JP3390345B2 - 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
磁気特性に優れる方向性電磁鋼板及びその製造方法Info
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Description
電気機器の鉄心に用いて好適な低鉄損方向性電磁鋼板及
びその製造方法に関するものである。
機器の鉄心として使用され、磁気特性に優れること、な
かでも鉄損の低いことが要求される。この鉄損は概ねヒ
ステリシス損と渦電流損との和で表すことができる。方
向性電磁鋼板の鉄損を低くするには、ヒステリシス損及
び渦電流損の一方又は双方を低減することが必要とな
る。これまで、ヒステリシス損については、結晶粒の成
長を抑制する機能を有するインヒビターを用いることに
より、鋼板の結晶粒をゴス方位、すなわち{110}
〈001〉方位に高度に集積させて透磁率を増大させる
ことで大幅に低減されてきた。一方、渦電流損について
は、鋼板中のSi含有量を増大させること、板厚を薄くす
ること、二次再結晶粒の粒径を微細化すること、地鉄表
面に張力被膜を形成させることなどによってその低減が
図られてきた。
電流損を低減する方法が開発され、レーザー光(特公昭
57−2252号公報)、プラズマ炎(特開昭62−96617 号公
報)等を照射する方法が開示されている。また、耐熱型
磁区細分化方法(Heat-proofdomain-refining method)
として、二次再結晶後の鋼板に機械的加工により溝を形
成する方法(特公昭62−53579 号公報)や仕上げ焼鈍前
に圧延方向と直交する線状の刻み目を導入する方法(特
公平3 −39968 号公報)などがそれぞれ開示されてい
る。更に、特開昭59−177349号公報には結晶の〈00
1〉方位の圧延面からの傾斜角を適正に制御し磁区幅を
低減することで渦電流損を低減する方法が開示されてい
る。
リシス損低減のために結晶粒のゴス方位への集積が図ら
れ、また渦電流損低減のために主として磁区幅の低減が
図られてきた。しかしながら、以上述べた従来の鉄損低
減技術は、以下の(1) 〜(3) に列挙する点において十分
な鉄損の低減に至っていない。
向)に互いに隣接する二次再結晶粒の結晶方位の差(と
くに圧延面内での方位差)に起因する磁束密度の不均一
分布によって鉄損が増大する。
結晶粒の結晶方位の差に起因する磁極の生成によって、
透磁率が低下するとともにヒステリシス損が増大する。
て、鋼板表面に現れる磁極量が低下し、磁区幅が広くな
ることによって渦電流損の増大を招く。
止する方法を、発明者らは特開平8−49045 号公報にて
開示している。この方法は、鋼板全体にわたって局所磁
束密度変化を均一化するという技術である。この技術の
具体的な実施方法について、発明者らは特開平8 −2881
15号公報にて被膜中の成分および二次再結晶粒のアスペ
クト比を制御するための方法を開示している。これらの
方法は、圧延直角方向に隣接する二次再結晶粒のα角
(圧延面内における[001]方位の圧延方向からのず
れ角)の差に起因する磁束密度の不均一分布を、圧延方
向への二次再結晶粒の成長を抑止し圧延直角方向への二
次再結晶粒の成長を促進することによって防止すること
ができる。しかしながら、圧延直角方向の二次再結晶粒
の粒径が大きい場合、圧延方向への二次再結晶粒の成長
速度も大きくなりがちである。その結果、素材によって
は適切なアスペクト比が得られず、鉄損が十分に低減さ
れない場合があった。
的な磁区細分化法が有効であるが、この磁区細分化処理
は同時に透磁率の劣化を招く。したがって、従来の磁区
細分化技術のみによる限りは、透磁率の劣化なく磁区幅
を十分に細分化することは困難である。
平6 −89805 号公報には粗大な二次再結晶粒に加えて直
径5 mm以下の微細粒を所定の数だけ、所定の方位の範囲
内で存在させることによって鉄損を低減する方法が開示
されている。しかしながらこの方法では、上記(1) の問
題点が解決されていないため、圧延直角方向に隣接する
二次再結晶粒の方位差によって鋼板面内での磁束密度が
不均一分布した場合、目的の鉄損低減効果が得られない
という難点を有していた。
方向性電磁鋼板において、磁束密度の低下がなく低鉄損
を有する磁気特性に優れる方向性電磁鋼板とその製造方
法をを提案することを目的とする。この発明は、前述の
ような問題点を、再結晶粒の分布と結晶方位を具体的に
規定することによって有利に解決する。
粒が圧延方向にある程度成長した場合であっても磁束の
均一化効果と磁区細分化効果とを併せ持つ二次再結晶粒
の形態について鋭意研究した。その結果、高透磁率方向
性電磁鋼板において、磁束密度の劣化を生じることな
く、磁区細分化処理の有無に拘わらず鉄損低減効果を最
大限に発揮することのできる特定の再結晶粒の分布と結
晶方位が存在することを発見し、この発明に至った。
Si:2.0 〜5.0 mass%を含み、かつ、As、SbおよびBiの
うちの1種または2種以上の合計:0.0003〜0.1 mass%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有
し、二次再結晶粒の結晶方位[001]の圧延方向から
のずれ角の平均値が4゜以内の方向性電磁鋼板であっ
て、圧延直角方向の最大長さ:60mm以上の二次再結晶粒
が鋼板面積に対する面積率で85%以上を占め、粒径:2
mm以上20mm以下の範囲の結晶粒が、鋼板面積に対する面
積率で0.2 %以上、10%以下の範囲を占め、かつ、粒
径:2 mm以上20mm以下の範囲の結晶粒の結晶方位[00
1]が鋼板面となす角の平均値(面積平均値)が1.5 ゜
以上、5.0 ゜以下の範囲である磁気特性に優れる方向性
電磁鋼板である。ここで、成分組成として、さらにMn:
0.03〜0.20mass%、Mo:0.005 〜0.20mass%、Cu:0.01
〜0.30mass%、P:0.010 〜0.030 mass%およびSn:0.
010 〜0.10mass%から選ばれる1種または2種以上を必
要に応じて含有することができる。
直角方向と30゜以内の角度をなし、深さ:10μm 以上、
幅:20μm 以上300 μm 以下の線状溝が互いに間隔:1
mm以上30mm以下離れて該鋼板表面上に存在することは、
磁区細分化により鉄損を低減させるために好ましい。ま
た、この発明の方向性電磁鋼板において、鋼板表面にフ
ォルステライト被膜がないことは、ヒステリシス損の低
減により鉄損を低減させるために好ましい。
法は、Si:2.0 〜5.0 mass%、Al:0.010 〜0.050 mass
%およびN:0.005 〜0.015 mass%と、S:0.005 〜0.
020mass%およびSe:0.01〜0.04mass%の1種または2
種とを含み、さらにAs、SbおよびBiのうちの1種または
2種以上を合計で0.0003〜0.1 mass%で含有し、残部Fe
および不可避的不純物の成分組成を有する、けい素鋼ス
ラブを1250℃以上に加熱し、900 ℃以上の温度域で熱間
圧延を施して熱延板とした後、800 〜1100℃で20〜300
秒間熱延板焼鈍を施し、次いで該熱延板に800 〜1150
℃,20〜300 秒の中間焼鈍を挟む2 回以上の冷間圧延
を、該冷間圧延の複数パスのうち1 回以上のパスが鋼板
温度150 ℃以上、かつロール出側での鋼板張力が25〜45
kgf/mm2 の条件で施した後、800 〜900 ℃で30〜200 秒
間の脱炭焼鈍を施し、次いで焼鈍分離剤を塗布してか
ら、最高温度1130℃以上、5 時間以上の最終仕上げ焼鈍
を施した後、絶縁被膜をコーティングする一連の工程か
らなる。ここで、成分組成として、さらに Mn:0.03〜0.
20mass%、 Mo:0.005 〜0.20mass%、 Cu:0.01〜0.30ma
ss%、 P:0.010 〜0.030 mass%および Sn:0.010 〜0.
10mass%から選ばれる1種または2種以上を必要に応じ
て含有することができる。
法は、Si:2.0 〜5.0 mass%、Al:0.010 〜0.050 mass
%およびN:0.005 〜0.015 mass%と、S:0.005 〜0.
020mass%およびSe:0.01〜0.04mass%の1種または2
種とを含み、さらにAs、SbおよびBiのうちの1種または
2種以上を合計で0.0003〜0.1 mass%で含有し、残部Fe
および不可避的不純物の成分組成を有する、けい素鋼ス
ラブを1250℃以上に加熱し、900 ℃以上の温度域で熱間
圧延を施して熱延板とした後、800 〜1100℃で20〜300
秒間熱延板焼鈍を施し、次いで該熱延板に800 〜1150
℃,20〜300 秒の中間焼鈍を挟む2 回以上の冷間圧延
を、該冷間圧延の複数パスのうち1 回以上のパスが鋼板
温度150 ℃以上の条件で施した後、800 〜900 ℃で30〜
200 秒間の脱炭焼鈍を施し、次いで鋼板表面をショット
ブラスト処理した後、焼鈍分離剤を塗布してから、最高
温度1130℃以上、5 時間以上の最終仕上げ焼鈍を施した
後、絶縁被膜をコーティングする一連の工程からなる。
ここで、成分組成として、さらに Mn:0.03〜0.20mass
%、 Mo:0.005 〜0.20mass%、 Cu:0.01〜0.30mass%、
P:0.010 〜0.030 mass%および Sn:0.010 〜0.10mass
%から選ばれる1種または2種以上を必要に応じて含有
することができる。
いて、冷間圧延後、脱炭焼鈍前の冷延板表面に、圧延直
角方向と30°以内の角度をなし、深さ10μm 以上、幅20
μm以上300 μm 以下の線状溝を互いに間隔:1 mm以上
離してなる線状溝群を付与する工程を施すことは、磁区
細分化により鉄損を低減させた鋼板を得る上で好まし
い。また、この発明の方向性電磁鋼板の製造方法におい
て、焼鈍分離剤の塗布の際、アルミナを主成分とする焼
鈍分離剤を用いることは、鋼板表面にフォルステライト
被膜が形成されないから、ヒステリシス損の低減により
鉄損を低減させた鋼板を得る上で好ましい。
験について述べる。成分組成として、C:0.063 mass%
(以下単に%で表す)、Si:3.20%、Mn:0.065 %、S
e:0.020 %、Al:0.022 %、N:0.0090%、Mo:0.020
%、Sb:0.050 %およびBi:0.02%を含有し、残部が
主としてFeからなるけい素鋼小型鋼塊(100 kg)を1450
℃の温度に誘導加熱したのち、熱間圧延して板厚:2.4
mmの熱延板とした。この熱延板を熱延板焼鈍(1050℃・
40秒間、窒素中)してから一次冷間圧延して板厚:1.7
mmの冷延板とした。その後、中間焼鈍(1000℃・2 分
間、湿水素中)を施したのち、二次冷間圧延を施して0.
23mmの最終冷延板厚とした。
たのち、脱炭焼鈍板に圧下率0.1 %にて歪み導入処理を
行った。その後MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し
てから、1200℃で最終仕上げ焼鈍を行った。この最終仕
上げ焼鈍では850 ℃の温度で20時間の保定による二次再
結晶核生成処理を施した。最終仕上げ焼鈍後は、鋼板に
コロイダルシリカおよび燐酸マグネシウムを主成分とす
る絶縁コーティングを施した。
さ:280 mmの単板磁気試験(SST )用の試片を採取し、
鉄損W17/50、磁束密度B8を測定した。磁気測定後、各試
片にマクロエッチングを施して二次再結晶粒を出現させ
た。画像解析により各二次再結晶粒の大きさを測定する
とともに、ラウエ法により各二次再結晶粒の結晶方位を
測定した。
下の範囲の結晶粒の結晶方位[001]が板面となす角
の平均値(面積平均値)とは、個々の結晶粒方位[00
1]が板面となす角の値に、結晶粒の粒径:2 mm以上20
mm以下の結晶粒の全面積に対する該結晶粒の面積率を乗
じた値の平均値のことをいう。また、結晶粒径(R)と
は円相当径のことをいい、下記式(1) で表す。 R=2(S/π)1/2 ・・(1) ただし、 S:結晶粒面積
各試片の磁束密度B8と鉄損W17/50との関係のグラフであ
る。図1から明らかなように、磁束密度B8が高くなるに
従って鉄損W17/50の最良値は低下し、B8が1.96T 以上で
はW17/50が0.80W/kgを下回るものが存在する。一方、B8
が1.96T 以上と高いにもかかわらずW17/50が0.95W/kgを
超えるような鉄損の劣るものも数多く存在する。このよ
うな高磁束密度域での鉄損の劣化は、結晶方位[00
1]の圧延面からのずれの角度(以下β角という)の減
少によって鋼板表面の磁極量が減少し、磁区幅が増大す
ることが原因である。
ウエ法にて測定した各二次再結晶粒のβ角にそれぞれの
面積率を乗じたものを積算して平均β角とし、これと鉄
損W1 7/50との関係について調査した。この結果を図2に
平均β角と鉄損W17/50との関係のグラフで示す。図2で
は、平均β角の増大に伴って鉄損が減少する傾向が認め
られる。しかし、なお、両者の関係はバラツキがあって
必ずしも明確でない。したがって、B8が1.96T 以上のよ
うな磁束密度の高い材料では、平均β角のみの制御によ
り鉄損を0.80W/kg以下に低減するのは不可能であると判
断される。またB8が1.96T 以上の試料では平均の二次再
結晶粒径と鉄損との関係を調べたが、両者の間には明確
な関係は認められなかった。
粒径以外の鉄損決定因子として、鋼板面内での磁束密度
分布の均一性の向上が鉄損の低減に有効ではないかと着
想し、この点に注目して、更に詳細な研究を行った。
圧延直角方向の最大長さの平均値と鋼板面内の局所磁束
密度の不均一度との関係のグラフを示す。
記式(2) で定義する。局所磁束密度: Bi local は探針
法(needle probe method )と呼ばれる測定法を用い、
局所磁束密度測定部分の幅を10mmとし、圧延方向、圧延
直角方向のいずれも10mmピッチとして、鋼板の全幅:10
0 mm、圧延方向:200 mmの領域でN:200 点の測定を行
った。なお、この局所領域の磁束密度測定時の鋼板全体
の励磁磁束密度 Bm を1.0Tとした。
大長さの平均値が60mm以上では、局所磁束密度の不均一
度rが低下する傾向にあることが分かる。そこで、圧延
直角方向の最大長さが60mm以上の二次再結晶粒が鋼板全
体に占める割合と鋼板面内の磁束密度の不均一度rとの
関係を調べた。また、同時に結晶粒径が2 〜20mmの比較
的小さい結晶粒の平均β角によっての水準分けも行っ
た。なお、粒径は前掲式(1) にて定める円相当径とし
た。
角方向最大長さが60mm以上の二次再結晶粒が鋼板全体に
占める割合と鋼板面内での局所磁束密度の不均一度との
関係を示すグラフである。ここで、結晶粒径が2 〜20mm
の平均β角によって水準分けしてある。図4から明らか
なように、圧延直角方向の最大長さが60mm以上の二次再
結晶粒が鋼板全体に占める割合が85%以上の場合で、さ
らに、粒径が2 〜20mmの結晶粒の平均β角が1.5 ゜〜5.
0 ゜の場合に、前記式(2) で定める鋼板面内での磁束密
度の不均一度rは0.15以下となる。よって、rの小さい
このような条件で鉄損低減効果が期待できる。
さ:60mm以上の二次再結晶粒が鋼板全体に占める割合
と、粒径:2 〜20mmの粒の平均のβ角とに着目して磁束
密度B8が1.96T 以上の試片の鉄損を調査した。図5に圧
延直角方向の最大長さが60mm以上の二次再結晶粒が鋼板
全体に占める割合、粒径:2 〜20mmの結晶粒の平均β角
および粒径:2 〜20mmの結晶粒が鋼板全体に占める割合
と鉄損W17/50との関係を示す。図5から明らかなよう
に、圧延直角方向の最大長さが60mm以上の二次再結晶粒
の面積率が85%以上、粒径:2 〜20mmの結晶粒の平均β
角が1.5 ゜〜5 ゜、粒径:2 〜20mmの結晶粒の面積率が
0.2 〜10%の条件で、W17/50≦0.80W/kgの低鉄損が得ら
れていることが分かる。
方向性電磁鋼板の地鉄成分として、Siは比抵抗を高め、
渦電流損を低減させる成分として重要である。Si含有量
が低すぎる場合はこの効果が十分に発揮できないため、
Si含有量は2.0 %以上とする。また、Si量が多すぎる場
合は圧延が困難となるためその上限を5.0 %とする。
て、5B族元素であるAs, Sb, Biのうちの1種または2種
以上を含有させることは、高磁束密度を得るために有効
である。また、As, SbおよびBiを添加させることによ
り、二次再結晶粒の粗大化が促進され、圧延直角方向に
長い二次再結晶粒が得易くなる。これらの成分の含有量
の下限値の必要性については、二次再結晶焼鈍で高温領
域まで正常粒成長抑制力を保ち続けて鋼板全体に高い集
積度の二次再結晶粒を生成させるためには、これらの成
分はできるだけ高温域地鉄中に留まっている必要がある
のではないかと考えられる。したがって、これらの成分
が製品板中に若干量残留している場合に良好な磁気特性
が得られると考えられる。しかしながら、これらの成分
が製品板中に過度に存在している場合は析出物の増加に
よりヒステリシス損の増加の原因となる。以上から、製
品板中のAs, SbおよびBiの含有量はヒステリシス損を増
加させることなく高い磁束密度を得るための条件として
これらのうちの1種または2種以上の合計の下限を0.00
03%、上限を0.1 %とする。
て高い方位集積度を有する方向性電磁鋼板において安定
して低鉄損を得ることを目的としている。方位集積度が
低い方向性電磁鋼板の場合には、単純に二次再結晶粒径
を微細化することによって低鉄損化することができる。
したがって、この発明において磁束密度の均一化により
鉄損を低減するための前提条件として、鋼板の平均の結
晶方位のずれ角θ(圧延方向と結晶粒の[001]方向
のなす角)が4 °以下であることを、設定する。平均結
晶方位θを求める方法は特に限定されるものではない
が、簡便な方法としては磁束密度B8の測定値を用いる方
法がある。磁区細分化処理なしの場合のB8が1.94T 以上
であれば、結晶方位のずれ角が4 °以下である。また、
X線ラウエ法等により、結晶方位を直接測定することも
可能である。この場合のθを求める方法としては、各二
次再結晶粒の方位をそれぞれ測定して面積率を乗じて平
均化する方法や、方位測定を5 〜20mmピッチ程度の格子
点で行い、単純平均を求める方法などがある。
再結晶粒の面積率に関する限定、および粒径2 〜20mmの
結晶粒のβ角に関する限定は、図4に示したように鋼板
内部の局所磁束密度分布を均一化させてこれにより鉄損
の低減を図るための条件である。二次再結晶粒の圧延直
角方向の長さを増加させることにより、前掲特開平8−2
88115号公報と同様に、圧延直角方向に隣接する二次再
結晶粒のα角(圧延面内における[001]方向と圧延
方向の角度)の違いに起因する磁束密度の不均一の発生
を抑制し、鉄損を低減することができる。
0 ゜の範囲にあることによる効果の理由は必ずしも明ら
かではないが、鋼板の大部分を占める二次再結晶粒が圧
延方向に伸張した場合であっても、β角が周囲の結晶粒
から若干ずれた微小粒が存在することによって、磁束密
度分布の不均一さが緩和されるものと推定される。また
β角が1.5 ゜〜5.0 ゜の微小粒とβ角が0 ゜に近い粗大
粒の結晶粒界に生じる磁極によって磁束密度の低下を招
くことなく、磁区の細分化が図られるものと考えられ
る。粒径は2 mm以上で磁束分布の均一化効果および磁区
の細分化効果が得られるが、20mmより大きい場合は磁束
密度の低下を招くので、微小粒の粒径は2〜20mmの範囲
に限定する。また、微小粒の占める面積率に関しては、
0.2 %以上で磁束の均一化が得られるが、10%を超える
とかえって磁束分布の不均一化を招く可能性が生じるた
め0.2 %以上、10%以下の範囲に限定する。β角の平均
値は1.5 ゜より小さい場合あるいは5.0 ゜を超える場合
は、前掲図4に示したように磁束分布の均一化効果が得
られないために1.5 ゜〜5.0 ゜に限定する。
再結晶粒あるいは粗大化した一次再結晶粒のいずれでも
構わない。また、以上述べたこの発明に限定した粒径2
〜20mmの微小な再結晶粒よりもさらに粒径が小さく結晶
方位がランダムな微細粒をこの発明の方向性電磁鋼板内
部に人工的に形成させることは、鉄損をさらに低減させ
るので、このような技術の併用は推奨される。
度分布の均一化による鉄損低減が達成されるが、このよ
うな効果は従来の磁区の細分化による鉄損低減とは異な
る機構によるものであり、両者を組み合わせることによ
り鉄損が相乗的に低減され、従来にない低鉄損を実現す
ることができる。そこで、この発明においては、磁区細
分化により鉄損を低減させるために、鋼板の圧延直角方
向と30゜以内の角度をなし、深さ:10μm 以上、幅:20
μm 以上300 μm 以下の線状溝を間隔:1mm以上30mm以
下で配した線状溝群を鋼板表面に設ける。
m 未満の場合や幅:20μm 未満の場合は十分な磁極生成
量が得られず磁区が十分に細分化されないため、深さ:
10μm 以上、幅:20μm 以上とする。溝の幅の上限に関
しては、溝幅が300 μm を超える場合は透磁率の劣化を
招くため、幅:300 μm 以下に限定する。溝間隔につい
ては、間隔:1 mm未満では透磁率の劣化を招くため、間
隔:1 mm以上とするが、磁区細分化の効果の観点からそ
の上限は30mmとする。線状溝の角度に関しては、圧延方
向と直交する方向となす角度が30゜を超えると磁区細分
化効果が低下するため30゜以下に限定する。仕上げ焼鈍
前の鋼板に溝を形成するには、特開昭59−197520号公報
に開示の方法を採用した。仕上げ焼鈍後の鋼板に溝を形
成する場合は、鋼板に荷重を加えて溝を形成後、歪取り
焼鈍を施した。この方法は、特開昭61−117218号公報に
開示されている。
ライト被膜がないことは、ヒステリシス損の低減により
鉄損を低減させるために好ましい。フォルステライトが
鋼板表面に存在する場合、地鉄界面に食い込んだフォル
ステライトアンカーによりヒステリシス損が増加する。
したがって地鉄表面にフォルステライト被膜を形成させ
ないかあるいは形成したフォルステライト被膜を除去す
ることによりヒステリシス損が低減する。張力付与コー
ティングの焼き付けにより、さらに鉄損を低減すること
が可能である。この発明の磁束密度の均一化による鉄損
低減は、ヒステリシス損低減による鉄損低減とは異なる
機構による鉄損低減策である。したがって、この発明の
方向性電磁鋼板であってさらに鋼板表面にフォルステラ
イトコーティングがない場合、従来のフォルステライト
被膜を存在させない製造方法による低鉄損材料よりもさ
らに低い鉄損を得ることが可能である。なお、鋼板表面
にフォルステライト被膜がない材料に対して鏡面化処理
あるいは特公平6 −37694 号公報に開示されているよう
な結晶方位強調処理を施すことによってさらに良好な低
鉄損の製品を得ることができるので、このような技術の
併用も推奨される。
ための素材成分はSi,As, SbおよびBi、そしてAl,N,
SおよびSe以外についてはとくに限定はされないが、必
要に応じてC,Mn, Mo,Cu,P,Snなどを添加すること
ができる。
に有用な成分であり、0.005 %以上を必要とするが、0.
080 %を超えると脱炭焼鈍において脱炭不良を起こすの
で好ましくない。
るだけでなく、SもしくはSeとの間でMnS やMnSe等の析
出物を形成し抑制材としての機能を発揮するので0.03〜
0.20%の範囲とすることが好ましい。
能を果たす成分)として、Al,N,S,Seを添加するこ
とが良好な磁気特性を得るために有効である。鋼中にAl
とNを含有させることにより、AlN として析出し、イン
ヒビターとして作用して正常粒成長を抑制する効果があ
る。このとき、Alについてはsol.Alとして0.010 〜0.05
0 %の範囲で含有させ、Nとしては0.005 〜0.015 %の
含有量とする。同様に、S,SeもMnS やMnSe等として析
出し、インヒビターとして機能するため、いずれか1種
または2種を含有する。その含有量はそれぞれ、S:0.
005 〜0.020 %、Se:0.01〜0.04%である。これらのほ
かにも抑制力の補強のために以下の成分を添加すること
ができる。すなわち、抑制力補強成分として、Mo,Cu,
P,Snなどが有効である。
を形成し抑制力を高める成分であり、その効果は0.01〜
0.30%の範囲で顕著である。PはSbと同様、粒界に偏析
して抑制力を高める成分であるが、0.010 %未満では添
加効果に乏しく、一方0.030 %を超えると磁気特性、表
面性状を不安定化させるので、0.010 〜0.030 %とする
ことがよい。Moは二次再結晶粒の核をゴス方位に先鋭化
させる効果を有し、0.005 〜0.20%の範囲での添加が望
ましい。SnはSbと同様、粒界に偏析して抑制力を強化す
る効果を有し、0.010 〜0.10%の範囲でその効果が顕著
である。
NおよびAlは各機能を果たしたのち、Cは主として脱炭
焼鈍において、またS,Se,NおよびAlは仕上げ焼鈍後
半の純化焼鈍において除去されるので、製品の地鉄中の
不純物として微量残存するのみである。
るための条件について説明する。 (スラブ加熱温度1250℃以上)この発明の方向性電磁鋼
板の製造工程においては、スラブ加熱時に鋼中の析出分
散型のインヒビター成分を完全に固溶させ、引き続く圧
延工程でMnSe、MnS 、Cu2-XSe、 Cu2-XS 、AlN 等のイ
ンヒビターの微細な分散を得ることが重要である。この
条件が満たされないと、最終仕上げ焼鈍中にAs、Sb、Bi
等の正常粒成長抑制力が発現する前に一次再結晶粒の粗
大化が生じ、磁気特性が劣化する。このためには1250℃
以上のスラブ加熱温度が必要である。
了から仕上げ熱間圧延が終了するまでにスラブ又は熱延
板の温度が過度に低下した場合、鋼中のインヒビターが
粗大に析出し、最終仕上げ焼鈍中にAs、Sb、Bi等の正常
粒成長抑制力が発現する前に一次再結晶粒の粗大化が生
じ、磁気特性が劣化する。このためには熱間圧延温度と
しては900 ℃以上が必要である。
20〜300 秒)熱延板焼鈍は、熱延板組織の均質化を図る
とともに、AlN 等のインヒビターの析出を制御するため
に重要な工程である。熱延板焼鈍温度が800 ℃未満、又
は焼鈍時間が20秒に満たないとこのような組織及びイン
ヒビターの調整効果が不十分であり、また、焼鈍温度が
1100℃を超え、又は焼鈍時間が200 秒を超えるような場
合はインヒビターの粗大化を招き、磁気特性が不安定に
なるので、上記の範囲とする。
〜300 秒)中間焼鈍は、予備冷間圧延後の再結晶により
組織の調整を行うとともに、鋼中炭化物の析出の制御、
析出型インヒビターの分散状態の調整等を主たる目的と
する。この発明では、上述のごとく析出型インヒビター
の強度をAs、Sb、Bi等による抑制力強化作用とマッチン
グさせる必要があり、このために中間焼鈍温度と焼鈍時
間を適正に制御する必要がある。中間焼鈍温度が800 ℃
未満、焼鈍時間が20秒未満である場合は再結晶が十分で
ないために組織の劣化を招く。一方、焼鈍温度が1150℃
を超える場合や焼鈍時間が300 秒を超える場合は逆に析
出型インヒビターが劣化して二次再結晶不良を起こす。
したがって、この発明では中間焼鈍温度を800 〜1150
℃、焼鈍時間を20〜300 秒の範囲に限定した。
力25〜45kgf/mm2 (最低1パス以上))この発明の主旨
は、二次再結晶粒の粗大化によって生じる鋼板内部の磁
束密度の不均一を抑制して低鉄損化を達成することにあ
り、そのためには、二次再結晶粒の圧延直角方向の幅を
60mm以上とし、かつ、所定の微細粒を所定の面積率で鋼
板内に存在させることが必要である。冷間圧延温度と冷
間圧延時のロール出側張力の制御は微細粒の生成のため
に必要な条件であり、ロール出側張力が25kgf/mm2 に満
たない場合は粒径2 〜20mmの粒の面積率が0.2 %未満で
あったり、微小粒の平均のβ角が1.5 °に満たない場合
が生じる。また、ロール出側張力が45kgf/mm2 を超える
とこのような微細粒の面積が10%を超えたり、微小粒の
平均のβ角が5.0 %を超えたりする場合が生じる。ま
た、圧延張力が25〜45kgf/mm2 の範囲であっても圧延温
度が150 ℃に満たない場合には集合組織の変化により微
細粒が生成し難い。したがって、この発明の微細粒に関
する条件を満たすためには、冷間圧延の際に1パス以上
を最高温度150 ℃以上、ロール出側張力25〜45kgf/mm2
とする必要がある。
上記の微細粒を生成させるためには、上述のように圧延
張力を適正に制御する方法の他に、脱炭焼鈍板にショッ
トブラスト処理を施して微小歪を加える方法がある。脱
炭焼鈍板に微小剛体を衝突させることにより、鋼板に局
所的に歪が付与されて仕上げ焼鈍の初期に微小粒が発生
し、粒径2 〜20の微小粒を生成させることが可能であ
る。
時間以上)鋼板中の含まれるAl、N、S、Se等の不純物
を除去し、ヒステリシス損を改善することにより低鉄損
化を図るための条件として、仕上げ焼鈍では二次再結晶
終了後に、1130℃以上、5 時間以上が必要である。
n:0.065 %、Se:0.025 %、Al:0.025 %、N:0.009
0%、Mo:0.025 %、Sb:0 〜0.05%、Bi:0 〜0.05%
およびAs:0 〜0.05%を含有し残部が主としてFeからな
るけい素鋼スラブ20本(記号1A〜1T)を1450℃の温度に
誘導加熱したのち、1000℃以上の温度域で熱間圧延して
板厚:2.4mmの熱延板とした。この熱延板を1050℃・40
秒間、窒素中にて熱延板焼鈍してから一次冷間圧延して
板厚:1.7 mmの冷延板とした。続いて、中間焼鈍(1000
℃・2 分間、湿水素中)を施したのち、二次冷間圧延を
施して0.23mmの最終冷延板厚とした。二次冷間圧延の最
終5 パスは鋼板温度:250 ℃にて圧延を行い、最終5パ
スのロール出側での圧延張力を20〜50kgf/mm2 、定常部
での圧延温度を50〜250 ℃とした。
たのち、MgO を主成分とした焼鈍分離剤を塗布してか
ら、コイルに巻き取り、1200℃の温度の最終仕上げ焼鈍
を行った。最終仕上げ焼鈍終了後は、鋼板にコロイダル
シリカおよび燐酸マグネシウムを主成分とする絶縁コー
ティングを施した。
スタイン試験片を採取し、鉄損W17/ 50および磁束密度B8
を測定した。また、鋼帯全幅にわたる試片を採取し、マ
クロエッチングを施して二次再結晶粒を顕にして画像解
析により各二次再結晶粒の形態を測定するとともに、ラ
ウエ法により各二次再結晶粒の結晶方位を測定した。さ
らに、製品板の地鉄成分を湿式分析した。
板製品の地鉄成分、二次再結晶粒形態、結晶方位および
磁気特性(磁束密度B8、鉄損W17/50)の調査結果をまと
めて示す。
に適合する適合例は、磁区細分化処理を施さない方向性
電磁鋼板であるにもかかわらず、いずれも極めて優れた
磁気特性を有していることが分かる。
Mn:0.068 %、Se:0.023 %、Al:0.022 %、N:0.00
85%、Mo:0.020 %、Sb:0.05%およびBi:0.04%を含
有し残部が主としてFeからなるけい素鋼スラブ15本(記
号2A〜2P)を1450℃の温度に誘導加熱したのち、900 ℃
以上の温度域で熱間圧延して板厚:2.4 mmの熱延板とし
た。この熱延板を1050℃・40秒間、窒素中にて熱延板焼
鈍してから1次冷間圧延して板厚:1.7 mmの冷延板とし
た。続いて、中間焼鈍(1000℃・2 分間、湿水素中)を
施したのち、二次冷間圧延を施して0.23mmの最終冷延板
厚とした。この二次冷間圧延の最終5 パスは鋼板温度:
250 ℃とし、最終5 パスの圧延張力を20kg/mm2 (記号
2A)、40kg/mm2 (2B〜20)、50kg/mm2 (記号2P) の
3 水準とした。
面(片面)に圧延直角方向と15゜をなす方向に延びる線
状の溝を形成させた。すなわち、記号2C,2D,2E,およ
び2Fから製造された冷延コイルについては溝深さ:5 μ
m 〜25μm 、溝幅:50μm 、溝間隔:4 mmとし、記号2
G,2H,2Iおよび2Jについては溝深さ:12μm 、溝幅:1
0〜400 μm 、溝間隔:5 mmとし、記号2K,2L,2M,2
N,2Oおよび2Pについて溝深さ:18μm 、溝幅:100 μm
、溝間隔:0.5 〜5 mmとした。また、記号2A,2Bには
溝を形成させなかった。
たのち、MgO を主成分とした焼鈍分離剤を塗布してか
ら、コイルに巻き取り、1200℃の温度で最終仕上げ焼鈍
を行った。最終仕上げ焼鈍終了後は、鋼板にコロイダル
シリカおよび燐酸マグネシウムを主成分とする絶縁コー
ティングを施した。
スタイン試験片を採取し、鉄損W17/ 50、磁束密度B8を測
定した。また、鋼帯全幅にわたる試片を採取し、マクロ
エッチングを施して二次再結晶粒を顕にして画像解析に
より各二次再結晶粒の形態を測定するとともに、ラウエ
法により各結晶粒の結晶方位を測定した。また、製品板
の地鉄成分を湿式分析した結果、製品板地鉄中にSb:0.
04%、Bi:0.02%が残留していた。
形状や二次再結晶粒形態、結晶方位および磁気特性(磁
束密度B8、鉄損W17/50)の調査結果をまとめて示す。
る適合例はいずれも、極めて優れた磁気特性を有してい
て、更に、第2発明に適合する条件(2D,2E,2
F,2H,2L,2N,2O)では、特に低い鉄損値が
得られている。
Mn:0.065 %、Se:0.025 %、Al:0.025 %、N:0.00
90%、Mo:0.025 %、Sb:0 〜0.05%、Bi:0 〜0.05%
およびAs:0 〜0.05%を含有し残部が主としてFeからな
るけい素鋼スラブ15本(記号3A〜3P)を1450℃の温度に
誘導加熱したのち、950 ℃以上の温度域で熱間圧延して
板厚:2.4mmの熱延板とした。この熱延板を1050℃・40
秒間、窒素中にて熱延板焼鈍してから1次冷間圧延して
板厚:1.7 mmの冷延板とした。続いて、中間焼鈍(1000
℃・2 分間、湿水素中)を施したのち、二次冷間圧延を
施して0.23mmの最終冷延板厚とした。二次冷間圧延の最
終4 パスは鋼板温度:200 ℃にて圧延を行った。続い
て、850 ℃・2 分間の脱炭焼鈍を施した。
および3Pの脱炭焼鈍板に対してはショットブラストによ
る歪導入処理を行った。さらに記号3Pのコイルについて
は粒径:2 mm未満の微細粒を人工的に生成させるため、
圧延方向、圧延直角方向にそれぞれ10mmピッチで格子状
に放電処理を行った。残りの他の鋼帯にはショットブラ
ストによる処理を行わなかった。次にMgO を主成分とし
た焼鈍分離剤を塗布してからコイルに巻き取り、1200℃
の温度で最終仕上げ焼鈍を行った。次に仕上げ焼鈍後の
鋼板から硫酸酸洗によりフォルステライト被膜を除去し
たのち電解により表面を鏡面化し、続いて燐酸系の張力
付与絶縁コーティングを施した。
スタイン試験片を採取し、鉄損W17/ 50、磁束密度B8を測
定した。また、鋼帯全幅にわたる試片を採取し、マクロ
エッチングを施して二次再結晶粒を顕にして画像解析に
より各二次再結晶粒の形態を測定するとともに、ラウエ
法により各結晶粒の結晶方位を測定した。さらに、製品
板の地鉄成分を湿式分析した。
の地鉄成分、二次再結晶粒形態、結晶方位および磁気特
性(磁束密度B8、鉄損W17/50)の調査結果をまとめて示
す。
る適合例はいずれも、極めて優れた磁気特性を有してい
ることが分かる。
Mn:0.07%、Se:0.025 %、Al:0.024 %、N:0.0090
%、Mo:0.025 %、As:0.05%およびBi:0.04%を含有
し残部が主としてFeからなるけい素鋼スラブ8 本(記号
4A〜4H)を1450℃の温度に誘導加熱したのち、1000℃以
上の温度域で熱間圧延して板厚:2.4 mmの熱延板とし
た。この熱延板を1050℃・40秒間、窒素中にて熱延板焼
鈍してから1次冷間圧延して板厚:1.7 mmの冷延板とし
た。続いて、中間焼鈍(1000℃・2 分間、湿水素中)を
施したのち、二次冷間圧延を施して0.23mmの最終冷延板
厚とした。この二次冷間圧延の最終5 パスの前に350 ℃
・3分間の時効処理を行いかつ二次冷間圧延の最終4 パ
スの鋼板温度を200 ℃とした。続いて、記号4E,4F,4G
および4Hについてはレジストエッチングにより鋼板表面
(片面)に圧延方向と85゜をなす方向に延びる深さ25μ
m 、幅:100 μm 、間隔:1.5 mmの線状の溝を形成させ
た。その他の鋼帯には線状溝を形成させなかった。
たのち、記号4B,4D,4Fおよび4Hに対してはショットブ
ラフトによる歪導入処理を行った。その後、記号4C,4
D,4Gおよび4HについてはAl2O3 を主成分とした焼鈍分
離剤を塗布した。また、記号4A,4B,4Eおよび4FにはMg
O を主成分とする焼鈍分離剤を塗布した。焼鈍分離剤塗
布後の鋼帯をコイルに巻き取り1200℃の温度の最終仕上
げ焼鈍を行った。この最終仕上げ焼鈍では850 ℃・20時
間の温度保定による二次再結晶核生成処理を施した。
た記号4C,4D,4Gおよび4Hにはフォルステライトは形成
されておらず、フォルステライトが形成された場合に比
べて地鉄表面が平滑であった。最終仕上げ焼鈍終了後の
鋼板に、燐酸系の張力付与絶縁コーティングを施した。
スタイン試験片を採取し、鉄損W17/ 50、磁束密度B8を測
定した。また、鋼帯全幅にわたる試片を採取し、マクロ
エッチングを施して二次再結晶粒を顕にして画像解析に
より各二次再結晶粒の形態を測定するとともに、ラウエ
法により各結晶粒の結晶方位を測定した。さらに、製品
板の地鉄成分を湿式分析した結果、製品板地鉄中にAs:
0.04%、Bi:0.01%が残留していた。
再結晶粒形態、結晶方位および磁気特性(磁束密度B8、
鉄損W17/50)の調査結果をまとめて示す。
例は、いずれも極めて優れた磁気特性を有している。特
に、線状溝なしの場合(4A〜4D)のなかでは、フォルス
テライト被膜がない4Dが特に低い鉄損値を実現してい
る。線状溝ありの場合(4E〜4H)のなかでは、フォルス
テライト被膜がない4Hが特に低い鉄損値を実現してい
る。
特定した上で、圧延直角方向の長さが60mm以上の二次再
結晶の面積率、および微小再結晶に関し、粒径が2 〜20
mmの結晶粒の面積率およびその方位を特定する方向性電
磁鋼板であって、従来では磁区細分化処理なしで低鉄損
を安定して得ることが困難であった高磁束密度(B8≧1.
96T )方向性電磁鋼板において、磁区細分化処理を施さ
なくとも安定して低鉄損値が得られる。さらに、鋼板表
面に溝を形成することによる磁区細分化や鋼板表面の平
滑化、あるいはこれらの複合により、極めて低鉄損値の
電磁鋼板が得られる。
る。
る。
向の最大長さの平均値と鋼板面内の局所磁束密度の不均
一度との関係のグラフである。
とする圧延直角方向最大長さが60mm以上の二次再結晶粒
が鋼板全体に占める割合と鋼板面内での局所磁束密度の
不均一度との関係を示すグラフである。
晶粒が鋼板全体に占める割合、粒径:2 〜20mmの結晶粒
の平均β角および粒径:2 〜20mmの結晶粒が鋼板全体に
占める割合と鉄損W17/50との関係を示すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 Si:2.0 〜5.0 mass%を含み、かつ、A
s、SbおよびBiのうちの1種または2種以上の合計:0.0
003〜0.1 mass%を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物の成分組成を有し、二次再結晶粒の結晶方位[00
1]の圧延方向からのずれ角の平均値が4゜以内の方向
性電磁鋼板であって、 圧延直角方向の最大長さ:60mm以上の二次再結晶粒が鋼
板面積に対する面積率で85%以上を占め、 粒径:2 mm以上20mm以下の範囲の結晶粒が、鋼板面積に
対する面積率で0.2 %以上、10%以下の範囲を占め、か
つ、 粒径:2 mm以上20mm以下の範囲の結晶粒の結晶方位[0
01]が鋼板面となす角の平均値(面積平均値)が1.5
゜以上、5.0 ゜以下の範囲である磁気特性に優れる方向
性電磁鋼板。 - 【請求項2】 成分組成として、さらに Mn:0.03〜0.20mass%、 Mo:0.005 〜0.20mass%、 Cu:0.01〜0.30mass%、P:0.010 〜0.030 mass%および Sn:0.010 〜0.10mass% から選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に
記載の磁気特性に優れる方向性電磁鋼板。 - 【請求項3】 圧延直角方向と30゜以内の角度をなし、
深さ:10μm 以上、幅:20μm 以上300 μm 以下の線状
溝が互いに間隔:1mm以上30mm以下離れて該鋼板表面上
に存在する請求項1または2に記載の磁気特性に優れる
方向性電磁鋼板。 - 【請求項4】 Si:2.0 〜5.0 mass%、Al:0.010 〜0.
050 mass%およびN:0.005 〜0.015 mass%と、S:0.
005 〜0.020 mass%およびSe:0.01〜0.04mass%の1種
または2種とを含み、さらにAs、SbおよびBiのうちの1
種または2種以上を合計で0.0003〜0.1 mass%で含有
し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有する、
けい素鋼スラブを1250℃以上に加熱し、900 ℃以上の温
度域で熱間圧延を施して熱延板とした後、800 〜1100℃
で20〜300 秒間熱延板焼鈍を施し、次いで該熱延板に80
0 〜1150℃,20〜300 秒の中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延を、該冷間圧延の複数パスのうち1 回以上のパス
が鋼板温度150 ℃以上、かつロール出側での鋼板張力が
25〜45kgf/mm2 の条件で施した後、800 〜900 ℃で30〜
200 秒間の脱炭焼鈍を施し、次いで焼鈍分離剤を塗布し
てから、最高温度1130℃以上、5 時間以上の最終仕上げ
焼鈍を施した後、絶縁被膜をコーティングする一連の工
程からなる方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 Si:2.0 〜5.0 mass%、Al:0.010 〜0.
050 mass%およびN:0.005 〜0.015 mass%と、S:0.
005 〜0.020 mass%およびSe:0.01〜0.04mass%の1種
または2種とを含み、さらにAs、SbおよびBiのうちの1
種または2種以上を合計で0.0003〜0.1 mass%で含有
し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有する、
けい素鋼スラブを1250℃以上に加熱し、900 ℃以上の温
度域で熱間圧延を施して熱延板とした後、800 〜1100℃
で20〜300 秒間熱延板焼鈍を施し、次いで該熱延板に80
0 〜1150℃,20〜300 秒の中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延を、該冷間圧延の複数パスのうち1 回以上のパス
が鋼板温度150 ℃以上の条件で施した後、800 〜900 ℃
で30〜200 秒間の脱炭焼鈍を施し、次いで鋼板表面をシ
ョットブラスト処理した後、焼鈍分離剤を塗布してか
ら、最高温度1130℃以上、5時間以上の最終仕上げ焼鈍
を施した後、絶縁被膜をコーティングする一連の工程か
らなる方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 成分組成として、さらに Mn:0.03〜0.20mass%、 Mo:0.005 〜0.20mass%、 Cu:0.01〜0.30mass%、 P:0.010 〜0.030 mass%および Sn:0.010 〜0.10mass% から選ばれる1種または2種以上を含有する請求項4又
は5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 請求項4、5又は6において、冷間圧延
後、脱炭焼鈍前の冷延板表面に、圧延直角方向と30°以
内の角度をなし、深さ10μm 以上、幅20μm 以上300 μ
m 以下の線状溝を互いに間隔:1 mm以上離してなる線状
溝群を付与する工 程を施す方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 請求項4、5又は6において、焼鈍分離
剤の塗布の際、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を用
いる方向性電磁鋼板の製造方法。
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