JP3292455B2 - 工作機械の熱変位量算出装置及び記憶媒体 - Google Patents

工作機械の熱変位量算出装置及び記憶媒体

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JP3292455B2 JP27604897A JP27604897A JP3292455B2 JP 3292455 B2 JP3292455 B2 JP 3292455B2 JP 27604897 A JP27604897 A JP 27604897A JP 27604897 A JP27604897 A JP 27604897A JP 3292455 B2 JP3292455 B2 JP 3292455B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械に装備さ
れ、その工作機械で発生する熱変位量を算出する工作機
械の熱変位量算出装置及びその装置を実現するための記
憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばワークに切削や穴開け等を
施したり基板に部品を組み付けるための加工手段と、こ
の加工手段とワークや基板等の被加工物との相対位置を
変動させる駆動手段とを有する工作機械がある。一般
に、切削等の加工を行う工作機械では、例えばドリルや
タップ等の工具を保持するための保持機構、これに保持
された工具を回転駆動するための主軸駆動機構、工具の
X軸方向の送りのためのX軸送り機構、工具のY軸方向
の送りのためのY軸送り機構、工具のZ軸方向の送りの
ためのZ軸送り機構、これらの送り機構を制御するため
の制御装置等を備えている。
【0003】一例をあげると、図15及び図16に示さ
れる工作機械10がある。図15に示すように、この工
作機械10は、切削屑の飛散を防止するためのスプラッ
シュガード12の内側にワークW(図1参照)を載置す
るためのテーブル14、例えばドリルやタップ等の工具
交換のためのATCマガジン16、工作機械本体(以下
単に本体ともいう)20等が配置されている。またスプ
ラッシュガード12には、操作パネル22、ワークWの
入出やメンテナンスのためのワーク交換口24、主にメ
ンテナンス用の点検ハッチ26等が設けられている。
【0004】図16に示すように、本体20は、ドリル
やタップ等の工具T(図1)を保持するための主軸2
8、主軸28を回転駆動するための主軸モータ30、多
数の鋼球を内蔵して主軸側に固着されているナット部3
2とナット部32に内挿されるボールネジ34とからな
るボールネジ機構36、ボールネジ34を回転駆動する
ためのZ軸モータ38、ボールネジ34と平行に配され
ているガイドレール40、ガイドレール40と主軸28
側とを連結するスライド42等を備えている。
【0005】この本体20においては、ボールネジ機構
36とZ軸モータ38とでZ軸方向の送りのためのZ軸
送り機構が構成され、Z軸モータ38によりボールネジ
34を回転させることで主軸28のZ軸方向の移動が行
われる。また、図15に示されるテーブル14をX軸及
びY軸方向に移動させることができ、主軸28のZ軸方
向の移動と併せて、ワークWと工具TのX、Y、Z軸方
向の相対位置を変化させることができる。
【0006】このような工作機械では、例えばボールネ
ジ機構36の駆動に伴って摩擦熱が発生してボールネジ
34が延びることがある。また、他の機構においても発
熱がある。そうした発熱によって工作機械に熱変位が発
生する。この熱変位が例えばZ軸方向に発生すると、ワ
ークWに施される溝の深さや段差の高さ等に誤差が生じ
る。公差が熱変位量よりも十分に大きい場合にはこのよ
うな熱変位による加工誤差はあまり問題とはならない
が、そうでない場合には熱変位に対する補正が必要とな
る。そこで、工作機械の熱変位量を算出する熱変位量算
出装置を設け、予め定められている加工プログラムに従
って駆動手段を制御するに当たって、その熱変位量に応
じた補正を行いながら駆動手段を制御することが提案さ
れている(例えば特開昭62−88548号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
工作機械の熱変位量算出装置においては、工作機械の駆
動中を通して熱変位量を算出する形態であったので、そ
の処理を実行するためのシステムを常時動かしておく必
要があった。このため、その算出処理に関わる負担が大
きかった。そこで、本願出願人は、工作機械の駆動を続
けることによって温度が上昇すると、やがて発熱量と放
熱量とが均衡する状態(このときの熱変位量を飽和熱変
位量という)になることに着目し、次のように熱変位量
を算出することを提案した。すなわち、工作機械の駆動
中は、飽和熱変位量と工作機械の駆動時間とに基づいて
熱変位量を算出し、その熱変位量が飽和熱変位量にほぼ
等しくなると、それ以降は熱変位量として飽和熱変位量
の値を代用するのである(特願平8−298866
号)。この場合、正確な飽和熱変位量が与えられれば、
各時点における熱変位量を正確に算出でき、しかもその
算出処理に関わる負担を小さくすることができる。
【0008】また、本願出願人は、飽和熱変位量の値
(例えばLとする)が与えられたとき、その工作機械を
t時間駆動したときの熱変位量lを、 l=L・{1−exp(−γt)} なる式で表すことや、熱変位量が飽和熱変位量Lに達す
るまで工作機械を駆動した後、駆動を停止してからt時
間経過したときの熱変位量lを、 l=L・exp(−γt) なる式で表すことも提案している(但し、γは工作機械
固有の定数)。
【0009】ところが、工作機械に実際に発生する熱変
位量は、個々の工作機械の特性や、使用環境に応じて変
化する。また、工作機械の特性には経時変化が発生する
場合もある。このため、上記L,γ等のパラメータを一
律に固定して工作機械の熱変位量を算出すると、個々の
工作機械の特性等を反映した正確な熱変位量を算出する
ことができず、精密加工に対応するのが困難であった。
【0010】また、本願出願人は、例えば接触式のセン
サ等によって加工手段が被加工物に対する所定位置に相
対移動したことを検出し、そのときの駆動手段の駆動量
に基づいて熱変位量を実測することも提案している。こ
の場合、実測値に基づいて熱変位量が算出されるので、
その熱変位量には個々の工作機械の特性等が良好に反映
される。ところが、この場合、加工手段による被加工物
への加工を一旦中断しなければ実測が行えない。従っ
て、精度がそれほど要求されない加工に対しても実測の
みによって熱変位量を求めていると、工作機械の作業能
率がいたずらに低下してしまう。
【0011】そこで、本発明は、工作機械の作業能率を
いたずらに低下させることなく、個々の工作機械の特性
等に対応した正確な熱変位量を必要に応じて算出するこ
とのできる工作機械の熱変位量算出装置を提供すること
を目的としてなされた。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的
を達するためになされた請求項1記載の発明は、被加工
物に加工を施すための加工手段と、該加工手段と被加工
物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する工作機
械に装備され、該工作機械の熱変位量を算出する工作機
械の熱変位量算出装置であって、上記工作機械の駆動状
態を検出する駆動状態検出手段と、該駆動状態検出手段
が検出した駆動状態に基づき、上記工作機械の熱変位量
を算出する変位量算出手段と、上記工作機械の熱変位量
を実測する変位量実測手段と、該変位量実測手段による
上記熱変位量の実測の要否を判断する判断手段と、該判
断手段が上記実測が不要と判断したとき、上記工作機械
の熱変位量として上記変位量算出手段が算出した熱変位
量を選択し、上記判断手段が上記実測が必要と判断した
とき、上記工作機械の熱変位量として上記変位量実測手
段が実測した熱変位量を選択する選択手段と、を備え、
上記判断手段が上記実測が不要と判断したときは、上記
変位量実測手段が上記実測を行わないことを特徴として
いる。
【0013】このように構成された本発明では、駆動状
態検出手段が検出した駆動状態に基づき、変位量算出手
段は、工作機械の熱変位量を算出する。また、判断手段
は、工作機械の熱変位量の実測の要否を判断し、変位量
実測手段は、判断手段が上記実測が必要と判断したと
き、工作機械の熱変位量を実測する。
【0014】このため、変位量算出手段によって工作機
械の熱変位量を算出して変位量実測手段による上記実測
を行わなければ、工作機械を停止することなく容易に熱
変位量を算出することができる。また、変位量実測手段
によって工作機械の熱変位量を実測すれば、個々の工作
機械の特性や使用環境等に対応した正確な熱変位量を実
際に測定することができる。
【0015】そこで、本発明の選択手段は、判断手段の
判断に基づき、工作機械の熱変位量を次のようにして求
めている。すなわち、判断手段が上記実測が不要と判断
したとき、工作機械の熱変位量として変位量算出手段が
算出した熱変位量を選択する。しかも、このとき、変位
量実測手段は上記実測を行わない。この場合、工作機械
の作業能率を低下させることなく、その熱変位量を容易
に算出することができる。また、選択手段は、判断手段
が上記実測が必要と判断したとき、工作機械の熱変位量
として変位量実測手段が実測した熱変位量を選択する。
この場合、個々の工作機械の特性や使用環境等に対応し
た正確な熱変位量を算出することができる。従って、本
発明では、工作機械の作業能率をいたずらに低下させる
ことなく、個々の工作機械の特性等に対応した正確な熱
変位量を必要に応じて算出することができる。また、本
発明では、上記実測が必要と判断された場合、熱変位量
を算出する毎に実測を行っている。よって、この場合、
工作機械の熱変位量を一層正確に算出することができ
る。
【0016】請求項2記載の発明は、被加工物に加工を
施すための加工手段と、該加工手段と被加工物との相対
位置を変動させる駆動手段とを有する工作機械に装備さ
れ、該工作機械の熱変位量を算出する工作機械の熱変位
量算出装置であって、上記工作機械の駆動状態を検出す
る駆動状態検出手段と、該駆動状態検出手段が検出した
駆動状態に基づき、上記工作機械の熱変位量を算出する
変位量算出手段と、上記工作機械の熱変位量を実測する
変位量実測手段と、該変位量実測手段が実測した熱変位
量と、上記変位量算出手段が算出した熱変位量とを比較
し、上記変位量算出手段が算出した熱変位量に対する補
正値を算出する補正値算出手段と、上記変位量実測手段
による上記熱変位量の実測の要否を判断する判断手段
と、該判断手段が上記実測が不要と判断したとき、上記
工作機械の熱変位量として上記変位量算出手段が算出し
た熱変位量を選択し、上記判断手段が上記実測が必要と
判断したとき、上記工作機械の熱変位量として、上記変
位量算出手段が算出した熱変位量を上記補正値によって
補正した値を選択する選択手段と、を備え、上記判断手
段が上記実測が不要と判断したときは、上記変位量実測
手段が上記実測を行わないと共に、上記補正値算出手段
が上記補正値の算出を行わないことを特徴としている。
【0017】このように構成された本発明では、駆動状
態検出手段が検出した駆動状態に基づき、変位量算出手
段は、工作機械の熱変位量を算出する。また、判断手段
は、工作機械の熱変位量の実測の要否を判断し、変位量
実測手段は、判断手段が上記実測が必要と判断したと
き、工作機械の熱変位量を実測する。更に、このとき、
補正値算出手段は、変位量実測手段が実測した熱変位量
と変位量算出手段が算出した熱変位量とを比較し、変位
量算出手段が算出した熱変位量に対する補正値を算出す
る。
【0018】このため、変位量算出手段によって工作機
械の熱変位量を算出して変位量実測手段による上記実測
を行わなければ、工作機械を停止することなく容易に熱
変位量を算出することができる。また、変位量実測手段
によって工作機械の熱変位量を実測すると共に、補正値
算出手段によって上記補正値を算出すれば、熱変位量算
出手段が算出した熱変位量に上記補正値による補正を加
えて、個々の工作機械の特性や使用環境等に対応した正
確な熱変位量を算出することができる。
【0019】そこで、本発明の選択手段は、判断手段の
判断に基づき、工作機械の熱変位量を次のようにして求
めている。すなわち、判断手段が上記実測が不要と判断
したとき、工作機械の熱変位量として変位量算出手段が
算出した熱変位量を選択する。しかもこのとき、変位量
実測手段は上記実測を行わないと共に、補正値算出手段
は上記補正値の算出を行わない。この場合、工作機械の
作業能率を低下させることなく、その熱変位量を容易に
算出することができる。また、選択手段は、判断手段が
上記実測が必要と判断したとき、工作機械の熱変位量と
して、上記変位量算出手段が算出した熱変位量を上記補
正値によって補正した値を選択する。この場合、個々の
工作機械の特性や使用環境等に対応した正確な熱変位量
を算出することができる。
【0020】従って、本発明では、工作機械の作業能率
をいたずらに低下させることなく、個々の工作機械の特
性等に対応した正確な熱変位量を必要に応じて算出する
ことができる。また、本発明では、実測した熱変位量を
そのまま使用するのではなく、その熱変位量の実測値か
ら補正値を算出し、その補正値を用いて変位量算出手段
が算出した熱変位量を補正している。このため、熱変位
量を算出する毎に上記熱変位量を実測する必要はない。
従って、上記実測が必要な場合にも、工作機械の作業能
率を良好に確保しつつ、個々の工作機械の特性等に応じ
て前述のように正確な熱変位量を算出することができ
る。
【0021】請求項3記載の発明は、請求項1または2
記載の構成に加え、上記工作機械を制御するための加工
プログラムが精密加工に対応するものか否かを判断する
精密加工判断手段を、更に備え、該精密加工判断手段の
判断結果に基づき、上記判断手段が、上記加工プログラ
ムが精密加工に対応するときは上記実測が必要と判断
し、上記加工プログラムが精密加工に対応しないときは
上記実測が不要と判断することを特徴としている。
【0022】本発明では、精密加工判断手段は加工プロ
グラムが精密加工に対応するものか否かを判断する。そ
して、この精密加工判断手段の判断結果に基づき、判断
手段は、加工プログラムが精密加工に対応するときは上
記実測が必要と判断し、上記加工プログラムが精密加工
に対応しないときは上記実測が不要と判断する。すなわ
ち、請求項1または2記載の判断手段としては、操作パ
ネル等の操作状態を読み取って上記実測の要否を判断す
るもの、工作機械の総駆動時間が所定時間に達して経時
変化が発生した可能性のある場合に上記実測を必要と判
断するもの等、種々の形態が考えられるが、本発明で
は、加工プログラムが精密加工に対応するものか否かに
応じて上記実測の要否を判断する。このため、上記実測
の要否を、きわめて適切に、しかも自動的に判断するこ
とができる。
【0023】従って、本発明では、請求項1または2記
載の発明の効果に加えて、工作機械の熱変位量の算出精
度と工作機械の作業能率とのバランスを、加工プログラ
ムに応じてきわめて適切に、しかも自動的に設定するこ
とができるといった効果が生じる。また、前述のよう
に、請求項1記載の変位量実測手段が実測した熱変位量
を工作機械の熱変位量として選択した場合、算出精度を
より重視した熱変位量の算出を、請求項2記載の補正値
によって補正した値を工作機械の熱変位量として選択し
た場合、工作機械の作業能率をより重視した熱変位量の
算出を、それぞれ行うことができる。そこで、精密加工
判断手段が精密加工に対応すると判断したとき、その加
工プログラムがきわめて高い精度が必要とされる超精密
加工に対応するものか通常の精密加工に対応するものか
を判断し、前者の場合は請求項1記載の変位量実測手段
が実測した熱変位量を、後者の場合は請求項2記載の補
正値によって補正した値を、それぞれ工作機械の熱変位
量として選択してもよい。この場合、工作機械の熱変位
量の算出精度と工作機械の作業能率とのバランスを、加
工プログラムに応じて一層適切に、しかも自動的に設定
することができるといった効果が生じる。
【0024】請求項4記載の発明は、請求項1〜3のい
ずれかに記載の構成に加え、上記変位量実測手段が、上
記加工手段が上記被加工物に対する所定位置に相対移動
したとき、その加工手段を検出する加工手段検出手段
と、上記駆動手段を制御して、上記加工手段を上記加工
手段検出手段に検出される位置まで相対移動させる加工
手段移動手段と、を備え、該加工手段移動手段により、
上記加工手段を上記加工手段検出手段に検出される位置
まで相対移動させるのに必要とした上記駆動手段の駆動
量と、工作機械に熱変位が発生していないときに必要と
される上記駆動量とを比較し、その比較結果に基づいて
上記熱変位量を実測することを特徴としている。
【0025】本発明の変位量実測手段では、加工手段移
動手段によって、加工手段を、加工手段検出手段に検出
される位置まで相対移動させ、続いて、その相対移動に
必要とした駆動手段の駆動量と、工作機械に熱変位が発
生していないときに必要とされる上記駆動量とを比較
し、その比較結果に基づいて工作機械の熱変位量の熱変
位量を実測している。このため、工作機械の熱変位量の
正確な熱変位量を自動的に容易に実測することができ
る。また、本発明では、加工手段検出手段は接触式のセ
ンサ等のように構成の簡単なもので済ませることがで
き、加工手段移動手段は駆動手段と共通の構成を利用す
ることもできる。従って、本発明では、請求項1〜3の
いずれかに記載の発明の効果に加えて、装置の構成を簡
略化して製造コストを低減すると共に、一層正確かつ容
易に上記パラメータを算出することができるといった効
果が生じる。
【0026】請求項5記載の発明は、被加工物に加工を
施すための加工手段と、該加工手段と被加工物との相対
位置を変動させる駆動手段と、該駆動手段の駆動によっ
て生じる熱変位量を実測する変位量実測手段と、を有す
る工作機械に対して使用され、上記工作機械の熱変位量
を算出するためのコンピュータプログラムを記憶した記
憶媒体であって、上記工作機械の駆動状態を検出する駆
動状態検出処理と、該駆動状態検出処理にて検出された
駆動状態に基づき、上記工作機械の熱変位量を算出する
変位量算出処理と、上記変位量実測手段を介して上記熱
変位量を実測する変位量実測処理と、該変位量実測処理
による上記熱変位量の実測の要否を判断する判断処理
と、該判断処理にて上記実測が不要と判断されたとき、
上記工作機械の熱変位量として上記変位量算出処理にて
算出された熱変位量を選択し、上記判断処理にて上記実
測が必要と判断されたとき、上記工作機械の熱変位量と
して上記変位量実測処理にて実測された熱変位量を選択
する選択処理と、を実行させるコンピュータプログラム
を記憶すると共に、上記判断処理にて上記実測が不要と
判断されたときは、上記変位量実測処理を行わないよう
に設定されたことを特徴としている。
【0027】本発明の記憶媒体はこのように構成されて
いるので、上記工作機械に接続されたコンピュータ等の
制御手段に本発明に記憶されたコンピュータプログラム
を実行させれば、請求項1記載の駆動状態検出手段、変
位量算出手段、変位量実測手段、判断手段、及び選択手
段に相当する駆動状態検出処理、変位量算出処理、変位
量実測処理、判断処理、及び選択処理を実行させること
ができる。従って、本発明に記憶されたコンピュータプ
ログラムを上記制御手段に実行させれば、請求項1記載
の発明と同様の効果が生じる。また、本発明に記憶され
た各処理のプログラムに、請求項3または4記載の発明
に限定した要件を付加すれば、それを実行させたとき、
請求項1及び3、または、請求項1及び4に記載の発明
と同様の効果が生じる。
【0028】請求項6記載の発明は、被加工物に加工を
施すための加工手段と、該加工手段と被加工物との相対
位置を変動させる駆動手段と、該駆動手段の駆動によっ
て生じる熱変位量を実測する変位量実測手段と、を有す
る工作機械に対して使用され、上記工作機械の熱変位量
を算出するためのコンピュータプログラムを記憶した記
憶媒体であって、上記工作機械の駆動状態を検出する駆
動状態検出処理と、該駆動状態検出処理にて検出された
駆動状態に基づき、上記工作機械の熱変位量を算出する
変位量算出処理と、上記変位量実測手段を介して上記熱
変位量を実測する変位量実測処理と、該変位量実測処理
にて実測された熱変位量と、上記変位量算出処理にて算
出された熱変位量とを比較し、上記変位量算出処理にて
算出された熱変位量に対する補正値を算出する補正値算
出処理と、上記変位量実測処理による上記熱変位量の実
測の要否を判断する判断処理と、該判断処理にて上記実
測が不要と判断されたとき、上記工作機械の熱変位量と
して上記変位量算出処理にて算出された熱変位量を選択
し、上記判断処理にて上記実測が必要と判断されたと
き、上記工作機械の熱変位量として、上記変位量算出処
理にて算出された熱変位量を上記補正値によって補正し
た値を選択する選択処理と、を実行させるコンピュータ
プログラムを記憶すると共に、上記判断処理にて上記実
測が不要と判断されたときは、上記変位量実測処理及び
上記補正値算出処理を行わないように設定されたことを
特徴としている。
【0029】本発明の記憶媒体はこのように構成されて
いるので、上記工作機械に接続されたコンピュータ等の
制御手段に本発明に記憶されたコンピュータプログラム
を実行させれば、請求項2記載の駆動状態検出手段、変
位量算出手段、変位量実測手段、補正値算出手段、判断
手段、及び選択手段に相当する駆動状態検出処理、変位
量算出処理、変位量実測処理、補正値算出処理、判断処
理、及び選択処理を実行させる実行させることができ
る。従って、本発明に記憶されたコンピュータプログラ
ムを上記制御手段に実行させれば、請求項2記載の発明
と同様の効果が生じる。また、本発明に記憶された各処
理のプログラムに、請求項3または4記載の発明に限定
した要件を付加すれば、それを実行させたとき、請求項
2及び3、または、請求項2及び4に記載の発明と同様
の効果が生じる。
【0030】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例を図面を参
照して説明することにより、発明の実施の形態を具体的
に説明する。
【0031】
【実施例】本実施例の工作機械のメカニカルな構成は、
次の検出器49を設けた点を除いては従来例として図1
5及び図16に示したものと同じであるので、これらを
使用して工作機械10のメカニカルな構成の説明は省略
する。
【0032】図1は、検出器49の構成を表す概略図で
ある。図1に示すように、検出器49はテーブル14の
片隅に固定され、主軸28に保持された工具Tが接触し
たときに接触信号を発生するものである。また、検出器
49はワークWに従い最適な位置で計測が行い得るよう
に、Z軸上の位置が変更できるように構成されており、
その位置が変更された場合は、後述のCPU72等に記
憶された上記Z軸上の位置に関わるデータが更新され
る。
【0033】図2は、第1実施例としての工作機械10
の制御系の構成を表すブロック図である。図2に示すよ
うに、この制御系は、主軸28の回転を制御するための
主軸制御系50、主軸28のZ軸位置を制御するための
Z軸制御系60、この制御系の中枢となる本発明の工作
機械の熱変位量算出装置としてのマイコン部70、操作
パネル22、検出器49、及び、テーブル14のX軸位
置を制御するためのX軸制御系(図示略)やテーブル1
4のY軸位置を制御するためのY軸制御系(図示略)等
から構成されている。
【0034】主軸制御系50は、主軸モータ30、主軸
モータ30に電力を供給するための主軸サーボアンプ5
2、及び主軸サーボアンプ52の供給電力を制御するた
めの軸制御回路54からなり、軸制御回路54はマイコ
ン部70のCPU72からの指示に従って主軸サーボア
ンプ52の動作を制御する構成である。Z軸制御系60
は、Z軸モータ38、Z軸モータ38に電力を供給する
ためのZ軸サーボアンプ62及びZ軸サーボアンプ62
の供給電力を制御するための軸制御回路64からなり、
軸制御回路64はマイコン部70のCPU72からの指
示に従ってZ軸サーボアンプ62の動作を制御する構成
である。また、図示を省略したX軸制御系及びY軸制御
系も、これら主軸制御系50並びにZ軸制御系60とほ
ぼ同様の構成である。
【0035】マイコン部70は、制御プログラム等を格
納しているROMや入出力ポート等を内蔵するワンチッ
プ型のCPU72、RAM74及び時計76等からな
り、周知のマイクロコンピュータとして構成されてい
る。このマイコン部70(厳密にはCPU72)は、ワ
ークWに施すべき加工に対応した加工プログラムに従っ
て主軸制御系50、Z軸制御系60等を制御して、ワー
クWに所定の加工を施させるのである。また、マイコン
部70は操作パネル22及び検出器49に接続されてお
り、マイコン部70は、操作パネル22または検出器4
9からの入力信号を取得したり、操作パネル22に信号
を送って操作パネル22の液晶ディスプレイの画像や文
字の表示を制御することやLEDの点滅を制御すること
等ができる。
【0036】RAM74は、周知のようにCPU72の
ワークエリアとなるが、本実施例では、このRAM74
上に図3に示される構成のピッチ誤差補正テーブルが設
けられている。このピッチ誤差補正テーブルは、例えば
ボールネジ機構36の駆動誤差を補正するためのテーブ
ルである。
【0037】Z軸移動を受け持つボールネジ機構36
は、製造誤差等によりボールネジ34の回転量とナット
部32の移動量(すなわち主軸28のZ軸方向移動量)
との誤差が避けられないので、それを補正する必要があ
る。そこで適当な数の補正ポイントを設定し(ボールネ
ジ34の長さが500mmで20mm毎に補正するとす
れば、補正ポイントは25箇所となる。)、その補正ポ
イント毎にボールネジ34の回転による移動量の計算値
と実測値との誤差を求め、その誤差に相当するボールネ
ジ34の回転量(ピッチ)をピッチ誤差補正テーブルに
書き込んでおき、各補正ポイント毎にそのピッチ分だけ
ボールネジ34を正あるいは逆回転させることによって
主軸28のZ軸位置を正確ならしめている。X軸及びY
軸についても同様である。
【0038】時計76は、いわゆる電子時計であって、
年月日時刻を算出してそのデータをCPU72に送るこ
とができる。なおCPU72は、一定の周期例えば1/
1000秒毎にカウント値をインクリメントするカウン
タを内蔵していて、そのカウンタを使用することによ
り、例えばある加工の開始から終了までの所要時間のよ
うな、経過時間を計測することもできる。
【0039】さて、この工作機械10を駆動すると、例
えばそのZ軸方向に、ボールネジ34の膨張等によって
熱変位が発生する。そこで、CPU72は、その熱変位
を補正しつつ加工プログラムを実行するため、以下の処
理を実行している。図4は、CPU72が実行する処理
のメインルーチンを表すフローチャートである。なお、
CPU72は、電源投入後この処理を所定タイミングで
割り込み処理として実行し、加工プログラムの実行等に
よって発生する熱変位量を算出している。
【0040】図4に示すように、CPU72は処理を開
始すると、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同
様)にて、工作機械10の駆動状態に基づいてその熱変
位量を算出する熱変位量算出処理を実行し、S3,S4
へ順次移行する。S3では、ワークWに精密加工を施す
必要があるか否かを判断し、S4では、以下に述べる実
測タイミングであるか否かを判断する。精密加工を施す
必要がない場合(S3:NO)、及び、精密加工の必要
があっても(S3:YES)実測タイミングでない場合
は(S4:NO)、は再びS1へ移行して熱変位量の算
出を続行する。また、精密加工を施す必要があり(S
3:YES)、しかも実測タイミングとなった場合は
(S4:YES)、後述のS5〜S9の処理へ移行し、
熱変位量を実測すると共にS1で使用される各種パラメ
ータ等を変更した後、S1へ移行する。
【0041】なお、S3における精密加工の要否判断に
は、.工作機械10が実行する加工プログラム内に特
別なコードが付与されており、そのコードを検出したと
きに精密加工と判断する、.加工プログラムのNCデ
ータに対応する指令(切削,位置決め等)が所定の指令
(例えば切削)であったとき精密加工と判断する、.
プログラム毎に精密加工か否かを定義する、.操作パ
ネル22の操作状態に基づき判断する、等の種々の形態
が考えられる。また、S4における実測タイミングと
は、.前回の実測から所定時間経過した、.主軸2
8が所定距離移動した、.加工プログラムのNCデー
タとして計測移動指令を読み込んだ、.操作パネル2
2が所定の手順で操作された、のいずれかが成立したと
きである。
【0042】ここで、S1の熱変位量算出処理について
説明する。図5は、S1の熱変位量算出処理の詳細を表
すフローチャートである。本ルーチンでは、先ず、S1
1にて、電源OFFの間の移動距離を0と見なす処理を
行う。後述のように、過去に熱変位量が算出されてその
影響が現在も残存している場合、その影響を考慮して工
作機械10の熱変位量を算出する必要がある。また、こ
のような熱変位量は、工場の休憩時間等に工作機械10
の電源がOFFされた後にも残存している場合がある。
そこで、このS11では、電源がOFFされていた間に
おける主軸28のZ軸方向の移動距離を0とするのであ
る。
【0043】続くS12では、時計76の出力に基づ
き、所定のサンプリングタイム(a分間隔とする)とな
ったか否かを判断する。そして、サンプリングタイムで
なければ(S12:NO)そのまま待機し、サンプリン
グタイムであれば(S12:YES)S13へ移行す
る。S13では、加工プログラムの実行状態等から工作
機械10の駆動状態を検出し、それに基づいてサンプリ
ングタイム間における主軸28のZ軸方向の移動距離を
算出する。その後、S14へ移行し、飽和熱変位量とし
ての最大変位量Lを次のように算出する。
【0044】工作機械10の駆動を続けることによって
温度が上昇すると、やがて発熱量と放熱量とが均衡す
る。このときの熱変位量が最大変位量Lである。工作機
械10を一定の状態で駆動し続けた場合、最大変位量L
は、主軸28の単位時間当たりの平均移動距離に対して
図6に示す対応関係を有する。図6に示すように、平均
移動距離が増加するに従って最大変位量Lも増加する。
また、この対応関係は、平均移動距離が所定値以上とな
ると傾きがなだらかになる折れ線グラフによって表され
る。これは、主軸28が高速で移動すると、空冷効果に
よって放熱量が増加し、熱変位が抑制されるためであ
る。S14では、S13にて算出した移動距離を単位時
間当たりの平均移動距離(ここではmm/min)に換算し、
図6のマップを参照して対応する最大変位量Lを算出す
るのである。なお、図6のマップは、数式やデータテー
ブルの形態でCPU72に格納されてもよい。
【0045】続くS15では、次のようにしてサンプリ
ングタイム間の熱変位量lを算出する。図7に例示する
ように、最大変位量がL1aであった場合、工作機械10
駆動中の熱変位量lは、直線l=L1aに対する漸近線1
02を描く。また、熱変位量lが最大変位量L1aに達し
た後(図7ではt=8hourの時点)、工作機械10
を停止すると、熱変位量lは直線l=0に対する漸近線
104を描く。ここで、漸近線102は、 l=L1a・{1−exp(−γt)} ……(1) で、漸近線104は、 l=L1a・exp(−γt) ……(2) で、それぞれ表される。但し、γは工作機械10固有の
定数であり、t及びlの単位はそれぞれhour,μm
である。従って、この式より、工作機械10の駆動開始
後a分後の熱変位量l1aは、 l1a=L1a・{1−exp(−γ・a/60)} となる。また、工作機械10停止後a分後の熱変位量l
-1a は、 l-1a =L1a・exp(−γ・a/60) となる。S15では、主に式(1)を用いてサンプリン
グタイム間の熱変位量lを算出する。更に、続くS16
では、後述の保持時間以内の熱変位量lを加算して、次
のように総熱変位量を算出した後、前述のS3(図4)
へ移行する。
【0046】本実施例では、サンプリングタイム間の移
動距離に基づいて熱変位量lを算出した場合(S13〜
S15)、熱変位量lはその後式(2)に従って減少す
るものと考える。すなわち、図8(A)に曲線201で
例示するように、時刻0から時刻1aまでの間の移動距
離に基づいて算出された熱変位量l1aの時刻1aにおけ
る値l1a-1は、前述のように、 l1a-1=L1a・{1−exp(−γ・a/60)} となる。但し、L1aは時刻1aのサンプリングタイムに
て算出された最大変位量である。そして、時刻2aにお
ける熱変位量l1aの値l1a-2は、式(2)より、 l1a-2=l1a-1・exp(−γ・a/60) 以下同様に、時刻3a,時刻4aにおける熱変位量l1a
の値l1a-3,l1a-4は、 l1a-3=l1a-1・exp(−γ・2a/60) l1a-4=l1a-1・exp(−γ・3a/60) となる。同様に、時刻1aから時刻2aまでの間の移動
距離に基づいて最大変位量L2aが算出されたとすると、
それに対応する熱変位量l2aは図8(B)に曲線202
で例示するように変化し、その時刻2a,3a,4aに
おける値l2a-1,l2a-2,l2a-3は、それぞれ、 l2a-1=L2a・{1−exp(−γ・a/60)} l2a-2=l2a-1・exp(−γ・a/60) l2a-3=l2a-1・exp(−γ・2a/60) となる。S16では、このようにして算出された熱変位
量l1a,l2a,……のその時刻における値を加算して総
熱変位量を算出するのである。例えば、時刻1a,2
a,3a,4a,5a,……のサンプリングタイム間の
移動距離に基づいて、図8(C)に曲線201,20
2,203,204,205,……で例示する熱変位量
lが算出されたとすると、S16で算出される総熱変位
量は、図8(C)に曲線200で例示するように変化す
る。
【0047】また、各時刻で算出された熱変位量lは、
前述のように時間の経過に伴って減少するので、S15
にて算出してから所定の時間(例えば120分)を経過
した熱変位量lが総熱変位量に及ぼす影響は無視するこ
とが可能となる。そこで、CPU72は、上記所定の時
間を保持時間としてROMに記憶しており、保持時間以
内に算出された熱変位量lについてのみ上記加算を行っ
て総熱変位量を算出している。このため、S16の処理
で加算しなければならない熱変位量lの個数は、120
/a+1以下の自然数に押さえられ、その算出処理に関
わる負担を小さくすることができる。従って、その処理
に関わるソフト構成等を簡略化すると共に処理速度を向
上させることができる。
【0048】また、CPU72は、各時刻で算出された
熱変位量lを、それを算出した時刻と対応づけてRAM
74のテーブルに記憶しており、その記憶内容を電源O
FFの間にも、図示しないバックアップ電源により保持
している。このため、電源が一旦OFFされて再びON
されたときには、S11にて電源OFFの間の移動距離
を0(従って熱変位量lも0)と見なすと共に、S16
へ移行して、前回の電源ONの期間中に算出された熱変
位量lの内、算出されてから保持時間を経過していない
ものの影響を加算して総熱変位量を算出することができ
る。
【0049】図4へ戻って、ワークWに精密加工を施す
必要があり(S3:YES)、しかも実測タイミングと
なった場合は(S4:YES)、S5へ移行して次の変
位量実測処理を実行する。S5の変位量実測処理では、
Z軸制御系60,及び,X軸制御系,Y軸制御系を駆動
して、主軸28に保持された工具Tを検出器49に接触
させる。CPU72は、検出器49から接触信号を受信
して上記接触を確認するまでに必要としたZ軸制御系6
0の駆動量を算出し、工作機械10に熱変位が発生して
いないときに必要とされる計算上の上記駆動量と比較す
る。そして、その比較結果に基づき工作機械10の熱変
位量(Z軸方向)を算出(実測)する。
【0050】熱変位量の実測後は、S7の補正値算出処
理を実行する。この処理では、S1にて算出した総熱変
位量(以下、算出値という)と、S5にて実測した熱変
位量(以下、実測値という)とを比較し、上記算出値に
対する補正値を算出する。続くS9では、S7にて算出
した補正値に基づいて、S1にて使用される各種パラメ
ータ(数式等を含む)を変更し、RAM74の所定領域
に記憶する(パラメータ変更処理)。
【0051】ここで、S7,S9における処理の形態と
しては、上記算出値と上記実測値との差を補正値として
利用する形態と、両者の比を補正値として利用する形態
とがあり、操作パネル22設定により所望の形態を選択
することができる。図9(A),(B)では、実測値に
よる補正を行わない場合における熱変位量lの算出値の
変化を実線で表しており、時刻t0 (実測タイミング)
にて検出された実測値を■で表している。
【0052】算出値と実測値との差を利用する場合は、
図9(A)に例示するように、実測値から算出値を引い
た差Δlを補正値として算出し(S7)、S15で使用
される式(1),(2)にそれぞれ上記Δlを加算する
処理を行う(S9)。このS5〜S9の処理を実行して
再びS1へ移行することにより、S1の処理にて算出さ
れる総熱変位量を、図9(A)に点線で示すように補正
することができる。
【0053】算出値と実測値との比を利用する場合は、
図9(B)に例示するように、実測値l2 と算出値l1
との比l2 /l1 を補正値として算出し(S7)、S1
5で使用される式(1),(2)にそれぞれ上記l2 /
l1 を乗算する処理を行う(S9)。このS5〜S9の
処理を実行して再びS1へ移行することにより、S1の
処理にて算出される総熱変位量を、図9(B)に点線で
示すように補正することができる。
【0054】算出値と実測値との差を補正値として利用
する場合と、両者の比を利用する場合とでは、各々次の
ような利点があり、このため、操作者が操作パネル22
により所望の形態を選択できるようになっている。な
お、以下に述べるように、算出値及び実測値の絶対値が
小さい場合は差を利用した方が、両者の絶対値が大きい
場合は比を利用した方が有利である。そこで、算出値ま
たは実測値の絶対値が小さいときは両者の差を補正値と
して利用する形態を、その絶対値が大きいときは両者の
比を補正値として利用する形態を、それぞれ自動的に選
択するように構成してもよい。更に、差でも比でもない
他の形態を採用してもよい。
【0055】算出値及び実測値の絶対値がきわめて小さ
いと、両者の比の値には僅かな測定誤差も反映されてし
まう。このため、算出値と実測値との比を補正値として
算出し、その値をS1にて算出される総熱変位量に乗算
または除算する場合、時刻t0 以外の時点でS1にて大
きい総熱変位量が算出されたときには、測定誤差等がそ
の算出値に乗算または除算されて大きく反映される可能
性がある。これに対して、図9(A)のように算出値と
実測値との差を補正値として利用すれば、S1にて算出
される総熱変位量の絶対値に関わらず、常に同量の補正
を行うことができる。従って、この場合、補正値の算出
の基礎となる算出値及び実測値の絶対値がきわめて小さ
い場合にも、正確な熱変位量を算出することができる。
【0056】算出値及び実測値の絶対値がきわめて大き
いと、両者の差の絶対値も大きくなる傾向がある。この
ため、算出値と実測値との差を補正値として利用した場
合、時刻t0 以外の時点でS1にて小さい総熱変位量が
算出されたときには同様の補正値を使用するのが困難に
なる。例えば、補正後の熱変位量が負になることもあ
る。これに対して、図9(B)のように算出値と実測値
との比を補正値として利用すれば、S1にて小さい総熱
変位量が算出されたときには、それに応じた少量の補正
を行うことができる。従って、この場合、補正値の算出
の基礎となる算出値及び実測値の絶対値がきわめて大き
い場合にも、正確な熱変位量を算出することができる。
【0057】以上説明したように、本実施例のマイコン
部70では、ワークWに精密加工を施す必要がある場合
は(S3:YES)、実測タイミング毎(S4:YE
S)に工作機械10の熱変位量を実測し(S5)、補正
値を算出する(S7)。そして、この補正値に基づいて
各種パラメータを変更することによって(S9)、熱変
位量算出処理(S1)にて算出される総熱変位量を補正
することができる。この場合、個々の工作機械10の特
性や使用環境に対応した正確な熱変位量を算出すること
ができる。
【0058】また、精密加工を施す必要がない場合は
(S3:NO)、熱変位量算出処理(S1)による数値
計算によって熱変位量を算出し、上記実測(S5)、補
正値の算出(S7)、及びパラメータの変更(S9)を
行わない。この場合、工作機械10の作業能率を低下さ
せることなく、その熱変位量を容易に算出することがで
きる。従って、本実施例では、工作機械10の作業能率
をいたずらに低下させることなく、個々の工作機械10
の特性等に対応した正確な熱変位量を必要に応じて算出
することができる。
【0059】しかも、本実施例では、実測した熱変位量
をそのまま使用するのではなく、その熱変位量の実測値
から補正値を算出し、S1にて算出される総熱変位量を
その補正値を用いて補正している。このため、工作機械
10の駆動中、所定の実測タイミング(例えば30分
毎)に上記熱変位量を実測すれば、後はその実測値から
算出された補正値を用いて充分に正確な熱変位量を算出
することができる。すなわち、本実施例のように検出器
49を用いて熱変位量を実測する場合、その実測時には
ワークWへの加工を一旦中断しなければならないが、本
実施例ではこのような中断を上記実測タイミングに行う
だけでよい。従って、上記実測が必要な場合にも、工作
機械10の作業能率を良好に確保しつつ、個々の工作機
械10の特性等に応じて前述のように正確な熱変位量を
算出することができる。
【0060】なお、上記実施例において、主軸28が加
工手段に、ボールネジ機構36及びZ軸制御系60,X
軸制御系,Y軸制御系が駆動手段及び加工手段移動手段
に、検出器49が加工手段検出手段に、CPU72が請
求項2及びその従属項に記載の駆動状態検出手段,変位
量算出手段,変位量実測手段,補正値算出手段,判断手
段,精密加工判断手段,及び選択手段に相当し、CPU
72の処理の内、S13が駆動状態検出手段に、S14
〜S16が変位量算出手段に、S5が変位量実測手段
に、S7が補正値算出手段に、S3及びS4における判
断処理が判断手段に、その内S3が精密加工判断手段
に、S3及びS4における処理の振り分けが選択手段
に、それぞれ相当する処理である。
【0061】次に、図10,図11は、第1実施例のC
PU72が実行するメインルーチンの他の形態を表すフ
ローチャートである。この処理は、工作機械10の駆動
と共に開始され、先ずS31では、NCデータを1命令
読み込む。すなわち、加工プログラムは切削,位置決め
等の指令を表す多数のNCデータを組み合わせて構成さ
れており、S31へ移行する毎にそのNCデータを先頭
から1命令分ずつ読み込むのである。なお、本ルーチン
で扱われる加工プログラムはNCデータとして、検出器
49による熱変位量の実測を指示する計測移動指令も含
んでいる。また、CPU72のROMには表1に例示す
るようなデータテーブルが格納され、ポインタ数と設定
回数とを対応付けて記憶している。
【0062】
【表1】
【0063】ここで、ポインタ数は熱変位量の実測を実
際に行った回数を、設定回数は計測移動指令を読み込ん
だ回数を、それぞれ表している。すなわち、表1のデー
タテーブルに基づいて後述の処理を実行した場合、1回
目の計測移動指令を読み込んだときに1回目の実測を行
い、3回目の計測移動指令を読み込んだときに2回目の
実測を行う。
【0064】S31にてNCデータを1命令読み込んだ
らS33へ移行し、その命令が前述の計測移動指令であ
るか否かを判断する。計測移動指令でない場合は(S3
3:NO)、S35にてそのNCデータを実行し、前述
のS31へ移行する。この処理を繰り返すことにより、
加工プログラムに応じた加工をワークWに施すことがで
きる。また、S31にて計測移動指令を読み込んだ場合
は(S33:YES)、S37へ移行し、前述のS3と
同様に精密加工の必要があるか否かを判断する。精密加
工の必要がない場合は(S37:NO)、S39へ移行
し、前述のS1と同様の変位量算出処理を実行してS3
1へ移行する。
【0065】S37にて精密加工の必要がある(YE
S)と判断したときは、S41へ移行し、後述の運転停
止タイマ(以下、単にタイマともいう)の値が予め設定
された監視停止時間以上となったか否かを判断する。そ
して、タイマの値が監視停止時間以上の場合は(S4
1:YES)、計測移動指令の回数をカウントするカウ
ンタ,上記ポインタ,及び上記タイマを0にリセットし
た後に(S43)、タイマの値が監視停止時間未満の場
合(S41:NO)はそのまま、それぞれS45へ移行
する。
【0066】ここで、CPU72は、工作機械10の停
止中、運転停止タイマを0からスタートさせる。表1
は、工作機械10の作業が進行するに従い計測移動指令
に対して実測が行われる回数を減らすように設定されて
いるが、工作機械10の停止時間が停止監視時間以上と
なった場合(S41:YES)、停止中に上記熱変位量
が大きく変化する。そこで、このような場合は、S43
にてカウンタ,ポインタ,及びタイマをリセットし、再
び計測移動指令に忠実な実測を行うのである。
【0067】S45では、カウンタの値を一つインクリ
メントし、続くS47にてカウンタの値が1であるか否
かを判断する。カウンタ=1の場合は(S47:YE
S)、S49へ移行し、S5と同様の変位量実測処理を
行ってS31へ移行する。なお、S49にて熱変位量が
実測されると、その実測値が、S35にて熱変位を補正
しつつ加工プログラムを実行するために参照される。す
なわち、S49の実行時には、S39で算出される総熱
変位量の代わりに、S49で実測された熱変位量がその
まま使用される。
【0068】一方、カウンタの値が1でない場合は(S
47:NO)、そのカウンタの値と上記ポインタに対応
する設定回数とを比較して実測の要否を判断し(S5
1)、必要(YES)ならばS49へ、不要(NO)な
らばS31へ、それぞれ移行する。ここで、S51の処
理を図11を用いて詳細に説明する。図11に示すよう
に、S47からS51へ移行すると、先ず、S53にて
ポインタが示す設定回数を表1のデータテーブルより読
み込む。続くS54では、カウンタの値が設定回数と等
しいか否かを判断する。カウンタ=設定回数の場合は
(S54:YES)、ポインタの値を一つインクリメン
トし(S57)、S49の変位量実測処理へ移行する。
また、カウンタの値が設定回数に満たない場合(S5
4:NO)であっても、前回S49にて実測された熱変
位量(前回変位量)が予め設定された監視変位量以上で
ある場合(S55:YES)、または、カウンタの値が
定期監視回数に等しい場合は(S56:YES)、同様
にS49へ移行する。そして、上記以外の場合にはS3
1へ移行する。
【0069】すなわち、前回実測された熱変位量が監視
変位量(例えば0.020mm)以上の場合、計測移動
指令が発せられたら直ちに熱変位量を実測するのが望ま
しい。また、定期監視回数(例えば1000回)は定期
的に熱変位量を実測するために予め設定された数値であ
る。そこで、S51(すなわちS53〜S57)の処理
では、カウンタの値が表1の設定回数または定期監視回
数と一致した場合、及び、前回実測された熱変位量が監
視変位量以上となった場合にはS49による熱変位量の
実測を行わせ、それ以外の場合には実測が不要と判断す
るのである。
【0070】マイコン部70のCPU72によって本ル
ーチンを実行した場合にも、図4の処理と同様に、ワー
クWに精密加工を施す必要がある場合は(S37:YE
S)、工作機械10の熱変位量を実測することができる
(S49)。従って、この場合、個々の工作機械10の
特性や使用環境に対応した正確な熱変位量を算出するこ
とができる。また、精密加工を施す必要がない場合は
(S37:NO)、熱変位量算出処理(S39)による
数値計算によって熱変位量を算出し、上記実測(S4
9)を行わない。従って、この場合、工作機械10の作
業能率を低下させることなく、その熱変位量を容易に算
出することができる。
【0071】よって、本ルーチンをCPU72に実行さ
せた場合も、工作機械10の作業能率をいたずらに低下
させることなく、個々の工作機械10の特性等に対応し
た正確な熱変位量を必要に応じて算出することができ
る。また、本ルーチンでは、実測した熱変位量を加工プ
ログラムの実行時等にそのまま使用している。すなわ
ち、本ルーチンでは、精密加工時には熱変位量を算出す
る毎に上記実測を行っている。従って、工作機械10の
熱変位量を一層正確に算出することができ、ワークWの
加工精度を一層良好に向上させることができる。
【0072】なお、上記メインルーチンは請求項1及び
その従属項に対応する実施例で、その処理において、S
39が変位量算出手段に、S41〜S49が変位量実測
手段に、S37における判断処理が判断手段及び精密加
工判断手段に、S37における処理の振り分けが選択手
段に、それぞれ相当する処理である。
【0073】また、上記メインルーチンでは、加工プロ
グラムを実行してワークWに加工を施す処理(S31〜
S35)と工作機械10の熱変位量を算出する処理(S
37〜S51)とを一連の処理としているが、両者を別
ルーチンで構成してもよい。この場合、計測移動指令が
発せられたか否かに拘わらず、.前回の実測から所定
時間経過したとき、.主軸28が所定距離移動したと
き、.操作パネル22が所定の手順で操作されたと
き、等にS37〜S51の処理を実行し、熱変位量を算
出することができる。従って、NCデータとして計測移
動指令を含まない加工プログラムに対しても適用可能と
なる。
【0074】次に、本発明の第2実施例を説明する。図
12は第2実施例としての工作機械10の制御系の構成
を表すブロック図である。なお、本実施例の工作機械1
0もメカニカルな構成は第1実施例と同じであり、制御
系の構成は次の点で異なる。すなわち、図12に示すよ
うに、マイコン部70は前述の構成に加えてインタフェ
ース(I/F)78を備えており、このインタフェース
78を介してパソコン80に接続されている。パソコン
80は、制御プログラム等を格納しているROMや入出
力ポート等を内蔵するワンチップ型のCPU82、RA
M84、時計86、及びマイコン部70と接続されるイ
ンタフェース(I/F)88等からなり、周知のマイク
ロコンピュータとして構成されている。また、パソコン
80には、キーボード91及びCRT92も接続されて
いる。
【0075】この制御系では、加工プログラムに基づい
て、マイコン部70が工作機械10を制御しており、マ
イコン部70からパソコン80へは主軸28の移動距離
等、総熱変位量の算出に必要なデータを初め、検出器4
9を介して実測した熱変位量等が送信される。また、パ
ソコン80は以下の処理によって工作機械10の熱変位
量(総熱変位量)を算出し、算出した総熱変位量をマイ
コン部70へ送信する。すると、マイコン部70は、送
信された総熱変位量に基づき、補正を行いつつ上記加工
プログラムを実行する。
【0076】パソコン80(厳密にはCPU82)は、
前述の図4とほぼ同様の処理を実行するのであるが、S
1の熱変位量算出処理及びS5の変位量実測処理は、自
らがZ軸制御系60等を制御するのではなく、マイコン
部70と上記データや主軸28等の駆動指令を送受信す
ることによって実行する。例えば、S1の熱変位量算出
処理は図13に示すようになる。なお、この熱変位量算
出処理は、図5に示した熱変位量算出処理と殆ど同じで
あるので、異なる部分についてのみ説明する。
【0077】S13に代えて実行されるS13aでは、
移動距離をCPU82が自ら算出するのではなく、マイ
コン部70から送信される移動距離を読み込む。また、
S16に代えて実行されるS16aでは、総熱変位量を
S16と同様に算出した後、その総熱変位量をマイコン
部70に送信する。その他の処理は第1実施例と同様で
あるので、図5で使用した符号をそのまま使用して詳細
な説明を省略する。パソコン80は、S5の変位量実測
処理も、同様の送受信によって実行する。
【0078】このように構成された本実施例でも、第1
実施例とほぼ同様の作用・効果が生じる。また、本実施
例でも、図10と同様の処理を実行することができる。
この場合、S31〜S35の処理はマイコン部70のみ
による処理となる。なお、本実施例でもCPU82は、
各時刻で算出された熱変位量lを、それを算出した時刻
と対応づけてRAM84のテーブルに記憶するが、この
記憶内容は必ずしもバックアップしなくてもよい。これ
は、工作機械10の電源をOFFしてもパソコン80の
電源をONに保持しておけば、記憶内容は消失しないか
らである。また、本実施例では、インタフェース88を
介して接続される工作機械10を変更すれば、一つのパ
ソコン80によって複数の工作機械10に対する総熱変
位量の算出を行うことができる。
【0079】以上、実施例を挙げて本発明を説明した
が、本発明は上記実施例になんら限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施
することができる。例えば、上記実施例では、主軸28
のZ軸方向の移動距離から工作機械10のZ軸方向の熱
変位量を算出しているが、主軸28が回転すると主軸2
8自身に熱変位が発生する。そこで、主軸モータ30の
回転量を移動距離として算出して、その移動距離からZ
軸方向の熱変位量を算出してもよい。また、図5または
図13の処理によって算出された前述の総熱変位量に、
主軸28の回転量から算出した熱変位量を加算して、工
作機械10全体としてのZ軸方向の熱変位量を算出して
もよい。この場合、Z軸方向の熱変位量を一層正確に算
出することができる。更に、本発明はワークWを移動さ
せる機構に適用してもよい。
【0080】更に、工作機械10の熱変位量には、主軸
28の移動距離や駆動時間の他、種々の条件が影響を及
ぼす。例えば朝等の気温が比較的低いとき等では工作機
械10の温度上昇が緩やかになり、算出された総熱変位
量と実際の熱変位量との誤差が無視できない程度になる
こともある。そこで、例えば図5のS16を図14のよ
うに変更し、各種調整を行えるようにしてもよい。
【0081】すなわち、S61では、S16と同様に総
熱変位量を算出する。続くS62では、CPU72は、
S61で算出した総熱変位量に対する調整の要否を判断
する。この要否判断は、.操作パネル22を介して調
整値が入力されている、.時刻に対応して設定された
調整値がある、.環境温度に対応して調整値を使用す
る必要がある、等の条件が成立しているか否かによって
なされる。条件が成立していれば調整要(S62:YE
S)であり、S63にて総熱変位量に調整値を加算ある
いは減算して調整する。一方、調整不要(S62:N
O)であれば、S61で算出した総熱変位量をそのまま
保持してS3(図4)またはS31(図10)の処理へ
移行する。
【0082】この場合、例えば、調整値を時刻に対応し
て定めれば、1日の時間帯(朝、昼、夜等)に応じて、
算出された総熱変位量と実際の熱変位量との誤差を、一
層良好に自動的に解消することができる。従って、時刻
に関わらず常に正確な総熱変位量を算出することができ
る。また、調整値を工作機械10の環境温度に対応して
定めれば、工作機械10が設置されている場所の気温す
なわち環境温度に応じて、算出された総熱変位量と実際
の熱変位量との誤差を、一層良好に自動的に解消するこ
とができる。従って、環境温度に関わらず常に正確な総
熱変位量を算出することができる。なお、図5のS1
5,図13のS15またはS16aをこのように変更し
ても同様の効果が生じる。
【0083】また、上記各実施例では、工具Tを検出器
49に接触させることによって主軸28が所定位置に移
動したことを検出し、そのときのZ軸制御系60の駆動
量に基づいて熱変位量を実測しているが、変位量実測手
段としてはこの他種々の構成を採用することができる。
例えば、工具Tを介さずに主軸28を検出器49に直接
接触させてもよく、主軸28を側方から撮影し、画像処
理等によって熱変位量を実測してもよい。但し、上記実
施例の検出器49を用いた構成を採用すれば、検出器4
9を増設しただけの簡単な構成によって、工作機械10
の熱変位量の正確な値を自動的に容易に実測することが
できる。従って、装置の構成を簡略化して製造コストを
低減すると共に、一層正確かつ容易に上記パラメータを
算出することができる。
【0084】更に、熱変位量算出処理には種々の形態が
考えられ、例えば、最大変位量Lを使用しない処理によ
って熱変位量を算出してもよい。また、実測の要否を判
断する処理も、上記の他種々考えられる。例えば、操作
パネル22の操作状態を読み取って判断してもよく、工
作機械10の総駆動時間が所定時間に達して経時変化が
発生した可能性のある場合に上記実測を必要と判断して
もよい。但し、上記各実施例では、加工プログラムやN
Cデータ等が精密加工に対応するものか否かに応じて上
記実測の要否を判断している。このため、上記実測の要
否を、きわめて適切に、しかも自動的に判断することが
できる。従って、工作機械10の熱変位量の算出精度と
作業能率とのバランスを、加工プログラム等に応じてき
わめて適切に、しかも自動的に設定することができると
いった効果が生じる。
【0085】また、前述のように、図10の処理によっ
て熱変位量を算出した場合、算出精度をより重視した熱
変位量の算出を、図4の処理によって熱変位量を算出し
た場合、工作機械10の作業能率をより重視した熱変位
量の算出を、それぞれ行うことができる。そこで、S3
7の処理によって精密加工の必要がある(YES)と判
断したとき、きわめて高い精度の超精密加工が必要か通
常の精密加工で充分かを判断し、前者の場合はS41以
降の処理へ、後者の場合は図4のS4〜S9を介してS
39へ(S4にて否定判断したら即座にS39へ)、そ
れぞれ移行するようにしてもよい。この場合、熱変位量
の算出精度と作業能率とのバランスを、加工プログラム
等に応じて一層適切に、しかも自動的に設定することが
できる。
【0086】また更に、上記各実施例では、図4,図
5,図10,図11,図13,または図14の処理を実
行するためのプログラムをCPU72または82のRO
Mに記憶しているが、これらのプログラムはフロッピデ
ィスクやCD−ROM等の記憶媒体に記憶しておいても
よいことはいうまでもない。この場合、一般のコンピュ
ータ等、任意の制御手段に上記処理を実行させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の工作機械の検出器の構成を表す概略
図である。
【図2】 第1実施例の工作機械の制御系の構成を表す
ブロック図である。
【図3】 その工作機械のピッチ誤差補正テーブルの構
成を表す説明図である。
【図4】 その工作機械のCPUが実行する処理のメイ
ンルーチンを表すフローチャートである。
【図5】 その処理における熱変位量算出処理を表すフ
ローチャートである。
【図6】 最大変位量の算出に使用するマップの構成を
表す説明図である。
【図7】 最大変位量に対応した熱変位量の経時変化を
例示する説明図である。
【図8】 熱変位量から総熱変位量を算出する処理を例
示する説明図である。
【図9】 実測値による熱変位量の補正を例示する説明
図である。
【図10】 上記メインルーチンの他の形態を表すフロ
ーチャートである。
【図11】 その処理の一部を詳細に表すフローチャー
トである。
【図12】 第2実施例の工作機械の制御系の構成を表
すブロック図である。
【図13】 その工作機械に接続されたパソコンが実行
する熱変位量算出処理を表すフローチャートである。
【図14】 熱変位量算出処理の更に他の形態を表すフ
ローチャートである。
【図15】 実施例および従来例の工作機械の構成を表
す説明図である。
【図16】 実施例および従来例の工作機械の構成を表
す説明図である。
【符号の説明】
10…工作機械 14…テーブル 16…ATCマ
ガジン 20…本体 28…主軸 30…主軸モータ 36…ボール
ネジ機構 38…Z軸モータ 49…検出器 60…Z軸
制御系 70…マイコン部 72,82…CPU 7
4,84…RAM 76,86…時計 80…パソコン

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段とを有する工作機械に装備され、該工作機械の熱
    変位量を算出する工作機械の熱変位量算出装置であっ
    て、 上記工作機械の駆動状態を検出する駆動状態検出手段
    と、 該駆動状態検出手段が検出した駆動状態に基づき、上記
    工作機械の熱変位量を算出する変位量算出手段と、 上記工作機械の熱変位量を実測する変位量実測手段と、 該変位量実測手段による上記熱変位量の実測の要否を判
    断する判断手段と、 該判断手段が上記実測が不要と判断したとき、上記工作
    機械の熱変位量として上記変位量算出手段が算出した熱
    変位量を選択し、上記判断手段が上記実測が必要と判断
    したとき、上記工作機械の熱変位量として上記変位量実
    測手段が実測した熱変位量を選択する選択手段と、 を備え、 上記判断手段が上記実測が不要と判断したときは、上記
    変位量実測手段が上記実測を行わないことを特徴とする
    工作機械の熱変位量算出装置。
  2. 【請求項2】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段とを有する工作機械に装備され、該工作機械の熱
    変位量を算出する工作機械の熱変位量算出装置であっ
    て、 上記工作機械の駆動状態を検出する駆動状態検出手段
    と、 該駆動状態検出手段が検出した駆動状態に基づき、上記
    工作機械の熱変位量を算出する変位量算出手段と、 上記工作機械の熱変位量を実測する変位量実測手段と、 該変位量実測手段が実測した熱変位量と、上記変位量算
    出手段が算出した熱変位量とを比較し、上記変位量算出
    手段が算出した熱変位量に対する補正値を算出する補正
    値算出手段と、 上記変位量実測手段による上記熱変位量の実測の要否を
    判断する判断手段と、 該判断手段が上記実測が不要と判断したとき、上記工作
    機械の熱変位量として上記変位量算出手段が算出した熱
    変位量を選択し、上記判断手段が上記実測が必要と判断
    したとき、上記工作機械の熱変位量として、上記変位量
    算出手段が算出した熱変位量を上記補正値によって補正
    した値を選択する選択手段と、 を備え、 上記判断手段が上記実測が不要と判断したときは、上記
    変位量実測手段が上記実測を行わないと共に、上記補正
    値算出手段が上記補正値の算出を行わないことを特徴と
    する工作機械の熱変位量算出装置。
  3. 【請求項3】 上記工作機械を制御するための加工プロ
    グラムが精密加工に対応するものか否かを判断する精密
    加工判断手段を、更に備え、 該精密加工判断手段の判断結果に基づき、上記判断手段
    が、上記加工プログラムが精密加工に対応するときは上
    記実測が必要と判断し、上記加工プログラムが精密加工
    に対応しないときは上記実測が不要と判断することを特
    徴とする請求項1または2記載の工作機械の熱変位量算
    出装置。
  4. 【請求項4】 上記変位量実測手段が、 上記加工手段が上記被加工物に対する所定位置に相対移
    動したとき、その加工手段を検出する加工手段検出手段
    と、 上記駆動手段を制御して、上記加工手段を上記加工手段
    検出手段に検出される位置まで相対移動させる加工手段
    移動手段と、 を備え、該加工手段移動手段により、上記加工手段を上
    記加工手段検出手段に検出される位置まで相対移動させ
    るのに必要とした上記駆動手段の駆動量と、工作機械に
    熱変位が発生していないときに必要とされる上記駆動量
    とを比較し、その比較結果に基づいて上記熱変位量を実
    測することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
    の工作機械の熱変位量算出装置。
  5. 【請求項5】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段と、該駆動手段の駆動によって生じる熱変位量を
    実測する変位量実測手段と、を有する工作機械に対して
    使用され、上記工作機械の熱変位量を算出するためのコ
    ンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、 上記工作機械の駆動状態を検出する駆動状態検出処理
    と、 該駆動状態検出処理にて検出された駆動状態に基づき、
    上記工作機械の熱変位量を算出する変位量算出処理と、 上記変位量実測手段を介して上記熱変位量を実測する変
    位量実測処理と、 該変位量実測処理による上記熱変位量の実測の要否を判
    断する判断処理と、 該判断処理にて上記実測が不要と判断されたとき、上記
    工作機械の熱変位量として上記変位量算出処理にて算出
    された熱変位量を選択し、上記判断処理にて上記実測が
    必要と判断されたとき、上記工作機械の熱変位量として
    上記変位量実測処理にて実測された熱変位量を選択する
    選択処理と、 を実行させるコンピュータプログラムを記憶すると共
    に、 上記判断処理にて上記実測が不要と判断されたときは、
    上記変位量実測処理を行わないように設定されたことを
    特徴とする記憶媒体。
  6. 【請求項6】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段と、該駆動手段の駆動によって生じる熱変位量を
    実測する変位量実測手段と、を有する工作機械に対して
    使用され、上記工作機械の熱変位量を算出するためのコ
    ンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、 上記工作機械の駆動状態を検出する駆動状態検出処理
    と、 該駆動状態検出処理にて検出された駆動状態に基づき、
    上記工作機械の熱変位量を算出する変位量算出処理と、 上記変位量実測手段を介して上記熱変位量を実測する変
    位量実測処理と、 該変位量実測処理にて実測された熱変位量と、上記変位
    量算出処理にて算出された熱変位量とを比較し、上記変
    位量算出処理にて算出された熱変位量に対する補正値を
    算出する補正値算出処理と、 上記変位量実測処理による上記熱変位量の実測の要否を
    判断する判断処理と、 該判断処理にて上記実測が不要と判断されたとき、上記
    工作機械の熱変位量として上記変位量算出処理にて算出
    された熱変位量を選択し、上記判断処理にて上記実測が
    必要と判断されたとき、上記工作機械の熱変位量とし
    て、上記変位量算出処理にて算出された熱変位量を上記
    補正値によって補正した値を選択する選択処理と、 を実行させるコンピュータプログラムを記憶すると共
    に、 上記判断処理にて上記実測が不要と判断されたときは、
    上記変位量実測処理及び上記補正値算出処理を行わない
    ように設定されたことを特徴とする記憶媒体。
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