JP3235480U - 宝飾体 - Google Patents

Abstract

【課題】素材と光の相互作用を最大限に利用した装飾効果の高い宝飾体を提供する。【解決手段】宝飾体は、多角形状の硬質透明体１の二つ以上の辺に有色素材２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄを張り合わせ、ファセットカットを施したものであり、有色素材の各色彩を中央の硬質透明体１の内部で反射させた像２ａ′、２ｂ′、２ｃ′、２ｄ′を視認させる装飾的効果を意図的に引き起こす。【選択図】図１

Description

考案の詳細な説明

本考案は、素材の性質と光の相互作用を最大限に利用することにより、新たな美観を有する宝飾体に関する。

宝石と名の付く宝飾体はその素材が、天然、合成、人造、模造、また、透明、半透明、不透明、であるにかかわらず入射や反射という光との相互作用が見られる。それを利用し素材の美しさを最大限に引き出すように、素材の屈折率などの要素も考慮しながらカットと呼ばれる研磨加工を始めとする、各種加工を施すのが一般的である。それらの加工技術は宝飾体において重要な価値の要素のひとつである。

全ての透明な素材は光の分散性という白色光を虹色に分けるプリズムの性質を持ち、その素材が宝飾体になり得る硬度を有する場合、カット、特にファセットカットを施すことが多い。それにより、光が当たると一部のファセットからファイアと呼ばれる虹色に輝く現象を見ることが出来る。さらに、素材、光源、観察者の動きにより、素材の表面と内部反射の両方からの閃光が瞬いて見える現象も併せて期待される。宝飾素材として一般的に美しいものとされるこれらの現象は、透明度、および、屈折率の高い素材であるほど明瞭に見られるが、顕著に光を分散させるほどの透明度や屈折率を有する天然の宝石は多くはない。

そこで、希少な宝石を模倣すること、また、装飾的表現を楽しむことを目的とする、各種素材の加工は古くから存在する。例として、複数の異なる素材を組み合わせる張合せ、素材の底に金属薄膜を融着させるフォイルバック、などがある。

従来の各種加工を施された宝飾体は主に正面から観察されることを想定しており、特に加工の目的が希少な宝石を模倣することの場合、観察者の見る角度や光の屈折により加工の正体が露わになるのは望ましくないとされてきた。

装飾表現のひとつとして張合せ加工を施された装飾体においても、その多くは素材を組み合わせることで絵やモザイクを形成するものや、単に素材の質感や色彩の組み合わせの妙を楽しむものに留まる。

また、非特許文献１に見られるファンタジーカットと呼ばれるような技法で宝飾体のキューレットの先端部に彫刻的なカットを施したり、宝飾体の母体となる素材のキューレットの先端部に異なる素材を張り合わせたりして、宝飾体を正面から観察したときに光の屈折によって宝飾体の内部に彫刻や張り合わせた素材の像を映し出す装飾表現も存在する。しかしながら、同様の効果を狙ってガードルと呼ばれる宝飾体の二辺以上の辺縁に、一色または複数の色彩を有する硬質有色体の張合せ加工を実地した例はない。

特になし。

Ａｌ Ｇｉｌｂｅｒｓｏｎ，"宝石のカッティングスタイル−定義"，ファンタジーカットとアーティスティックカッティング，［ｏｎｌｉｎｅ］，平成３０年８月９日，ＧＩＡ，［令和３年６月４日検索］，インターネット＜ＵＲＬ：ｈｔｔｐｓ：／／ｗｗｗ．ｇｉａ．ｅｄｕ／ＪＰ／ｇｉａ−ｎｅｗｓ−ｒｅｓｅａｒｃｈ−ｖａｌｕｅ−ｆａｃｔｏｒｓ−ｇｅｍ−ｃｕｔｔｉｎｇ−ｓｔｙｌｅｓ−ｄｅｆｉｎｉｔｉｏｎｓ＃ｉｔｅｍ−９＞。

既存のものとは趣の異なる張合わせ加工を採用しながらも、素材の質感や色彩の組み合わせの趣向のみに重点を置いた往来からある美観の提案に留まらず、有色素材と透明素材を組み合わせ、それに対する光の反射、屈折の作用も構想の重要な要素とする新たな装飾的美観を備えた宝飾体を提供しようとするものである。

以下、添付図面を参照して上記の目的を達成するための手段を詳細に説明する。

本考案の宝飾体は、多角形状の硬質透明体１と、硬質透明体１の複数の辺に配置された硬質有色体２とが、往来の張合せの技術で一体化しカットを施されることにより、一つの宝飾体として形成されていることを特徴とする。

本考案は、光と硬質透明体１との相互作用により、硬質透明体１の内部で光が鏡面の役割を果たすファセットに反射することで発生する各有色素材２の像、すなわち図１（Ｂ）で示されるように、硬質透明体１のファセットの奥には各有色素材２がないにも関わらずあたかもそこに各有色素材２があるように見える（図１（Ｂ）では各有色素材２′として示される）現象を利用するものである。

上述のような、素材の選別、組み合わせ、加工の手段を経て構成された宝飾体は、光と素材の相互作用を利用し、硬質透明体１の内部で各有色素材２が有する色彩の像が瞬く現象を発生させ、組み合わせ次第で様々な各有色素材２の色彩の像を硬質透明体１の内部に視認させる装飾的効果を意図的に発生させる。それにより、宝飾体に求められる一般的な美の概念に対して、往来のファイアなどとは性質の異なる、新たな装飾的美観という価値を生み出すことに成功した。

図上左（Ａ）本考案による宝飾体の物理的構造を表す正面図、同右（Ｂ）同宝飾体と光との相互作用による見え方のを表す正面図。（Ａ）と（Ｂ）は同一の物体である。 中央［図１］の（Ａ）、および、その他本宝飾体の側面図。

以下、添付図面を参照して本考案に係る宝飾体の形態について詳細に説明する。

本考案の宝飾体は、多角形状の硬質透明体１と、硬質透明体１の複数の辺に配置された各硬質有色体２とが、往来の張合せの技術で一体化しカットを施されることにより、一つの宝飾体として形成される。なお、添付図面で示される宝飾体の形状やカッティングは一例を示したものであり、これに限定されるものではない。

添付図面で示した宝飾体においては、硬質透明体１の四辺に色彩、または、素材の異なる各硬質有色体２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄを配置しているが、本考案はそれに限定されるものではなく、三辺以上を有する硬質透明体１のうちの二辺以上の辺縁に、一色または複数の色彩を有する各硬質有色体２を配置してあればよい。例として、硬質透明体１と硬質有色体２ａのみの組み合わせもあり得る。

本考案の硬質透明体１は、天然石、合成石、人造石、模造石、ガラス、クリスタルガラス、アクリル樹脂体などの無色、あるいは、淡色な有色の硬質透明体により形成され、各硬質有色体２においても、透明、不透明に関わらず有色であること以外は硬質透明体１と同じく、その形成において素材の由来は問わない。

さらに、本考案において有色という言葉は、色相、彩度、明度、その全てを有する有彩色のみならず、明度のみを有する無彩色、また、真珠に代表される実体色と干渉色の組み合わせで視覚できる色彩や偏光色および金や銀などを含む特色の全てを指す。すなわち、本考案において有色体でないものとは、内部亀裂および不純物を有さない無色透明体のみである。

１ 硬質透明体
２ 硬質有色体
２ａ 硬質有色体ａ
２ｂ 硬質有色体ｂ
２ｃ 硬質有色体ｃ
２ｄ 硬質有色体ｄ
２ａ′本宝飾体と光との相互作用によって視覚出来る硬質有色体ａの像
２ｂ′本宝飾体と光との相互作用によって視覚出来る硬質有色体ｂの像
２ｃ′本宝飾体と光との相互作用によって視覚出来る硬質有色体ｃの像
２ｄ′本宝飾体と光との相互作用によって視覚出来る硬質有色体ｄの像

Claims (2)

1. 三辺以上を有する硬質透明体のうちの二辺以上の辺縁に、一色または複数の色彩を有する硬質有色体が配置され、それらが往来の張合せの技術で一体化しカットを施されることにより、一つの宝飾体として形成されることを特徴とする宝飾体。
2. 光と各素材の相互作用により、本考案の宝飾体の中心に位置する硬質透明体の内部で各有色体が有する色彩の像が瞬く現象を引き起こし、組み合わせ次第で様々な各有色素材の色彩の像を硬質透明体の内部に視認させる装飾的効果を発生させることを特徴とする宝飾体。

Images