JP3220752B2 - Mts−1遺伝子により転移性癌の診断 - Google Patents

Mts−1遺伝子により転移性癌の診断

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Description

【発明の詳細な説明】 〔技術分野〕 本発明は、mts−1mRNAまたはmts−1遺伝子をコード
するmts−1タンパク質を検知することによる悪性の癌
を診断することに係る。本発明は、組換mts−1DNAおよ
びmts−1タンパク質に対している抗体を用いて数種の
タイプの腫瘍細胞を診断することを企図するものであ
り、これらの腫瘍細胞は例えば甲状腺、上皮、肺、肝
臓、腎臓、乳、リンパ、造血、膵臓、子宮内膜、卵巣、
子宮頸管、皮膚、結腸および類似の腫瘍細胞を包含して
いる。本発明は、インビボおよびインビトロ抗転移薬物
のスクリーニングのための有用なモデル系として利用す
るよう開発された高い転移活性および低い転移活性を有
する哺乳動物細胞系および腫瘍にも係るものである。
〔背景技術〕
悪性の癌腫瘍は新たな組織に移動して、二次的な腫瘍
を形成する細胞を出す;一方良性の腫瘍は二次的な腫瘍
を生成することはない。この二次的な腫瘍形成のプロセ
スは転移と呼ばれ、複雑な過程であり、そこでは腫瘍細
胞は一次の腫瘍部位から遠く離れた部位でコロニーを形
成する。この腫瘍の転移は癌患者の罹患および死亡の主
要原因である。癌研究における最大の課題の一つは転移
についての基礎的なこと、すなわち何が血液およびリン
パ系を通じて腫瘍細胞の拡散速度をコントロールしてい
るのかとか何が新しい部位で腫瘍細胞が定着し増殖する
ことを可能にしているのかを知ることである。
その転移のプロセスは連続的かつ選択的のようであ
り、以下の理由から一連のステップによってコントロー
ルされている:転移性腫瘍細胞は、(a)可動なもので
かつ原発腫瘍から広がることができ;(b)細胞マトリ
ックス中に浸潤することができ、かつ血管を介して浸透
することができ;(c)免疫学的マーカーを持ち、その
マーカーは血流(ここでは腫瘍細胞は免疫学的に活性な
細胞障害「T」リンパ球を避けなければならない)中の
通路で生存していることを可能とし;そして(d)その
腫瘍細胞自体が移植し、生存し生育するのに好都合な好
ましい場所を見つけ出す能力を持っていることである。
転移における基礎的な分子メカニズムを理解すること
は、癌の生物学的なことおよびその治療上のことを理解
する上でのキーとなることである。臨床上の病巣部で
は、悪性腫瘍は不均一な細胞集団を含んでおり、これら
は種々の生物学的特性を示し、例えば生育速度、細胞表
面構造、侵襲能力および各種の細胞障害性薬剤に対する
感受性の点で異なっている。研究者等は、転移に関して
独特であって、特異的な細胞が産生したマーカーを同定
することによって、腫瘍の不均一性を示す因子を利用
し、外科的な除去のみに頼らない治療法を開発してい
る。
現在のところ、転移性表現型が単一の遺伝子または複
数の遺伝子による制御下にあるか否か、またこれらの遺
伝子は独立しているのかあるいは相互に関連があるのか
は知られていない。しかしながら、多くの遺伝子が腫瘍
の形成および転移に相互に関連があるとされてきた。例
えば、数種の正常細胞遺伝子はレトロウイルスのゲノム
中に取り込まれてオンコジーンとなる。新しいプロモー
ター要素を近い位置におくことに因り、このような取り
込みによって可能性のあるオンコジーンが往々にして適
していない組織中であるいは通常それが発現されるより
も高いレベルで発現され得る。腫瘍発生レトロウイルス
ならびにその他の系における研究から、多くの細胞タン
パク質の発現が誤っていること、特に細胞サイクル、細
胞移動または細胞−細胞間相互作用の制御に係る発現が
誤っていることが癌の表現型に導くものであることが明
らかにされている。
本発明はヒトのmts−1遺伝子ならびにmts−1タンパ
ク質に対する抗体あるいはmts−1mRNAに対するmts−1
核酸プローブを用いる転移性癌の診断法を開示するもの
である。
マウスおよびラットのmts−1遺伝子は異なった名前
でこれまでに単離されている(すなわち、18A2,Linzer
等、Proc.Nalt.Acad.Sci.USA,80:4271−4275(1983)お
よびp9Ka,Barraclough等、J.Mol.Biol.,198:13−20,198
7)、しかし本発明以前にはmts−1遺伝子の転移性癌に
おける機能や関係が明らかにされていなかった。先行技
術での研究から、現在mts−1タンパク質として同定さ
れているタンパク質は例えばS−100カルシウムタンパ
ク質のような他のカルシウム結合タンパク質と相同関係
を有するカルシウム結合タンパク質であり、このものは
細胞生長で役割を果たすと考えられている(Linzer等、
同上;Jackson−Grusby等、Nuc.Acids Res.15:6677−66
90,1987;Goto等、J.Biochem.103;48−53,1988)。他の
研究者は、p9ka(後にmts−1と同一であることがわか
った)の筋上皮細胞の分化での役割を示唆している(Ba
rraclough、等、同上)。
本発明により独自に決定された如く、哺乳動物のmts
−1遺伝子は、転移性ではない細胞および正常な細胞と
比較して転移性細胞において100倍高いレベルで発現さ
れている。リンパ球や栄養芽層を包含するごく僅かの正
常細胞のみがmts−1を発現する。従って、本発明はmts
−1の格別に新規な性質を証明し、細胞または組織中で
のmts−1の発現の誤りが悪性癌の診断指標となるもの
である。
〔発明の開示〕
本発明は、mts−1核酸またはmts−1タンパク質に対
して向けられた抗体を用いることによる転移性癌の診断
法に係る。本発明は、また診断試験に利用できる単離、
精製されたmts−1核酸および哺乳動物のmts−1タンパ
ク質に対して向けられた抗体に係る。
本発明は、転移性乳癌又は転移性リンパ腫について試
験すべきヒトから得られた血清を、ヒトmts−1タンパ
ク質又はその抗原性フラグメントと反応性を有する抗体
と抗原−抗体複合体を形成するのに十分な時間及び条件
下に接触させ、そして前記抗原−抗体複合体を検知する
ことを特徴とする転移性乳癌又は転移性リンパ腫の免疫
検定法を提供する。
本発明の別の特徴は、ヒトのmts−1遺伝子またはそ
のフラグメントをコードしている単離された組換核酸お
よび高レベルでmts−1ポリペプチドを発現するmts−1
ポリペプチドをコードしている複製可能なDNA配列を提
供することにある。単離されたアンチセンスmts−1核
酸およびそのための発現ベクターもまた本発明では企図
されている。ヒトのmts−1核酸が好ましい。
本発明の更に他の特徴は、mts−1核酸およびmts−1
ポリペプチドをコードしているDNA配列を含有する複製
可能なベクターを含有する単離され、形質転換された宿
主細胞例えば、原核微生物、酵母、昆虫細胞および真核
細胞を提供するものである。
本発明の更に別の特徴は、単離された均一な哺乳動物
のmts−1ポリペプチド、ならびにこのようなmts−1ポ
リペプチドまたはタンパク質を包含する医薬組成物を提
供するものである。ヒトのmts−1ポリペプチドが好ま
しい。
本発明の別の特徴は、mts−1ポリペプチドあるいはm
ts−1タンパク質のいずれのペプチド、フラグメントま
たは誘導体に対して向けられている抗体を提供するもの
である。
本発明の更に他の特徴は、例えばmts−1タンパク質
を結合し得る抗−mts−1抗体やmts−1センスmRNAを結
合し得るアンチセンスmts−1核酸のような薬物を投与
することによる癌の治療法に係るものである。
本発明の更に他の特徴は、マウスまたはラットの癌腫
から誘導され、異なったレベルでmts−1を発現してい
るいくつかの真核細胞の細胞系(セルライン)および腫
瘍を含む転移プロセスの動物モデル系を提供するところ
にある。これらのセルラインおよび腫瘍は、マウスまた
はラット中に再導入して特有のひん度で肺、肝または腎
転移する一次の腫瘍を生じ得る。従って、本発明はまた
転移性癌の処置での治療上の有用性を有するものと思わ
れる医薬組成物を試験するためのよくコントロールされ
た動物モデル系を提供するものである。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、ヒトのmts−1遺伝子のコード領域を示すヌ
クレオチド配列を示す。
図2は、ヒトのmts−1タンパク質のアミノ酸配列を
示す。
図3は、マウス肉腫ウイルスプロモーター(MSV LT
R)のコントロール下にあるmts−1の全コード領域を含
む環状発現プラスミドpEMSscribe2を示す。
図4は、低度の転移性ポテンシアルを有するセルライ
ン(CSML−0)および非常に高い転移性ポテンシアルを
有する(CSML−100)から得られたmRNAのmts−1核酸プ
ローブによるノーザンブロッティングでのmts−1転写
体の検出結果を示すオートラジオグラフを示す。
図5は、異なった転移性(レーン上に「M」で示す)
および転移性でないマウス腫瘍およびセルラインから得
られたmRNAのmts−1核酸プローブによるノーザンブロ
ッティングでのmts−1転写体の検出結果を示すオート
ラジオグラフを示す。上部のオートラジオグラフにおい
て、レーン1−HMC−Lr;レーン2−HMC−0;レーン3−R
L−67;レーン4−B−16;レーン5−LLC;レーン6−Aca
tol;レーン7−C12;レーン8−PCC4c−B;レーン9−PCC
4c−P、レーン10−PCC4c−107;レーン11−PCC4107;レ
ーン12−T9;レーン13−LMEC;レーン14−T36;レーン15−
T36cL。
下部のオートラジオグラフは、各レーンでのmRNAの量
を比較するためアクチンプローブでハイブリッド形成さ
れた同じノーザンブロッティングの結果を示す。
図6は、各種の腫瘍および腫瘍セルラインから得られ
たmRNAについてmts−1核酸プローブを用いてのノーザ
ンブロッティングにおけるmts−1転写体の検出結果を
示すオートラジオグラフを示す。レーン1および2−サ
イズを示すマーカー;レーン3−DMSOなしで生育させた
マウス肺の癌腫のライン1;レーン4−3%DMSOで生育さ
せたマウス肺の癌腫(カルシノーマ)ライン1;レーン5
−IR6腫瘍;レーン6−TRCL1セルライン;レーン7−IR
6セルライン(IR6CL1);レーン8−FRTL5セルライン。
図7は、本発明によるいくつかのラット腫瘍の組織病
理学的特徴を示し、相当するヒトの腫瘍と該腫瘍との形
態学的および組織学的な同一性を示している。
図8は、ラットmts−1遺伝子のトランスフェクショ
ンコピーを含む各種のライン1マウス肺の癌腫セルライ
ン(N1−N10)あるいは抗生物質抵抗性マーカーのトラ
ンスフェクションコピーを含む各種のライン1マウス肺
の癌腫セルライン(Neo 1−3)(これらはすべて3
%のDMSOの存在下に生育され;DMSOなしで生育させたラ
イン1細胞(ライン1)と比較された)から得られたmR
NAについてノーザンブロッティングによってmts−1核
酸プローブによるmts−1転写体の検出結果を示すオー
トラジオグラフを示す。DMSOはトランスフェクションさ
れていないライン1細胞での転移性表現型の発現、なら
びにmts−1発現を阻害し、それ故mts−1のトランスフ
ェクションによりこの阻止を克服することができる。
図9aは、1×106CSML−0細胞を皮下注射した3匹の
マウスから得られた肺を示す。肺は注射後4−6週間で
除去し、次に墨を注入した。薄黒い領域は正常な組織を
示し;白い領域は腫瘍である。
図9bは、1×104CSML−0細胞を静脈注射した3匹の
マウスから得られた肺を示す。肺は注射後15日で除去
し、次に墨を注入した。薄黒い領域は正常な組織を示
し;白い領域は腫瘍である。
図9cは、1×104CSML−100細胞を静脈注射した3匹の
マウスから得られた肺を示す。肺は注射後15日で除去
し、次に墨を注入した。薄黒い領域は正常な組織を示
し;白い領域は腫瘍である。
図9dは、1×106CSML−100細胞を皮下注射した3匹の
マウスから得られた肺を示す。肺は注射後4−6週間で
除去し、次に墨を注入した。薄黒い領域は正常な組織を
示し;白い領域は腫瘍である。
図9eは、血清を含まない培地0.1mlを注射したマウス
3匹から得られた肺を示す。肺は注射後6−8週間で除
去し、次に墨を注入した。薄黒い領域は正常な組織を示
し;白い領域は腫瘍である。
図10aは、ヒスチジン−mts−1融合タンパク質の製造
に用いたpTrcHisB発現ベクターの更に重要な領域の図式
を示す。マウスmts−1cDNAをBamH I−Kpn I部位でpTrcH
isBにサブクローニングしてpTBM1を発生させた。
図10bは、pTBM1を含む細胞で発現されたmts−1タン
パク質を精製するのに使用したNi II−NTAカラムから溶
離されたタンパク質のプロフィルを説明しているクーマ
シーブリリアントブルー染色ゲルを示す。溶離はpH値が
5.9乃至4.5に変化する一連の緩衝剤で行った。単独の主
要タンパク質、すなわちmts−1タンパク質が溶離され
る。
図11は、5日間にわたるCSML−0およびCSML−100細
胞の増殖曲線を示す。細胞増殖は、細胞数/皿(縦軸)
を観察することにより毎日測定した。図示したとおり、
高レベルでmts−1を発現するCSML−100細胞は、mts−
1をほとんど発現しないCSML−0細胞よりも遅い速度で
増殖する。
図12は、3H−標識mts−1アンチセンスプローブでハ
イブリッド形成した8日マウス胚から得られた切片の顕
微鏡写真を示す。シグナルは栄養芽層で検出する。
図12bは、3H−標識mts−1センスプローブでハイブリ
ッド形成した8日マウス胚から得られた切片の顕微鏡写
真を示す。シグナルは検出されない。
図13は、CSML−0(レーン1)およびCSML−100(レ
ーン2および3)細胞リゼイトのウエスタンブロットを
示す。レーン1および2は検出のための二次抗体(ウサ
ギ−抗ニワトリIgG−HRP)を用いてニワトリ抗−mts−
1−抗体(α−mts−1)でプローブした。レーン3は
同様にプローブしたが、但し、α−mts−1抗体と共に
培養中にmts−1タンパク質を加えた。約10−12kdのmts
−1タンパク質がCSML−100細胞のみで、しかもα−mts
−1抗体と結合するために拮抗するように遊離のα−mt
s−1タンパク質が存在していない場合のみに検出され
る。従って、α−mts−1抗体はmts−1タンパク質に対
して極めて特異性がある。
図14aは、α−mts−1抗体でプローブされた凍結マウ
スひ臓切片を示す。ウサギ−抗ニワトリIgG−HRPをmts
−1抗原−抗原複合体(薄黒いスポット)の検出に用い
た。
図14bは、遊離mts−1タンパク質の存在下にα−mts
−1抗体でプローブされた凍結マウスひ臓切片を示す。
mts−1抗原−抗原複合体(薄黒いスポット)の検出に
は、ウサギ−抗ニワトリIgG−HRPを用いた。図示したと
おり、α−mts−1と結合するために拮抗する遊離のmts
−1タンパク質が存在しているときは、mts−1タンパ
ク質はほとんどあるいは全く検出されない(図14aと比
較)。従って、α−mts−1抗体mts−1タンパク質に対
して極めて特異性がある。
図15aは、CSML−100細胞を注射したマウスから得られ
た血清中でのみmts−1タンパク質が検出し得ることを
説明するものである。この図では、注射していないマウ
ス(レーン3)、1×105CSML−0細胞を注射したマウ
ス(レーン1)および1×105CSML−100細胞を注射した
マウス(レーン2)から得られた血清のウエスタンブロ
ットを示す。α−mts−1抗体と反応させた後、CSML−1
00細胞を注射したマウスから得られた血清にのみ10−12
kd mts−1タンパク質が検出される。より高分子量の
バンドは用いた抗−mts−1抗体と単に交差反応するだ
けであって、mts−1タンパク質とは交差反応しなかっ
た。
図15bは、同様に、CSML−100細胞を注射したマウスか
ら得られた血清中でのみmts−1タンパク質が検出し得
ることを説明するものである。この図では、注射をしな
いマウス(レーン3)、1×106CSML−0細胞を注射し
たマウス(レーン1)および1×106CSML−100細胞を注
射したマウス(レーン2)から得られた血清のウエスタ
ンブロットを示す。α−mts−1抗体と反応した後、CSM
L−100細胞を注射したマウスから得られた血清にのみ10
−12kd mts−1タンパク質が検出される。上述の如
く、更に高分子量のバンドは使用した抗−mts−1抗体
と単に交差反応するだけであって、mts−1とは交差反
応しなかった。
図15cは、α−mts−1抗体でプローブしたマウスから
得られたリゼイトした全血のウエスタンブロットを示
す。レーン1〜4にそれぞれリゼイトした全血5、10、
20および25μlをのせた。レーン5に正のコントロール
としてCSML−100細胞リゼイトをのせた。このブロット
は、形成中のmts−1タンパク質は単なるリンパ球また
は血液細胞の溶菌によるものではないことを示す。
図15dは、慢性免疫反応を誘起するためのサルモネラ
リポ多糖(LPS)を注射したマウスから得られた血清量
の増加のウエスタンブロットを示す。ブロットはいずれ
かの検出可能なmts−1タンパク質を表わすα−mts−1
抗体でプローブした。レーン1−3はそれぞれ血清75、
100または150μgをのせた。このブロットは、血清中の
mts−1タンパクが慢性免疫反応で発生される活性化マ
クロファージから誘導されないことを説明するものであ
る。
図16は、α−mts−1抗体でプローブしていずれかの
検出可能なmts−1タンパク質を表わしている非転移性
および転移性癌を有する患者から得られた血清のウエス
タンブロットを示す。転移性癌を有することがわかって
いる患者にのみ27kdのmts−1タンパク質が検出され
る。非転移性乳癌(レーン1)、非転移性リンパ腫(レ
ーン2および4)、転移性リンパ腫(レーン5および
7)および転移性乳癌(レーン6)を有する患者から血
清を採取した。レーン3は負のコントロールとして正常
な血清を含有している。更に高い分子量のタンパク質は
α−mts−1抗体と単に交差反応するだけであって、mts
−1タンパク質生成物を表わしていない。
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明は、転移性癌を診断し、また転移性腫瘍と良性
腫瘍とを識別するための新規な方法を提供するものであ
る。特に、本発明は、mts−1と呼ばれる哺乳動物の遺
伝子であって、その発現が例えば肺、肝臓、腎臓、乳
腺、上皮、甲状腺、白血病性、膵臓、子宮内膜、卵巣、
頸部、皮膚、結腸またはリンパ組織での転移性腫瘍細胞
において良性腫瘍細胞または相当する正常細胞における
よりも約10倍から約100倍大きい遺伝子のこれまで知ら
れていなかった性状を明らかにするものである。本発明
によれば、これらの組織およびその他の組織の転移性癌
が簡便なイムノアッセイによって患者の血清中で検知す
ることができる。更に、転移性癌はまた本発明のイムノ
アッセイによるか、または系中ハイブリッド形成検定法
により組織生体組織検査で診断することもできる。
転移は一次腫瘍から誘導される細胞による二次腫瘍が
形成されることである。その転移のプロセスは該一次腫
瘍部位からの一次腫瘍細胞が新しい組織に動きあるいは
移動することを含み、新しい組織では一次腫瘍細胞は二
次の(転移性の)腫瘍の形成を誘発する。本発明の発見
によれば、細胞あるいは組織中でのmts−1遺伝子の高
められた発現は強く転移し得ることの指標であることが
見い出された。本発明は、高度の哺乳動物のmts−1遺
伝子の発現と転移し得る強い可能性との間の予想外のか
つ驚くべき相関関係を利用して悪性の癌を診断したりあ
るいは検知することにある。哺乳動物のmts−1核酸お
よび哺乳動物mts−1タンパク質に対して向けられた抗
体の両者は悪性の癌の診断に用いることが企図されてい
る。以下に示すヌクレオチド配列の一つで示されるヒト
mts−1遺伝子は本発明で初めて単離された。
ここで、SEQ ID NO:3はアンダーライン部位でSEQ
ID NO:1と異なっている。
ヒトmts−1タンパク質のアミノ酸配列を以下に説明
する(SEQ ID NO:2)。
その他の哺乳動物のmts−1遺伝子もまた企図されて
いる。
本発明はまた抗転移活性薬としての可能性をスクリー
ニングするための有用な動物の転移モデル系あるいは癌
処置のための治療手法を開発するための有用な転移モデ
ル系にも関する。このモデル系には、転移しない腫瘍お
よび転移性の腫瘍であって、一つのマウスあるいはラッ
トから別のそれらに継代的に移植されて維持されている
もの、ならびに培養されたセルラインであって、これら
の腫瘍から誘導されたものであり、その親株の腫瘍の転
移可能性あるいは非転移可能性を保持しているものがあ
げられる。それで、これらの腫瘍またはセルラインは、
マウスまたはラット中に移植または注入されて良性また
は転移性の腫瘍を形成し得るものである。同時に、抗腫
瘍発生あるいは抗転移性の可能性を有する薬剤あるいは
その他の治療手段は、該動物に挿入して転移性及び良性
の腫瘍が抑制されるか否かを試験することができる。こ
のモデル系は高い利用性を有している。その理由は、そ
の腫瘍およびセルラインの転移可能性が予測し得るから
であり、また転移可能性を異にするセルラインが同じ親
株腫瘍から由来するものであり、それ故、それらの転移
可能性を除いて、共通の遺伝的および表現型性質を有し
ているからである。それで、本発明の動物モデル系は高
度にコントロールされ、予測し得る転移可能性を有して
いる。
本発明のヒトmts−1遺伝子は、本発明者等が先に得
ていたマウスおよびラットmts−1クローンの使用によ
って得られた。マウスおよびラットmts−1遺伝子は転
移性マウスおよびラット腫瘍RNAから作製されたcDNAラ
イブラリーから得られた。マウスmts−1遺伝子は自然
発生マウス乳癌に由来する高い転移活性を持つセルライ
オン(CSML−100)から得られた。一方発明で用いられ
るmts−1ラット遺伝子は、高い転移活性を持つ甲状腺
癌IR−6から得られた。マウスおよびラットの両方のmt
s−1遺伝子は、それぞれcDNAライブラリーを高度に転
移する作用を持つ群と代表するプローブおよび低い転移
作用を持つ群を代表するプローブと分別ハイブダイゼー
ション処理して得られた。
ヒトのmts−1遺伝子は、培養HeLa細胞および培養メ
ラノーマ組織からmRNAから本発明者等によって作製され
たcDNAライブラリーから得られた。マウスmts−1cDNAプ
ローブに強くハイブリッド形成するクローンはDNAシー
クエンシングによるヒトmts−1相同体として同定する
ことができる。あるいはまた、cDNAは、例えばMiller
1988 Ann.Rev.Microbiol.42,177で提供されている如
く、転移性細胞から精製したmDNAを用いる逆転写および
ポリメラーゼ鎖反応により得ることができる。
マウスのmts−1タンパク質とヒトmts−1タンパク質
との間には7個のアミノ酸の相違があり、マウスタンパ
ク質およびヒトタンパク質は機能的に関連性はあるが、
構造的には同一のものではないことを示すものである。
別の実施態様では、マウス、ラットおよび特に本発明
のヒトのmts−1遺伝子は大量のmts−1DNAおよび大量の
センスまたはアンチセンスmts−1RNAを産生させるため
の便利に使用できる複製可能なベクターの中でサブクロ
ーン化された。便利な複製可能なベクターは本発明の遺
伝子またはそのDNAフラグメント、企図された宿主にお
ける操作可能な複製開始点、そして好ましくは選択マー
カー例えば抗生物質耐性マーカーを包含する。これらの
ベクターの多くはpBR222を基としている。当該DNAからR
NAの合成を可能とする便利な複製可能なベクターはBlue
script(商標)(Stratageneから市販されている)、pT
rcHisB(Invitrogen)および当該分野で周知のその他の
ものがあげられる。
本発明はまた哺乳動物mts−1タンパク質の高度なレ
ベルの発現を可能とする複製可能な発現ベクターも企図
するものである。本文に記載の複製可能な発現ベクター
は一般的には所望の遺伝子の発現を制御するため、特に
高レベルの発現であって、そこでは大量の特定の遺伝子
産物またはポリペプチドの産生が所望されるものを遺伝
子工学的に作製したDNA分子である。該ベクターは、プ
ロモーター、該遺伝子の発現をコントロールするための
他の配列、および企図された宿主で操作可能な複製開始
点をコードしている。好ましくは、該ベクターはまた選
択マーカー例えば抗生物質抵抗性のようなマーカーをコ
ードしている。複製可能な発現ベクターにはプラスミ
ド、バクテリオファージ、コスミドおよびウイルスが包
含される。RNAを含有するいずれの発現ベクターもまた
企図されている。
本発明の好ましいベクターとしては真核細胞由来のも
のがあげられる。組織培養細胞中で働く発現ベクターは
特に有用であるが、酵母用ベクターも企図されている。
これらのベクターとしては、酵母プラスミド並びにミニ
クロモソーム、レトロウイルスベクター、BPV(牛パピ
ローマウイルス)ベクター、バキュロウイルスベクタ
ー、SV40に基づいたベクター及びその他のウイルスベク
ターがあげられる。SV40に基づいたベクター及びレトロ
ウイルスベクター(例、マウス白血病ウイルスベクタ
ー)が好ましい。真核細胞の複製可能な発現ベクターと
共に用いられる組織培養細胞としてはSf21細胞、CV−1
細胞、COS−1細胞、N1H3T3細胞、マウスL細胞、HeLa
細胞及び当業者に知られたその他の培養セルラインがあ
げられる。
バキュロウイルス発現系は培養昆虫細胞で大量のmts
−1ポリペプチドを生産するのに使用し得る。このよう
な昆虫細胞で生産されたポリペプチドの翻訳後のプロセ
シングは哺乳動物細胞のそれと同じである。従って、昆
虫でのポリペプチドの生産は、特に天然ポリペプチドの
正確な機能または抗原性に擬態することを希望する場
合、有利である。更に、バキュロウイルス系で発現され
たmts−1ポリペプチドは融合非相同ポリペプチドを必
要とすることなく生産される。それはmts−1出発コド
ンを翻訳出発部位として使用するからである。
バキュロウイルス発現系でポリペプチドを生産する方
法は当業者にとって既知である。例えば、Miller 1988
Ann.Rev.Microbiol.42:177を参照。一般には、Sf21細
胞で繁殖された変異Autographa california核ポリヘド
ロシスウイルスをポリペプチド発現に使用する。この変
異ウイルスは、mts−1ポリペプチドをコードしている
小トランスファーベクターの必須遺伝子内で洗浄化させ
たウイルス系発現ベクターによるコトランスフェクショ
ンにより生産される。細胞内では一旦洗浄化された発現
ベクターはトランスファーベクターによる組換を受ける
ことができるか、あるいは単に再環化することができ
る。しかし、組換のみでは必須遺伝子の機能が再環化に
よって失われるので生存可能なウイルスを生じる。組換
発現ウイルスはプラークの形成により検知される。
本発明はまた哺乳動物のmts−1遺伝子を発現するの
に適した原核細胞のベクターにも関し、そのようなベク
ターとしては大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtili
s)、放線菌(Streptomycessps)及びその他の微生物の
ような宿主を軽質転換することのできるバクテリアのベ
クター又はバクテリオファージベクターがあげられる。
これらの多くのベクターはpBR322に基づいたもので、
BluescriptTM(ストラタジーン社から市販)及び当該分
野でよく知られたものがあげられる。本発明で用いるこ
とのできるバクテリオファージベクターとしてはラムダ
及びM13があげられる。
ヒトmts−1遺伝子の発現に作用しうる配列として
は、プロモーター、エンハンサー、転写禁終止シグナル
及びポリアデュル化サイトがあげられる。プロモーター
とは遺伝子の発現を制御するDNA配列で、特にそれらは
転写開始部位を決めている。有用な原核細胞プロモータ
ーとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、ラム
ダのPLあるいはPRプロモーター及びT7ポリメラーゼプロ
モーターがあげられる。
真核細胞プロモーターは特に本発明で有用であり、ウ
イルス由来のプロモーター、例えばSV40後期プロモータ
ー、モロニー白血病ウイルス(Moloney Leukemia Vir
us)LTR、マウスザルコーマウイルス(Murine Sareoma
Virus;MSV)LTR、酵母プロモーター及び遺伝子の発現
を制御するようにデザインされたどんなプロモーターあ
るいはプロモーター改変物;例えば遺伝子工学的に作製
されたプロモーターがあげられる。遺伝子発現の制御
は、正の方向あるいは負の方向の両方で遺伝子を制御し
て(すなわち遺伝子の発現のスイッチをオンあるいはオ
フにして)、所望の発現レベルを得ることができること
があげられる。
本発明の複製可能な発現ベクターは、プロモーターお
よび遺伝子発現をコントロールするのに使用されるその
他の配列要素に対してセンスまたはアンチセンス方向で
のmts−1コード領域の一部または全部を結合させるこ
とにより作製することができる。このプロモーターおよ
びその他の配列要素をmts−1遺伝子と近位させること
によって、大量のセンスまたはアンチセンスmts−1mRNA
の生産が可能となる。大量のmts−1タンパク質もまた
生産することができ、これらのものは抗−mts−1抗体
生産のためだけではなく、転移性癌でのmts−1の機能
の解析、ならびに転移性癌の治療法をデザインするのに
も有用である。
ヒトのmts−1遺伝子用に適した発現ベクターの一つ
の例としては、本発明においては、本発明のヒトのmts
−1遺伝子を発現するところの発現ベクターpEMSV2(pE
MSVscribe2)が提供せしめられる。
別の例では、大量のmts−1特異性タンパク質は、誘
起可能な細菌ベクターpTrcHisB(図10a)を用いてE.col
iで発現された。マウスmts−1cDNAをpTricHisBの多重ク
ローニング部位を有するBamH I−Kpn I部位にフレーム
でサブクローニングした。pTBM1で発現した融合タンパ
ク質は6縦列ヒスチジン残基を有し、これによって融合
タンパク質の精製が容易になる。それはNi++負荷樹脂に
対する該縦列ヒスチジンの高い親和力によるものであ
る。融合タンパク質はまたエンテロキナーゼ特異性切断
部位を有し、これによってmts−1タンパク質生成物か
らヒスチジンが除去される。pTBM1でコードされているm
ts−1融合タンパク質の発現はIPTGで誘起することがで
きる。同様なヒトmts−1cDNA構築体も発させられた。
当業者にとっては、多くの選択しうる複製することの
できる発現ベクター、許容される宿主そしてベクターを
作製あるいは用いるためのよく知られた方法がある。組
換DNA法は遺伝子工学技術についての無水の標準的な実
験室用マニュアルのいずれかのうちに見出しうるもので
ある。
本発明はまた、mts−1DNAをmts−1mRNAを検出するた
めの核酸プローブとして用いることによるあるいmts−
1タンパク質に対して向けられた抗体を用いることによ
る組織試料における転移性の癌の検出法に関する。
本発明の核酸プローブは、組織試料に由来するmRNAに
ハイブリダイズした時に検知することのできるシグナル
を提供するに充分なmts−1DNAのうちのいかなる部分あ
るいは領域であってもよい。核酸プローブは検知可能な
シグナルを生成する。その理由は何らかの方法で標識さ
れているからで、例えば「標識分子」に結合したヌクレ
オチドを取り込んでプローブが作製されているからであ
る。
本発明で用いられる「標識分子」(「レポーター分
子」(reporter moleule))とは、化学的な手法で、
ハイブリダイズしたプローブを検知するとを可能にする
ような分析して同定しうるシグナルを与える分子のこと
である。その検知は定量的あるいは定性的のいずれでも
なしうる。このような形態のアッセイにおいて最も普通
に用いられる標識分子としては、mts−1DNA又はRNA中に
取り込まれているヌクレオチドに共有結合で結合せしめ
られている酵素、螢光発色団あるいは放射性原子のいず
れかである。普通に用いられている酵素としては、西洋
わさびペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、
グルコースオキシダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼがと
りわけあげられる。特定の酵素と共に用いられる基質と
しては、対応する酵素による加水分解等で検知可能な色
の変化を生成せしめるものが一般に選ばれる。例えば、
p−ニトロフェニルホスフェートはアルカリ性ホスファ
ターゼコンジュゲートと共に用いられるのに適してお
り、ホースラディシュペルオキシダーゼに適しているの
は1,2−フェニレンジアミン、5−アミノサリチル酸あ
るいはトルイジンが普通用いられる。
mts−DNAプローブ中への取込みは、ニックトランスレ
ーション、ランダムオリゴプライミングによって、ある
いは3′又は5′エンドラベリングによってあるいは一
本鎖バクテリオファージベクター(例えば、M13及び関
連ファージ)を用いた標識化された一本鎖DNAプローブ
によってあるいはその他の方法(サムブルック(Sambro
ok)等、1989、モレキュラークローニング(Molecular
Cloning)、A.ラボラトリーマニュアル(Laboratory
Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー
プレス(Cold Spring Habor Laboratory Press)頁
10.1−10.70)によってなし得る。mts−1RNAプローブ中
への標識分子の取込みは、T3、T7、Sp6又はその他のRNA
ポリメラーゼを用いてのmts−1RNAの合成(サムブルッ
ク(Sambrook)等、同上、10.27−10.37)によってなし
得る。本発明の核酸プローブによる転移性の癌を検知又
は診断する方法は、当該技術でよく知られた様々なハイ
ブリダイゼーション技術によってできる。一つの具体的
態様においては、患者からの組織試料は切片化され、標
準的な顕微鏡用スライドの上に置かれ、次に適当な固定
化剤で固定化される。上記した方法のうちの一つにより
標識されたmts−1RNAはDNAプローブが加えられる。
次にそのスライドは適切なハイブリダイゼーションの
ための温度(一般には37℃〜55℃)で1−20時間インキ
ュベートされる。次にハイブリダイズしなかったRNA又
はDNAプローブはよく且つていねいに洗浄せしめられて
除かれる。もしプローブにおいて放射活性を持たない標
識分子が用いられたなら、適切な基質が加えられ、その
スライドは検知可能な着色したシグナルがそのスライド
を光学顕微鏡下に可視化しうるように現れることを許容
するに適した時間適切な温度でインキュベートされる。
別の方法としては、mts−1プローブは放射活性を持つ
もので標識されているなら、ハイブリダイゼーション処
理し、洗浄したのちスライドはホトエマルジョン(写真
乳剤)中に浸漬せしめられそのシグナルは、数日後に光
学顕微鏡下に現像された銀粒子として検知せしめられ
る。
転移性の癌はまた組織標本由来のRNAをmts−1核酸プ
ローブで検知して検出することができる。該標本からの
RNAは、ニトロセルロース又はナイロンフィルター上に
固定化され、よく知られたフィルターハイブリダイゼー
ション技術を用いてmts−1遺伝子の発現が検出されう
る。試料mRNAは精製されることができるし、あるいは試
料細胞は単純に溶解化され、細胞のmRNAはフィルター上
に固定化されうる。試料mRNAはフィルターに固定化され
る前にゲルを介してその大きさで分画化されるかあるい
は単純にフィルター上にドットブロッティング処理する
ことができる。
別の具体的な態様においては、本発明のmts−1核酸
検出系はまたmts−1mRNA検出用のキットにも関するもの
である。
一般に、mts−1mRNA検知用キットは少なくとも1種の
mts−1核酸を含有している。このmts−1核酸は、結合
した標識分子を有するプローブであり得るし、またはmt
s−1核酸は標識されていなくてもよい。標識されてい
ないmts−1核酸はキットの使用者により変形してレポ
ーター分子を包含させることができるし、また例えばニ
ックトランスレーションまたはRNA転写により標識mts−
1プローブを生産するための基質として作用させること
もできる。
別の実施態様においては、該キットは区画に分けられ
たもので、第1の容器は基準コントロール又は陽性コン
トロールとして働く既知濃度のmts−1RNAを含有してお
り、第2の容器は検知しうる核酸プローブの合成に適し
たmts−1DNAを含有しており、そして第3の容器及び第
4の容器は検知可能なmts−1プローブを調製するのに
適した試薬及び酵素を含有するものである。もし検知可
能な核酸プローブが、酵素標識分子を取り入れて作製さ
れたものであるなら、第5の容器及び第6の容器であっ
て、基質又は該酵素に対する基質を含むものが提供され
る。
本発明に従って、mts−1タンパク質又はその一部
は、臨床上の試料中のmts−1タンパク質を検出するの
に有用な抗体を生成するために用いることができる。該
抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗
体であってもよい。加えて抗mts−1抗体に対する第二
抗体(モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)を
含めることも本発明の範囲内である。本発明はさらにmt
s−1遺伝子産物を検出アッセイ(イムノアッセイ;免
疫分析)するにあたってのこれら抗体の使用も意図する
ものである。
本発明はさらに、哺乳動物、例えばラット、マウスあ
るいはヒトのmts−1タンパク質またはポリペプチドに
対して向けられた抗体にも関する。これらの抗体は、mt
s−1タンパク質全体を抗原として用いてあるいはmts−
1タンパク質の一部に相当する短鎖ペプチド類を抗原と
して用いて生成せしめることができる。ペプチドが企図
されているときは、これらは少なくとも約4個のアミノ
酸、好ましくは少なくとも約10個のアミノ酸を有してい
る。好ましくは、哺乳動物のmts−1遺伝子に独特な部
分に相当する特定のペプチドを、mts−1抗体を得るた
め抗原として使用する目的で合成される。これは、mts
−1はカルシウム結合ドメインの配列そしてそれ故抗原
活性は、他のカルシウム結合タンパク質に似ているとこ
ろのそのカルシウム結合ドメインをコードするものであ
ることから行われる。該カルシウム結合ドメイン外にあ
るペプチドコード配列を利用して、抗mts−1抗体の他
のカルシウム結合タンパク質に対する交差反応性を容易
に除くことができる。従って、ペプチドを実際に合成す
る前に、タンパク質の配列についてのデータバンクを検
索することにより、ペプチド配列の同一性をテストされ
る。使用することのできる各種のmts−1ペプチドのう
ちで、以下に示すヒトmts−1配列の一部をコードして
いる4種のペプチドがすでに抗体発生に使用されてい
る: 1)mts−1タンパク質のうち第2−11番目のアミノ酸
に相当する新規ペプチド(SEQ ID NO:4): Ala−Cys−Pro−Leu−Glu−Lys−Ala−Leu−Asp−Va
l; 2)mts−1タンパク質のカルシウム結合ドメインに相
当するペプチド(第22−37番目のアミノ酸 SEQ ID N
O:5): Lys−Glu−Gly−Asp−Lys−Phe−Lys−Leu−Asn−Lys
−Ser−Glu−Leu−Lys−Glu−Leu; 3)mts−1タンパク質のうち第42−54番目のアミノ酸
に相当する新規ペプチド(SEQ ID NO:6): Leu−Pro−Ser−Phe−Leu−Gly−Lys−Arg−Thr−Asp
−Glu−Ala−Ala; 4)mts−1タンパク質の第87−101番目のアミノ酸に相
当する新規ペプチド(SEQ ID NO:7): Asn−Glu−Phe−Phe−Glu−Gly−Phe−Pro−Asp−Lys
−Gln−Pro−Arg−Lys−Lys. mts−1タンパク質に対して向けられたポリクローナ
ル抗体は、適切な実験用動物に有効量のペプチド又は抗
原活性成分を注射し、該動物から血清を採取し、既知の
免疫吸着技術のいずれかにより特異血清を単離すること
により製造される。ポリクローナル抗−mts−1抗体を
生産するのに容易に使用し得る動物は、ニワトリ、マウ
ス、ウサギ、ラット、小羊、馬等を包含する。ニワトリ
は、より良い免疫反応が得られ、かつまた飼育によるよ
りもむしろ卵から抗体を集めることができるので、好ま
しいものである。この方法で生産されるポリクロナール
抗体は事実上いずれのタイプのイムノアッセイにも利用
し得るが、これらの抗体は一般には生成物の異質性の可
能性があるので左程好ましいものではない。
本発明の診断又は検出アッセイにおけるモノクローナ
ル抗体の使用は、大量の抗体(すべて類似の反応性)を
生成しうることから特に好ましい。モノクローナル抗体
産生のためのハイブリドーマセルラインの調製法は、永
久増殖性のセルラインと抗体産生リンパ球とを細胞融合
することによりなされる。これらは当業者によく知られ
た技術によってなされうる(参照、例、ハロー、イー
(Harlow,E)及びレーン、ディー(Lane,D.)抗体(Ant
ibodies);ア ラボラトリー マニュアル(A Labor
atory Manual)、コールド スプリング ハーバー
プレス(Cold Spring Harbor Press)、1988又はド
ライラード、ジェーワイ、(Douillard,J.Y.)及びホフ
マン、ティー(Hoffman,T.)「ベーシック ファクツ
アバウト ハイブリドーマ(Basic Facts About Hty
bridomas)」、コンペンディウム オブ イムノロジー
(Compendium of Immunology)、Vol.II、エル.シュ
ワルツ(L.Schwartz)(Ed),1981)。
ポリクローナル血清の製造と異なり、モノクローナル
抗体製造のための動物は、免疫された動物から得られた
抗体産生リンパ球と融合することのできる適切な永代培
養可能なセルラインが得られるか否かで選ばれる。ハイ
ブリドーマ技術において選ばれる動物としてはマウス及
びラットがあり、それらは好ましいものである。もし適
切な永代培養可能なヒトの(あるいはヒトのものでな
い)セルラインが入手しうるならヒトもまた抗体産生リ
ンパ球源として用いることができる。本発明のモノクノ
ーナル抗体を製造するためには、選ばれた動物は、精製
されたmts−1抗原の約0.01mg〜約20mgの量を注射され
ることができる。通常注射する物質は、フロイントの完
全アジュバント(Freund's complete adjuvant)中に
懸濁乳化される。一般に産生を高めるために注射が必要
とされる。細胞融合によって得られた分離永代培養可能
なセルラインは適切な抗原を見出す能力についてそのセ
ルライン培地を試験することによって抗体産生性が試験
されることができる。
リンパ球は無菌下免疫された動物の脾臓又はリンパ節
を取り出して得ることができる。別法としては、リンパ
球は例えばシー リーデイング(C.Reading)、ジェー
イムュノル メート(J.Immunol.Meth.)53,261−29
1,1982において記載されているようにしてインビトロ
で、刺激または免疫化されることができる。モノクロー
ナル抗体産生リンパ球を永代培養可能にするためには、
そのリンパ球は、永代培養可能な細胞と融合せしめなけ
ればならない。このために適した多くのセルラインが開
発せしめられ、生育速度、生育性状の均一性、生育培地
の成分に関してその代謝における欠損性、良好な融合頻
度の可能性のような数多くの点のうちのいずれかをハイ
ブリド作成において特定のセルラインを選ぶのに考慮さ
れる。同種内ハイブリッド、特に似た株(ストレイン、
strain)間のハイブリッドは、異なった種間の融合より
もよりよい結果を与える。いくつかのセルラインが入手
可能であり、例えば、ミエローマ免疫グロブリンをつく
り出す能力を失っていることで選別された変移株があげ
られる。
これらのうち次なるマウスミエローマセルライン: MPC11−X45−6TG,P3 NS1/1−Ag4−1,P3−X63−Ag14
(すべてBALB/C由来),Y3′Ag1.2.3(ラット),及びU2
66(ヒト). があげられる。
細胞融合は、ウイルス、例えばエプスタイン バー
ウイルス(Epstein−Barr virus)又はセンダイウイル
ス(Sendai virus)あるいはポリエチレングリコール
のいずれかにより誘導される。ポリエチレングルコール
(PEG)は哺乳動物の体細胞(somatic cell)を融合す
るのに最も有効な試薬である。
PEG自体は細胞に対して毒性がある可能性があり、融
合を行う前に生存性への影響について各種の濃度を試験
すべきである。PEGの分子量の範囲としては、1、000〜
6,000の範囲で変えることができる。食塩水又は形成を
含まない培地で約20%〜約70%w/wに希釈すると良好な
結果を与える。37℃でPEGに約30秒間さらすと、本発明
の場合、マウス細胞を用いたとき好ましい結果が得られ
る。極端な温度(すなわち、約45℃)は避けられる。そ
して融合前に、融合系の各成分は37℃であらかじめイン
キュベーションされると好適な結果が得られる。リンパ
球と永代培養可能細胞の間の比率は、リンパ球同志の細
胞融合を避けるように決められ、約1:1〜約1:10の範囲
である。
融合に成功した細胞は当該分野で知られた技術のいず
れかによりもとの永代培養可能セルラインから分離せし
められる。最も普通で且つ好ましい方法は、ヒポキサン
チン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ
(HGPRT)欠損である永代培養可能セルラインを選んだ
場合である。これらの細胞はアミノプテリンを含有する
培地中では生育しないので、リンパ球と永代培養可能セ
ルラインとの融合ハイブリッドのみが、生育する。アミ
ノプテリンを含有する培地は一般的にはヒポキサンチン
1×10-4M、アミノプテリン1×105M及びチミジン3×1
0-5Mからなるもので、普通HAT培地として知られてい
る。融合された細胞は一般的には2週間生育せしめら
れ、ついて通常の培養用培地又はヒポキサンチン、チミ
ジンを含有する培地のいずれかで生育せしめられる。
次に融合細胞のコロニーはmts−1タンパク質を認識
する抗体の存否について試験される。
ハイブリドーマ抗体の検出は、抗原を固体支持体に結
合させ、それを目的の抗体を含んでいると思われるハイ
ブリドーマ上清液と反応させるというアッセイ法を用い
てなされることができる。抗体の存否は、種々の指示薬
を用いた「サンドイッチ」法によって検出される。普通
の方法のほとんどのものは、ハイブリドーマ生育の間に
分泌される抗体の濃度範囲で用いるに充分感度のあるも
のである。
ハイブリッド細胞のクローニングは、選択された培地
で細胞を20−50日間生育させた後行うことができる。ク
ローニングは液相での細胞の限界希釈法によってあるい
は半固体のアガロース中で生育する単一の細胞を直接識
別することにより行うことができる。
限界希釈法では、細胞懸濁液は、連続的に希釈せしめ
られ、統計的にウエル当り唯一個の細胞となるようにさ
れる。アガロース法では、フィーダー細胞を含有してい
る下層の上にある半固体の上層培地上にハイブリッド細
胞はまかれる。上層からコロニーをピックアップし、ウ
エルに移される。
抗体を分泌しているハイブリッド細胞は、種々の組織
培養フラスコ中で生育せしめられ、種々の濃度の抗体を
有する上清液を与えることができる。高濃度のものを得
るためには、ハイブリッド細胞は動物中に移植され、炎
症性の腹水として得られる。抗体を含有している腹水は
腹腔内注射の後8−12日で収穫されることができる。腹
水は高濃度の抗体を含んでいるが、炎症性の腹水からモ
ノクローナル抗体と免疫グロブリン類の両方が含まれて
いる。
次に抗体の精製は、例えばアフィニティークロマトグ
ラフィーにより行うことができる。
本発明の一つの実施態様は、転移性癌について試験す
る個体から採取した組織または血液試料に対してmts−
1ポリペプチドと反応性を有する抗体と接触させるか、
または適用することによる転移性癌の診断方法に関す
る。このイムノアッセイでの抗原−抗体複合体の形成が
転移性癌の指標となる。
好ましい態様では、本発明によれば、抗原−抗体複合
体を形成するのに十分な時間、条件下で哺乳動物mts−
1タンパク質またはその抗原性フラグメントと反応性を
有する抗体を転移性癌について試験すべき個体から得ら
れた血清と接触させ、そして抗原−抗体複合体を検知す
ることを包含する該転移性癌の診断法が提供される。
患者から得られた血清、組織または生検試料のうちに
mts−1タンパク質又はその抗原活性成分が存在するか
否かは、上記で製造された抗体(モノクローナル抗体及
びポリクローナル抗体のいずれも)を用いて実際上いか
なるタイプの免疫分析において検出されることができ
る。免疫分析法の様々な形態は利用でき、例えばハーロ
ー(Harlow)等、Antibodies:A Laboratory Manual;C
old,Spring Harbor Press,1988及び米国特許第4,016,
043号及び米国特許第4,424,279号を参照すれば見出すこ
とができる。もちろん、これらのうちにはシングルサイ
トあるいは、2−サイト、又はサンドイッチ型の非競合
型分析法及び通常の競合型結合アッセイ法があげられ
る。サンドイッチアッセイ法は、最も有用で普通に用い
られているアッセイ法である。種々のサンドイッチアッ
セイ法の変法があり、それらすべてが本発明により意図
されたものである。簡単に述べると、代表的なアッセイ
前段階は、固体の基質に未標識抗体を固定化し、試験さ
れるべき試料をその結合している分子と接触させる。適
当な時間インキュベーション処理し(抗体−抗原の二成
分複合体の形成が許容されるに充分な時間)、検知可能
なシグナルを生成することのできる標識分子で標識され
た第二抗体を加え、インキュベーション処理し、抗体−
標識抗体の三重複合体(ternary complex)を形成させ
るに充分なだけ処理する。反応した物質を洗浄処理し、
標識分子により生成せられたシグナルを観察して抗原の
存否決定する。その結果は、可視のシグナルを単純に観
察することによる定性的なものから、既知量のハプテン
を含んだコントロール試料と比較することによる定量的
なもので得られうる。上述したアッセイ法の変法のうち
には、試料と標識された抗体の両方が同時に結合せしめ
られている抗体に添加される同時アッセイ法及び標識化
された抗体と試験試料とが先ず結合せしめられ、インキ
ュベーション処理せしめられ、次に標識されてない表面
に結合せしめられた抗体に添加されるところの逆アッセ
イ法があげられる。これらの方法は当業者によく知られ
たものであり、少しばかり変形してよいことは明らかで
あろう。本明細書において用いているように、「サンド
イッチアッセイ法」は、基本の2−サイト法のすべての
変法を含むことを意図されている。
mts−1タンパク質は、競合結合アッセイ法により検
知することができ、そのアッセイ法においてmts−1タ
ンパク質に対して特異的に限られた量の抗体を、mts−
1タンパク質の美知の量を含んでいる特定量の試料およ
び検知可能な標識mts−1タンパク質の既知量を含んで
いる溶液と結合せしめる。標識された分子及び未標識分
子は、該抗体のあいている結合サイトに対して競合的に
反応する。遊離の分子と抗体結合分子とを相分離する
と、各相中に存在する標識の量を測定することができ、
かくして、試験試料中の抗原又はハプテンの量が示され
る。現在ではこの一般的な競合結合アッセイ法にも数多
くの変法がある。
既知の免疫分析法のいずれにおいても、実際上、抗体
のうちの一つ又は抗原(ウイルスまたはその成分)は、
典型的には固相に結合され、第二の分子(サンドイッチ
アッセイ法では第二抗体あるいは競合アッセイ法では既
知量の抗原のいずれか)は、抗原−抗体反応を可視的に
検知しうるように検知可能な標識(ラベル又はレポータ
ー)分子がつけられている。二つの抗体が用いられる場
合(例えばサンドイッチアッセイのように)、抗体のう
ちの一つがmts−1タンパク質又はその抗原活性成分に
対して特異的であることが必要なだけである。以下の記
載は代表的なサンドイッチアッセイ法について述べるけ
れど、一般的な技法は、意図されている免疫分析のうち
のいずれにも適用できることは理解されよう。
代表的なサンドイッチアッセイ法においては、mts−
1タンパク質又ははその抗原活性成分に対して特異性を
持つ第一の抗体は、固体の表面に共有結合的にあるいは
吸着で結合するかのいずれかで結合せしめられる。固体
表面としては代表的にはガラス又は高分子であり、最も
普通に用いられるポリマー(高分子)としてはセルロー
ス、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポ
リビニルクロライド又はポリプロピレンがあげられる。
固体支持体としてはチューブ状、ビーズ状、円板状ある
はマイクロプレート状の形態あるいは免疫分析を行うに
適したその他の表面をもついかなるものであってよい。
結合化法は当該分野でよく知られており、一般に該分子
を不溶性担体に共有結合的に交差結合するかあるは物理
的に吸着せしめることからなっている。結合処理に続い
て、ポリマー・抗体複合体を洗い、試験試料を製造す
る。試験試料の区分けした一定量を固相複合体に加え、
25℃で抗体中に存在するサブユニットいかなるのも結合
せしめるに充分な時間インキュベーションする。インキ
ュベーション時間は種々とることができるが、一般的に
は、約2−40分間の範囲であることができる。インキュ
ベーション処理に続いて、抗体サブユニット処理固相を
洗浄し、乾燥し、mts−1ハプテンの一部に特異的な第
二抗体と共にインキュベーション処理する。第二抗体は
標識分子に結合せしめられており、その標識分子は用い
られて、第二抗体がハプテンに結合していることを示
す。本明細書および請求の範囲において、「標識分子」
とは、化学的な手法で、分析により同定することのでき
るシグナルを提供し、抗原の結合した抗体を検出するこ
とを可能にする分子を意味する。検知は定量的にも定性
的にもなしうる。このタイプのアッセイ法において最も
普通に用いられる標識分子は、酵素、螢光発色剤又は放
射性核種を含む分子のいずれかである。酵素免疫分析法
の場合、酵素は、一般的にはグルタルアルデヒド又は過
ヨウ素酸塩により第二抗体に結合せしめられる。しか
し、容易に理解されるように、広範囲の種々のコンジュ
ゲーション(接合)化方法が存在し、それらは当業者が
容易に利用できる。普通には用いられる酵素としては、
ホースラディシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシ
ダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアルカリ性ホスフ
ァターゼがとりわけあげられる。特定の酵素と共に用い
られる基質としては、例えば相当する酵素による加水分
解で検知可能な色の変化をなすものが一般的に選ばれ
る。例えば、p−ニトロフェニルホスフェートは、アル
カリ性ホスファターゼコンジュゲートと共に用いるのに
適し、ペルオキシダーゼコンジュゲートに適したものと
しては、1,2−フェニレンジアミン、5−アミノサリチ
ル酸又はトリジン(tolidine)が普通に用いられる。螢
光を出す基質を用いることもでき、それは上記した発色
性基質というよりはむしろ螢光生成物を与える。すべて
の場合において、酵素標識された抗体は第一の抗体ハプ
テン複合体に加えられ、結合せしめられ、次に過剰の試
薬は洗い流される。次に適切な基質を有する溶液が抗体
−抗原−抗体のターナリー複合体に加えられる。基質は
第二抗体に結合している酵素と反応し、定性的に目視で
きるシグナル(それはさらに定量することもできる)を
与え、通常分光学的に測定され、試料中に存在している
ハプテンの量を指し示す。
別の方法としては、例えばフルオレッセイン及びロー
ダミンといった螢光化合物が、抗体にその結合性を変え
ることなく化学的に結合せしめられる。特定の波長の光
で照射されて活性化されると、螢光発色団で標識された
抗体は、光エネルギーを吸収し、その分子は励起した状
態となり、次いで光学顕微鏡で可視的に検知可能な特徴
ある色をもった光を放出する。螢光剤で標識された抗体
は、第一の抗体−ハプテン複合体に結合せしめられる。
未結合試薬を洗い流した後、次に残っているターナリー
複合体を適切な波長の光にあてると、観察される螢光
は、当該ハプテンの存否を示すことになる。免疫螢光法
は、当該分野で確立された方法である。しかしながら、
他の標識分子、例えば放射性同位体、化学発光剤又はバ
イオルミネッセント分子もまた使用できる。所望の目的
にあわせてその方法を変えることは当業者にとって容易
になし得るところのものである。
別の具体的態様においては、mts−1タンパク質に向
けられた抗体は、mts−1タンパク質検出用キットの中
に組み入れることができる。そのようなキットとして
は、本明細書中で意図し且つ記載されている検知システ
ムのいかなるものをも含むものであり、mts−1タンパ
ク質に対して向けられたポリクローナル抗体やモノクロ
ーナル抗体のいずれをも使用できるものである。上記し
た固体表面に結合せしめられたmts−1抗体及び可溶性
のmts−1抗体の両方は、検知用キットにおいて用いら
れうる。本発明のキットは哺乳動物のmts−1ポリペプ
チドと反応性を有する抗体を有する少なくとも1個の容
器を有している。しかし、本発明のキットはその他の成
分を有することができる。例えば、そのキットは区画さ
れた室に分けられたものである:第一の容器は、mts−
1タンパク質を溶液として又は固相表面に結合せしめら
れて有し、基準コントロール又は陽性コントロールとし
て働き、第二の容器は、溶液中に遊離の状態で又は固体
表面に結合してのいずれかの抗mts−1一次抗体を含有
し、第三の容器は、第一次抗体に対して反応性であるか
あるいは第一次抗体とは反応しないmts−1タンパク質
の一部に対して反応性であり、且つ標識分子と共有結合
で結合している二次抗体の溶液を含有している。第四の
容器及び第五の容器は基質あるいは試薬であって、標識
分子を可視化するに適したものを含有している。
それ故に本発明は、転移性の癌を診断する手段として
mts−1タンパク質を検出するのに有用なポリクローナ
ル抗体及びモノクローナル抗体にも関している。該抗体
は、上記のようにして製造され精製され、本発明の目的
を達成するためその意図されたところ且つ本明細書で記
載されたところの検知系に用いられる。
本発明は、またmts−1遺伝子又はタンパク質あるい
はmts−1遺伝子を発現している細胞を不活性化、ある
いは破壊あるいは無しにすることにより転移性の癌を処
置することに関する。本明細書で記載するように、癌を
処理するのは、好ましくは肺、肝、腎、甲状腺、乳腺、
白血病、膵、子宮内膜、卵巣、頸管、皮膚、結腸、リン
パ球などの癌に向けられている。例えば、上記したよう
にして製造された抗体はmts−1タンパク質を発現して
いる細胞を不活性化するのに用いられることができ、ト
キシンにコンジュゲート化された抗mts−1抗体または
コンジュゲート化されていない抗mts−1抗体のいずれ
かが癌を治療するのに用いることができる。
更にまた、本発明は、別の具体的態様において、アン
チセンスmts−1ヌクレオチド配列をコードしている核
酸を癌細胞に与えることにより癌細胞での転移を阻止す
る方法を提供するものである。例えば、該アンチセンス
核酸をSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3のアンチセン
スストランドの少なくとも10個のヌクレオチドを有する
ことができる。好ましくは、本発明のアンチセンスmts
−1核酸は少なくとも15または17個のヌクレオチドを有
することができる。
一つの態様において、この方法は、アンチセンスmts
−1RNAの発現を実施し得るベクターのセグメントに実施
し得るように連結されたmts−1のためのアンチセンス
ヌクレオチド配列をコードしている核酸を包含する発現
ベクターを用いるものである。高レベルでmts−1RNAを
発現し得る前述した発現ベクターのいずれをもこの方法
に使用することができ、例えばpTricHisが包含されてい
る。
本発明によれば、アンチセンスmts−1核酸は、セン
スmts−1mRNAと結合することにより転移性癌を抑制する
ことができる。かかる結合は、mts−1タンパク質の翻
訳を阻害するか、または例えばRNaseHの有用により、mt
s−1センスmRNAを破壊することができる。従って、転
移可能性のある腫瘍細胞に対してmts−1タンパク質は
左程利用可能ではなく、これらの細胞の転移が阻害され
る。
本発明の別の態様では、例えば哺乳動物のmts−1ポ
リペプチド、アンチセンスmts−1核酸またはmts−1タ
ンパク質を含有する医薬組成物が企図されている。mts
−1タンパク質はカルシウムを結合することが知られて
い、細胞の生育に作用している(Linzer,et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA80:4271−4275,1983;Jackson−Grusb
y,et al.,Nuc.Acids.Res.15:6677−6689;Goto et a
l.,J.Biochem.103:48−53,1988)。
mts−1タンパク質はまた42Aに非常に近い関係を有し
ており、その42A遺伝子は神経細胞生育に作用すると考
えられる(マシアコウスキー(Masiakowski)等、Proc.
Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:1277−1281,1988)。mts−1
タンパク質はまた筋上皮細胞の分化において働いている
かも知れない(Barraclough等、J.Mol.Biol.198:13−2
0,1987)。かくしてヒトのmts−1タンパク質は、臨床
上有用であり、例えば、細胞を一般的にあるいは、好ま
しくは神経細胞を刺激して生長さしめ、さらに筋上皮細
胞の分化を促進するにあたり有用でありうる。
mts−1タンパク質または抗−mts−1抗体およびアン
チセンスmts−1核酸(抗癌剤)を含有る医薬組成物の
活性成分は例えば細胞生長促進にあたりあるいは癌の処
理に関して有効な治療活性を示す。このように、mts−
1タンパク質細胞増殖活性あるいは抗癌剤を含有してい
る治療用組成物の活性成分は、特定の疾病に依存した治
療用量で投与される。例えば、約0.5μg/Kg体重/日〜
約2000mg/Kg体重/日で投与されることができる。投与
法は最適の治療効果が得られるようにあわせることがで
きる。例えば、数回に分割されて毎日投与されうるし、
投与は治療状況を勘案して順次減らしうる。決定された
実際上の利点としては、活性成分化合物は、経口、静脈
投与(この場合は水溶性)、筋肉内投与、皮下投与、鼻
腔内投与、経皮投与、あるいは座剤といった通常の方法
で投与されうる。投与経路に従って、mts−1タンパク
質又は抗癌剤を含有している活性成分は、酵素、酸又は
該成分を活性化しうるその他の自然の条件から当該活性
成分を保護するための物質でコーティングすることが必
要とされることもある。例えば、低い脂肪親和性のmts
−1タンパク質、そしてある種の抗癌剤は、ペプチド結
合を開裂することのできる酵素によって胃腸管において
あるいは酸加水分解によって胃の中で破壊されうる。非
経口投与以外によりmts−1タンパク質又は抗癌剤を投
与するためには、その不活性化を防止するための物質に
よってコーティングするかあるいは該物質と一緒に投与
されるべきである。例えば、mts−1タンパク質又は抗
癌剤は、補助剤中に入れて投与あるいは酵素阻害剤と一
緒に投与又はリポソームに入れて投与されうる。本発明
において使用しうる補助剤(アジュバント、adjuvant)
としては、レゾルシノール類、例えばポリオキシエチレ
ンオレイルエーテル及びn−ヘキサデシルポリエチレン
エーテルなどの非イオン性界面活性剤があげられる。酵
素阻害剤としては、膵臓トリプシンインヒビター、ジイ
ソプロピルフルオロホスフェート(DEP)及びトラジロ
ール(trasylol)があげられる。リポソームとしては水
中油中水型(water−in−oil−in−water)P40エマルジ
ョン並びに通常のリポソームがあげられる。
活性化合物は、非経口的あるいは、腹腔内投与される
ことができる。分散剤はグリセロール中、液状ポリエチ
レングリコール類中あるいはそれらの混合物中、あるい
は油中で製造されることができる。貯蔵あるいは使用時
の普通の条件下では、これらの製剤は微生物の生育を防
ぐために保存剤を含有している。
注射することのできるような用途に適した薬剤形態と
しては、無菌の水溶液(この場合は水溶性である)又は
分散剤あるいは、無菌の注射可能な溶液又は分散液を用
時調製できる無菌粉末剤があげられる。すべての場合に
おいて、剤は、無菌でなければならず、容易に注射され
うるような流動性のものでなければならない。それは製
造条件及び貯蔵条件で安定でなければならず、バクテリ
ア(細菌)あるいはカビ(fungi)といった微生物によ
る汚染に対して保存性でなければならない。担体は、溶
媒又は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、
グリセロール、ポリエチレングリコール、液状ポリエチ
レングリコール等)、それらの適当な混合物あるいは植
物油を含む分散媒質であることができる。良好な流動性
が保たれ、例えばレシチンのようなコーティングを用い
ることによりあるいは分散剤の場合に所望の粒子の大き
さに保つことによりあるいは界面活性剤を用いることに
より保持される。微生物の働きを防止することは各種の
抗菌剤又は抗カビ剤、例えば、パラベン類、クロロブタ
ノール、フェン−ノール、ソルビン酸、チメロサール等
によって達成されることができる。多くの場合、例えば
糖又は塩化ナトリウムのいった等張剤を含むことが好ま
しい。注射可能な組成物を徐放化された吸収性を持つよ
うにするには、吸収遅延化剤、例えばアルミニウムモノ
ステアレートあるいはゼラチンを組成物中に入れてなさ
れることができる。
無菌の注射可能な溶液は、所望量の活性化合物を適切
な溶媒中に所望により上記したその他の成分と共に入
れ、ついで無菌濾過することにより製造される。一般に
分散剤は、種々の殺菌された活性成分を無菌の賦形剤で
あって、基本的な分散用媒質及び上記した所望のその他
の成分を含んでいるものに入れて製造される。無菌の注
射可能な溶液を製造するための無菌粉末の場合、好まし
いその製造法は、減圧下での乾燥あるいは凍結乾燥であ
り、あらかじめ無菌濾過されたその溶液から活性成分+
所望の付加的な成分の粉末を与えるものである。
mts−1タンパク質又は抗癌剤は、上記したように適
切に保護された場合、活性化合物は経口的に投与、例え
ば不活性な希釈剤と共にあるいは同化性を持ち可食性の
担体と共に経口投与されるかあるいは硬ゼラチンカプセ
ル又は軟ゼラチンカプセル中に包んで投与されるか、あ
るいは錠剤に圧縮されるか、あるいは直接的に食品に入
れられて投与される。経口投与に関して、活性化合物
は、補形剤中に入れられることができ、飲み下すことの
できる錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、
エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤等の型
にして用いられうる。本発明の組成物及び製剤は、経口
投与単位の形態で活性化合物を約0.5μg〜約2000μg
含むように製造される。
上記の様な錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤及び
その他はまた次のものを含有してもよい。すなわちグラ
ガカントゴム(gum gragacanth)、アラビアゴム、コ
ーンスターチ或いはゼラチン等のバインダー;コーンス
ターチ、ポテトスターチ、アルギン酸及びその他等の崩
壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;そしてシ
ョ糖、乳糖又はサッカリン等の甘味料であってこれらは
ペパーミント油又はウィンターグリーン(wintergree
n)又はチェリー香料等の香料が加えられていてもよ
い。投薬単位形態がカプセル剤である場合には上記種類
の原料に加えて液体キャリヤを含有してよい。その他様
々な原料がコーティング剤、或いはその他投薬単位の物
理的形態を修飾するものとして存在せしめられてもよ
い。例えば錠剤、丸薬又はカプセル剤はシェラック、砂
糖又はその両方で被覆されてもよい。シロップ剤又はエ
リキシール剤は活性化合物、甘味料としてのショ糖、保
存料としてのメチル又はプロピルパラベン類、色素及び
チェリー又はオレンジ風味の香料を含有してもよい。勿
論いかなる投薬単位形態の製造に用いられるどの原料も
製薬学的に純粋且つ用量に於いて非毒性であるべきであ
る。さらに活性化合物は除放性の製剤及び処方物中に混
入されていてもよい。
投与の簡便さ及び投薬の均一さのためには投薬形態中
に於いて非経口的な組成物を処方することが特に有利で
ある。ここで用いられる投薬単位形態は処理に供される
哺乳動物への単位投薬量として物理的に分離せしめられ
ている単位であって;すなわちそれぞれの単位は必要な
製薬上の担体と共に所望の治療効果を奏するよう算定さ
れている予め決められた量の活性物質を含有するもので
ある。本発明の新規な投薬単位形態の仕様は(a)活性
物質の唯一無比の特性と達成されるうる特別な治療効
果、及び(b)本文中で詳述される様に身体的健康を害
している疾病状態の生物体に於ける病気の治療用の活性
物質の当該分野に固有の限界により記述されて及び直接
に依存している。
主要活性成分はこれまでに開示してきた様に投薬単位
形態中に於いて便利で効果的な投与のためにその有効量
が好適な製薬上許容しうる担体と混合されている。例え
ば1単位の投薬形態には0.5μgから約2000μgの範囲
の量の主要活性化合物を含有することが可能である。比
率で表現するならば一般に担体中に約10μgから約2000
mg/ml存在する。追加の活性成分を含有している組成物
の場合にはその投薬量は該成分の通常の量と投薬方法に
より決定する。
ここに用いた様に「製薬上許容しうる担体」には溶
媒、分散媒質、コーティング剤、抗菌剤及び抗カビ剤、
等張及び吸着遅延剤、及びその他のいずれか又は全てが
含まれる。製薬的に活性な物質のためにこうした基剤を
使用することは当該分野ではよく知られるものである。
従来の基剤又は試薬が活性成分と不適合となる場合を除
いては治療用組成物にそれらを使用することが考えられ
る。追加の活性成分を該組成物に混入することもまた可
能である。
本発明の別の実施態様は本発明に従って発現した動物
の腫瘍及び腫瘍セルラインに関するものであって転移過
程のモデルシステムとして有用である。これらの腫瘍及
び腫瘍セルラインは抗転移薬剤のスクリーニング用とし
て、また本発明によって生じる悪性ガン治療のための治
療法の開発用として有用でありうる。本発明によって生
じる腫瘍にはIR6及びIR4腫瘍が含まれる。本発明によっ
て生じる腫瘍セルラインにはCSML−0、CSML−50、CSML
−100、HMC−0、HMC−Lr、T9、T36、LMEC、PCC4c−
P、PCC4c−B、PCC4c−107、IR6CL1、IR4CL、ELCL1、T
RCL1及びマウス肺カルシノーマLinelが含まれる。
本発明の腫瘍又は腫瘍セルラインはそれぞれ高度の転
移能力を有しているがしかし関連はするが分離はしてい
ない腫瘍又はセルラインの転移能力は非常に異なってい
る。本発明の腫瘍及び腫瘍セルラインの性質及び転移能
力は実施例1、2、3及び12また表1及び2に充分に述
べている。これらの腫瘍及びセルラインはラット甲状腺
及び上皮のカルシノーマと同様マウス乳カルシノーマか
ら得たものであるが、これらは幾つかの理由により種々
のヒトのガン治療法に開発に有用である。まず第1にガ
ン細胞は全て同様の性質を有している。例えば限度のな
い成長及び接触阻害の欠如があり、これらはガン発現の
過程が全てのガンで同様であろうということを示唆して
いる。第2に、これらの腫瘍由来の細胞の注射後に発現
する腫瘍の形態及び生化学性質は対応するヒトの腫瘍と
同一である。よって能力のある抗ガン療法又は薬剤が本
発明の動物モデルシステムを用いることによって効果的
にスクリーニングされる。
これらの唯一無比の腫瘍及びセルラインの有用性は当
業者には明らかである。要約すれば動物に予期される転
移能力を有する腫瘍又は腫瘍由来細胞を注射する。動物
の一部を能力のある抗癌薬剤又は治療法で処理する。適
当な時期を経た後全ての動物を屠殺して処理した或いは
処理していない両動物の組織について原発性及び二次的
(転移)腫瘍を検査する。もし治療法が成功していれば
処理をした動物では腫瘍形成の頻度がずっと低いはずで
ある。
マウス及びラットの両モデルシステムを本発明により
癌治療法の開発のために提供される。自然発生のマウス
乳カルシノーマを用いて、低中高の転移頻度を有する異
なったセルラインを生じさせた。これは本来の自然発生
乳腫瘍細胞の同系マウスへの筋肉内移植又は尾部皮下移
植によって行われる。CSML−0と呼ばれる低い転移能力
を有するセルラインは筋肉内移植によって得た。瀕死状
態のため屠殺したCSML−0注射動物の10%以下で孤立し
た肺転移が見られる高転移性CSML−100セルラインは尾
にCSML転移性細胞を連続的に皮下移植したものから転移
性の表現型のものを選択して生じさせた。CSML−100を
生じさせる時にやはり選択したCSML−50は中程度の転移
能力を有する。
正常なFischer344ラットの甲状腺細胞の懸濁液を照射
してからその細胞をラットに移植することにより様々な
ラット腫瘍が得られた。非照射の甲状腺細胞移植片はFi
scher344同系ラットへの移植後に甲状腺刺激ホルモンを
高いレベルでさらに与えた場合に形態的にも機能的にも
正常な甲状腺組織へと発育したが、移植前に照射した甲
状腺細胞の懸濁液は組織病理学的にヒトのものと同一で
ある一連のラット甲状腺癌を生じた。例えばIR6腫瘍は
本発明に従って生じたのであるが、これは高転移性であ
って、またIR4腫瘍は低い転移能力を有している。両腫
瘍とも構造的にも組織学的にも対応するヒトの腫瘍同一
である(図7)。
転移過程の調査のための注意深くコントロールされた
研究に敏感に反応するラット及びマウスモデルシステム
に非常に多様な腫瘍及びセルライン、そしてその腫瘍及
びセルラインの多様な転移能力を提供した。高低及び中
程度の転移能力を有する細胞を注射された動物のコント
ロールされた研究によって悪性ガンの治療方法が開発さ
れうる。抗転移能力を有すると思われる薬剤或いは製薬
組成物を各群の1部の動物の処置に用いる。薬剤或いは
製薬組成物を処理された動物の転移頻度を非処理動物の
頻度と比較する。こうして本発明により有効な抗転移性
の薬剤及び治療法を有効ではないものと区別するのに用
いられる動物システムが提供される。
実施例によりそれを何ら制限することなく本発明をさ
らに詳述する。
実施例1 材料及び方法 1)培地 10%牛胎児血清(FCS)を含有するダルベッコ(Dulbe
cco)の修飾イーグル培地(DMEM)を全てのセルライン
に対して使用した。細胞は毎週継代(植え継ぎ)させ
た。
2)転移活性 腫瘍セルライン毎に1×106個の腫瘍細胞を10−15匹
のマウスに筋肉内注射を行って転移活性を測定した。A/
SnまたはA/Jマウスのいずれかを用いた。
A/Snマウスについては、培養腫瘍細胞をトリプシン処
理してから洗滌し、滅菌したハンクス塩溶液中に懸濁さ
せた。ハンクス液0.3ml当り細胞総数が1×106個となる
様にして、それぞれ8−10週齢のA/Snマウスに皮下的に
注射した。腫瘍接種後4−5週間目にマウスを屠殺して
肺転移の数を計数した。肉眼視できる転移を生じさせな
いセルラインは非転移性のセルラインと定義した。同じ
条件下に高度に転移性のラインは各マウスの目標器官に
複数の転移を生じさせた。
雌A/Jマウス(4−6週令)に尾静脈を経由して1×1
04細胞を、静脈注射するか、または1×104個の細胞を
腹部に皮下注射した。静脈注射後15日目、または皮下注
射後4−6週間目に動物を屠殺し、肺の転移を計数し
た。
3)マウス腫瘍セルライン 本発明に従ってA/Snマウスの自然発生乳カルシノーマ
からCSML−0、CSML−50及びCSML−100腫瘍セルライン
を樹立した。これらのセルラインについては実施例2で
さらに詳しく述べる。
HMC−0及びHMV−Lrは同様にA/Snマウスの自然発生乳
腺カルシノーマから樹立した腫瘍セルラインである。T
−9、同様にT−36及びその変種であるLMECは妊娠6−
7日の同系の胚をCBA/J及びA/Snマウスの正規ではない
場所に移植して誘導して得た2つの新規な腫瘍関連サブ
ラインである。
セルラインPCC4c−P、PCC4c−B及びPCC4c−107はそ
れぞれPCC4−ブランジー(Blangy)、PCC4−パスツール
及びPCC4−107テトラカルシノーマから誘導したもので
ある。
ネズミ肺カルシノーマセルライン(Linel)は高度に
転移性であるが、3%のDMSOの存在下で生育させるとそ
の転移能力を失ってしまう。
上記したセルラインの性質のいくつか及びその転移能
力を表1に示す。
3)ラット腫瘍及びラット腫瘍セルライン 樹立された上皮セルラインFRTL5はラット甲状腺細胞
を培養して誘導したものであって、腫瘍形成性ではな
い。さらに本発明に従って腫瘍形成性であるが非転移性
であるところの2つのFRTL細胞誘導体ELCL1及びTRCL1
分離した。これら非転移性セルラインの性質は実施例3
及び表2にさらに詳述する。
IR6腫瘍は照射により誘導された移植可能な未分化の
甲状腺ガンで上皮由来のものである。これは殆ど分化し
ておらず高度に浸潤性の高転移性アデノカルシノーマで
ある。IR4は照射により誘導された移植可能な別の甲状
腺腫瘍であって中程度に分化していて低転移能力を有す
る。これらの腫瘍の性質については実施例3及び表2で
さらに詳述する。
4)核酸の精製及び分析 本欄の転移活性の欄に述べた様にマウスの皮下注射用
に腫瘍細胞を培養して調製した。週毎に注射したマウス
の腫瘍の出現を調べた。腫瘍を切除してDNA及びRNAプレ
パレーション(標品)に供した。全てのDNAはサンブル
ックら(Sambrook et al)に従って細胞から調製した
(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold S
pring Harbor.Vol.2,Laboratory Press,1989.9.1−9.
62頁)。
RNAは別々の腫瘍細胞及び正常細胞からコムチンスキ
ーら(Chomczynski et al,1987,Anal.Biochem.162:15
6−159)又はサムブルックら(Molecular Cloning:A
Laboratory Manual,Vol.1,Cold Spring Harbor Pre
ss,1989:7.1−7.87)の方法によって調製した。RNAのゲ
ル電気泳動、ナイロン膜フィルターへのRNAブロッティ
ング、及びニックトランスレーションされたDNAプロー
ブとのハイブリダイゼーションについてはグリゴリアン
ら(Grigorian et al,1985,EMBO J.4:2209−2215)
が述べている。
サザンブロットはマウス肝臓、CSML−100細胞、ヒト
胎盤、ヒト肝臓、ラット肝臓、ブタ肝臓、及びニワトリ
肝臓から抽出したゲノムDNA10μgを用いて行った。DNA
をBamH I、EcoR I及びPst Iエンドヌクレアーゼで消化
した。次に0.8%アガロース中で電気泳動にかけてDNAを
ナイロン膜(アマーシャム社、Hybond N)上に移し
た。フィルターをプレハイブリッド形成、及びハイブリ
ッド形成してから前記サンブルックらの標準的方法に供
した。
実施例2 良性及び転移性マウス腫瘍セルラインの作成 CSML−0、CSML−50及びCSML−100はA/Snマウスの自
然発生乳アデノカルシノーマから樹立したセルラインで
ある。CSML−0は筋肉内継代培養によって維持される腫
瘍から誘導されたものであって低い転移能力をその特徴
としている。瀕死状態のため屠殺して解剖した動物の10
%以下に孤立した肺転移が認められた。次にCSML転移性
腫瘍細胞を始め数少なく、次には頻繁に(尾部への連続
皮下注射により)連続移植してその中から転移性の表現
型を有するものを選択して高度に転移性なサブラインCS
ML−100を得た。始めの接種をどの様な経路から行って
もCSML−100の肺への転移の頻度は100%であった。CSML
−50は中程度の転移能力を有するセルラインであってCS
ML−100を樹立する際に生じたものである。CSML−50の
肺転移の頻度は約50%であった。
CSML−100腫瘍ラインは同様にA/Jマウス(Jackson L
aboratories)で腫瘍を形成せしめ、これはA/Snマウス
と同様の遺伝子型を有している。CSML細胞はA/Jマウス
では拒絶されず、いずれの注射ルートによっても肺およ
びその他の器官で転移が検知された。
CSML−100を静脈注射したA/Jマウスは注射6〜7日以
内で腫瘍を発生した。僅か1×104個のCSML−100細胞を
注射した場合でも、注射後15日までに肺に豊富な転移が
みられた(図9c)。皮下ルートでCSML−100細胞を注射
したA/Jマウスでは4〜6週間後に約250自然発生転移/
肺がみられた(図9d)。いずれの注射ルートによりCSML
−100を注射したマウスは僅か10〜25腫瘍/肺を有して
いた(図9aおよび9b)。各マウスを屠殺した後、卵巣、
肝臓、腎臓、生殖腺、筋肉および脳組織を免疫組織化学
検査のために保存した。このような検査により、転移さ
れた腫瘍で、特に卵巣および肺腫瘍でmts−1が高度に
発現していることがわかった。
実施例3 良性及び転移性ラット腫瘍セルラインの作製 本発明に関連し、正常なFischer344ラット甲状腺細胞
をラットに移植する前に細胞懸濁液を照射することによ
り多くのラット甲状腺カルシノーマ及びセルラインを作
製した。非照射の単分散させたラット甲状腺細胞移植片
は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を注射により高いレベ
ルで与えた場合にはFischer344同系ラットへの移植後し
ばらくで形態的にも機能的にも正常な甲状腺組織となっ
た。移植前に甲状腺細胞を照射すると甲状腺カルシノー
マが生じた。IR6腫瘍は照射によって生じた上皮由来の
未分化な甲状腺カルシノーマとして得られた。IR6は殆
ど分化しておらず高度に転移性であってTSHを成長に必
要としない。IR4腫瘍もまた照射によって生じたラット
甲状腺カルシノーマとして得られるが、TSHを与えた場
合のみ小胞状のカルシノーマへと中程度に分化してゆっ
くり成長し、低い転移能力を有している。IR6CL1はIR6
から誘導されたセルラインであって親株IR6腫瘍の本来
の性質を保持していて、例えばTSHに関係なく成長を
し、ほとんど分化しておらず高度に転移性である。
樹立された上皮セルラインFRTL5は培養ラット甲状腺
細胞から誘導されたものである。FRTL5細胞はTSHを必要
とし、高度の転移性を保持しているが、同系のFischer3
44ラットに皮下注射した場合に腫瘍を形成しない。また
FRTL5セルラインの2つの腫瘍形成性誘導体ELCL1及びTR
CL1を分離してその特徴を記載した。ELCL1はFRTL5の自
然発生変異体であり、成長に低濃度のTSHを必要とする
変異セルラインとして樹立した。これは同系ラットの皮
下注射により原発性腫瘍を形成するが転移は認められな
かった。TRCL1は照射によって生じたFRTL5の変異体であ
り、成長にTSHを必要としない変異セルラインとして樹
立した。TRCL1細胞は転移能力の殆どない或いは全くな
い成長の速い原発性腫瘍を形成する。上記腫瘍及びセル
ラインの性質のいくつかを 表2に要約する。
実施例4 マウスmts−1遺伝子の分離 CSML−100及びCSML−0セルラインからのmRNAを上記
コムチンスキーらの方法に従って調製し、サンブリック
ら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vol.
1,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 7.
1−7.29頁)に従ってポリアデニル化したmRNAを選択し
た。高度に転移性であるCSML−100由来のポリ(A)+mR
NA2μgを適切な条件下に逆転写酵素で処理して一本鎖
の相補的DNA(complementary DNA:cDNA)を作成した
(サンブルックら、前出,Vol.2,8.1−1−8.86頁)。こ
のCSML−100のcDNAプールを低転移能力のCSML−0由来
のポリ(A)+nRNA50μgとサブトラクティブハイブリ
ダイゼーションさせて転移に関係のないcDNAを取り除い
た。このcDNA/RNA混合物を100℃で5分間加熱してから
氷水で冷却し、10mlガラス製遠心分離用試験管中7%フ
ェノール(0.1Mトリス塩酸、1.25M NaCl、120mMリン酸
ナトリウム緩衝液pH6.8でpH7.6に調節したもの)に加え
て最終反応量を1mlとした。試験管を25℃で7日間振と
うした。ハイブリダイゼーション後の混合物をクロロホ
ルムで2回抽出してから10mMトリス塩酸(pH7.5)及び1
mM EDTAで透析して過剰の塩を取り除き、そしてエタノ
ールで沈澱させた。二重鎖cDNA/mRNAは転移性の表現型
に特有とはいえない機能を示すのでヒドロキシアパタイ
トのカラムを通して除去した。一般的な方法によってこ
の一本鎖cDNAを2重鎖にし、クローン化してgt10ベクタ
ーに入れた(サンブルックら、上出、8.1−8.86頁)。
CSML−100及びCSML−0のP−標識化したcDNAプロー
ブと別々にハイブリダイゼーションさせて、転移中に高
度に機能するものを検出した。マウスのmts−1cDNAクロ
ーンはCSML−100プローブと強くハイブリッド形成した
がCSML−0プローブとのハイブリッド形成は弱いもので
あった。
実施例5 ラットmts−1cDNAの分離 正常及び腫瘍形成性の甲状腺腫瘍細胞由来のセルライ
ン正常甲状腺及び照射によって生じた甲状腺カルシノー
マ組織からラットのcDNAライブラリーを調製した。高転
移性のIR6腫瘍及び低転移性のIR4腫瘍からポリ(A)+m
RNAを精製した。一本鎖cDNAをIR6ポリ(A)+RNAから合
成し、このIR6mRNAを加水分解した。コーンらのフェノ
ールエマルジョンリアソシエーション法(Kohne et a
l.,1977 Biochemistry16:5329−5341)に従ってこのIR
6cDNAプールを50倍過剰のIR4ポリ(A)+mRNAとハイブ
リダイゼーションさせた。一本鎖cDNAは転移性の表現型
に関与する可能性があるものであり、ヒドロキシアパタ
イトのカラムを通してサブトラクティブハイブリダイゼ
ーション混合物から分離し(ヒドロキシアパタイトカラ
ムは二重鎖の核酸すなわち低転移能力のIR6の機能を有
するRNA:DNAハイブリッドと結合するであろう。)、そ
して残りのIR4mRNAをアルカリ加水分解した。この一本
鎖cDNAプールを二重鎖にし、クローン化してgt10ベクタ
ーに取り込んだ。
このサブトラクトしたIR6cDNAライブラリーをIR6及び
IR4ポリ(A)+mRNAを逆転写酵素で処理して得た32P標
識化一本鎖cDNAプローブを用いて別々にスクリーニング
した。IR6プローブと強くハイブリダイゼーションする
がIR4プローブのハイブリダイゼーションは弱いことか
らmts−1クローンが同定された。
実施例6 ヒトmts−1cDNAの分離 ヒーラ細胞(Hela cells)から調製したポリ(A)+
RNA用いてλgt10中にヒトのcDNAライブラリーを構築し
た。ライブラリーは42℃50%ホルマリン中で32P標識化
マウスmts−1cDNAプローブを用いてスクリーニングし
た。フィルターを室温で0.1%SDSを含む2倍のSSCで洗
浄してから次に50℃で0.1%SDS含有0.2倍SSCで2回洗浄
した。強くハイブリッド形成するcDNAクローンの配列を
調べた;高度に保存性の(conserved)Ca++結合性領域
の外側の領域のマウスのmts−1cDNAと非常に近い配列か
らヒトmts−1cDNAと同定された。ヒトのゲノムmts−1
遺伝子の配列及びmts−1オリゴヌクレオチドプローブ
を用いたmts−1mRNAのプライマーイクステンション分析
から判るように、このヒトmts−1クローンはその全長
を有するものである。ヒトmts−1遺伝子のヌクレオチ
ド及びアミノ酸の配列をSEQ ID NO:1およびNO:2に、
また図1及び2に示す。
mts−1 cDNAはまた、これらの細胞から単離したmRN
Aの逆転写次いでポリメラーゼ連鎖反応により、ヒトメ
ラノーマセルラインWm64から単離した。
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR) ヒトメラノーマセルラインWm−64から得られた総RNA
を、37℃で30分間次に95℃で5分間2mM MgCl2中でRNas
eを含まないDNase I(1U/μl)で予備処理して該DNase
を不活性化した。ポリA+RNAはRT−PCR実験の前にはDNas
e Iで慣例のように処理をしなかった。RNA(総RNA 1
μgまたはポリA+RNA50ng)を、22℃で10分間、42℃で
1時間そして90℃で10分間50mM トリス−HCl pH8.3、
75mM KCl、3mM MgCl2、3μM オリゴ−dT15、0.3mM
各dNTP、200UM−MLV逆転写酵素の存在下に逆転写した。
PCR反応によるヒトmts−1 cDNAの合成には次のヒトmt
s−1プライマーを使用した。
PRC増幅は、10mMトリスHCl(pH8.4)、50mM KCl、1.
5mM MgCl2、2.5mM dNTPを含む0.01%ゼラチン、0.6μ
M各プライマーおよび1.25U Tag DNAポリメラーゼ中
で行った。増幅は、94℃で1分間;52℃で2分間;72℃で
3分間次いで72℃で7分の延長期間の35サイクルによる
ものであった。
増幅されたDNAは、実施例7に記載した1%アガロー
スゲルから単離し、バキュロウイルストランスファーベ
クターにクローン化した。
実施例7 mts−1遺伝子生成物の発現 ロックション(Lockshon)及びワイントローブ(Wein
traub)の述べたベクター系を用いるDNAトランスフェク
ションによりmts遺伝子生成物のオーバーエクスプレッ
ションを行った。このベクターはpUC19を基本とするベ
クター系でブルースクリプト(BluescriptTM)ベクター
に非常によく似ている(図3)。ブルースクリプトベク
ターの独特のHind II部位に、強力なマウスザルコーマ
ウィルスプロモーター、続いてEcoR I部位、続いてSV40
ポリアデニル化配列を有する真核生物の制御配列を導入
した。MSV−LTR配列の下流の独特のEcoR I部位に完全な
mts−1cDNAが導入される。mts−1cDNAに内部EcoR I部位
があるためにmts−1リコンビナントの一部がEcoR Iで
消化されてmts−1cDNA分子全体が分断される。LTRのレ
トロウィルスプロモーターは非常に強固でmts転写情報
のオーバーエクスプレッションが期待される。このmts
−1リコンビナント表現ベクターは永久又は一時的な両
方の発現のために使用できうる。しかしながら安定な
(永久の)トランスフェクション体(transfectant)で
はコロニーの精製が可能であるので安定なトランスフェ
クション体が望ましい。これは転移能力の定量化に有用
な所定の表現型を提示する相同な集団を発現する。
pTrcHisBベクターからmts−1タンパク質の発現 大量のmts−1特異タンパク質が誘導可能な細菌ベク
ターpTrcHisB(Invitrogen)を用いて発現された(図10
a)。マウスmts−1 cDNAが、pTrcHisBのマルチプルク
ローニング部位でBamH I−Kpn I中にフレーム中(配列
分析により確認)でサブクローニングされた。これによ
ってプラミドpTBM Iが発生した。pTBM Iで発現された融
合タンパク質は、5個の縦列ヒスチジン残基(Ni++電荷
樹脂に対して高い親和性を有している)、エンテロキナ
ーゼ特異性切断部位、およびmts−1タンパク質生成物
を有していた。pTBM Iがコードしている融合タンパク質
の発現はIPTGで誘起された。同様な構築体がヒトmts−
1 cDNAで発生した。
バキュロウイルス発現ベクターでのmts−1タンパク質
の発現 シトロメガウイルスプロモーターを含有するプラスミ
ドを用いてpCMV/mts−111あるいはpCMV/mts−1111高度
発現ベクター保護mts−1ヒトおよびマウスcDNAをそれ
ぞれ構築した。
バキュロウイルス発現ベクターmts−1 BacPAK6プラ
スミドはpCMVクローンから次のようにして構築した。pC
MV−mts−1をBamH Iで消化し、mts−1 cDNAフラグメ
ントを1%アガロースゲルから精製した。精製したフラ
グメントをBamH I−切断pBacPAK1に結合させ、結合ミッ
クスをE.coli JM109細胞に形質転換した。正のクロー
ンを同定し、プラスミドDNAを配列決定して結合ジャン
クションの配向および組込みを確認した。
転移ベクターpBacPAK−mts−1をSf21細胞にBsu361消
化BacPAK6ウイルスDNAと共にトランスフェクションし
た。感染後速やかに細胞を1%アガロースにオーバレイ
してプラークを可視化し、かつクローンの混合を防止し
た。感染4−5日後、細胞を健常な細胞では取り上げら
れるが死滅細胞では取り上げられない薄赤色で染色し
た。プラークが、赤色またはピンク色の背景に対して透
明な円形として発現した。
α−mts−1抗体を用いるウエスタンブロット分析を
行って、数種のmts−1組換えウイルスがmts−1タンパ
ク質を産生したことを確認した。
実施例8 mtsタンパク質の精製 mts−1タンパク質の精製は牛脳と同一種に精製され
た他のS100族のそれと同様である(Baulder et al.,
J.Biol.Chem.261:8204−8212,1986)。フェノチアジン
−アガロース、亜鉛依存フェニル結合性セファロースを
使うアフィニティクロマトグラフィーが使えること、及
び該タンパク質の安定性から驚く程高純度の精製が可能
である。MonoQのFPLCクロマトグラフィーはS100族の分
離にはよく知られているものであり、またその他のHPLC
カラムがメリチン(melittin)シリカ等S100タンパク質
のアフィニティ精製に開発されている。大量のmts−1
を供給することのできる組織又は細胞には大量のリコン
ビナントmts−1を発現するよう処理された細胞、イー
スト及び哺乳類のセルラインだけでなく、本発明により
mts−1を発現する高度転移性の腫瘍及びセルラインが
含まれる。
His−mts−1融合体の精製 pTBM Iで形質転換された一夜の培養物を1:100に希釈
し、1.5時間増殖させた(OD600=0.3まで)。培養物を1
mM IPTGで誘起させ、37℃で4.5時間以上増殖させた。
細胞を採取し、次に菌体遠心分離で集め、6M グアニジ
ウム−HCl緩衝剤に再懸濁させた。細胞を1時間攪拌
し、次に4℃で15分間18K rpmで遠心分離した。上澄液
を集め、Ni++−NTA樹脂(Qiagenから入手した)の50%
スラリーに加えた。混合物を1時間攪拌し、カラムに充
填した。カラムをpHだけが異なる尿素をベースとする一
連の緩衝剤(各洗液はより低いpHである)で洗滌した。
タンパク質を緩衝剤D(8M尿素、0.1M Naホスフェー
ト、0.01M トリス/HCl、pH5.9)を用いて3mlフラクシ
ョンで溶離した。緩衝剤のpHが4.5に低下するまで(緩
衝剤E)、大量のタンパク質は溶離しなかった。これは
緩衝剤Dで溶離された単量体性形態のヒスチジン融合体
であり、一方凝集体は緩衝剤Eで溶離した。各フラクシ
ョンのアリコートをSDS−PAGE充填緩衝剤で沸騰させ、1
2%SDS−ポリアクリルアミドゲルに充填した。ゲルをク
ーマーシーブリリアントブルで染色した。この実験の結
果を図10bに示す。His−Mts1融合タンパク質の純度を確
認した後、アッセイを行って相対タンパク質濃度を測定
した。フラクションD2およびE1(これらのフラクション
は約3.2mg総タンパク質を含有していた)をプールし、
別のSDS−ポリアクリルアミドゲルで操作した。ゲルか
ら細長片を切取り、クーマーシーブリリアントブルーで
染色してゲル中のHis−Mts1タンパク質の所在を測定し
た。His−Mts1融合体を含有するゲルの部分を切取り、
ゲルから溶離によってタンパク質を単離した。
実施例9 ポリクローナル抗体の生成 mts−1ペプチドに対する抗体 下記のアミノ酸配列を有する合成オリゴペプチドを作
成した。
1)ヒトmts−1アミノ酸2−11(ユニーク): Ala−Cys−Pro−Leu−Glu−Lys−Ala−Leu−Asp−Val 2)ヒトmts−1アミノ酸22−37(カルシウム結合領
域): Lys−Glu−Gly−Asp−Lys−Phe−Lys−Leu−Asn−Lys
−Ser−Glu−Leu−Lys−Glu−Leu 3)ヒトmts−1アミノ酸42−54(ユニーク): Leu−Pro−Ser−Phe−Leu−Gly−Lys−Arg−Thr−Asp
−Glu−Ala−Ala 4)ヒトmts−1アミノ酸87−101(ユニーク): Asn−Glu−Phe−Phe−Glu−Gly−Phe−Pro−Asp−Lys
−Gln−Pro−Arg−Lys−Lys ペプチド1,3及び4はmts−1抗原として選んだ。とい
うのもこれらのコードしているのはmts−1タンパク質
にのみ見られるタンパク質であるからであって、すなわ
ちmts−1タンパク質のこれらの領域は他のタンパク
質、特には他のカルシウム結合タンパク質とに相同性は
見られないのである。ペプチド2はそれがmts−1のカ
ルシウム結合領域をコードしているので選んだ。それゆ
えペプチド2はカルシウム結合タンパク質類の多くと反
応性の抗体を生じる。
0.1−1mgのオリゴペプチドを含む100μlのフロイン
ト(Freund's)完全アジュバントニュージランド種の白
色雌ウサギの背に沿って10ヶ所に皮下注射して免疫付け
をした。このウサギは始めに皮下注射が容易なように背
の両側の毛をそっておいた。抗原−アジュバントの混合
物は2つの接続した1mlガラステフロン注射器中で混合
した。典型的にはウサギに1mgの抗原を注射した後、イ
ムノブロッティングによるアッセイで10-4以上に希釈し
ても血清が陽性を示すようになるまで2ヶ月毎に追加の
注射を行う。
全mts−1タンパク質に対する抗体 このmts−1タンパク質をHis−Mts1タンパク質として
発現させた(実施例7および8)。His−Mts1タンパク
質を含有する宿主細胞リゼイトをNi++−NTAカラム(Qia
gon)で分別した。最も多くHis−Mts1タンパク質を含む
フラクションをプールし、SDS−ポリアクリルアミドゲ
ルで電解した。精製したタンパク質をゲルから溶離し、
配列を決めて、これがHis−Mts1であることを確認し
た。
次に、ニワトリ3羽を精製したHis−Mts1タンパク質
で免疫化した。ニワトリを次の二つの理由から選択し
た。第一に、mts−1は哺乳動物中に高度に保持され、
卵巣系が一層良好な免疫反応を提供するものと期待され
ていた。第二に、抗体がニワトリの卵から容易に得るこ
とができる。従って、抗体を得るための動物の連続飼育
が避けられる。
発生したポリクロナール抗体をα−mts−1と命名
し、ウエスタンブロットおよび組織でその効果を確認し
た(実施例16および図13と14とを参照)。
実施例10 モノクローナル抗体の製造 モノクローナル抗体はコーラー及びムルスキン(Kohl
er and Mulskin,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976)及
びハーローら(Harlow et al.,Antibodies:A Labora
tory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ss,1988)の方法に従って調製する。Balb/cマウスを実
施例9に述べたコンジュゲートした或いは非コンジュゲ
ートのmts−1オリゴペプチドの0.1−1mgを含む100μl
のフロイント完全アジュバントで皮下で免疫をする。最
初の注射から2週間目にリン酸緩衝塩溶液(PBS)中100
μgの抗原を静脈に或いは腹腔内に注射して適当なmts
−1抗原によるブーストをマウスに行う。
マウス血清中に抗体の出現を確認して且つ最後の注射
から5日後にマウスを屠殺して脾臓を取り出した。この
脾臓を7mlドンス(Dounce)ホモジナイザー中で3.5−4m
lPBSと共に穏やかに粉砕して脾臓細胞を得る。細胞を次
にPR6遠心分離器に室温、1200rpm、6分間かけてペレッ
トとした。上澄液を吸入フラスコへ移して細胞は再び15
mlの0.83%NH4Clに懸濁させる。この懸濁液を室温で5
分間インキュベートした後37℃の10ml牛胎児血清中に置
いた。この細胞を再び室温、1200rpmで6分間遠心分離
してから上澄液を吸入フラスコに引いた後細胞を20mlPB
Sに再懸濁させた。
後続の細胞融合に用いるため次の溶液を調製した。
ヒポキサンチン(H)680mg/H2O 100ml;濃H2SO4yを204
滴加える;加熱溶解する。
アミノプテリン(A)46.4mg/H2O 100ml;1.0NのNaOH2
滴を加えて溶解する。
チミジン(T)775mg/100mlH2O;グリシンPEG−DME 45m
gを加える;42℃でPEGを溶融してからDME 1mlを加える
(37℃);1NのNaOHでpH7.6にする。DMEM;DEM500mlにウ
マ血清37.5ml、FCS37.5ml、L−グルタミン10.0ml、ガ
ラマイシン(garamycine)0.2mlを加える。
2倍HAT−DME;DME200mlにウマ血清25.0ml、FCS25.0ml、
L−グルタミン、ガラマイシン0.2ml、H 0.8ml、A
0.8ml、及びT 0.8mlを加える。(2倍HT−DMEはAを
省略)。
クローニング寒天:未洗浄のデフコ(Difco)寒天350mg
をH2O25mlに加えてオートクレーブにかける。
クローニング培地:2倍DME25mlに濾過したコンディショ
ンDMEM35ml、ウマ血清7ml、FCS7ml、L−グルタミン1m
l、ガラマイシン0.1mlを加える。
プラマサイトーマ(plamacytoma)P3 NSl/1−Ag4−
1細胞の入った2つの30mlフラスコに遠心分離用試験管
を入れて室温、1200rpmで8分間スピンダウンさせた。
脾臓細胞を20mlPBSに再懸濁させた。各懸濁液から0.01m
lを抜き取り0.4%トリパンブルー0.1ml及びPBS0.3mlを
加えて細胞数をカウントした。脾臓細胞とNS1/1−Ag4−
1細胞の比が10:1となる様に各懸濁液の体積を調節して
から懸濁液を混合した。この混合液を室温、1200rpmで
8分間遠心分離してペレットとし、上澄液を0.1ml残し
て除去した。細胞をこの残した液体に再懸濁させてから
pH7.6の1:1PEG−DEM溶液1.3mlを加えた。最終体積が25m
lとなるまでDMEで倍々に希釈した。
細胞を再びペレットとしてから上澄液を捨てて、細胞
を十分な量の50%2倍HAT−DME/50%コンディションDME
Mに再懸濁(上澄液はSp2/0細胞を形成する)させて最終
濃度約3.5×106個の脾臓細胞を得た。この細胞を平底の
96ウェルのプレート(TC−96:Flow Laboratories)に
0.1mlずつ分注した。プレートを可視コロニーが形成さ
れるまで、通常10−12日間であるが、37℃、加湿空気/C
O2条件で培養する。ウェルの内容物をTC−24プレート
(Flow Laboratories)中のHAT−DME0.5mlに移した。
正常な細胞成長が現れたならば(約2−5日間)培地0.
35mlを取り出してELISA法、ヘマグルチニン阻害アッセ
イ又はノイラミニダーゼ阻害アッセイによって抗体産生
を試験する。この細胞が目的の抗体を産生していたなら
ばTC−24中のDMEM0.1ml中に移す。
ハイブリッド細胞をクローン化するために溶融寒天25
mlとクローニング培地76mlを混合して、5mlをシャーレ
に取り、固化させる。DMEM培養の細胞を50%DMEM/50%
コンディションDMEM中で細胞成長に合わせて10-1又は10
2に希釈する。それぞれの希釈液の0.1mlずつを減菌した
試験管に取り、それぞれクローニング培地/寒天混合物
0.9mlを加える。よく混合し寒天の下敷きの表面に注
ぐ。固化したらばプレートを37℃の培養器中でコロニー
が肉眼視可能になるまで(典型的には7−10日間)培養
する。コロニーを拾い上げTC−99プレート中のDMEM/コ
ンディションDMEM0.1mlに移して37℃のCO2培養器で培養
する。培地が酸性になったらば(通常1−4日間)、TC
−24プレート中のDMEM0.05mlに移す。細胞の成長が50%
コンフルエント(confluent集密状態)になったら培地
を取り出し抗体産生が行われていたかを予め試験する。
mts−1特異的抗体を産生している細胞を25cm2フラスコ
中のDMEM5mlに移す。クローン化した細胞を凍結するか
又は腹水を起こさせるためにマウスに注射する。
実施例11 mts−1のサンドイッチアッセイ 組織標本を清澄にした細胞溶解物または血清中のmts
−1の存在を検出するために実施例9または10で調製し
たモノクローナル抗体約100μlをラテックスビーズ上
に不動化処理し、試験する血清または清澄溶解物約100
μlと接触させた。不動化抗体及び溶解物を約10分間反
応させてから不動化抗体と結合したmts−1抗原の付着
したラテックスビーズをPBS(リン酸緩衝塩溶液で洗浄
する。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したmts−1
特異的抗体約100μlをラテックスビーズに加える。標
識化抗体ビーズ混合物を約10分間インキュベートする。
この時点で酸素基質、過酸化水素及びアミノアンチピリ
ンをビーズに接触させて混合物を5−10分間インキュベ
ートし、試料が発色すれば反応は陽性でmts−1の存在
を示す。
実施例12 非転移性細胞に比べて転移性の細胞ではmts−1の発現
が10−100倍高い mts−1の発現レベルを試験するために転移性及び良
性の腫瘍、及びそうした腫瘍由来のセルライン、及び対
応する正常組織からmRNAを精製した。精製したRNAをゲ
ル中で断片化し、ノーザン分析のためmts−1核酸プロ
ーブと共にナイロン膜上にブロットした。
図4は本発明のCSML−0セルラインは非常に低い転移
能力を有していてそのマウスmts−1の転写レベルが非
常に低いか、或いは検出不可であることがわかる。これ
とは対照的に極端に高い転移能力を有している本発明の
CSML−100セルラインのmts−1発現レベルは高い。これ
より転移性であるCSML−100細胞は非転移性のCSML−0
細胞の少なくとも100倍のmts100を発現していると考え
られる。
別の実験に於いて様々な転移性、非転移性の腫瘍及び
腫瘍セルラインを32P−標識化マウスmts−1プローブを
用いたノーザン分析でそのmts−1の発現レベルを試験
した。こうした腫瘍及びセルラインの性質の詳細を実施
例1、2、3及び表1、2に示した。図5よりわかるよ
うに、転移性(ゲルレーン上「M」で示されるもの)の
腫瘍及びセルラインのみが高レベルのmts−1発現を示
している。様々なタイプの転移性腫瘍及びセルラインは
非転移性の又は正常な細胞に比べてmts−1の発現レベ
ルは10−100倍高い。高いmts−1発現レベルを示す転移
性細胞にはRL−67肺カルシノーマ腫瘍、レーヴィス肺カ
ルシノーマ腫瘍、LMEC胚カルシノーマ腫瘍、及びT−36
胚カルシノーマ腫瘍とセルラインがある。
図6は高度に転移性のアデノカルシノーマラット腫瘍
IR6(レーン5)及びIR6由来のセルライン(レーン7)
はマウス肺カルシノーマ由来の転移性セルラインである
ライン1(レーン3)同様に、腫瘍形成性であるが非転
移性のセルラインTRCL1(レーン6)や非腫瘍形成性セ
ルラインFRTL5(レーン8)と比べて全て10−100倍高い
mts−1発現レベルを示している。
この様に、これらのデータはmts−1の発現は正常細
胞又は非転移性(良性)腫瘍細胞中のものと比較して転
移性細胞中では10−100倍に高められていることを明確
に示している。
表4では、高度の運動性を有する細胞または転移性細
胞のみがmts−1 RNAを高レベルで発現することが示さ
れている。正常化のためのγ−作用発現を用いてノーザ
ン分析により検知した。オートラジオグラムをデンシト
メトリーでトレースし、そしてトレースするピークの高
さと発現量との関係で0〜5の数値を割り当てた。供試
各細胞タイプの状態を正常(N)、良性(B)、転移性
(M)またはセルライン(C)と特徴付けした。供試試
料の数は細胞タイプの下に指示する。
表4では、転移性細胞タイプのみが0.5よりも大きいm
ts−1発現レベルを有していることを示している。従っ
て、高レベルのmts−1発現は数多くの転移性細胞で観
察され、これらの細胞には例えば肝ヘパトーム、肺カル
シノーマ、膵臓癌、乳アデノカルシノーマ、子宮内膜
癌、卵巣癌、頸部癌、メラノーマ、リンパ腫および白血
病があげられる。しかし、このような高レベルのmts−
1発現は転移性細胞でのみ観察され、非転移性細胞では
高レベルのmts−1を発現しない。
実施例13 mts−1遺伝子を培養細胞に導入すると転移性の表現型
を与える 本願発明によればmts−1はラット甲状腺やマウス肺
からの正常な、或いは非転移性の腫瘍セルラインでは発
現されていない。しかしマウス肺カルシノーマから誘導
された高度に転移性のLine−1セルラインはmts−1のm
RNAを発現している。ライン1細胞を3%DMSO存在下で
成長させた場合にはその転移能力を失い、さらにmts−
1のmRNAの発現レベルは検出不可能となる。これはmts
−1の発現が転移性の表現型と相関していることを示し
ている。
高レベルのmts−1発現が転移性表現型を与えている
ことを立証するためにラットmts−1cDNAを図3のMSVベ
クターにクローンしてmts−1タンパク質を高く発現さ
せた。このmts−1発現ベクターを、選択可能なネオマ
イシン(Neo)遺伝子をコードしているプラスミドを持
つマウス肺カルシノーマライン1細胞へコ・トランスフ
ェクションさせた。ゲノムDNAのサザンブロット分析に
よりネオマイシンに耐性で安定なセルラインについて、
そのゲノムへのmts−1遺伝子の統合を調べた。対照は
3%DMSO存在下で成長させた選択的ネオマイシン耐性遺
伝子のみを安定にトランスフェクションさせたLine−1
細胞を用いたが、これはDMSOなしで生育させたトランス
フェクションしていないLine−1細胞と同様に処理され
ている。
mts−1遺伝子をトランスフェクションさせた10のト
ランスフェクション体を3%DMSO中で成長させて、通常
であれば非転移性である細胞の表現型に高度に発現して
いるリコンビナントmts−1遺伝子の獲得が生じている
か試験した。トランスフェクション体N2、N3、N4、N5及
びN8の細胞105個を3匹のマウスの尾部静脈に注射し
た。対照にはLine−1細胞及びネオマイシンのみをトラ
ンスフェクションさせた2つのセルライン(Neo2、Neo
3)の細胞105個を3匹のマウス尾部静脈に注射した。2
週間後に動物を屠殺してインディアインクで固定染色し
て肺転移を調べた。注射前に3%DMSO中で成長させたN
4、N5細胞を注射された動物では高レベルの転移が見ら
れ、DMSOなしで成長させたLine−1細胞と同等であった
一方、他のセルラインの転移性は低レベルであった。全
てのトランスフェクション体が高レベルの転移性を提示
するわけではないということは、ゲノムの「サイレン
ト」領域にmts−1が挿入されたための発現の違いであ
ろう。この3%DMSO中で成長させたN1〜N10トランスフ
ェクション体のmts−1発現レベルを調べるために、こ
れらのマウス注射前のセルラインからmRNAを抽出し、ノ
ーザンブロット分析によりmts−1の発現レベルを分析
した。図8に示される様に全てのトランスフェクション
体が高レベルでmts−1を発現しているわけではなく、
これはおそらくmts−1挿入部位近くに存在するゲノム
制御機構によるものであろう。トランスフェクション体
セルラインN3、N4及びN5は高レベルでmts−1を発現し
ているが、N3セルラインは低分子量のmts−1転写物を
与えていて、これはトランスフェクション及びゲノムの
統合の際の配列の再編成(rearrengement)によって該
セルラインのmts−1遺伝子に欠陥が生じたであろうこ
とを示している。
表3のように、MSVLTRプロモーターに関してセンス
(sense)及びアンチセンス方向(antisense)で挿入さ
れたラットmts−1遺伝子を有している発現ベクターを
持つトランスフェクション体セルラインをラットに静脈
内注射しても同様の結果が得られた。
この様にこれらのデータは高度に発現したmts−1遺
伝子の導入により非転移性の細胞に転移性の表現型が現
れうることを示している。
上記実験に於いてIR6腫瘍細胞は単独で注射ラットの2
0%に肺転移を生じさせ、ラットによっては腎臓に1−
2の腫瘍が見られた。意味を持つ方向でmts−1を有す
るトランスフェクション体を注射したラット(セルライ
ン156/2、156/7及び156/8)の50%に転移が見られた一
方、意味を持たない方向でmts−1を有するトランスフ
ェクション体を注射したラット(セルライン162/9及び1
62/1)では転移のあったものは10%であった。
この様に哺乳動物のmts−1遺伝子をマウス或いはラ
ットの細胞にトランスフェクトさせたものはマウス或い
はラットに注射すると細胞に転移を起こさせる。
実施例14 CSML−100細胞はCSML−0細胞よりもゆっくりと増殖す
る方法: CSML−0およびCSML−100細胞を106個の細胞/皿の密
度で播種し、ヘマトサイトメーターを用いて次の日に計
数した。DNA合成の相対速度を〔H〕チミジンを混入
して測定した。両方の実験を3回行い、データを平均値
として報告した。
DNA合成は次のようにして測定した。細胞を培地で一
度洗滌した。〔H〕チミジンの1μlを含む培地2ml
を細胞に加え、4時間培養した。細胞をPBSで二度洗滌
し、そしてTCAを標準プロトコールに従って沈澱させ
た。TCA沈澱を0.5%トライトンX−100を含む0.1N NaO
Hに溶解し、30分間氷の上にのせた。得られた懸濁液を
シンチレーションカウンターのためにシンチレーション
液6mlに加えた。
結果: 表5には、転移性CSML−100細胞については、非転移
性CSML−0細胞よりも少ない細胞増殖および少ない三重
水素化されたチミジンの取込みが観察されることを示し
ている。
特に、皿当たり僅か1.1×106個のCSML−100細胞が観
察された、一方1.6×106個のCSML−0細胞が観察され
た。両方のタイプの1×106個の細胞を塗布しているの
で、CSML−100細胞増殖はCSML−0細胞増殖の僅か1/6位
であった。図11は、2日乃至少なくとも5日の間のCSML
−100細胞の増殖はCSML−0細胞よりも少ないことを更
に示している。
実施例15 mts−1 mRNAは組織に対するmts−1アンチセンスプロ
ーブのハイブリッド形成により検知できる 方法: マウス胚芽栄養芽層細胞はmts−1を発現する。組織
切片でのmts−1 mRNA検知のためのmts−1核酸プロー
ブの効能を説明するために、生後8日のマウス胚の凍結
切片を得た。切片を標準顕微鏡スライドにのせ、3%ホ
ルムアルデヒド、0.1Mリン酸緩衝剤、pH7.2で5分間固
定した。
センスおよびアンチセンスmts−1リボプローブを製
造者の指示に従ってT7およびT3RNAポリメラーゼを用い
てmts−1の31未翻訳領域を含むpGEM−2−mts−1ベク
ターからのイン・ビトロ転写により調製した。転写は3H
−UTP(45μG、Amersham)を用いて行った。
ハイブリッド形成の前に、スライドを室温で10分間0.
1M アリエタノールアミン(ariethanolamine)中の0.2
5%(v/v)無水酢酸でアセチル化した。切片を2×SSC
で洗いすすぎし、エタノールシリーズ(30%、50%、70
%、85%、95%、99%、99%)で脱水した。
乾燥切片に、80℃で予熱した〜104cpm/μlの3Hセン
スまたはアンチセンスプローブを含むハイブリッド形成
溶液(0.3M NaCl、20mM トリス pH8、1mM EDTA、50
%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、1×Denhard
t's、500μg/ml酵母RNA)20μlを適用し、オーバース
リップで確保した。スライドを鉱油に浸漬し、〜12時間
45℃で培養した。スライドから過剰の鉱油を除去し、ス
ライドをクロロホルムを通して三度洗滌した。スライド
を次に4×SSC中3×5洗いすすぎしてオーバースリッ
プを除去した。0.5M NaCl、10mM トリス pH8.0でRNa
se消化(20μg/ml RNaseA、1U/ml RNase T1)を37℃
で30分間行った。スライドを37℃で30分間RNase緩衝剤
中で一度;次に室温で30分間2×SSC4;次いで55℃で
30分間0.1×SSCで;最後に室温で30分間0.1×SSC4で
洗った。スライドを300mM酢酸アンモニウムを含むエタ
ノールシリーズで脱水した。一旦スライドを乾燥し、次
にスライドをNTB−2乳濁液(Kodak)〔600mM 酢酸ア
ンモニウムで1:1に希釈した〕に浸し、4週間オートラ
ジオグラフ処理した。スライドをD−19 2.5分展開
し、30秒2%酢酸中で固定し、5分間固定し、そして30
分水で洗いすすぎした。最後に、切片を対比染色し、カ
バースリップして、暗所照明を用いて写真撮影した。
結果 ハイブリッド形成されたmts−1プローブは、mts−1
プローブがアンチセンスプローブである場合のみ、マウ
ス栄養芽層細胞で検知された(図12a)。センスmts−1
プローブはシグナルを生じなかった(図12b)。これら
のデータから、アンチセンスmts−1プローブを組織切
片でmts−1 mRNAを検知するのに使用し得ることがわ
かる。
実施例16 ニワトリ抗−mts−1抗体はウエスタンブロットおよび
免疫組織化学によってmts−1タンパク質を検知する 方法 ニワトリ抗−mts−1抗体(α−mts−1)を実施例9
に記載のようにして調製した。
CSML−0およびCSML−100細胞のリゼイトを12%SDS−
PAGEゲルで電気泳動し、ウエスタンブロット分析のため
にポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜に転移させ
た。3μgの精製mts−1を含有する膜を室温で3時間
抗−mts−1抗体(1:2000)と共に、次に室温で2時間
抗−ニワトリIgG−HRPと共に培養した。シグナルをジア
ミノベンゼン(DAB)で検知した。
α−mts−1抗体の特異性を試験するのに、CSML−100
タンパク質を含む膜を遊離組換えmts−1タンパク質260
ngの存在下および不存在下α−mts−1でプローブし
た。精製mts−1 3μgを含む膜を上述のとおり処理
した。但し、一次抗体(α−mts−1)の添加時に精製
した遊離mts−1の13μgを加えた。
凍結マウス脾臓を切片とし、ガラススライドに固定し
た。切片をHarlow等の方法に従ってα−mts−1をPBAで
1:1000に希釈したものでプローブした。α−mts−1抗
体の特異性を試験するために、遊離mts−1タンパク質1
30ngを希釈したα−mts−1抗体と共に一組のスライド
に適用した。
α−mts−1抗体は、遊離mts−1がα−mts−1をmts
−1ウエスタンブロッドまたはマウス脾臓切片への結合
を効果的に排除する場合に、mts−1タンパク質に対し
て特異的であるとみなした。
結果: 図13には、CSML−0(レーン1)およびCSML−100
(レーン2および3)細胞リゼイトのウエスタンブロッ
トを示す。レーン1および2は、遊離のmts−1タンパ
ク質を添加することなく、α−mts−1抗体でプローブ
した。図示した如く、10−12Kd mts−1タンパク質はC
SML−100細胞(レーン2)で発現するが、CSML−0細胞
(レーン1)では発現しない。更に、遊離のmts−1タ
ンパク質260ngはレーン3においてCSML−100細胞リゼイ
トに結合する抗体を効果的に除去した。従って、α−mt
s−1抗体は、mts−1タンパク質に対して極めて特異的
である。
同様に、mts−1タンパク質は凍結マウス脾臓切片で
検知され(図14a)、そしてこのような組織切片で結合
しているα−mts−1抗体は、遊離のmts−1タンパク質
を抗体と共に切片に適用した場合に除去された。
従って、mts−1タンパク質はウエスタンブロット
で、またα−mts−1抗体を用いて組織切片で容易に検
知できる。
実施例17 低分子量mts−1タンパク質は転移性癌を有する動物か
ら得られる血清でのみみられる 方法: マウスでの研究:CSML−0およびCSML−100細胞をA/J
マウスの尾静脈に1×105個の細胞/マウス(図15a、レ
ーン2)または1×106個の細胞/マウス(図15b、レー
ン2)で静脈注射した。3週間後に、マウスを屠殺し、
肺について転移の有無を調べ、また血液を採取した。血
液を室温で1時間凝固させ、ミクロヒュージして血清を
単離した。血清試料を13% SDS−PAGEゲル(図15a)ま
たは13%トリス−トリシンゲル(図15b)に100μg/レー
ンで充填した。次に、タンパク質をPVDF膜に転移させ、
α−mts−1抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ抱
合二次抗体の1:1000希釈物でプローブした。
mts−1はTリンパ球および活性化マクロフアージで
発現する。検知されたmts−1タンパク質はTリンパ球
およびマクロフアージを包含する正常血液細胞の溶解か
ら得られたときは、全マウス血液を溶解し、そしてウエ
タンブロット分析でα−mts−1抗体でプローブした。
全血を正常マウスから採血し、トライトン−×100液で
溶解し、そして13%トリス−トリジンゲルで電気泳動し
た。ゲルのPVDF膜ブロットを調製し、上述の如くプロー
ブした。
血清中のmts−1の存在が単にTリンパ球および活性
化マクロフアージの数を増加し得る慢性免疫反応に因る
ものか否かを定めるために、マウスに長時間かけてサル
モネラLPSを注射して慢性免疫反応を誘起させた。血清
を採取し、ウエスタン分析を上述の如くして行った。
ヒトでの研究:血清試料を正常の婦人および乳カルシ
ノーマまたは進行した悪性リンパ腫を有する患者から得
られた。各血清試料150μgを12%SDS−PAGEゲル上を流
した。タンパク質をPVDF膜を転移させ、膜をα−mts−
1の1:1000希釈物でプローブし、次に二次抗体(ウサギ
抗ニワトリIgG−HRP)の1:1000希釈物でプローブした。
反応をDAB溶液で展開した。
結果: マウスでの研究:静脈注射後3週間目に、CSML−100
を投与されたマウスは非常に病的状態にみえ、呼吸困難
を伴っていた。注射した動物および注射しない動物から
得られた血清のウエスタン分析により、CSML−100細胞
を投与されたマウスのみが10−12Kd mts−1タンパク
質(図15aおよび15b、レーン2)を有していることがわ
かった。ウエスタン分析の前3週間に105個ほどの少な
いCSML−100細胞の注射によって、陽性の血清反応が生
じた。105個または106個のCSML−100細胞を注射したマ
ウスの肺は広範な転移を有していた。
α−mts−1抗体はウエスタンブロットで全ての試料
で高分子量のバンドを検知した。しかし、α−mts−1
抗体と共に培養すると、ウエスタンブロットに対して遊
離のmts−1タンパク質を添加することによって、高分
子量バンドからシグナルを除去することができなかっ
た。CSML−100注射マウスでみられた低分子量バンドの
みが、遊離のmts−1タンパク質と拮抗することによっ
て除去された。従って、より低分子量のバンドのみがmt
s−1タンパク質である。より高分子量のバンドはα−m
ts−1ポリクロナール抗体と交差反応する豊富な血清タ
ンパク質であり得る。
図15cは、血清中で検知されるmts−1タンパク質は全
血の正常成分ではなく、また慢性免疫反応の結果でもな
いことを示している。mts−1タンパク質は溶解全血細
胞では検知されない(図15c、5、10、20および25μl
溶解全血を含有するレーン1〜4)。しかし、mts−1
は、正のコントロールとして提供された、同じように処
理されたCSML−100細胞で検知された(図15c、レーン
5)。
図15dは、転移性癌患者の血清で検知されたmts−1タ
ンパク質は長時間にわたってサルモネラLPSで誘起され
る慢性免疫反応に因るものではないことを示している。
mts−1タンパク質は、慢性的に免疫的に刺激したマウ
スから得られた血清75μg、100μgまたは150gで検知
することができなかった(図15d、レーン1〜3)。
従って、10〜12Kd mts−1タンパク質は転移性癌を
有するマウスの血清で検知することができる。コントロ
ールマウスの血清では、mts−1タンパク質は検知され
ていない。
ヒトでの研究:図16では、mts−1タンパク質は、転移
性癌を有することが知られている患者から得られた血清
にのみ検知し得ることを示している。約27Kd mts−1
タンパク質が、転移性乳癌の患者(図16、レーン6)お
よび転移性リンパ腫の2人の患者(図16、レーン5およ
び7)から得られた血清中で検知することができた。
しかし、このような27Kd mts−1タンパク質は、正
常な患者から得られた血清(図16、レーン3)または非
転移性乳癌の患者から得られた血清(図16、レーン1)
または非転移性リンパ腫の患者から得られた血清(図1
6、レーン2および6)では検知されなかった。
図16a−dに明らかなより高分子量のバンドはmts−1
タンパク質ではない。特に、ウエスタンブロットが遊離
のmts−1タンパク質の存在下にα−mts−1抗体でプロ
ーブすると、27Kdタンパク質バンドのみが消失する。遊
離のmts−1タンパク質は高分子量シグナルを除去しな
い。従って、α−mts−1ポリクロナール抗体は豊富な
血清タンパク質と交差反応することができる。このよう
な交差反応性は、例えばヒトmts−1タンパク質に対し
て向けられている抗体(α−mts−1はマウスmts−1タ
ンパク質に対して向けられている)を用いることによ
り、あるいは実施例10に記載の如くして調製された初め
て特異的なモノクロナール抗体を用いることにより除去
することができる。
従って、mts−1タンパク質は転移性癌の患者から得
られる血清でのみ検知可能である。mts−1タンパク質
は、正常患者の血清または非転移性癌の患者の血清では
検知することができない。それ故、mts−1タンパク質
に対して向けられている抗体は患者の転移性癌を診断
し、検知するための簡便な血清イミノアッセイで使用す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ルカニディン, ユージン デンマーク国 ディケイ−2100 コペン ハーゲン ロンガーデ 14.3.エムエ フ レジル 63 (56)参考文献 特表 平6−500018(JP,A) Gene,Vol.135,No.1− 2(1993)p.229−238 Biochemistry,Vol. 31,No.4(1992)p.10258−10264 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/574 C07K 14/47 BIOSIS(DIALOG) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】転移性乳癌又は転移性リンパ腫について試
    験すべきヒトから得られた血清を、ヒトmts−1タンパ
    ク質又はその抗原性フラグメントと反応性を有する抗体
    と抗原−抗体複合体を形成するのに十分な時間及び条件
    下に接触させ、そして前記抗原−抗体複合体を検知する
    ことを特徴とする転移性乳癌又は転移性リンパ腫の免疫
    検定法。
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