JP3258629B2 - 発泡スチロール処理方法及びその装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、包装流通分野の断
熱材や緩衝材として利用される発泡スチロール材を廃棄
処分する際に、リサイクルのために溶剤により溶解して
ゲル状液化する発泡スチロール処理方法及びその装置に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、包装流通分野においては、発泡ス
チロール樹脂は保温、保冷など断熱性に優れた断熱材と
して、また軽重量で、衝撃を和らげ、緩衝性に優れた緩
衝材として、大量に使用されている。

【０００３】しかし、使用済みの発泡スチロール材(以
下、「発泡スチロール廃材」という。)は、資源ごみとし
て回収する際には嵩張り、保管場所の確保が大変であ
り、特に大量に廃棄される大型小売店舗等においてはそ
の処分に苦慮しており、一方、焼却処分では、発泡スチ
ロール廃材の発熱量が高く、燃焼温度が高くなるため焼
却炉を傷めるとともに有害燃焼ガスを発生することなど
から公害の問題を発生している。

【０００４】これらを解決したものとして特開平９−１
５７４３５号公報の発泡スチロール廃材の減容処理方法
があるが、本発明はそれを改善したものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記公報は、発泡スチ
ロール樹脂が昜溶解性の溶剤と、発泡スチロール樹脂の
溶解度が低い溶剤との混合溶剤に対して発泡スチロール
廃材を接触させ、発泡スチロール廃材の体積を減少させ
ると共に、溶剤を含んだスチロール樹脂相を溶剤相から
分離させるものであるが、実際の利用には不向きであっ
た。

【０００６】本発明はそれを改善し、発泡スチロール廃
材の回収・再生が容易であって、かつ経済性に優れた発
泡スチロール処理方法及びその装置を提供することであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の発泡スチロール
処理方法は、発泡スチロール廃材を一次破砕する破砕工
程と、破砕された発泡スチロール廃材を二次破砕しつつ
溶解槽の下部に圧送する圧送工程と、溶剤により溶解さ
れてゲル状液化し層状に溜まった発泡スチロール廃材を
溶解槽から取り出す取り出し工程とから成る発泡スチロ
ール処理方法において、圧送された発泡スチロール廃材
を、溶解槽の内部に同心状に設けた分離筒内で該溶解槽
の下方に充填した下層の洗浄液中に押出し、押出された
発泡スチロール廃材を分離筒内で浮力によって浮上させ
つつ、圧送筒に外嵌して軸支された旋回筒の外周で洗浄
液に没する位置に配設された撹拌翼で撹拌するととも
に、前記分離筒の内周で該撹拌翼の先端部から始端に向
けて上方に傾斜し、その大部分を覆うように設けた傾斜
板に浮力と撹拌力を介して案内し、次いで、溶解槽の中
央方向の旋回筒の外周面近傍から前記洗浄液より比重の
軽い上層の溶剤中に浮上させ、前記旋回筒の上方の溶剤
中に没する位置に配設された撹拌翼で撹拌溶解する撹拌
工程により洗浄溶解処理して成る。

【０００８】また、本発明の発泡スチロール処理装置
は、投入された発泡スチロール廃材を内部に設けた回転
破砕刃により破砕するホッパーと、該ホッパーの下流に
設け、発泡スチロール廃材を二次破砕しつつ溶解槽の下
部へ圧送するスクリューフィーダーと、該スクリューフ
ィーダーの先端口が下部に挿入され、比重の違う溶剤と
洗浄液とを充填し、上層を溶剤、下層を洗浄液とした溶
解槽と、該溶解槽の下層洗浄液面の外壁位置に設けた、
溶剤により溶解されたゲル状液化発泡スチロール廃材を
取り出す取出し口と、から成る発泡スチロール処理装置
において、前記スクリューフィーダーに外嵌し、外周面
の溶剤中に没する位置と、洗浄液中に没する位置との上
下に、それぞれ多数の撹拌翼を周設した旋回筒と、該旋
回筒を回転する回転手段と前記溶解槽の内部に同心状に
設けた分離筒と、該分離筒の内周で前記両撹拌翼間に設
けた傾斜板と、から成る撹拌手段を配設してなる。

【０００９】

【実施例】以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の
技術的範囲は下記の実施例に限定されるものではない。

【００１０】図１に示すように、本発明の発泡スチロー
ル処理装置は、鉄骨により組み立てられた基台１上に固
定された溶解槽Ｂと、該溶解槽Ｂに発泡スチロール廃材
を供給する発泡スチロール供給装置Ａとからなる。

【００１１】図２に示すように、前記発泡スチロール供
給装置Ａは、基台１に供給筒２が傾斜配置され、該供給
筒２の傾斜上端に上部ホッパー７を介して垂直下方に連
結された圧送筒１１とからなり、該圧送筒１１は前記溶
解槽Ｂ中に挿入されており、また、該供給筒２の内部に
は、スクレーパー８により下方から上方に向かって矢印
の如く搬送するスクレーパーコンベヤ３を設け、供給筒
２の傾斜下端には下部ホッパー４を連結してなる。

【００１２】該下部ホッパー４は、上方に発泡スチロー
ル廃材を投入する投入口２８を有し、内部には発泡スチ
ロール廃材を破砕するための多数の破砕刃５を半径方向
に突出させた軸６同士が向き合って配置され、前記両軸
６の回転方向を内向き回転として破砕刃５同士が噛み合
うようにして発泡スチロール廃材を小片に破砕する。

【００１３】また、上部ホッパー７は、スクレーパーコ
ンベヤ３の傾斜上端に連続した傾斜面９を有し、該傾斜
面９は圧送筒１１と供給筒２とを連絡するシュートの形
で連結されている。

【００１４】そして、上部ホッパー７の出口には、垂直
下方に配置された圧送筒１１の上端開口部が連結され、
圧送筒１１の上部には圧送用モーター１２が配置され、
該圧送用モーター１２の駆動軸の回転により、螺旋刃１
３を有するスクリューフィーダー１０が前記圧送筒１１
の内部に設けられていて、上方から下方へ強制的に発泡
スチロール廃材を圧送するようになっている。なお、圧
送筒１１の出口下端は前記溶解槽Ｂの底部付近に位置す
る。

【００１５】さらに、圧送筒１１の外側には同心円状に
旋回筒１４が適宜手段により基台１に固定された撹拌用
モーター１５の駆動軸によりギヤ１６を介して回転可能
に設けられ、該旋回筒１４の外周面には、後述の溶剤Ｃ
中に没する位置と、洗浄液Ｄ中に没する位置との上下２
個所において、それぞれ上方に傾斜した多数の撹拌翼１
７を配設し、撹拌翼１７が旋回筒１４と共に前記圧送筒
１１の周りを回転するようになっている。

【００１６】一方、溶解槽Ｂは、上部を蓋体２０で覆わ
れた大型円筒状容器であり、蓋体２０の中央には前記圧
送筒１１及び旋回筒１４が上下に貫通して前記円筒状容
器内部に挿入されており、蓋体２０の側面には発泡スチ
ロール廃材を溶解させる溶剤を充填する溶剤投入口２１
が設けられており、また前記円筒状容器の側壁部には溶
剤により溶解された発泡スチロール廃材を取出しバルブ
２２を介して取り出すための取出し口２４の取出管２３
が設けられ、さらに前記円筒状容器の底部には排出バル
ブ２５を介して不純物を排出するための排出口２７の排
出管２６が設けられている。

【００１７】また、溶解槽Ｂ内部には溶解槽Ｂと同心円
状に上下開放の分離筒１８が側壁から離されて設けられ
ており、該分離筒１８は上方に傾斜した円錐環状の傾斜
板１９を上下の攪拌翼１７の間に位置するように固定し
て前記旋回筒１４の攪拌翼１７と協動して攪拌効果を向
上させるようになっている。

【００１８】そして、前記溶解槽Ｂには、比重の違う溶
剤Ｃと洗浄液Ｄとが充填されており、上層が発泡スチロ
ール廃材を溶解させる溶剤Ｃで、下層が発泡スチロール
廃材に付着した不純物を洗浄する洗浄液Ｄとなってお
り、溶剤Ｃにより溶解したゲル状液化発泡スチロール廃
材Ｅは前記溶剤Ｃと洗浄液Ｄとの中間に層状に溜まるよ
うになっている。

【００１９】発泡スチロール廃材を溶解させる溶剤Ｃ
は、少なくとも常温で発泡ポリスチレンを溶解できるも
のであれば、何れでも良く、この溶剤としては、芳香
族、ケトン類、エステル類、エーテル類、不飽和脂肪族
炭化水素、環状脂肪族炭化水素等の各種化合物からなる
溶剤を例示できるが、これらには限定されない。

【００２０】具体的には、芳香族からなる溶剤として
は、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチル
ベンゼン、テトラリン、その他石油原料由来の芳香族留
分を例示でき、ケトン類からなる溶剤としては、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを例
示でき、エステル類からなる溶剤としては、酢酸エチ
ル、酢酸メチルを例示でき、エーテル類からなる溶剤と
しては、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン
等を例示でき、不飽和脂肪族炭化水素からなる溶剤とし
ては、ペンテン、ヘキセン等の不飽和炭化水素化合物、
ジペンテン等の天然に得られる針葉油、デカリン、リモ
ネンを例示できる。

【００２１】一方、発泡スチロール廃材に付着した不純
物を洗浄する洗浄液Ｄは、上記溶剤Ｃより比重が大き
く、かつ発泡スチロール廃材に付着した不純物を洗い流
すものであれば何れも使用できるが、通常は簡単に入手
可能な水を使用する。

【００２２】次に、上記実施例の動作について述べる
と、使用済みの発泡スチロール廃材を下部ホッパー４の
投入口２８から投入すると、発泡スチロール廃材は下部
ホッパー４の内部に設けられた軸６同士の内向き回転に
より破砕刃５同士が噛み合い、発泡スチロール廃材は破
砕刃５により小片に破砕される。

【００２３】小片に破砕された発泡スチロール廃材は、
下部ホッパー４から供給筒２の下端部に溜まり、供給筒
２内部を循環回転しているスクレーパーコンベヤ３のス
クレーパー８に掻き揚げられて斜め上方の上部ホッパー
７へ搬送される。

【００２４】スクレーパー８により供給筒２を搬送され
てきた発泡スチロール廃材は、上部ホッパー７の傾斜面
９を滑り落ち、圧送筒１１の上部開口部からスクリュー
フィーダー１０へ送られ、圧送用モーター１２により回
転するスクリューフィーダー１０の螺旋刃１３により破
砕されつつ下方の溶解槽Ｂへ圧送される。

【００２５】圧送筒１１の下端は溶解槽Ｂの底部付近の
位置に開口しているので、圧送筒１１から押出された発
泡スチロール廃材が浮力により上方に浮上するが、下層
の洗浄液Ｄ中で旋回筒１４の攪拌翼１７の回転により発
泡スチロール廃材が攪拌され、この攪拌の際に発泡スチ
ロール廃材に付着した不純物が洗い落とされ、発泡スチ
ロール廃材が洗浄される。

【００２６】この洗浄された発泡スチロール廃材は、浮
力により更に上方に浮上し、溶剤Ｃ中の分離筒１８の傾
斜板１９により案内されて溶解槽Ｂの中央方向に導かれ
つつ溶剤Ｃにより溶解される。

【００２７】このとき、完全に溶解しない発泡スチロー
ル廃材は、さらに上方に設けた攪拌翼１７により攪拌さ
れて溶剤Ｃ中でさらにかき混ぜられ、より溶解が促進さ
れるようになる。

【００２８】溶解した発泡スチロール廃材は、ゲル状液
化し、比重の関係で、上層の溶剤Ｃと下層の洗浄液Ｄと
の中間部に層状に溜まる。

【００２９】この溜まったゲル状液化発泡スチロール廃
材Ｅは、所定量溜まったところで取出しバルブ２２を開
放して取出し口２４から取出して適宜の回収容器２９に
回収する。

【００３０】一方、溶解槽Ｂの底部に堆積した不純物
は、排出バルブ２５を開放することにより不純物排出口
２７から排出することができる。

【００３１】上記実施例は、大型の発泡スチロール処理
装置であって、作業者が床面から発泡スチロール廃材を
簡単に投入できるように発泡スチロール供給装置Ａの投
入口２８を低く配置したが、これに限らない。

【００３２】また、別の実施例として、小型の発泡スチ
ロール処理装置の場合は、下部ホッパー４と圧送筒１１
とを直接上下に連結し、例えば下部ホッパー４の下方に
直接圧送筒１１を設けて供給筒２及び上部ホッパー７を
省略し、下部ホッパー４に投入された発泡スチロール廃
材を破砕刃５により破砕し、破砕された発泡スチロール
廃材を直接圧送筒１１へ落下させ、スクリューフィーダ
ー１０の螺旋刃１３で破砕しつつ溶解槽Ｂへ圧送する、
発泡スチロール供給装置とすることも可能である。

【００３３】

【発明の効果】本発明によれば、発泡スチロール廃材を
溶剤により溶解処理するに当り、破砕工程と圧送工程に
加えて、撹拌工程を導入し、しかも、洗浄液中での撹拌
を先行し、次いで溶剤中での攪拌を続行するものである
から、きれいな状態で短時間に発泡スチロール廃材を溶
解できるから、最終的な該廃材の回収、再生処理能力を
増大させることができる。

【００３４】また、本発明の発泡スチロール処理装置
は、発泡スチロール廃材を連続的に処理することが出
来、ゲル状液化された発泡スチロール廃材を簡単に取出
すことができるので、大量に廃棄される大型小売店舗等
において、特に取り扱いが便利である。

【図面の簡単な説明】

【図１】発泡スチロール処理装置の平面図である。

【図２】発泡スチロール処理装置の概念図である。

【符号の説明】

１ 基台 ２ 供給筒 ３ スクレーパーコンベヤ ４ 下部ホッパー ５ 破砕刃 ６ 軸 ７ 上部ホッパー ８ スクレーパー ９ 傾斜面 １０ スクリューフィーダー １１ 圧送筒 １２ 圧送用モーター １３ 螺旋刃 １４ 旋回筒 １５ 攪拌用モーター １６ ギヤ １７ 攪拌翼 １８ 分離筒 １９ 傾斜板 ２０ 蓋体 ２１ 溶剤投入口 ２２ 取出しバルブ ２３ 取出管 ２４ 取出し口 ２５ 排出バルブ ２６ 排出管 ２７ 不純物排出口 ２８ 投入口 ２９ 回収容器

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 発泡スチロール廃材を一次破砕する破砕
   工程と、破砕された発泡スチロール廃材を二次破砕しつ
   つ溶解槽の下部に圧送する圧送工程と、溶剤により溶解
   されてゲル状液化し層状に溜まった発泡スチロール廃材
   を溶解槽から取り出す取り出し工程とから成る発泡スチ
   ロール処理方法において、圧送された発泡スチロール廃
   材を、溶解槽の内部に同心状に設けた分離筒内で該溶解
   槽の下方に充填した下層の洗浄液中に押出し、押出され
   た発泡スチロール廃材を分離筒内で浮力によって浮上さ
   せつつ、圧送筒に外嵌して軸支された旋回筒の外周で洗
   浄液に没する位置に配設された撹拌翼で撹拌するととも
   に、前記分離筒の内周で該撹拌翼の先端部から始端に向
   けて上方に傾斜し、その大部分を覆うように設けた傾斜
   板に浮力と撹拌力を介して案内し、次いで、溶解槽の中
   央方向の旋回筒の外周面近傍から前記洗浄液より比重の
   軽い上層の溶剤中に浮上させ、前記旋回筒の上方の溶剤
   中に没する位置に配設された撹拌翼で撹拌溶解する撹拌
   工程により洗浄溶解処理して成る発泡スチロール処理方
   法。
2. 【請求項２】 投入された発泡スチロール廃材を内部に
   設けた回転破砕刃により破砕するホッパーと、該ホッパ
   ーの下流に設け、発泡スチロール廃材を二次破砕しつつ
   溶解槽の下部へ圧送するスクリューフィーダーと、該ス
   クリューフィーダーの先端口が下部に挿入され、比重の
   違う溶剤と洗浄液とを充填し、上層を溶剤、下層を洗浄
   液とした溶解槽と、該溶解槽の下層洗浄液面の外壁位置
   に設けた、溶剤により溶解されたゲル状液化発泡スチロ
   ール廃材を取り出す取出し口と、から成る発泡スチロー
   ル処理装置において、前記スクリューフィーダーに外嵌
   し、外周面の溶剤中に没する位置と、洗浄液中に没する
   位置との上下に、それぞれ多数の撹拌翼を周設した旋回
   筒と、該旋回筒を回転する回転手段と、前記溶解槽の内
   部に同心状に設けた分離筒と、該分離筒の内周で前記両
   撹拌翼間に設けた傾斜板と、から成る撹拌手段を配設し
   て成る発泡スチロール処理装置。