JP3300733B2 - 低反射型浮消波堤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、港湾等に設置されて外
海から進入する波（入射波）を減ずるための浮体式の消
波堤に関し、特に、入射波の到来に伴う反射波を減少さ
せるようにした、低反射型浮消波堤に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の浮消波堤としては、図４（平面
図）および図５（断面図）に示すようなものがあり、細
長い浮体としての堤体01が、入射波02の入射方向に対し
直角をなすように配置されていて、入射波02を堤体01に
よって防ぎ透過波03を小さくするよう作用する。なお堤
体01は海底に設置されたシンカー（図示せず）に装着さ
れた係留索（図示せず）により、海底に係留されてい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のよう
な従来の浮消波堤では、入射波02の到来に伴い堤体01か
ら反射波04が発生し、この反射波04が後続の入射波02と
干渉して海面が著しく乱れるようになり、付近を航行す
る漁船等の小型船舶に悪影響を与えるという問題点があ
る。その結果、浮消波堤の設置海域が限定され、これが
浮消波堤が消波構造物として広く利用されるのを妨げる
要因となっている。

【０００４】本発明は、上述のような堤体からの反射波
を減少させ、付近を航行する小型船への悪影響を生じな
いようにした、低反射型浮消波堤を提供することを目的
とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の低反射型浮消波堤は、係留手段を介して係
留される浮体としての主堤体を有する低反射型浮消波堤
であって、当該低反射型浮消波堤が、波を反射するため
の少なくとも３枚以上の反射板を備え、当該各反射板と
前記主堤体の前縁との間の間隔が、予め予想される複数
種類の入射波の波長のうちから選択された複数種類の入
射波の波長を基準として、前記各反射板毎にそれぞれ前
記選択された入射波の波長のほぼ１／４倍の長さに設定
され、互いに隣接する反射板どうしが前記前縁との間の
間隔が同じ間隔とならないように、かつ互いに隣接する
反射板どうしの前記前縁との間の間隔の差が最大になら
ないようにして、前記各反射板が前記主堤体の前縁に沿
って互いに相互間隔をあけて配設されていることを特徴
としている。

【０００６】

【作用】上述の本発明の低反射型浮消波堤によれば、主
堤体の前縁に取付けられた反射板が、浮消波堤に入射す
る入射波を反射させる。反射板は主堤体の前縁から入射
波の波長のほぼ１／４倍の長さに相当する間隔をあけて
設けられているため、この反射波は浮消波堤の前縁で直
接反射された反射波に対して逆位相となる。そして逆位
相どうしの反射波が互いに干渉して浮消波堤からの反射
波の発生を抑制する作用が行われる。また、反射板と主
堤体の前縁との間の間隔を変えて少なくとも３枚以上の
反射板を配設し、かつ互いに隣接する反射板どうしの前
記前縁との間の間隔の差が最大にならないようにするこ
とにより、複数種の波長の各入射波に対して上記と同様
の反射波発生抑制作用が行われる。

【０００７】

【実施例】以下、図面により本発明の一実施例としての
低反射型浮消波堤について説明すると、図１はその平面
図、図２は図１のＡ−Ａ矢視断面図、図３はその作用説
明用平面図である。

【０００８】図１〜３において、符号１は平面視ほぼ長
方形の浮体からなる主堤体を示しており、この主堤体１
は海底に設置されたシンカー（図示せず）に装着された
係留索（図示せず）により、海底に係留されている。主
堤体１は、入射波２の入射方向に対して直角をなすよう
に配置されるとともに、入射波２に対向する前縁５に、
複数の反射板３ａ〜３ｃが、互いに間をあけて次の要領
で、前縁５と平行に配設されている。すなわち、主堤体
１の前縁５に取付け板４ａが直角に突設され、この取付
け板４ａの先端部に反射板３ａが取付けられている。

【０００９】またこれと同様に、反射板３ｂ，３ｃが主
堤体１の前縁５に直角に突設された取付け板４ｂ，４ｃ
の各先端部にそれぞれ取付けられている。ここで、取付
け板４ａ，４ｂ，４ｃの各長さ、すなわち、反射板３
ａ，３ｂ，３ｃと前縁５との間の各間隔ｌａ，ｌｂ，ｌ
ｃがｌａ＞ｌｂ＞ｌｃの関係に形成されるとともに、そ
れぞれ後述する特定寸法に設定されている。

【００１０】そして、この実施例の場合、図１に示すよ
うに、反射板３ａ〜３ｃが互いに隣接する反射板どうし
が同じ位置（前縁５との間の間隔が同一となる位置）に
なることがなく、かつ互いに隣接する反射板と極端に離
れることがない（前縁５との間の間隔の差が最大になら
ない位置）ように、ほぼ等しい寸法の間をあけて、主堤
体１の前縁５の全長にわたって配設されている。なお各
反射板３ａ〜３ｃはほぼ同一の形状に形成されている、
また各反射板の間は必ずしも等しくなくてもよい。次
に、作用を説明する。

【００１１】図３において、入射波２の主堤体１に直接
入射する部分の入射波を22，入射波22が前縁５で反射し
た反射波を22ａとし、また入射波２の反射板３ａに入射
する部分の入射波を21，入射波21が反射板３ａで反射し
た反射波を21ａとすると、入射波21，22の波長Ｌが反射
板３ａと主堤体１の前縁５との間隔ｌ（エル）の４倍
（Ｌ＝４ｌ（エル））のとき、反射波21ａと22ａとの位
相が逆位相となる。これにより、反射波21ａと反射波22
ａとが互いに干渉して打ち消し合うため、反射波21ａ，
22ａはほぼ消滅してしまい、その結果、低反射が達成さ
れる。

【００１２】上述の各反射波21ａ，22ａの相互干渉効果
による低反射は、波長が４ｌ（エル）近傍の入射波に対
して達成される。

【００１３】したがって、他の反射板３ｂ，３ｃと前縁
５との間の間隔ｌ（エル）ｂ，ｌ（エル）ｃを、いずれ
もｌ（エル）とは異なった寸法に設定するとともに、ｌ
（エル）ｂ≠ｌ（エル）ｃに設定することにより、波長
が４ｌ（エル）ｂ，４ｌ（エル）ｃの各近傍の入射波に
対して、それぞれ低反射作用が行われることは言うまで
もなく、反射板３ａ〜３ｃをとりまぜて主堤体１の前縁
５のほぼ全長にわたって、図１に示すように配設したこ
の実施例では、広い波長領域の入射波に対する低反射作
用が行われ、反射波を充分に抑制した浮消波堤が得られ
る。

【００１４】なおこの実施例では、反射板として主堤体
１の前縁５との間の間隔が３種類のものを設けている
が、さらに多種の間隔のものを用いるとき、より広い波
長領域の入射波に対処可能な低反射型浮消波堤が得られ
ることは言うまでもない。

【００１５】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の低反射型
浮消波堤によれば、広い波長領域の波に対して反射する
波を小さくすることができ、これにより浮消波堤から反
射する波によって付近の船舶の航行や漁業操業等を妨げ
るという問題をなくすことができ、浮消波堤を消波構造
物として広く利用できるようにする、という利点が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例としての低反射型浮消波堤
の平面図。

【図２】図１のＡ−Ａ矢視断面図。

【図３】同作用説明用平面図。

【図４】従来の浮消波堤の平面図。

【図５】図４のＢ−Ｂ矢視断面図。

【符号の説明】

１ 主堤体 ２ 入射波 ３ａ〜３ｃ 反射板 ４ａ〜４ｃ 取付け板 ５ 主堤体の前縁 21 反射板３ａに入射する部分の入射波 22 主堤体１に直接入射する部分の入射波 21ａ 入射波21の反射波 22ａ 入射波22の反射波 Ｌ 入射波２の波長 ｌ（エル） 反射板３ａと前縁５との間の間隔

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 係留手段を介して係留される浮体として
   の主堤体を有する低反射型浮消波堤であって、当該低反
   射型浮消波堤が、波を反射するための少なくとも３枚以
   上の反射板を備え、当該各反射板と前記主堤体の前縁と
   の間の間隔が、予め予想される複数種類の入射波の波長
   のうちから選択された複数種類の入射波の波長を基準と
   して、前記各反射板毎にそれぞれ前記選択された入射波
   の波長のほぼ１／４倍の長さに設定され、互いに隣接す
   る反射板どうしが前記前縁との間の間隔が同じ間隔とな
   らないように、かつ互いに隣接する反射板どうしの前記
   前縁との間の間隔の差が最大にならないようにして、前
   記各反射板が前記主堤体の前縁に沿って互いに相互間隔
   をあけて配設されていることを特徴とする、低反射型浮
   消波堤。