JP3279189B2 - パラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム、その製造方法およびその用途 - Google Patents

パラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム、その製造方法およびその用途

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパラ配向芳香族ポリ
アミド(以下、パラアラミドということがある。)から
なる多孔質フィルムおよびその製造方法に関する。さら
に詳しくは、パラアラミドからなるフィブリルが網目状
または不織布状に平面的に配置され、かつ層状に重なっ
た構造を有する多孔質フィルムおよびその製造方法に関
する。本発明のパラアラミド多孔質フィルムは、耐熱
性、剛性に優れており、電池用セパレーターとして好適
に使用できる。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリアミド(以下、アラミドとい
うことがある。)からなる多孔質フィルムについては特
公昭59−14494号公報、特公昭59−36939
号公報にその製造方法が記載されている。前者では、ア
ラミドを溶解した溶液を膜状に流延し、溶液を固化しつ
つ溶媒を抽出除去して多孔性フィルムを製造する方法が
提案されている。該製法では、重合体が凝集沈殿するこ
とがないので、孔径が数A〜100μmの均一多孔性フ
ィルムが製造できると説明されている。また、後者で
は、アラミド溶液に貧溶媒を添加した析液組成物から多
孔性フィルムを製造する方法が記載されている。該析液
はコロイドに富む液相とコロイドに乏しい液相なので、
フィルムの表面と内部との空孔率の相違を生じない均一
な多孔性フィルムが製造できると説明されている。
【0003】また、特開平2−222430号公報には
フィルムの表裏に微孔が連続している微孔性アラミドフ
ィルムが記載されている。該フィルムは、前述の多孔性
フィルムよりも耐熱性良好で、湿度に対する寸法安定性
に優れると説明されている。製法的には、特公昭59−
36939号公報と比較した特徴は、アラミド溶液をフ
ィルムに流延し、水中に浸された後すみやかに縦方向に
延伸する工程、即ち、延伸する工程を有することにあ
る。
【0004】しかし、上記の公報類に記載されている方
法で得られる多孔性フィルムは、特開平2−22243
0号公報の記載、即ち、アラミド多孔性フィルムは、連
続する微孔を有するとの記載にあるように、貫通孔を有
する形態のフィルムであり、後述の比較例からも明らか
なように本願発明でいう網目状または不織布状のフィブ
リルを形成しない。
【0005】ところで、前記特公昭59−14494号
公報、特公昭59−36939号公報には、得られる多
孔質フィルムが電池用セパレーターに有用であると説明
されている。さらに、特開昭53−58636号公報、
特開平5−335005号公報には、アラミドからなる
電池セパレーターについての記載がある。
【0006】特開昭53−58636号公報では、蓄電
池用のセパレーターとしてアラミドよりなる織布、不織
布を使用することにより、高温下での劣化を少なくし、
蓄電池の特性の安定化と寿命延長が可能となることが記
載されている。特開平5−335005号公報では、ア
ラミド繊維からなる不織布、または多孔質フィルムを、
さらに具体的には、du Pont社製のノーメックス
紙(メタアラミド紙)をリチウム二次電池のセパレータ
ーとして使用することが記載されている。しかし、これ
らはいずれも本願発明の多孔質フィルムを使用した電池
用セパレーターを開示するものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かかる現状下、本発明
の目的は、高耐熱、高剛性、高強度、優れた耐溶剤性と
いうパラアラミドの特性を活かし、不織布では達成でき
ない均一性と微細な空隙を有するパラアラミド多孔質フ
ィルムおよびその製造方法を提供することにある。ま
た、本願発明の他の目的は、かかるパラアラミド多孔質
フィルムを用いる電池用セパレーターを提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような事情をみて、
本発明者らは鋭意研究の結果本発明に到達した。即ち本
発明は、パラ配向芳香族ポリアミドからなる多孔質フィ
ルムにおいて、フィルムが1μm以下の径からなるフィ
ブリルにより構成され、フィブリルが網目状または不織
布状に平面に配置されかつ層状に重なっている構造を有
し、さらにフィルムの200〜300℃での熱線膨張係
数が±50×10-6/℃以内であり,空隙率が30〜9
5%である多孔質フィルムに係るものである。
【0009】また、本発明は、下記の(a)〜(c)の
工程を有するパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム
の製造方法に係るものである。 (a)極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒中に、固
有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパラ配向芳香族
ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を含む溶液から
膜状物を形成する工程。 (b)該膜状物を20℃以上または−5℃以下の温度に
保持し、パラ配向芳香族ポリアミドを析出させる工程。 (c)工程(b)で得られた膜状物を水系溶液またはア
ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
【0010】また、本発明は、下記の(d)〜(f)の
工程を有するパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム
の製造方法に係るものである。 (d)極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒中に、固
有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパラ配向芳香族
ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を含む溶液から
膜状物を形成する工程。 (e)該膜状物を、極性アミド系溶媒または極性尿素系
溶媒を0〜70重量%含有する凝固液に浸漬して、パラ
配向芳香族ポリアミドを凝固・析出させる工程。 (f)工程(e)で得られた膜状物を水系溶液またはア
ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
【0011】更に、本発明は、上記方法により製造され
たパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムに係るもの
である。そして、また本発明は、かかるパラ配向芳香族
ポリアミド多孔質フィルムを用いる電池用セパレーター
に係るものである。以下、本発明について詳細に説明す
る。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で、パラ配向芳香族ポリア
ミドとは、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに
準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,
5−ナフタレン、2,6−ナフタレンなどのような反対
方向同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り
返し単位から実質的になるものであり、高強度、高弾性
率等の優れた機械的特性と、融点・ガラス転移点を有さ
ず、熱分解温度が500℃以上に及ぶこともある高耐熱
性の高分子である。
【0013】具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフ
タルアミド)、ポリ(パラベンズアミド、ポリ(4,
4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラ
フェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミ
ド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレン
テレフタルアミド)、パラフェニレンジアミン/2,6
−ジクロロパラフェニレンジアミン/テレフタル酸ジク
ロライドからなる共重合体などのパラ配向型またはパラ
配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示され
る。その合成法は、例えば特公昭50−8474号公報
記載の方法が知られている。
【0014】本発明にいうパラ配向芳香族ポリアミド多
孔質フィルム(以下、多孔質フィルムということがあ
る。)とは、上記パラ配向芳香族ポリアミドから得られ
た多孔質のフィルムであり、該フィルムはパラアラミド
のフィブリルからなり、微視的に見ると網目状または不
織布状の形態を有している。即ち、本発明にいうパラ配
向芳香族ポリアミド多孔質フィルムはパラアラミドから
なる径が1μm以下のフィブリルが網目状または不織布
状に平面に配置され、かつ層状に重なっている構造を有
する。ここで、平面に配置されとは、フィブリルがフィ
ルム面に平行に配置されていることをいう。また、本発
明にいう多孔質フィルムは、フィブリルから構成され、
多くの空隙を有しており、その空隙率が30〜95%、
好ましくは35〜90%のものである。空隙率が30%
未満では、実質的に多孔質とはいえず、95%を超える
とフィルムの強度が低くなり取扱いが困難となる。
【0015】また、本発明の多孔質フィルムは、200
〜300℃における熱線膨張係数が±50×10-6/℃
以内、好ましくは、±25×10-6/℃以内である。こ
の熱線膨張係数が小さいことは、平面方向の寸法安定性
が良いことを示している。
【0016】本発明の多孔質フィルムは、フィブリルで
形成される空隙が、厚み方向に均一な構造を有するフィ
ルムである。また、本発明によれば、多孔質フィルムの
片面では相対的に小さく反対面では大きい、所謂、両面
で空隙の大きさがことなるフィルムを提供することもで
きる。そして、フィブリルで形成される空隙の大きさ
が、多孔質フィルムの厚み方向で連続的に変化する構造
を有する多孔質フィルムもまた本発明に包含される。
【0017】本発明で使用するパラ配向芳香族ポリアミ
ドからなる多孔質フィルムの製造方法には特に制限はな
く、例えばアミド系溶液に溶解した芳香族ポリアミド溶
液を膜状に流延し、次いで固化した後に溶媒を抽出して
多孔膜とする方法等が挙げられる。好ましいパラ配向芳
香族ポリアミド多孔質フィルムの製造方法としては、パ
ラ配向芳香族ポリアミド溶液を膜状に流延後、20℃以
上または−5℃以下の温度に保持し、パラ配向芳香族ポ
リアミドを析出させ、その後に溶媒を抽出する方法、ま
たは膜状に流延後すぐに凝固液に浸漬してパラ配向芳香
族ポリアミドを凝固させ、その後に溶媒を抽出する方法
が挙げられる。
【0018】前者の方法の具体例としては、下記の
(a)〜(c)の工程から製造する方法が挙げられる。 (a)極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒中に、固
有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパラ配向芳香族
ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を含む溶液から
膜状物を形成する工程。 (b)該膜状物を20℃以上または−5℃以下の温度に
保持し、パラ配向芳香族ポリアミドを析出させる工程。 (c)工程(b)で得られた膜状物を水系溶液またはア
ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
【0019】それぞれの工程をさらに詳しく説明する。
工程(a)で使用されるパラアラミド溶液は、例えば、
以下に記すような操作により好適に製造できる。すなわ
ち、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物を1〜
10重量%溶解した極性アミド系溶媒又は極性尿素系溶
媒中で、パラ配向芳香族ジアミン1.0モルに対して、
パラ配向芳香族ジカルボン酸ハライド0.94〜0.9
9モルを添加して、温度−20℃〜50℃で縮合重合し
て、パラアラミド濃度が1〜10重量%であるパラアラ
ミド溶液を製造する。
【0020】パラアラミド溶液中のアルカリ金属又はア
ルカリ土類金属の塩化物の量は、1〜10重量%、より
好ましくは2〜8重量%である。一般には、アルカリ金
属又はアルカリ土類金属の塩化物が1重量%未満では、
パラアラミドの溶解性が不十分であり、10重量%を越
えてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物は極
性アミド系溶媒又は極性尿素系溶媒に溶解しない。より
正確には、パラアラミド溶液中のアルカリ金属又はアル
カリ土類金属の塩化物の量は、パラアラミド量(パラア
ラミド中のアミド基)に対して範囲が決められる。即
ち、上記塩化物の重合系への添加量は縮合重合で生成す
るアミド基1.0モル当たり0.5〜6.0モルの範囲
が好ましく、1.0〜4.0モルの範囲がより好まし
い。塩化物が0.5モル未満では生成するパラアラミド
の溶解性が不十分となる。6.0モルを越えると実質的
に塩化物の溶媒への溶解量を越えるので好ましくない。
【0021】パラアラミド溶液中のパラアラミド濃度は
1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%である。
パラアラミド濃度が1重量%未満では、生産性が著しく
低下し工業的に不利となる。パラアラミドが10重量%
を越えるとパラアラミドが析出し安定なパラアラミド溶
液とならない。
【0022】工程(a)でのパラアラミドは、固有粘度
(本発明において固有粘度とは、後に定義するものをい
う。)で表して、1.0〜2.8dl/g、好ましくは
1.5〜2.6dl/gの値を示すパラアラミドをい
う。固有粘度が1.0dl/g未満では十分なフィルム
強度が得られない。固有粘度が2.8dl/gを越える
と安定なパラアラミド溶液となりにくく、パラアラミド
が析出しフィルム化が困難となる。
【0023】工程(a)においてパラアラミドの縮合重
合に用いられるパラ配向芳香族ジアミンを例示すると、
パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニ
ル、2−メチル−パラフェニレンジアミン、2−クロロ
−パラフェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−パラフ
ェニレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、1,
5−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズア
ニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等を挙
げることができる。パラ配向芳香族ジアミンは1種又は
2種を混合して縮合重合に供することができる。
【0024】工程(a)においてパラアラミドの縮合重
合に用いられるパラ配向芳香族ジカルボン酸ジハライド
を例示すると、テレフタル酸ジクロライド、ビフェニル
−4,4’−ジカルボン酸クロライド、2−クロロテレ
フタル酸ジクロライド、2,5−ジクロロテレフタル酸
ジクロライド、2−メチルテレフタル酸ジクロライド、
2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、1,5−
ナフタレンジカルボン酸クロライド等を挙げることがで
きる。パラ配向芳香族ジカルボン酸ジハライドは1種又
は2種を混合して縮合重合に供することができる。
【0025】工程(a)においてパラアラミドの縮合重
合は、極性アミド系溶媒又は極性尿素系溶媒において行
われる。これらの溶媒の例としては、N,N−ジメチル
ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メ
チル−2−ピロリドン、又はN,N,N’,N’−テト
ラメチルウレアが挙げられ、特に好ましくはN−メチル
−2−ピロリドンであるが、これらに限定されるもので
はない。
【0026】工程(a)において、パラアラミドの溶媒
への溶解性を改善する目的で、アルカリ金属又はアルカ
リ土類金属の塩化物が好適に使用される。具体例として
は、塩化リチウム又は塩化カルシウムが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
【0027】工程(a)において、膜状物を製造する場
合には、パラアラミド溶液を例えばガラス板やポリエス
テルフィルムなどの基板上に流延することにより膜状物
としての形状を維持することにより行うことができる。
流延方法としてはバーコータやT−ダイから基板上へ押
し出す方法等種種の方法を適宜採用することができる。
【0028】工程(b)では、工程(a)においてパラ
アラミド溶液から膜状に形成した後、凝固する前に、パ
ラアラミドを析出させる。本発明の方法は、パラアラミ
ド溶液を膜状に形成した後、凝固する前に、パラアラミ
ドを析出させることにより、多孔質フィルムを製造する
ところに優れた特徴を有する。この方法によると、最終
的に得られる多孔質フィルムが厚み方向に均一な構造を
有するものとすることができる。その方法としては、2
0℃以上または−5℃以下の温度にて一定時間保持する
(以下、それぞれ高温析出法および低温析出法と呼ぶこ
とがある。)。最終的に得られる多孔質フィルムの空隙
率、フィブリルの径などの形態因子は、該析出温度およ
び保持時間によっても制御することができる。
【0029】先ず、高温析出法について説明する。本高
温析出法にて多孔質のフィルムを作製するためには、パ
ラアラミド溶液を20℃以上の温度、好ましくは30℃
以上の温度で所定時間保持し、パラアラミドを析出させ
る。
【0030】パラアラミドの析出が始まる時間はパラア
ラミド溶液の組成(塩化物量、パラアラミド濃度など)
および保持する温度に依存するので必ずしも限定されな
い。例えば、パラアラミド濃度が6重量%で、塩化カル
シウム量がアミド基に対し等モルのときには、パラアラ
ミド溶液は、20℃では1週間以上安定で析出が起こら
ないが、60℃では約5分間でパラアラミドが析出す
る。また、パラアラミド濃度が6重量%で、塩化カルシ
ウム量がアミド基1モルに対し0.7モルのときには、
20℃では約半日後、30℃では約1時間後にはパラア
ラミドが析出する。尚、析出時間を更に早める為には、
析出温度に加え湿度をコントロールすることが好まし
い。この場合、湿度は相対湿度で40〜100%が特に
好適に使用される。
【0031】このように、高温であればあるほどパラア
ラミドの析出が始まる時間は短かくてよいが、多孔質フ
ィルムの空隙率、フィブリルの径などの形態因子は析出
させる温度にも依存するので、析出させる温度は目的に
応じて総合的に判断して決められる。
【0032】次に、低温析出法について説明する。本低
温析出法にて多孔質のフィルムを作製するためには、パ
ラアラミド溶液を−5℃以下の温度、好ましくは−10
℃以下の温度で所定時間保持し、パラアラミドを析出さ
せてフィルムにする。
【0033】パラアラミドの析出が始まる時間はパラア
ラミド溶液の組成(塩化物量、パラアラミド濃度など)
および保持する温度に依存するので必ずしも限定されな
い。例えば、パラアラミド濃度が6重量%で、塩化カル
シウム量がアミド基に対し等モルのときには、パラアラ
ミド溶液は、−5℃では1週間以上安定で析出が起こら
ないが、−20℃では約30分間でパラアラミドが析出
する。また、パラアラミド濃度が6重量%で、塩化カル
シウム量がアミド基1モルに対し0.7モルのときに
は、−5℃では約半日後、−10℃では約1時間後には
パラアラミドが析出する。
【0034】このように、低温であればあるほどパラア
ラミドの析出が始まる時間は短かくてよいが、多孔質フ
ィルムの空隙率、フィブリルの径などの形態因子は析出
させる温度にも依存するので、析出させる温度は目的に
応じて総合的に判断して決められる。
【0035】工程(c)では、工程(b)で得られた膜
状物より、溶媒とアルカリ金属またはアルカリ土類金属
の塩化物を除去する。除去方法には、例えば、膜状物を
溶液に浸漬して溶媒と塩化物を溶出させる方法がある。
膜状物から溶媒を蒸発で除いた場合には、再度水などの
溶液に浸漬して塩化物を溶出させる方法などを採用する
こともできる。溶媒または塩化物を溶出させるときの溶
液としては、水系溶液またはアルコール系溶液が溶媒と
塩化物を共に溶解できるので好ましい。水系溶液として
は、水を用いてもよい。溶媒と塩化物が除去された膜状
物は、ついで乾燥され目的とする多孔質フィルムが製造
される。乾燥方法は特に限定されず、公知の種々の方法
を用いることができる。尚、本発明において膜状物と
は、最終生成物である多孔質フィルムになる前の中間の
形態をいう。
【0036】本発明のパラ配向芳香族ポリアミド多孔質
フィルムの製造方法の他の好ましい例としては、パラ配
向芳香族ポリアミド溶液を膜状に流延後、すぐに凝固液
に浸漬してパラ配向芳香族ポリアミドを凝固させ、その
後に溶媒を抽出する方法(以下、凝固液浸漬法というこ
とがある。)が挙げられる。具体的には、下記の(d)
〜(f)の工程から製造する方法である。
【0037】(d)極性アミド系溶媒または極性尿素系
溶媒中に、固有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパ
ラ配向芳香族ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金
属またはアルカリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を
含む溶液から膜状物を形成する工程。 (e)該膜状物を、極性アミド系溶媒または極性尿素系
溶媒を0〜70重量%含有する凝固液に浸漬して、パラ
配向芳香族ポリアミドを凝固・析出させる工程。 (f)工程(e)で得られた膜状物を水系溶液またはア
ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
【0038】工程(e)で使用する凝固液は、パラアラ
ミドを溶解しない溶媒で、極性アミド系溶媒または極性
尿素系溶媒と相溶するものである。好ましくは、アルカ
リ金属またはアルカリ土類金属の塩化物も溶解できる溶
媒である。具体的には、水およびメタノールなどのアル
コール類が挙げられる。水系溶液またはアルコール系溶
液中の極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒の種類は
特に限定されないが、パラアラミド溶液に使用される溶
媒を使用する方が、工業的には溶媒回収工程が簡素化さ
れるので好ましい。最終的に得られる多孔質フィルムの
空隙率、フィブリルの径などの形態因子は、用いる凝固
液の種類および凝固液中の極性アミド系溶媒または極性
尿素系溶媒の濃度によっても制御することができる。
【0039】本工程で使用する凝固液としては、極性ア
ミド系溶媒または極性尿素系溶媒を1〜70%含有する
凝固液がより好適に用いられる。凝固液中の極性アミド
系溶媒または極性尿素系溶媒の濃度が1%未満では、溶
媒回収工程での負荷が大きすぎて工業的に不利である。
高濃度側は特に限定することはないが、濃度が70%を
越えると凝固に時間を要し、パラアラミドが析出するま
で膜状物の形態を保持しておくことが難しくなる。
【0040】本発明の方法は、パラアラミド溶液から、
例えば基板上に膜状に形成し、膜状物を得た後、極性ア
ミド系溶媒または極性尿素系溶媒を0〜70重量%含有
する凝固液に浸漬して、パラアラミドを凝固させ析出す
るという簡単な方法で、多孔質フィルムを製造するとこ
ろに優れた特徴を有する。尚、本法では凝固液中でパラ
アミドの膜状物からパラアミドの凝固と析出を同時に行
う点で、上記低温及び高温析出法と異なる。
【0041】得られる多孔質フィルムの膜厚は特に限定
されないが、基板への塗工時の膜厚が1mm未満である
ことが好ましい。塗工時の膜厚が1mm以上になると膜
表面は凝固するが、内部の未凝固の部分が流動し易く、
均質な多孔質フィルムを得ることが難しい。この場合に
は流動防止のダム等を設ける必要がある。
【0042】凝固時の温度は、凝固液が水溶液の場合に
は、高温ほどフィルム強度が高くなる傾向にあるが、室
温〜60℃の範囲では空隙の構造およびフィブリルの形
態に大きな差はない。したがって、特に温度については
限定されないが、工業的には室温付近で凝固する方が経
済的である。
【0043】本発明の方法によれば、フィブリルで形成
される空隙が多孔質フィルムの片面では相対的に小さ
く、反対面では大きいという、空隙の大きさがフィルム
の厚み方向で異なる構造を有する多孔質フィルムを得る
ことができる。また、フィブリルで形成される空隙の大
きさが、多孔質フィルムの厚み方向で連続的に異なる構
造を有する多孔質フィルムとすることもできる。
【0044】すなわち、パラアラミド溶液の膜状物をガ
ラス板やポリエステルフィルムなどの基板上に形成して
水系溶液である凝固液に浸漬すると、該パラアラミド溶
液の膜状物の表面で凝固液に直接接触する側にはおよそ
0.005〜0.030μmの空隙が走査型電子顕微鏡
で観察される。一方、基板側は0.005〜0.10μ
mの空隙を有するフィブリルからなる不織布状の形態を
示し、フィブリルの径はおよそ0.005〜0.1μm
となる。
【0045】凝固液中の水の濃度が低いほど、得られる
多孔質フィルムは、上記の空隙についての傾斜構造、す
なわち厚み方向における空隙や形態の違い(不均一性)
は小さくなる傾向にある。凝固液中の水の濃度を高め
て、不均一性を増すことができる。
【0046】また、凝固液として水系溶液の代わりにア
セトン系溶液を用いると、フィブリルの径と空隙の大き
さはいずれも大きくなるが、水系溶液の場合と同様に、
多孔質フィルムの厚み方向の不均一性が認められる。ま
た、空隙の大きさは特に限定されないが、凝固液側でお
よそ0.005〜2μm、基板側でおよそ0.005〜
20μmであり、凝固液側の方が空隙が小さくなってい
る。多孔質フィルムの厚み方向の不均一性は、多孔質フ
ィルムの用途によっては好ましい場合があるので、不均
一性の制御ができること技術的にも有利である。
【0047】尚、工程(d)は工程(a)と、又工程
(f)は工程(c)と同じ工程であり、それぞれ同様な
操作が行われる。
【0048】本発明の方法により得られるパラ配向芳香
族ポリアミドからなる多孔質フィルムは、パラ配向芳香
族ポリアミドからなる1μm以下のフィブリルが網目状
または不織布状に平面に配置され、かつ層状構造を有す
る。上記のように本発明によれば、フィブリルの径やフ
ィブリルから形成される空隙の大きさ、空隙率等を容易
に制御できる方法が提供される。
【0049】以上説明したように、本発明の多孔質フィ
ルムは、フィルムの形態において、パラアラミドからな
るフィブリルが網目状または不織布状に平面に配置さ
れ、かつ層状に重なっている構造を有するものである。
フィブリルが平面的に配置されるので、各種の優れた物
性を有する。第一には、パラアラミドの本来の性質であ
る剛性、耐熱性があり機械的強度を有することである。
それに加え、第二には、平面方向の寸法安定性であり、
200〜300℃での熱線膨張係数が±50×10-6
℃以内であること。更には、空隙率が高くても、機械的
強度がある程度維持されることである。
【0050】本発明の多孔質フィルムは、上記のように
優れた性質を利用して電池用セパレーター、電気絶縁紙
等に使用できる。本発明のフィルムは電気絶縁性を有
し、電解液に対しても化学的に安定で、フィブリル構造
とそれからなる空隙により電解液の保持性がよく、しか
もイオン透過性に優れているので、特に二次電池用セパ
レーターに好適に使用される。
【0051】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。実施例および比較例における試験・評価方法または
判定基準は次に示すとおりである。
【0052】(1)固有粘度 本発明において固有粘度とは、次の測定方法によった。
即ち、96〜98%硫酸100mlにパラアラミド重合
体0.5gを溶解した溶液および96〜98%硫酸につ
いて、それぞれ毛細管粘度計により30℃にて流動時間
を測定し、求められた流動時間の比から次式により固有
粘度を求めた。 固有粘度=ln(T/T0 )/C 〔単位:dl/
g〕 ここでTおよびT0 はそれぞれパラアラミド硫酸溶液お
よび硫酸の流動時間であり、Cはパラアラミド硫酸溶液
中のパラアラミド濃度(dl/g)を示す。
【0053】(2)引張試験 得られたフィルムからダンベル社製ダンベルカッターに
て試験片を打ち抜き、インストロンジャパン社製インス
トロン万能引張試験機モデル4301を用い、JIS
K−7127に準じて引張強度を求めた。
【0054】(3)空隙率 フィルムを正方形状に切り取り(一辺の長さLcm)、
重量(Wg)、厚み(Dcm)を測定した。パラアラミ
ドの真比重を1.45g/cm3 と仮定して、次式より
空隙率(体積%)を求めた。 空隙率=100−100×(W/1.45)/(L2 ×
D)
【0055】(4)熱線膨張係数 被試験片を250℃で10分間熱処理した。この被試験
片について、ASTM−D696に準拠し、セイコー電
子(株)製熱分析装置TMA120を用いて測定し、次
の式により算出した。 αl=ΔL/LoΔT αl;熱線膨張係数 ΔL;試験片の変化長 Lo;試験前の試験片長 ΔT;温度差(T2 −T1 :℃) T2 ;300℃、T1 ;200℃
【0056】実施例1 1. ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合 撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する
5リットル(l)のセパラブルフラスコを使用してポリ
(パラフェニレンテレフタルアミド)(以下、PPTA
という。)の重合を行った。フラスコを十分乾燥し、N
−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)4
200gを仕込み、200℃で2時間乾燥した塩化カル
シウム272.7gを添加して100℃に昇温した。塩
化カルシウムが完全に溶解した後室温に戻して、パラフ
ェニレンジアミン(以下、PPDという。)132.9
gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃
に保ったまま、テレフタル酸クロライド(以下、TPC
という。)243.3gを10分割して約5分おきに添
加した。その後溶液を20℃±2℃に保ったまま1時間
熟成し、気泡を抜くために減圧下30分撹拌した。得ら
れた重合液(重合体ドープ)は光学的異方性を示した。
重合液の一部をサンプリングして水で再沈してポリマー
として取り出し、得られたPPTAの固有粘度を測定し
たところ1.97dl/gであった。
【0057】2. PPTA溶液の調製 上記項1の重合液100gを、撹拌翼、温度計、窒素流
入管および液体添加口を有する500mlのセパラブル
フラスコに秤取し、5.8重量%の塩化カルシュウムを
溶解しているNMP溶液を徐々に添加した。最終的に、
PPTA濃度が2.8重量%のPPTA溶液を調製し、
これをA液とした。
【0058】3. 多孔質フィルムの作製(低温析出法) テスター産業株式会社製バーコーター(膜厚0.60m
m)により、ガラス板上にA液を膜状に形成して膜状物
とし、直ちに−20℃の冷凍庫に約1時間保持したとこ
ろPPTAが析出して白濁した膜状物となった。この場
合、膜状物表面に水分の結露は見られなかった。この膜
状物をイオン交換水に浸漬した。数分後に膜状物はガラ
ス板から剥離した。イオン交換水を流しながら、この膜
状物を約1時間浸漬した後、直径11cmの円形濾紙上
に取り出した。膜状物を乾いた濾紙に移し換え、濾紙で
挟んだまま円形枠に固定し120℃で2時間乾燥した。
乾燥して得られたフィルムは厚みが84.2μmで、空
隙率は84%であった。また、走査型電子顕微鏡で観察
したところ、得られた多孔質フィルムは約0.1〜0.
3μmのフィブリル状PPTA繊維からなっており、空
孔の径は約1μm以下であった。
【0059】4.電池用セパレーターへの適用 正極は、ニッケル酸リチウム粉末と炭素質導電材粉末お
よびポリフッ化ビニリデンを重量比87:10:3で混
合したペースト(NMP溶媒)を20μmのアルミニウ
ム箔に塗布し、乾燥、プレスして厚さ92μmのシート
(充填密度は3.0g/cc)を作製して用いた。負極
は、黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンを重量比90:1
0で混合したペースト(NMP溶媒)を10μmの銅箔
に塗布し、乾燥・プレスして厚さ110μmのシートを
作製して用いた。電解液は、エチレンカーボネートとジ
メチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの
混合溶媒に6フッ化リン酸リチウムを溶解(1モル/l
濃度)して準備した。
【0060】セパレーターは前項3で作製した多孔質フ
ィルムを用いた。電池は、正極面積を2.34平方cm
とした平板型構造とし、上記で準備したものをアルゴン
雰囲気ボックス内で、負極シート、セパレーター、正極
シートの順に重ねた後、充分に電解液を含浸させて作製
した。作製した電池を充電電圧4.2V、放電電圧2.
75Vで8サイクル繰り返したところ、5サイクル目の
放電容量は6.6mAH(放電電流1.5mA)であり
サイクル劣化もなく正常に動作した。
【0061】実施例2 実施例1に準じてPPTAを試作した。得られたPPT
Aの固有粘度は2.07dl/gであった。このPPT
A重合液を塩化カルシウムを溶解しているNMP溶液で
希釈し、B液とした。B液はPPTA濃度が2.0重量
%で、塩化カルシウムはPPTAのアミド基1モルに対
して3モルの割合であった。ガラス板上にB液を膜状に
形成し(膜厚0.35mm)、実施例1に準じてフィル
ムを作成した。この場合、冷蔵庫から膜状物を取り出し
たときに膜状物の表面に水分が結露していた。該フィル
ムの厚みは9.2μmで、空隙率は50%であり、引張
り強度は4.7kg/mm2 であった。
【0062】実施例3 実施例2で得られたPPTA重合液をNMPで希釈し、
C液とした。C液はPPTA濃度が2.0重量%で、塩
化カルシウムはPPTAのアミド基1モルに対して2モ
ルの割合であった。ガラス板上にC液を膜状に形成し
(膜厚0.60mm)、実施例1に準じてフィルムを作
成した。この場合も実施例2と同様に冷蔵庫から膜状物
を取り出したときに膜状物の表面に水分の結露が見られ
た。該フィルムの厚みは15.6μmで、空隙率は43
%であり、引張り強度は10.9kg/mm2 であっ
た。以上の実施例から、冷却温度、湿度等により空隙率
の調整が可能であることが分かった。
【0063】実施例4 1. 多孔質フィルムの作製(高温析出法) テスター産業株式会社製バーコーター(膜厚0.60m
m)により、ガラス板上にA液を膜状に形成して膜状物
とし、直ちに60℃の加熱オーブンに約20分間保持し
たところPPTAが析出して白濁した膜状物となった。
この膜状物をイオン交換水に浸漬した。数分後に膜状物
はガラス板から剥離した。イオン交換水を流しながら、
この膜状物を約1時間浸漬した後、直径11cmの円形
濾紙上に取り出した。膜状物を乾いた濾紙に移し換え、
濾紙で挟んだまま円形枠に固定し120℃で2時間乾燥
した。乾燥して得られたフィルムは厚みが11.4μm
で、空隙率は45%であった。また、走査型電子顕微鏡
で観察したところ、得られた多孔質フィルムは約0.1
μmのフィブリル状PPTA繊維からなる多数の空隙を
有する多孔質フィルムであった。空孔の径は約1μm以
下であった。尚、熱線膨張係数は200〜300℃の間
での測定値が−6.3×10-6/ ℃であった。
【0064】2.電池用セパレーターへの適用 正極は、ニッケル酸リチウム粉末と炭素質導電材粉末お
よびポリフッ化ビニリデンを重量比87:10:3で混
合したペースト(NMP溶媒)を20μmのアルミニウ
ム箔に塗布し、乾燥、プレスして厚さ92μmのシート
(充填密度は3.0g/cc)を作製して用いた。負極
は、黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンを重量比90:1
0で混合したペースト(NMP溶媒)を10μmの銅箔
に塗布し、乾燥・プレスして厚さ110μmのシートを
作製して用いた。電解液は、エチレンカーボネートとジ
メチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの
混合溶媒に6フッ化リン酸リチウムを溶解(1モル/l
濃度)して準備した。
【0065】セパレーターは前項1で作製した多孔質フ
ィルムを用いた。電池は、正極面積を2.34平方cm
とした平板型構造とし、上記で準備したものをアルゴン
雰囲気ボックス内で、負極シート、セパレーター、正極
シートの順に重ねた後、充分に電解液を含浸させて作製
した。作製した電池を充電電圧4.2V、放電電圧2.
75Vで8サイクル繰り返したところ、8サイクル目の
放電容量は7.3mAH(放電電流1.5mA)であり
サイクル劣化もなく正常に動作した。
【0066】実施例5〜7 実施例4に準じてPPTAを試作した。得られたPPT
Aの固有粘度は2.07dl/gであった。このPPT
A重合液を塩化カルシウムを溶解しているNMPで希釈
し、表1の組成の溶液を得た。該溶液をガラス板上に膜
状に形成し、直ちに40℃の加熱オーブンに約20分間
保持したところPPTAが析出して白濁した膜状物とな
った。実施例例4と同様に該膜状物をイオン交換水に浸
漬し、乾燥して得られたフィルムの厚み、空隙率および
引張り強度を測定した。結果を表1に併せて示した。
【0067】
【表1】 ───────────────────────────────── 実施例5 実施例6 実施例7 ───────────────────────────────── CaCl2/アミド基 (mol/mol) 4. 0 3. 0 2. 0 ポリマー濃度 (重量%) 2. 0 2. 0 2. 0 バーコーターの膜厚 (mm) 0.35 0.35 0.35 フィルム厚み (μm) 9.3 9.2 8.6 空隙率 (%) 38 47 51 引張り強度 (kg/mm2) 12. 8 9. 2 10. 6 熱線膨張係数 (/℃) -4.7 ×10-6 -5.4×10-6 -5.9 ×10-6 ─────────────────────────────────
【0068】実施例8 1. ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合 撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する
5lのセパラブルフラスコを使用してPPTAの重合を
行った。フラスコを十分乾燥し、NMP4200gを仕
込み、200℃で2時間乾燥した塩化カルシウム27
2.7gを添加して100℃に昇温した。塩化カルシウ
ムが完全に溶解した後室温に戻して、PPD132.9
gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃
に保ったまま、TPC243.3gを10分割して約5
分おきに添加した。その後溶液を20℃±2℃に保った
まま1時間熟成し、気泡を抜くために減圧下30分撹拌
した。得られた重合液(重合体ドープ)は光学的異方性
を示した。重合液の一部をサンプリングして水で再沈し
てポリマーとして取り出し、得られたPPTAの固有粘
度を測定したところ1.98dl/gであった。
【0069】2. PPTA溶液の調製 上記項1の重合液100gを、撹拌翼、温度計、窒素流
入管および液体添加口を有する500mlのセパラブル
フラスコに秤取し、塩化カルシウムを溶解しているNM
P溶液を徐々に添加した。最終的に、PPTA濃度が
2.0重量%で、塩化カルシウムがPPTAのアミド基
(重合時の仕込みPPD量よりの計算値)に対し4倍モ
ルのPPTA溶液を調製し、これをD液とした。
【0070】3. 多孔質フィルムの作製(凝固液浸漬
法) テスター産業株式会社製バーコーター(膜厚0.35m
m)により、ガラス板上にD液を膜状に形成し、10%
のNMPを含むイオン交換水に浸漬した。数分後に膜状
物はガラス板から剥離した。イオン交換水を流しなが
ら、この膜状物を約1時間浸漬した。次に、水中より膜
状物を取り出し、遊離水をふき取ったあと濾紙にはさ
み、さらにガラスクロスにはさんだ。膜状物を濾紙とガ
ラスクロスではさんだ状態で、アルミ板に乗せその上に
ナイロンフィルムを被せ、ナイロンフィルムとアルミ板
とをガムでシールして、減圧のための導管をつけた。全
体を熱オーブンに入れ120℃で減圧しながら膜状物を
乾燥した。得られたフィルムは厚みが15. 1μmで、
空隙率は62. 3%あり、強度は6. 3kg/mm2
あった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、得
られた多孔質フィルムのガラス板側は0.02〜0.0
5μmのPPTAからなるフィブリルで構成され、多数
の空隙を有していた。反対側は0.01〜0.03μm
の空隙を有する形態であった。尚、熱膨張係数は、−
7.3×10-6/ ℃であった。
【0071】4.電池用セパレーターへの適用 正極は、ニッケル酸リチウム粉末と炭素質導電材粉末お
よびポリフッ化ビニリデンを重量比87:10:3で混
合したペースト(NMP溶媒)を20μmのアルミニウ
ム箔に塗布し、乾燥、プレスして厚さ92μmのシート
(充填密度は3.0g/cc)を作製して用いた。負極
は、黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンを重量比90:1
0で混合したペースト(NMP溶媒)を10μmの銅箔
に塗布し、乾燥・プレスして厚さ110μmのシートを
作製して用いた。電解液は、エチレンカーボネートとジ
メチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの
混合溶媒に6フッ化リン酸リチウムを溶解(1モル/l
濃度)して準備した。
【0072】セパレーターは前項3で作製した多孔質フ
ィルムを用いた。電池は、正極面積を2.34平方cm
とした平板型構造とし、上記で準備したものをアルゴン
雰囲気ボックス内で、負極シート、セパレーター、正極
シートの順に重ねた後、充分に電解液を含浸させて作製
した。作製した電池を充電電圧4.2V、放電電圧2.
75Vで6サイクル繰り返したところ、6サイクル目の
放電容量は6. 7mAH(放電電流1.5mA)とサイ
クル劣化が比較的小さくほぼ正常に動作した。
【0073】実施例9〜12 実施例8に準じてPPTA溶液を調製した。実施例8の
PPTA重合液をNMPまたは塩化カルシウムを溶解し
ているNMPで希釈し、表2の組成の溶液を得た。該溶
液をガラス板上に膜状に形成し、実施例8に準じて多孔
質フィルムを試作した。このフィルムの物性を表2に併
せて示した。
【0074】
【表2】 ─────────────────────────────────── 実施例9 実施例10 実施例11 実施例12 ─────────────────────────────────── CaCl2/アミド基 (mol/mol) 2. 0 2. 0 4. 0 4. 0 ポリマー濃度 (重量%) 2. 0 2. 0 2. 0 2. 0 凝固液のNMP濃度 (重量%) 10 30 30 50 フィルム厚み (μm) 14. 7 11. 9 12. 7 13. 6 空隙率 (%) 66 63 61 64 引張り強度 (kg/mm2) 5. 5 5. 6 7. 0 6. 2 ───────────────────────────────────
【0075】実施例13 1. ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合 撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する
500mlのセパラブルフラスコを使用してPPTAの
重合を行った。フラスコを十分乾燥し、NMP420g
を仕込み、200℃で2時間乾燥した塩化カルシウム2
8gを添加して100℃に昇温した。塩化カルシウムが
完全に溶解した後室温に戻して、PPD12.8gを添
加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃に保っ
たまま、TPC23.3gを10分割して約5分おきに
添加した。その後溶液を20℃±2℃に保ったまま1時
間熟成し、気泡を抜くために減圧下30分撹拌した。得
られた重合液(重合体ドープ)は光学的異方性を示し
た。重合液の一部をサンプリングして水で再沈してポリ
マーとして取り出し、得られたPPTAの固有粘度を測
定したところ1.83dl/gであった。
【0076】2. PPTA溶液の調製 上記項1の重合液100gを、撹拌翼、温度計、窒素流
入管および液体添加口を有する500mlのセパラブル
フラスコに秤取し、NMPを徐々に添加した。最終的
に、PPTA濃度が2.0重量%で、塩化カルシウムが
PPTAのアミド基(重合時の仕込みPPD量よりの計
算値)に対し2倍モルのPPTA溶液を調製し、これを
E液とした。
【0077】3. 多孔質フィルムの作製 テスター産業株式会社製バーコーター(膜厚0.35m
m)により、ガラス板上にE液を膜状に形成し、30%
のNMPを含むイオン交換水に浸漬した。数分後に膜状
物はガラス板から剥離した。イオン交換水を流しなが
ら、この膜状物を約12時間浸漬した。次に、水中より
膜状物を取り出し遊離水をふき取った。この膜状物を濾
紙に挟み、これを外径125mm、内径100mmのテ
フロン製枠でさらに挟み、枠をクリップで固定した。全
体を熱オーブンに入れ120℃で1時間乾燥した。得ら
れたフィルムは厚みが9. 4μmで、空隙率は46. 4
%であった。また、走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、図1及び図2に示すような多孔質フィルムであっ
た。ガラス板側(図1)は0.02〜0.05μmのP
PTAからなるフィブリルで構成され、多数の空隙を有
していた。反対側すなわち凝固液側(図2)は0.01
〜0.03μmの空隙を有する形態であった。
【0078】実施例14 実施例8の重合液を希釈せずにフィルム作製用PPTA
溶液としてそのまま使用した。テスター産業株式会社製
バーコーター(膜厚0.60mm)により、ガラス板上
にPPTA液を膜状に形成し、1%のNMPを含むアセ
トン溶液に浸漬した。10数分後に膜状物はガラス板か
ら剥離した。析出した膜状物をアセトン溶液から取り出
し、イオン交換水に15時間浸漬した。次に、水中より
取り出し、遊離水をふき取った後濾紙に挟み、さらにガ
ラスクロスに挟んだ。膜状物を濾紙とガラスクロスで挟
んだ状態で、アルミ板に乗せその上にナイロンフィルム
を被せ、ナイロンフィルムとアルミ板とをガムでシール
して、減圧のための導管をつけた。全体を熱オーブンに
入れ120℃で減圧しながら膜状物を乾燥した。得られ
たフィルムは厚みが264μmで、空隙率は86. 8%
であった。また、走査型電子顕微鏡で観察した結果を図
3および図4に示す。得られた多孔質フィルムのガラス
板側(図3)は約1〜10μmの多数の空隙を有してい
た。反対側すなわち凝固液側(図4)はおよそ0.5μ
mのフィブリルの径を有する多孔質フィルムであった。
尚、熱線膨張係数は200〜300℃の間での測定値が
22×10-6/ ℃であった。
【0079】実施例15 実施例1の方法に準じて、固有粘度が1.74dl/g
のPPTAからなり、PPTA濃度が2.0wt%で塩
化カルシウムが塩化カルシウム/PPDのモル比で2.
0/2.0モル/モルを含むNMP溶液から、テスター
産業株式会社製バーコーター(膜厚0.80mm)によ
り、ガラス板上に塗布し、直ちに30%NMP水溶液に
浸漬し膜を作成した。この間に、PPTAが析出して膜
は白濁した。この膜状物をイオン交換水に浸漬した。数
分後に、膜状物はガラス板から剥離した。イオン交換水
を流しながら、この膜状物を約1時間浸漬した後、直径
11cmの円形濾紙上に取り出した。膜状物を乾いた濾
紙に移し換え、濾紙で挟んだまま円形枠に固定し120
℃で2時間乾燥した。得られたフィルムは厚みが42μ
mで空隙率は56%であった。このフィルムを水に浸漬
し、冷凍固化し折った。折ったフィルムを乾燥し走査型
電子顕微鏡で断面を観察したところ、図5に示すように
PPTAのフィブリルからなる薄片状のものが重なった
層構造を有する多孔質フィルムであった。
【0080】比較例1 (特公昭59−36939号 実施例10の追試)撹拌
翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する50
0mlのセパラブルフラスコを使用してPPTAの重合
を行った。400mlのNMPに塩化カルシウム12.
96gおよびPPD6.28g(0.05807モル)
を溶解し、0℃に冷却した。ついて粉末状のTPC1
2.21g(0.06014モル)を一気に加えて重合
させた。30分熟成した後、PPTA溶液にNPMに対
し8.5重量%の水を添加したところ、液表面に白色の
PPTAが析出し、最終的には全体が固化した。このP
PTA溶液の一部を取り水に再沈して、洗浄乾燥後固有
粘度を測定したところ1.55dl/gであった。
【0081】比較例2 (特公昭59−36939号 実施例10の追試、但
し、PPD/TPCのモル比を1に近づけた。)撹拌
翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する50
0mlのセパラブルフラスコを使用してPPTAの重合
を行った。400mlのNMPに塩化カルシウム13.
80gおよびPPD6.73g(0.06223モル)
を溶解し、0℃に冷却した。ついて粉末状のTPC1
2.88g(0.06344モル)を一気に加えて重合
させた。60分熟成した後、PPTA溶液はゼリー状に
固化した。固化した重合物の一部を取り水に再沈して、
洗浄乾燥後に固有粘度を測定したところ2.33dl/
gであった。このように、特公昭59−36939号の
追試を行ったが、実施例10に記載された固有粘度が
3.81dl/gでかつ溶液状態の重合液をつくること
はできなかった。
【0082】比較例3 (特公昭59−14494号 実施例3の追試)撹拌
翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する50
0mlのセパラブルフラスコを使用してPPTAの重合
を行った。400mlのNMPに塩化カルシウム12.
96gおよびPPD6.28g(0.05807モル)
を溶解し、0℃に冷却した。ついて粉末状のTPC1
2.21g(0.06014モル)を一気に加えて重合
させた。30分熟成した後、PPTA溶液を、テスター
産業株式会社製バーコーター(膜厚0.60mm)によ
り、ガラス板上に塗布し、ただちに−30℃の窒素雰囲
気下で10分間保持した後、−70℃のドライアイス−
アセトン液中に4時間浸漬し膜状物を得た。この膜状物
を水洗し乾燥した。得られたフィルムは、黄色で透明で
あった。このフィルムの空隙率は、26.4%であっ
た。図6に、得られたフィルムの走査型電子顕微鏡写真
を示す。写真には蒸着したAu粒子が認められ、フィル
ム面は平滑であり、フィブリルが存在しないことを示し
ている。
【0083】比較例4 (特公昭59−36939号 実施例1の追試)塩化リ
チウム0.67gを溶解したN,N’−ジメチルアセト
アミド18gに、固有粘度が1.35dl/gのポリメ
タフェニレンイソフタルアミド4gを加えて溶解した。
ついで、この溶液に室温下2.17gの水を添加撹拌
し、透明で粘度の高い組成溶液を得た。この組成溶液
を、テスター産業株式会社製バーコーター(膜厚0.6
0mm)により、ガラス板上に塗布し、140℃に設定
された熱風循環乾燥機内で20分間保管した後、水中に
取り出し、水洗、乾燥した。得られたフィルムは透明
で、空隙率は15.0%であった。図7に得られたフィ
ルムの走査型電子顕微鏡写真を示す。観察の結果、部分
的に空孔が認められたが、フィブリルは認められなかっ
た。
【0084】比較例5 固有粘度が1.35L/gのポリメタフェニレンイソフ
タルアミド8.4gをNMP95.4gに90℃で撹
拌、溶解した。得られた溶液を、10℃まで冷却した。
冷却後、溶液は透明であった。 a)上記の溶液をテスター産業株式会社製バーコーター
(膜厚0.60mm)により、ガラス板上に塗布し、1
40℃に設定された熱風循環乾燥機内で20分間保管し
た後、水中に取り出し、水洗、乾燥した。得られたフィ
ルムは透明で、空隙率は11.2%であった。(ポリメ
タフェニレンイソフタルアミドの真比重は1.38g/
cm3 とした。) b)上記の溶液をテスター産業株式会社製バーコーター
(膜厚0.60mm)により、ガラス板上に塗布し、水
中に浸漬した後、水洗、乾燥した。得られたフィルムは
表面に凹凸が有り、白濁していた。図8に得られたフィ
ルムの走査型電子顕微鏡写真を示す。観察の結果、部分
的に空孔が認められたが、フィブリルは認められなかっ
た。 c)上記の溶液をテスター産業株式会社製バーコーター
(膜厚0.60mm)により、ガラス板上に塗布し、3
5重量%の塩化カルシウム水溶液に浸漬した後、水洗、
乾燥した。得られたフィルムは表面に凹凸が有り、白濁
していた。得られたフィルムの走査型電子顕微鏡写真を
観察したがフィブリルは認められなかった。
【0085】比較例6 (特公昭59−36939号 実施例7の追試)固有粘
度が1.35dl/gのポリメタフェニレンイソフタル
アミド5gをNMP20gに、90℃で撹拌、溶解し
た。得られた溶液を、10℃まで冷却したところ、溶液
は増粘、失透した。 a)上記の溶液をテスター産業株式会社製バーコーター
により、ガラス板上に膜厚0.60mmで塗布した。こ
れを、140℃に設定された熱風循環乾燥機内で20分
間保管した後、水洗、乾燥した。得られたフィルムは半
透明であった。電子顕微鏡観察の結果、空孔およびフィ
ブリルは認められなかった。 b)上記の溶液をテスター産業株式会社製バーコーター
により、ガラス板上に膜厚0.60mmで塗布し、35
重量%の塩化カルシウム水溶液に浸漬した後、水洗、乾
燥した。得られたフィルムは、表面に凹凸が有り、白濁
していた。電子顕微鏡観察の結果、フィブリルは認めら
れなかった。
【0086】
【発明の効果】本発明の方法で製造されるパラ配向芳香
族ポリアミドの多孔質フィルムは、耐熱性、剛性および
強度に優れており、従来の不織布では達成できない、フ
ィブリルの径が約1μm以下のフィブリルが網目状また
は不織布状に平面に配置され、且つ層状に重なる構造を
有し、フィルムの200〜300℃での熱線膨張係数が
±50×10-6以内と小さく、またフィルムの空隙率が
30〜95%であるという従来のアラミドフフィルムに
無い性質を有している。特に、凝固液浸漬法により得ら
れたフィルムは、従来の不織布では達成できない、空隙
の大きさがフィルムの片面では相対的に小さく、反対面
では大きい形態を有し、またフィブリルの径も厚み方向
で異なる構造を有している。これらの性質を利用して本
発明の多孔質フィルムは電池用セパレーターに適してい
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6で得られた多孔質フィルムのガラス板
側の表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率500
00倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図2】実施例6で得られた多孔質フィルムの凝固液側
の表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率5000
0倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図3】実施例7で得られた多孔質フィルムのガラス板
側の表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率100
0倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図4】実施例7で得られた多孔質フィルムの凝固液側
の表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率5000
倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図5】実施例15で得られた多孔質フィルムの断面の
構造を示す。図面に代わる写真(倍率5000倍の走査
型電子顕微鏡写真)。
【図6】比較例3で得られたフィルムの凝固液側の表面
の構造を示す。図面に代わる写真(倍率100000倍
の走査型電子顕微鏡写真)。
【図7】比較例4で得られた多孔質フィルムの凝固液側
のの表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率100
00倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図8】比較例5で得られた多孔質フィルムのガラス板
側の表面の構造を示す。図面に代わる写真(倍率500
倍の走査型電子顕微鏡写真)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−8441(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 9/26 101

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パラ配向芳香族ポリアミドからなる多孔質
    フィルムにおいて、該フィルムが1μm以下の径からな
    るフィブリルにより構成され、該フィブリルが網目状ま
    たは不織布状に平面に配置されかつ層状に重なっている
    構造を有し、さらに該フィルムの200〜300℃での
    熱線膨張係数が±50×10-6/℃以内であり、空隙率
    が30〜95%であることを特徴とするパラ配向芳香族
    ポリアミド多孔質フィルム。
  2. 【請求項2】フィブリルで形成される空隙の大きさが、
    多孔質フィルムの片面では相対的に小さく反対面では大
    きいことを特徴とする請求項1記載のパラ配向芳香族ポ
    リアミド多孔質フィルム。
  3. 【請求項3】フィブリルで形成される空隙の大きさが、
    多孔質フィルムの厚み方向で連続的に異なる構造を有す
    ることを特徴とする請求項2記載のパラ配向芳香族ポリ
    アミド多孔質フィルム。
  4. 【請求項4】パラ配向芳香族ポリアミドが、ポリ(パラ
    フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミ
    ド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミ
    ド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレン
    ジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6
    −ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ
    −パラフェニレンテレフタルアミド)、又はパラフェニ
    レンジアミン/2,6−ジクロロパラフェニレンジアミ
    ン/テレフタル酸ジクロライドからなる共重合体である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパラ
    配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム。
  5. 【請求項5】下記の(a)〜(c)の工程を有すること
    を特徴とするパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム
    の製造方法。 (a)極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒中に、固
    有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパラ配向芳香族
    ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金属またはアル
    カリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を含む溶液から
    膜状物を形成する工程。 (b)該膜状物を20℃以上または−5℃以下の温度に
    保持し、パラ配向芳香族ポリアミドを析出させる工程。 (c)工程(b)で得られた膜状物を水系溶液またはア
    ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
    ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
    ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
  6. 【請求項6】下記の(d)〜(f)の工程を有すること
    を特徴とするパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルム
    の製造方法。 (d)極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒中に、固
    有粘度が1.0〜2.8dl/gであるパラ配向芳香族
    ポリアミドを1〜10重量%、アルカリ金属またはアル
    カリ土類金属の塩化物を1〜10重量%を含む溶液から
    膜状物を形成する工程。 (e)該膜状物を、極性アミド系溶媒または極性尿素系
    溶媒を0〜70重量%含有する凝固液に浸漬して、パラ
    配向芳香族ポリアミドを凝固・析出させる工程。 (f)工程(e)で得られた膜状物を水系溶液またはア
    ルコール系溶液に浸漬し、溶媒とアルカリ金属またはア
    ルカリ土類金属の塩化物を溶出させ、次いで乾燥させパ
    ラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムを得る工程。
  7. 【請求項7】極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒
    が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル
    アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたはテト
    ラメチルウレアであることを特徴とする請求項5または
    6記載のパラ配向芳香族ポリアミド多孔質フィルムの製
    造方法。
  8. 【請求項8】アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩
    化物が、塩化リチウムまたは塩化カルシウムであること
    を特徴とする請求項5または6記載のパラ配向芳香族ポ
    リアミド多孔質フィルムの製造方法。
  9. 【請求項9】請求項5〜8のいずれかに記載の方法によ
    り製造されたことを特徴とするパラ配向芳香族ポリアミ
    ド多孔質フィルム。
  10. 【請求項10】請求項1〜4、および9のいずれかに記
    載された芳香族ポリアミド多孔質フィルムを用いてなる
    ことを特徴とする電池用セパレーター。
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