録媒
体は、ノイズの低減と分解能の向上を実現することがで
きる。
【0012】本発明において、中間層は、1at%〜10
at%のCoと、50at%〜80at%のPdと、10at%
〜35at%のSiと、0.1at%〜5at%のNから形成
されていることが望ましい。
【0013】また、中間層は、微結晶構造あるいは微結
晶の構造内に部分的に非晶質が存在するような構造を有
することが好ましい。
【0014】本発明において、中間層の膜厚は1nm〜
30nmの範囲内にあることが望ましい。中間層の膜厚
が1nm未満では、その上の交互積層構造の記録層の結
晶配向を制御できなくなるおそれがある。また、30n
mより厚いと記録用磁気ヘッドの磁極と軟磁性層との距
離が増加して、記録用磁気ヘッドからの記録磁界が記録
層に十分に印加されなくなるおそれがある。また、記録
層に、記録用磁気ヘッドからの磁界が広がった状態で印
加されてしまい分解能が低下したり、磁化遷移領域の乱
れが増加してジッター性のノイズの原因となるおそれが
ある。
【0015】本発明の磁気記録媒体において、記録層
は、主として白金属元素とCoとから構成されており
白金族元素とCoとを数原子程度または単原子程度の厚
みで交互に積層した交互積層多層膜で構成されている
白金族元素としては、Pdいられる。かかる膜は室
温または比較的低い基板温度で成膜することができ、し
かも大きな磁気異方性を有するため、高密度記録用の記
録層として最適である。
【0016】本明細書において、用語「人工格子構造」
とは、複数の異なる物質を単原子或いは数原子の厚さで
一方向に互いに周期的に積層して得られる構造を意味す
る。かかる人工格子構造を有する膜のことを人工格子膜
或いは交互積層多層膜とも呼ぶ。
【0017】交互積層構造を有する記録層としては、
0.05nm〜0.5nmの範囲から選択された膜厚を
有するCo層と、0.5nm〜2nmの範囲内から選択
された膜厚を有するPd層とを交互に積層したCo/
d膜であることが望ましい。かかる構造の膜は最も垂直
磁気異方性が発現しやすい。
【0018】本発明の磁気記録媒体において、上述のC
o/Pd層を用いて記録層を形成した場合、Pd層に
加元素を含んでもよい。このように、Pd層中に添加元
素を含ませることによって組成の揺らぎが発生し、記録
層の面内方向の磁気的交換結合力を低減することができ
る。添加元素は、Si、Al、Zr、TiまたはBが望
ましく、特にBが好ましい。Pd層への添加であればC
o層への添加に比べて磁気特性の劣化が少ない。
【0019】また、Co/Pd層中のCoは面内方向に
おいて不連続に分布していることが好ましい。記録層中
で不連続に分布しているCoは磁気的交換結合力を部分
的に切断するので、記録層の面内方向の磁気的交換結合
力を低減することができる。
【0020】また、交互積層構造の記録層は、例えば、
円柱形状(カラム状)の結晶粒子の集合体から形成され
得る。カラム状の結晶粒子の直径は2nm〜15nmに
し得、結晶粒子の表面の最上部と、最下部(結晶粒子の
境界部の高さ位置)との差は1nm〜10nmにし得
る。かかる構造を有する記録層は面内方向の磁気的交換
結合力が低減しており、記録層に微細な記録磁区を形成
しても、その磁区は安定に存在し、また、磁化遷移領域
の直線性も高い。それゆえ、再生時にノイズを一層低減
することができる。
【0021】本発明において、交互積層構造を有する記
録層は、例えば、交互に膜を形成することが可能なスパ
ッタ装置を用いて形成することができる。例えば、異な
る材料から構成された2つ以上のターゲットを並設し、
それぞれのターゲットに対して基板キャリアを交互に相
対移動させることによっても形成することができる。或
いは、直径の異なる少なくとも2種類のリング型ターゲ
ットを同一平面で且つ同軸上に配置し、それらターゲッ
トに対向するように基板を配置させ、リング型ターゲッ
トを交互に放電させることにより成膜することも可能で
ある。
【0022】交互積層構造の記録膜の膜厚としては、磁
気特性の点から5nm〜60nmが好適である。記録層
は、基板表面に対して垂直な方向で測定したときの保磁
力が1.5〔kOe〕〜10〔kOe(キロエルステッ
ド)〕であることが望ましく、記録層の膜厚tと残留磁
化Mrの積である(Mr・t)が、0.3〜1.0m
〔emu/cm〕の範囲にあることが望ましい。保磁
力が1.5〔kOe〕よりも小さくなると、高記録密度
(600kFCI以上)で記録した情報を再生したとき
の出力が小さくなるおそれがある。また、磁気異方性エ
ネルギーが小さくなり、熱減磁しやすくなるおそれがあ
る。また、Mr・tの値が1.0m〔enu/cm
より大きくなると分解能が低下し、0.3m〔enu/
cm〕よりも小さくなると出力が小さくなりすぎるた
め、150ギガビット/平方インチ以上の高記録密度を
行ったときに十分な記録再生特性を得ることが困難とな
る。
【0023】本発明の磁気記録媒体の軟磁性層は、磁気
ヘッドからの磁界を記録層に効率的に印加するという観
点から、Fe中にTa、Nb、Zrのうちより選ばれる
少なくとも1種類の元素の窒化物あるいは炭化物を均一
に分散させた微結晶構造を有する軟磁性膜が好適であ
る。また、かかる材料以外に、例えば、Co−Zrを主
体とし、これにTa、Nb、Tiのうちより選ばれる少
なくとも1種類の元素を含んだ非晶質合金であってもよ
い。これらの軟磁性膜は1.5T以上の大きな飽和磁束
密度を有するため高密度記録に適している。具体的な材
料としては、高透磁率を有するNiFe、CoTaZ
r、CoNbZr、FeTaC等を用いることができ、
これらの材料からなるな磁性層は、膜厚1000nm以
下でスパッタ法や蒸着等によって形成することができ
る。
【0024】本発明においては、軟磁性層の表面が平坦
であることが好ましく、軟磁性層の表面の表面粗さRa
は0.20nm〜0.44nmであることが好ましい。
このように、表面が平坦な軟磁性層を用いると、後述す
る実施例に示すように、記録層の磁性結晶粒子の境界す
なわち結晶粒界は極めて明瞭となる。このため記録層の
磁性結晶粒子の孤立化が一層促進される。磁性結晶粒子
は結晶粒界によって磁気的に分断されているため、面内
方向の磁気的交換結合力が低減している。このため記録
層には微小な磁区を形成することが可能となるとともに
磁化遷移領域の直線性が高くなる。軟磁性層の表面を平
坦にすることにより、記録層の結晶粒界が明瞭となるの
は以下の原理によるものと考えられる。軟磁性層上に中
間層を成膜するとき、軟磁性層表面に凹凸が存在する
と、スパッタ粒子が凹凸部に捕獲されてしまうと考えら
れる。このため、軟磁性層上には、中間層を構成する粒
子が十分な間隔で隔てられることなく成長した初期成長
層が形成されると考えられる。一方、軟磁性層の表面が
平坦であると、軟磁性層表面に到達したスパッタ粒子は
その面方向に十分拡散するため、中間層を形成する粒子
が互いに十分に隔てられた状態で成長した初期成長層が
成膜される。このように十分な間隔で隔てられた初期成
長層に基づいて形成された中間層は、SiN(或いはS
iN網構造)中において微結晶或いは部分的非晶質構造
として存在するPdも十分な間隔で隔てられ、分散が一
層促進されているものと考えられる。このようにPdの
分散が一層促進された中間層上に記録層を成膜すること
により、記録層に極めて明瞭な結晶粒界が得られている
と考えられる。軟磁性層の表面を平坦にするには、例え
ば、軟磁性層の成膜後、表面をドライエッチングすれば
よい。
【0025】本発明の磁気記録媒体の基板は、例えば、
アルミニウム・マグネシウム合金基板、ガラス基板、グ
ラファイト基板などの非磁性基板を用い得る。アルミニ
ウム・マグネシウム合金基板には、表面をニッケル・リ
ンでメッキしてもよい。基板を回転させながら、基板表
面にダイヤモンド砥粒や研磨用テープを押し当てること
により基板表面を平坦に処理してもよい。これにより、
磁気記録媒体上を磁気ヘッドを浮上させたときに、磁気
ヘッドの走行特性を向上させることができる。基板表面
の中心線粗さRaは、基板上に形成される保護膜の中心
線粗さが1nm以下となるように望ましい。ガラス基板
においては、強酸などの薬品により表面を化学的にエッ
チングして平坦化してもよい。また、化学的に表面に微
細な高さ、例えば、1nm以下の突起を形成することに
より、負圧スライダーを用いた場合に安定な低浮上量を
実現することができる。
【0026】磁気記録媒体の基板上には、前記軟磁性層
を成膜する前に密着性を向上させるためにTiなどの接
着層を形成しても良い。
【0027】本発明の磁気記録媒体は記録層上に保護層
を備え得る。保護膜としては、例えば、非晶質炭素、ケ
イ素含有非晶質炭素、窒素含有非晶質炭素、ホウ素含有
非晶質炭素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び立方晶
窒化ホウ素のうちのいずれか一種を好適に用いることが
できる。これら非晶質炭素保護膜の形成方法としては、
例えば、グラファイトをターゲットとした不活性ガス
中、あるいは不活性ガスとメタンなどの炭化水素ガスの
混合ガス中のスパッタリングによって形成する方法や、
炭化水素ガス、アルコール、アセトン、アダマンタンな
どの有機化合物を単独あるいは水素ガス、不活性ガスな
どを混合してプラズマCVDにより形成する方法、ある
いは有機化合物をイオン化して電圧をかけて加速し、基
板に衝突させて形成する方法などがある。更には、高出
力のレーザー光をレンズで集光し、グラファイト等のタ
ーゲットに照射するアブレーション法によって保護膜を
形成してもよい。
【0028】保護膜の上には、耐摺動特性を良好なもの
にするために、潤滑剤を塗布することができる。潤滑剤
としては、主鎖構造が炭素、フッ素、酸素の3つの元素
からなるパーフルオロポリエーテル系高分子潤滑剤が用
いられる。或いは、フッ素置換アルキル化合物を潤滑剤
として用いることもできる。安定な摺動と耐久性を有す
る材料であれば、他の有機系潤滑剤や無機系潤滑剤を用
いてもよい。
【0029】これらの潤滑剤の形成方法としては溶液塗
布法が一般的である。また、地球温暖化を防ぐため、あ
るいは工程を簡略化するために、溶剤を使わない光CV
D法によって潤滑膜を形成してもよい。光CVD法は、
フッ化オレフィンと酸素の気体原料に紫外光を照射する
ことによって行われる。
【0030】潤滑剤の膜厚としては、平均値として0.
5nm〜3nmが適当である。0.5nmより薄いと、
潤滑特性が低下し、3nmよりも厚くなるとメニスカス
力が大きくなり、磁気ヘッドと磁気ディスクの静摩擦力
(スティクション)が大きくなるため好ましくない。こ
れら潤滑膜を形成した後に100℃前後の熱を1〜2時
間窒素中あるいは空気中で与えてもよい。これにより、
余分な溶剤や低分子量成分を飛ばして潤滑膜と保護膜の
密着性を向上させることができる。かかる後処理以外
に、例えば、潤滑膜形成後に紫外線ランプにより紫外線
を短時間照射させる方法を用いてもよく、かかる方法に
よっても同様の効果が得られる。
【0031】本発明の第の態様に従えば、第1の態様
の磁気記録媒体と;情報を記録または再生するための磁
気ヘッドと;上記磁気記録媒体を上記磁気ヘッドに対し
て駆動するための駆動装置と;を備えることを特徴とす
る磁気記憶装置が提供される。
【0032】本発明の磁気記憶装置は、本発明の第1の
態様の磁気記録媒体を備えるので、高い面記録密度で情
報を記録してもその情報を高S/Nで再生できるととも
に、優れた耐熱擾乱特性を備えている。
【0033】本発明の磁気記憶装置において、磁気ヘッ
ドは、磁気記録媒体に情報を記録するための記録用磁気
ヘッドと、磁気記録媒体に記録された情報を再生するた
めの再生用磁気ヘッドとから構成され得る。記録用磁気
ヘッドのギャップ長は、0.2μm〜0.02μmが望
ましい。ギャップ長が0.2μmを越えると、400k
FCI以上の高い線記録密度で記録することが困難にな
る。また、ギャップ長が0.02μmより小さい記録ヘ
ッドは製造が困難であり、静電気誘起による素子破壊が
起こりやすくなる。
【0034】再生用磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子を
用いて構成することができる。再生用磁気ヘッドの再生
シールド間隔は、0.2μm〜0.02μmが望まし
い。再生シールド間隔は、再生分解能に直接関係し、短
いほど分解能が高くなる。再生シールド間隔の下限値
は、素子の安定性、信頼性、耐電気特性、出力等に応じ
て上記範囲内で適宜選択することが望ましい。
【0035】本発明の磁気記憶装置において、駆動装置
は、磁気記録媒体を回転駆動させるスピンドルを用いて
構成することができ、スピンドルの回転速度は毎分30
00回転〜20000回転が望ましい。毎分3000回
転より遅いとデータ転送速度が低くなるため好ましくな
い。また、毎分20000回転を越えると、スピンドル
の騒音や発熱が大きくなるため望ましくない。これらの
回転速度を勘案すると、磁気記録媒体と磁気ヘッドの最
適な相対速度は2m/秒〜30m/秒となる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明に従う磁気記録媒体
及びそれを用いた磁気記憶装置の実施例について図面を
用いて具体的に説明する。以下の実施例では、磁気記録
媒体として、磁気ディスク(ハードディスク)を作製し
たが、本発明は、フロッピーディスク(登録商標)、磁
気テープ、磁気カードなどのように、記録または再生時
に磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触するタイプの記録媒
体にも適用できる。
【0037】
【実施例1】図1に、本発明の磁気記録媒体の概略断面
図を示す。磁気記録媒体100は、密着層2を有する基
板1上に、軟磁性層3、中間層4、記録層5、保護層6
及び潤滑層7を備える。かかる積層構造を有する磁気記
録媒体100を次のような方法により製造した。
【0038】まず、直径65mmのガラス基板1を用意
し、ガラス基板1上に連続スパッタ装置により、密着層
2として厚さ5nmのTiを成膜した。
【0039】次いで、密着層2上に、軟磁性層3とし
て、Fe79Ta12を膜厚400nmにて成膜し
た。更に、成膜されたFe79Ta12を真空中で
カーボンヒーターにより450℃の温度で30秒間加熱
した後、徐冷した。こうしてFeの微結晶を含有する軟
磁性層3を形成した。
【0040】次いで、基板1を交互スパッタ装置のチャ
ンバーに移送し、軟磁性層3上に中間層4を成膜した。
中間層4の成膜では、チャンバー内にアルゴンガスを導
入しながら、PdターゲットをDCスパッタし、SiN
ターゲットをRFスパッタすることにより、軟磁性層3
上に、73at%のPdと、26at%のSiと、1at%の
Nからなる中間層4を膜厚5nmで成膜した。
【0041】つぎに、中間層4上に人工格子構造の記録
層5を成膜した。記録層5の成膜では、Arガス中で、
CoターゲットとPdターゲットのシャッターを交互に
開閉しながらDCスパッタして、Co層とPd層とが交
互に積層された人工格子構造の記録層5を形成した。C
o層の1層あたりの膜厚は0.12nm、Pd層の1層
あたりの膜厚は0.85nmであり、Pd層とCo層の
積層数はそれぞれ26層であった。
【0042】次いで、記録層5上に、アモルファスカー
ボンからなる保護層6をプラズマCVD法により膜厚3
nmにて形成した。保護層6の形成後、基板を成膜装置
から取り出した。最後に、保護層6上にパーフルオロポ
リエーテル系潤滑剤を1nmの厚さで溶液塗布して潤滑
層7を形成した。
【0043】こうして図1に示す積層構造を有する磁気
記録媒体100を作製した。
【0044】
【実施例2】中間層に更にCoを含有させた以外は、実
施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。中間層の
成膜では、Arガスをチャンバー内に導入しながらCo
ターゲットとPdターゲットをDCスパッタし、SiN
ターゲットをRFスパッタした。これにより、軟磁性層
上に、6at%のCoと、70at%のPdと、23at%の
Siと、1at%のNからなる中間層を成膜した。
【0045】
【実施例3】本実施例では、人工格子構造の記録層を、
交互スパッタ法により、膜厚0.15nmのCo層と膜
厚0.85nmのPt層とを15周期繰り返して成膜し
た。また、かかる人工格子構造の記録層の結晶成長を良
好に制御するために、中間層として73at%のPt、2
6at%のSi、1at%のNからなる中間層を膜厚5nm
にて形成した。これ以外は、実施例1と同様にして磁気
記録媒体を作製した。
【0046】
【実施例4】図3に、本発明に従う磁気記憶装置200
の概略構成図を示す。磁気記憶装置200は、磁気記録
媒体100と、磁気記録媒体100を回転駆動するため
の回転駆動部18と、磁気ヘッド10と、磁気ヘッド1
0を磁気記録媒体上で所望の位置に移動させるヘッド駆
動装置11と、記録再生信号処理装置12を備える。磁
気記録媒体100には実施例1で作製した磁気記録媒体
を用いた。磁気ヘッド10は、単磁極型書き込み素子と
GMR(Giant Magneto-Resistive)読み込み素子を備
え、ヘッド駆動装置11のアームの先端に設けられてい
る。磁気ヘッド10の単磁極型書き込み素子は、情報記
録時に磁気記録媒体に記録するデータに応じた磁界を印
加して磁気記録媒体に情報を記録することができる。磁
気ヘッド10のGMR読み込み素子は、磁気記録媒体か
らの漏洩磁界の変化を検出して磁気記録媒体に記録され
ている情報を再生することができる。記録再生信号処理
装置12は、磁気記録媒体100に記録するデータを符
号化して磁気ヘッド10の単磁極型書き込み素子に記録
信号を送信することができる。また、記録再生信号処理
装置12は、磁気ヘッド10のGMR読み込み素子によ
り検出された磁気記録媒体100からの再生信号を復号
することができる。
【0047】かかる磁気記憶装置200を駆動し、磁気
的スペーシング(磁気ヘッド10の主磁極表面と磁気記
録媒体9の記録層表面との距離)を13nmに維持しな
がら、線記録密度1000kBPI、トラック密度15
0kTPIの条件にて情報を記録し、記録した情報を再
生して記録再生特性を評価したところ、トータルS/N
として24.5dBを得た。更に、面記録密度150ギ
ガビット/平方インチの記録密度にて記録再生すること
ができた。また、ヘッドシーク試験として、磁気ヘッド
を磁気記録媒体上の内周から外周まで10万回シークさ
せ、かかるヘッドシーク試験後に磁気記録媒体のビット
エラーを測定したところビットエラー数は10ビット/
面以下であり、30万時間の平均故障間隔を達成するこ
とができた。なお、上記S/Nは下記式を用いて求め
た。 S/N=20log(S0−p/Nrms) 式中、S0−pは、ゼロ点からピークまで(zero to pe
ak)の再生信号振幅の半分の値であり、Nrmsはスペ
クトルアナライザーにより測定したノイズの振幅の平方
自乗平均値である。
【0048】
【比較例1】中間層としてPdからなる層を膜厚5nm
で形成した以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体
を作製した。
【0049】
【比較例2】中間層としてPtからなる層を膜厚5nm
で形成した以外は、実施例3と同様にして磁気記録媒体
を作製した。
【0050】
【比較例3】比較例1の磁気記録媒体を実施例4に示し
た磁気記憶装置200に搭載して記録再生特性を評価し
た。磁気的スペーシング13nm、線記録密度1000
kBPI、トラック密度150kTPIの条件で記録再
生特性を評価したところ、トータルS/Nは18.5d
Bであり、十分な記録再生を行なうことができなかっ
た。更に、面記録密度50ギガビット/平方インチの記
録密度で記録した後、ヘッドシーク試験として、磁気ヘ
ッドを磁気記録媒体上の内周から外周まで10万回シー
クさせ、かかるヘッドシーク試験後に磁気記録媒体のビ
ットエラーを測定したところビットエラー数は150ビ
ット/面以下であり、19万時間の平均故障間隔であっ
た。
【0051】〔電磁変換特性の測定〕 つぎに、実施例1〜3及び比較例1、2の磁気記録媒体
の電磁変換特性を、スピンスタンドの記録再生試験機を
用いて測定した。記録再生試験機の磁気ヘッドとしては
単磁極型書き込み素子とGMR読み取り素子の複合型ヘ
ッドを使用した。単磁極型書き込み素子のメインポール
(主磁極)の実効書き込みトラック幅は110nm、B
sは2.1Tであった。また、GMR素子の実効トラッ
ク幅は97nm、シールド間隔は45nmであった。記
録再生試験の際、磁気ヘッドの単磁極型書き込み素子の
主磁極表面と磁気記録媒体の記録層表面との間隔を13
nmとした。電磁変換特性の測定結果を図4に示す。図
4において、S/Ndは500kFCIにおけるS/N
であり、Reは孤立波出力で割った出力分解能である。
また、熱減磁率は、24℃の環境下において、線記録密
度100kFCIにて記録した信号を再生したときの再
生信号振幅の時間に対する変化の割合とした。図4から
明らかなように、実施例1〜3で作製した磁気記録媒体
は、良好なS/Nが得られており、分解能も18%以上
と高いのに対し、比較例の磁気記録媒体では10%に満
たなかった。このことから、実施例1〜3の磁気記録媒
体は、高域でも遷移性ノイズが低減しており、高分解能
と高S/Nが両立されていることがわかる。
【0052】〔記録層の断面構造の観察〕 つぎに、実施例1〜3の磁気記録媒体の記録層の断面構
造を、高分解能透過型電子顕微鏡を用いて観察した。図
2に、人工格子構造の記録層5の断面構造の観察結果を
模式的に示した。図2に示すように、記録層5は、円柱
形状の結晶粒子31の集合体から構成されており、それ
ぞれの結晶粒子31の上面は半球状であった。円柱形状
の結晶粒子の回転軸に対して垂直な断面の直径dは約8
nmであり、結晶粒子の表面の半球の最上部Aと最下部
Bの差hは2nmであった。記録層5は、かかる円柱形
状の結晶粒子から構成されているために面内方向の磁気
的結合力が低減され、微細な記録ビットが安定になり、
磁化遷移領域の直線性がよくなると考えられる。
【0053】更に、図4の24℃における熱減磁率の結
果からわかるように、実施例1〜3の磁気記録媒体にお
いては熱減磁が認められなかったのに対し、比較例1及
び2の磁気記録媒体においては熱揺らぎによる減磁が顕
著に見られた。この結果は、実施例1〜3の磁気記録媒
体においては記録層の磁化遷移領域が明瞭で直線性が高
いのに対し、比較例の磁気記録媒体においては磁化遷移
領域が乱れて熱的に外乱を受けやすいことを示している
と考えられる。また、オントラックで1000kBPI
にてエラーレートを測定したところ、実施例1〜3の磁
気記録媒体はいずれも1×10−5以下であったのに対
し、比較例の磁気記録媒体は1×10−4以上であっ
た。
【0054】
【実施例5】図5に、本実施例の磁気記録媒体の概略断
面図を示す。磁気記録媒体500は、基板上1に、軟磁
性層53、中間層54、記録層55、保護層56及び潤
滑層57を備える。かかる磁気記録媒体を以下のように
して製造した。
【0055】まず、直径65mmのガラス基板1を用意
し、ガラス基板1上に、軟磁性層53として、Fe79
Ta12を膜厚400nmで成膜した。更に、成膜
されたFe79Ta12の飽和磁化を高めるため
に、真空中でカーボンヒーターにより400℃の温度で
30秒間加熱した後、徐冷した。かかる加熱処理後、軟
磁性層53の表面をプラズマエッチング処理した。プラ
ズマエッチング処理は、Arガス圧0.9Pa、パワー
500Wで120秒間行なった。
【0056】次いで、基板1を交互スパッタ装置のスパ
ッタチャンバーに移送し、軟磁性層53上に中間層54
を成膜した。中間層54の成膜では、チャンバー内にア
ルゴンガスを導入しながら、PdターゲットをDCスパ
ッタし、SiNターゲットをRFスパッタすることによ
り、軟磁性層53上に、70at%のPdと、20at%の
Siと、10at%のNからなる中間層54を膜厚3nm
で成膜した。
【0057】つぎに、中間層54上に人工格子構造の記
録層55を成膜した。記録層55の成膜では、Arガス
中で、CoターゲットとPdターゲットのシャッターを
交互に開閉しながらDCスパッタして、Co層とPd層
とが交互に積層された人工格子構造の記録層55を形成
した。Co層の1層あたりの膜厚は0.2nm、Pd層
の1層あたりの膜厚は0.8nmであり、Pd層とCo
層の積層数はそれぞれ26層であった。
【0058】次いで、記録層55上に、アモルファスカ
ーボンからなる保護層56をプラズマCVD法により膜
厚3nmにて形成した。保護層56の形成後、基板を成
膜装置から取り出した。最後に、保護層56上にパーフ
ルオロポリエーテル系潤滑剤を1nmの厚さで溶液塗布
して潤滑層57を形成した。
【0059】こうして図5に示す積層構造を有する磁気
記録媒体500を作製した。また、軟磁性層の表面をプ
ラズマエッチングすることによる効果を調べるために、
軟磁性層の表面をプラズマエッチングしなかった以外
は、上記と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0060】軟磁性層の表面をエッチング処理した磁気
記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒体につい
て、膜面に対して垂直方向に外部磁界を印加しながら記
録層のカー回転角の変化を測定した。図6に、エッチン
グ処理した磁気記録媒体の外部磁界に対するカー回転角
曲線を示す。記録層のカー回転角は、記録層の磁化の大
きさに比例するので、カー回転角と外部磁界との関係を
表すカー回転角曲線は、通常の磁化測定で求めた磁化曲
線と実質的に同等の形状であり、ヒステリシスを示す。
本実施例では、カー回転角曲線から記録層の保磁力、ニ
ュークリエーション磁界、外部磁界H=Hcにおける曲
線の傾き4π(dM/dH)H=Hcを見積もった。
【0061】エッチング処理した磁気記録媒体では、保
磁力Hcは3.9kOe、負のニュークリエーション磁
界は−2.1kOe、外部磁界H=Hcにおける曲線の
傾き4π(dM/dH)H=Hcは1.4であった。一
方、エッチング処理しない磁気記録媒体は、保磁力Hc
は2.6kOe、ニュークリエーション磁界は−1.6
kOe、外部磁界H=Hcでの曲線の傾き4π(dM/
dH)H=Hcは1.8であった。
【0062】つぎに、軟磁性層にエッチング処理した磁
気記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒体の記録
層の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し
た。図7(a)及び(b)に、それぞれ、エッチング処
理した磁気記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒
体の記録層の表面のTEMによる観察像を示す。図7
(a)に示すように、エッチング処理した磁気記録媒体
の記録層は、孤立した円柱状の結晶粒子の集合体が形成
され、結晶粒子同士の境界すなわち結晶粒界は極めて明
瞭であることがわかる。一方、図7(b)に示すよう
に、エッチング処理しない磁気記録媒体の記録層は、エ
ッチング処理した磁気記録媒体の記録層に比べて、結晶
粒界は不明瞭であった。
【0063】また、記録層の表面のTEM像から結晶粒
子の平均粒径と分散度(標準偏差を平均値で割った値)
を求めた。図8に、記録層の610個の結晶粒子の直径
と結晶粒子の個数との関係をヒストグラムにして示し
た。図8(a)は、エッチング処理した磁気記録媒体の
ヒストグラムであり、図8(b)はエッチング処理しな
い磁気記録媒体のヒストグラムである。エッチング処理
した磁気記録媒体では、平均粒子径は13.7nmであ
り、分散度は21.7%であった。一方、エッチング処
理しない磁気記録媒体では、平均粒子径は11.3nm
であり、分散度は21.0%であった。
【0064】ここで、エッチング処理した磁気記録媒体
の中間層の断面をTEMにより観察したところ、中間層
は無秩序構造を有していた。このような無秩序構造を有
する中間層は、その表面上に、Co/Pd初期化層を分
散して形成することができ、かかるCo/Pd初期化層
を単位に柱状の結晶粒子が孤立した状態で成長するもの
と考えられる。
【0065】つぎに、エッチング処理した磁気記録媒体
とエッチング処理しない磁気記録媒体について、実施例
1で用いたスピンスタンドの記録再生試験機を用いて記
録再生試験を行なったところ、エッチング処理した磁気
記録媒体のほうがエッチング処理しない磁気記録媒体よ
りもS/Nが1.6dBだけ高かった。
【0066】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、軟磁
性層の成膜直後の表面粗さと、プラズマエッチング後の
表面粗さを測定した。図9(a)及び(b)に、軟磁性
層の成膜直後の表面と、プラズマエッチング後の表面の
AFMによる観察像をそれぞれ示す。かかる観察像か
ら、軟磁性層の表面粗さを見積もったところ、軟磁性層
の成膜直後の表面粗さは0.46nmであったのに対
し、プラズマエッチングを行なった軟磁性層の表面粗さ
は0.39nmであり、プラズマエッチングを行なうこ
とによって軟磁性層の表面が平坦になっていることがわ
かる。このような軟磁性層の表面のプラズマエッチング
による平坦化が、記録再生特性におけるS/Nの向上に
寄与しているものと考えられる。
【0067】つぎに、エッチング処理した磁気記録媒体
に100kFCI、200kFCI、300kFCI及
び400kFCIの線記録密度で繰り返しパターンを記
録し、記録層に記録された記録マークを磁気力顕微鏡
(MFM)を用いて観察した。図10に、MFMによる
観察像を示す。図10からわかるように、線記録密度が
400kFCIであっても磁化遷移領域は極めて明瞭で
ある。
【0068】次いで、記録層に250kFCIの線記録
密度で繰り返しパターンを記録した後、かかる繰り返し
パターンに隣接するように、記録ヘッドをヘッド幅の分
だけオフトラックして同じ線記録密度で繰り返しパター
ンを記録した。そして、得られた2列の繰り返しパター
ンのトラック幅方向中央に、100kFCIの線記録密
度で繰り返しパターンを重ね書きした。また、同様に、
記録層に100kFCIの線記録密度で繰り返しパター
ンを記録した後、かかる繰り返しパターンに隣接するよ
うに、記録ヘッドをヘッド幅の分だけオフトラックして
同じ線記録密度で繰り返しパターンを記録し、得られた
2列の繰り返しパターンのトラック幅方向中央に、25
0kFCIの線記録密度で繰り返しパターンを重ね書き
した。このように、繰り返しパターン上に異なる線記録
密度で繰り返しパターンを重ね書きした記録層のMFM
による観察像を図11に示す。図11からわかるよう
に、重ね書きした繰り返しパターンの両側に存在する重
ね書き前の繰り返しパターンは消去されずに残ってい
る。
【0069】以上の結果から、軟磁性層の表面をプラズ
マエッチングして平坦化し、平坦化された軟磁性層上に
Pd−SiNの中間層を形成することにより、中間層上
に、結晶粒子の境界すなわち結晶粒界は極めて明瞭な記
録層を形成することができる。かかる明瞭な結晶粒界に
より、結晶粒子は、面内方向の磁気的結合力がより一層
低減されるため、微小な記録ビットを形成することが可
能となるとともに磁化遷移領域の直線性が高くなる。こ
れにより高密度記録が可能になるとともに、高密度記録
された情報を低ノイズで再生することが可能となる。
【0070】以上、本発明の磁気記録媒体について具体
的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものでは
なく、種々の変形例及び改良例を含み得る。
【0071】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、人工格子構造
を有する記録層の下地として、Pd、Si及びNからな
る中間層を用いているので、記録層の面内方向の磁気的
結合力を低減することができる。これにより、記録層の
磁化遷移領域の乱れが低減するため、線記録密度を高め
ても低ノイズで情報を再生することができる。また。磁
気異方性の高い人工格子膜を記録層と用いているため、
高い熱安定性を有している。
【0072】本発明の製造方法によれば、面内方向の磁
気的交換結合力が低減された記録層を備える磁気記録媒
体を製造することができるので、高密度記録された情報
を低ノイズで再生可能な磁気記録媒体を提供することが
できる。
【0073】本発明の磁気記憶装置は、本発明の磁気記
録媒体を備えるため、150ギガビット/平方インチ
(約23.25ギガビット/平方センチメートル)の高
い面記録密度で情報を記録しても高S/Nで情報を再生
することができるとともに、高い耐熱減磁特性を有して
いる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う磁気記録媒体の概略断面図であ
る。
【図2】磁気記録媒体の記録層の断面構造を模式的に示
した図である。
【図3】本発明に従う磁気記憶装置の平面模式図であ
る。
【図4】実施例1で製造した磁気記録媒体の電磁変換特
性の測定結果である。
【図5】実施例5で製造した磁気記録媒体の概略断面図
である。
【図6】軟磁性層の表面をプラズマエッチングして作製
した磁気記録媒体の外部磁界に対するカー回転角曲線で
ある。
【図7】図7(a)は、軟磁性層の表面をプラズマエッ
チングして作製した磁気記録媒体の記録層のTEMによ
る観察像であり、図7(b)は、軟磁性層の表面のプラ
ズマエッチングを行なわずに作製した磁気記録媒体の記
録層のTEMによる観察像である。
【図8】磁気記録媒体の記録層の結晶粒子の直径と粒子
数のヒストグラムであり、図8(a)は、軟磁性層の表
面をプラズマエッチングして作製した磁気記録媒体の場
合であり、図8(b)は軟磁性層の表面のプラズマエッ
チングを行なわずに作製した磁気記録媒体の場合であ
る。
【図9】図9(a)は、プラズマエッチングする前の軟
磁性層表面のAFMによる観察像であり、図9(b)
は、プラズマエッチングした後の軟磁性層表面のAFM
による観察像である。
【図10】軟磁性層をプラズマエッチングして作製した
磁気記録媒体の記録層に記録した繰り返しパターンのM
FMによる観察像である。
【図11】軟磁性層をプラズマエッチングして作製した
磁気記録媒体の記録層に互いに異なる線記録密度で繰り
返しパターンを重ね書きしたときのMFMによる観察像
である。
【符号の説明】
1 ガラス基板 2 密着層 3 軟磁性層 4 鉄酸化物層 5 中間層 6 人工格子構造の記録層 7 保護層 8 潤滑層 10 磁気ヘッド 11 磁気ヘッド駆動装置 12 記録再生信号処理装置 18 回転駆動部(スピンドル) 100、500 磁気記録媒体 200 磁気記憶装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高山 孝信 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (72)発明者 坂本 晴美 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (72)発明者 若林 康一郎 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立 マクセル株式会社内 (56)参考文献 特開2001−155329(JP,A) 特開2001−283419(JP,A) 特開2001−291230(JP,A) 特開2002−25032(JP,A) 特開2002−100030(JP,A) 特開2002−157730(JP,A) 特開2002−197636(JP,A) 特開2001−155322(JP,A) 特開2001−143251(JP,A) 特開2001−14633(JP,A) 特開 平8−30951(JP,A) 特開 平8−31639(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/62 - 5/858

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板と; 該基板上に、直接または間接的に形成された中間層であ
    って、PdSi及びNとを含み、さらにCoを1at%
    〜10at%含む中間層と; 該中間層上に直接形成されたPd層とCo層とを交互に
    積層して形成された記録層と;を備えた磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の磁気記録媒体と; 情報を記録または再生するための磁気ヘッドと; 上記磁気記録媒体を上記磁気ヘッドに対して駆動するた
    めの駆動装置と;を備えることを特徴とする磁気記憶装
    置。
  3. 【請求項3】 前記磁気ヘッドは磁気抵抗効果型磁気ヘ
    ッドを含むことを特徴とする請求項に記載の磁気記憶
    装置。
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