JP3251755B2 - アルミナ前駆体溶液、当該溶液を用いたアルミナ薄膜の形成方法及びアルミナ薄膜形成体 - Google Patents

アルミナ前駆体溶液、当該溶液を用いたアルミナ薄膜の形成方法及びアルミナ薄膜形成体

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JP3251755B2 JP00715894A JP715894A JP3251755B2 JP 3251755 B2 JP3251755 B2 JP 3251755B2 JP 00715894 A JP00715894 A JP 00715894A JP 715894 A JP715894 A JP 715894A JP 3251755 B2 JP3251755 B2 JP 3251755B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミナ前駆体溶液、こ
れを用いたアルミナ薄膜の形成方法及びアルミナ薄膜形
成体に関し、詳細には、基材の選択自由度が高く、膜の
緻密性、膜表面の平滑性に優れ、かつ基材に対する密着
強度が大きく、経時的に劣化が少ないアルミナ質の薄膜
を効率良く形成し得るアルミナ前駆体溶液、これを用い
たアルミナ薄膜の形成方法及びアルミナ薄膜形成体に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、金属アルコキシドを原料に用いる
種々の研究が活発になされている。これは、金属アルコ
キシドが再結晶や蒸留によって容易に精製できるため、
純粋な出発原料とすることができ、また、多成分系の場
合、出発溶液中において分子レベルでの混合均質化が達
成できる等、幾つかの特徴を有するからである。更にこ
のような高純度、高均質性とともに、低温で、緻密な目
的生成物が得られるといった特徴も有するため、高温超
伝導体や、触媒担体用セラミックス、多成分系ガラス
等、様々な分野で応用研究が行われている。一方、ディ
ップコーティングによる薄膜の製膜の分野においても例
外ではなく、金属アルコキシドを原料に用いる検討がさ
れている。
【0003】ところで、ディップコーティングによるセ
ラミックスの製膜技術は、スパッタリングやCVD、あ
るいは真空蒸着法などの物理的な製膜方法に対して、ス
ピンコーティング法などと同様、化学的な製膜法に属す
るものである。これらの幾つかの化学的製膜法の中で、
ディップコーティング法はコーティング操作が比較的簡
便であり、表面が均一で密着性の良い薄膜が得られ、大
型かつ複雑な形状へのコーティングができ、比較的安価
に製膜できる等の利点を有する。従って、これらの利点
を活かして、酸化防止膜や切削工具、半導体・磁性体の
保護膜や電極、表面デバイス、磁気ヘッド、赤外線セン
サー、ジョセフソン素子等への応用、あるいは応用研究
が最近、積極的になされている。
【0004】このディップコーティングに用いる溶液の
調製法は、一般に、金属アルコキシドを原料とした場
合、大量水中にアルコキシドを添加し、加水分解させた
後、酸によって分散させてゾルを得る方法と、金属アル
コキシドのアルコール溶液から出発し、溶液中での化合
物の加水分解、重合によってアルミナ前駆体溶液を調製
する方法に大別される。
【0005】前者の方法では、酸の種類、添加量によっ
て得られるゾルの性状が異なり、その条件の把握が重要
となる。また、例えば、アルミナゾルを調製する場合
は、加水分解させる水温の制御、pHの制御、生成するア
ルコールや酸の除去等が必要である。これまでに、製膜
を目的としたアルミナ系のディップコーティング溶液
は、この方法によって得られたゾルを水とアルコールで
希釈したものが一般に用いられている。
【0006】しかしながら、このようなディップコーテ
ィング溶液によって得られる膜中には、製法上酸が残存
する。酸には塩素イオンや硝酸イオン等の陰イオンが含
まれる為、紫外線の長期間の暴露による膜の劣化の可能
性があり、膜の安定性に問題があった。
【0007】一方、後者のアルコール系の方法において
は、加水分解後においても安定な溶液を調製し、ディッ
プコーティングにより得られる膜の均一性を得るため
に、ゾル調製時に、アルコキシドの加水分解を抑制する
目的で、グリコール類等の安定化剤を添加する方法が一
般に用いられる。このように調製したゾルを製膜に用い
る場合、基材上に生成させる膜の厚さを大きくするため
には、溶液の粘性を高くすることが考えられている。し
かしながら溶液の粘性については、一般には、製膜条件
を考慮した場合、安定な溶液を得るための条件範囲が狭
く、このため1回の製膜で得られる膜厚には限界があっ
た。このため、膜厚を大きくするには、ディップコーテ
ィングを繰り返さなければならないという問題があっ
た。
【0008】また、従来のディップコーティングの基材
としては、ガラスに限定されており、ステンレス、樹脂
等の他の基材への適用は困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、基材を選ばず、緻密性、膜表面の平滑性に優れ、か
つ基材に対する密着強度が大きく、経時的に劣化が少な
いアルミナ薄膜を効率良く形成し得るアルミナ前駆体溶
液及びこれを用いたアルミナ薄膜の形成方法を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】斯かる実情に鑑み本発明
者らは鋭意研究を行った結果、アルミニウムアルコキシ
ドと水とβ−ケト酸化合物又はグリコールエーテル化合
物との反応物に、増粘剤及びカップリング剤を添加した
組成物を用いれば、上記の種々の課題を解決できること
を見出し、本発明を完成した。
【0011】すなわち本発明は、(A)アルミニウムア
ルコキシドと水とβ−ケト酸化合物又はグリコールエー
テル化合物との反応物、(B)増粘剤、並びに(C)カ
ップリング剤を含有するアルミナ前駆体溶液を提供する
ものである。また、本発明は当該アルミナ前駆体溶液を
用いて基材上にディップコーティングすることを特徴と
するアルミナ薄膜の形成方法及びこれにより得られるア
ルミナ薄膜形成体を提供するものである。
【0012】本発明のアルミナ前駆体溶液に用いられる
反応物(A)を製造するには、まず、(1)アルミニウ
ムアルコキシド、(2)β−ケト酸化合物又はグリコー
ルエーテル化合物及び必要により(3)アルコールの混
合物を調製する。
【0013】ここで用いられるアルミニウムアルコキシ
ドとしては、例えばアルミニウムエトキシド、アルミニ
ウムプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、ア
ルミニウムブトキシド、アルミニウムイソブトキシド、
アルミニウムセカンダリーブトキシド等の炭素数1〜6
のアルキル基の各種のアルミニウムアルコキシドが挙げ
られる。
【0014】また、β−ケト酸化合物としては、例えば
総炭素数5〜16のアルカノイル酢酸エステルが挙げら
れるが、具体的にはアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチ
ル、アセト酢酸ブチル等のアセト酢酸エステルが挙げら
れる。グリコールエーテル化合物としては、例えば炭素
数2〜6のグリコールのモノエーテル、ジエーテル又は
モノエーテルアルカノエートが挙げられ、具体的には2
−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチル
エーテル)や2−エトキシエタノール(エチレングリコ
ールモノエチルエーテル)、2−イソプロポキシエタノ
ール(エチレングリコールモノイソプロピルエーテ
ル)、1−アセトキシ−2−メトキシエタノール(エチ
レングリコールモノメチルエーテルアセテート)、1−
アセトキシ−2−ブトキシエタノール(エチレングリコ
ールモノブチルエーテルアセテート)等が挙げられる。
β−ケト酸化合物又はグリコールエーテル化合物は、加
水分解反応中のアルミニウムアルコキシドのゲル化を抑
制するために、アルミニウムアルコキシドの濃度に対し
て等モル倍以上、特に2〜10モル倍添加することが好
ましい。
【0015】なお、アルコールは上述の構成からなる混
合液体の溶解を目的に配合するものであって、例えばグ
リコールエーテル化合物として、2−メトキシエタノー
ル等を用いる場合には、このもの自体に溶解作用が有る
ので、他に目的がない限り、アルコールの添加は必要で
ない。このような場合を除いて、混合液体の溶解には、
アルコールを添加するが、このとき、炭素数が4以下の
アルコールを使用することが特に好ましい。これは、炭
素数の増加に伴い、沸点が上昇するのを避けるためであ
る。即ち、沸点の上昇に伴い、コーティング後の基材の
乾燥、熱処理工程では、アルコールの蒸発に伴う薄膜中
へのクラックの発生等が懸念されるためである。
【0016】次に上記の混合溶液に水を加えて反応させ
る。水は加水分解のために添加するものであり、溶液の
安定性を保つために、アルミニウムアルコキシドに対し
て1/2モル倍〜3モル倍添加することが好ましい。加
水分解反応は、十分な反応を促すために、少なくとも3
0分以上反応させることが好ましい。更にアルミニウム
アルコキシドとβ−ケト酸化合物あるいはグリコールエ
ーテル化合物との反応促進を目的になされる加温反応
は、75℃以上で、60分以上還流下にて加温すること
が好ましい。
【0017】これら一連の操作における反応は次の様な
ものである。まず、アルミニウムアルコキシドのアルコ
キシル基と水が反応する。これにβ−ケト酸化合物又は
グリコールエーテル化合物が反応して、アルコキシド前
駆体になる。このものは、大気中の水分による加水分解
が起こり難く、長期間安定なディップコーティング溶液
となる。
【0018】増粘剤(B)は、アルミナ薄膜の強度の向
上を主目的として添加するものである。薄膜の強度の向
上はアルコキシド前駆体間の絡み合い、即ちゲル化した
際の網目構造のような絡み合い構造を呈することにより
起こると考えられる。また、このような構造を呈するた
めに、コーティング後の基材の熱処理において、しばし
ば発生する溶媒の蒸発によるクラックも抑制することが
でき、その結果、薄膜強度が維持される。また、増粘剤
(B)は1回のコーティングにおける膜厚の厚さ向上に
も効果的である。即ち、1回の製膜で得られる膜厚には
限界がある。このため、膜厚を大きくするためには、一
般には、ディップコーティングを繰り返さなければなら
ない。ここで、膜成長には、幾つかの要素が関連する
が、影響度の大きなものとして、溶液の粘性が挙げられ
る。即ち、溶液の粘性が上がれば、基材上に生成させる
膜の厚さを大きくすることができる。増粘剤は、溶液の
粘性を上げる効果があり、このため、1回のコーティン
グにおける膜厚の向上がはかれるのである。このような
増粘剤としては各種のものが使用できるが、例えば、ヒ
ドロキシプロピルセルロース等のセルロース化合物、あ
るいはポリエチレングリコール等が好ましいものとして
挙げられる。なお、これらの増粘剤は反応物(A)に対
して0.1〜1.0重量%濃度の範囲で添加することが
好ましい。増粘剤を1重量%を超えて添加した場合に
は、ゲル化する可能性があるので好ましくない。
【0019】カップリング剤(C)の添加目的は、製膜
された膜の強度、基材との密着性の向上にある。カップ
リング剤(C)の添加による膜の強度の向上は、カップ
リング剤(C)に含まれるケイ素又はチタンが、膜中の
アルミニウム前駆体と反応することにより、部分的にA
l−O−SiやAl−O−Ti結合の領域ができるため
に、膜の強度を高めることができると考えられる。ま
た、カップリング剤(C)の添加は、製膜された薄膜の
撥水性を高めることにも効果的である。ここで添加する
カップリング剤(C)としては、種々のものが使用でき
るが、特にシラン系カップリング剤及びチタネート系カ
ップリング剤は、膜の強度、膜と基材との密着性の向上
に効果的である。ここでシランカップリング剤として
は、ビニル系、エポキシ系、アミノ系が使用できる。ま
た、チタネート系カップリング剤としては、アミン系、
カルボン酸系、アクリル系、フェニル系等が使用でき
る。具体的には、シラン系カップリング剤として、ビニ
ルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプ
ロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。チタネ
ート系カップリング剤として、イソプロピルトリ(N−
アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピ
ルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ
オクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイ
ルジアクリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェ
ニルチタネート等が挙げられる。これらカップリング剤
(C)の添加量は、反応物(A)に対して0.1〜1.
0重量%とすることが好ましい。この添加量が1重量%
を超えると、ゲル化する可能性があり好ましくない。
【0020】以上のように、反応物(A)(アルコキシ
ド前駆体溶液)に、増粘剤及びカップリング剤を添加し
た溶液(アルミナ前駆体溶液)をディップコーティング
剤として用い、製膜することにより、膜の強度に優れ、
かつ膜厚の大きなアルミナ薄膜を得ることができる。特
に、増粘剤及びカップリング剤の配合は、製膜される薄
膜の基板への密着性を高めることができ、従来は、困難
とされていたステンレスや樹脂へのディップコーティン
グが可能となった。特に、ポリエチレンやポリエチレン
テレフタレート樹脂へのディップコーティングは、従来
からほとんど不可能とされていたが、本発明によりこの
ような樹脂に対しても、強固なアルミナ薄膜を製膜する
ことができるようになった。
【0021】本発明組成物を用いたディップコーティン
グは常法に従えばよく、例えば基材を本発明組成物に浸
漬した後、0.5〜2時間熱処理すればよい。加熱温度
は基材により異なり、金属の場合200〜600℃、ガ
ラスの場合200〜600℃、樹脂の場合80〜130
℃が好ましい。所望の膜厚を得るために、必要により上
記操作は繰り返してもよい。
【0022】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお以下「%」は重量%を示す。
【0023】実施例1 0.1mol /lのアルミニウムイソプロポキシド(純
度:99.9%)を1lのイソプロパノール、水(0.
1mol /l)及びアセト酢酸エチル(0.3mol/l)
に分散し、80℃で2時間還流しながら溶解した。これ
にヒドロキシプロピルセルロースとイソプロピルトリ
(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートをそれ
ぞれ0.2%添加し、1時間反応させてアルミナ前駆体
溶液とした。
【0024】この溶液にステンレス(SUS−30
4)、耐熱ガラス、樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、アクリル)にディップコートした。熱
処理温度は、ステンレス及び耐熱ガラスで500℃、樹
脂では100〜120℃とした。熱処理の時間は1時間
とし、1〜5回までコーティングした。
【0025】製膜後の膜の状態を観察した結果、いずれ
の基材に対してもクラック等は全く見られず、健全であ
ることが確認された。
【0026】また、1回のコーティングにおけるアルミ
ナ膜の厚さを測定したところ、ステンレス、及び耐熱ガ
ラスでは約0.1μm で、コーティングの回数に比例し
て膜厚は増加し、5回で約0.5μm となった。一方、
樹脂では、いずれも1回で0.05μm となり、5回の
コーティングで約0.3μm のアルミナ膜を形成した。
それぞれの膜の強度は、耐熱ガラス基板の場合、ビッカ
ース硬度で61.78Hvであった。
【0027】続いて得られたアルミナ膜を500Wのキ
セノンランプで照射し、膜の劣化時間を調べた。このと
き、実験条件は、温度25℃、キセノンランプの照射距
離15cm、光強度1.9mW/cm2 とし、キセノンランプ
照射光のうち、300nm以下の波長の光はパイレックス
ガラスによりカットし、光エネルギー分布がほぼ太陽光
に近似できるようにした。上記の条件により、3か月の
連続照射実験を行った結果、いずれの膜にもクラック等
は全く発生しておらず健全性を示した。
【0028】比較例1 0.1mol /lのアルミニウムイソプロポキシド(純
度:99.9%)を1lのイソプロパノール、水(0.
1mol /l)及び、アセト酢酸エチル(0.3mol /
l)に分散し、80℃で2時間還流しながら溶解した。
これを更に1時間反応させてアルコキシド前駆体溶液と
した。
【0029】この溶液にステンレス(SUS−30
4)、耐熱ガラス、樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、アクリル)にディップコートした。熱
処理温度は、ステンレス及び耐熱ガラスで500℃、樹
脂では100〜120℃とした。熱処理の時間は1時間
とし、1〜5回までコーティングした。
【0030】製膜後の膜の状態を観察した結果、耐熱ガ
ラスには外観上、良好な薄膜が形成されていたが、ステ
ンレス及びいずれの樹脂に対してもアルミナ膜にクラッ
ク及び剥離が認められた。特に、樹脂では部分的に製膜
されているのみで、膜が形成されている部分においても
顕著なクラックが認められた。
【0031】また、1回のコーティングにおけるアルミ
ナ膜の厚さを測定したところ、ステンレス、及び耐熱ガ
ラスでは約0.05μm で、コーティングの回数に比例
して膜厚は増加し、5回で約0.3μm となった。一
方、樹脂では、膜が形成されている部分において測定し
た結果、いずれも1回で0.01〜0.03μm とな
り、5回のコーティングで約0.1〜0.2μm のアル
ミナ膜を形成した。膜の強度は、耐熱ガラス基板の場
合、ビッカース硬度は28.94Hvであり、実施例1の
3割強の硬度しか示さなかった。
【0032】続いて、実施例1と同様のキセノンランプ
による照射実験を行った。ここでは、比較的良好な膜が
形成された耐熱ガラスのみ試験に供した。その結果、1
か月の連続照射で、面積比が5割以上の膜が剥離し、か
つ残存した膜にもクラックが散見された。
【0033】実施例2 0.1mol /lのアルミニウムイソプロポキシド(純
度:99.9%)を1lの2−メトキシエタノール、及
び水(0.1mol /l)に分散し、80℃で2時間還流
しながら溶解した。これにヒドロキシプロピルセルロー
スとイソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチ
ル)チタネートとをそれぞれ0.2%添加し、1時間反
応させてアルミナ前駆体溶液とした。
【0034】この溶液にステンレス(SUS−30
4)、耐熱ガラス、樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、アクリル)にディップコートした。熱
処理温度は、ステンレス及び耐熱ガラスで500℃、樹
脂では100〜120℃とした。熱処理時間は1時間と
し、1〜5回までコーティングした。
【0035】製膜後の膜の状態を観察した結果、いずれ
の基材に対してもクラック等は全く見られず、健全であ
ることが確認された。
【0036】また、1回のコーティングにおけるアルミ
ナ膜の厚さを測定したところ、ステンレス、及び耐熱ガ
ラスでは約0.2μm で、コーティングの回数に比例し
て膜厚は増加し、5回で約1.0μm となった。一方、
樹脂では、いずれも1回で0.1μm となり、5回のコ
ーティングで約0.6μm のアルミナ膜を形成した。そ
れぞれの膜の強度は、耐熱ガラス基板の場合、ビッカー
ス硬度で80.64Hvであった。
【0037】続いて、実施例1と同様のキセノンランプ
による照射実験を行った。その結果、実施例1と同じよ
うに、3か月の連続照射によっても、いずれの膜も初期
状態をほぼ維持しており、健全であることが認められ
た。
【0038】比較例2 0.1mol /lのアルミニウムイソプロポキシド(純
度:99.9%)を1lの2−メトキシエタノール、及
び水(0.1mol /l)に分散し、80℃で2時間還流
しながら溶解した。更に、1時間反応させてアルコキシ
ド前駆体溶液とした。
【0039】この溶液にステンレス(SUS−30
4)、耐熱ガラス、樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、アクリル)にディップコートした。熱
処理温度は、ステンレス及び耐熱ガラスで500℃、樹
脂では100〜120℃とした。熱処理の時間は1時間
とし、1〜5回までコーティングした。
【0040】製膜後の膜の状態を観察した結果、耐熱ガ
ラスへの良好な製膜が確認されたが、ステンレス及びい
ずれの樹脂においてもクラックや剥離が認められた。特
に、樹脂では部分的に製膜されているのみで、膜が形成
されている部分においても顕著なクラックが認められ
た。
【0041】また、1回のコーティングにおけるアルミ
ナ膜の厚さを測定したところ、ステンレス、及び耐熱ガ
ラスでは約0.1μm で、コーティングの回数に比例し
て膜厚は増加し、5回で約0.5μm となった。一方、
樹脂では、膜が形成されている部分において測定した結
果、いずれも1回で0.05μm 程度となり、5回のコ
ーティングで約0.2から0.3μm のアルミナ膜を形
成した。膜の強度は、耐熱ガラス基板の場合、ビッカー
ス硬度で24.85Hvであり、実施例2に比較して、大
きく低下した。
【0042】続いて、実施例1と同様のキセノンランプ
による照射実験を行った。ここでは、比較的良好な膜が
形成された耐熱ガラスのみ試験に供した。その結果、1
か月の連続照射で、面積比で7割以上の膜が剥離し、か
つ残存した膜にもクラックが散見された。
【0043】実施例3 0.1mol /lのアルミニウムイソプロポキシド(純
度:99.9%)を1lのイソプロパノール、アセト酢
酸エチル(0.3mol /l)及び水(0.1mol/l)
に分散し、80℃で2時間還流しながら溶解した。これ
にポリエチレングリコールとγ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシランとをそれぞれ0.2%添加し、1時
間反応させてアルコキシド前駆体溶液とした。
【0044】この溶液にステンレス(SUS−30
4)、耐熱ガラス、樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、アクリル)にディップコートした。熱
処理温度は、ステンレス及び耐熱ガラスで500℃、樹
脂では100〜120℃とした。熱処理時間は1時間と
し、1〜5回までコーティングした。
【0045】製膜後の膜の状態を観察した結果、いずれ
の基材に対してもクラック等は全く見られず、健全であ
ることが確認された。
【0046】また、1回のコーティングにおけるアルミ
ナ膜の厚さを測定したところ、ステンレス、及び耐熱ガ
ラスでは約0.2μm で、コーティングの回数に比例し
て膜厚は増加し、5回で約1.0μm となった。一方、
樹脂では、いずれも1回で0.1μm となり、5回のコ
ーティングで約0.5μm のアルミナ膜を形成した。そ
れぞれの膜の強度は、耐熱ガラス基板の場合、ビッカー
ス硬度で70.04Hvであった。
【0047】続いて、実施例1と同様のキセノンランプ
による照射実験を行った。その結果、実施例1と同じよ
うに、3か月の連続照射によってもいずれの膜も初期状
態をほぼ維持しており、健全であることが認められた。
【0048】以上の結果からも明らかであるが、本発明
のアルミナ前駆体溶液を用い、本発明の薄膜形成方法に
よれば良好な性状の製膜が可能であることがわかる。
【0049】
【発明の効果】本発明のアルミナ前駆体溶液を用いれ
ば、あらゆる基材に対しても密着強度が高く、緻密で表
面が平滑で、かつ経時的に安定なアルミナ薄膜を効率良
く形成させることができる。
フロントページの続き (72)発明者 永田 憲史 千葉県佐倉市大作2丁目4番2号 小野 田セメント株式会社中央研究所内 (72)発明者 井口 真仁 千葉県佐倉市大作2丁目4番2号 小野 田セメント株式会社中央研究所内 (72)発明者 渡辺 雅幸 千葉県佐倉市大作2丁目4番2号 小野 田セメント株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 平1−275763(JP,A) 特開 平5−70122(JP,A) 特開 平5−247657(JP,A) 特開 平4−213602(JP,A) 特開 平1−298017(JP,A) 特開 平2−254176(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 18/12

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)アルミニウムアルコキシドと水と
    β−ケト酸化合物又はグリコールエーテル化合物との反
    応物、(B)増粘剤、並びに(C)カップリング剤を含
    有するアルミナ前駆体溶液。
  2. 【請求項2】 (C)カップリング剤が、シラン系カッ
    プリング剤又はチタネート系カップリング剤である請求
    項1記載のアルミナ前駆体溶液。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のアルミナ前駆体溶
    液を用いて基材上にディップコーティングすることを特
    徴とするアルミナ薄膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 基材が、金属、ガラス又は樹脂である請
    求項3記載のアルミナ薄膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載のアルミナ前駆体溶
    液を用いて基材上にディップコーティングすることによ
    り得られたアルミナ薄膜形成体。
  6. 【請求項6】 基材が、金属、ガラス又は樹脂である請
    求項5記載のアルミナ薄膜形成体。
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