JP3383002B2 - レリーフ印刷物およびその作成方法 - Google Patents

レリーフ印刷物およびその作成方法

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JP3383002B2 JP13300493A JP13300493A JP3383002B2 JP 3383002 B2 JP3383002 B2 JP 3383002B2 JP 13300493 A JP13300493 A JP 13300493A JP 13300493 A JP13300493 A JP 13300493A JP 3383002 B2 JP3383002 B2 JP 3383002B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレリーフ印刷物およびそ
の作成方法、特に、油彩画やアクリル画などにおける絵
の具の盛り上がり感を容易に表現することのできるレリ
ーフ絵画およびその作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】油彩画やアクリル画は、キャンバス上に
絵の具の盛り上がりが生じるために、水彩画などと異な
った独特の趣を感じさせる。このため、油彩画などを通
常の印刷によって複製すると、複製物は盛り上がりに欠
けるため、もとの油彩画に比べて薄っぺらな印象を与え
てしまうことになる。そこで、もとの油彩画に近い凹凸
感を表現できる複製物として、レリーフ絵画が作成され
ている。このレリーフ絵画は、通常の印刷方法によって
用紙上に油彩画などの絵柄を印刷した後、表面に凹凸が
形成された金属板を押圧して、用紙自身を撓ませて凹凸
を形成するようにしたものである。用紙自身が凹凸をも
つため、平面的に印刷された絵柄が部分的に浮き上がっ
て見え、もとの油彩画の盛り上がり感を表現することが
可能になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
のレリーフ絵画は、金属板による押圧力で用紙に凹凸を
形成させたものである。したがって、絵画の絵柄を印刷
するための通常の印刷版の他に、凹凸を形成するための
レリーフ版を用意する必要がある。通常は、このレリー
フ版に基づいて金属板に対するエッチング加工を施し、
レリーフ版上の絵柄を金属板へと転写することになる。
ところが、このレリーフ版の作成が非常に手間のかかる
作業になる。すなわち、熟練した作業者が、もとの油彩
画を見ながら、どの部分を凸にし、どの部分を凹にする
かを決め、手作業によりレリーフ版を描き起こしてゆく
必要がある。したがって、もとの油彩画のタッチを忠実
に表現するには、このレリーフ版の作成作業だけで多大
な時間を費やしてしまうことになる。
【0004】一方、近年、絵画に対する関心は俄かに高
まってきており、リトグラフなどの需要が増えつつあ
る。このため、短時間に、労力をかけることなしに商業
ベースでレリーフ絵画を供給することが望まれている。
また、絵画に限らず、写真などの印刷物についても容易
にレリーフ印刷を行うことのできる技術が望まれてい
る。
【0005】そこで本発明は、商業ベースでの作成が容
易なレリーフ印刷物およびその作成方法を提供すること
を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】(1) 本願第1の発明
は、絵柄が印刷された印刷層と、この印刷層の表面に形
成された透明樹脂層と、によりレリーフ印刷物を構成
し、絵柄の濃度を複数段階に分けたときに、より濃度の
濃い段階に属する絵柄部分に形成された透明樹脂層の厚
みがより厚くなるように、透明樹脂層が絵柄の濃度値に
応じた厚みをもった段差構造をとるようにしたものであ
る。
【0007】(2) 本願第2の発明は、絵柄が印刷され
た印刷層と、この印刷層の表面に形成された透明樹脂層
と、によりレリーフ印刷物を構成し、絵柄の濃度を複数
段階に分けたときに、より濃度の薄い段階に属する絵柄
部分に形成された透明樹脂層の厚みがより厚くなるよう
に、透明樹脂層が絵柄の濃度値に応じた厚みをもった段
差構造をとるようにしたものである。
【0008】(3) 本願第3の発明は、上述の第1また
は第2の発明に係るレリーフ印刷物において、絵柄が複
数種類のインキにより印刷されており、透明樹脂層の厚
みが、特定のインキの濃度値に基づいて決定されている
ようにしたものである。
【0009】(4) 本願第4の発明は、レリーフ印刷物
の作成方法において、階調をもった画像に基づいて印刷
版を作成し、この印刷版を用いて階調をもった絵柄を印
刷する第1の段階と、所定の基準濃度値を設定し、この
基準濃度値よりも高い濃度値をもった領域を盛り上げ領
域とするレリーフ版を作成する第2の段階と、第1の段
階により得られる印刷物の全面にベース透明樹脂層を形
成する第3の段階と、レリーフ版を用いて、ベース透明
樹脂層の上面における盛り上げ領域の部分にレリーフ透
明樹脂層を形成する第4の段階と、を行うようにしたも
のである。
【0010】(5) 本願第5の発明は、レリーフ印刷物
の作成方法において、階調をもった画像に基づいて印刷
版を作成し、この印刷版を用いて階調をもった絵柄を印
刷する第1の段階と、所定の基準濃度値を設定し、この
基準濃度値よりも低い濃度値をもった領域を盛り上げ領
域とするレリーフ版を作成する第2の段階と、第1の段
階により得られる印刷物の全面にベース透明樹脂層を形
成する第3の段階と、レリーフ版を用いて、ベース透明
樹脂層の上面における盛り上げ領域の部分にレリーフ透
明樹脂層を形成する第4の段階と、を行うようにしたも
のである。
【0011】(6) 本願第6の発明は、上述の第4また
は第5の発明に係るレリーフ印刷物の作成方法におい
て、第2の段階で、複数の基準濃度値を設定することに
より複数のレリーフ版を作成し、第4の段階で、複数の
レリーフ版を用いることにより複数のレリーフ透明樹脂
層を順次重ねて形成するようにしたものである。
【0012】(7) 本願第7の発明は、レリーフ印刷物
の作成方法において、 階調をもったカラー画像に基づい
て、複数の分色印刷版を作成し、各分色印刷版ごとに異
なる色のインキを用いて階調をもったカラー絵柄を印刷
する第1の段階と、複数の分色印刷版のそれぞれについ
て、所定の基準濃度値を設定し、各分色印刷版につい
て、基準濃度値よりも高い濃度値をもった領域をそれぞ
れ対象領域と定め、これら対象領域を合成することによ
り得られる領域を盛り上げ領域とするレリーフ版を作成
する第2の段階と、第1の段階により得られる印刷物の
全面にベース透明樹脂層を形成する第3の段階と、レリ
ーフ版を用いて、ベース透明樹脂層の上面における盛り
上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層を形成する第4の
段階と、を行うようにしたものである。
【0013】(8) 本願第8の発明は、レリーフ印刷物
の作成方法において、 階調をもったカラー画像に基づい
て、複数の分色印刷版を作成し、各分色印刷版ごとに異
なる色のインキを用いて階調をもったカラー絵柄を印刷
する第1の段階と、複数の分色印刷版のそれぞれについ
て、所定の基準濃度値を設定し、各分色印刷版につい
て、基準濃度値よりも低い濃度値をもった領域をそれぞ
れ対象領域と定め、これら対象領域を合成することによ
り得られる領域を盛り上げ領域とするレリーフ版を作成
する第2の段階と、第1の段階により得られる印刷物の
全面にベース透明樹脂層を形成する第3の段階と、レリ
ーフ版を用いて、ベース透明樹脂層の上面における盛り
上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層を形成する第4の
段階と、を行うようにしたものである。
【0014】(9) 本願第9の発明は、上述の第7また
は第8の発明に係るレリーフ印刷物の作成方法におい
て、カラー画像上の絵柄を複数の閉領域に分割し、各閉
領域ごとに、1つの分色印刷版または複数の分色印刷版
を選択し、選択した分色印刷板についての対象領域を合
成することによりレリーフ版を作成するようにしたもの
である。
【0015】(10) 本願第10の発明は、上述の第7〜
第9の発明に係るレリーフ印刷物の作成方法において、
第2の段階で、複数の基準濃度値を設定することにより
1つの分色印刷版について複数のレリーフ版を作成し、
第4の段階で、複数のレリーフ版を用いることにより複
数のレリーフ透明樹脂層を順次重ねて形成するようにし
たものである。
【0016】(11) 本願第11の発明は、上述の第1〜
第10の発明に係るレリーフ印刷物またはその作成方法
において、透明樹脂層として紫外線硬化型樹脂、熱硬化
型樹脂、または電子線硬化型樹脂を用いるようにしたも
のである。 (12) 本願第12の発明は、上述の第4〜第10の発明
に係るレリーフ印刷物の作成方法において、透明樹脂層
の形成工程を、スクリーン印刷によって行い、ベース透
明樹脂層の形成工程では、レリーフ透明樹脂層の形成工
程に比べてメッシュの細かいスクリーンを用いるように
したものである。 (13) 本願第13の発明は、上述の第4〜第10の発明
に係るレリーフ印刷物の作成方法において、透明樹脂層
の形成工程を、スクリーン印刷によって行い、ベース透
明樹脂層のための樹脂としては、レリーフ透明樹脂層の
ための樹脂よりも硬化前の粘性率が低い樹脂を用いるよ
うにしたものである。
【0017】
【作 用】本発明に係るレリーフ印刷物の第1の特徴
は、絵柄が印刷された印刷層の表面に、凹凸をもった透
明樹脂層が形成されている点にある。従来のレリーフ印
刷物では、用紙自身に凹凸加工を施していた。これに対
し、本発明のレリーフ印刷物では、用紙自身は平坦にし
ておき、その表面に形成された透明樹脂層によって凹凸
表現を行っている。そして、本発明に係るレリーフ印刷
物の第2の特徴は、透明樹脂層の厚みを絵柄の濃度値に
応じて変えるようにした点にある。別言すれば、透明樹
脂層の厚みは、用紙上に印刷された絵柄に対応したもの
になっている。
【0018】本願発明者は、このような2つの特徴を兼
ね備えたレリーフ印刷物によって、もとの原画の凹凸の
タッチをかなり忠実に表現できることを見出だしたので
ある。透明樹脂層は、透明な層であるから、この絵画の
観察者は、透明樹脂層を通して平面上に印刷された絵柄
を見ることになる。もし、凹凸形状をもった透明樹脂層
の表面に絵柄が印刷されていたとしたら、油彩画のよう
な原画の凹凸のタッチが表現されるであろうことは容易
に想像できる。ところが、透明樹脂層の奥に印刷された
平面的な絵柄が、あたかも凹凸をもった透明樹脂層の表
面に印刷されているかのように見える現象を本願発明者
は発見したのである。したがって、もとの原画が油彩画
であれば、透明樹脂層の盛り上がりは、その下地に印刷
された絵柄の色の油絵の具が盛り上がっているように見
えるのである。
【0019】このような現象についての報告は、本願発
明者の知る限り、これまでになされていない。したがっ
て、このような現象を理論的に説明することは現時点で
は困難であるが、本願発明者は、人間のパターン認識機
能に基づく錯覚によるものであろうと考えている。この
ような現象は、上述した2つの特徴を兼ね備えたレリー
フ印刷物でなければ起こらない。すなわち、「平坦な印
刷面の上に凹凸をもった透明樹脂層を形成した」という
第1の特徴だけでは不十分であり、「透明樹脂層の厚み
が、印刷された絵柄に対応している」という第2の特徴
が備わって初めてこのような現象が生じるのである。
【0020】このようなレリーフ印刷物を作成すること
は、印刷の手法を用いれば容易に行うことができる。す
なわち、まず第1の段階において、通常の印刷方法によ
り、平坦な用紙上に階調をもった画像を印刷する。続い
て、第2の段階では、「盛り上がった部分」を示すレリ
ーフ版を作成するが、これは、階調をもった画像に対す
る二値化を行うことにより容易に作成できる。たとえ
ば、階調画像が0〜100%の濃度値によって表現され
ていた場合、基準となる濃度値を50%と設定し、濃度
値50%以上の領域と、濃度値50%未満の領域と、に
分け、濃度値50%以上の領域を「盛り上がった部分」
とするレリーフ版を作成すればよい。このように、もと
の階調画像を二値化することによりレリーフ版を作成す
れば、もとの階調画像の絵柄に対応した所定の領域が盛
り上がることになり、上述した第2の特徴を満足させる
ことができる。続く、第3の段階において、印刷面の全
面にベース透明樹脂層を形成し、第4の段階において、
レリーフ版を用いて部分的にレリーフ透明樹脂層を形成
すれば、所望のレリーフ印刷物を作成することが可能に
なる。
【0021】
【実施例】§1. 本発明に係るレリーフ絵画の基本構造 以下、本発明を図示する実施例に基づいて説明する。こ
こでは、絵画を題材にとったレリーフ絵画の実施例を述
べることにする。図1(a) は、本発明の一実施例に係る
レリーフ絵画の上面図、図1(b) は図1(a) に示すレリ
ーフ絵画を切断線X−Xで切った側断面図である。図1
(a) に示すように、このレリーフ絵画には、二重円のパ
ターンと三角形のパターンとからなる絵柄が描かれてい
る。ここでは、このような絵柄が0〜100%の濃度値
によって表現されているものとし、図1(a) に示す例で
は、二重円パターンの外側の円内および三角形パターン
内の濃度値が60%、二重円パターンの内側の円内の濃
度値が90%であるものとして以下の説明を続ける。
【0022】図1(b) に示されているように、このレリ
ーフ絵画は、印刷層10と透明樹脂層20とによって構
成されている。印刷層10は、用紙11とインキ層12
とによって構成され、透明樹脂層20は、ベース透明樹
脂層21とレリーフ透明樹脂層22とによって構成され
ている。インキ層12は、図1(a) に示す絵柄を印刷す
ることによって形成される層であり、実際の寸法は他の
層に比べて非常に薄くなるが、ここでは説明の便宜上、
実際の寸法比を無視して描いてある。この実施例の場
合、濃度値60%のパターンの領域には、網点密度60
%で網点印刷がなされており、濃度値90%のパターン
の領域には、網点密度90%で網点印刷がなされている
ことになる。
【0023】ベース透明樹脂層21とレリーフ透明樹脂
層22とは、いずれも透明な樹脂からなる層で形成され
ている。後述するように、この透明な樹脂としては、紫
外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂など
を用いるようにすると、印刷の手法を利用して形成する
ことができ便利である。ベース透明樹脂層21は、用紙
11全面に形成されているのに対し、レリーフ透明樹脂
層22は、インキ層12によって印刷された絵柄の濃度
値に基づく特定の領域にのみ形成されており、しかも濃
度値によって厚みが異なっている。
【0024】透明樹脂層20の厚みと絵柄との関係は、
図1(a) の上面図に示す絵柄パターンと、図1(b) の側
断面図に示す透明樹脂層20とを対比してみればよくわ
かる。濃度値90%の領域に対応する透明樹脂層20は
最も厚く、濃度値60%の領域に対応する透明樹脂層2
0は次に厚く、濃度値0%の領域に対応する透明樹脂層
20は最も薄い(ベース透明樹脂層21のみからな
る)。このように、透明樹脂層20の厚みは、絵柄の濃
度値に応じたものとなっている。
【0025】さて、図1(a) に示す絵柄パターンは、濃
度値0%,60%,90%の3つの領域からなる単純な
パターンである。ところが、実際の油彩画やアクリル画
などの階調画像では、濃度値のバリエーションはより多
くなるのが一般的である。理論的には、濃度値が無段階
に変化した場合、透明樹脂層20の厚みも無段階に変化
させることは可能であるが、このように無段階に厚みが
変化する透明樹脂層20を実際に形成することは容易で
はない。後述するように、透明樹脂層20は印刷の手法
で形成されており、厚みのバリエーションが多くなれば
なるほど、印刷回数は増えることになる。そこで、実際
には、所定の基準濃度値を設定し、この基準濃度値を境
界として、0〜100%の濃度値レンジを複数の範囲に
分け、濃度値がどの範囲に属するかによって、絵柄を複
数の閉領域に分割し、同じ閉領域については同じ厚みの
透明樹脂層を形成するとよい。
【0026】たとえば、図2に示すような絵柄を考え
る。この絵柄は図1(a) に示す絵柄よりも細かな階調を
もっており、濃度値のバリエーションは、0%,20
%,30%,55%,60%,65%,70%,75
%,80%,100%の10段階である。このような場
合、透明樹脂層20の厚みを10段階に変化させること
も可能であるが、印刷回数が増えるために、作成作業が
煩雑になる。そこで、たとえば、基準濃度値として50
%および80%の2つを設定し、0%≦x<50%とな
るような第1の濃度値範囲、50%≦x<80%となる
ような第2の濃度値範囲、80%≦x≦100%となる
ような第3の濃度値範囲、を決め、同一の濃度値範囲に
所属する閉領域を定義すれば、二重円パターンの外側の
円内および三角形パターン内はいずれも第2の濃度値範
囲に所属し、二重円パターンの内側の円内は第3の濃度
値範囲に所属し、それ以外の部分はいずれも第1の濃度
値範囲に所属することになり、結局、図1(a) に示す絵
柄と同一のパターンとして扱うことができる。この場
合、同一の閉領域には、同一の厚みをもった透明樹脂層
が形成されることになる。
【0027】さて、図1(b) に示すような構造をもった
レリーフ絵画を表面から観察すると、透明樹脂層20を
通して、下地となる平坦なインキ層12の絵柄が見える
ことになる。ところが、前述した錯覚現象により、イン
キ層12はあたかも透明樹脂層20の表面に形成されて
いるように見えるのである。すなわち、もとの原画が油
彩画であれば、透明樹脂層20の盛り上がりは、実際の
油絵の具の盛り上がりのように見えるのである。しか
も、全体的に均一な艶感が得られるため、本物の油彩画
やアクリル画のように極めて自然な印象を与える絵画と
なる。これは、盛り上がったレリーフ透明樹脂層22の
表面と、平坦なベース透明樹脂層21の表面と、が同一
の艶感を与えるためである。このように、ベース透明樹
脂層21は、全体的に均一な艶感を与えるために重要な
働きをしている。
【0028】以上、モノクロのレリーフ絵画についての
説明を行ったが、実際には、油彩画やアクリル画はカラ
ーの階調画像であり、本発明はカラーのレリーフ絵画に
適用される場合の方が多いものと思われる。この場合、
インキ層12は複数種類のインキ(通常は、黄色Y,マ
ゼンタM,シアンCの三原色に相当する3種類のイン
キ、あるいは、これに墨Kを加えた4種類のインキ)に
より印刷されることになるが、透明樹脂層20の厚み
は、各閉領域における特定のインキの濃度値に基づいて
決定するようにすればよい。たとえば、ある閉領域につ
いては黄色Yの濃度値に基づいて厚みを決定し、別な閉
領域についてはマゼンタMの濃度値に基づいて厚みを決
定するようにする。このようなカラーのレリーフ絵画の
取扱い方については、後の作成方法の説明において詳述
する。
【0029】§2. 本発明に係るレリーフ絵画の作成方法 続いて、本発明に係るレリーフ絵画の作成方法を説明す
る。図3は、この作成方法の基本手順を示す流れ図であ
る。この流れ図に示されているように、この作成方法
は、大きく分けてステップS1〜S4の4つの段階から
構成される。ここでは、説明の便宜上、はじめに、モノ
クロのレリーフ絵画を作成する実施例から説明する。
【0030】まず、ステップS1で、階調画像に基づい
て印刷版を作成し、階調をもった絵柄を印刷する。ここ
で、階調画像とは、レリーフ絵画のもとになる油彩画や
アクリル画など、通常は画家によって作成される原画で
ある。また、印刷版とは、用紙11の上にインキ層12
を形成する印刷に用いるための版をさす。たとえば、図
2に示すような絵柄から構成される原画が用意された場
合、各閉領域ごとに、それぞれの%値で示されている密
度をもった網点が形成された印刷版が作成される。そし
て、この印刷版を用いて、用紙11に対する印刷が行わ
れる。この印刷はどのような方法で行ってもよいが、本
実施例では、ごく一般的なオフセット印刷を行ったもの
として、以下の説明を続けることにする。オフセット印
刷を行った結果、図2に示すような階調画像が用紙11
上のインキ層12として形成されることになる。こうし
て、ステップS1では、図1(b) に示す印刷層10が作
成される。
【0031】続くステップS2では、基準濃度値が設定
され、階調画像を二値画像に変換し、これによりレリー
フ版の作成が行われる。上述の例では、2つの基準濃度
値、50%および80%の設定を行ったが、ここでは、
まず単一の基準濃度値50%の設定を行った場合を説明
する。基準濃度値をどの値に設定するかは、作業者の判
断に委ねられる。この基準濃度値の設定は、「階調画像
内の絵柄のどの部分を盛り上げるか」という匙加減を決
める要素となる。したがって、原画に近い盛り上げ状態
が再現できるかどうかは、この基準濃度値の設定により
左右されることになる。図2に示す絵柄に対して、基準
濃度値を50%に設定し、この絵柄を濃度値50%未満
の領域と、50%以上の領域との2つの領域に分けれ
ば、図4に示すような二値画像が得られることになる。
モノクロのレリーフ絵画を作成する場合には、こうして
得られた二値画像をそのままレリーフ版31として用い
ることができる。図4に示す例では、ハッチングを施し
た領域が濃度値50%以上の領域、背景の白い領域が濃
度値50%未満の領域である。
【0032】次のステップS3では、ステップS1にお
いて印刷した絵柄の全面に、ベース透明樹脂層21を形
成する。すなわち、図5の側断面図に示すように、印刷
層10の上の全面に、ベース透明樹脂層21が形成され
ることになる。なお、透明樹脂として、紫外線硬化型樹
脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などを用いるよう
にすると、印刷の手法で透明樹脂層を形成することがで
き便利である。この実施例では、紫外線硬化型樹脂を用
い、シルクスクリーンを用いたスクリーン印刷で、透明
樹脂層の形成を行っている。ベース透明樹脂層21は、
全面に形成する必要があるため、全面にインキが浸透す
るベタ版を用いてスクリーン印刷を行うことになる。す
なわち、印刷層10の上面にシルクスクリーンからなる
ベタ版をのせ、その上に溶液状の紫外線硬化型樹脂を塗
布し、この溶液状の樹脂をインキの代わりに用いてスク
リーン印刷を行うのである。印刷後、ベタ版を取り除
き、印刷層10の上に一様に塗布されたベース透明樹脂
層21に紫外線を照射してこれを硬化させる。
【0033】最後に、ステップS4において、このベー
ス透明樹脂層21の上面に、レリーフ版31を用いて部
分的にレリーフ透明樹脂層22の形成を行う。図6の側
断面図は、図4に示すレリーフ版31をポジ版として用
いたスクリーン印刷により形成されたレリーフ透明樹脂
層22を示す。すなわち、図4にハッチングを施した領
域だけインクが浸透するようなシルクスクリーンを用意
し、溶液状の紫外線硬化型樹脂をインキ代わりに用いた
印刷を行い、紫外線照射により樹脂を硬化させれば、図
6に示す構造をもったレリーフ絵画が作成できる。
【0034】結局、図2に示す原画において、濃度値が
50%以上の領域だけが盛り上がったレリーフ絵画が作
成されたことになる。盛り上がり部分を少なくするに
は、基準濃度値の設定値を変えればよい。たとえば、図
2に示す絵柄に対して、基準濃度値を80%に設定し、
この絵柄を濃度値80%未満の領域と、80%以上の領
域との2つの領域に分ければ、図7に示すような二値画
像が得られることになる。そして、この二値画像をポジ
型のレリーフ版32として用いてステップS4の工程を
行えば、図8の側断面図に示す構造をもったレリーフ絵
画が作成される。図6に示すレリーフ絵画では、二重円
パターンと三角パターンとが盛り上がっていたが、図8
に示すレリーフ絵画では、二重円のうちの内側の円のパ
ターンだけが盛り上がっている。
【0035】図6に示す構造も図8に示す構造も、いず
れも透明樹脂層20は2段階の高さをもっている。これ
に対し、図1(b) に示す構造のように、透明樹脂層20
が3段階の高さをもったレリーフ絵画を作成するには、
図4に示すレリーフ版31と、図7に示すレリーフ版3
2との両方を用いて、ステップS4の工程を行えばよ
い。すなわち、まず、図4に示すレリーフ版31を用い
て透明樹脂層の印刷形成を行い、図6に示す構造を得
る。続いて、この図6に示す構造の上に、図7に示すレ
リーフ版32をのせ、再び透明樹脂層の印刷形成を行え
ば、図1(b) に示すように、3段階の高さをもった透明
樹脂層20を形成することができる。なお、用いるレリ
ーフ版の順序を逆にして、先に図7に示すレリーフ版3
2を用いた印刷を行い、その後に、図4に示すレリーフ
版31を用いた印刷を行っても、ほぼ同じ構造が得られ
る。ただし、このように順序を逆にすると、図9に示す
ように、先に形成した小さな領域の透明樹脂層(図に破
線で示す)の輪郭部分が、後に形成した大きな領域の透
明樹脂層によって潰され、段差が緩慢になる(図1(b)
と図9とを対比すると相違が理解できよう)。
【0036】なお、ステップS3およびS4におけるス
クリーン印刷に用いるシルクスクリーンとしては、ステ
ップS3では「220メッシュのシルクスクリーン」
(1インチ中に220本の糸が織り込まれているスクリ
ーン)を用い、ステップS4では「100メッシュのシ
ルクスクリーン」(1インチ中に100本の糸が織り込
まれているスクリーン)を用いるのが最適であった。す
なわち、ステップS3におけるベース透明樹脂層21の
形成に用いるシルクスクリーンは、ステップS4におけ
るレリーフ透明樹脂層22の形成に用いるシルクスクリ
ーンよりも、メッシュを細かくするのが好ましい。これ
は、ベース透明樹脂層21を形成する場合は、全面に均
一な印刷を行う必要があるため、細かいメッシュを用い
て均一な樹脂の塗布を行った方が適しており、レリーフ
透明樹脂層22を形成する場合には、部分的に盛り上げ
る印刷を行う必要があるため、粗いメッシュを用いて離
散的な樹脂の塗布を行った方が適しているからである。
また、用いる樹脂の硬化前の粘性率も両者で変えるのが
好ましい。すなわち、全面に均一な印刷を行う必要のあ
るベース透明樹脂層21としては粘性率の比較的低い樹
脂を用い、部分的に盛り上げる必要のあるレリーフ透明
樹脂層22としては粘性率の比較的高い樹脂を用いるの
が好ましい。なお、スクリーン印刷では、シルクスクリ
ーンの全面にインキとしての樹脂をヘラで延ばす作業を
行うため、実際に形成される透明樹脂層は、若干輪郭部
分が盛り上がった構造になる(図には示されていな
い)。また、原画が油彩画の場合には、光沢を出すのに
適したグロスインキの成分を含んだ樹脂を用いるのがよ
く、原画がアクリル画の場合には、光沢を抑えたマット
インキの成分を含んだ樹脂を用いるのがよい。
【0037】§3. 本発明に係るカラーレリーフ絵画の作成方法 以上、モノクロのレリーフ絵画を作成する方法について
説明してきたが、実際には、油彩画やアクリル画はカラ
ーの階調画像であり、本発明はカラーのレリーフ絵画に
適用される場合の方が多いものと思われる。カラーのレ
リーフ絵画を作成する方法は、上述したモノクロのレリ
ーフ絵画を作成する方法と、基本的な原理としては同じ
であるが、ここでは簡単な具体例を挙げて説明してお
く。
【0038】いま、図10(a) に示すような階調をもっ
たカラー画像Oが用意されている場合を考える。具体的
には、このカラー画像Oは、画家によって描かれた油彩
画である。カラーのレリーフ絵画を作成する手順も、や
はり図3の流れ図に示した4つの段階から構成される。
まず、ステップS1で、階調画像に基づいて印刷版を作
成し、階調をもった絵柄を印刷する。カラー画像につい
ての印刷版としては、通常、黄色Y,マゼンタM,シア
ンCの三原色に相当する3種類の分色印刷版、あるい
は、これに墨Kを加えた4種類の分色印刷版が用意され
る。ここでは、図10(a) に示す階調カラー画像Oに対
して、同図(b) 〜(d) に示すような3種類の分色印刷版
Py,Pm,Pcが作成されたものとする。ここで、各
分色印刷版Py,Pm,Pcは、それぞれ黄色Y,マゼ
ンタM,シアンCの三原色に対応する分色印刷版であ
り、いずれも階調をもった画像である。このような分色
印刷版は、原画となる階調カラー画像Oをスキャナ分解
することにより得ることができる。続いて、これら3枚
の分色印刷版Py,Pm,Pcと、黄色Y,マゼンタ
M,シアンCの3色のインキとを用いたオフセット印刷
により、階調カラー画像Oが用紙11上に印刷される。
【0039】続くステップS2では、黄色Y,マゼンタ
M,シアンCの各色ごとに、それぞれ基準濃度値が設定
され、各分色印刷版Py,Pm,Pc上の分色画像が分
色二値画像に変換される。基準濃度値は、各色について
同一の値を設定することも可能であるが、通常は、各色
ごとに最適な基準濃度値をそれぞれ別個に設定すること
になる。ここでは、たとえば、黄色Yについては70
%、マゼンタMについては40%、シアンCについては
50%、という基準濃度値がそれぞれ設定されたものと
する。そして、このような設定を行うことにより、図1
0(b) 〜(d) に示す分色印刷版Py,Pm,Pcに基づ
いて、図11(a) 〜(c) に示す分色二値画像Qy,Q
m,Qcが得られたものとする。すなわち、図11(a)
に示す分色二値画像Qyは、図10(b) に示す分色印刷
版Pyにおいて濃度値70%以上の領域をハッチングで
示したものに相当し、図11(b) に示す分色二値画像Q
mは、図10(c) に示す分色印刷版Pmにおいて濃度値
40%以上の領域をハッチングで示したものに相当し、
図11(c) に示す分色二値画像Qcは、図10(d) に示
す分色印刷版Pcにおいて濃度値50%以上の領域をハ
ッチングで示したものに相当する。
【0040】前述したモノクロのレリーフ絵画を作成す
る場合には、こうして作成した二値画像をそのままレリ
ーフ版として用いることができたが、カラーのレリーフ
絵画を作成する場合には、複数の分色二値画像が得られ
ることになるので、これらを合成して1枚のレリーフ版
を作成する作業を行う。この合成作業は、次のようにし
て行うことができる。すなわち、カラー画像上の絵柄を
複数の閉領域に分割し、各閉領域ごとに、1つの分色二
値画像、または、複数の分色二値画像から合成される合
成二値画像、を当てはめる作業を行えばよい。
【0041】これを具体例で示そう。たとえば、図10
に示すカラー画像Oを、図12(a)に示すように4つの
閉領域〜に分割する。そして、各閉領域ごとに、ど
の分色二値画像を当てはめるかを決めるのである。たと
えば、図12(b) に示すように、閉領域には分色二値
画像Qmを当てはめ、閉領域には分色二値画像Qyを
当てはめ、閉領域には分色二値画像QmとQcとの合
成二値画像(この例では、QmとQcとの図形論理和O
Rをとった画像)を当てはめ、閉領域には分色二値画
像Qcを当てはめることにしたとする。すると、この合
成作業の結果は図12(c) に示すようになり、結果的
に、同図(d) に示すようなレリーフ版Rが作成できるこ
とになる。このような作業は、具体的には、図11(a)
〜(c) に示す3枚の分色二値画像をポジフィルム版とし
て用意しておき、これらフィルム版の所望の箇所をはさ
みで切抜き、各切抜き片を図12(c) に示すように配置
すればよい。また、閉領域のように図形論理和をとる
必要がある場合には、ポジフィルム版を重ねて配置すれ
ばよい(この例の場合、Qmのフィルム版とQcのフィ
ルム版の領域の部分を重ねて置けばよい)。図12
(c) に示すような切り貼りができたら、これを写真撮影
すれば、同図(d) に示すようなレリーフ版Rが作成でき
る。
【0042】どのような閉領域分割を行い、各閉領域の
どの分色二値画像を当てはめるか、という判断は作業者
に委ねられる。作業者は、もとのカラー画像Oの絵柄を
頭に置きながら、どの部分を盛り上げたら効果的である
かを考え、どの部分にはどの分色二値画像を当てはめれ
ばよいかを判断してゆくことになる。この作業は、本発
明に係る方法の手順中では、比較的手間のかかる作業で
はあるが、レリーフ版を手で描いて作成するような従来
の方法に比べれば、格段に容易な作業になる。
【0043】次のステップS3では、ステップS1にお
いて印刷した絵柄の全面に、ベース透明樹脂層21を形
成する。これは、モノクロのレリーフ絵画を作成する場
合と全く同様である。そして、最後に、ステップS4に
おいて、このベース透明樹脂層21の上面に、レリーフ
版Rを用いて部分的にレリーフ透明樹脂層22の形成を
行う。これも、モノクロのレリーフ絵画を作成する場合
と全く同様である。唯一の相違点は、レリーフ版Rが、
3枚の分色二値画像Qy,Qm,Qcから合成されたも
のであるという点だけである。こうして作成されたカラ
ーのレリーフ絵画は、図10(a) に示すような階調をも
ったカラー画像Oの絵柄のうち、図12(d) のレリーフ
版Rにハッチングで示された領域だけが盛り上がった構
造をもったものになる。
【0044】図13は、上述したカラーのレリーフ絵画
を作成する手順をまとめたダイヤグラムである。まず、
階調をもったカラー画像O(原画)を用意し、これをス
キャナ分解して3枚の分色印刷版Py,Pm,Pcを作
成し、この3枚の分色印刷版Py,Pm,Pcを用いて
用紙11上に絵柄の印刷を行い、インキ層12を形成す
る(ステップS1)。続いて、所定の基準濃度値(70
%,40%,50%)を設定することにより、分色印刷
版Py,Pm,Pcのそれぞれから、分色二値画像Q
y,Qm,Qcを作成し、これらを合成してレリーフ版
Rを作成する(ステップS2)。なお、実際には、分色
印刷版Py,Pm,Pcから分色二値画像Qy,Qm,
Qcを作成する代わりに、図に破線で示すように、階調
をもったカラー画像Oを直接スキャナ分解することによ
り、分色二値画像Qy,Qm,Qcを直接作成するのが
好ましい。現在、一般に利用されているスキャナ装置
は、任意の基準濃度値を設定することにより、このよう
な分色二値画像Qy,Qm,Qcを直接作成する機能を
有するので、分色印刷版Py,Pm,Pcとともに分色
二値画像Qy,Qm,Qcを作成してしまった方が手間
が省けるとともに、相互に位置合わせ精度の高い色分解
画像が得られる。続いて、ベタ版Bを用意し、スクリー
ン印刷によりベース透明樹脂層21を形成する(ステッ
プS3)。そして最後に、レリーフ版Rを用いたスクリ
ーン印刷により、レリーフ透明樹脂層22を形成する
(ステップS4)。なお、分色二値画像Qy,Qm,Q
cは、レリーフ版Rを作成するためだけに用いられる版
であり、印刷工程には直接的には利用されない。
【0045】また、カラーのレリーフ絵画においても、
複数のレリーフ版を用いることにより多段のレリーフ透
明樹脂層を形成することができる。図14は、この手順
をまとめたダイヤグラムである。図13に示す手順との
相違は、各色ごとに基準濃度値の設定を2とおりに変え
ることにより、合計で6枚の分色二値画像を作成し、第
1のレリーフ版R1と第2のレリーフ版R2を作成する
点である。すなわち、黄色Yについては70%、マゼン
タMについては40%、シアンCについては50%、と
いう基準濃度値の第1の設定に基づいて、3つの分色二
値画像Qy1,Qm1,Qc1を作成し、続いて、黄色
Yについては90%、マゼンタMについては60%、シ
アンCについては70%、という基準濃度値の第2の設
定に基づいて、3つの分色二値画像Qy2,Qm2,Q
c2を作成する。そして、第1の設定に基づく3つの分
色二値画像Qy1,Qm1,Qc1を合成することによ
り第1のレリーフ版R1を作成し、第2の設定に基づく
3つの分色二値画像Qy2,Qm2,Qc2を合成する
ことにより第2のレリーフ版R2を作成するのである
(もっとも、レリーフ版を合成するための分色二値画像
の組み合わせは、このような組み合わせに限定されるわ
けではない)。最後に、レリーフ版R1を用いて、レリ
ーフ透明樹脂第1層22aを形成し、更に、レリーフ版
R2を用いて、レリーフ透明樹脂第2層22bを形成す
れば、多段のレリーフ透明樹脂層を形成することができ
る。
【0046】以上、本発明を図示するいくつかの実施例
に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能
である。たとえば、上述の実施例では、いずれも濃度値
の高い方の領域について、透明樹脂層の厚みが厚くなる
ようにしている。具体的には、図1において、濃度値0
%の領域よりも濃度値60%の領域の方が透明樹脂層は
厚くなっており、更に、濃度値60%の領域よりも濃度
値90%の領域の方が透明樹脂層は厚くなっている。し
かしながら、必ずしも濃度値の高い方の領域の透明樹脂
層を厚くする必要はなく、逆に濃度値の低い方の領域の
透明樹脂層を厚くすることも可能である。ただ、油彩画
やアクリル画は、通常、白いキャンバス(インキによる
印刷の観点からは、濃度は低い)に、種々の色の絵の具
(インキによる印刷の観点からは、濃度は高い)で描か
れているため、濃度値の高い方の領域について、透明樹
脂層の厚みを厚くした方が、原画において絵の具の盛り
上がっている領域が、レリーフ絵画においても盛り上が
りを生じるようになり、原画との盛り上がり感の一致を
得る上では好ましい。逆に、黒いキャンバスに、淡い色
の絵の具が盛り上がっているような原画に対しては、濃
度値の低い方の領域について、透明樹脂層の厚みを厚く
するとよい。
【0047】また、上述の実施例では、スキャナ装置の
出力により分色印刷版や分色二値画像をフィルム上に得
ているが、スキャナ装置によって階調をもったカラー画
像Oを画像データとして取り込み、コンピュータによっ
て、分色二値画像からレリーフ版を合成する作業を行う
ようにしてもかまわない。更に、上述の実施例では、用
紙11上の絵柄印刷をオフセット印刷で行い、透明樹脂
層20の形成をスクリーン印刷によって行っているが、
印刷の方法はこれらに限定されるものではない。また、
上述の実施例は、絵画を題材にとったレリーフ絵画につ
いての実施例であるが、本発明は写真を題材にとったレ
リーフ写真をはじめとして、あらゆる印刷物に適用しう
るものであり、いわゆるレリーフ印刷物(表面にレリー
フ状の凹凸が形成された印刷物)に広く適用できるもの
である。なお、本明細書における「絵柄」とは、「閉領
域で囲まれたパターン」という意味のものであり、文字
や模様などを広く含むものである。
【0048】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係るレリーフ印刷
物によれば、絵柄が印刷された印刷層上に、この絵柄の
濃度値に応じた厚みを有する透明樹脂層を形成するよう
にしたため、商業ベースでの作成を容易に行うことがで
きるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) は、本発明の一実施例に係るレリーフ絵画
の上面図、(b) は(a) に示すレリーフ絵画を切断線X−
Xで切った側断面図である。
【図2】図1(a) に示す絵柄よりも細かな10段階の階
調をもった絵柄を示す図である。
【図3】本発明に係るレリーフ絵画の作成方法の基本手
順を示す流れ図である。
【図4】図2に示す絵柄に対して、基準濃度値を50%
に設定し、この絵柄を濃度値50%未満の領域と、50
%以上の領域との2つの領域に分けることにより得られ
た二値画像(レリーフ版)を示す図である。
【図5】印刷層10の上の全面に、ベース透明樹脂層2
1を形成した状態を示す側断面図である。
【図6】図4に示すレリーフ版31をポジ版として用い
たスクリーン印刷により形成されたレリーフ透明樹脂層
22を示す側断面図である。
【図7】図2に示す絵柄に対して、基準濃度値を80%
に設定し、この絵柄を濃度値80%未満の領域と、80
%以上の領域との2つの領域に分けることにより得られ
た二値画像(レリーフ版)を示す図である。
【図8】図7に示すレリーフ版32をポジ版として用い
たスクリーン印刷により形成されたレリーフ透明樹脂層
22を示す側断面図である。
【図9】図7に示すレリーフ版32を用いたスクリーン
印刷の後、図4に示すレリーフ版31を用いたスクリー
ン印刷を行うことにより形成されたレリーフ透明樹脂層
22を示す側断面図である。
【図10】本発明に係る方法によりカラーのレリーフ絵
画を作成するのに用いる階調をもったカラー画像および
分色印刷版の一例を示す図である。
【図11】図10に示す分色印刷版Py,Pm,Pc上
の分色画像に基づいて作成された分色二値画像Qy,Q
m,Qcを示す図である。
【図12】図10に示すカラー画像を複数の閉領域に分
割し、各閉領域ごとに所望の分色二値画像を当てはめて
レリーフ版Rを作成する作業を示す図である。
【図13】本発明に係るカラーのレリーフ絵画を作成す
る手順をまとめたダイヤグラムである。
【図14】複数のレリーフ版を用いることにより多段の
レリーフ透明樹脂層を形成する手順をまとめたダイヤグ
ラムである。
【符号の説明】
10…印刷層 11…用紙 12…インキ層 20…透明樹脂層 21…ベース透明樹脂層 22…レリーフ透明樹脂層 22a…レリーフ透明樹脂第1層 22b…レリーフ透明樹脂第2層 31,32…レリーフ版 O…階調をもったカラー画像(原画) Py,Pm,Pc…分色印刷版 Qy,Qm,Qc…分色二値画像 R,R1,R2…レリーフ版

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絵柄が印刷された印刷層と、この印刷層
    の表面に形成された透明樹脂層と、を有し、前記絵柄の
    濃度を複数段階に分けたときに、より濃度の濃い段階に
    属する絵柄部分に形成された透明樹脂層の厚みがより厚
    くなるように、前記透明樹脂層が前記絵柄の濃度値に応
    じた厚みをもった段差構造を有することを特徴とするレ
    リーフ印刷物。
  2. 【請求項2】 絵柄が印刷された印刷層と、この印刷層
    の表面に形成された透明樹脂層と、を有し、前記絵柄の
    濃度を複数段階に分けたときに、より濃度の薄い段階に
    属する絵柄部分に形成された透明樹脂層の厚みがより厚
    くなるように、前記透明樹脂層が前記絵柄の濃度値に応
    じた厚みをもった段差構造を有することを特徴とするレ
    リーフ印刷物。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のレリーフ印刷
    物において、絵柄が複数種類のインキにより印刷されて
    おり、透明樹脂層の厚みが、特定のインキの濃度値に基
    づいて決定されていることを特徴とするレリーフ印刷
    物。
  4. 【請求項4】 階調をもった画像に基づいて印刷版を作
    成し、この印刷版を用いて階調をもった絵柄を印刷する
    第1の段階と、所定の基準濃度値を設定し、この基準濃度値よりも高い
    濃度値をもった領域を盛り上げ領域とするレリーフ版を
    作成する第2の段階と、 前記第1の段階により得られる印刷物の全面にベース透
    明樹脂層を形成する第3の段階と、前記レリーフ版を用いて、前記ベース透明樹脂層の上面
    における前記盛り上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層
    を形成する第4の段階と、 を有することを特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  5. 【請求項5】 階調をもった画像に基づいて印刷版を作
    成し、この印刷版を用いて階調をもった絵柄を印刷する
    第1の段階と、 所定の基準濃度値を設定し、この基準濃度値よりも低い
    濃度値をもった領域を盛り上げ領域とするレリーフ版を
    作成する第2の段階と、 前記第1の段階により得られる印刷物の全面にベース透
    明樹脂層を形成する第3の段階と、 前記レリーフ版を用いて、前記ベース透明樹脂層の上面
    における前記盛り上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層
    を形成する第4の段階と、 を有することを特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  6. 【請求項6】 請求項4または5に記載のレリーフ印刷
    物の作成方法において、 第2の段階で、複数の基準濃度値を設定することにより
    複数のレリーフ版を作成し、 第4の段階で、前記複数のレリーフ版を用いることによ
    り複数のレリーフ透明樹脂層を順次重ねて形成すること
    を特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  7. 【請求項7】 階調をもったカラー画像に基づいて、複
    数の分色印刷版を作成し、各分色印刷版ごとに異なる色
    のインキを用いて階調をもったカラー絵柄を印刷する第
    1の段階と、 複数の分色印刷版のそれぞれについて、所定の基準濃度
    値を設定し、各分色印刷版について、前記基準濃度値よ
    りも高い濃度値をもった領域をそれぞれ対象領域と定
    め、これら対象領域を合成することにより得られる領域
    を盛り上げ領域とするレリーフ版を作成する第2の段階
    と、 前記第1の段階により得られる印刷物の全面にベース透
    明樹脂層を形成する第3の段階と、 前記レリーフ版を用いて、前記ベース透明樹脂層の上面
    における前記盛り上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層
    を形成する第4の段階と、 を有することを特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  8. 【請求項8】 階調をもったカラー画像に基づいて、複
    数の分色印刷版を作成し、各分色印刷版ごとに異なる色
    のインキを用いて階調をもったカラー絵柄を印刷する第
    1の段階と、 複数の分色印刷版のそれぞれについて、所定の基準濃度
    値を設定し、各分色印刷版について、前記基準濃度値よ
    りも低い濃度値をもった領域をそれぞれ対象領域と定
    め、これら対象領域を合成することにより得られる領域
    を盛り上げ領域とするレリーフ版を作成する第2の段階
    と、 前記第1の段階により得られる印刷物の全面にベース透
    明樹脂層を形成する第 3の段階と、 前記レリーフ版を用いて、前記ベース透明樹脂層の上面
    における前記盛り上げ領域の部分にレリーフ透明樹脂層
    を形成する第4の段階と、 を有することを特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  9. 【請求項9】 請求項7または8に記載のレリーフ印刷
    物の作成方法において、 カラー画像上の絵柄を複数の閉領域に分割し、各閉領域
    ごとに、1つの分色印刷版または複数の分色印刷版を選
    択し、選択した分色印刷板についての対象領域を合成す
    ることによりレリーフ版を作成することを特徴とするレ
    リーフ印刷物の作成方法。
  10. 【請求項10】 請求項7〜9のいずれかに記載のレリ
    ーフ印刷物の作成方法において、 第2の段階で、複数の基準濃度値を設定することにより
    1つの分色印刷版について複数のレリーフ版を作成し、 第4の段階で、前記複数のレリーフ版を用いることによ
    り複数のレリーフ透明樹脂層を順次重ねて形成すること
    を特徴とするレリーフ印刷物の作成方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載のレ
    リーフ印刷物またはその作成方法において、 透明樹脂層として紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、ま
    たは電子線硬化型樹脂を用いたことを特徴とするレリー
    フ印刷物またはその作成方法。
  12. 【請求項12】 請求項4〜10のいずれかに記載のレ
    リーフ印刷物の作成方法において、 透明樹脂層の形成工程を、スクリーン印刷によって行
    い、ベース透明樹脂層の形成工程では、レリーフ透明樹
    脂層の形成工程に比べてメッシュの細かいスクリーンを
    用いるようにしたことを特徴とするレリーフ印刷物の作
    成方法。
  13. 【請求項13】 請求項4〜10のいずれかに記載のレ
    リーフ印刷物の作成方法において、 透明樹脂層の形成工程を、スクリーン印刷によって行
    い、ベース透明樹脂層のための樹脂としては、レリーフ
    透明樹脂層のための樹脂よりも硬化前の粘性率が低い樹
    脂を用いるようにしたことを特徴とするレリーフ印刷物
    の作成方法。
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