JP3343666B2 - 温度補償方法及び装置 - Google Patents

温度補償方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人間の五感の一つで
ある味覚をもつセンサを用いてする飲食物の味の違いを
検出し、測定するようにした測定技術に関する。食品、
例えば飲食に供する飲料水、酒類などの味の違い、味の
差とでもいうべきものを検出する技術であり、これらの
食品の生産工場における品質管理に応用できる技術を提
供する。とくに、この発明は、これまで出願人らが特許
出願により開示してきた技術に関係して、脂質膜を用い
た味センサの測定値に対して施すべき温度補償の方法
と、その方法の実施に用いられる装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】味の基本要素として、塩味、甘味、苦
味、酸味、うま味があるとされており、それぞれに程度
の大小がある。ヒトの感覚は評価できるこれらの味の違
いは物理的に計測可能であることを、本願出願人らはい
くつかの特許出願により開示してきたところである。例
えば、特開平3ー54446号「味覚センサ及びその製
造方法」では、疎水性の部分と親水性の部分とをもつ分
子で成る脂質性物質の分子膜が人間の味覚に代わりうる
味覚センサとなることを示した。以後、いくつかの発見
的事実に基づいて、味の違いが例えば電位、電位差、抵
抗、電流といった電気量として物理的に計測可能な味又
は味の違いを測定できることを特許出願により開示して
きた。その一覧表を表1に掲げた。本願では、これらの
出願の開示部分については、要約を摘示するにとどめ、
記述の重複を避けるようにする。
【0003】
【表1】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】今までの出願人らの開
示の中には、測定の温度補償について触れているところ
がなかった。本願発明は脂質膜を用いた味センサ(以
下、単に味センサともいう)の測定値の温度補償を行
い、味もしくは味の違いの測定値の信頼度や精度を高め
ることを第一の目的としている。
【0005】味センサは、ヒトの味覚と同様に温度の影
響を受ける。そこで食品工場における品質管理などで、
微妙な味の差を識別する際には、測定系の厳密な温度管
理を行って、味の本質をとらえる精密な味の測定が求め
られる。とくに工場の生産、検査のラインや、屋外(人
が味覚を楽しむ多くの場所)では温度が変化し得る範囲
が広く、味センサの使用場所があまりに限定されるよう
では、味センサの実用化の上で好ましくないから、温度
補償の確実な方法が求められる。この方法を適用して、
温度差の大きい場所での使用と、異なる温度で得た測定
データの比較を可能とするような技術を提供することと
する。
【0006】味センサの種類によっては、測定するサン
プルにより、その温度特性が異なる場合があるから、未
知の温度特性をもつサンプルに対しても普遍的に適用で
きるような温度補償方法が求められる。味センサで例え
ば電位を物理的な計測量として捉えるタイプのものにあ
っては、測定経過時間を時、分という長期にとるとドリ
フトが大きく見られるところがあるから、この種の問題
にも対処できる方法であることが望まれる。
【0007】
【問題を解決するための手段】一般に温度補償をする技
術を考えると、測定温度付近における被測定物性の温度
変化特性を知り、多くの場合には温度係数によってその
特性を代表させて、温度差と温度係数との積に相当する
物性温度変化量を測定値に対して加減する補償方法をと
っている。ここで、補償の基幹となる温度係数を見る
と、温度関数である物性量の温度微分値、すなわち、相
異なる二つの温度における物性量の差を温度差で除した
値である。すなわち、〔被測定物理量〕を〔温度〕で除
した次元をもつ量を用いた温度補償である。これに対し
て、この発明では、脂質膜を用いた味センサのもつ固有
の特徴に対応するために、温度係数の差をよりどころと
して温度補償を行う点に特徴がある。
【0008】さらに、この発明では、温度係数の差をそ
のまま補償量を算出するための演算に用いるのではな
く、温度係数を被測定物理量で正規化した値(温度係数
差正規化値)従って、〔温度〕のマイナス1乗の次元を
もつ量を用いた温度補償を行うことを特徴としている。
【0009】
【作用】この発明でする温度補償の仕方を数式を用いて
詳しく述べる。これまでの脂質膜を用いた味センサに関
する諸実験から次の三つの仮定が成立することが発見さ
れている。
【0010】(1)味センサは脂質膜を使用しており、
その脂質はいろいろな種類の味に応答することができる
ものであるから、厳密に味のセンサの温度補償を解析す
るときにはマトリックス代数によるべきであり、味の種
類による味センサの温度特性の差を吟味するべきことに
なる。例えば、食塩水(塩味)と、しょ糖液(甘味)と
は味の種類が全く異なるから、両者のサンプルに対する
味センサの温度特性は異なったものとなる。これはヒト
の感覚でも体験できるもので、塩味と甘味とでは温度に
よる感じ方に差があると言うべきであろう。
【0011】しかし、味センサの用途の多くは、ある種
の食品工場での品質管理であるから、測定対象は単品種
例えば日本酒であり、銘柄による味の質が多少の差異が
あるとしても、所詮それは日本酒の範囲であり、味の質
の差による味センサの温度特性の差はしばらく棚上げと
して、単純なモデルで考察を進めることとする。(実
際、後述するところであるが、日本酒の実験例を見る
と、この棚上げは妥当なもので、味の質の差による味セ
ンサの温度特性の差は無視できることが判った。)従っ
て、以下の考察では、味の種類あるいは味の質による味
センサの温度特性の変化は無視することとする。言い換
えれば、味センサの出力fは、味物質の濃度Cと、温度
T〔°C〕との二つに依存する。温度補償を施すという
ことは、サンプル液及び基準液のそれぞれについての実
測値f(Cs,Ts)及びf(Cr,Tr)に温度補償
を施して、温度Toにおける計算値(推定値)f(C
s,To)及びf(Cr,To)をそれぞれ求めること
である。
【0012】(2)味センサの出力f(C,T)は、変
数が温度Tの関数であるg(T)及びh(T)を用いる
と、次のような表式で表わされるものとみてよいことが
発見された。 f(C,T)=g(T)×logC+h(T) (1) 式1の意味は、測定対象を一つの品種(日本酒)に絞る
と、そのような狭い範囲では、温度の如何によらずに
(logC)という値とともに直線的にセンサの出力が
変化することを示している。
【0013】(3)単純な考え方をするために、味セン
サの温度特性が温度Tに対して線形であると仮定する。
この発明の技術的思想を理解すれば、この仮定は必ずし
も必要ではないことが後に判明すると思う。味センサの
温度感度(温度係数)S〔mV/°C〕は温度Tの関数
とはならないことを意味するから、式1を温度で微分し
て得た式2では、 S=(∂f/∂T)=g’(T)×logC+h’(T) (2) のg’(T)とh’(T)とはそれぞれ定数となる。
【0014】図1はこの発明の技術思想の概念を説明す
るための図で、横軸は測定する味をもつ液体(例えば日
本酒)の温度(液温)〔°C〕を表し、縦軸はセンサの
出力電位〔mV〕を表している。図中の直線Aは、基準
液についてのある味センサの出力の温度特性を示してい
る。温度目盛上の三つの点はそれぞれ、基準温度(この
温度での味を味センサで測定して求めようとしている)
To,測定時に基準液が呈している温度Tr,被測定サ
ンプル液が呈している温度Tsである。この発明では、
先ず、基準液を測定したときの該味センサの出力値の温
度係数S(Cr)を求める。図1における直線Aの勾配
がS(Cr)である。これにより、サンプル液温度Tr
における点PA 〜PO 間の大きさを示す白矢印の量S
(Cr)(Ts−Tr)が求められる。次に、別の種類
の液体(例えば別種の日本酒)について同じ味センサの
センサ出力対液温特性を測定して、直線Bを得る。図で
は、直線Bは直線Aよりも勾配が大きい。言い換えれば
温度係数は大きいから、液温Tsで見ると、PB の値
(センサ出力値)はPA よりも大きな値をもっている。
この差をどのように見るかがこの発明の重要な点であ
る。
【0015】基準温度Toにおける直線Bと直線Aとの
差を単位量1と仮定して、液温Tsにおける直線Bと直
線Aとの差(PB とPA との差)を表すようにすると、
(PB −PA )=(PB −P1 )+(P1 −PA )であ
る。ここで式2より S(Cs)=g’(T)logCs+h’(T) =g’(T)log(Cs/Cr)+S(Cr) ={g’(T)/g(To)} ×{f(Cs,To)−f(Cr,To)}+S(Cr) (3) g’(T)は定数であるから、g’(T)/g(To)
も定数となり、これをaと置くと、(PB −P1 )=a
(Ts−To)となり、(PB −PA )は1+a(Ts
−To)に等しいと書ける。ここでaは直線Aを得た液
と、直線Bを得た液とのそれぞれの温度係数の差を単位
量1の目盛で測定したものであるから、温度係数差を正
規化した値ということができる。
【0016】別な日本酒のサンプルU,Vについても、
同種の温度特性直線C,Dを得ることができる。この発
明の温度補償では、サンプル液温度でのセンサ出力値U
s,Vsから、基準温度におけるセンサ出力値Uo,V
oを推定することになる。前記の仮定(1),(2),
(3)の下では、直線AとBとの間の関係は直線C(外
挿の場合)にも、直線D(内挿の場合)にも成立すると
見ることができるから、基準液における味センサの温度
感度S(Cr)と、サンプルにおける味センサの温度感
度S(Cs)との間には次の関係が成立する。 △f(To)=f(Cs,To)−f(Cr,To) =〔{f(Cr,Ts)−f(Cr,Tr)}−S(Cr)(Ts−Tr)〕 ÷{1+a(Ts−To)} (4)
【0017】以上の説明から類推できるところではある
が、温度係数の差の正規化値aを求めるときには、必ず
しも直線Aと直線Bとの間の関係として捉えなければな
らないというものではなく、直線A,B,C,Dのうち
少なくとも二種類の関係を利用すればよいことになる。
直線A,B,C,Dについて相互の関係の平均値を求め
ることによってもよいが、それほど面倒なことをする必
要もなく、B,C,Dのいずれかを基準液特性直線Aの
代用としてもよい。以上の説明では、簡単のために、温
度変化が直線の例について述べたが、微分概念を導入す
ればセンサ出力の温度特性が曲線のものであっても、こ
の発明の思想を適用できることは明らかであろう。
【0018】
【実施例】
〔第一の実施例〕まず、作用の項で述べた(2)及び
(3)の仮定が正しいかどうかを確かめるために、基本
味についての実験を行った。そのうち、ここでは塩味に
対する例をあげて説明する。実験はKCl水溶液の濃度
を変えて、センサ出力の温度係数(温度感度)の変化を
見た。味センサは多チャンネルのものを用い、KCl水
溶液であるサンプル液の濃度を10,100,1000
mMとし、サンプルの温度はほぼ10°C,20°C,
30°Cとした。味センサの電位を縦軸に、基準温度か
らの温度差を横軸にとり、第1ないし第4チャネルにつ
いての結果を図2(a),(b),(c)に、第5及び
第6チャンネルについの結果を図3(a),(b),
(c)に示した。この測定結果から各チャンネルについ
ての温度係数(温度感度)対被検液のセンサ出力をほぼ
20°Cのときの値としてプロットしたものが図4
(a),(b),(c)及び図5(a),(b),
(c)に示してある。図は順に図4(a)が第1チャン
ネルに、図5(c)が第6チャンネルに対応している。
【0019】図2及び図3の結果を表にして示すと表2
のように表すことができる。また、図4及び図5の結果
から、被検液の濃度変化による味センサの温度感度(温
度係数)の変化率〔1/°C〕を濃度差による味センサ
の出力で正規化した値を表にしたのが表3である。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】官能における人の識別能力を評価する指標
としてウェバー(Webber)比と呼ばれるものがあ
る。刺激の量を変化させていって、最初の刺激の何%変
化させると最初の刺激と区別がつくかを計る指標であ
る。味の世界では、刺激の強さを味物質の濃度で表して
いる。つまり、味の質は同じで強度(濃度)のみ変えた
2つの溶液(濃度Cと濃度C+c)を飲み比べて両者の
違いを識別する(但し、どちらが濃い、薄いという識別
はいらない)。この場合のウェバー比はc/C×100
%である。味に関するウェバー比は、一般の人の場合、
約20%で、工場間の差やロット間の差を識別して品質
管理を行うテイスター(パネラー)の場合、5%と言わ
れている。そこで、味センサの工業的な使用を考えると
ウェバー比5%の識別が必要となる。
【0023】味センサ出力は人の場合と同様に濃度の対
数(logC)に比例し、また、濃度が10倍変化する
と出力は約40mV変化するので、ウェバー比5%の濃
度差によるセンサ出力の変化は約40×log1.05
=0.85mVとなる。ウェバー比5%の識別を行うた
めには、温度の変動による誤差は0.85mVより十分
小さくなければならない。しかし、表2を見ると溶液の
温度変化1°C当たりで、ほぼ同程度の変動がある。こ
のことからすると、温度の制御は0.1°C程度の精度
で行う必要があるが、現実には非常に難しく、温度補償
は是非必要である。さらに、表2より、サンプル液が異
なると温度感度が大きく異なるため、従来の一般のサン
プル液によらない温度感度だけからの温度補償では、誤
差が大きく十分でないことが分かる。
【0024】〔第二の実施例〕基本味について説明した
実施例の展開を、日本酒についても実施した。ある特定
銘柄の日本酒(京都府伏見区に工場があり、生産管理が
よく行われているある酒造会社の市販製品)を基準液と
し、それに純水を加えて希釈したり、みりんのような日
本酒に似た甘味物質を少量添加することにより、味セン
サ出力対温度の特性曲線は図1において直線群A,B,
C,Dで示したような一群の特性曲線群となる。
【0025】図6は上述の特定銘柄について、四つの味
センサについてのセンサ出力電位対温度の特性曲線を示
している。図7には四種類の日本酒について、同じセン
サの出力電位対温度特性を示した。図中(a)は純米酒
と呼ばれるもの、(b)は本醸造酒と呼ばれるもの、
(c)はアルプス吟醸と呼ばれるもの、(d)は合成酒
と呼ばれているものについてのデータをそれぞれ示して
いる。図6及び図7から、いずれの種類の日本酒につい
ても、特性曲線が直線で表わされることが明確に示され
ている。これらの測定結果から、味センサ出力の温度係
数(温度感度)を味センサ出力に対してプロットし、一
応の回期直線を併記したものが図8である。作用のとこ
ろで述べた線形近似の仮定が合理的なものであることが
検証されたことになる。
【0026】〔第三の実施例〕第一,第二の実施例で示
した実験事実に基づいて、温度感度(温度係数)の差の
正規化値a(1/°C)を用いてする温度補償の方法の
流れは次のようなものとなる。フロー図(図9)と請求
項1とを参照されたい。この発明の脂質膜を用いた味セ
ンサの測定値の温度補償方法は次の各段階を経由する。 1°基準液を測定したときの前記味センサの出力値の温
度係数を求める。 2°基準液の求めたい温度Toにおける味センサの出力
を計算するか測定しておく。 3°基準液以外のサンプルにおける温度係数S(Cs)
を求める。 4°サンプルの求めたい温度Toにおける味センサの出
力を計算するか測定しておく。 5°1°で求めた温度係数をその一として用いてもよい
が結局は、前記味センサの出力値が異なる少なくとも2
種類の液を測定したときのそれぞれの前記味センサの出
力値の温度係数から温度係数の差の正規化値を求める。
この際、測定値にバラツキがあれば最小自乗法などの平
均値手法を演算で用いるとよい。 6°前記基準液を測定したときの前記味センサの出力値
とその基準液の温度とを求める。 7°前記被測定液を測定したときの前記味センサの出力
値とその被測定液の温度とを求める。 8°前記段階で求めた値を用いて所望温度における前記
基準液を測定したときの前記味センサの出力値と被測定
液を測定したときの前記味センサの出力値との差を演算
する。 こうして温度Toにおける味センサの出力値すなわち味
を測定する。
【0027】〔第四の実施例〕この発明の請求項2にあ
げた温度補償装置の要部の機能ブロック図を図10に示
した。図10の減算部11では、温度が同じとき味セン
サ出力の異なる2つのサンプル液A,B(どちらか一方
は基準液でもよい)に対し、各々のサンプル液における
味センサの温度係数を入力して、それらの温度係数の差
を計算する。正規化部12では、上記減算部11の出力
と温度Toにおける前記A液,B液に対するセンサ出力
の差とを入力して、前者を後者で割って正規化し、定数
aを算出する。演算部20は、正規化部12の出力a、
基準液における味センサの温度係数S(Cr)、被検液
と基準液の温度TsとTr、及び被検液と基準液を測定
したときの味センサ出力の差{f(Cs,Ts)−f
(Cr,Tr)}を入力して、式4の演算を行い、温度
Toにおける被検液と基準液を測定したときの味センサ
出力の差{f(Cs,To)−f(Cr,To)}を算
出する。
【0028】〔第五の実施例〕これまでの説明では、作
用の項で述べたように、発明の理解を容易にするため
に、特性曲線が線形であると仮定してきた。しかし、温
度係数が定数ではなく、微分値で表わされる温度感度と
して捉えれば、味センサ出力対温度特性が非直線の場合
にも適応することができることは自明であろう。
【0029】味センサ出力の温度特性が温度Tに対して
非線形な場合を、説明を簡単にするために、式1のg
(T)、h(T)が温度Tの2次式で近似できるとして
説明する。ただし、一般のn次式での近似でも以下の議
論は同様にできる。まず、基準液における味センサ出力
の温度特性は、温度Tの2次式で近似できるとすると、
温度の異なる少なくとも3点(ただし、3点の液温の内
の1点はToでも良い)の出力を計測すれば、温度特性
曲線は求めることができる(n次式の近似の場合、温度
の異なる少なくとも(n+1)点の出力を計測すれば良
い)。具体的には、味センサ出力の基準液における温度
特性曲線をe(T)とする。基準液において各々異なる
T0、T1、T2の温度におけるセンサ出力を計測す
る。各々の温度Tiに関し(i=0〜2) e(Ti)={f(C0、Ti)−f(C0、T0)} (5) より、e(T)を求めることができる。
【0030】温度特性曲線より、任意の温度Tにおける
味センサ出力の補償値を求めることができるので、温度
Tをサンプルの液温Tsに合わせた味センサ出力の補償
値f(Cr、Ts)を実験値f(Cr、Tr)と温度T
の2次式e(T)より以下のようにして計算できる。 f(Cr、Ts)=f(Cr、Tr)−{e(Tr)−e(Ts)} (6) サンプル液の温度と基準液の温度が等しい場合、式1を
用いると f(Cs、Ts)−f(Cr、Ts)=g(Ts)×log(Cs/Cr) ={g(Ts)/g(T0)}{f(Cs、T0)−f(Cr、T0)}(7) となるので、補償値{f(Cs、T0)−f(Cr、T
0)}は、g(T)が分かれば良い。式1より、 δf(C、T)/δlogC=g(T) (8)
【0031】つまり、g(T)は、味センサの濃度の対
数(logC)に対する傾きを意味している。濃度Cの
変数を持たないので、濃度の異なる少なくとも2種類の
サンプル(その2つの内の1つは基準液でも良い)にお
けるセンサ出力差(ただし、2つのサンプルの液温は同
じ)より傾きは求めることができる。g(T)は、温度
Tの2次式で近似できるとすると、液温の異なる少なく
とも3点(ただし、3点の液温の内の1点はT0でも良
い)における傾きを求めることでg(T)を特定できる
(n次式の近似の場合、温度の異なる少なくとも(n+
1)点における傾きを求めれば良い)。
【0032】例えば、基準液に対して味の質が同じで濃
度がk倍(k≠1)の濃さのサンプル液を用意し、基準
液とサンプル液のそれぞれに関し、各々異なるT0、T
1、T2の温度におけるセンサ出力を計測する。式1よ
り各々の温度Tiに関し(i=0〜2) g(Ti)={f(kC0、Ti)−f(C0、Ti)}/log(k)(9) より、g(T)を求める。ただし、実際には、味センサ
はいろいろな味に反応し、味毎に対する感度も異なるの
で、どの味を使ってg(T)を求めるかによりg(T)
の結果が異なる。各味毎の濃度Ciとその味に対する味
センサの感度をαiとし、濃度Cが各味の濃度の総和で
表される、つまり C=Σαi*Ci とすると式8は δf(C、T)/δlogCi=αi×g(T) (10) となり、濃度を変える味毎で異なる。しかし、求めたい
のは、g(Ts)とg(T0)の比より、αiは消える
ので、問題無い。
【0033】結局、補償値{f(Cs、T0)−f(C
r、T0)}は、式6と式7より f(Cs、T0)−f(Cr、T0)={f(Cs、Ts)−f(Cr、Tr) +e(Tr)−e(Ts)}×{g(T0)/g(Ts)} (11) (ただし、e(T)とg(T)は、式5と式9で求めら
れる。)e(T)は、基準液に関する味センサの出力特
性であり、温度Tの1次の場合 e(T)=S(Cr)(T−T0) (12) となる。式4の分子の部分がそれに対応する。g(T)
は、味センサの濃度勾配であり温度Tの1次の場合、式
4のaは、g’(T)/g(T0)に相当し、式4の分
母の1+a(Ts−T0)は、g(Ts)/g(T0)
に相当する。
【0034】
【発明の効果】この発明では脂質膜を用いた味センサの
出力値に対して温度補償を施して、測定温度とは異なる
基準温度における味の値を推定する方法及び装置を示し
た。温度補償の方法は、従来の技術のように単に温度係
数と温度差の積を測定値に加(減)するのではなく、二
つの温度係数の差をセンサの出力値で正規化した値を用
いることとした。すなわち、温度係数という二つの異な
る温度における出力値の差を温度で除した値について、
二つの種類間での差をとり、それを正規化した値を利用
することとしたから、次に挙げるような特徴が得られる
ものとなった。
【0035】1.脂質膜を用いた味センサによる測定値
から、基準温度における味の値を求めることができるよ
うになった。 2.味の工業的な測定に、温度をパラメータとして加え
た評価ができるようになった。 3.測定値とヒトの味覚との対応を一層明確なものと
し、ウェバー比において、それが明瞭に示されるものと
した。 4.同系統の食品(例えば日本酒)について、二種類に
ついの温度特性を知ることにより、他のものについても
内挿又は外挿による温度補償を可能にした。言い換えれ
ば、差の差を補償における重要な因子としたから、温度
補償を普遍的なものとし、かつ、誤差の少ない温度補償
法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の技術思想の概念を説明するための図
である。
【図2】KCl水溶液を測定したときの第1ないし第4
チャンネルの味センサ出力の温度係数を示すグラフであ
り、(a)はKCl10mMのとき、(b)はKCl1
00mMのとき、(c)はKCl1000mMのときの
グラフである。
【図3】KCl水溶液を測定したときの第5及び第6チ
ャンネルの味センサ出力の温度係数を示すグラフであ
り、(a)はKCl10mMのとき、(b)はKCl1
00mMのとき、(c)はKCl1000mMのときの
グラフである。
【図4】約20°Cにおける第1ないし第3チャンネル
の温度係数対被検液のセンサ出力を示すグラフであり、
(a)は第1チャンネル、(b)は第2チャンネル、
(c)は第3チャンネルのグラフである。
【図5】約20°Cにおける第4ないし第6チャンネル
の温度係数対被検液のセンサ出力を示すグラフであり、
(a)は第4チャンネル、(b)は第5チャンネル、
(c)は第6チャンネルのグラフである。
【図6】特定銘柄の日本酒について、4つの味センサの
出力電位対温度の特性曲線を示すグラフである。
【図7】四種類の日本酒について、4つの味センサの出
力電位対温度の特性曲線を示すグラフである。
【図8】五種類の日本酒の測定結果から、味センサ出力
対温度係数の特性曲線を示した.ラフである。
【図9】この発明の温度補償方法の流れを示す図であ
る。
【図10】この発明の温度補償装置の要部の機能ブロッ
ク図である。
【符号の説明】
10 温度係数差正規化値演算手段 11 減算部 12 正規化部 20 演算部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 都甲 潔 福岡県福岡市東区美和台2丁目8番32− 2号 (56)参考文献 特開 平3−54446(JP,A) 特開 平3−163351(JP,A) 特開 平5−232083(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/416 G01N 33/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脂質膜を用いた味センサの測定値の温度
    補償方法であって、 基準液を測定したときの前記味センサの出力値の温度係
    数を求める段階(1)と、 前記味センサの出力値が異なる少なくとも2種類の液を
    測定したときのそれぞれの前記味センサの出力値の温度
    係数から温度係数の差の正規化値を求める段階(2,
    3,4,5)と、 前記基準液を測定したときの前記味センサの出力値とそ
    の基準液の温度とを求める段階(6)と、 前記被測定液を測定したときの前記味センサの出力値と
    その被測定液の温度とを求める段階(7)と、 前記諸段階で求めた値を用いて所望温度における前記基
    準液を測定したときの前記味センサの出力値と被測定液
    を測定したときの前記味センサの出力値との差を演算す
    る段階(8)とを含む温度補償方法。
  2. 【請求項2】 脂質膜を用いた味センサの出力値が異な
    る少なくとも2種類の液について、それぞれの味センサ
    の出力値の温度係数から温度係数の差の正規化値を演算
    する温度係数差正規化値演算手段(10)を備えた味セ
    ンサの温度補償装置。
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