JP3267942B2 - 位相同期式超音波流量計 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は位相同期（フェーズ
ロックループ、以下ＰＬＬと略記する）式超音波流量計
の改良に係るものであり、特に小口径タイプの流量計に
適した超音波流量計に関する。

【０００２】

【従来の技術】図７は、従来のＰＬＬ式超音波流量計を
示し、以下その概要を説明する。同図において符号１は
流体入口１ａと同出口１ｂを有する流路用管体、２ａ、
２ｂは管体の両端に設けた１対の超音波振動子を示す。

【０００３】３は切換器であり、励振電圧源４と受信信
号の増幅器５を上記振動子２ａまたは２ｂへ交互に切換
えて接続する機能を有するが、その切換信号については
ここで触れない。

【０００４】６は位相比較器であり、増幅器５から与え
られる入力信号６１と分周器９から与えられる帰還信号
６２との間の位相差に応じたパルス出力をローパスフィ
ルタ７に与える。

【０００５】ローパスフィルタ７の出力を受ける電圧制
御発振器（ＶＣＯと略記される）８は高い周波数の可変
周波数信号を分周比が通常１０００以上の分周器９に与
えるとともに出力端子１０に出力周波数信号を発生す
る。この信号の処理装置についての説明は省略する。

【０００６】このように構成することにより振動子２
ａ、２ｂ間にいわゆるシングアラウンド発振が起り、出
力端子１０にはシングアラウンド周波数に分周器９の分
周比に応じた高い周波数増倍率を乗じた出力周波数信号
が得られる。

【０００７】したがって、切換器３を操作して超音波の
向きを反転し、各振動子２ａ、２ｂから得られる２つの
出力周波数の差から高い分解能で流速すなわち流量が計
測できる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記ＰＬ
Ｌ方式は小口径流量計に適用すると次ぎのような技術的
問題が生ずる。

【０００９】一般に数リットル／分以下の流量を測定す
る流量計の管体内径は数ミリ程度にする必要があり、し
たがって超音波の伝播路断面積が小さく、超音波の減衰
が著しい。

【００１０】このため励振電圧源４の出力電圧を高める
か、増幅器５の増幅度を上げるのが普通である。しか
し、切換器３として使用されるいわゆるアナログスイッ
チにおいては、オフ状態にあるスイッチの静電容量によ
り励振電圧が増幅器側にスパイク状態のノイズとして漏
れ、場合によっては受信波より大きくなる。

【００１１】ところでシングアラウンド発振において
は、増幅器５が超音波信号を受信すると、同時に励振電
圧源４より次の超音波を送るよう振動子２ａまたは２ｂ
を励振するので、受信側で見ると受信波検出時に上述の
励振ノイズが重なり、場合によっては正常な動作が困難
になる。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解
決するためになされたもので、本発明に係る第１発明の
位相同期式超音波流量計は、流路用管体に対向して取り
付けた１対の超音波振動子と、これら１対の振動子の送
・受信を切換える切換器と、流体内を伝播する超音波に
より受信側の振動子に生じる受信信号を増幅する増幅器
と、同増幅器の出力を入力信号とする位相比較器と、同
位相比較器の出力を平滑化するローパスフィルタと、同
フィルタの出力に応じて発振周波数を変える電圧制御発
振器と、同発振器の出力周波数を分周する分周器と、同
分周器出力を遅延せしめる遅延回路とを備え、前記分周
器の出力を位相比較器の帰還信号とし、かつ前記遅延回
路の出力により送信側の振動子に励振電圧を加えるとと
もに、前記遅延回路の遅延時間を電圧制御発振器の発振
周期に比例させるよう構成したものとしてある。

【００１３】また、本発明に係る第２発明の位相同期式
流量計は、流路用管体に対向して取り付けた１対の超音
波振動子と、これら１対の振動子の送・受信を切換える
切換器と、流体内を伝播する超音波により受信側の振動
子に生じる受信信号を増幅する増幅器と、同増幅器の出
力を遅延せしめる遅延回路と、この遅延回路出力を入力
信号とする位相比較器と、同位相比較器の出力を平滑化
するローパスフィルタと、同フィルタの出力に応じて発
振周波数を変える電圧制御発振器と、同発振器の出力周
波数を分周する分周器とを備え、前記分周器の出力を位
相比較器の帰還信号とし、かつ分周器の出力により送信
側の振動子に励振電圧を加えるとともに、前記遅延回路
の遅延時間を電圧制御発信器の発振周期に比例させるよ
う構成したものとしてある。

【００１４】

【実施例】図１に基づいて本発明に係るＰＬＬ式超音波
流量計の第１実施例の構成を説明する。同図において符
号１〜１０は図７の符号に対応するので、説明は省略す
る。

【００１５】本発明の流量計は分周器９と励振電圧源４
間に遅延回路１１を介在させ、かつ、同遅延回路１１に
は電圧制御発振器８からの出力信号、またはこれを適当
に分周したものをクロック信号として与え、遅延時間を
電圧制御発振器８の発振周期に比例させる点を特徴とし
ている。

【００１６】より具体的な一例は、図２に示すように分
周器９を前段分周器９１とプログラマブル分周器９２に
より構成し、前段分周器９１としては例えば1/61〜1/10
0 の分周比を持つもの、またプログラマブル分周器９２
としては最小1/128 〜1/100の分周比を持つものを使用
し、同プログラマブル分周器９２は流体中の音速に応じ
て適当な分周比となるようにプログラムする。

【００１７】電圧制御発振器の周波数を前段分周器９１
により分周してその出力周期を数μ秒程度に増倍する。
遅延回路１１としては計数形タイマを用い、同タイマは
プログラマブル分周器９２の出力１１１が特定極性（Ｈ
又はＬ）をとると、クロック信号として与えられる前段
分周器９１の出力信号１１２を計数し始め、予め定めた
波数を計数すると出力信号１１３を発するので、これを
励振信号とする。一方プログラマブル分周器９２の出力
は位相比較器６へ帰還する。

【００１８】図３は分周器のＢＣＤプログラマブル・カ
ウンタ９２の特性を利用して遅延回路１１の機能を兼ね
備える分周器９’としたものであり、独立した遅延回路
としては顕在しないが、機能は具体例１と同等である。

【００１９】図４は本発明の第２実施例を示し、遅延回
路１１を増幅器５と位相比較器６の入力側との間に介在
させた点が図１に示す第１実施例のものと異なるが、そ
の動作要領は第１実施例のものとほぼ同様である。

【００２０】この場合、増幅器を遅延させた信号とＰＬ
Ｌ帰還信号がロックイン状態で同相になり、励振電圧も
これと同様であるから、この励振電圧は受信信号に対し
遅延回路１１による遅延時間の分だけ遅れる。

【００２１】

【作用】本発明に係るＰＬＬ式超音波流量計につき、そ
の作用を説明する。ＰＬＬがいわゆるロックインの状態
ではその入力信号と帰還信号の位相（正確には例えばＨ
からＬへの遷移時点）が合致するので、超音波受信信号
とＰＬＬ帰還信号の位相も合致する。一方励振位相は遅
延回路１１による所定時間分遅れることになる。

【００２２】次ぎに本発明における増幅器５の構成の詳
細と同増幅器における信号の波形を図５、６により説明
すれば、受信波は図示のようにＡＣ増幅器５１により増
幅されて、例えば１ＭＨz 程度の周波数の交流ピーク群
となる。

【００２３】増幅された波形はコンパレータ５２により
一定の基準電圧Ｅと比較し、波形がこの基準電圧Ｅを超
える時点を検出して一定時間コンパレータの再動作を禁
止するワンショット回路５３を駆動する。

【００２４】タイマよりなる遅延回路１１は、ロックイ
ン状態ではこのワンショット回路の動作より所定の遅延
時間後励振を行うので、図６のように励振ノイズは受信
信号より遅れ、その動作に悪影響を及ぼすことがない。

【００２５】次ぎにこの遅延時間の測定に及ぼす影響に
ついて説明する。図１において振動子２ａ、２ｂ間の測
線長をＬ、流体中の音速をＣ、管路内の流体の平均流速
をＶ、超音波が下流へ向う際のシングアラウンド周波数
をFd、上流へ向かう際のシングルアラウンド周波数をF
u、遅延回路１１による遅延時間をt₀とすると、 1/Fd＝L/(C＋V)＋t₀，1/Fu＝L/(C−V)+t₀ となる。

【００２６】ここで、従来のようにt₀＝０ならばFd−Fu＝2V/L ・・・・(1) となる。したがって、電圧制御発振器８の出力周波数を
Fd、Fuに対応してfd、fuとし、分周器９の分周による周
波数増倍率をＮとすればfd−fu＝N・2V/L となり、fd−fuからV を演算できる。

【００２７】ところが、t₀＝０でない場合には Fd＝(C＋V)／{L＋(C＋V)t₀} Fu＝(C−V)／{L＋(C−V)t₀} ∴ fd−fu＝{N(C＋V)/L＋(C＋V)t₀} −{N(C−V)/L＋(C
−V)t₀} となり、平均流速Ｖの正確な測定は一般には困難にな
る。

【００２８】しかし本発明においてはt₀は一定ではな
く、電圧制御発振器８の周期に従ってFd、Fuの逆数に正
確に比例するようにしてある。

【００２９】したがってこの遅延時間t₀を改めてFd、Fu
にそれぞれ対応する遅延時間td、tuとすれば、M を比例
定数として、 td＝M/Fd， tu＝M/FuFd−Fu＝{(1-M)/L}2V ∴ fd−fu＝N{(1-M)/L}2V・・・(2) となり、td、tuはシングアラウンド周期1/Fd、1/Fuの数
％程度でよいので(2) 式に示すようにわずかに係数が小
さくなる点を除けば(1) 式と同様にfd−fuから流体の平
均流速Ｖを演算できる。

【００３０】

【発明の効果】以上実施例とともに説明したように、本
発明によれば励振電圧を高く、または増幅器における増
幅度を高めても励振ノイズの影響を受けることがなく、
流路管体が小口径である小流量用の流量測定に好適なＰ
ＬＬ式超音波流量計を実現できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る位相同期式超音波流量計の第１実
施例を示す構成図。

【図２】分周器と遅延回路の一例を示す構成図。

【図３】分周器と遅延回路の他の例を示す構成図。

【図４】本発明に係る位相同期式超音波流量計の第２実
施例を示す構成図。

【図５】増幅器の詳細を示す構成図。

【図６】増幅器における受信信号の波形を示す図。

【図７】従来の位相同期式超音波流量計の第２実施例を
示す構成図。

【符号の説明】

１ 流路用管体 ２ａ、２ｂ 超音波振動子 ３ 切換器 ４ 励振電圧源 ５ 増幅器 ６ 位相比較器 ７ ローパスフィルタ ８ 電圧制御発振器 ９ 分周器 １０ 出力端子 １１ 遅延回路

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】(a) 流路用管体に対向して取り付けた１対
   の超音波振動子と、これら１対の振動子の送・受信を切
   換える切換器と、流体内を伝播する超音波により受信側
   の振動子に生じる受信信号を増幅する増幅器と、同増幅
   器の出力を入力信号とする位相比較器と、同位相比較器
   の出力を平滑化するローパスフィルタと、同フィルタの
   出力に応じて発振周波数を変える電圧制御発振器と、同
   発振器の出力周波数を分周する分周器と、同分周器出力
   を遅延せしめる遅延回路とを備え、(b) 前記分周器の出
   力を位相比較器の帰還信号とし、かつ前記遅延回路の出
   力により送信側の振動子に励振電圧を加えるとともに、
   (c) 前記遅延回路の遅延時間を電圧制御発振器の発振周
   期に比例させるよう構成してなる位相同期式超音波流量
   計。
2. 【請求項２】(a) 流路用管体に対向して取り付けた１対
   の超音波振動子と、これら１対の振動子の送・受信を切
   換える切換器と、流体内を伝播する超音波により受信側
   の振動子に生じる受信信号を増幅する増幅器と、同増幅
   器の出力を遅延せしめる遅 延回路と、この遅延回路出力
   を入力信号とする位相比較器と、同位相比較器の出力を
   平滑化するローパスフィルタと、同フィルタの出力に応
   じて発振周波数を変える電圧制御発振器と、同発振器の
   出力周波数を分周する分周器とを備え、 (b) 前記分周器の出力を位相比較器の帰還信号とし、か
   つ分周器の出力により送信側の振動子に励振電圧を加え
   るとともに、 (c) 前記遅延回路の遅延時間を電圧制御発信器の発振周
   期に比例させるよう構成してなる位相同期式超音波流量
   計。