JP3412307B2 - 腐食疲労特性に優れた極細鋼線 - Google Patents
腐食疲労特性に優れた極細鋼線Info
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Description
コード等のゴム補強用線材、またはミニチュアロープ等
の撚り線加工製品を得るための素線として有用な腐食疲
労特性に優れた極細鋼線に関するものである。
IS SWRS 72AやSWRS82A等の如き炭素鋼
が使用されており、ゴム補強用のスチールコードを製造
するに当たっては、通常以下の手順で製造されている。
即ち、所定の化学成分を含有する鋼を熱間圧延した後、
必要に応じて制御冷却することによって得られた線材を
一次伸線加工、パテンティング処理、二次伸線加工、再
度のパテンティング処理およびめっき処理等を順次施
し、最終的に湿式伸線加工を行って極細鋼線としてか
ら、該鋼線をタイヤの種類に応じて複数本撚り合わせる
ことによりスチールコードとしている。
て使用した場合、タイヤゴム中に含まれる水分もしくは
タイヤゴムの亀裂部から侵入する水分、またはその他の
環境物質によりスチールコードが腐食損傷を受けるた
め、耐久性が低下するという問題がある。
することを目的として、種々の開発が行われている。例
えば特開平2−53981号および特公平3−2367
4号公報には、超高強度における靭性保持および耐食性
向上を目的として、耐食性向上元素であるNiと、Cu
および/またはVを添加したタイヤ用スチールコードが
開示されている。また、特開平3−193983号公報
には、素線間にゴムを確実に侵入させることを目的とし
て撚りピッチおよび平均形付率等を特定することにより
耐食性を向上させたゴム製品補強用スチールコードが開
示されている。更に、特公平3−44923号公報に
は、スチールコードに窒化処理を行うことにより腐食疲
労特性を向上させる方法が開示されている。
該スチールコードの腐食損傷はある程度低減されるが、
安全性確保の観点から言えば未だ十分とは言えず、更に
優れた耐食性・耐久性を有するスチールコードの開発が
求められている。
着目してなされたものであり、その目的は、タイヤコー
ドやベルトコード等のゴム補強用線材、またはミニチュ
アロープ等の撚り線加工製品を得るための素線として有
用な腐食疲労特性に優れた極細鋼線を提供することにあ
る。
発明の極細鋼線は、めっき処理が施されたものであり、
該めっき層中の単位面積(mm2 )当たりのピンホール
の個数(以下、単にnと略記する場合がある)および/
またはピンホールの平均直径(μm、以下、単にdと略
記する場合がある)が以下の要件を満足することに要旨
を有するものである。
(個/mm2 )(本発明の第1鋼線と呼ぶことがある) 0.5μm≦d≦30μm(本発明の第2鋼線と呼ぶ
ことがある) 100(個/mm2 )≦n≦1000(個/mm
2 )、且つ0.5μm≦d≦30μm(本発明の第3鋼
線と呼ぶことがある) 上記またはにおいて、dが5〜10μmであるもの
は本発明の好ましい実施態様である(本発明の第4鋼線
と呼ぶことがある)。
記式(1)を満足するものは本発明のより好ましい実施
態様である(本発明の第5鋼線と呼ぶことがある)。 (d−5.9)2 ×n≧1680 …(1) 本発明の極細鋼線におけるめっき部分は、鉄より貴な金
属を含むものであることが好ましく、銅合金めっきがよ
り好ましい。また本発明の極細鋼線は、ゴム補強用線材
として用いられる。
フィラメント(極細鋼線)は、通常、鋼線表面にめっき
処理を施すことにより、ゴム等との接着性を高めてい
る。この様な極細鋼線において上述した腐食疲労破壊が
起こる原因としては、ガルバニック腐食によって生じた
孔食状の腐食ピット部に応力が集中する結果、その部分
が起点となって腐食疲労破壊が起こり、ピンホールが発
生することが考えられる。
ためにガルバニック腐食を低減する方法について検討し
た結果、めっき層中のピンホールの数と大きさを適切に
調整することにより、ゴム等との接着性を劣化させるこ
となく腐食疲労特性が大幅に向上することを見出し、本
発明を完成したのである。
からめっき膜として汎用されているブラス(真鍮)めっ
き処理が施された極細鋼線の腐食疲労について、その作
用機構を述べる。
電位を有する銅−亜鉛合金が施されたものであるから、
鉄側がアノード、ブラス側がカソードとなってガルバニ
ック腐食を生じる。この場合のガルバニック腐食はカソ
ード反応支配(酸素の還元反応)を受けるので、該カソ
ード反応を抑制するためにはカソード面積(即ちブラス
上の面積)を減少させることが有効である。本発明で
は、ブラス上の有効面積を減少させる方法としてピンホ
ールに着目し、その数(以下、再びnで代表する)およ
び/または大きさ(平均直径、以下、再びdで代表す
る)を調整することが有効であることを見出したのであ
る。以下、このnとdの限定理由について述べる。
されたスチールコードには、その表面に約10〜100
個/mm2 未満のピンホールが生じているが、上述した
カソード反応の抑制作用を有効に発揮させるためには、
100個/mm2 以上とすることが必要である。下限値
として好ましいのは200個/mm2 、より好ましいの
は300個/mm 2 である。しかしながら、nが過剰に
なるとめっき面積が小さくなり過ぎてゴム等との接着性
が低下するのでその上限を1000個/mm2 とする。
上限値として好ましいのは900個/mm2 、より好ま
しいのは800個/mm2 である。本発明の第1鋼線
は、この様にnのみを調整するものである。
ード面積が減少するのでカソード反応を抑制できること
はnと同様であるが、dの場合には、更に幾何学的形状
の制御という観点から、応力の集中緩和による腐食疲労
特性の向上も考えられる。図1は、dの増加に伴う応力
の集中緩和を説明したものである。図から明らかな様
に、従来の鋼線ではdが小さい(約0〜0.1μm)た
めに腐食ピット底部の曲率半径が小さくなり、その部分
に応力が集中して腐食疲労特性が向上するのに対して、
本発明の場合には、dを大きくしたので該曲率半径が大
きくなり、応力の集中が緩和されるのである。この様な
作用を有効に発揮させるには、0.5μm以上とするこ
とが必要である。下限値として好ましいのは1μm、よ
り好ましいのは5μmである。しかしながら、dが大き
くなるとゴム等との接着性が低下してしまうのでその上
限を30μmとする。上限値として好ましいのは20μ
m、より好ましいのは10μmである。本発明の第2鋼
線は、この様にdのみを調整するものである。
ちらか一方を調整することによって腐食疲労特性の向上
が得られるが、更にnとdの両方を規定することによ
り、上述したnによるカソード反応抑制作用と、dによ
る応力集中緩和作用が相乗的に作用する結果、腐食疲労
特性を著しく高めることができる。この様な作用を有効
に発揮させるには、100(個/mm2 )≦n≦100
0(個/mm2 )且つ0.5μm≦d≦30μmの要件
を満たすことが必要である。好ましくは200(個/m
m2 )≦n≦900(個/mm2 )且つ1μm≦d≦2
0μmであり、より好ましくは300(個/mm2 )≦
n≦800(個/mm2 )且つ5μm≦d≦10μmで
ある。本発明の第3鋼線は、この様に上記nとdを調整
するものである。
おいてdが5〜10μmのものである。更に、上記の各
鋼線においてnとdが下記式(1)を満足するものは本
発明のより好ましい実施態様である(本発明の第5鋼
線)。 (d−5.9)2 ×n≧1680 …(1)
はdを夫々の観点から調整するものであるが、nとdの
関係から、本発明による作用を有効に発揮させるべく検
討して(n,d)の下限値の組合わせを決定した式が上
記式(1)である。従って、nとdが上記式(1)を満
足するものは、nとdによる両作用を極めて有効に発揮
させることができるのである。下限値として好ましいの
は1880であり、より好ましくは2080である。本
発明において最も好ましいのは、nおよびdが本発明の
要件を満足すると共に、上記式(1)も満足するもので
ある。
てブラスめっきを例に挙げて説明したが、その他に、ス
チールコード等の分野で繁用されているめっき[銅合金
めっき(例えばCu−Sn、Cu−Ni、Cu−Zn,
Cu−Co,Cu−Zn−Co,Cu−Zn−Ni,C
u−Zn−Fe系合金等)、ニッケル合金めっき(例え
ばNi−P、Ni−Co系合金等)、亜鉛合金めっき
(例えばCo−Zn系合金、Zn−Ni,Fe−Zn系
合金等)等を施すことができる。上述したカソード反応
抑制作用を有効に発揮させるには、鉄より貴な金属を含
むめっき方法が好ましく、より好ましいのは銅合金めっ
きが施されたものである。
方法としては特に限定されず、例えばnについては、め
っきの膜厚を小さくする、成膜速度を大きくする、被め
っき材の表面粗さを粗くする、めっき後の最終伸線の加
工度を大きくする等の方法によって調整することが可能
である。一方dについては、めっきの膜厚を小さくす
る、成膜速度を大きくする、被めっき材の表面粗さを粗
くする、めっき後の最終伸線の加工度を大きくする、最
終伸線後にNaOH水溶液に浸漬する等の方法によって
調整することができる。
労特性に優れているので、タイヤコードやベルトコード
等のゴム補強用線材として特に有用であるが、その他に
もミニチュアロープ等の撚り線加工製品を得るための素
線として有用である。
とより下記実施例によって制限を受けるものではなく、
前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実
施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明
の技術的範囲に含まれる。
i:0.21%,Mn:0.55%,P:0.005
%,S:0.006%を含有する鋼を熱間圧延した後、
得られた線材を一次伸線加工、パテンティング処理、二
次伸線加工、再度のパテンティング処理、および表1に
記載のめっき処理を順次施し、最終的に湿式伸線加工を
行うことにより、線径:0.20mmの極細鋼線を作製
した。
が非常に薄いため、その表面には通常10〜100個/
mm2 のピンホールが生じている。このピンホールの数
(n)を調整するに当たっては、めっき処理時にめっき
量を制御することにより行い、またピンホールの平均直
径(d)を調整するに当たっては、最終伸線後に1mo
l/LのNaOH水溶液に0〜1時間浸漬することによ
って調節した。n値とd値の評価は、走査電子顕微鏡写
真を用いて行った。各鋼線中のnとdを夫々表1に併記
する。
ゴムの中に埋め込んだ後、腐食疲労特性と接着強度をそ
れぞれ測定した。このうち腐食疲労特性は、5%NaC
l水溶液中での腐食疲労試験による破断寿命(サイクル
数)を測定し、以下の基準に従って評価した。 ◎◎:>1000kcycle ◎ :500〜1000kcycle ○ :100〜500kcycle △ :50〜100kcycle × :<50kcycle − :接着強度が著しく不良であるため実施せず
NaCl水溶液中に1週間浸漬した後、該ゴム片から極
細鋼線を引き抜いたときの剥離状態を、以下の基準に従
って評価した。 ○ :ゴムの凝集破壊が起こったもの(凝集破壊) × :ゴム/コード界面から剥離したもの(界面剥離) ××:凝集破壊と界面剥離の両方が生じたもの 得られた結果を表2に併記する。
直径をグラフ上にプロットして表す。No.9〜31は本
発明の要件を満足する実施例である。このうち、No.9
〜11(図中、◇)はnが本発明の要件を満たす第1鋼
線、No.12〜16(図中、△)はdが本発明の要件を
満たす第2鋼線、No.17〜20(図中、□)はnとd
が本発明の要件を満たす第3鋼線、No.21〜27(図
中、○)はdが本発明のより好ましい要件を満たす第4
鋼線、No.28〜31(図中、◎)はnおよびdが本発
明の要件を満たすと共に、本発明で規定する上記式
(1)を満足する第5鋼線である。
たす上記鋼線は、いずれもゴムとの接着強度が優れてお
り、且つ腐食疲労特性もこの順序で向上することが分か
った。
はdが本発明の要件を満足しない比較例であり、nとd
が本発明の下限を超えるNo.1および2(図中、×)は
実施例に比べて接着強度の低下はないものの、腐食疲労
特性が低下した。また、nが本発明の上限を超えdが本
発明の下限を超えるNo.3(図中、++)、およびnと
dが本発明の上限を超えるNo.4〜8(図中、+)は、
いずれも接着強度および腐食疲労特性の両方が著しく低
下した。
っき層中のピンホールの数と平均直径を適切に調整する
ことにより、ゴム等との接着強度を低下することなく優
れた腐食疲労特性を発揮し得る極細鋼線が得られた。本
発明の極細鋼線を使用すれば、タイヤなどの補強材入り
ゴム製品の耐久寿命特性を向上させることができると共
に、この様なゴム製品を効率よく製造することができ
る。
る。
係を示すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 めっき処理が施された極細鋼線であっ
て、該めっき層中のピンホールの数が100〜1000
個/mm2 であることを特徴とする極細鋼線。 - 【請求項2】 めっき処理が施された極細鋼線であっ
て、該めっき層中のピンホールの平均直径が0.5〜3
0μmであることを特徴とする極細鋼線。 - 【請求項3】 めっき処理が施された極細鋼線であっ
て、該めっき層中のピンホールの数が100〜1000
個/mm2 であると共に、該ピンホールの平均直径が
0.5〜30μmであることを特徴とする極細鋼線。 - 【請求項4】 前記ピンホールの平均直径が5〜10μ
mである請求項2または3に記載の極細鋼線。 - 【請求項5】 前記ピンホールの数とピンホールの平均
直径が下記式(1)を満足するものである請求項1〜4
のいずれかに記載の極細鋼線。 (d−5.9)2 ×n≧1680 …(1) 式中、nはピンホールの数(個/mm2 )、 dはピンホールの平均直径(μm)をそれぞれ表す。 - 【請求項6】 前記めっき部分が鉄より貴な金属を含む
ものである請求項1〜5のいずれかに記載の極細鋼線。 - 【請求項7】 銅合金めっきが施されたものである請求
項6に記載の極細鋼線。 - 【請求項8】 ゴム補強用線材として用いられる請求項
1〜7のいずれかに記載の極細鋼線。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01018595A JP3412307B2 (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 腐食疲労特性に優れた極細鋼線 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01018595A JP3412307B2 (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 腐食疲労特性に優れた極細鋼線 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08199394A JPH08199394A (ja) | 1996-08-06 |
JP3412307B2 true JP3412307B2 (ja) | 2003-06-03 |
Family
ID=11743237
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP01018595A Expired - Lifetime JP3412307B2 (ja) | 1995-01-25 | 1995-01-25 | 腐食疲労特性に優れた極細鋼線 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3412307B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3970421B2 (ja) * | 1998-03-31 | 2007-09-05 | 大日本スクリーン製造株式会社 | 基板処理装置 |
JP2018119189A (ja) * | 2017-01-26 | 2018-08-02 | 新日鐵住金株式会社 | めっき鋼線、スチールコード及びゴム−スチールコード複合体 |
-
1995
- 1995-01-25 JP JP01018595A patent/JP3412307B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH08199394A (ja) | 1996-08-06 |
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