JP3369544B2 - 海苔処理剤および処理方法 - Google Patents

海苔処理剤および処理方法

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JP3369544B2 JP2000317752A JP2000317752A JP3369544B2 JP 3369544 B2 JP3369544 B2 JP 3369544B2 JP 2000317752 A JP2000317752 A JP 2000317752A JP 2000317752 A JP2000317752 A JP 2000317752A JP 3369544 B2 JP3369544 B2 JP 3369544B2
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敏男 安部
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協和醗酵工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海苔、特に養殖海
苔の処理剤および処理方法に関する。具体的には養殖海
苔に混生し海苔の成長を阻害したり、海苔の品質低下の
原因となるアオノリ、ケイ藻等の雑藻の駆除剤および駆
除方法、および海苔に寄生し生育を阻害するあかぐされ
病、針状細菌症等の病害の防除剤、もしくは予防剤また
はこれらの防除剤を用いる病害の防除方法もしくは予防
方法、または海苔活性化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】養殖海苔には、緑藻類に属するスジアオ
ノリ(Enteromorpha prolifera)、ヒラアオノリ(E. comp
ressa)およびケイ藻類に属するリクモフォーラ(Licmoph
ora flabellata)、シネドラ属(Synedra. sp)等の雑藻
類、フハイカビ(Pythium)属菌を病原菌とする、あかぐ
され病、フクロカビ(Olpidiopsis)属菌を病原菌とする
壷状菌病および細菌類を病原菌とする緑斑病、擬似しろ
ぐされ病および針状細菌症等多くの雑藻、病害がある。
【0003】これらの雑藻、病害の駆除、防除法とし
て、雑藻類および病原菌と海苔の乾燥に対する抵抗性の
差を利用して、長時間海苔網を空中へ吊り上げて干出を
おこなう方法、およびこれら雑藻、病原菌と海苔の冷凍
耐性の差を利用して、一時的に−20℃前後の冷凍処理
をおこなう方法が従来より行われている。しかし、これ
らの方法では雑藻類、病原菌の種類によっては海苔との
抵抗性の差が明確でないものもあり、十分な効果が上げ
られないこともある。また、干出を長く取ると海苔の成
長も止まり、期待する収穫を上げることが難しい点もあ
る。
【0004】これらの欠点を補う方法として、雑藻類お
よび病原菌と海苔の酸に対する抵抗性の差を利用する酸
処理技術が開発され(特公昭56−12601)、一般
的な技術として実施されている。しかし、従来から実施
されていたリンゴ酸、クエン酸等の有機酸単体による処
理は長い処理時間と多大な労力を必要とするものであっ
た。近年の海苔養殖従事者の高齢化や海苔製品価格低迷
に対処するため、養殖作業の省力化が必要とされ、その
必要性から多くの研究がなされ(特昭60−1364
8、特開昭60−248121、特開平1−27980
5、特開平5−139913、特開平7−53306、
特開平7−308136、特開平9−40511、特開
平9−175910、特開平11−193201)、一
部は実用化されている。しかしながら、これらの方法は
依然として過大な労力を要したり、処理薬剤による危険
を伴ったりするため、より効果が高く、作業安全性に優
れた防除剤および防除方法の開発が切望されている。
【0005】一方、海苔の処理剤には効力、作業性の性
能が求められるのはもちろんであるが、生産された海苔
の食品としての安全性、養殖作業従事者の健康、安全性
の確保もまた重要である。海苔処理剤の処理効率を高め
るためには、処理剤の作用機作から処理液の酸性度を強
めればその目的は達せられる。しかし、現在業界でその
使用が認められている有機酸では、水素イオンの解離度
とコストの面からその酸性度増強にはおのずと限界があ
る。
【0006】塩酸、硫酸等の強酸を使用すればその酸性
度を強めることは可能であるが、これら強酸類は一般に
劇物に指定されており、業界ではその使用を禁止されて
いる。この解決策の一つとして、酸に塩化ナトリウム等
の無機塩を添加し高張液として処理効率を上げる技術が
報告されている(特開平9−201180)。該技術は
優れた技術であるが、処理効果を得るためには処理液の
溶液比重が1.03以上となるように処理液に対して数%〜
10%の塩を添加しなければならない。また、比重が1.
20以上となるように塩を添加すると、逆に塩により海苔
が障害を受ける可能性がある。このように処理効果を得
るためには処理液の比重を一定に保つ必要があるが、連
続作業で行われる処理作業中に多量の塩を投入してその
濃度を一定に保つのはかなり難しい技術であり、作業効
率の面からも難点のある技術である。
【0007】以上の現状より、業界ではより安全性が高
く、かつ効力、作業性に優れた処理剤、処理方法の開発
が切望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、養殖
海苔に混生するアオノリ、ケイ藻等の雑藻駆除およびあ
かぐされ病等の各種病害を効果的、効率的かつ安全に防
除もしくは予防する方法および処理剤を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは鋭意検討を行い、有機カルボン酸およ
び塩化第二鉄を含有し、かつ比重が1.030未満の溶液が
海苔処理剤として優れていることを見出し、本発明を完
成するに至った。すなわち、本発明は以下の(1)〜
(7)に関する。
【0010】(1) 有機カルボン酸および塩化第二鉄
を含有する溶液であり、かつ溶液比重が1.030未満であ
ることを特徴とする海苔処理剤。 (2) 有機カルボン酸の含量が0.05〜0.5%であり、塩
化第二鉄の含量が0.02〜0.3%である、上記(1)の海
苔処理剤。 (3) 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボン酸溶
液および2〜30%の塩化第二鉄溶液を含有する溶液を
希釈して得られる海苔処理剤である、上記(1)または
(2)の海苔処理剤。
【0011】(4) 海苔処理剤が、5〜50%の有機
カルボン酸溶液からなるA液および2〜70%の塩化第
二鉄溶液からなるB液を希釈・混合して得られる海苔処
理剤である、上記(1)または(2)の海苔処理剤。 (5) 有機カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸、乳
酸、酢酸、酒石酸およびグリコール酸からなる群より選
ばれる有機カルボン酸である、上記(1)〜(4)いず
れか1つの海苔処理剤。
【0012】(6) 上記(1)〜(5)いずれか1つ
に記載の海苔処理剤に海苔を浸漬するか、または該海苔
処理剤を海苔に散布することを特徴とする海苔処理方
法。 (7) 上記(6)の方法により得られる海苔。 本発明において、「海苔処理」とは、養殖海苔に混生し
海苔の成長を阻害したり、海苔の品質低下の原因となる
アオノリ、ケイ藻等の駆除、および海苔に寄生し生育を
阻害するあかぐされ病、針状細菌症等の病害の防除、も
しくは予防または海苔活性化を目的として、海苔を本発
明の溶液に浸漬したり、本発明の溶液を海苔に散布した
りする行為を示す。
【0013】ここで、「病害の防除もしくは予防」と
は、海苔病害の治療または海苔が病害に冒されるのを予
防することを意味する。また、「海苔の活性化」とは、
海苔の成長促進、海苔の色、艶などの品質を向上させる
ことを意味する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の海苔処理剤は、有機カル
ボン酸および塩化第二鉄を含有する溶液であり、かつ溶
液の比重が1.030未満の溶液であればいずれの溶液でも
使用することができる。該海苔処理剤としては、例え
ば、5%〜50%の有機カルボン酸および2%〜30%
の塩化第二鉄の混合溶液からなる処理剤を100〜80
0倍の海水で稀釈することにより得られる0.05〜0.5%
の有機カルボン酸および0.02〜0.3%の塩化第二鉄を含
有する溶液、または5%〜50%の有機カルボン酸を含
むA溶液、および2%〜70%の塩化第二鉄を含むB溶
液をそれぞれ稀釈混合して得られる0.05〜0.5%の有機
カルボン酸および0.02〜0.3%の塩化第二鉄を含有する
溶液をあげることができる。
【0015】本発明の処理剤が有効に作用するためには
pHは酸性であればよいが、pH 1.5〜3.0であることが好
ましい。なお、本発明の処理剤には、海苔の栄養成分と
して塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリ
ウム、硝酸カリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン
酸カリウム、アミノ酸等を添加してもよい。
【0016】本発明の処理剤の比重は1.030未満、好ま
しくは1.026以下である。本発明に用いる有機カルボン
酸は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、酒石酸または
グリコール酸等が用いられ、好ましくはクエン酸、乳
酸、リンゴ酸が用いられる。有機カルボン酸の処理剤中
の濃度は0.05〜0.5%、好ましくは0.1〜0.4%である。
【0017】本発明の処理剤の調製に用いる塩化第二鉄
は、無水物、各種水和物のいずれも用いることができ
る。六水和物は溶解し易いため、該処理剤を調製する上
で適している。塩化第二鉄の処理剤中の濃度は0.02〜0.
3%、好ましくは0.05〜0.2%である。本発明の溶液とし
ては、水溶液であることが好ましい。水溶液にするため
には水、塩水、海水、緩衝液等を用いることが出来る
が、海水を用いることがとりわけ好ましい。緩衝液とし
てはクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等があげられる。
【0018】以下に海苔処理方法について述べる。海苔
処理方法としては、上記処理剤に海苔を浸漬、または該
処理剤を海苔に散布する処理方法があげられる。浸漬と
は箱船等の容器中に調製した処理剤稀釈液の中に、海苔
または海苔の着生した海苔網を手またはローラーで手繰
り込み、30秒〜20分間漬け込んで処理することを言
う。
【0019】また、散布とは潜り船等の専用処理船によ
る散布処理と、支柱に張って養殖状態の海苔網が干出状
態の時に、処理剤稀釈液を海苔網に散布することを言
う。上記処理は従来の海苔処理で行われている通常の温
度下で行うことができ、好ましくは7℃〜22℃、より
好ましくは8℃〜18℃で行う。上記の方法で処理した
後、海苔網は直ちに海水中に戻し、通常の方法で養殖を
継続する。以下に実施例および参考例で本発明を具体的
に説明する。
【0020】
【実施例】実施例 1 クエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)のみ30
gの区、クエン酸一水和物30gに塩化ナトリウム(Na
Cl,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエ
ン酸一水和物30gに塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O,
和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸
一水和物30gに塩化カルシウム(CaCl2・2H2O,片山化
学工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和
物30gに塩化アンモニウム(NH4Cl,和光純薬工業株式
会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに
塩化亜鉛(ZnCl2,片山化学工業株式会社製)10gを加
えた区、クエン酸一水和物30gに塩化第一鉄(FeCl2
・4H2O,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、ク
エン酸一水和物30gに塩化第二鉄(FeCl3・6H2O,和光
純薬工業株式会社製)10gを加えた区それぞれに70m
lまたは60mlの水を加えて100gとして溶解し、8
種類の試験原溶液を調製した。次いで、それぞれの試験
原溶液を海水で100倍、200倍、400倍に稀釈し
24種類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はい
ずれも1.030未満であった。
【0021】次いで該試験溶液のそれぞれを恒温槽中で
水温10℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長
約8cmのアサクサ海苔の葉体(以下、単に海苔葉体と言
う)をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより
浸漬処理を行った。浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で
十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海
水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごと
に収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培
養槽中で4日間静置培養を行った。
【0022】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、
あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液に
よる被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第
1表に示す。
【0023】
【表1】
【0024】クエン酸と各種塩化物の組み合わせによる
試験溶液によるあかぐされ病防除試験を行った結果、ク
エン酸単独区、クエン酸と塩化ナトリウム併用区、クエ
ン酸と塩化マグネシウム併用区およびクエン酸と塩化ア
ンモニウム併用区では100倍稀釈区においてもあかぐ
され菌の防除効果は認められなかった。また、クエン酸
と塩化カルシウム併用区、クエン酸と塩化亜鉛併用区お
よびクエン酸と塩化第一鉄併用区では、100倍稀釈区
においてのみあまり強くないが、あかぐされ菌の抑制効
果が見られた。しかし、200倍以上の稀釈区ではあか
ぐされ菌の防除効果は認められなかった。
【0025】一方、クエン酸と塩化第二鉄の併用区では
強いあかぐされ菌防除効果がみとめられ、100倍およ
び200倍稀釈いずれにおいてもあかぐされ菌の完全殺
菌が見られ、400倍稀釈区においても抑制効果が認め
られた。また、いずれの区においても海苔葉体に傷害は
認められなかった。 実施例 2 クエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)を40
%,20%,10%,5%,2.5%,0%の6濃度と、
塩化第二鉄六水和物(和光純薬工業株式会社製)を20
%,10%,5%,2.5%,0%の5濃度の組み合わせ
により、第2表に示す30種類の試験原溶液を調製し
た。該溶液をそれぞれ海水で100倍に希釈し、30種
類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも
1.030未満であった。
【0026】各試験溶液中のクエン酸濃度、塩化第二鉄
濃度およびpHを第2表に示した。
【0027】
【表2】
【0028】第2表に示した試験溶液のそれぞれを恒温
槽中で水温12℃に調温した後、あかぐされ菌に感染し
た葉長約8cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に5分間
浸漬することにより浸漬処理を行った。浸漬処理後の海
苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した
後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャ
ーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を
与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。
【0029】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、
あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液に
よる被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第
3表に示す。
【0030】
【表3】
【0031】クエン酸のみの試験溶液ではクエン酸濃度
0.4%の試験溶液のみにあかぐされ菌の抑制効果が見ら
れた。塩化第二鉄のみの試験溶液では0.2%の試験溶液
のみにあかぐされ菌の殺菌効果が見られた。しかし、0.
05%以上の濃度試験溶液では海苔葉体の傷害が見られ
た。
【0032】一方、クエン酸と塩化第二鉄を併用した試
験溶液では、クエン酸濃度が0.025%の場合でも、塩化
第二鉄濃度が0.1%以上であれば、防除効果が認められ
た。逆に、塩化第二鉄の濃度が0.025%の場合でも、ク
エン酸濃度が0.2%以上であれば防除効果が認められ
た。このことから、クエン酸と塩化第二鉄の相乗効果が
確認された。また、塩化第二鉄単用で見られた海苔葉体
に対する傷害もクエン酸を併用することによって認めら
れなくなり、薬害の低減が認められた。 実施例 3 クエン酸一水和物30部と塩化第二鉄六水和物20部を
50部の水に溶解し、クエン酸と塩化第二鉄の混合溶液
からなる試験原溶液を調製した。
【0033】該試験原溶液を海水で100倍、200
倍、400倍および800倍に稀釈した4種類の試験溶
液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満
であった。該試験溶液のそれぞれを恒温槽中で水温18
℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの
海苔葉体をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することに
より浸漬処理を行った。
【0034】処理を終了したそれぞれの試験溶液は、次
に水温15℃の恒温槽中で調温した後、同様の方法であ
かぐされ菌に感染した海苔葉体の浸漬処理を行った。さ
らに、同試験液を12℃、さらに9℃に調温して同様の
処理をおこなった。浸漬処理後の海苔葉体は、それぞれ
処理直後に清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去し
た後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシ
ャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明
を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行っ
た。
【0035】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、
あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液に
よる被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第
4表に示す。
【0036】
【表4】
【0037】18℃の処理区では、100倍〜800倍
稀釈区の全てで高いあかぐされ防除効果が見られた。し
かし、100倍稀釈区では海苔葉体にも傷害が認められ
た。15℃から9℃の処理区では、いずれも100倍〜
400倍稀釈区で高いあかぐされ防除効果が見られ、海
苔葉体の傷害も認められなかった。しかし、800倍稀
釈区では防除効果が不完全で、一部にあかぐされ菌の生
残が認められた。 実施例 4 上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で100倍に
稀釈した液、およびクエン酸一水和物(和光純薬工業株
式会社製)を海水で溶解して0.5%溶液とした2種類の
試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.03
0未満であった。次にそれぞれの試験溶液を恒温槽中で
12℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8
cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に、30秒間、1分
間、2分間、4分間浸漬することにより浸漬処理をおこ
なった。
【0038】浸漬処理後の海苔葉体は、清浄海水で十分
に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を
満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収
容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽
中で4日間静置培養を行った。培養終了後、海苔葉体を
顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔
葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判
定した。
【0039】試験結果を第5表に示す。
【0040】
【表5】
【0041】試験原溶液100倍稀釈液では1分間以上
の処理であかぐされ菌を完全に殺菌することができ、ま
た、4分間処理でも海苔葉体に傷害は認められなかっ
た。一方、クエン酸0.5%溶液では2分間以下の処理で
は全くあかぐされの防除効果は認められず、4分間処理
でやっと抑制効果が認められる程度であった。このこと
から、本試験原溶液は従来の有機酸のみの処理よりも短
時間で防除効果を上げることができることが示された。 実施例 5 上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で、100
倍、200倍、400倍、600倍の4段階に稀釈し、
それぞれの溶液を恒温槽中で18℃に調温し、試験溶液
を作成した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満で
あった。
【0042】次に、該試験溶液のそれぞれににスジアオ
ノリおよび葉長約2cmの海苔幼芽を同時に投入し、7分
間の浸漬処理を行った。処理終了後、スジアオノリおよ
び海苔幼芽は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去
した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラス
シャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照
明を与えた18℃恒温培養槽中で2日間静置培養を行っ
た。なお、対照区として無処理区を設けた。
【0043】培養終了後、スジアオノリは緑色色素の脱
色の有無で生死を判定した。また、海苔幼芽について
は、0.2%エリスロシン溶液による染色度合いで、その
傷害の程度を判定した。結果を第6表に示した。
【0044】
【表6】
【0045】100、200、400倍稀釈の処理区で
スジアオノリは完全に脱色枯死が見られたが、600倍
稀釈区では、根部が生き残った。海苔幼芽は、100倍
稀釈区では大きな障害を受けたが、200倍以上の稀釈
区では無処理対照区と差が無く、傷害は無いものと考え
られた。 実施例 6 クエン酸一水和物30部と塩化第二鉄六水和物10部お
よび水60部、DLリンゴ酸(和光純薬工業株式会社
製)30部と塩化第二鉄六水和物10部および水60
部、90%乳酸(和光純薬工業株式会社製)33部と塩
化第二鉄六水和物10部および水57部、酢酸(和光純
薬工業株式会社製)30部と塩化第二鉄六水和物10部
および水60部よりなる4種類の試験原溶液を調製し
た。
【0046】該試験原溶液を海水で、100倍、200
倍、400倍、および800倍に稀釈し、合計16種類
の試験溶液を作り、12℃の恒温槽中でそれぞれ12℃
に調温した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満で
あった。あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの海苔葉体
をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより浸漬
処理を行った。
【0047】浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で十分に
洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満
たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容
して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中
で4日間静置培養を行った。培養終了後、海苔葉体を顕
微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉
体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定
した。
【0048】結果を第7表に示す。
【0049】
【表7】
【0050】クエン酸30%と塩化第二鉄10%からな
る試験原溶液および、乳酸30%と塩化第二鉄10%か
らなる試験原溶液では、いずれも100倍〜400倍希
釈区であかぐされ菌を完全に殺菌し、両試験原溶液は、
ほぼ同等のあかぐされ病防除効果を示した。DLリンゴ酸
30%と塩化第二鉄10%からなる試験原溶液では、1
00倍および200倍希釈ではあかぐされ菌を完全殺菌
したが、400倍希釈では防除効果が認められなかっ
た。
【0051】酢酸30%と塩化第二鉄10%からなる試
験原溶液では、100倍〜400倍希釈であかぐされ菌
を完全に殺菌し、また、800倍希釈でもある程度の菌
の抑制効果が見られ、試験した4試験原溶液の中では最
も強い作用を示したが、100倍希釈では海苔葉体に傷
害が見られ、海苔に対する薬害も強かった。 実施例 7 上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で25倍、5
0倍、100倍に稀釈した溶液、および塩化第二鉄六水
和物(和光純薬工業株式会社製)を海水で溶解して0.8
%、0.4%、0.2%とした6種類の試験液を調製し、それ
ぞれの溶液比重を測定した。
【0052】次いで、該試験液を恒温槽中で12℃に調
温した後それぞれの試験液に葉長約5cmの海苔葉体を1
分間浸漬処理を行った。また、対照区として海水のみの
比重測定、浸漬処理を行った。浸漬処理後の海苔葉体は
清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30
mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各
試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた1
5℃恒温培養槽中で24時間静置培養を行った。
【0053】培養終了後の海苔葉体は0.2%エリスロシ
ン溶液で染色を行い、その染色度合いにより傷害程度を
調べた。結果を第8表に示した。
【0054】
【表8】
【0055】本発明の試験原溶液は通常100倍以上の
稀釈を想定して調製したものであり、100倍稀釈時の
溶液比重は1.025で、稀釈に使用した海水の比重1.024に
比べその比重上昇はわずかであった。50倍稀釈では1.
028で、この濃度付近から海苔の細胞に傷害が認められ
た。試験原溶液50倍稀釈液中の塩化第二鉄濃度は0.4
%であり、第8表に示したデータから、海苔細胞が傷害
を受けるのは塩化第二鉄濃度によるものと考えられ、そ
の限界濃度0.3〜0.4%の間にあるものと考えられる。
【0056】海苔養殖が行われる海域の海水比重は一般
に1.018〜1.025とされており、このことから本発明の海
苔処理剤を使用する場合、処理剤が海苔の傷害濃度に達
しないように、その溶液比重を少なくとも1.030未満に
止める必要がある。 実施例 8 海苔養殖漁場より採取した海苔葉体を屋外太陽光下に設
置した500リットル容透明プラスチック水槽中に栄養
無添加の天然海水とともに収容し、14日間通気攪拌培
養を行って栄養不足による退色海苔葉体を作成した。
【0057】該退色海苔を用いて、上記実施例3で調製
した試験原溶液の200倍稀釈液、およびクエン酸0.4
%溶液を用いて12℃、5分間の浸漬処理を行った。各
試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。処理終
了後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験液を除
去し、それぞれ100リットル容透明プラスチック水槽
に海水と共に収容し屋外太陽光下で通気攪拌培養を行っ
た。この時の培養液には硝酸ナトリウムとリン酸ナトリ
ウムを加え、窒素とリンがそれぞれ4.4mg/Lおよび0.5
mg/Lとなるように栄養塩補強を行った。
【0058】海苔の黒紫色の色調はクロロフィル、カロ
チノイド、フィコエリスリン、フィコシアニン等の色素
によるとされ、色艶の良い高級海苔にはこれら色素が多
く含まれ、栄養不足で退色した海苔には少ないと言われ
る。それで、色艶の簡便評価法として分析が比較的簡単
なクロロフィル量の測定が一般によく用いられるため、
本実験でもクロロフィルの測定を行った。
【0059】実験中、浸漬処理直前、浸漬処理後培養3
日後、7日後および14日後に培養海苔葉体の一部を採
取し、それぞれについてクロロフィルaの量を測定し
た。クロロフィルa測定方法は、海苔葉体を真水で洗浄
後90%アセトンで色素を抽出し分光光度計を使用して
665nm、645nmおよび630nmの吸光値を測定し、
次式によりクロロフィルaの値を求めた。
【0060】クロロフィルa(μg/ml)=11.6E665
−1.31E645−0.14E630 結果を第9表に示す。
【0061】
【表9】
【0062】処理後培養3日後には色素の増加が認めら
れ、7日後でピークに達した。クロロフィル含量はクエ
ン酸処理の区よりも試験原溶液稀釈液で処理した区が明
らかに多かった。また、14日後には栄養塩枯渇により
再び退色が見られたが、退色の程度は試験原溶液稀釈液
処理の区が軽微で退色しにくかった。
【0063】
【発明の効果】本発明の海苔処理剤および処理方法によ
れば、従来のものよりも低濃度で、しかもより短時間で
効果的に海苔の雑藻駆除、およびあかぐされ等の病害を
防除することができ、作業効率の向上、および確実な駆
除、防除が可能となる。また、養殖漁場の栄養塩不足に
よって起こる、海苔の退色による品質低下の防止効果も
期待される。
【0064】さらに、処理剤の成分は食品添加物に指定
されている有機酸と鉄化合物のみであるため安全性の高
い処理剤を提供できる。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有
    する溶液であり、かつ溶液比重が1.030未満であること
    を特徴とする海苔処理剤。
  2. 【請求項2】 有機カルボン酸の含量が0.05〜0.5%であ
    り、塩化第二鉄の含量が0.02〜0.3%である、請求項1
    記載の海苔処理剤。
  3. 【請求項3】 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボ
    ン酸溶液および2〜30%の塩化第二鉄溶液を含有する
    溶液を希釈して得られる海苔処理剤である、請求項1ま
    たは2に記載の海苔処理剤。
  4. 【請求項4】 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボ
    ン酸溶液からなるA液および2〜70%の塩化第二鉄溶
    液からなるB液を希釈・混合して得られる海苔処理剤で
    ある、請求項1または2に記載の海苔処理剤。
  5. 【請求項5】 有機カルボン酸が、クエン酸、リンゴ
    酸、乳酸、酢酸、酒石酸およびグリコール酸からなる群
    より選ばれる有機カルボン酸である、請求項1〜4いず
    れか1項に記載の海苔処理剤。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5いずれか1項に記載の海苔
    処理剤に海苔を浸漬するか、または該海苔処理剤を海苔
    に散布することを特徴とする海苔処理方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の方法により得られる海
    苔。
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