JP3364013B2 - 石炭燃焼器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電力供給事業用その他
産業用の石炭ガス化装置、ボイラ等に適用される石炭燃
焼器に関する。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来の噴流床石炭ガス化炉の石炭
燃焼器の一例を示す縦断側面である。

【０００３】円筒状の燃焼炉（３）の円周方向に沿って
設置された燃焼器バーナ（８）から投入された石炭（微
粉炭）およびチャーが、初めに燃焼によって燃焼ガスを
発生し、次にガス化によって可燃性ガスを発生する。こ
れら高温の生成ガスは、燃焼炉（３）上部から絞り（ス
ロート）部（２）を経て円錐状のディフューザ部（６）
へ供給され、リダクタバーナ（５）から供給されるガス
化用の微粉炭と混合し、リダクタ（７）内をガス化反応
しながら流れる。

【０００４】一方、石炭およびチャー中の灰分は溶融ス
ラグとなり、バーナ噴流（１０）で形成された旋回流に
よってガス中から遠心分離され、燃焼炉（３）の円筒壁
面に付着する。そして重力で流れ落ちて燃焼炉の底部に
設けられたスラグホール（９）から燃焼炉（３）外へ排
出される。

【０００５】このような従来の石炭燃焼器では、 ｉ） 燃焼炉内溶融スラグ捕集効率の向上 ii） 燃焼炉内におけるガスと石炭およびチャーの滞留
時間増加 iii) 燃焼によって発生する輻射エネルギの閉じ込めに
よる燃焼炉内の高温化を図るために、燃焼炉（３）の出
口に絞り（スロート）（２）が設けられる。この絞り
（２）によって必然的に、燃焼炉には傾斜した（円錐状
の）天井部（４）が形成される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】図６に示すように、燃
焼炉（３）の鉛直壁に遠心力で付着した溶融スラグ（１
１）は旋回しながら重力で流下する。ところが、燃焼炉
（３）の天井部（４）や絞り部（２）においては、炉内
旋回流の旋回速度成分と上昇速度成分が増加するので、
天井部（４）や絞り部（２）あるいはディフューザ部
（６）の内壁に付着した溶融スラグ（１２）は、ガスに
よって旋回しながら上方へ押し上げられ、符号（１３）
のようにディフューザ部（６）に旋回しながら滞留する
ようになる。このディフューザ部（６）における溶融ス
ラグの滞留（１３）は、ガスの旋回流から受ける遠心力
と重力などに影響される。

【０００７】ディフューザ部に溶融スラグが滞留する
と、その滞留域からは、ガス流れによって図７に符号
（１６）で示すように、溶融スラグが飛散する。また、
滞留域（１３）に溶融スラグが溜り過ぎると、バランス
が崩れて燃焼炉（３）内へ流下するが、その際にも符号
（１５）に示すように溶融スラグが飛散する。飛散した
溶融スラグはガス流によってディフューザ（６）の上部
あるいは更に上方のリダクタ部（７）へ飛ばされ、遠心
力によって壁面に付着する。ところがディフューザ上部
やリダクタ部では、ガス温度はガス化反応によって低下
しているため、付着した溶融スラグはそこで固化し、固
相スラグ（１７）が徐々に生長してゆく。そして遂に
は、この固相スラグがディフューザあるいはリダクタ部
を閉塞させるため、ガス化炉等の長時間連続運転の障害
となる。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者は、前記従来の
課題を解決するために、円筒状の燃焼炉内で微粉炭を旋
回燃焼させ、灰分を遠心力により炉壁で捕捉して上記燃
焼炉の底部に落下させるとともに、燃焼生成ガスを上記
燃焼炉上部の絞り部から円錐状のディフューザ部を経て
炉外へ送り出すようにした石炭燃焼器において、上部燃
焼炉の天井部と上記絞り部の内壁に板状のボルテックス
ブレーカを取付けたことを特徴とする石炭燃焼器；なら
びに上記要件に加えて、上記ディフューザ部の内壁に板
状のボルテックスブレーカを取付けたことを特徴とする
石炭燃焼器を提案するものである。

【０００９】

【作用】本発明は前記のとおり構成され、燃焼炉の天井
部と絞り部、更にはディフューザ部にもボルテックスブ
レーカを取付けるので、それら部位の内壁面近傍におけ
るガスの旋回流は減衰し、燃焼炉内の旋回流がディフュ
ーザ部やリダクタ部へ伝わらなくなる。このため、天井
部や絞り部、ディフューザ部の壁面に付着した溶融スラ
グのガスによる押し上げが抑制され、ディフューザ部に
溶融スラグが滞留することも無くなる。更には、ディフ
ューザ部やリダクタ部で固相スラグが生長して、炉を閉
塞させるようなことも無くなる。

【００１０】

【実施例】図１は本発明の第１実施例を示す縦断側面
図、図２は図１のII−II矢視水平断面図である。本実施
例では、燃焼炉（３）の天井部（４）の内壁と絞り部
（２）の内壁の周方向４か所に、それぞれ鉛直な帯板状
のボルテックスブレーカ（１Ａ）を設置した。その板幅
は天井部（４）では広く、絞り部（２）では狭くした。
その結果、天井部（４），絞り部（２）の内壁面に付着
した溶融スラグのガスによる押し上げが無くなり、ディ
フューザ部（６）に溶融スラグが滞留することも無くな
った。

【００１１】図３は本発明の第２実施例を示す縦断側面
図、図４は図３のIV−IV矢視水平断面図である。本実施
例では、燃焼炉（３）の天井部（４）と絞り部（２）だ
けでなく、ディフューザ部（６）にも、下端からリダク
タバーナ（５）の位置までの内壁に、周方向に４か所、
それぞれ母線に沿って同一幅の板状のボルテックスブレ
ーカ（１Ｂ）を取付けた。その結果、本実施例において
も、天井部（４），絞り部（２）の内壁面に付着した溶
融スラグのガスによる押し上げが無くなり、ディフュー
ザ部（６）における滞留スラグも無くなった。

【００１２】なお、上記実施例では、いずれもボルテッ
クスブレーカ（１Ａ），（１Ｂ）を円周方向４か所に取
付けたが、これを１か所だけに設けても、可成りの効果
が得られることが確認された。

【００１３】

【発明の効果】本発明によれば、ディフューザ部におけ
る溶融スラグの滞留域が無くなるため、スラグの飛散が
生じなくなり、結果的に炉を閉塞させる固相スラグが発
生しなくなる。したがって、炉の長時間連続運転が可能
となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の第１実施例を示す縦断側面図で
ある。

【図２】図２は図１のII−II矢視水平断面図である。

【図３】図３は本発明の第２実施例を示す縦断側面図で
ある。

【図４】図４は図３のIV−IV矢視水平断面図である。

【図５】図５は従来の噴流床ガス化炉の石炭燃焼器の一
例を示す縦断側面図である。

【図６】図６は上記従来の石炭燃焼器の壁面部における
溶融スラグの流動を示す模式図である。

【図７】図７は上記従来の石炭燃焼器における溶融スラ
グの飛散、固化閉塞を示す模式図である。

【符号の説明】

（１Ａ），（１Ｂ） ボルテックスブレー
カ （２） 絞り部（スロート） （３） 燃焼炉 （４） 天井部 （５） リダクタバーナ （６） ディフューザ （７） リダクタ （８） 燃焼器バーナ （９） スラグホール （１０） バーナ噴流 （１１），（１２），（１３） 溶融スラグ （１４） ガス流れ （１５），（１６） 溶融スラグ （１７） 固相スラグ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 由則 長崎市飽の浦町１番１号 三菱重工業株 式会社長崎造船所内 (72)発明者 豊田 隆治 東京都千代田区丸の内二丁目５番１号 三菱重工業株式会社内 (72)発明者 中島 文也 東京都千代田区丸の内二丁目５番１号 三菱重工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平６−184551（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−81489（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−122911（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F23D 1/02 C10J 3/46

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒状の燃焼炉内で微粉炭を旋回燃焼さ
   せ、灰分を遠心力により炉壁で捕捉して上記燃焼炉の底
   部に落下させるとともに、燃焼生成ガスを上記燃焼炉上
   部の絞り部から円錐状のディフューザ部を経て炉外へ送
   り出すようにした石炭燃焼器において、上部燃焼炉の天
   井部と上記絞り部の内壁に板状のボルテックスブレーカ
   を取付けたことを特徴とする石炭燃焼器。
2. 【請求項２】 上記ディフューザ部の内壁に板状のボル
   テックスブレーカを取付けたことを特徴とする請求項１
   記載の石炭燃焼器。