JP3217801B2 - 味覚センサおよびその製造方法 - Google Patents

味覚センサおよびその製造方法

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JP3217801B2 JP02045091A JP2045091A JP3217801B2 JP 3217801 B2 JP3217801 B2 JP 3217801B2 JP 02045091 A JP02045091 A JP 02045091A JP 2045091 A JP2045091 A JP 2045091A JP 3217801 B2 JP3217801 B2 JP 3217801B2
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潔 都甲
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人間の五感を代行で
きる人工的なセンサに係り、とくに味覚という、従来は
人工的なセンサでは代行できないとされた、ヒトの感覚
に代わるセンサあるいはトランスジューサと呼ばれる電
子素子に関する。
【0002】
【従来の技術】同一出願人は、先に「味覚センサ及びそ
の製造方法」の発明につき特許出願をし(特願平1-1908
19号;以下、同一出願人の先願発明という)、その明細
書及び図面によって、ある種の高分子重合体の表面マト
リックス内に特定の分子配列をもって収納されたいわゆ
る脂質性分子群が、基本味と呼ばれる塩味,酸味,苦
味,甘味に対して、感度を示すセンサとなることを示し
た。しかも、この種のセンサは、人間の五感の一つであ
る味覚に代わり味を測定できるものであることを示し
た。
【0003】これを、少しく具体的に説明すると、同一
出願人の先願発明では、たとえば、高分子重合体として
ポリ塩化ビニル(PVC)を用い、それにフタル酸ジオ
クチル(DOP)のような可塑剤と脂質とを概ね2:
3:1の重量比で混合したものをテトラヒドロフラン
(THF)に溶融し、平底の容器に移して、均一に加熱
された板上で約30℃に2時間保持して、THFを揮発さ
せ、脂質膜すなわち,PVCの表面マトリックス内に収
納された脂質性分子膜を得ていた。この脂質膜が味覚セ
ンサとなることを実験で確認している。
【0004】また、この際に、脂質膜を塩化カリウム
(KCl)の水溶液に浸してみると、脂質性分子の親水
基が脂質膜の表面に顔を出す形で配列するようであり、
センサ(膜電位)の感度と安定度が改善されることを示
した(特願平1-190819号)。
【0005】しかし、こうして作られた脂質膜をセンサ
とすることは、一応の測定結果は得られるものの、高分
子重合体の表面マトリックス内に脂質性分子を納めると
いう製造方法では、分子レベルでの構造が一定しない、
すなわち表面マトリックスそのものが一定したものが常
に得られるとは限らず、そこに脂質性分子が収納された
脂質膜も、一定品質のものがいつも作られるという保証
も得られにくく、脂質膜内の脂質性分子の配向性も悪
く、したがって、膜電位や電気抵抗の測定も、データに
バラツキが生じ易く、感度も不充分であるという事情は
避けられなかった。
【0006】また、高分子重合体の表面マトリックス内
に比較的容易に納めることのできる脂質性分子の種類も
限られていた。たとえば、フォスファチジルコリン(P
C)等の、生体膜を構成している脂質は、ポリ塩化ビニ
ル(PVC)等の高分子材料との相性が悪いため、味覚
センサに用いる脂質膜の形成が困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の脂質膜を用いた
味覚センサを、以下の3点に注目して改良することがこ
の発明の課題である。すなわち、 味覚センサの品質を一定にする。 味覚センサの品質を向上させる。 味覚センサの種類を増やす。(多様化する)
【0008】そのために再現性の良い安定した、しかも
バラツキの少ない膜電位を各基本味に対して呈する脂質
膜の構成と、その脂質膜を用いた味覚センサを実現する
ことをこの発明の目的としている。
【0009】また、従来の脂質膜の構成では利用の困難
であった脂質、特に、生体膜を構成している脂質、およ
び、脂質に限らず味覚センサの材料と成り得る物質を利
用できるような膜の構成と、その膜を用いた味覚センサ
を実現することをこの発明の目的としている。
【0010】とりわけ、物質の膜電位とか、表面の電気
伝導度といった物理量、すなわち、物質が周囲環境と接
していて、外界のインターフェースとして外界の影響を
微妙に受けたところの物理量を測定するセンサの品質と
性能の安定したものを得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】味物質のセンシングには
親水基が、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、ある
いは両性であるものも適用可能と考えられており、これ
らは親水基と疎水基とを有する両親媒性物質と呼ばれる
ものである。あるいは、アルカロイド等の苦味物質、た
とえば、キニーネ等も膜に吸着し、かつ、電荷を持つた
め味覚センサの材料と成り得る。
【0012】この発明では、これらの物質の利用を考慮
しつつ、配向性を向上させ、安定した品質と性能を有す
る味覚センサ用の膜を得るために、まず、製造手順を変
えてみることとし、それによって、基板上に安定した一
様な両親媒性分子の層または苦味物質の分子の層を形成
することとしている。
【0013】すなわち、高分子重合体と可塑剤と脂質性
物質とを所定量混合し、それを溶剤に溶かして、平底容
器に入れ、溶剤を揮発して脂質膜を得ていた同一出願人
の先願発明では、高分子重合体の表面マトリックスが一
様なものが得られにくいと思われること、ポリ塩化ビニ
ル等の高分子重合体と相性の悪い物質の利用を図るこ
と、および配向性の向上を図ることから高分子重合体と
の混濁を避け、第1に両親媒性物質または苦味物質を水
に溶かす工夫をする。たとえば苛性ソーダのようなアル
カリ水溶液を溶剤としたり、水とよく溶け合う各種のア
ルコールを溶剤として両親媒性物質または苦味物質を溶
けた状態として水になじませるようにする(多少の混濁
は可とする)。
【0014】第2に基板として、少なくともその表面の
一部には(味覚センサの要部となる両親媒性分子または
苦味物質の分子の膜が付着する部分には)、両親媒性物
質または苦味物質の疎水基に親しむ(よく結合する)物
質(親疎水基性とでもいうべき性質を有する物質)を付
着させておく。たとえば、通常のガラス平板をステアリ
ン酸に浸したものがその条件を満たす基板となる。ま
た、可塑剤を含むポリ塩化ビニルの棒や板もその条件を
満たす基板となる。
【0015】こうした両親媒性物質または苦味物質の疎
水基に親しむ表面をもつ基板を、第1の段階で作られた
両親媒性物質または苦味物質の水溶液中に浸すと、両親
媒性物質(すなわち、疎水性部位と親水性部位とを備え
た分子構造をもつ物質)または苦味物質の疎水性をもつ
部位が第2の段階で用意された基板の表面になじむよう
に付着する。こうして、基板上に両親媒性分子群または
苦味物質の分子群の一様な層を形成することとした。
【0016】
【作用】前項で述べた手順に従って作られた基板上の両
親媒性分子層または苦味物質の分子層は、基板の表面に
付着された両親媒性物質または苦味物質の疎水基と親し
みやすい性質(以下、親疎水基性という)の物質(たと
えばステアリン酸)と両親媒性分子または苦味物質の疎
水基とが結合する形をとることになるから、基板上に形
成された両親媒性分子群の層または苦味物質の分子群の
層は、その親水基を表面に露出して、一様に配列してい
るものと考えられる。いわば、両親媒性物質または苦味
物質の単分子層(モノレイヤ)のようなきれいな配列を
しているものと思われ、電子顕微鏡による観察でも、そ
のことが示唆されるところであった。
【0017】
【実施例】この発明でいう両親媒性分子は疎水性部位と
親水性部位を有する分子であり、その分子群で成る物質
(両親媒性物質)の例は表1に示されるようなものであ
る。
【0018】
【表1】
【0019】また、苦味物質は苦味を呈する物質であ
り、その例は表2に示されるようなものである。
【0020】
【表2】
【0021】この発明の味覚センサの製造方法の一実施
例(特許請求の範囲の請求項2に記載の製造方法の一実
施例)を図2に示す。すなわち、図2は製造方法の流れ
を示すもので、左側の最上段工程5では、両親媒性分子
群または苦味物質の分子群をアルコールに溶かしたもの
を水に溶かして両親媒性物質または苦味物質の水溶液
(多少の混濁があってもよい)を作るか、両親媒性分子
群または苦味物質の分子群を強アルカリ(例、苛性ソー
ダ)の水溶液に溶かしたものを用意する。他方では両親
媒性分子または苦味物質の分子が備えている疎水基と親
しみをもつなじみやすい物質をベースとする膜をもった
基板を作る。具体的な例を示せば、工程6において、ポ
リ塩化ビニル(PVC)200mg と可塑剤であるフタル酸
ジオクチル(DOP) 250μlとを溶剤であるテトラヒ
ドロフラン(THF)で溶解したものを作る。工程7に
おいて、それを平底のシャーレの上で30℃で加熱して、
THFを揮発させて、基板となるベース膜を作る。ある
いは、ステアリン酸を工程6で用意し、ガラス基板をス
テアリン酸に浸して取り出すことで工程7を代用し、ス
テアリン酸のベース膜が表面についたガラスの基板を用
意する。こうして作られたベース膜は、親疎水基性の基
が表面に顔を出しているから、両親媒性物質または苦味
物質の疎水基となじみやすい性質をもっている。工程8
では工程7で得られたベース膜付き基板を、工程5で得
られた両親媒性物質もしくは苦味物質の水溶液または懸
濁液に浸して3日間放置する。その後それを取り出し
て、基板表面の不要部分に付いた両親媒性分子または苦
味物質の分子を弱アルカリ溶液で洗い去る(工程9)。
この製造方法はベース膜付き基板を水溶液または懸濁液
に浸しておけばよいので量産に適する。
【0022】この発明の味覚センサの製造方法の他の実
施例(特許請求の範囲の請求項3に記載の製造方法の一
実施例)を図3に示す。図3は製造方法の流れを示すも
ので、最上段工程10では、両親媒性物質または苦味物
質を水面に滴下し、両親媒性分子群または苦味物質の分
子群の単分子膜を水面に形成する。他方では両親媒性分
子または苦味物質の分子が備えている疎水基と親しみを
もつなじみやすい物質をベースとする膜をもった基板を
作る。具体的な例を示せば、工程6において、ポリ塩化
ビニル(PVC)200mg と可塑剤であるフタル酸ジオク
チル(DOP)250μlとを溶剤であるテトラヒドロフ
ラン(THF)で溶解したものを作る。工程7におい
て、それを平底のシャーレの上で30℃で加熱して、TH
Fを揮発させて、基板となるベース膜を作る。あるい
は、ステアリン酸を工程6で用意し、ガラス基板をステ
アリン酸に浸して取り出すことで工程7を代用し、ステ
アリン酸のベース膜が表面についたガラスの基板を用意
する。こうして作られたベース膜は、親疎水基性の基が
表面に顔を出しているから、両親媒性物質または苦味物
質の疎水基となじみやすい性質をもっている。工程11
では、図4に模式的に示すように、工程7で得られたベ
ース膜付き基板を、工程10で得られた水面の両親媒性
分子群もしくは苦味物質の分子群の単分子膜に、水面に
平行に当接して、ベース膜の表面に両親媒性分子群もし
くは苦味物質の分子群の単分子膜を形成するか、また
は、図5に模式的に示すように、ベース膜付き基板を水
面に形成されている単分子膜と該基板との当接点を移動
するようにして、ベース膜の表面に両親媒性分子群もし
くは苦味物質の分子群の単分子膜を形成する。次に、工
程9で、基板表面の不要部分に付いた両親媒性分子また
は苦味物質の分子を弱アルカリ溶液で洗い去る。
【0023】こうして作られた基板上の両親媒性分子ま
たは苦味物質の分子の膜は、作用の項で述べたように、
その膜を構成する分子群の疎水基(疎水性部位)が基板
の表面にひかれているから、両親媒性分子群または苦味
物質の分子群の親水基(親水性部位)は外側に整列し、
あたかも単一の層が形成されたようになっていると推察
できる。
【0024】この模様を、化学物の設計法で用いられて
いる表現方法によれば尾のように長手方向に延びる疎水
基と長手方向に延びる原子配列の一部に○印で示す親水
基とを持つように表される両親媒性分子を例にとり、模
式的に示したのが図1である。図に示したようにガラス
基板1の上面には、親疎水基性のベース膜2が形成され
ているから、それに固定される両親媒性分子4の群は、
尾のように長手方向に延びる疎水基がベース膜2にひき
よせられ、〇印で示した親水基が3で示したように上面
に顔をそろえて整列している。それに対して、親疎水基
性のベース膜2を付けていないガラス面(下面、側面)
では両親媒性分子の配列は乱れたものとなる。
【0025】こうしてベース膜付き基板に作られた、
(あるいは直接ベース膜そのものを基板としてその上に
作られた)両親媒性分子群の単一な層を味覚センサに加
工した例が図6に示されている。図中、1,2,3,
3′はそれぞれ、基板,ベース膜,両親媒性分子群の単
一な層であることは図1の例と同じである。不要部分1
2,12′の両親媒性分子を除去し、基板1に設けられた
孔13,13′には導電性の棒(たとえば金)14,14′を挿
入して、棒の一端をベース膜2に当接させ、他端にはリ
ード線15,15′をはんだ付けする。こうして、両親媒性
分子の膜の電位を測定できるようにする。あるいは、不
要部分として除去した12′を、除去せずにおくと、リー
ド線15,15′間の電気伝導度(抵抗)を測定できるもの
となる。膜電位もしくは電気伝導度が基本味を呈する物
質の濃度と対応する関係にあるから、味覚のセンサが実
現できたことになる。
【0026】次に、前述のようにして作られた味覚セン
サを用いて行った実験の方法とその結果得られたデータ
について述べる。
【0027】図7、図8は、この発明の味覚センサおよ
び従来の味覚センサについて、塩化ナトリウム(NaC
l)の濃度と膜電位との関係を調べたものである。
【0028】実験は、各々5サンプルの味覚センサにつ
いて下記〜の手順で行った。 味覚センサを塩化カリウム1mM溶液に浸す。 約4分後に膜電位を測定し、その値を基準とする。 味覚センサを溶液に浸したまま、塩化ナトリウムを
加え、塩化カリウム1mMでかつ塩化ナトリウム1mMの溶
液とする。 約4分後に膜電位を測定し、の基準値との差を求
める。 以下、手順における塩化ナトリウムの濃度を3m
M、10mM、30mM、100mM、300mM、1000mM
に変えて、の手順を繰り返す。 このとき塩化ナトリウムの濃度を変えると、溶液の量が
増えることで塩化カリウムの濃度は下がるから、塩化カ
リウムも補充して1mMを保つようにする。
【0029】図7、図8から分かるように、この発明の
味覚センサは、従来の味覚センサと比べて、 感度が、1mM−10mM間で約5倍、1mM−100mM
間で約2倍、1mM−1000mM間で約1.5倍と高い。 味覚センサ間でバラツキが少ない。 対数直線性が良い。 といえる。この結果は、感度の高い、品質の一定した、
そして特性が簡単な直線で表せることから、実用的な味
覚センサが得られたことを示している。
【0030】図9、図10は、この発明の味覚センサと
従来の味覚センサについて、各々塩酸(HCl)および
キニーネの濃度と膜電位との関係を調べたものである。
いずれの味覚センサも材料として両親媒性物質の一種で
あるジオクチルフォスフェートを使用している。
【0031】実験は、下記〜の手順で行った。 味覚センサを塩化カリウム1mM溶液に浸す。 約4分後に膜電位を測定し、その値を基準とする。 味覚センサを溶液に浸したまま、塩酸(図10では
キニーネ)を加え、塩化カリウム1mMでかつ塩酸(図1
0ではキニーネ)0.001mM の溶液とする。 約4分後に膜電位を測定し、の基準値との差を求
める。 以下、手順における塩酸(図10ではキニーネ)
の濃度を 0.003mM、0.01mM、0.03mM、 0.1mM、 0.3mM、
1mM、3mM、10mM、30mM、100mMに変えて、
の手順を繰り返す。 このとき塩酸(図10ではキニーネ)の濃度を変える
と、溶液の量が増えることで塩化カリウムの濃度は下が
るから、塩化カリウムも補充して1mMを保つようにす
る。
【0032】図9から、塩酸については、感度はあまり
変わらないが、 0.1mM−100mM間の対数直線性が良く
なっていることが分かる。また、図10から、キニーネ
については、0.01mM−3mM間で、感度が約2倍になって
いることが分かる。そして図10では3mMより濃度の高
い部分では味覚センサの出力が飽和しており、人間の味
覚において、苦味の強さが飽和することと同じ現象を示
している。
【0033】図11、図12はこの発明の味覚センサと
従来の味覚センサを塩化ナトリウム1M溶液に浸して、
膜電位の時間的変化を調べたものである。膜電位の測定
は約20秒間隔で行った。
【0034】この結果から、この発明の味覚センサは従
来の味覚センサに比べて、 前述のように、感度が約1.5倍であるにもかかわ
らず、膜電位の変化は少ない。特に、0〜10分後間の
変化は1/2以下である。 変化(カーブ)が揃っている。 といえる。この結果は、この発明の味覚センサが、安定
しており、特に短時間計測に用いれば3倍の安定度が有
り、品質も一定していることを示している。
【0035】図13は、5つの基本味に対するこの発明
の味覚センサの応答を調べたものである。図中、ch1
〜ch8はそれぞれ異なる両親媒性物質または苦味物質
を使用した味覚センサである。表3に使用した両親媒性
物質または苦味物質を示す。
【0036】
【表3】
【0037】実験は、8chの味覚センサ5個を用いて
各測定対象塩酸 0.1mM、塩化ナトリウム 100mM、キニー
ネ 0.3mM、ショ糖 1 M、MSG30mMの溶液について下記
〜の手順で行った。 味覚センサを塩化カリウム1mM溶液に浸す。 約4分後に膜電位を測定し、その値を基準とする。 味覚センサを溶液に浸したまま、測定対象の濃度を
目標の濃度にする。 約4分後に各chの膜電位を測定し、の基準値と
の差を求める。 このとき測定対象の濃度を変えると、溶液の量が増える
ことで塩化カリウムの濃度は下がるから、塩化カリウム
も補充して1mMを保つようにする。
【0038】この結果で注目すべきことは、ch5の味
覚センサのショ糖への応答が大きいことである。これは
生体膜を構成している脂質の一種であるフォスファチジ
ルコリン(PC)が利用できたこと、および配向性が向
上したことによる。また、ch3は苦味物質の一つであ
るキニーネを味覚センサの材料として用いているが、c
h1〜ch8全体から見ると、塩酸に対しては強い、塩
化ナトリウム,MSGに対しては中程度の強さの、キニ
ーネ,ショ糖に対しては弱い応答を示し、味の情報を得
る味覚センサとなり得ることが分かる。この発明では、
フォスファチジルコリン(PC)に限らず、味覚センサ
として利用できる物質の範囲を広げたので、味について
得られる情報量が増大した。
【0039】図14、図15はフォスファチジルコリン
(PC)を材料として用いた味覚センサで塩化ナトリウ
ムおよびショ糖の濃度と膜電位との関係を調べたもので
ある。
【0040】実験は、下記〜の手順で行った。 味覚センサを塩化カリウム1mM溶液に浸す。 約4分後に膜電位を測定し、その値を基準とする。 味覚センサを溶液に浸したまま、塩化ナトリウム
(図15ではショ糖)を加え、塩化カリウム1mMでかつ
塩化ナトリウム(図15ではショ糖)1mMの溶液とす
る。 約4分後に膜電位を測定し、の基準値との差を求
める。 以下、手順における塩化ナトリウム(図15では
ショ糖)の濃度を3mM、10mM、30mM、100mM、3
00mM、1000mMに変えて、の手順を繰り返す。 このとき塩化ナトリウムの濃度を変えると、溶液の量が
増えることで塩化カリウムの濃度は下がるから、塩化カ
リウムも補充して1mMを保つようにする。
【0041】図14から塩化ナトリウムについては膜電
位を測定することで濃度が求められるといえる。図15
からは300mMより濃度が高くないと膜電位からショ糖
の濃度が求められないことが分かる。人も甘味に対して
はかなり濃度が高くないと甘いと感じないということか
らすれば、本発明の味覚センサが人の味覚に近づいたも
のであるといえる。
【0042】
【発明の効果】この発明によれば、味覚センサとして、
両親媒性分子群および苦味物質の分子群の単一な層の新
しい形成方法を発見し、その形成法に基づいて単一な層
を実現できたから、同一出願人の先願発明と比べて
感度が向上し、測定の安定度が得られ、 センサ毎
の測定値のバラツキが少なく、 しかも、対数直線性
のあるセンサが得られたから、ヒトの味覚に近づいた味
覚センサが実現できた。
【0043】さらに、この発明によれば、味覚センサと
して、従来の方法では利用が困難であった脂質や、脂質
以外の両親媒性物質および苦味物質の利用も可能となっ
たから、 味についてセンシングできる情報量が増
え、 特に、生体膜を構成する脂質が利用可能となっ
たことで、ヒトの味覚により近づいた味覚センサが実現
できた。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の味覚センサを模式的に示す図。
【図2】この発明の製造方法の一実施例の流れを示す
図。
【図3】この発明の製造方法の他の実施例の流れを示す
図。
【図4】ベース膜付き基板に両親媒性分子群または苦味
物質の分子群の単分子膜を形成する一方法を模式的に示
す図。
【図5】ベース膜付き基板に両親媒性分子群または苦味
物質の分子群の単分子膜を形成する他の方法を模式的に
示す図。
【図6】この発明の味覚センサから膜電位を取り出すた
めの加工例を示す図。
【図7】この発明の味覚センサの塩化ナトリウムに対す
る濃度特性を示す図。
【図8】従来の味覚センサの塩化ナトリウムに対する濃
度特性を示す図。
【図9】この発明の味覚センサと従来の味覚センサの塩
酸に対する濃度特性を示す図。
【図10】この発明の味覚センサと従来の味覚センサの
キニーネに対する濃度特性を示す図。
【図11】この発明の味覚センサの塩化ナトリウムに対
する時間特性を示す図。
【図12】従来の味覚センサの塩化ナトリウムに対する
時間特性を示す図。
【図13】この発明の味覚センサの5基本味に対する応
答を示す図。
【図14】この発明の味覚センサの塩化ナトリウムに対
する濃度特性を示す図。
【図15】この発明の味覚センサのショ糖に対する濃度
特性を示す図。
【符号の説明】
1 基板(ガラス基板) 2 ベース膜 3 両親媒性分子群または苦味物質の分子群 4 両親媒性分子または苦味物質の分子 5 工程5 6 工程6 7 工程7 8 工程8 9 工程9 10 工程10 11 工程11
フロントページの続き (72)発明者 山藤 馨 福岡県福岡市中央区草香江1丁目6番21 号 (72)発明者 都甲 潔 福岡県福岡市東区美和台2丁目8番32− 2号 (72)発明者 林 健司 福岡県福岡市早良区高取2丁目14番18− 407号 (72)発明者 池崎 秀和 東京都港区南麻布五丁目10番27号 アン リツ株式会社内 (72)発明者 東久保 理江子 東京都港区南麻布五丁目10番27号 アン リツ株式会社内 審査官 郡山 順 (56)参考文献 特開 昭62−294085(JP,A) 林 健司、都甲 潔及び山藤 馨、B IO INDUSTRY、第7巻、第4 号(1990)第268−274頁 飯山 悟、都甲 潔及び山藤 馨、膜 (MEMBRANE)、第12巻、第4号 (1987)第231−237頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/327 G01N 27/02 G01N 27/416

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水と溶け合う溶剤を用いて、苦味物質の
    分子群もしくは疎水性部位と親水性部位を有する両親媒
    性分子群の水溶液または懸濁水を作製する段階(5)
    と、少なくともその表面の一部が疎水性を呈する物質で
    覆われている基板を準備する段階(6,7)と、前記基
    板を前記水溶液または懸濁水に浸す段階(8)とを含む
    味覚センサの製造方法。
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