JP3321615B2 - 磁気抵抗効果素子および磁気変換素子 - Google Patents

磁気抵抗効果素子および磁気変換素子

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JP3321615B2 JP26773896A JP26773896A JP3321615B2 JP 3321615 B2 JP3321615 B2 JP 3321615B2 JP 26773896 A JP26773896 A JP 26773896A JP 26773896 A JP26773896 A JP 26773896A JP 3321615 B2 JP3321615 B2 JP 3321615B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体等の
磁界強度を信号として読み取るための磁気抵抗効果素子
のうち、特に小さな磁場変化を大きな電気抵抗変化信号
として読み取ることのできる磁気抵抗効果素子および、
それを用いた磁気抵抗効果型ヘッド等の磁気変換素子に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気センサの高感度化や磁気記録
における高密度化が進められており、これに伴い磁気抵
抗変化を用いた磁気抵抗効果型磁気センサ(以下、MR
センサという。)や、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以
下、MRヘッドという。)の開発が盛んに進められてい
る。MRセンサもMRヘッドも、磁性材料を用いた読み
取りセンサ部の抵抗変化により、外部磁界信号を読み出
すものであるが、MRセンサやMRヘッドでは、記録媒
体との相対速度が再生出力に依存しないことから、MR
センサでは高感度が、MRヘッドでは高密度磁気記録の
信号読み出し時においても高い出力が得られるという特
徴がある。
【0003】しかし、従来用いられているNi0.8 Fe
0.2 (パーマロイ)やNiCo等の磁性体を利用したM
Rセンサでは、抵抗変化率ΔR/Rがせいぜい1〜3%
位と小さく、数GBPI(Giga Bit Per Inch)以上の超
高密度記録の読み出し用MRヘッド材料としては感度が
不足する。
【0004】ところで、金属の原子径オーダーの厚さの
薄膜が周期的に積層された構造をもつ人工格子は、バル
ク状の金属とは異なった特性を示すために、近年注目さ
れてきている。このような人工格子の1種として、基板
上に強磁性金属薄膜と非磁性金属薄膜とを交互に積層し
た磁性多層膜があり、これまで、鉄−クロム型、コバル
ト−銅型等の磁性多層膜が知られている。このうち、鉄
−クロム型(Fe/Cr)については、超低温(4.2
K)において40%を超える磁気抵抗変化を示すという
報告がある。しかし、この人工格子磁性多層膜では最大
抵抗変化の起きる外部磁場(動作磁界強度)が十数kOe
〜数十kOe と大きく、このままでは実用性がない。この
他、Co/Ag等の人工格子磁性多層膜も提案されてい
るが、これらでも動作磁場強度が大きすぎる。
【0005】そこで、このような事情から、スピンバル
ブという新しい構造が提案されている。これは非磁性層
を介してNiFe層が2層形成されており、一方のNi
Fe層に隣接してFeMn層が配置されている構成を持
つ。ここではFeMn層と隣接するNiFe層とが直接
交換結合力で結合しているため、このNiFe層の磁気
スピンは数10〜数100Oeの磁場強度まで、その向き
を固着される。一方のNiFe層のスピンは外部磁場に
よって自由にその向きを変えうる。その結果、NiFe
層の保磁力程度という、小さな磁場範囲で2〜5%の磁
気抵抗変化率(MR変化率)が実現される。その他、下
記の文献が発表されている。
【0006】a.フィジカル レビュー B(Physical
Review B),43(1991)1297 Si/Ta(50)/NiFe(60)/Cu(20)
/NiFe(45)/FeMn(70)/Ta(50)
[( )内は各層の膜厚(単位Å)、以下同]において
印加磁場10OeでMR変化率が5.0%まで急激に立ち
上がると述べている。
【0007】b.ジャーナル オブ マグネティズム
アンド マグネティック マテリアルズ(Journal of M
agnetism and Magnetic Materials) , 93(1991)101 Si/Ta(50)/NiFe(60)/Cu(25)
/NiFe(40)/FeMn(50)/Cu(50)
において印加磁場15OeでMR変化率が4.1%である
と述べている。
【0008】c.ジャパニーズ ジャーナル オブ ア
プライド フィジックス(JapaneseJournal of Applied
Physics) , 32(1993)L1441 上記aの構造を多層構造としたときのMR変化率につい
て述べられている。ここでの多層構造はNiFe(6
0)/Cu(25)/NiFe(40)/FeMn(5
0)という構成を間にCuをはさんで積層したものであ
る。
【0009】d.ジャーナル オブ アプライド フィ
ジックス(Journal of Applied Physics) , 61(1987)41
70 スピンバルブではなく、交換結合の膜としてFeMn,
αFe23 、TbCo等をNiFeと積層構造にした
ときの一方向性異方性の大きさやその安定性について述
べられている。
【0010】また、さらに下記の公報が公開されてい
る。
【0011】e.特開平2−61572号公報(米国特
許4949039号公報) 非磁性中間層を介して積層された強磁性薄膜が各々の層
間で反平行配列をとることにより大きなMR効果を示す
ことが述べられている。また、強磁性層の一方に反強磁
性材料を隣接させる構造についても述べられている。
【0012】f.特開平5−347013号公報 スピンバルブ膜を用いた磁気記録再生装置について述べ
られている。特に、反強磁性膜として、酸化ニッケルを
用いた場合について開示されている。
【0013】このようなスピンバルブ磁性多層膜では、
Fe/Cr,Co/Cu,Co/Ag等に比較してMR
変化率の大きさは劣るものの、数10Oe以下の印加磁場
で急激にMR曲線が変化しており、1〜10Gbit/inch2
より大きな記録密度におけるMRヘッド材料として適し
ている。しかし、これらの文献や公報等で開示されてい
る内容はスピンバルブ膜の基本的な作用を示しているに
過ぎない。
【0014】ところで、現在、実際の超高密度磁気記録
におけるMRヘッド材料としてはNi0.8 Fe0.2 (パ
ーマロイ)が主に用いられている。これは異方性磁気抵
抗効果により磁気記録媒体からの信号磁場の変化を電気
抵抗の変化として変換しているものである。そのMR変
化率は1〜3%にすぎない。また、この場合、磁気抵抗
変化はゼロ磁場を中心に磁場の増減に対して対称な特性
を持つ。
【0015】このような特性を解決する手段として、N
iFe等では、Ti等の比抵抗の小さなシャント層を設
けて動作点をシフトさせて用いている。また、このシャ
ント層に加えてCoZrMo,NiFeRh等の比抵抗
の大きな軟磁性材料のソフトフィルムバイアス層を設け
てバイアス磁界を印加して用いている。しかし、このよ
うなバイアス層をもつ構造は、工程が複雑となり、特性
を安定させることが困難であり、コストアップを招く。
またMR曲線をシフトさせた結果生じたMR変化曲線の
なだらかなところを使うことになるので、単位磁場にお
けるMR傾きは0.05%/Oe程度と小さく、S/Nの
低下等を招き、1〜10Gbit/inch2より大きな記録密度
におけるMRヘッド材料としては不十分である。
【0016】さらに、MRヘッド等では複雑な積層構造
をとり、パターニング、平坦化等の工程でレジスト材料
のベーキングやキュア等の熱処理を必要とし、250〜
300℃程度の耐熱性が必要となることがある。しか
し、従来の人工格子磁性多層膜では、このような熱処理
で特性が劣化してしまう。
【0017】また、文献等で開示されている従来のスピ
ンバルブ膜はその薄膜としての基本構造と基本特性のみ
が議論されており、超高密度磁気記録を実現するための
MRヘッド構造やそれに適した磁性多層膜構造などにつ
いては述べられていなかった。
【0018】さらに、スピンバルブ膜では2つの磁性層
を一方を隣接した反強磁性層によってピンニングするこ
とで大きなMR効果を実現している。したがって反強磁
性層の役割は重要であり、その信頼性はきわめて重要で
ある。しかしながら、現在おもに用いられているFeM
nではネール温度が120〜140℃と低く、実用上十
分であるとは言えない。また、FeMnは腐食しやす
く、もしも大気中の水分によってさびてしまうと、その
結果、反強磁性としての特性が失われやすく、スピンバ
ルブ動作を示さなくなるというおそれがある。
【0019】さらに上記の文献に示される例では、実際
にそれらの薄膜をMRヘッドとして応用した場合には、
実際の磁界検出範囲でのMR傾きが小さく、MRヘッド
として良好かつ安定な再生を行なうことができない。ま
た、さらにすぐれた超高密度磁気記録におけるMRヘッ
ド材料として、印加磁場−10〜10OeまでのMR変化
曲線も重要である。しかし、これらの文献の開示例で
は、この範囲でのMR傾きを詳細に議論したものはな
い。
【0020】さらにまた、MRヘッドは、高密度記録再
生用として1MHz 以上の高周波磁界下で用いられること
が要求される。しかし、従来の各種3元系磁性多層膜の
膜厚構造では、1MHz 以上の高周波磁界における10Oe
幅での磁気抵抗変化曲線の傾き(高周波でのMR傾き)
を0.7%/Oe以上にして、高い高周波感度を得ること
が難しい。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような実
状のものに創案されたものであって、その目的は、実用
上十分な信頼性を示す反強磁性層の提供と、大きなMR
変化率を示し、印加磁場が例えば−10〜10Oe程度の
きわめて小さい範囲で直線的なMR変化の立ち上がり特
性を示し、磁場感度が高く、高周波磁界でのMR傾きが
大きく、耐熱温度の高い磁性多層膜を備えてなる磁気抵
抗効果素子、およびそれを用いた磁気抵抗効果型ヘッド
等の磁気変換素子を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るために、本発明は、磁気抵抗効果素子と、導体膜と、
電極部とを含む磁気変換素子であって、前記導体膜は、
前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素子と導通してお
り、前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性
金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属
層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の
磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性
金属層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め
層とを有する磁性多層膜を備えており、前記ピン止め層
はFeOX (1.35≦x≦1.55、単位は原子比)
からなるように構成される。
【0023】本発明の好適な態様として、前記磁気抵抗
効果素子は、基板を有し、この基板側から前記ピン止め
層、前記強磁性層、前記非磁性金属層、前記軟磁性層が
順次積層されているように構成される。
【0024】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層の厚さは、100Å〜3000Åであるように構成さ
れる。
【0025】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、反強磁性を示すαFe23(ヘマタイト)であ
るように構成される。
【0026】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、反強磁性を示すαFe23(ヘマタイト)を、
少なくとも30体積%以上60体積%以下含むように構
成される。
【0027】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、反強磁性を示すαFe23(ヘマタイト)の1
00Å以下の微結晶の集まりであるように構成される。
【0028】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、反強磁性を示し、そのネール温度は120℃〜4
00℃であるように構成される。
【0029】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、酸化鉄のターゲットをイオンビームスパッタ法で
スパッタし、基板に対し、ArとO2 の混合ガスのアシ
ストビームを照射しながら成膜された膜であるように構
成される。
【0030】本発明の好適な態様として、前記アシスト
ビームは、加速電圧60〜150eV、イオン電流4〜
15mA、Ar:O2流量比が1:1〜9:1、Ar+
2流量が6〜20sccmの範囲で行われるように構
成される。
【0031】本発明の好適な態様として、前記ピン止め
層は、酸化鉄のターゲットをArと酸素の混合ガス雰囲
気中で高周波スパッタ法でスパッタして成膜した膜であ
り、成膜時における酸素ガス流量を全ガス流量の20〜
40%の範囲に調整して成膜した膜であるように構成さ
れる。
【0032】本発明の好適な態様として、前記強磁性層
は、(Coz Ni1-zw Fe1-w(ただし、重量で
0.4≦z≦1.0、0.5≦w≦1.0である)で表
される組成であり、前記軟磁性層は、(Nix Fe
1-xy Co1-y (ただし、重量で0.7≦x≦0.
9、0.1≦y≦0.5である)で表される組成である
ように構成される。
【0033】本発明の好適な態様として、前記強磁性層
は、(Coz Ni1-zw Fe1-w(ただし、重量で
0.4≦z≦1.0、0.5≦w≦1.0である)で表
される組成であり、前記軟磁性層は、Cotu M’q
r (ただし、原子で0.6≦t≦0.95、0.01
≦u≦0.2、0.01≦q≦0.1、0.05≦r≦
0.3;Mは、Fe,Niから選ばれた少なくとも1種
以上であり、M’は、Zr,Si,Mo,Nbから選ば
れた少なくとも1種以上を表す)で表される組成である
ように構成される。
【0034】本発明の好適な態様として、前記非磁性金
属層は、Au、Ag、およびCuの中から選ばれた少な
くとも1種を含む材料から構成される。
【0035】本発明の好適な態様として、前記磁気抵抗
効果素子は、強磁性層の磁化がピン止め層によりピン止
めされることによるスピンバルブ型の磁気抵抗変化を示
すように構成される。
【0036】本発明の好適な態様として、前記磁気抵抗
効果素子は、1MHzでの高周波磁界における6Oe幅
での磁気抵抗変化の傾きが、0.7%/Oe以上である
ように構成される。
【0037】本発明の好適な態様として、磁気変換素子
が磁気抵抗効果型ヘッドであるように構成される。
【0038】本発明の好適な態様として、前記磁気抵抗
効果素子の両端部は、その端部全体が電極部と接触する
状態で接合されるように構成される。
【0039】本発明の好適な態様として、磁気抵抗効果
素子の両端部に形成された電極部との間に、さらに、連
結用軟磁性層を有し、この連結用軟磁性層と磁気抵抗効
果素子の端部の全体が接触する状態で接続されるように
構成される。
【0040】本発明の好適な態様として、前記連結用軟
磁性層は、磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子
の両端部に形成された電極部との間、および前記電極部
の下面にも接触するように連続して形成されるように構
成される。
【0041】本発明の好適な態様として、磁気変換素子
は、バイアス磁界印加機構をもたないように構成され
る。
【0042】本発明の好適な態様として、前記強磁性層
は、その成膜時に信号磁場方向と同一、かつ膜面内方向
に10〜300Oeの外部磁場を印加して形成されたも
のであり、前記軟磁性層は、その成膜時に信号磁場方向
と垂直、かつ膜面内方向に10〜300Oeの外部磁場
を印加して形成されたものであるように構成される。
【0043】本発明の好適な態様として、前記積層成膜
された磁気変換素子は、100℃〜300℃の温度で熱
処理されているように構成される。
【0044】本発明の好適な態様として、前記磁気変換
素子は、ピン止め層を成膜したのち100℃〜300℃
の温度で熱処理されているように構成される。
【0045】また、本発明は、非磁性金属層と、非磁性
金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属
層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の
磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性
金属層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め
層とを有する磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子
であって、前記ピン止め層はFeOX (1.35≦x≦
1.55、単位は原子比)からなるように構成される。
【0046】また、本発明は、磁気抵抗効果素子と、導
体膜と、電極部とを含む磁気変換素子であって、前記導
体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素子と導
通しており、前記磁気抵抗効果素子は、基板を有し、こ
の基板の上に強磁性層の磁化の向きをピン止めするため
のピン止め層、強磁性層、非磁性金属層、および軟磁性
層が順次積層されており、前記ピン止め層はFeOX
(1.35≦x≦1.55、単位は原子比)からなり、
このピン止め層と前記強磁性層との間に、CoまたはC
oを80重量%以上含む合金よりなる、厚さ4〜30Å
の酸素ブロッキング層が介在されているように構成され
る。
【0047】また、本発明は、基板の上に、強磁性層の
磁化の向きをピン止めするためのピン止め層、強磁性
層、非磁性金属層、および軟磁性層を順次積層してなる
磁気抵抗効果素子であって、前記ピン止め層はFeOX
(1.35≦x≦1.55、単位は原子比)からなり、
このピン止め層と前記強磁性層との間に、CoまたはC
oを80重量%以上含む合金よりなる、厚さ4〜30Å
の酸素ブロッキング層が介在されているように構成され
る。
【0048】上記の磁気抵抗効果素子に関する発明によ
れば、耐食性が特に優れた反強磁性層とそれを用いた、
MR傾きが0.8%/Oe以上の抵抗変化率をもつ磁性多
層膜が得られる。しかも、0 磁場でのMR曲線の立ち上
がり特性はきわめて良好である。また、1MHz の高周波
におけるMR傾きが0.7%/Oe以上の高い値を示し、
さらに250℃前後の熱処理をしても特性の劣化が生じ
ることのない耐熱性の高い磁性多層膜が得られる。この
ような磁気抵抗効果素子を有する磁気変換素子に関する
発明(例えば、MRヘッド等)によれば、従来の材料に
比較して5倍近い大きい出力電圧を得ることができる。
従って、信頼性の極めて高い、1Gbit/inch2 を越える
ような超高密度磁気記録の読み出しが可能になるという
極めて優れた効果が発現する。
【0049】
【発明の実施の態様】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。
【0050】図1は、本発明の実施例である磁気抵抗効
果素子3の断面図である。この磁気抵抗効果素子3は、
人工格子磁性多層膜1(以下単に、磁性多層膜1と称
す)を備えてなる。図1において、磁性多層膜1は、非
磁性金属層30と、この非磁性金属層30の一方の面に
形成された強磁性層40と、非磁性金属層30の他方の
面に形成された軟磁性層20と、強磁性層40の磁化の
向きをピン止めするために強磁性層40の上(図面で
は、下方に位置するが、ここで言う『上』とは、非磁性
金属層と接する面と反対側の面を意味する)に形成され
たピン止め層50を有する積層体構造をなしている。
【0051】これらの積層体は、図1に示されるよう
に、通常、基板5の上に形成され、これらが基板側から
ピン止め層50、強磁性層40、非磁性金属層30、軟
磁性層20の順に積層されている。この軟磁性層20の
上には、図示のごとく保護層80が形成される。
【0052】本発明では、外部から加わる信号磁界の向
きに応じて非磁性金属層30を介して、その両側に隣接
して形成された軟磁性層20と強磁性層40との互いの
磁化の向きが実質的に異なることが必要である。その理
由は、本発明の原理が、非磁性金属層30を介して形成
された軟磁性層20と強磁性層40の磁化の向きがズレ
ているとき、伝導電子がスピンに依存した散乱を受け、
抵抗が増え、磁化の向きが互いに逆向きに向いたとき、
最大の抵抗を示すことにあるからである。すなわち、本
発明では、図2に示されるように外部からの信号磁場が
プラス(記録媒体90の記録面93から向かって上向き
(符号92で表される)であるとき、隣合った磁性層の
磁化の方向が互いに逆向きの成分が生じ、抵抗が増大す
るのである。
【0053】ここで、本発明の磁気抵抗効果素子に用い
られる(スピンバルブ)磁性多層膜における、磁気記録
媒体からの外部信号磁場と、軟磁性層20と強磁性層4
0の互いの磁化の方向、及び電気抵抗の変化の関係を説
明する。
【0054】今、本発明の理解を容易にするために、図
1に示されるごとく、1つの非磁性金属層30を介して
1組の軟磁性層20と強磁性層40とが存在する最もシ
ンプルな磁性多層膜の場合について、図2を参照しつつ
説明する。
【0055】図2に示されるように、強磁性層40は後
に述べる方法によって媒体面に向かって下向き方向にそ
の磁化をピン止めされている(符号41)。もう一方の
軟磁性層20は、非磁性金属層30を介して形成されて
いるので、その磁化方向は外部からの信号磁界によって
向きを変える(符号21)。このとき、軟磁性層20と
強磁性層40の磁化の相対角度は、磁気記録媒体90か
らの信号磁界の向きによって大きく変化する。その結
果、磁性層内に流れる伝導電子が散乱される度合いが変
化し、電気抵抗が大きく変化する。
【0056】これによって通常のパーマロイの異方性磁
気抵抗効果とはメカニズムが本質的に異なる大きなMR
(Magneto-Resistance) 効果が得られる。
【0057】軟磁性層20,強磁性層40と、ピン止め
効果を示すピン止め層50の磁化の向きが外部磁場に対
して相対的に変化する。それらの磁化の向きの変化が磁
化曲線とMR曲線とに対応させて図3に示される。ここ
では、ピン止め層50により、強磁性層40の磁化は全
てマイナス方向(記録媒体90の記録面から向かって下
向き)に固定されている。外部信号磁場がマイナスの時
は軟磁性層20の磁化もマイナス方向を向く。いま、説
明を簡単にするために軟磁性層20,強磁性層40の保
磁力を0に近い値とする。信号磁場HがH<0の領域
(I)では、まだ軟磁性層20および強磁性層40両磁
性層の磁化方向は一方向を向いている。
【0058】外部磁場を上げてHが軟磁性層20の保磁
力を越えると軟磁性層の磁化方向は信号磁場の方向に回
転し、軟磁性層20および強磁性層40のそれぞれの磁
化の向きが反平行となるのにつれて磁化と電気抵抗が増
加をする。そして一定値となる(領域(II)の状態)。
このときピン止め層50により、あるピン止め磁場Hex
が働いている。信号磁場がこのHexを越えると強磁性層
40の磁化も信号磁場の方向に回転し、領域(III)で軟
磁性層20および強磁性層40のそれぞれの磁化方向
は、一方向に揃って向く。このとき、磁化はある一定値
に、MR曲線は0となる。
【0059】逆に信号磁場Hが減少するときは、今まで
と同様に、軟磁性層20および強磁性層40の磁化反転
に伴い、領域(III)から(II)、(I)と順次変化する。
ここで領域(II)のはじめの部分で、伝導電子がスピン
に依存した散乱を受け、抵抗は大きくなる。領域(II)
のうち、強磁性層40はピン止めされているためほとん
ど磁化反転はしないが、軟磁性層20は直線的にその磁
化を増加させるため、軟磁性層20の磁化変化に対応
し、スピンに依存した散乱を受ける伝導電子の割合が徐
々に大きくなる。すなわち、軟磁性層20に例えばHc
の小さなNi0.8Fe0.2 を選び、適当な異方性磁場H
kを付与することにより、Hk付近以下の数Oe〜数10
Oeの範囲の小外部磁場で抵抗変化が直線的、かつ大きな
抵抗変化率を示す磁性多層膜が得られる。
【0060】本発明において、各薄膜層の膜厚にはそれ
ぞれ個別の制約値がある。非磁性金属層の層厚は15〜
40Åの範囲がよい。非磁性金属層の層厚が40Åより
厚くなると、この層内にのみ流れる伝導電子の割合が増
えてしまい、全体のMR変化が小さくなってしまうので
都合が悪い。また、この層厚が15Åより薄くなってし
まうと、軟磁性層20と強磁性層40間の強磁性的な磁
気結合が強くなってしまい、大きなMR効果を実現する
ためのスピンの反平行状態が得られなくなってしまう。
一方、伝導電子は非磁性金属層と軟磁性層20および強
磁性層40との界面部分で散乱を受けるので、これら2
つの磁性層20,40の厚さが200Åより厚くなって
も実質的な効果の向上はない。むしろ全体の膜厚が厚く
なるので都合が悪い。これら2層の磁性層20,40の
厚さの下限は16Å以上が好ましい。これより薄くなる
と、耐熱性と加工耐性が劣化してしまう。
【0061】以下、上述してきた磁気抵抗効果素子3の
各構成について詳細に説明する。この磁気抵抗効果素子
における第一の特徴点は、ピン止め層の組成にある。
【0062】本発明における磁気抵抗効果素子のピン止
め層50は、実質的に隣接する強磁性層40の磁化をピ
ン止めさせるために用いられており、ピン止め層50が
好適には、特に、FeOx (1.35≦x≦1.55、
単位は原子比)により形成されていることを特徴とす
る。
【0063】一般に化学組成式、Fe23 のα相はヘ
マタイトとして知られている。この物質は反強磁性を示
し、そのネール温度は677℃と室温より極めて高い。
ネール温度が高いということは、ピン止め効果の熱安定
性が高いということであり、磁気抵抗効果素子をMRヘ
ッド等へ応用する場合は有利である。しかしながら、ヘ
マタイトの構造はコランダム構造といわれ、Feイオン
とOイオンの配置が複雑に配置された構造を持つ。単結
晶等のバルクでは生成は容易であるが、反強磁性をしめ
すヘマタイトを磁性薄膜として生成するのは、その構造
の複雑さゆえ難しい。磁性薄膜の厚さが5000Å以上
では生成された例もあるが、本発明の技術範囲である1
00〜3000Åの薄い薄膜では極めて困難である。と
いうのは、Feの酸化膜を真空での薄膜形成方法で生成
しようとすると、真空中でOが解離してしまい、Fe3
4 (マグネタイト)となってしまうからである。
【0064】発明者等はこの点に鑑み、鋭意研究を進め
た結果、ヘマタイト相そのものを実現するとネール温度
が高すぎて、通常のMRヘッドの製造工程上で不都合が
生じることがあることがわかった。そこで酸化鉄薄膜と
その酸化度を十分に検討した結果、FeOx において、
1.35≦x≦1.55、(単位は原子比)、好ましく
は1.40≦x≦1.55の範囲に酸化度を調整するこ
とによりMRヘッドとして必要十分な特性が得られるこ
とがわかった。上記xの値が、1.55より大きくなっ
てしまうと酸素が過剰すぎ、薄膜内部の酸化鉄格子間に
原子状の酸素がそのまま取り込まれ、特性が劣化してし
まう。一方、xの値が、1.35より小さくなるとマグ
ネタイトの特性に近づき、反強磁性が失われ、スピンバ
ルブ型の特性を示さなくなってしまう。
【0065】このピン止め層50の厚さは80Å〜30
00Å、好ましくは80Å〜1000Å、より好ましく
は80Å〜800Å、更に好ましくは80Å〜400Å
の範囲とするのがよい。ピン止め層である酸化鉄が80
Åより薄くなると反強磁性を示さなくなってしまう。逆
に厚い分は余り問題がないが、あまり厚すぎるとMRヘ
ッドとしてのギャップ長(シールド−シールド間の長
さ)が大きくなってしまい、超高密度磁気記録に適さな
くなってしまう。従って、3000Åより小さいほうが
よい。
【0066】また、ピン止め層50としてのFeOx
成は、特にx=1.5(単位は原子比)の反強磁性を示
すαFe23 (ヘマタイト)としてもよい。このと
き、ピン止めの対象となる強磁性層40、非磁性金属層
30、軟磁性層20の材料の選択やそれらの層厚の設計
によって、前述したネール温度は低く設定することがで
き、MRヘッドとしての製造を可能にすることができ
る。
【0067】さらに、この酸化鉄によるピン止め層50
は、反強磁性を示すαFe23 (ヘマタイト)を、少
なくとも30体積%以上60体積%以下含むものであっ
てもよい。ヘマタイト自身は極めて高いネール温度を持
つので、この相がピン止め層の中で30体積%以上60
体積%以下含まれれば、そのピンニング効果はMRヘッ
ド実用上十分である。しかし、30体積%未満となる
と、ピン止め層としての反強磁性が十分ではなく、スピ
ンバルブ型のGMR(giant magnetoresistance)を示
さなくなる。一方、ヘマタイト相が60体積%を超える
と、ネール温度が高くなりすぎることがあり、後に述べ
るようなスピンバルブ動作をさせるための強磁性層のス
ピンのピン止め方向のスイッチングが実用上困難とな
り、都合が悪い。残りの割合はマグネタイト相であって
もよいし、ウスタイト相であってもよい。また、他の材
料との合金や化合物等であってもよい。
【0068】また、ヘマタイト自身は極めて高いネール
温度を持つので、ピン止め層50は反強磁性を示すαF
23 (ヘマタイト)の100Å以下、特に、60〜
100Åの微結晶の集まりであっても、そのピンニング
効果はMRヘッド実用上十分である。なお、微結晶の大
きさは、TEMによるイメージ像の観察により測定すれ
ばよい。
【0069】また、ピン止め層50は、ヘマタイトと明
確に同定されるものである必要はなく、ヘマタイトに近
い結晶格子を持ち、かつネール温度が120℃〜400
℃、好ましくは、150℃〜300℃、より好ましく
は、150℃〜250℃の範囲にある反強磁性を示すも
のであればよい。
【0070】このようなピン止め層50は、イオンビー
ムスパッタ法、スパッタリング法、反応性蒸着法、分子
線エピタキシー法(MBE)等の方法を用いて形成され
る。これら、製膜方法に特に限定はないが、デュアルイ
オンビームスパッタ法による製膜方法のときに、酸化鉄
薄膜中の酸素量を正確に制御することができる。すなわ
ち、酸化鉄のターゲットをイオンビームスパッタ法でス
パッタし、被着対象である基板に対し、Ar(アルゴ
ン)とO2 (酸素)の混合ガスのアシストビームを照射
しながらピン止め層を成膜させることで良好な特性を持
つピン止め層が形成できる。通常のイオンビームスパッ
タ法の場合、ターゲットに入射するスパッタビームの運
動エネルギーが大きいので、酸素が解離してしまい、マ
グネタイトの薄膜しかできない。そこでアシストビーム
としてArとO2 の混合ガスを照射しながら成膜させる
とよい。
【0071】このとき、被着対象である基板に照射する
アシストビームは加速電圧60〜150eV、イオン電
流5〜15mA、Ar:O2 流量比が1:1〜9:1、
Ar+O2 流量が6〜20sccmの範囲にあればよ
い。アシストビームの加速電圧が150eVを超える
と、エネルギーが大きすぎ、酸素が打ち込まれるととも
に、逆に結晶格子を乱してしまい、十分な反強磁性の特
性が得られない。一方、加速電圧が60eV未満となる
と、今度は酸素が結晶格子の中でうまく配列しなくな
り、ネール温度が下がってしまって都合が悪い。好まし
くは80〜120eVの範囲がよい。イオン電流が15
mAより大きくなると、基板に入射する酸素イオンの数
が多すぎ、酸素が打ち込まれるとともに、逆に結晶格子
を乱してしまい、十分な反強磁性の特性が得られない。
一方、イオン電流が5mA未満となると、今度は酸素が
結晶格子の中でうまく配列しなくなり、ネール温度が下
がってしまって都合が悪い。好ましくは6〜12mAの
範囲である。アシストビームでのArとO2 の流量の割
合は、好ましくは、Ar:O2 =1:1〜4:1の範囲
がよい。Ar:O2 の割合が9:1を超えてAr過剰に
なると、酸化鉄薄膜へのOイオンの添加効果が十分とは
言えなくなる。逆にこの割合が1:1未満となりO2
剰になると、アシストビームを発生させるためのフィラ
メントが切れやすくなってしまい、製造が不可能となっ
てしまう。アシストビームでのAr+O2 の全体の流量
は6〜20sccmの範囲にあればよい。この全体の流
量が20sccmを超えてしまうと、酸素イオンの数が
多すぎ、酸素が打ち込まれるとともに、逆に結晶格子を
乱してしまい、十分な反強磁性の特性が得られない。逆
に6sccm未満ではアシストビームでの今度は酸素が
結晶格子の中でうまく配列しなくなり、ネール温度が下
がってしまって都合が悪い。
【0072】また、ピン止め層50の形成は、上記のア
シストビームを伴うイオンビームスパッタ法と同様に、
高周波スパッタ法(RFスパッタ法)を用いて行なうの
もの好ましい態様である。高周波スパッタ法を用いる場
合、酸化鉄をターゲットとしAr(アルゴン)とO2
(酸素)の混合ガス雰囲気中でスパッタを行う。その
際、酸素ガス流量が、全ガス流量の20〜40%の範囲
の流量割合となるように調整する必要がある。この割合
が、20%未満となると、成膜されたピン止め層50の
酸素の結合力が小さく、酸素の状態が不安定で耐熱温度
が下がってしまうという不都合が生じてしまう。また、
この割合が40%を超えると、スパッタをするときのプ
ラズマが安定に点灯しなくなる。また、プラズマが点灯
したとしても、スパッタ雰囲気中の酸素の含有量が多い
ために、実質的なスパッタレートが極端に低下する。そ
のため、成膜される膜中に取り込まれる不純物が増えて
しまい、良好な膜は得られない。なお、従来より一般的
に行なわているAr(アルゴン)ガス雰囲気中での高周
波スパッタ法で、ヘマタイト酸化物膜を成膜した場合に
は、ヘマタイト酸化物膜がプラズマにさらされ、膜中の
酸素が乖離してしまい、本発明で目的とする良好なヘマ
タイト酸化物が得られない。また、得られた膜自体の熱
安定性にも問題がある。
【0073】前記強磁性層40は、Fe,Ni,Co,
Mn,Cr,Dy,Er,Nd,Tb,Tm,Ce,G
d等やこれらの元素を含む合金や化合物から構成される
が、特に、(Coz Ni1-zw Fe1-w (ただし、重
量で0.4≦z≦1.0、0.5≦w≦1.0である)
で表される組成で構成することが好ましい。これらの組
成範囲を外れると、大きな電気抵抗の変化が得られなく
なるという不都合が生じる。
【0074】このような強磁性層40の厚さは、16〜
100Å、より好ましくは、20〜60Åとされる。こ
の値が、16Å未満となると、磁性層としての特性が失
われる。この一方で、この値が100Åを超えると、前
記ピン止め層50からのピン止め力が小さくなり、この
強磁性層のスピンのピン止め効果が十分に得られなくな
る。
【0075】このような強磁性層40は上述のごとくピ
ン止め層50と直接接しているため、両者に直接層間相
互作用が働き、強磁性層40の磁化回転が阻止される。
一方、後に詳述する軟磁性層20は、外部からの信号磁
場により、自由にその磁化を回転させることができる。
その結果、軟磁性層20と強磁性層40との両者の磁化
に相対的な角度が生み出され、この磁化の向きの違いに
起因した大きなMR効果が得られる。
【0076】ところで、本発明においては、図18に示
されるように、前記ピン止め層50と前記強磁性層40
との間に、さらに酸素ブロッキング層45を介在させる
ことが好ましい。酸素ブロッキング層45は、Co(コ
バルト)単体あるいはCoを80重量%以上含む合金よ
り構成され、その厚さは、4〜35Å、より好ましく
は、6〜30Åとされる。Co成分が80重量%未満と
なると、積層体形成後の熱処理プロセス工程中におい
て、前記ピン止め層50側から拡散する酸素に対するブ
ロッキング効果が十分でなくなり、熱処理によりピンニ
ング効果が失われ、スピンバルブ特性を示さなくなると
いう不都合が生じる。この酸素ブロッキング層45によ
る酸素のブロッキング効果は、酸素ブロッキング層45
の組成がCo(コバルト)単体のとき、最も効果が大き
く、また、Co成分が80重量%以上の合金であれば、
その効果は実用上十分なレベルまで維持できるのであ
る。
【0077】このような酸素ブロッキング層45の必要
性は、本発明のピン止め層50としてFeOX (1.3
5≦x≦1.55、単位は原子比)のごとく酸化物の反
強磁性体を用いていることに起因する。すなわち、本発
明においては、ピン止め層50を酸化物の反強磁性体で
構成しているので、例えば、ピン止め層50と接する強
磁性体の材料として汎用のNiFe(パーマロイ)など
を用いた場合には、熱安定性や耐熱性に問題が生じるこ
とが判明したのである。つまり、熱処理プロセス工程中
において反強磁性体の酸素が強磁性体に拡散して行き、
スピンのピンニング効果が失われるという現象が起きて
しまうのである。
【0078】酸素ブロッキング層45の厚さが4Å未満
となると、Coが連続膜とならず酸素のブロッキング効
果が発現しない。また、この厚さが35Åを超えると保
磁力Hc が大きくなる傾向にあり、あまり好ましくな
い。
【0079】このような酸素ブロッキング層45は、強
磁性を示し、前記強磁性層40の好ましい組成範囲と一
部重複する。従って、酸素ブロッキング層45も前記強
磁性層40と同様な機能をも持ち合わせていることにな
る。そのため、酸素ブロッキング層45を設ける場合、
膜厚に関して言えば、酸素ブロッキング層45の厚さt
b と強磁性層40の厚さtf との総和(tb +tf )が
前述した強磁性層40の範囲、すなわち、16〜100
Å、より好ましくは、20〜60Åの範囲内となるよう
にすればよい。また、酸素ブロッキング層45と強磁性
層40とをCo(コバルト)単体あるいはCoを80重
量%以上含む合金からなる同一の組成として、これらを
一層で形成してもよい。また、ピン止め層50に接する
側をCoリッチにして、ピン止め層50側から遠ざかる
につれてCo含有率を漸減させた一層とし、酸素ブロッ
キング層45と強磁性層40の機能を両方持ち合わせた
層としてもよい。
【0080】前記軟磁性層20は、Fe,Ni,Co等
やこれらの元素を含む合金や化合物から構成されるが、
保磁力Hcの小さな磁性層を用いた方がMR曲線の立ち上
がりが急峻となり、好ましい結果が得られる。特に好ま
しくは(Nix Fe1-xyCo1-y (ただし、重量で
0.7≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5)で表わされ
る組成である。ここでx,yがこの範囲にあるとHcが小
さくなり良好な軟磁気特性となり、その結果、磁場感度
の高い良好なMR特性が得られる。一方、x,yがこの
範囲を外れると、Hcが大きくなってしまい磁場感度の高
いMR特性が得られなくなという不都合が生じる。この
ような組成系はCoの濃度が大きい組成系である。スピ
ンバルブ膜において、軟磁性層は外部の微小な磁界に対
し、敏感にその向きを変えることで大きなMR変化率を
もたらしている。したがって、その軟磁気特性は重要で
ある。代表的な軟磁性材料としてはパーマロイが知られ
ているが、パーマロイを構成するNiは非磁性金属層3
0と容易に固溶しやすいため、耐熱性に問題がある。し
たがって、これを解決するためには上記のごとく(Ni
x Fe1-xy Co1-y (ただし、重量で0.7≦x≦
0.9、0.1≦y≦0.5)で表わされるCo濃度の
大きい組成を選択するのがよい。
【0081】さらに、前記軟磁性層20の組成として、
Cotu M’qr (ただし、原子で0.6≦t≦
0.95、0.01≦u≦0.2、0.01≦q≦0.
1、0.05≦r≦0.3)で表わされる組成も優れた
特性を示すものである。ここで、Mは、Fe,Niから
選ばれた少なくとも1種以上であり、M’は、Zr,S
i,Mo,Nbから選ばれた少なくとも1種以上を表
す。MやM’が2種以上の場合は、2種以上の総和量が
上記の組成範囲内に入るようにする。このような組成
は、Coの含有量が多いため、先の組成に比べてMR変
化率がより大きくなるという極めて優れた特徴を有す
る。また、耐熱性も高くなる。また、その結晶構造とし
ては、超微細結晶粒の集まり、もしくはアモルファス構
造のため、より良好な軟磁性特性を示し、その結果大き
なMR傾きが得られる。これらの組成の具体例として
は、Coを主成分として、Niおよび/またはFeを磁
歪が0となるような含有量として選択する。これにZ
r,Si,Mo,Nb等を添加し、アモルファス組成を
安定化させればよい。Coが0.6未満になると、アモ
ルファスが得られにくくなる。Coが0.95を超えて
もよいが、FeやNiを少量添加した方が軟磁性材料と
しての特性がよくなり都合がよい。M’の含有割合は、
0.01≦q≦0.1とされ、qが0.01未満である
とその添加による効果が得られない。qが0.1を超え
ると、軟磁性材料としての特性が劣化してしまう。B
(ボロン)は、アモルファス化するための主元素であ
り、その含有割合は0.05≦r≦0.3である。rが
0.05未満であるとその添加による効果が得られな
い。rが0.3を超えると、軟磁性材料としての特性が
劣化してしまう。
【0082】また、軟磁性層20は積層構造としてもよ
い。この場合、軟磁性層20は、非磁性層側からCoま
たはCoを80重量%以上含む合金により形成された第
1の軟磁性層と、(Nix Fe1-xy Co1-y (ただ
し、重量で0.7≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5で
ある)で表される組成により形成された第2の軟磁性層
を含む積層体とすることが好ましい。
【0083】このような軟磁性層20の厚さは、20〜
150Å、好ましくは、30〜120Å、さらに好まし
くは、50〜100Åとされる。この値が、20Å未満
となると、良好な軟磁性層としての特性が得られない。
この一方で、この値が150Åを超えると、多層膜全体
の厚さが厚くなり、磁性多層膜全体の抵抗が大きくな
り、MR効果が減少してしまう。
【0084】このような軟磁性層20と前記強磁性層4
0との間に介在される非磁性金属層30は、効率的に電
子を導くために、伝導性のある金属が望ましい。より具
体的には、Au、Ag、およびCuの中から選ばれた少
なくとも1種、またはこれらの少なくとも1種以上を6
0wt%以上含む合金等が挙げられる。
【0085】このような非磁性金属層30の厚さは、1
5〜40Åであることが好ましい。この値が15Å以下
になると、このものを介して配置されている軟磁性層2
0と強磁性層40とが交換結合してしまい、軟磁性層2
0と強磁性層40とのスピンがそれぞれ独立に機能しな
くなってしまうという不都合が生じる。この値が40Å
を超えると、上下に位置する軟磁性層20と強磁性層4
0の界面で散乱される電子の割合が減少してしまい、M
R変化率の減少が起こってしまうという不都合が生じ
る。
【0086】上述してきた、これらの各層は少なくとも
基板5側からピン止め層50、強磁性層40、非磁性金
属層30、軟磁性層20の順に積層されていることが必
要である。この積層の順序はピン止め層50の制約から
きている。すなわち、基板5の上に、ピン止め層50か
ら積層をはじめることで、ピン止め層50である酸化鉄
薄膜の反強磁性を十分に実現することができるからであ
る。さらに、より大きなMR変化率を実現するという観
点からは基板5の上に、ピン止め層、強磁性層、非磁性
金属層、軟磁性層、非磁性金属層、強磁性層、ピン止め
層というさらなる積層構造ももちろん可能である。
【0087】保護層80は、成膜プロセスの過程での磁
性多層膜表面の酸化を防止し、その上部に形成される電
極材料とのぬれ性や、密着強度の向上という目的のため
に形成され、このものは、Ti,Ta,W,Cr,H
f,Zr、Zn等の材料より形成される。厚さは、通
常、30〜300Å程度とされる。
【0088】基板5は、ガラス、ケイ素、MgO、Ga
As、フェライト、アルティック、CaTiO3 等の材
料により形成される。厚さは、通常、0.5〜10mm
程度とされる。
【0089】各層の材質及び層厚を上記のように規定
し、さらに、少なくとも軟磁性層20の成膜時に、後述
する膜面内の一方向に外部磁場を印加して、異方性磁界
Hkを2〜20Oe、より好ましくは2〜16Oe、特に2
〜10Oe付与することが好ましい。これによって、形成
された磁性多層膜は、MR変化曲線の立ち上がり部分に
おけるMR傾きが0.5%/Oe以上、特に0.8%/Oe
以上、通常0.5〜1.5%/Oeが得られる。また、M
R変化曲線の最大ヒステリシス幅が8Oe以下、通常0〜
6Oeとなる。その上さらに、1MHz の高周波磁界でのM
R傾きが0.7%/Oe以上、より好ましくは0.8%/
Oe以上、通常0.7〜1.5%/Oeとすることができ、
高密度記録の読み出し用のMRヘッド等に用いる場合、
十分な性能を得ることができる。軟磁性層の異方性磁界
Hkが2Oe未満となると、保磁力と同程度となってしま
い、0磁場を中心とした直線的なMR変化曲線が実質的
に得られなくなるため、MR素子としての特性が劣化す
る。また20Oeより大きいとMR傾きが小さくなり、こ
の膜をMRヘッド等に適用した場合、出力が低下しやす
く、かつ分解能が低下する。ここでこれらのHkは、外
部磁場として成膜時に10〜300Oeの磁場を印加する
ことで得られる。外部磁場が10Oe以下ではHkを誘起
するのに十分ではないし、また、300Oeを越えても効
果は変わらないが、磁場発生のためのコイルが大きくな
ってしまい、費用もかさんで非効率的である。
【0090】なお、MR変化率は、最大比抵抗をρmax
、最小比抵抗をρsat としたとき、(ρmax −ρsat
)×100/ρsat (%)として表される。また、最
大ヒステリシス幅は、磁気抵抗変化曲線(MRカーブ)
を測定して算出したヒステリシス幅の最大値である。さ
らに、MR傾きは、MRカーブを測定し、その微分曲線
を求めて得られた−20〜+20Oeでの微分値の最大値
である。そして、高周波MR傾きは、1MHz 6Oeの磁場
幅の交流磁場でMR変化率を測定したときのMR傾きで
ある。
【0091】上述してきた磁性多層膜1をそれぞれ繰り
返し積層したものを、磁気抵抗効果素子とすることもで
きる。磁性多層膜の繰り返し積層回数nに特に制限はな
く、目的とする磁気抵抗変化率等に応じて適宜選択すれ
ばよい。昨今の磁気記録の超高密度化に対応するために
は、磁性多層膜の全層厚が薄いほど良い。しかし薄くな
ると通常、MR効果は同時に小さくなってしまうが、本
発明に用いられる磁性多層膜は、繰り返し積層回数nが
1の場合でも十分実用に耐えうる多層膜を得ることがで
きる。また、積層数を増加するに従って、抵抗変化率も
増加するが、生産性が悪くなり、さらにnが大きすぎる
と素子全体の抵抗が低くなりすぎて実用上の不便が生じ
ることから、通常、nを10以下とするのが好ましい。
なお、人工格子の長周期構造は、小角X線回折パターン
にて、くり返し周期に応じた1次2次ピーク等の出現に
より確認することができる。超高密度磁気記録用MRヘ
ッド等の磁気変換素子に応用するための、nの好ましい
範囲は1〜5である。
【0092】また、繰り返し積層回数nをできる限り小
さくするには、軟磁性層を1層、ピン止め層を2層とし
た、基板側より、ピン止め層、強磁性層、非磁性金属
層、軟磁性層、非磁性金属層、強磁性層、ピン止め層と
いう構造が好ましい。
【0093】前記磁性多層膜1の各層の成膜は、イオン
ビームスパッタ法、スパッタリング法、蒸着法、分子線
エピタキシー法(MBE)等の方法で行なわれる。基板
5としては、前述したようにガラス、ケイ素、MgO、
GaAs、フェライト、アルティック、CaTiO3 等
を用いることができる。成膜に際しては、前述したよう
に軟磁性層20成膜時に、膜面内の一方向に10〜30
0Oeの外部磁場を印加することが好ましい。これによ
り、軟磁性層20にHkを付与することができる。な
お、外部磁場の印加方法は、軟磁性層20成膜時のみ、
磁場の印加時期を容易に制御できる例えば電磁石等を備
えた装置を用いて印加し、ピン止め層50成膜時は印加
しない方法であってもよい。あるいは、成膜時を通して
常に一定の磁場を印加する方法であってもよい。
【0094】次に、前記実施例で説明した、磁性多層膜
1を備える磁気抵抗効果素子3の発明を発展させ、電子
の流れる経路を詳細に検討し、磁気変換素子の発明に至
った。ここでいう磁気変換素子とは、磁気抵抗効果素
子、導電膜および電極部を含んでなるものであって、よ
り具体的には、磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)、
MRセンサ、強磁性メモリ素子、角度センサ等を含む広
い概念のものである。
【0095】ここでは、磁気変換素子の一例として磁気
抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)を取り挙げて、以下、
説明する。
【0096】図4に示されるように磁気抵抗効果型ヘッ
ド(MRヘッド)150は、信号磁場を感磁するための
感磁部分としての磁気抵抗効果素子200と、この磁気
抵抗効果素子200の両端部200a,200aに形成
された電極部100,100とを有している。そして、
感磁部分としての磁気抵抗効果素子200の端部200
a,200aは、その両端部全体が電極部100,10
0に接する状態で接続されていることが好ましい。な
お、導体膜120,120は、前記電極部100,10
0を介して磁気抵抗効果素子200と導通している。本
発明では、後の説明をわかりやすくするために、便宜
上、導体膜120と電極部100とに分けているが、導
体膜120と電極部100は、本来一体的に薄膜形成法
により形成されている場合が多く、これらは一つ部材と
考えてもよいものである。
【0097】MRヘッドにおける感磁部分としての磁気
抵抗効果素子200は、前記図1に示される磁性多層膜
1を有する磁気抵抗効果素子3と実質的に同様な積層構
造のものが用いられる。すなわち、磁気抵抗効果素子2
00は、図1に示される磁性多層膜を有する磁気抵抗効
果素子3に置換され、その結果、磁気抵抗効果素子20
0は、非磁性金属層30と、非磁性金属層30の一方の
面に形成された強磁性層40と、非磁性金属層30の他
方の面に形成された軟磁性層20と、前記強磁性層40
の磁化の向きをピン止めするために強磁性層40の上
(非磁性金属層30と接する面と反対側の面)に形成さ
れたピン止め層50とを有している。
【0098】ここで重要な点は、以上のようにして形成
した磁気抵抗効果素子200は、いわゆるスピンバルブ
型の磁気抵抗変化を示すという点である。スピンバルブ
型の磁気抵抗変化とは、非磁性金属層30と、非磁性金
属層30の一方の面に形成された強磁性層40と、非磁
性金属層30の他方の面に形成された軟磁性層20と、
前記強磁性層40の磁化の向きをピン止めするために強
磁性層の上に形成されたピン止め層50とを有する磁性
多層膜において、外部の信号磁界が0の時に軟磁性層2
0とピン止めされた強磁性層40のスピンの成す角度
が、鋭角方向から見てほぼ、90度に近く設定されてい
るものをいう。実際は45〜90度の角度であることが
多いが、好ましくは60度から90度の範囲である。ま
た、ピン止めは強磁性層40とピン止め層50との直接
交換相互作用、特に本発明の場合は反強磁性層−強磁性
層間の直接交換相互作用、でもたらされるので、磁気抵
抗効果曲線(MR曲線)は外部磁場が0のときを中心に
してプラス、マイナスの外部磁場に対し、左右非対称と
なるのが特徴である。
【0099】そして図4に示されるように磁気抵抗効果
型ヘッド(MRヘッド)150には、磁気抵抗効果素子
200および電極部100,100を上下にはさむよう
にシールド層300,300が形成されるとともに、磁
気抵抗効果素子200とシールド層300,300との
間の部分には非磁性絶縁層400が形成される。
【0100】ここで感磁部分としての磁気抵抗効果素子
200に用いられる強磁性層40、非磁性金属層30、
軟磁性層20およびピン止め層50は、それぞれ、前記
磁性多層膜の実施例で述べたものと同様の材質、厚さの
ものを用いることが望ましい。
【0101】ここで磁気抵抗効果素子200の磁性多層
膜に流れる電流の経路を詳細に検討した結果、電流とし
ての電子は磁性多層膜内のある部分に片寄って流れてい
ることが判明した。すなわち、磁性多層膜を構成する各
層のうち、ピン止め層50を形成する酸化鉄は、ほぼ絶
縁層に近いものである。したがって、電子は比抵抗の小
さい軟磁性層20や非磁性金属層30に片寄って流れ
る。従来のスピンバルブ膜を用いたMRヘッドでは感磁
部分としての軟磁性層を形成した後に、非磁性金属層、
強磁性層、ピン止め層と積層し、その層の上面に電極を
形成していた。これでは比抵抗の極めて大きなピン止め
層に電極が接するため、測定のためのセンス電流(MR
ヘッドとして動作させるために必要な定電流)が流れる
ことが困難となる。また、接触抵抗が大きく、製造工程
上歩留まりも低下してしまう。
【0102】そこで、積層順序を逆とし、絶縁層に近い
酸化鉄のピン止め層50を基板5に近い方としたうえ
に、図4に示すように、電流を流す電極部100を磁気
抵抗効果素子200の積層方向にその端部200a,2
00a全体が接する構造とすることで、これらの問題点
を解決することができる。つまり、電子は軟磁性層20
と強磁性層40に挟まれた部分を中心に流れる。する
と、この軟磁性層20と強磁性層40とのスピンの方向
によって磁気散乱され、抵抗が大きく変化する。したが
って微小な外部磁場の変化を大きな電気抵抗の変化とし
て検出することができるのである。
【0103】また、前述したように、少なくとも軟磁性
層20の成膜時に膜面内の一方向に外部磁場を印加して
異方性磁場Hk誘起することで、さらに高周波特性を優
れたものとすることができる。ここで、磁性多層膜にM
R効果を起こさせるための電流を流す方向に外部磁場を
印加し、これにより異方性磁場を誘起させる。通常、磁
性多層膜を短冊状に加工し、その長手方向に電流を流す
ので、磁場をその長手方向に印加して成膜すると良い。
言い換えれば、MRヘッドとしての電流が流れる方向と
同じ方向、すなわち、信号磁場方向と垂直かつ面内方向
に磁場を印加して成膜するとよい。すると、磁性多層膜
を構成する軟磁性層は短冊長手方向が磁化容易方向に、
短冊短辺方向が磁化困難方向となり、異方性磁場Hkが
発生する。ここで信号磁場は短冊状磁性多層膜の短辺方
向に印加されるので、軟磁性層の高周波磁気特性が向上
し、大きな高周波領域でのMR特性が得られる。ここで
印加する磁場の大きさは10〜300Oeの範囲にあれば
よい。そして、軟磁性層20に誘起する異方性磁場Hk
は3〜20Oe、より好ましくは3〜16Oe、特に3〜1
2Oeとするとよい。異方性磁界Hkが3Oe未満では軟磁
性層20の保磁力と同程度となってしまい、0磁場を中
心とした直線的なMR変化曲線が実質的に得られなくな
り、MRヘッドとしての特性が劣化する。また20Oeよ
り大きいとMR傾き(単位磁場当たりのMR変化率)が
小さくなり、MRヘッド等として用いる際、出力が低下
しやすく、かつ分解能が低下する。本発明の膜は、高い
耐熱性を示し、MR変化曲線の立ち上がり部分における
MR傾きが0.5%/Oe以上、特に0.8%/Oe以上、
通常0.5〜1.5%/Oeが得られる。また、MR変化
曲線の最大ヒステリシス幅が8Oe以下、通常0〜6Oeと
なる。その上さらに、1MHz の高周波磁界でのMR傾き
が0.7%/Oe以上、より好ましくは0.8%/Oe以
上、通常0.7〜1.5%/Oeとすることができ、高密
度記録の読み出し用のMRヘッド等として、十分な性能
を得ることができる。
【0104】さらに、ピン止め層50を成膜する際に
は、軟磁性層20を成膜する際の印加磁場の方向と垂直
方向に磁場を印加すると良い。つまり磁性多層膜の膜面
内でかつ、測定電流と直角方向となる。ここで印加する
磁場の大きさは10〜300Oeの範囲にあればよい。こ
れにより、ピン止め層50により強磁性層40の磁化の
方向が確実に印加磁場方向(測定電流と直角方向)に固
着され、信号磁場によってその向きを容易に変えうる軟
磁性層20の磁化と最も合理的に反平行状態を作り出す
ことができる。もっともこれは必要条件ではなく、反強
磁性層を成膜する際に、軟磁性層を成膜する際に印加す
る磁場の方向と同じ向きであっても良い。この時は磁性
多層膜の成膜後、工程中で200℃程度の熱処理を行う
際に、短冊短辺方向(軟磁性層20を成膜する際の印加
磁場の方向と垂直方向)に磁場を印加しながら、温度を
下げていくと良い。
【0105】MR曲線の立ち上がり部分を規定するのは
軟磁性層20の磁化回転である。より急峻なMR曲線の
立ち上がりを得るためには、軟磁性層20が信号磁場に
対し、完全に磁化回転によりその磁化の向きを変えてい
くことが望ましい。しかし、実際は軟磁性層20に磁区
が発生してしまい、信号磁場に対し磁壁移動と磁化回転
が同時に起こってしまう。その結果、バルクハウゼンノ
イズが発生し、MRヘッド特性が安定しなくなってい
た。
【0106】そこで発明者等は鋭意、研究を進めた結
果、図5に示されるように、感磁部分である磁気抵抗効
果素子200と測定電流を流すための電極部100との
間に、それぞれ、連結用軟磁性層500を介在させるこ
とにより、上記ノイズの改善が図られることを確認し
た。もちろん、この場合、連結用軟磁性層500と磁気
抵抗効果素子200の端部200a,200aの全体が
連結用軟磁性層500と接触する状態で接続されてい
る。磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)に隣接して形成さ
れた連結用軟磁性層500,500は、磁性多層膜を構
成している軟磁性層と磁気的に直接接触する。この付加
された連結用軟磁性層500は、磁性多層膜中の軟磁性
層の磁区を単磁区構造に近づけ、磁区構造を安定化する
効果がある。その結果、磁性多層膜中の軟磁性層は信号
磁場に対し、磁化回転モードで動作し、ノイズのない、
良好な特性を得ることができる。
【0107】磁性多層膜中の軟磁性層の磁区を単磁区に
近づけ、磁区構造を安定化させるためには、さらに図6
に示されるような形状の連結用軟磁性層510,510
を設けることが好ましい。この連結用軟磁性層510
は、感磁部分である磁気抵抗効果素子200と電極部1
00との間のみならず、電極部100の下面101にも
連続して形成されている。これは磁区構造安定化のため
の連結用軟磁性層510の体積が大きい方がその安定化
の度合いが大きいからである。しかも電極部100に直
接接していれば電圧効果は生じないので、この磁区構造
安定化のための連結用軟磁性層自身のMR効果は磁性多
層膜のMR効果に影響を与えず、都合がよい。また、よ
り積極的に磁性多層膜中の軟磁性層の磁区を安定化する
ためには、上記磁区構造安定化のための連結用軟磁性層
と電極部100との間に反強磁性層をはさんでも良い。
【0108】また、本願発明のごとくピン止め層として
ヘマタイトを用いるヘマタイト使用型のスピンバルブM
Rヘッドは、図21に示されるようなヘッド構造とする
ことが特に好ましい。すなわち、感磁部分である磁気抵
抗効果素子200と測定電流を流すための電極部100
との間に、図示のごとく磁気抵抗効果素子200側から
連結用軟磁性層520および反強磁性層800(ないし
は硬磁性層800)を順次介在させる。しかも、連結用
軟磁性層520および反強磁性層800(ないしは硬磁
性層800)の一方端側は、磁気抵抗効果素子200の
上部200a(軟磁性層に近い方向)の一部分を覆うよ
うに、かつ他方端側は図示のごとく電極部100下面1
01まで潜り込んで形成される。さらに、電極部100
のヘッド中央側に位置する端部102は、磁気抵抗効果
素子200の上部200a(軟磁性層に近い方向)の一
部分を覆い、かつ、連結用軟磁性層520および反強磁
性層800の上部端部520a,800aをもそれぞれ
覆うように形成される。
【0109】このような構成とすることにより、磁気抵
抗効果素子200に形成される連結用軟磁性層520お
よび反強磁性層800の両方の効果によって極めて効率
的に縦バイアスを付与することにができ、バルクハウゼ
ンノイズを抑制したMRヘッド特性が得られる。また、
電極部100の端部102が、前述のように磁気抵抗効
果素子200を覆うように形成されていることにより、
素子端部での信号磁場の低下がなく、しかも1μm以下
のような狭トラック幅の形成が容易なMRヘッドが提供
できる。
【0110】一般にパーマロイを用いたMRヘッドにお
いては、通常Ti等のシャント層やCoZrMo,Ni
FeRh等の比抵抗の大きな軟磁性材料のバイアス磁界
印加層が感磁部分に隣接して設けられている。これらは
ソフトフィルムバイアスや、シャントバイアスと呼ば
れ、パーマロイの曲線をシフトし、ゼロ磁場を中心に直
線領域を生み出す働きをしている。しかし、これらの機
構は複雑であり、製造工程上、製造歩留まりを大きく下
げる要因となっているのが実情である。これに対して上
述してきた本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)で
は、0磁場の極近傍からMR曲線が立ち上がっているの
で、磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)に流す電流によっ
て生じる自己バイアスにより、ゼロ磁場を中心に直線領
域を生じさせることができる。この結果、複雑な機構の
バイアス法を設けなくて良いので、製造歩留まりの向
上、製造時間の短縮とコスト削減等の効果がある。ま
た、バイアス機構のない分、感磁部分の厚さがうすくな
るので、MRヘッドにしたときのシールド厚さが小さく
なり、超高密度記録による信号の短波長化に対し大きな
効果がある。
【0111】これらMRヘッドを製造する場合、その製
造工程の中でパターニング、平坦化等でベーキング、ア
ニーリング、レジストキュア等の熱処理が不可避であ
る。
【0112】一般的にこれら人工格子と呼ばれるような
磁性多層膜を有する磁気抵抗効果素子では、構成する各
層の厚さ故、耐熱性が問題となる場合が多かった。本発
明による磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)では磁場を印
加し、磁性層に異方性磁場を付与することにより、製膜
後、300℃以下、一般に100〜300℃、1時間程
度の熱処理に十分対応できる。熱処理は通常、真空中、
不活性ガス雰囲気中、大気中等で行えばよいが、特に1
-7Torr以下の真空(減圧下)中で行なうことで特性劣
化の極めて少ない磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)が得
られる。また、加工工程でのラッピングやポリッシング
においてもMR特性が劣化することはほとんどない。
【0113】また、ピン止め層50である酸化鉄層を成
膜後、真空成膜装置から基板を取り出し、その後、大気
中や酸素雰囲気中、もしくは真空中100℃〜300℃
の温度で熱処理を行い、ヘマタイト相に近づくような熱
処理を施した後、引き続き真空製膜装置に基板を戻し、
続きのスピンバルブ構造(残りの積層膜構造)を形成し
てもよい。FeとOイオンの大きさはかなり異なり、真
空成膜によって応力等による歪みが入りやすい。この熱
処理により、これら、応力の緩和と、結晶格子の規則度
向上による、反強磁性の特性の改善が可能となる。な
お、熱処理はピン止め層形成後に大気中で行うのが望ま
しいが、真空中でもその効果は大きく、少なくともピン
止め層形成後は任意の工程で100℃〜300℃の温度
での熱処理を行えばよい。
【0114】なお、本発明におけるFeOx の酸化鉄薄
膜(ピン止め層を構成する材料)は、高耐電圧の絶縁層
であるため、MRヘッドのいわゆるギャップ膜を構成す
る材料として用いることもできる。
【0115】
【実施例】前記の磁気抵抗効果素子の発明、並びにこれ
らを用いた磁気変換素子(例えばMRヘッド)の発明
を、以下に示す具体的実施例によりさらに詳細に説明す
る。まず最初に、磁性多層膜1を有する磁気抵抗効果素
子3(図1対応)の発明の具体的実施例を実施例1とし
て示す。
【0116】実施例1 基板としてガラス基板を用い、このものをイオンビーム
スパッタ装置の中に入れ、2.3×10-7Torrまで真空
引きを行った。基板の温度は14℃に冷却したまま、基
板を20rpm で回転させながら、以下の組成をもつ人工
格子磁性多層膜を作成した。この際、磁界を基板の面内
でかつ、測定電流と平行方向に印加しながら、約0.3
Å/秒以下の成膜速度で成膜を行った。
【0117】成膜後、10-5Torrの真空中で、測定電流
と直角かつ面内方向に200Oeの磁界を印加しながら2
00℃から冷却し、強磁性層のピン止め効果を誘起し
た。このようにして表1に示されるような磁気抵抗効果
素子の各サンプル1−1〜1−13を作成した。
【0118】
【表1】 表1において、例えばサンプル1−1は、基板上に、メ
インガンの加速電圧1200eV、イオン電流120m
A、アシストビームの加速電圧100eV、イオン電流
10mA、Ar流量4sccm、O2 流量1sccmの
条件で、1000Å厚のピン止め層FeOx を成膜し、
この上に、38Å厚のNi81%−Fe19%のパーマ
ロイ組成(NiFe)合金の強磁性層、88Å厚のCu
の非磁性金属層を順次スパッタして形成した磁性多層膜
である。他の各サンプル1−2〜1−13は、ピン止め
層FeOx の成膜条件のみが異なり(従って、各々Fe
x の組成が異なる)、それ以外はすべて上記サンプル
1−1と同様な積層構造とした。
【0119】各サンプルについて、用いたメインガンの
加速電圧とイオン電流、用いたアシストガンの加速電圧
とイオン電流、およびアシストガンに流したArとO2
ガスの流量、ピン止め層FeOx を構成するO/Feの
比であるx(酸化度と称す)、およびピン止め層が反強
磁性を示すことによってもたらされる一方向性異方性H
ua(磁化曲線でのヒステリシス中心の0磁場からのシフ
ト量:uniaxial anisotropy )の値を、それぞれ表1に
示した。なお、ここで酸化度xは蛍光X線分析法によっ
て容易に決定することができる。また、反強磁性の強さ
のパラメータであるHuaに関しては、MRヘッドを製造
するときと同じ成膜条件と同じ各層の層厚で、酸化鉄の
薄膜部分(ピン止め層FeOx )と強磁性層を作成し、
このものの磁化曲線を測定して、そのヒステリシスの中
心磁場のシフト量で評価した。その結果、1.35≦x
≦1.55、(単位は原子比)の範囲に酸化度xを調整
することによりMRヘッド動作をさせるときの必要十分
なHuaが得られることがわかった。
【0120】表1中のサンプル1−1〜1−4で示され
るアシストガス流量を変化させた実験結果より、アシス
トガンのAr+O2 ガスの流量が6〜20sccmの範
囲内で形成させたピン止め層(サンプル1−2および1
−3)のみが、酸化度x=O/Feの値が1.35〜
1.55の範囲に入っていることがわかる。このときに
一方向性異方性Huaの値は、最低必要と思われる40O
e以上の大きい値となっている。
【0121】サンプル1−5、1−6、1−7、1−1
0、1−11はアシストビームのイオン電流を様々に変
化させた本実施例と比較例である。これらの実験結果よ
り、アシストビームのイオン電流は5〜15mAの範囲
になくてはならない(サンプル1−5および1−10)
ことがわかる。
【0122】また、サンプル1−5、サンプル1−7〜
1−9、およびサンプル1−12の実験結果より、アシ
ストビームの加速電圧は180eVと高すぎても、ま
た、50eVと低くても十分なHuaが得られないことが
わかる。従って、この加速電圧は60〜150eVの範
囲になくてはならないことがわかる。
【0123】図7にはアシストガンのAr+O2 ガスの
流量を10sccmに固定したときの、O2 流量の変化
と酸化度x=O/Feとの関係が示される。この図にお
いて、例えば、O2 流量が4sccmのときにはAr流
量は6sccmとなっている。ここではFeOX の反強
磁性の効果を調べるために、基板側からFeOx (10
00Å)−NiFe(38Å)−Cu(88Å)という
順で積層された膜を用いて評価した。図7の結果から明
らかなように、O2 流量が1〜5sccmのときにxは
1.35〜1.55の範囲になっている。すなわち、A
r:O2 流量比が1:1〜9:1の範囲のときにxは
1.35〜1.55の範囲内となり、またHuaの値も4
0Oe以上の大きい値となることが確認された。
【0124】図8にはアシストビームでのArとO2
スの流量を、それぞれ(7、3)、(6、4)、(5、
5)(単位はそれぞれsccm)の3種類のパラメータ
とし、これらの各パラメータについて、アシストビーム
のイオン電流変化と一方向性異方性Huaとの関係をしら
べた実験結果が示される。積層膜構成は、基板側からら
FeOx (1000Å)−NiFe(38Å)−Cu
(88Å)という順で積層された膜を用いて評価した。
このときのアシストビームの加速電圧は100eVに固
定されている。図からAr:O2 流量比によって多少の
差はあるが、イオン電流が5〜15mAの範囲で大きな
一方向性異方性を示していることがわかる。
【0125】本発明のポイントは反強磁性を示す酸化鉄
FeOX の生成にあるので、ここでその材料物性の同定
について以下に説明する。
【0126】表1のなかでHuaの値が110Oeを示し
たサンプル1−5の薄膜X線回折の結果が図9に示され
る。この結果より、ブロードではあるが、ヘマタイトの
α相(104)配向面からの回折ピークが確認される。
マグネタイトやウスタイト等の酸化鉄のその他の回折ピ
ークは確認されないことから、ピン止め層としてαFe
23 (ヘマタイト)が生成されていることがわかる。
その結果、110Oeという大きなHuaの値が得られて
いる。
【0127】また、サンプル1−2(表1)を積層方向
に切断し、その積層断面を高分解能電子顕微鏡(TE
M)で観察した。そして、上記ピン止め層50の内部を
電子線回折で調べた結果、ヘマタイト相の存在が確認さ
れた。また、この場合は、ヘマタイト相のほかに40体
積%のマグネタイト相も混在していることがわかった。
しかしながら、60体積%の割合で存在するヘマタイト
相によって、Huaの値は実用上十分なものを示した。そ
の外のサンプルにおいてはヘマタイト相が30体積%
と、そのほかに70体積%のマグネタイト相と少量のウ
スタイト相も確認されたが、Huaの値はあまり余裕のあ
るものではないが、なんとかヘッドとして実用できる範
囲のものであることが確認できた。これらの結果より、
ピン止め層はヘマタイトの単層でなくても反強磁性を示
すαFe23 (ヘマタイト)を、少なくとも30体積
%以上60体積%以下含むものであればよいことがわか
った。
【0128】また、成膜条件の異なる他のサンプルの、
特にピン止め層50の内部を、同様に高分解能電子顕微
鏡(TEM)で観察した。すると、そのピン止め層50
の内部は、ヘマタイト相の単相であったが、その結晶は
ヘマタイト結晶の60〜100Åの微結晶粒の集まりで
あった。このとき、Huaの値は71Oeと、十分すぎる
ものではないが、実用上問題のない程度であることが確
認された。従って、ピン止め層は反強磁性を示すαFe
23 (ヘマタイト)の100Å以下、特に、60〜1
00Åの微結晶の集まりであってもよいことがわかる。
【0129】ここで、実際に反強磁性を示す酸化鉄Fe
x が生成されているかどうかについて述べる。まず、
図10は表1のサンプル1−5の耐熱性を調べたグラフ
である。Huaの値は測定温度をあげるにつれて減少し、
約200℃でほぼ0となった。これは反強磁性を示すF
eOx が、この層のネール温度が近づくにつれてそのピ
ン止め効果が小さくなり、ついにはピンニング効果が失
われたことを示している。この結果より、成膜されてい
た酸化鉄FeOx が反強磁性であることの証明と、その
ネール温度が200℃であることが確認された。さら
に、様々な成膜条件でのFeOx サンプルについて、同
様の評価をした結果、このピン止め層のネール温度は1
20℃〜400℃の範囲にあることがわかった。
【0130】以上の結果と表1に示される結果から、ピ
ン止め層として酸化鉄FeOx を1.35≦x≦1.5
5、単位は原子比、厚さ100Å〜3000Åに形成す
ることで、隣接する強磁性層の磁化の向きをピン止めで
きることがわかる。また、このピン止め層は反強磁性を
示すαFe23 (ヘマタイト)、もしくは反強磁性を
示すαFe23 (ヘマタイト)を、少なくとも30体
積%以上60体積%以下含むもの、反強磁性を示すαF
23 (ヘマタイト)の100Å以下の微結晶の集ま
りであるもの、反強磁性を示しそのネール温度は120
℃〜400℃であるもの、いずれでも同様の効果をもた
らすことがわかる。これらの酸化鉄FeOx は酸化鉄の
ターゲットをイオンビームスパッタ法でスパッタし、基
板に対し、ArとO2 の混合ガスのアシストビームを照
射しながら生成することで、反強磁性を示し十分なピン
止め効果を持つピン止め層を形成することができる。
【0131】以下、本発明のおのおのに共通な特性評価
について説明する。B−Hループの測定は、振動型磁力
計により行った。抵抗測定は、表1に示される構成の試
料から0.4×6mmの形状のサンプルを作成し、外部磁
界を面内に電流と垂直方向になるようにかけながら、−
300〜300Oeまで変化させたときの抵抗を4端子法
により測定した。その抵抗から比抵抗の最小値ρsat お
よびMR変化率ΔR/Rを求めた。MR変化率ΔR/R
は、最大比抵抗をρmax 、最小比抵抗をρsatとし、次
式により計算した:ΔR/R=(ρmax −ρsat )×1
00/ρsat (%)。また、測定したMR曲線の微分曲
線を取り、そのゼロ磁場付近の極大値をMR傾き(単位
%/Oe)として、立ち上がり特性を評価した。1MHz
の高周波磁界における6Oe幅でのMR傾きの値は、前
記のとおり0.7%/Oe以上あることが必要である。
【0132】以上のピン止め層を用いて形成したスピン
バルブ型のMR変化を示す磁性多層膜の構成と磁気抵抗
変化率を下記表2に示す。
【0133】
【表2】 なお、表2において、例えばサンプル2−1は、[αF
23 (1000)−CoNiFe(32)−Cu
(22)−NiFeCo(77)]であって、基板側か
ら1000Å厚のαFe23 の反強磁性層(ピン止め
層)、強磁性層として用いた32Å厚のCoNiFe合
金層、22Å厚のCuの非磁性金属層、77Å厚のNi
FeCoによる軟磁性層を順次配置した磁性多層膜であ
る。各サンプルを構成する材質を、反強磁性層(ピン止
め層)、強磁性層、非磁性金属層、軟磁性層の順に(m
1,m2,m3,m4)として示した。また、それらの
層の厚さを同様の順に(t1,t2,t3,t4)と表
2に記載した。また、強磁性層として用いたCoNiF
e合金層の組成はCo8 8 Ni6 Fe6 、軟磁性層とし
て用いたNiFeCo合金層の組成はNi48Fe17Co
35(それぞれ重量%)である。以降の実施例において特
に断らなければ、CoNiFe,NiFeCo層の組成
は上記本実施例と同様の組成である。また、直流磁場で
のMR傾き、及び1MHz での高周波磁界における6Oe幅
でのMR傾き(単位%/Oe)も併せて示した。この値は
前記のとおり0.7%/Oe以上あることが必要である。
【0134】表2に示されるサンプル2−3およびサン
プル2−4におけるCoNiFeSiB合金層はアモル
ファス軟磁性層であり、その組成はCo70Ni5 Fe5
Si812(原子%)の場合の例である。
【0135】サンプル2−5は、ヘマタイト層を50体
積%含むFe23 層をピン止め層として用いた場合の
例である。
【0136】サンプル2−8,サンプル2−9(共に比
較例)は、サンプル2−1と同じ多層膜構成であるが、
非磁性金属層の層厚(t3)が異なる場合の例である。
すなわち、サンプル2−8は非磁性金属層厚が厚すぎて
MR変化率が減少している。一方、2−9では逆に非磁
性金属層厚が薄すぎて、2つの磁性層間での強磁性結合
が強くなり、スピンの相対角度が生じなくなり、その結
果、スピンバルブ型のMR変化を示さなくなっている。
【0137】サンプル2−10(比較例)は、サンプル
2−1と同じ多層膜構成であるが、ピン止め層の層厚
(t1)が異なる場合の例である。すなわち、サンプル
2−10はピン止め層の層厚が薄すぎてMR変化率が減
少している。これはピン止め層の層厚が薄いことによっ
て、酸化鉄FeOx の反強磁性が十分に実現されないこ
とによるものである。
【0138】サンプル2−11,サンプル2−12(共
に比較例)は、サンプル2−1とほぼ同じ多層膜構成で
あるが、2つの磁性層の層厚が、本発明の範囲から外れ
る場合の例である。すなわち、サンプル2−11は軟磁
性層の層厚(t4)が厚すぎて、多層膜の比抵抗が大き
くなり、その結果、MR変化率が小さくなっている。サ
ンプル2−12は強磁性層の層厚(t2)が厚すぎて、
ピン止め層のエネルギーが不足し、十分に強磁性層のス
ピンがピン止めされていない例である。その結果、両サ
ンプルともにMR変化率が十分ではない。
【0139】以上、表2に示される結果から、ピン止め
層である酸化鉄FeOx の反強磁性の特性が十分に実現
され、かつ強磁性層、軟磁性層、非磁性金属層の材料、
およびそれらの層厚を本発明に開示された範囲から選択
することにより、1MHzでの高周波磁界における6O
e幅での磁気抵抗変化の傾きが、0.7%/Oe以上と
なる磁気抵抗効果素子が実現できることがわかる。
【0140】なお、図11(A)および(B)には、そ
れぞれ、表2のサンプル2−1を構成するスピンバルブ
磁性多層膜のMR曲線と、磁化曲線が示される。反強磁
性を示すヘマタイトにより、強磁性層のスピンがピン止
めされ、左右非対称のスピンバルブ型のMR曲線が得ら
れている。同様に、ピン止め効果により磁化曲線も上下
が非対称となっている。図12には同じサンプルの10
Oe以下でのマイナーループが示される。0磁場からM
R曲線が急激に立ち上がっているのがわかる。このマイ
ナーMRループでの最大ヒステリシス幅は約3Oeと小
さく、極めて良好な特性を示している。
【0141】さらに、図13にはガラス基板上に作成し
た[αFe23 (1000Å)−CoNiFe(45
Å)−Cu(88Å)]多層膜サンプルの熱処理結果が
示される。これは反強磁性を示すヘマタイト層と強磁性
層が交換結合したサンプルであり、熱処理の結果、Hua
の値が増大していることが確認される。その特性改善は
2時間の熱処理において、50%アップに及んでいる。
すなわち、熱処理により、スピンバルブ特性の大幅な改
善が可能であることがわかる。
【0142】また、図14には基板上にピン止め層とし
ての酸化鉄FeOX を成膜した後、成膜装置から基板を
取り出し、大気中で熱処理を施した場合のX線回折パタ
ーンの変化が示される。200、300、400℃の順
に、それぞれの温度で4時間保持し、熱処理を累積して
いったものである。この結果より、明らかに反強磁性を
示すヘマタイトの(104)配向面からの回折ピークが
大きくなっており、ヘマタイトの結晶化が進んでいるこ
とがわかる。このあと、再び真空成膜装置へ基板をセッ
トし、さらにスピンバルブ構造の膜を作ったところ、熱
処理を行わなかったサンプルよりも大きなMR変化率
と、大きなHuaが得られることが確認された。従って、
磁気抵抗効果素子を成膜したのち、100℃〜300℃
の温度で熱処理を行なってもよいし、基板上に少なくと
もピン止め層を成膜したのち100℃〜300℃の温度
で熱処理を行い、その後、スピンバルブ膜(磁気抵抗効
果素子)を形成してもよい。
【0143】次いで、図18に示されるように、ピン止
め層50と強磁性層40との間に酸素ブロッキング層4
5を介在させた、磁性多層膜1を有する磁気抵抗効果素
子の発明の具体的実施例を実施例2として示す。
【0144】実施例2 基板としてガラス基板を用い、このものを高周波スパッ
タ(RFスパッタ)装置の中に入れ、ターゲットをヘマ
タイトとし、ガラス基板の上に、ピン止め層50として
のαFeOX 膜を形成した。αFeOX 膜の形成に際し
て、到達圧力6×10-7Torr〜8×10-7Torr、成膜時
の圧力7.5×10-3Torr、基板温度14℃程度とし、
ArとO2 の流量は、0.5〜8sccmの範囲で変化
させ、具体的なO2 流量割合は、下記表3に示す通りと
した。投入パワーは150〜170W(ワット)とし
た。これらの条件下で、αFeOX 膜を成膜した後、次
いで、酸素ブロッキング層45としてのCo膜、強磁性
層40としてのNiFe膜、保護層としてのTa(タン
タル)膜を形成した。これら各層の膜厚は、下記表3に
示す通りである。
【0145】なお、各材料の成膜速度は、0.2〜10
Å/sec 程度とし、成膜中に磁場を基板の面内かつ測定
電流と平行方向に印加しながらスパッタを行った。そし
て、各層を成膜した後、10-5Torrの真空中で、測定電
流と直角かつ面内方向に200Oeの磁界を印加しながら
200℃から冷却し、強磁性層のピン止め効果を誘起し
た。このようにして表3に示されるような磁気抵抗効果
素子の各サンプル3−1〜3−5を作成した。これらの
各サンプルについて、αFeOX 膜の酸化度X(=O/
Fe)、Hua、および耐熱温度を測定した。なお、耐熱
温度は、10-6〜10-5Torrの真空中で80℃、110
℃、140℃、170℃、200℃、250℃、300
℃というふうに、それぞれの温度で成膜時と同じ方向に
磁場を印加しながら1時間ずつ保管し、その後、室温ま
で冷却した。そして、これらのサンプルの磁化曲線を測
定し、その曲線の0磁場からのシフト量、すなわちHua
を評価した。そして、Huaの減少曲線を描きこの曲線か
らHuaが0になるところを求め、耐熱温度とした。
【0146】結果を下記表3に示した。
【0147】
【表3】 表3に示される結果より、αFeOX 膜の成膜時に、A
rとO2 の混合ガス中の酸素流量を20〜40%とする
ことにより、所定範囲の酸化度Xの膜が得られ、このも
のを備える磁性多層膜は大きなHuaを有し、しかも極め
て優れた耐熱性を有することがわかる。また、本発明の
高周波スパッタ条件で作製したαFeOX 膜のX線回折
パターンを調べたところ、ヘマタイトの形成を示す(1
04)ピークと(006)ピークのみが確認された。
【0148】さらに、本発明において、酸素ブロッキン
グ層45を、ピン止め層(αFeOX )と強磁性層との
間に介在させた効果を示す実験を行った。すなわち、サ
ンプルとして、 基板の上に、厚さ1000ÅのαFe23 膜、厚さ
5ÅのCo膜(酸素ブロッキング層)、厚さ95ÅのN
iFe膜、厚さ100ÅのTa膜を順次成膜したサンプ
ル、 基板の上に、厚さ1000ÅのαFe23 膜、厚さ
10ÅのCo膜(酸素ブロッキング層)、厚さ90Åの
NiFe膜、厚さ100ÅのTa膜を順次成膜したサン
プル、および 基板の上に、厚さ1000ÅのαFe23 膜、厚さ
100ÅのNiFe膜、厚さ100ÅのTa膜を順次成
膜したサンプル、をそれぞれ作製した。
【0149】これらのサンプルを種々の温度条件で熱処
理を行い、ピン止め層(αFeOX)の界面における一
方向交換異方性エネルギーJの相対変化を、成膜時の状
態を基準にして求めた。すなわち、各サンプルを、15
0℃、200℃、250℃、300℃の温度でそれぞれ
1時間ずつ、5×10-6〜20×10-6Torrの真空中で
熱処理を行い、各温度処理後の一方向交換異方性エネル
ギーJの相対変化を調べた。なお、一方向交換異方性エ
ネルギーJは、J=Hua・ Ms・dで表され、反強磁性
層での交換結合の大きさを示す。Huaは、一方向性異方
性を示し、Msは強磁性層の飽和磁化量を示し、dは強
磁性層の膜厚を示す。
【0150】結果を図19のグラフに示した。図19に
示されるグラフより、Co膜(酸素ブロッキング層)を
介在させたサンプルは、250℃の熱処理においても十
分な特性を保っている。これに対して、Co膜(酸素ブ
ロッキング層)を介在させずにαFe23 膜に直接N
iFe膜を形成したサンプルは150℃の熱処理ですで
に特性の劣化が認められる。
【0151】さらに、スピンバルブ特性を示す磁性多層
膜サンプルを2種類形成し、これらのサンプルについ
て、熱処理温度とMR変化率の関係を調べ、その結果を
図20のグラフに示した。サンプルとして、 基板の上に、厚さ1000ÅのαFe23 膜、厚さ
20ÅのCo膜(酸素ブロッキング層と強磁性層の両方
の機能を備える)、厚さ25ÅのCu膜(非磁性金属
層)、厚さ10ÅのCo膜と厚さ50ÅのNiFe膜の
積層体(軟磁性層)、厚さ20ÅのCo膜、厚さ100
ÅのTa膜を順次成膜したサンプル、および 基板の上に、厚さ1000ÅのαFe23 膜、厚さ
38ÅのNiFe膜(強磁性層)、厚さ27ÅのCu膜
(非磁性金属層)、厚さ77ÅのNiFe膜(軟磁性
層)、厚さ30ÅのCu膜を順次成膜したサンプルを用
いた。
【0152】この場合、5×10-6〜20×10-6Torr
の真空中で、サンプルを所定の各温度で順にそれぞれ1
5分ずつの熱処理(アニール処理)を行った。図20に
示されるグラフからわかるように、酸素ブロッキング層
と強磁性層の両方の機能を備えるCo膜を用いたサンプ
ルは、250℃の熱処理においてもほとんどMR特性の
劣化は認められない。この一方で、Co膜を用いず、こ
の代わりにNiFe強磁性膜を備えるサンプルは、15
0℃以上の熱処理でMR変化率は大きく減少している。
さらに、図20より、酸素ブロッキング層と強磁性層の
両方の機能を備えるCo膜を、NiFe強磁性層に代え
て用いることにより、MR変化率が約3倍に大きなって
いることがわかる。従って、この材料を超高密度磁気記
録の読み出し用MRヘッドの材料として用いれば、大き
なメリットとなる。
【0153】次いで、上記のごとくαFeOX 膜のピン
止め層50を用いて形成したスピンバルブ型のMR変化
を示す磁性多層膜を種々作製し、下記表4に示されるよ
うな所定の特性を調べた。
【0154】
【表4】 なお、表4において、例えば、サンプル4−2は、[α
Fe23 (1000)−Co(6)−NiFe(2
0)−Cu(25)−Co(8)−NiFe(60)]
であって、基板側から1000Å厚のαFe23 の反
強磁性層(ピン止め層)、酸素ブロッキング層として用
いた6Å厚のCo層、強磁性層として用いた20Å厚の
NiFe(Ni81Fe19:重量%)層、25Å厚のCu
の非磁性金属層、軟磁性層として用いた8Å厚のCoと
60Å厚のNiFe(Ni81Fe19:重量%)との積層
体、を順次配置した磁性多層膜である。以降の実施例に
おいて特に断りがなければ、NiFeはNi81Fe
19(重量%)を示す。
【0155】また、表4において、O2 ガス流量比
(%)の項目は、αFe23 層形成時における高周波
スパッタのガス雰囲気の条件を示すものであり、酸化度
X(=O/Fe)は、実際に測定されたαFe23
の酸化度を示す。なお、表4に示される評価項目は、実
質的に前記表2のものと同じであるが、表4においては
さらに250℃の熱処理後のデータを併記した。
【0156】以上、表4に示される結果から、ピン止め
層である酸化鉄FeOx の反強磁性の特性が十分に実現
され、かつ強磁性層(ブロッキング層を含む)、軟磁性
層、非磁性金属層の材料、およびそれらの層厚を本発明
に開示された範囲から選択することにより、1MHzで
の高周波磁界における6Oe幅での磁気抵抗変化の傾き
が、0.7%/Oe以上となる磁気抵抗効果素子が実現
できることがわかる。加えて、本発明範囲内のものは、
250℃の熱処理後の特性変化も少なく極めて耐熱性に
優れていることがわかる。
【0157】さらに、磁気変換素子としてのMRヘッド
の発明の実施例および比較例として、以下の実施例3〜
5および比較例1を示す。
【0158】実施例3 アルティック(AlTiC)基板上に、下部シールドに
相当する層として、FeAlSi(センダスト)を2μ
mの厚さに成膜し(図4の下部の符号300に相当)、
この上に絶縁層(ギャップ膜)としてAl23 を15
00Åの厚さに成膜し、この上にαFe23 (100
0Å)−CoNiFe(26Å)−Cu(24Å)−N
iFeCo(86)の順に各層を積層し、スピンバルブ
磁性多層膜を成膜した。成膜条件は、到達圧力2.3×
10-7Torr、成膜時圧力1.4×10-4Torr、基板温度
14℃程度とし、各材料を0.2〜0.3Å/sec の成
膜速度で、成膜中に磁場を基板の面内かつ測定電流と平
行方向に印加しながらイオンビームスパッタ法による成
膜を行った。
【0159】その後、フォトリソグラフィー技術を用い
て感磁部分として、20μm×6μmのパターンを形
成、その上にトラック幅3μmの電極を形成した。その
上に、絶縁層(ギャップ膜)として、Al23 を15
00Å厚さに形成し、さらにこの上に上部シールド層N
iFe(パーマロイ)を2μm厚さに形成し(図4の上
部の符号300に相当)MRヘッドとした。作製したM
Rヘッドの構造は図4に示すとおりである。その後、1
-5Torrの真空中で、測定電流方向と直角かつ面内方向
に200Oeの磁界を印加しながら180℃から冷却し、
強磁性層のピン止め効果を誘起した。測定電流を5mA、
外部磁場を±20Oe、50Hzの範囲で変化させたときの
出力電圧の変化を図15に示す。本発明による人工格子
磁性多層膜を用いたMRヘッドにおいては、単位トラッ
ク幅当たりの規格化出力電圧で示すと約830μV/μm
の出力電圧が得られた。
【0160】比較例1 比較例1として上記実施例3と同条件でパーマロイを用
い、従来から用いられている異方性磁気抵抗効果を利用
したMRヘッドを作製した。測定電流を5mA、外部磁場
を±20Oe、50Hzの範囲で変化させた。このときの出
力電圧は約170μV/μm であった。
【0161】実施例3と比較例1を比較するに、本発明
のMRヘッドにおいては、従来例と比較して5倍近い出
力が得られた。従って、本発明の効果は明らかである。
【0162】実施例4 さらに、図16では、本発明の磁気抵抗効果素子をヨー
ク型MRヘッドに応用した例が示される。ここでは、磁
束を導くヨーク600、600の一部に切り欠きを設
け、その間に磁気抵抗効果素子200が薄い絶縁膜40
0を介して形成されている。この磁気抵抗効果素子20
0には、ヨーク600、600で形成される磁路の方向
と平行または直角方向に電流を流すための電極(図示せ
ず)が形成されている。その結果、パーマロイを用いた
場合のMRヘッドより2倍の出力が確認された。本発明
の磁性多層膜では、0磁場での立ち上がり特性が良好で
あるので、通常、用いられるシャント層やバイアス磁界
印加手段は設けなくてもよい。
【0163】実施例5 図17には、本発明の磁気抵抗効果素子を用いて磁気変
換素子、例えばMRヘッドを構成するときの他の実施例
が示される。磁気抵抗効果素子200は高比抵抗フラッ
クスガイド層700,710と磁気的に接触して形成さ
れている。このフラッスガイド層は、磁性多層膜200
より3倍以上大きい比抵抗を持つ材料で構成されている
ので、磁性多層膜200に流れる測定電流は実質的にフ
ラックスガイド層700,710には流れることはな
い。一方、フラックスガイド層700と磁性多層膜20
0とは磁気的に接触しているので、信号磁界はフラック
スガイド層700に導かれ、その強度を失うことなく、
磁性多層膜200に到達する。符号600はもう一方の
異なるフラックスガイド層で、磁性多層膜200を通過
した磁束のリターンガイドの働きをする。このフラック
スガイド層600は磁気抵抗効果素子200、及び高比
抵抗フラックスガイド層700,710対し、両側に設
けられても良い。また、符号710と符号600のガイ
ド層が媒体に対して遠い端部で接触されていても良い。
このとき、パーマロイを用いた場合のMRヘッドより3
倍の出力が確認された。なお、図中、符号400は、非
磁性絶縁層である。
【0164】
【発明の効果】以上説明してきたように、磁気抵抗効果
素子に関する本発明によれば、ピン止め層として反強磁
性を示す酸化鉄FeOX を用いることで、耐食性が特に
優れ、しかも1MHz の高周波磁場領域でのMR傾きが
0.7%/Oe以上の抵抗変化率をもつスピンバルブ型磁
気抵抗効果素子が得られる。しかも、0 磁場でのMR曲
線の立ち上がり特性はきわめて良好であり、ヒステリシ
スは小さく、加えて高い耐熱性をも示す。この耐熱性に
ついては、ピン止め層と強磁性層との間にさらに酸素ブ
ロッキング層を介在させることにより、その効果はさら
に向上する。磁性多層膜を有する磁気抵抗効果素子を用
いた磁気変換素子、例えばMRヘッドでは従来材料に比
較して5倍近い大きい出力電圧を得ることができる。し
たがって信頼性の極めて高い、1Gbit/ inch2 を越える
ような超高密度磁気記録の読み出しを可能にする優れた
MRヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の磁気抵抗効果素子の断面図で
ある。
【図2】図2は、本発明の作用を説明するための磁気抵
抗効果素子、特に磁性多層膜の構造の模式図である。
【図3】図3は、本発明の作用を説明するための磁化曲
線とMR曲線の模式図である。
【図4】図4は、本発明の磁気変換素子の1例を示す一
部省略断面図である。
【図5】図5は、本発明の磁気変換素子の磁気抵抗効果
素子(磁性多層膜)と電極部の構造を示す断面図であ
る。
【図6】図6は、本発明の磁気変換素子の磁気抵抗効果
素子(磁性多層膜)と電極部の構造の他の例を示す断面
図である。
【図7】図7は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層
膜)における、アシストビームのO2 流量とピン止め層
の酸化度との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層
膜)における、アシストビームのイオン電流と一方向性
異方性磁界との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層
膜)における、ピン止め層のX線回折パターンを示すグ
ラフである。
【図10】図10は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)における、一方向性異方性磁界の温度に対する
変化を示すグラフである。
【図11】図11(A),(B)は、それぞれ本発明の
磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)のMR曲線と直流磁場
での磁化曲線を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)のマイナーMR曲線を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)において、熱処理時間が一方向性異方性磁界の
変化に及ぼす影響を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)において、熱処理時間と、X線回折パターンの
変化との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、本発明の磁気変換素子(MRヘッ
ド)の印加磁場と出力電圧を示すチャートである。
【図16】図16は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)をヨーク型MRヘッドに応用した1例を示す一
部省略断面図である。
【図17】図17は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性
多層膜)をフラックスガイド型MRヘッドに応用した1
例を示す一部省略断面図である。
【図18】図18は、本発明の磁気抵抗効果素子の他の
実施形態を示す断面図である。
【図19】図19は、磁性多層膜サンプルにおける、ア
ニール温度(熱処理温度)とJ値の相対変化との関係を
示すグラフである。
【図20】図20は、磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)
サンプルにおける、アニール温度(熱処理温度)とMR
変化率との関係を示すグラフである。
【図21】図21は、本発明の磁気変換素子の磁気抵抗
効果素子(磁性多層膜)と電極部との好適な接続状態を
示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…磁性多層膜 3…磁気抵抗効果素子 5…基板 20…軟磁性層 30…非磁性金属層 40…強磁性層 50…ピン止め層 80…保護層 90…記録媒体 93…記録面 150…磁気抵抗効果型ヘッド 200…磁気抵抗効果素子
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−202292(JP,A) 特開 平6−150259(JP,A) 特開 平6−236527(JP,A) 特開 平7−38173(JP,A) 特開 平7−297465(JP,A) 特開 平8−279117(JP,A) 特開 平6−84682(JP,A) 特開 平8−87722(JP,A) 特開 平10−4226(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 43/08 G01R 33/09 G11B 5/39 H01F 10/32 H01F 41/18

Claims (46)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示すαFe23(ヘマタイト)を、少なくとも30体
    積%以上60体積%以下含んでなることを特徴とする磁
    気変換素子。
  2. 【請求項2】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示すαFe23(ヘマタイト)であってその微結晶の
    大きさが100Å以下の微結晶の集まりであることを特
    徴とする磁気変換素子。
  3. 【請求項3】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示し、そのネール温度は120℃〜400℃であるこ
    とを特徴とする磁気変換素子。
  4. 【請求項4】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、酸化鉄の
    ターゲットをイオンビームスパッタ法でスパッタし、基
    板に対し、ArとO2 の混合ガスのアシストビームを照
    射しながら成膜した膜であることを特徴とする磁気変換
    素子。
  5. 【請求項5】 前記アシストビームは、加速電圧が60
    〜150eV、イオン電流が4〜15mA、Ar:O2
    の流量比が1:1〜9:1、Ar+O2の流量が6〜2
    0sccmの範囲で行なわれている請求項4に記載の磁
    気変換素子。
  6. 【請求項6】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、酸化鉄の
    ターゲットをArと酸素の混合ガス雰囲気中で高周波ス
    パッタ法でスパッタして成膜した膜であり、成膜時にお
    ける酸素ガス流量を全ガス流量の20〜40%の範囲に
    調整して成膜した膜であることを特徴とする磁気変換素
    子。
  7. 【請求項7】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、 前記強磁性層は、(Coz Ni1-zwFe1-w(ただ
    し、重量で0.4≦z≦1.0、0.5≦w≦1.0で
    ある)で表される組成であり、前記軟磁性層は、Cot
    u M’qr(ただし、原子比で0.6≦t≦0.9
    5、0.01≦u≦0.2、0.01≦q≦0.1、
    0.05≦r≦0.3;Mは、Fe,Niから選ばれた
    少なくとも1種以上であり、M’は、Zr,Si,M
    o,Nbから選ばれた少なくとも1種以上を表す)で表
    される組成であることを特徴とする磁気変換素子。
  8. 【請求項8】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極部
    とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、非磁性金属層と、非磁性金属
    層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の
    他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化
    の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属
    層と接する面と反対側の面)に形成されたピン止め層と
    を有する磁性多層膜を備えており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、 前記磁気抵抗効果素子は、1MHzでの高周波磁界にお
    ける6Oe幅での磁気抵抗変化の傾きが、0.7%/O
    e以上であることを特徴とする磁気変換素子。
  9. 【請求項9】 磁気変換素子が磁気抵抗効果型ヘッドで
    ある請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の磁気変
    換素子。
  10. 【請求項10】 前記磁気抵抗効果素子の両端部は、そ
    の端部全体が電極部と接触する状態で接合されているこ
    とを特徴とする請求項9記載の磁気変換素子。
  11. 【請求項11】 磁気抵抗効果素子の両端部に形成され
    た電極部との間に、さらに、連結用軟磁性層を有し、こ
    の連結用軟磁性層と磁気抵抗効果素子の端部の全体が接
    触する状態で接続されている請求項9記載の磁気変換素
    子。
  12. 【請求項12】 前記連結用軟磁性層は、磁気抵抗効果
    素子と、この磁気抵抗効果素子の両端部に形成された電
    極部との間、および前記電極部の下面にも接触するよう
    に連続して形成されている請求項11記載の磁気変換素
    子。
  13. 【請求項13】 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方
    の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面
    に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接す
    る面と反対側の面)に形成されたピン止め層とを有する
    磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示すαFe23(ヘマタイト)を、少なくとも30体
    積%以上60体積%以下含んでなることを特徴とする磁
    気抵抗効果素子。
  14. 【請求項14】 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方
    の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面
    に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接す
    る面と反対側の面)に形成されたピン止め層とを有する
    磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示すαFe23(ヘマタイト)であってその微結晶の
    大きさが100Å以下の微結晶の集まりであることを特
    徴とする磁気抵抗効果素子。
  15. 【請求項15】 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方
    の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面
    に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接す
    る面と反対側の面)に形成されたピン止め層とを有する
    磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、反強磁性
    を示し、そのネール温度は120℃〜400℃であるこ
    とを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  16. 【請求項16】 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方
    の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面
    に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接す
    る面と反対側の面)に形成されたピン止め層とを有する
    磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、酸化鉄の
    ターゲットをイオンビームスパッタ法でスパッタし、基
    板に対し、ArとO2 の混合ガスのアシストビームを照
    射しながら成膜した膜であることを特徴とする磁気抵抗
    効果素子。
  17. 【請求項17】 前記アシストビームは、加速電圧が6
    0〜150eV、イオン電流が4〜15mA、Ar:O
    2 の流量比が1:1〜9:1、Ar+O2 の流量が6〜
    20sccmの範囲で行なわれている請求項16に記載
    の磁気抵抗効果素子。
  18. 【請求項18】 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方
    の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面
    に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接す
    る面と反対側の面)に形成されたピン止め層とを有する
    磁性多層膜を備えてなる磁気抵抗効果素子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、当該ピン止め層は、酸化鉄の
    ターゲットをArと酸素の混合ガス雰囲気中で高周波ス
    パッタ法でスパッタして成膜した膜であり、成膜時にお
    ける酸素ガス流量を全ガス流量の20〜40%の範囲に
    調整して成膜した膜であることを特徴とする磁気抵抗効
    果素子。
  19. 【請求項19】 磁気抵抗効果素子と、導体膜と、電極
    部とを含む磁気変換素子であって、 前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果素
    子と導通しており、 前記磁気抵抗効果素子は、基板を有し、この基板の上に
    強磁性層の磁化の向きをピン止めするためのピン止め
    層、強磁性層、非磁性金属層、および軟磁性層が順次積
    層されており、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、このピン止め層と前記強磁性
    層との間に、CoまたはCoを80重量%以上含む合金
    よりなる、厚さ4〜30Åの酸素ブロッキング層が介在
    されていることを特徴とする磁気変換素子。
  20. 【請求項20】 前記ピン止め層の厚さは、100Å〜
    3000Åである請求項19に記載の磁気変換素子。
  21. 【請求項21】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)である請求項19または請求項
    20に記載の磁気変換素子。
  22. 【請求項22】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)を、少なくとも30体積%以上
    60体積%以下含む請求項19または請求項20に記載
    の磁気変換素子。
  23. 【請求項23】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)であってその微結晶の大きさが
    100Å以下の微結晶の集まりである請求項19または
    請求項20に記載の磁気変換素子。
  24. 【請求項24】 前記ピン止め層は、反強磁性を示し、
    そのネール温度は120℃〜400℃である請求項19
    または請求項20に記載の磁気変換素子。
  25. 【請求項25】 前記ピン止め層は、酸化鉄のターゲッ
    トをイオンビームスパッタ法でスパッタし、基板に対
    し、ArとO2の混合ガスのアシストビームを照射しな
    がら成膜した膜である請求項19ないし請求項24のい
    ずれかに記載の磁気変換素子。
  26. 【請求項26】 前記アシストビームは、加速電圧が6
    0〜150eV、イオン電流が4〜15mA、Ar:O
    2の流量比が1:1〜9:1、Ar+O2の流量が6〜2
    0sccmの範囲で行なわれている請求項25に記載の
    磁気変換素子。
  27. 【請求項27】 前記ピン止め層は、酸化鉄のターゲッ
    トをArと酸素の混合ガス雰囲気中で高周波スパッタ法
    でスパッタして成膜した膜であり、成膜時における酸素
    ガス流量を全ガス流量の20〜40%の範囲に調整して
    成膜した膜である請求項19ないし請求項24のいずれ
    かに記載の磁気変換素子。
  28. 【請求項28】 前記強磁性層は、(CozNi1-zw
    Fe1-w(ただし、重量で0.4≦z≦1.0、0.5
    ≦w≦1.0である)で表される組成である請求項19
    ないし請求項27のいずれかに記載の磁気変換素子。
  29. 【請求項29】 前記強磁性層は、前記酸素ブロッキン
    グ層と同一組成からなる請求項19ないし請求項27の
    いずれかに記載の磁気変換素子。
  30. 【請求項30】 前記軟磁性層は、非磁性層側からCo
    またはCoを80重量%以上含む合金により形成された
    第1の軟磁性層と、(NixFe1-xyCo1-y(ただ
    し、重量で0.7≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5で
    ある)で表される組成により形成された第2の軟磁性層
    を含む積層体である請求項19ないし請求項29のいず
    れかに記載の磁気変換素子。
  31. 【請求項31】 前記非磁性金属層は、Au、Ag、お
    よびCuの中から選ばれた少なくとも1種を含む材料か
    らなる請求項19ないし請求項30のいずれかに記載の
    磁気変換素子。
  32. 【請求項32】 前記磁気抵抗効果素子は、強磁性層の
    磁化がピン止め層によりピン止めされることによるスピ
    ンバルブ型の磁気抵抗変化を示す、請求項19ないし請
    求項31のいずれかに記載の磁気変換素子。
  33. 【請求項33】 積層成膜された磁気抵抗効果素子は、
    100℃〜300℃の温度で熱処理されている請求項1
    9ないし請求項32のいずれかに記載の磁気変換素子。
  34. 【請求項34】 前記磁気抵抗効果素子は、1MHzで
    の高周波磁界における6Oe幅での磁気抵抗変化の傾き
    が、0.7%/Oe以上である請求項33に記載の磁気
    変換素子。
  35. 【請求項35】 基板の上に、強磁性層の磁化の向きを
    ピン止めするためのピン止め層、強磁性層、非磁性金属
    層、および軟磁性層を順次積層してなる磁気抵抗効果素
    子であって、 前記ピン止め層はFeOx(1.35≦x≦1.55、
    単位は原子比)からなり、このピン止め層と前記強磁性
    層との間に、CoまたはCoを80重量%以上含む合金
    よりなる、厚さ4〜30Åの酸素ブロッキング層が介在
    されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  36. 【請求項36】 前記ピン止め層の厚さは、100Å〜
    3000Åである請求項35に記載の磁気抵抗効果素
    子。
  37. 【請求項37】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)である請求項35または請求項
    36に記載の磁気抵抗効果素子。
  38. 【請求項38】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)を、少なくとも30体積%以上
    60体積%以下含む請求項35または請求項36に記載
    の磁気抵抗効果素子。
  39. 【請求項39】 前記ピン止め層は、反強磁性を示すα
    Fe23(ヘマタイト)であってその微結晶の大きさが
    100Å以下の微結晶の集まりである請求項35または
    請求項36に記載の磁気抵抗効果素子。
  40. 【請求項40】 前記ピン止め層は、反強磁性を示し、
    そのネール温度は120℃〜400℃である請求項35
    または請求項36に記載の磁気抵抗効果素子。
  41. 【請求項41】 前記ピン止め層は、酸化鉄のターゲッ
    トをイオンビームスパッタ法でスパッタし、基板に対
    し、ArとO2の混合ガスのアシストビームを照射しな
    がら成膜した膜である請求項35ないし請求項40のい
    ずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  42. 【請求項42】 前記アシストビームは、加速電圧が6
    0〜150eV、イオン電流が4〜15mA、Ar:O
    2の流量比が1:1〜9:1、Ar+O2の流量が6〜2
    0sccmの範囲で行なわれている請求項41に記載の
    磁気抵抗効果素子。
  43. 【請求項43】 前記ピン止め層は、酸化鉄のターゲッ
    トをArと酸素の混合ガス雰囲気中で高周波スパッタ法
    でスパッタして成膜した膜であり、成膜時における酸素
    ガス流量を全ガス流量の20〜40%の範囲に調整して
    成膜した膜である請求項35ないし請求項40のいずれ
    かに記載の磁気抵抗効果素子。
  44. 【請求項44】 前記強磁性層は、(CozNi1-zw
    Fe1-w(ただし、重量で0.4≦z≦1.0、0.5
    ≦w≦1.0である)で表される組成である請求項35
    ないし請求項43のいずれかに記載の磁気抵抗効果素
    子。
  45. 【請求項45】 前記強磁性層は、前記酸素ブロッキン
    グ層と同一組成からなる請求項35ないし請求項43の
    いずれかに記載の磁気変換素子。
  46. 【請求項46】 前記軟磁性層は、非磁性層側からCo
    またはCoを80重量%以上含む合金により形成された
    第1の軟磁性層と、(NixFe1-xyCo1-y(ただ
    し、重量で0.7≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5で
    ある)で表される組成により形成された第2の軟磁性層
    を含む積層体である請求項35ないし請求項45のいず
    れかに記載の磁気抵抗効果素子。
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