JP3341902B2 - 発光装置およびその中で使用する分子 - Google Patents

発光装置およびその中で使用する分子

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    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
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    • C07C13/28Polycyclic hydrocarbons or acyclic hydrocarbon derivatives thereof
    • C07C13/32Polycyclic hydrocarbons or acyclic hydrocarbon derivatives thereof with condensed rings
    • C07C13/62Polycyclic hydrocarbons or acyclic hydrocarbon derivatives thereof with condensed rings with more than three condensed rings

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、光を発生する装置、およびその中で使用す
る分子に関する。さらに詳細には、本発明は、間に分子
を挟んでトンネル距離にある2つの電極を含む装置に関
する。この分子は、中央エンティティ(entity)とも呼
ばれる第1エンティティと、その分子の中央エンティテ
ィをそれが載る電極から電気的に切断する、周辺エンテ
ィティとも呼ばれる少なくとも1つの第2エンティティ
とを含む。「電気的に切断(decouple)する」という用
語は、中央エンティティと電極の間の距離を、分子が電
極上に化学吸着または物理吸着された場合より大きく保
つ助けとなる要素として働く作用として理解されたい。
換言すれば、ここで述べる意味で電気的に切断された第
1エンティティとその電極との相互作用は、物理吸着ま
たは化学吸着された第1エンティティとその電極との相
互作用より小さい。この相互作用は、通常は、第1エン
ティティの軌道と電極の軌道との重なりによって定義さ
れる。
発明の技術分野および背景 走査トンネル顕微鏡を用いて、トンネル接合の特性が
調査されている。
Proc.NATO ARW on Near−Field Optics(SNOM),Besa
ncon,France、1992年10月26日から28日、333〜340ペー
ジの、Gimzewski、Berndt、Schlittler、Kinnon、Wella
nd、Wong、Dumas、Syrikii、Salvan、およびHallimaoui
による「Optical Spectroscopy and microscopy using
scanning tunneling microscopy」と題する刊行物によ
れば、金属チップと金属または半導体の試料表面との間
のトンネル電流は、弾性電子トンネル・プロセス、およ
びチップ試料領域からの光子の放出を引き起こす非弾性
プロセスからなることが分かっている。
チップと金属基板との間のトンネル接合についてのよ
り詳細な情報は、Proc.NATO ARW on Photons and Local
Probes、189〜208ページの、Gimzewskiによる「Photon
emissi on from STM:Concepts」に見ることができる。
金属表面は、一定のトンネル電流に対して、約3.5Vの立
ち上がり電圧から始まるいくつかの極大値を有する発光
強度分布を示す。
Surface Science、1994年、1033〜1037ページの、Ber
ndt、Gaisch、Schneider、Gimzewski、Reihl、Schlittl
er、およびTschudyによる「Sub−nanometer lateral re
solution in photon emission from C60 molecules on
Au(110)」と題する論文では、走査トンネル顕微鏡の
チップを局在電子源として使用して、Au(110)表面上
の整列した単分子層のC60分子のからの光子の放出を励
起している。分子からの光子放出強度は、その下のAu基
板から観察された強度の約3分の1である。チップの試
料への近接近は、チップおよび試料によって形成される
空洞中の強い電界を特徴とし、したがってトンネル電子
と強く相互作用する、局在化プラズモン・モードを誘導
する。Au基板からの光子の放出は、C60分子をトンネル
するときに強く抑制される。
発明の目的および利点 請求項1によれば本発明の目的は、従来知られている
装置より高い効率で光を発生することができる装置を提
供することである。
得られる発光効率は、OLED、およびポーラスシリコン
などのその他の既知の発光素子で見られる外部効率より
数桁大きい。したがって、これは、多くの光を必要と
し、かつ/またはわずかな電力しか使用することができ
ない、かつ/またはわずかな空間しか使用することがで
きないような、広範囲な適用分野を提供する。
互いに対して相対的に移動できるように周辺エンティ
ティが中央エンティティに結合されると、分子は、その
間にトンネル接合部を有する電極によって構築された空
洞に適合することができる。この適合は、放射遷移の周
波数スペクトル、特にП−П遷移の周波数スペクトル
の強度ピークと、チップ誘導プラズモン・モード(tip
−induced plasmon mode)の周波数スペクトルの強度ピ
ークとの間により良好な合致を生じるものと考えられ
る。この適合は、滑らかな遷移、および振動遷移として
起こることができる。
分子は、第1電極にピン止めすることができるときに
は、対応するピンニング電圧を印加することによって2
つの電極の間に固定することができる。この方法では、
ピンニング電圧を印加して、第1電極上に気相で存在す
る多数の分子の中のある分子をうまくピン止めする。ピ
ンニングにより、分子を強制的に発光を生み出すのによ
り適した立体配座にする。
分子は、第1電極と第2電極の間の空洞のスペクトル
の強度ピークの周波数と少なくともほぼ等しい放射周波
数、特にП−П遷移の周波数を有するときには、適合
を受ける必要はない。
中央エンティティが周辺エンティティと比較して基本
的に平面状の立体配座であるときには、中央エンティテ
ィと第1電極の間のただ1つの距離を制御すればよいの
で、電気的切断の前提条件はより容易に満たされる。
第1電極が結晶基板を備えるときには、分子が載るこ
とのできる固有結合位置をこの基板が提供するので、こ
の分子をより容易にピン止めすることができる、すなわ
ちこの分子はより容易に水平方向に固定された位置に留
まる。また、結晶構造が分子を強制的に回転させ、また
はその形状を変化させ、あるいはその両方を行って、分
子が最も効率的に発光するのに必要な立体配座に自動的
に等しく、またはこれに近くなる、最良のエピタキシャ
ル合致条件および/または立体配座を見い出すことも可
能である。
発明の概要 本発明は、互いにトンネル距離にある2つの電極を含
む装置中で、発光体として分子を使用することに関す
る。このようなトンネル距離は、ナノメートルの範囲を
超えるよりはナノメートル以下の範囲となる方がよく、
電極間でトンネル電流を流すことができる距離である。
分子は、例えば、テトラサイクリンを中央エンティテ
ィとし、第3ブチルを中央エンティティに対して移動可
能な周辺エンティティとして、第3ブチルで置換したテ
トラサイクリンである。分子は、そのエンティティの状
態に依存して、いくつかの安定または準安定の立体配座
を有する。これらの状態は、分子の内部結合力、すなわ
ち周辺エンティティと中央エンティティとの間の結合
力、およびエンティティと環境との間の結合力によって
決定される。分子は、電極の一方として働く結晶基板上
に位置することが好ましい。したがって、分子の内力お
よび基板に対する力が立体配座を決定する。第1立体配
座では、周辺エンティティは、中央エンティティと基板
との間の力より優勢な基板に対する結合力を有する。換
言すれば、中央エンティティは、それと基板との間の力
が基板と周辺エンティティとの間の力より弱くなるほど
基板から離れている。ただし、周辺エンティティと基板
との間の結合力は、分子がその水平位置で固定されない
程度に十分に弱い。したがって、分子は、室温で基板表
面上を浮動する。
もう1つの立体配座は、中央エンティティと基板との
間の力によって支配される。この場合には、中央エンテ
ィティは、結合力が中央エンティティを基板に保持する
のに十分なほど基板に接近している。この立体配座で
は、分子はその位置のまま保たれ、したがってピン止め
立体配座とも呼ばれる。この立体配座の周辺エンティテ
ィは、何らかの方法で変形され、または屈曲する、ある
いはより一般的にはそれらの平衡位置すなわちそれらが
第1立体配座でとる位置から動かされる。中央エンティ
ティと基板との間の保持力は、分子を第1立体配座に戻
そうとする周辺エンティティと中央エンティティとの間
の結果的に生じる復元力より強い。分子は、基板と中央
エンティティとの間および周辺エンティティと基板との
間の合成力によって不動となる。
分子は、2つの安定した立体配座間で切り替わること
ができる。この切替は、電圧によって誘導されるが、機
械的エネルギーを介して起こることもできる。この切替
は可逆である。ただし、選択した分子のタイプによって
は不可逆な切替となる可能性もある。
基板中に電流が流れることができると、発光が起こ
る。基板は、所定の表面構造、すなわち結晶基板ではそ
れに存在する結晶面を有することができる。発光は、
{111}面や{100}面など、様々な面で起こる。銅、
金、または銀は、この効果が見られる例示的な基板材料
である。多結晶材料やアモルファス材料など、その他の
基板材料も同様に働く。
STMのチップは、基板に対して電磁気空洞を構築す
る。周辺エンティティは、基板に対する中央エンティテ
ィについてのスペーサとして働く。チップの材料または
非導電チップの被覆として、タングステンその他の金属
を選択することができる。発光をさらに促進することが
できるその他のチップ材料を選択することもできる。
この効果は、電磁気空洞と、対称性などの分子の特性
または分子のエネルギー準位/軌道の配列あるいはその
両方との間の相乗プロセスとして理解される。例示的に
使用されるテトラサイクリンなど、適当な分子は、立体
配座のフレキシビリティ(flexibility)を有する。こ
のことは、適当な分子は2つ以上の安定状態を有する必
要がなく、様々な不安定な立体配座を有することができ
ることを意味する。空洞との相互作用の結果として時と
ともに立体配座が変化するタイプにすることもできる。
基板の電子または結晶あるいはその両方の構造は、発
光の色、したがってその波長または周波数を決定する役
割を果たすこともできる。分子が基板上に載っていると
きには、その立体配座は少なくとも部分的にはその基板
の構造によって決定される。中央エンティティと基板と
の間の距離もやはり立体配座によって直接決定され、し
たがってその結果生じる分子の電子レベルも決定され
る。
この考えは、その中央エンティティが基板表面から間
隔をあけるように、基板上のスペーサとして働く周辺エ
ンティティの上に位置する分子を基板上に設け、電極間
を流れる電流を与えることによって発光を生じるもので
ある。この電流は、少なくとも部分的には分子を通って
流れることができる。分子が固有の立体配座のフレキシ
ビリティを有するときには、発光の強度は増加する。電
流は、好ましくは中央エンティティに近接するトンネル
・チップによって提供される。分子のフレキシビリティ
は、基板によって影響を受けることがある。
可能な配列は、その立体配座の一方で結晶基板上に載
り、電流を供給されて、その2つの立体配座の間で交互
に切り替わるか、またはほぼ安定した立体配座の周りで
振動する、少なくとも双安定の分子である。圧力、湿
度、および温度といったパラメータは、それらが任意の
通常のトンネル・プロセスを妨げることになる範囲を除
けば重要でないと考えられる。
図面の説明 本発明の例を図面に示し、例示を目的として以下に詳
細に記述する。
第1図は、基板上のチップおよび分子の配列を示す図
である。
第2図は、第1のタイプの分子を示す図である。
第3図は、第2のタイプの分子を示す図である。
第4図は、1つの分子について、電圧およびトンネル
電流の関数として光子強度を示す図である。
第5図は、発光現象を説明するために使用される図で
ある。
全ての図は、分かりやすくするために実際の寸法では
示しておらず、また各寸法の間の関係も実際の比率では
示していない。
発明の詳細な説明 以下に、本発明の様々な例示的な実施形態を記述す
る。
第1図に、発光を生じさせる配列を示す。導電性基板
1の形状をした第1電極は、単一の分子5を担持する。
分子5の上に第2電極6として、動作電圧に応答してチ
ップ6と基板1の間を電子がトンネル効果で通り抜け、
それによりトンネル電流Itを発生させることができる距
離に、微細な導電性チップ6が配列される。基板1は、
{111}方向に切断した銅結晶などの導電性結晶材料で
ある。トンネル電流Itが流れているときには、分子5は
エネルギーhνの光を放出する。適当な環境にチップ6
を提供する装置として、従来のSTM(走査トンネル顕微
鏡)を使用することができる。チップ6は例えば、タン
グステンで作成または被覆することも、その他任意の導
電性材料で作成する、または例えば金で被覆したガラス
などその他任意の導電性材料で被覆することもできる。
第2図に、第1図の分子5をさらに詳細に示す。分子
5は、ここでは六角および五角の芳香族炭素環からな
る、以下では中央エンティティ4と呼ぶ第1エンティテ
ィを含む。この図では、炭素原子は黒色の円盤で示す。
分かりやすくするために末端の水素原子は示していな
い。中央エンティティ4には、以下ではt−ブチルまた
はt−Bu付着物とも呼ぶ第3ブチルが付随したフェニル
基からなる、以下では周辺エンティティ3と呼ぶ4つの
第2エンティティが結合される。この図では、tブチル
付着物は白色の円盤で示す。周辺エンティティ3は、導
電性基板1と接触し、中央エンティティ4を基板1の表
面から離して保持することができる分子5の一部分を表
すので、以下では「レッグ(脚;legs)」とも呼ぶ、中
央エンティティ4は、中央エンティティ4に対して相対
的に様々に異なる位置を有することができるレッグ3と
比較すると、ここでは基本的に平面状の空間構造を有す
る。こうした異なる位置は、分子5の立体配座と呼ばれ
る。したがって分子5は、ある意味で、可動脚部を有す
るテーブルにたとえることができる。この分子5の2つ
の立体配座の間の変化は、急激なプロセスがなく、環境
の影響に依存した、滑らかな遷移である。
分子5は、ステップのエッジで核形成し、またはテラ
ス上に2次元気体状態相で存在して、基板1に付着す
る。この気体状態相を、以下では第1立体配座と定義す
る。この第1立体配座で、中央エンティティ4は、中央
エンティティ4と基板1との間の結合力を無視できるほ
ど十分に基板表面から間隔をあけて位置決めされる。し
かし、レッグ3と基板1との間の結合力は、分子5を基
板1に付着した状態に保つが、これは垂直方向のみであ
る。分子5は水平方向には可動状態のままとなり、例え
ば熱励起によって基板表面上で流動する。この状態は、
分子5の2次元気相とも呼ばれる。
第2立体配座は、中央エンティティ4が基板1に十分
に接近し、中央エンティティ4と基板1の間の結合力が
大幅に増大し、分子5の水平方向の定着をもたらすとき
の分子5の状態として定義される。この立体配座は、分
子5の「ピン止め状態」とも呼ばれる。しかし、この状
態では、分子5の中央エンティティ4は依然として電気
的には基板1から切断されたままであり、これは、その
П軌道が基板1のそれぞれのП軌道と強く混合して
いないことを意味する。
これと対照的に、分子5の中央エンティティ4は、基
板表面に化学吸着または物理吸着された場合には、基板
1に電気的に結合することになる。切断状態の分子5の
中央エンティティ4と基板1との間の距離は、基板1上
に化学吸着または物理吸着去れた場合より離れている。
換言すれば、中央エンティティ4と基板1との間の相互
作用長さは、切断状態の方が短くなる。この相互作用長
さは、基板1の軌道と中央エンティティ4の軌道とが重
なる長さである。一般に、分子5の中央エンティティ4
は、基板1上に化学吸着または物理吸着されていないと
きは、切断状態にある。中央エンティティ4が切断され
ていることは、周辺エンティティ3も切断されているこ
とを意味するわけではない。周辺エンティティ3は、例
えばそれが基板1で化学吸着および/物理吸着されるこ
とにより、中央エンティティ4を間接的に基板1に結合
する中間要素として機能することができる。こうして、
中央エンティティ4が基板1に直接結合されたわけでは
ないが、分子5が基板1に電気的に結合されたものと見
なすことができる。したがって、ここで述べる意味で
は、中央エンティティ4は基板1に直接電気的に結合さ
れず、したがって基板1に直接化学吸着または物理吸着
されない。
2.5Vを超える電圧を、その中の分子5とのトンネル接
合部に印加すると、分子5は第1立体配座からピン止め
状態となる。この動作電圧の値は、ピンニング電圧と呼
ばれる。いくつかの分子5が気相からピン止め状態にな
ると、これらの分子5は、自己集合して基板表面上で2
次元アイランドとなる。分子5の中央エンティティ4は
また、分子5がチップ6から電気的に切断されている距
離だけチップ6から離れている。
分子5は、記述した2つの立体配座以外の立体配座を
も有する。具体的に言うと、分子5はいくつかのレッグ
3を有するので、これらのレッグ3の異なる位置がさら
に別の立体配座を規定する。これらの立体配座は安定で
ある必要はないが、何らかの外力の持続的な影響下でし
か存在しないタイプであってもよい。さらに、立体配座
は離散型である必要はなく、このことはこのような立体
配座が数え切れない数だけ存在してもよいことを意味し
ている。この場合には、分子5は「フレキシブル」であ
るとすると最もよく説明することができる、すなわち分
子5を破壊することなくその結合を変形させることがで
きる。
第1立体配座では、分子5の周辺エンティティ3は中
央エンティティの平面に対して垂直に配向され、中央エ
ンティティ4は相互作用力の影響をほとんど受けないほ
ど十分に基板表面から離れている。しかし、例えばチッ
プ6によって押し下げられると、中央エンティティ4
は、引力、ここでは接着力によって基板1に向かって非
常に強く引きつけられ、チップ6が取り除かれてもこの
第2立体配座のままとなる。これは分子5を機械的にピ
ン止めする方法である。電気的ピン止めも可能である。
チップ6を介して、所与の動作電圧の値でトンネル電
流Itが分子5を通って流れる。トンネル電流Itは立体配
座の変化をもたらす。
分子5は、トンネル電子のエネルギーが光子を放出す
る遷移に変換されるように、トンネル電子によってさら
に電子的に励起される。したがって、これは電気的に励
起された発光をもたらす。この分子5が、ピン止めされ
た後で光子の放出を開始し、その後この光子の放出が、
動作電圧がピンニング電圧より低いレベルに低下しても
継続することが観察されている。2.3Vの動作電圧値で最
大発光効率を得ることができる。これは、最初のピン止
めの後で、ピンニング電圧より低い電圧で分子5を励起
して発光させることもできることを示す。
この発光効率はC60分子などの既知の分子の場合より
はるかに高いので、第2の効果も発光に影響を与えてい
る。この第2の効果は、チップ6と基板1との間の電磁
場による発光の増大(enhancement)である。既知の通
り、空のトンネル接合部を通るトンネル電流Itは、強度
の極大値およびこの極大値の周辺での強度の減衰を示す
所定の周波数スペクトルを有する、チップ誘導プラズモ
ン・モード(局在電磁気モード)を生み出す。チップ6
は、すぐ近くで隣接する基板表面の一部分およびそれと
の間の隙間とともに、空洞(cavity)、より厳密には電
磁気空洞を形成する。
他方、分子5は放射遷移、すなわちここでは分子5お
よびその実際の立体配座によって事前に決定される同様
の周波数スペクトルを有するП−П遷移をする。
これら2つの周波数分布の間の合致は、発光強度にと
って重要であると推測される。分子5の立体配座間の遷
移が滑らかであるので、その放射遷移の周波数、ここで
はП−П遷移の周波数がチップ誘導プラズモン・モー
ドの周波数スペクトル中の強度のピークと合致するまで
分子5がその立体配座を何度も変化させることによっ
て、この系の自動適合を行うことができる。こうして、
この状態が持続し、最高の発光効率を生み出すものと考
えられる。もう1つの可能性は、この最適状態の周りで
立体配座が安定振動することである。分子5が、その結
果生じる光の強度や色などの特徴が異なることもある複
数の発光状態を有することも可能である。
そのП−П遷移の周波数など、チップ誘導プラズモ
ン・モードの周波数スペクトルのピークと合致する放射
遷移の周波数を既に有する適当な分子5は、匹敵する強
度の発光を生み出すのに、分子のフレキシビリティも複
数の立体配座も必要としないことが考えられる1つの見
解である。
発光の色スペクトルは、この分子では赤色から黄色の
スペクトル範囲となり、単一の分子5から発出された光
は、3Vの動作電圧値でわずか2nAのトンネル電流値で、
明るい部屋であっても、肉眼で見ることができる。この
ことは、6×10-9Wの入力電力で、肉眼で見える光が生
じることを意味する。ただし、分子5はこのような低い
電流または電圧に限定されるわけではない。トンネル電
流は、対応する発光を生じる1μAまで上昇させること
ができる。これより高い電圧または電流ももちろん適用
可能である。
発光のスペクトルは、分子5が発光する立体配座に依
存するものと仮定される。したがって、発光しながら2
つ以上の異なる立体配座の周りで振動する分子5は、異
なる光の波長または色を生み出すことができる。
発光は、室温および10-4HPaより高い圧力で起こる。
さらに、発光プロセスは非常に安定している。少なくと
も前述のタイプの分子では、このプロセスは分子5に損
傷を与えない。現在まで、時間に関係した制限は見つか
っていない。500nAのトンネル電流値および2.31Vの動作
電圧値で、出力電力を入力電力で割った光の効率は、約
0.4またはそれ以上になると推定されている。
第3図に、やはり中央エンティティ4を含み、6つの
周辺エンティティ3またはレッグをさらに含む、もう1
つのタイプの分子5を示す。分子5は、ここでは、t−
ブチルで置換したテトラサイクリンである。中央エンテ
ィティ4はこの場合も、五角および六角の炭素環をいく
つか含み、レッグ3はsp3混成炭化水素からなる。
この分子5は、第2図の分子5と同様の方法で基板1
に付着する。やはり第1立体配座として定義される気体
状態相を有する。この第1立体配座では、この場合も中
央エンティティ4は、中央エンティティ4と基板1との
間の結合力を無視できるのに十分なほど基板表面から離
れて位置決めされる。分子5は水平方向には可動状態の
ままとなり、例えば熱励起によって流動する。
第2立体配座は、この場合も、中央エンティティ4が
基板1に接近し、中央エンティティ4と基板1との間の
結合力が大幅に増大し、分子5の水平方向の定着をもた
らすようになることで定義される。これもやはり、分子
5の「ピン止め状態」と呼ばれる。
切断状態の分子5の中央エンティティ4と基板1との
間の距離は、基板1上に化学吸着または物理吸着された
場合よりはるかに離れている。環境条件に依存して、分
子5はこれらの立体配座間で切り替わることができる。
この特定の分子5は、電圧が印加されたときに2つの立
体配座間で変化する。
第4図に、発光の電圧および電流への依存性を示す。
これらの線は、一定強度のレベルを任意の単位で示して
いる。発光は、発光開始後に、トンネル電流Itに線形に
依存することが観察され、約2.21Vの印加動作電圧に対
して極大値を呈している。動作電圧への依存性は、第1
のピークすなわち極大値を約3Vに、第2の極大値を約7V
に、第3の極大値を約9Vに示す。清浄な金属基板表面お
よびこのチップ6で同等なピーク・スペクトルを観察す
ることができるが、効率は大幅に低下する。
第1の極大値は全体の最大値であり、電界の強さがト
ンネル接合部で最高となる状況に対応する。第2および
第3の極大値は、電子が放射減衰を経て、最終的な状態
として空のGundlach状態に非弾性的にトンネルし、それ
により光子を放出する状況に対応する。これらのGundla
ch状態は分子5の分子状態に混合され、光の強度は清浄
な金属基板1より高くなる。発光におけるこうした共鳴
が観察されることは、チップ誘導閉込め電磁気モード、
およびそれらとトンネル電子との結合の機構(scheme)
が発生していることを示す。3.5Vから2.2Vへの極大値の
シフト、および著しい強度の増加は、観察された効果が
空洞および分子特性の相乗結合を伴うことの証拠であ
る。
観察された物理的効果は、分子5の中央エンティティ
4がそのレッグ3によって導電性基板1から電気的に切
断されることに基づくものと理解される。「電気的に切
断される」という用語は、ここでは、分子5の中央エン
ティティ4が基板1上に物理吸着または化学吸着されて
いないときの状態として理解される。
分子のフレキシビリティ、またはこれに関していくつ
かの立体配座が存在することは、その立体配座を変化さ
せることによって、分子5をその環境、すなわち空洞お
よびその周波数スペクトルに適合させることができる点
で寄与している。この適合は、分子5がトンネル電子で
励起されたときに自動的に起こることが示されている。
記載した例の、いくつかの立体配座を有する分子5
は、中央エンティティ4として芳香族共役炭素ベースsp
2非局在化環を、またレッグ3としてsp3混成炭化水素を
含む。
分子5は、それを構成する様々なエンティティの準安
定配向および/または位置を特徴とする様々な立体配座
で存在することができる。分子5の様々なエンティティ
3、4は、例えば、個々の原子、またはその他のエンテ
ィティの原子より互いの間でより強く結合される原子か
ら構成される分子状のサブエンティティからなる。各エ
ンティティ3、4の間の接続は、エンティティ3、4の
相対的な回転運動の軸の働きをすることができる単分子
結合にすることができる。様々な立体配座間の切替は、
エンティティの回転による再配列、およびその他任意の
運動を含むことができる。
異なるタイプのエンティティ3、4を適当に組み合わ
せることにより、ある立体配座における特定の適用のさ
らに別の要件(ただし別の立体配座では大きく異なる)
を満たすように、分子5を設計することができる。技術
的に重要な特性の中で、このような変化を受けることが
あるものとしては、化学活量、導電率、色、分子の寸
法、および基板1への接着の強さがある。逆に、これら
の変化を使用して、様々な識別(interrogation)技術
によって分子5の立体配座を特定することができる。分
子5の様々な立体配座が、その配位座標に関してその系
の分子/基板のポテンシャル・エネルギーの極小値とし
て定義されているときには、その立体配座は分子5の安
定状態を表す。この場合には、その座標の関数としてプ
ロットしたときにポテンシャル・エネルギーが少なくと
も2つの特徴的な極小値を有するように、2つの立体配
座間の各遷移について適当な配位座標を規定することが
できる。これらの極小値の位置および深さはそれぞれ、
これらの立体配座にあるエンティティ3、4の構造配列
と、熱励起および/または外部影響に対するそれらの安
定性とを決定する。最も深い極小値は、最も安定した分
子の立体配座に対応する。その他の立体配座は準安定で
ある。分子5は、対応するエネルギー最小値とその隣接
するエネルギー最小値との間のエネルギー障壁が、室温
で25meVになる熱エネルギーと比較して十分に大きい場
合には、準安定の立体配座で無期限に存在することがで
きる。
切替、より一般的には立体配座の変化を引き起こすこ
とができる外部影響としては、例えば、分子5を巨視的
なスイッチのように異なる立体配座に急激に変化(sna
p)することができる程度まで変形させる機械的力、そ
こから基底状態または別の立体配座に減衰することがで
きる励起状態に分子を引き上げる光または電子の照射、
ならびに分子5が熱励起またはトンネル効果によって別
の立体配座に反転する程度まで特定のエネルギー障壁の
高さおよび/または幅を減少させる電界の印加がある。
分子5は、既存の方法を使用して合成することができ
る。基板1上の分子5の位置が少なくとも1つの立体配
座で固定されたときには、この分子5が基板表面で不動
化されることで、マイクロ/ナノ製作ツールおよび任意
選択のさらに別の処理のための方法を使用することが可
能になる。
動作電圧は、直流にも交流にもすることができ、さら
に非常に高い周波数まで上げることができる。ディスプ
レイなど、多数の分子5が対応する空洞に埋め込まれた
エレクトロルミネセンス素子を実現するために、小さな
金属粒子をいくつかの分子5で覆い、次いでこの覆った
粒子を集合させて、ITO(酸化インジウムスズ)などの
透明な導電性材料中の1部分(body)にすることができ
る。
この配列を用いると、低重量および低電力要件のディ
スプレイを実現することができる。紙よりも薄いフレキ
シブル・ディスプレイも可能である。ディスプレイを眼
鏡またはコンタクト・レンズに組み込むことも可能であ
る。これにより、例えば視力の弱い人のために、画像を
網膜上に直接表示する、あるいは写真を拡大する、また
は赤外線写真を作成し、これを直接目の中に表示すると
いった分野が開かれる。運転者のために地図その他の情
報などをヘッドアップ・ディスプレイに表示すること
も、このようなコンタクト・レンズまたは眼鏡で可能で
ある。バーチャル・リアリティの分野全体をこの眼内デ
ィスプレイで容易に実現することができる。開示の問題
なく機密情報を表示することもできる。光の効率が非常
に高いので、極めて低いエネルギーが熱として放散され
る。分子5は、例えば内視鏡で、非常に小型かつ低温の
光源として使用することができる。小型バッテリを分子
5と組合せ、ナノトーチとして、例えば医療検査のため
に飲み込むことができるものも考えられる。
トンネル電流をもたらすために、この装置はここで
は、トンネル電流が分子5を流れるように電圧を印加す
るための電圧印加手段を含む。トンネル電流をもたらす
ために、その他任意の手段を使用することもできる。
したがって、本発明は、トンネル電子によって誘導さ
れる、新しい形態の分子5からのエレクトロルミネセン
スに関する。以下に、誘導された発光効果を記述するも
う1つの手法を与える。
共鳴電磁気空洞中に閉じ込められると、1つまたは複
数の分子5はそれぞれ、局在励起を介して非常に高い放
出効率で可視および赤外範囲の光子を放出する。発光ス
ペクトル中で観察される微細なフィーチャは、振動励起
状態によるものとする。この放出機構は、金属であるこ
とが好ましいチップ6と基板表面との間の局在電磁気モ
ードの非弾性トンネル励起という形で説明することがで
きる。これらのモードは、分子5において、Frank−Con
don遷移によって、電子を共鳴昇位(resonantly promot
e)させ、その後、放射減衰する。その結果、室温での
単分子5についての新しい高感度の振動分光法を示し、
またナノメートル・スケールでの通信用導波路としてト
ンネル空洞を使用する新しい概念も提供する。
比較のために、ここで既知の機構の概要を示す。貴金
属表面(Ag、Au、およびCu)上にトンネルする走査トン
ネル顕微鏡(STM)のチップは、トンネル電子あたり0.1
%までの外部量子効率を有する局所的な光源として働
く。Au(110)表面上に吸着したC60上では、光子は、露
出した金自体より低い強度で空間に分離する(spatiall
y resolved)。C60とAuとの電子結合は、最高被占分子
軌道および最低空分子軌道(HOMOおよびLUMO準位)の縮
退を大幅に広げ、上げるのに十分である。これに対し
て、分子の蛍光は、金属付近の非放射減衰によって強く
消光される。この損失は、金属表面から1nmから3nm離れ
た範囲に及ぶ。
本発明は、その構造(architectures)によってトン
ネル電極6、1から電気的に切断された一群の分子5か
らの、トンネル電子によって誘導される効率的な発光を
包含するものである。これらは、サブ単分子膜フィルム
でも、電子あたり40%までの推定外部量子効率で、可視
−赤外範囲で発光を生み出すことが観察されている。励
起電圧に依存して赤色、橙色、黄色、緑色、青色となる
連続発光は、周囲が照明されている状態で肉眼でも観察
することができる。この効率を比較してみると、有機発
光ダイオード(OLED)の最高の外部エレクトロルミネセ
ンス効率は、赤範囲で3%、青範囲で2%であり、ポー
ラス・シリコンからは、0.1〜0.2%と測定されている。
この結果は、特定の分子構造を有する分子5を、高効率
光源として使用することができることを示している。こ
の光スペクトルは、Frank−Condon遷移に起因する微細
な振動構造として解釈される、一群の鋭い発光特性を特
徴とする。これにより、分光器と結合したSTMを、室温
で、分子の振動状態を局在的に調査するのに使用するこ
とが可能となる。
発光の観察用に特に設計したSTMを使用して、室温
で、また極めて高い真空状態で実験を行った。スパッタ
・アニール・サイクルにより、原子的に清浄なCu(10
0)およびAg(110)の単結晶の基板を準備した。スパッ
タリングによって洗浄した電気化学的にエッチングした
タングステン・チップを使用して、エレクトロルミネセ
ンスを誘導した。後にヘキサブチル・デカシクレンにつ
いて(HB−DC)と呼ぶC54H66分子5を、昇華によってKn
udsenセルから、エピタキシャル成長のために熱拡散を
促進するように500Kの温度まで加熱した金属表面上に付
着させた。光スペクトルは、ブレーズ・ホログラフィッ
ク格子および冷却式光学マルチチャネル分析器(cooled
optical multichannel analyzer)を備えた分光計(Ja
rrel Ash)を使用して記録した。光は、0.1ステラジア
ンの立体角から、分光計の入口スリットに取り付けられ
た光ファイバ・ケーブル中に光を収束させるf=20.5mm
のレンズを使用して、STMから集光させた。バックグラ
ウンドの減算、ならびにトンネル電流および露出時間に
関する正規化の後の、Ag(110)上に付着させたHB−DC
分子5からの光スペクトルは、Vtに対して不変の位置と
なる一群の鋭いピークを呈する。それらの強度比は、印
加されるバイアス電圧とともに変化する。清浄な銀の単
結晶について得られた光スペクトルと比較すると、その
テールが長波長の範囲中にかなり延びる広いバックグラ
ウンドが清浄なAgのそれと類似しているが、鋭いフィー
チャは分子の励起状態に起因していることが明らかに示
される。Vtに対するピーク位置の不変性および高い量子
効率は、共鳴プロセスの特徴を示すものである。Vtの関
数としての各ピークの強度は、波長とは無関係の振動を
呈する。ピークは、〜120meVの半値全幅(FWHM)、およ
び〜100meVの一定エネルギー***ΔEvibを有する。Fran
k−Condonの原理を使用して、振動Evibエネルギーはし
ばしば、単純な分子5に対する調和振動子モデルで近似
することができる。その場合には、Evibは、Evib=hω
vib(ν+1/2)で与えられ、ここでωvibは振動周波
数、ν=0、1、2、…は、振動量子数である。算出し
たωvib〜800cm-1の振動周波数は、芳香族環の古典振動
モードと一致する。
様々なバイアス電圧について波長に関してプロットし
た、Cu(100)上の単分子被覆で記録した光子強度は、A
g(110)を基板として得られたスペクトルとは対照的
に、550nm(2.25eV)で鋭い光のカットオフを示す。こ
れは、より高いエネルギー・モードの吸収と一致する銅
のバンド間遷移、L3(Qt)−>Ef(L'2)によく対応す
る。
光子強度についてのVtとItとの間の関係の詳細を得る
ために、第4図は、光子強度およびチップの引込み(re
traction)のマップを、U=VtおよびItの関数として示
している。このマップは、トンネル電流Itによる光子強
度のほぼ線形な増加を示している。それに対し、Vtに関
しては、0.3から30nAの範囲にわたって一連の節および
腹が観察される。こうした強度の振動は、清浄な基板で
記録されたものと特徴が同一であり、以前の清浄な貴金
属についての光子放出の考察で実証した電界放出共鳴に
よるものである。この場合には、非弾性的なトンネル電
子は、電極1と6との間の空洞中に位置する電磁気モー
ドを励起する。電界放出共鳴は、トンネル電子と共鳴モ
ードとの間の結合効率の変動を反映する。これらの局在
電磁気モードの空間的な広がりは〜5nmとなる。したが
って、接合部付近の分子5の誘電体特性の枠組み内で、
モード自体だけでなく、モードを励起する電子の非弾性
トンネル効果の可能性にも影響を及ぼすことになる。
これらの実験結果は、2つの可能な機構を示す。第1
に、接合部中の分子5を介した2重障壁プロセスにおけ
る直接的な非弾性トンネル効果による分子5の励起であ
る。この体系では、分子の電子レベルと金属バンドとの
特定の整列が前提とされる。第2に、電極1と6との間
の非弾性トンネル効果が電磁気モードを励起し、これが
間接的な分子の励起につながるものである。この第2の
モデルは、下記の理由からより好ましいと考えられる単
一のトンネル障壁を必要とする。STMのチップ6は金属
により接近しており、したがって電磁気モードの強さは
増す。分子5の誘電機能による真空の誘電機能を組み合
わせると、発光は、鋭いスペクトルのフィーチャによっ
て明らかにされるように変化する。さらに、この単一の
トンネル障壁プロセスは、実験で観察されたヒステリシ
ス効果と一致する。〜3.5Vのしきい値Vtより上で、その
後〜2.5Vまで下がる強い発光が観察された。このヒステ
リシスは、非弾性プロセスによる局在トンネル電子経路
中に直接位置する分子5の除去と一致する。それにもか
かわらず、分子5は、チップ6と金属基板1との間に画
定された空洞付近に留まり、それにより高い電磁場を受
ける。
第5図は、電磁気モードと分子の振動との間の共鳴結
合を伴う単一のトンネル障壁に関連して発光現象を説明
する、提案された機構を示す概略図である。非弾性的に
トンネルする電子(A)は、空間的に局在する電磁気モ
ードhω(B)を電極間で励起する。これらのモード
の空間的な広がり(〜5nm)は、電極から切断されてい
るがトンネル接合部付近に留まっている分子5の、電子
励起を促進する。分子5の電磁気励起は、局在電磁気モ
ードとの共鳴結合を介して起こり、この場合には、分子
5は、LUMOが占有され、HOMOに孔のある状態で励起状態
のまま残される。この励起状態で、熱振動は減衰し、Fr
ank−Condon遷移(C)を介して放射性放出する。光子
の放出は、両電極およびトンネル障壁領域の両方の誘電
特性に依存する。ここで、電界の強化は金属基板の誘電
特性および分子5のトンネル接合部への接近度によって
特徴づけられる。金属表面上の分子5からの蛍光とは対
照的に、STMの金属電極の励起は、バルクおよび表面モ
ードへのエネルギー伝達を介した消光を防止する。した
がって分子5は、トンネル電流が一部しか分子5を流れ
ないか、または全く分子5を流れないようにして、トン
ネル電流が分子5のそれぞれの配列からの発光を誘導す
るまたはもたらすことのみを利用するように、配列する
ことができる。通常の場合であれば、分子5は、トンネ
ル接合部付近に、すなわちこれに隣接して位置し、主な
トンネル電流がチップ6と基板1との間を直接流れ、一
部の電子のみが分子5を流れるようになっている。
結論として、これらの結果は、電磁気学的分子5が、
入力電力をほとんど必要としない効率的な光源であるこ
とを実証している。同様の空間でその他のタイプの分子
5を用いて行った追加の実験では、異なるFrank−Condo
n特性を生ずることが観察された。STMを分光計と組み合
わせることにより、分子5の振動分光法の新しい方法が
提案される。フラット・ディスプレイ技術や光子の点光
源など潜在的な応用例を越えて、局在電磁気モードの活
性化は、画期的かつ有望なナノメートル・スケールの無
線通信の概念を構成する。励起時に特定の応答を与える
複数のタイプの分子5の組み合わせは、局在電磁気モー
ドを通信媒体として使用した電子信号の入力および出力
の新しい方法であると考えることができる。
フロントページの続き (72)発明者 ゲレ、ピェール・エル スイス国タールヴィル、ゼーシュトラー セ 149 (72)発明者 ラングレ、ヴェロ スイス国リヒタースヴィル、キルヒシュ トラーセ 2 (72)発明者 シュリットラー、レト・アール スイス国シェーネンベルク、ヒュットナ ーシュトラーセ 7 (56)参考文献 特表2000−512073(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 61/00 C07C 13/62 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも1つの分子(5)が、第2電極
    (6)からトンネル距離に位置する第1電極(1)上に
    位置決めされ、前記分子(5)は、少なくとも1つの第
    2エンティティ(3)に結合された第1エンティティ
    (4)を含み、前記第2エンティティは、前記第1エン
    ティティ(4)が前記第1電極(1)に化学吸着または
    物理吸着されないように前記第1エンティティ(4)を
    前記第1電極(1)から切断するものであり、および、
    前記電極(1、6)間のトンネル電流を介して発光をも
    たらすことができる、発光を生じさせる装置。
  2. 【請求項2】前記分子(5)が、少なくとも部分的には
    トンネル電流を受けることができることを特徴とする、
    請求項1に記載の装置。
  3. 【請求項3】第2エンティティ(3)が第1エンティテ
    ィ(4)に対して相対的に移動可能であることを特徴と
    する、請求項1または2に記載の装置。
  4. 【請求項4】第1エンティティ(4)を前記第1電極
    (1)に接近させ、前記分子(5)と前記第1電極
    (1)との間の結合エネルギーが室温の熱エネルギーよ
    り高くなるようにすることによって、分子(5)を第1
    電極(1)にピン止めすることができることを特徴とす
    る、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 【請求項5】分子(5)が、第1電極(1)と第2電極
    (6)との間の空洞の周波数スペクトルの局在的な強度
    の極大値の周波数と少なくともほぼ等しいП−П遷移
    の周波数などの周波数を有する局在的な強度の極大値を
    含む放射遷移の周波数スペクトルを有することを特徴と
    する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 【請求項6】第2エンティティ(3)が第1エンティテ
    ィ(4)の縁に位置することを特徴とする請求項1ない
    し5のいずれか一項に記載の装置。
  7. 【請求項7】第1エンティティ(4)が、第2エンティ
    ティ(3)と比較して基本的に平面状の立体配座である
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記
    載の装置。
  8. 【請求項8】第1電極(1)が結晶基板を含むことを特
    徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の装
    置。
  9. 【請求項9】少なくとも1つの分子(5)が、第2電極
    (6)からトンネル距離に位置する第1電極(1)上に
    位置決めされ、前記分子(5)は、少なくとも1つの第
    2エンティティ(3)に付着した第1エンティティ
    (4)を含み、前記第2エンティティは、前記第1エン
    ティティ(4)が前記第1電極(1)に化学吸着または
    物理吸着されないように前記第1エンティティ(4)を
    前記第1電極(1)から切断するものであり、および、
    前記電極(1、6)間のトンネル電流を介して発光がも
    たらされる、発光を生じさせる方法。
  10. 【請求項10】前記分子(5)が、少なくとも部分的に
    はトンネル電流を受けることを特徴とする、請求項10に
    記載の方法。
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