JP3210916B2 - 光磁気記録媒体の再生方法 - Google Patents

光磁気記録媒体の再生方法

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JP3210916B2
JP3210916B2 JP21034899A JP21034899A JP3210916B2 JP 3210916 B2 JP3210916 B2 JP 3210916B2 JP 21034899 A JP21034899 A JP 21034899A JP 21034899 A JP21034899 A JP 21034899A JP 3210916 B2 JP3210916 B2 JP 3210916B2
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博之 片山
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光磁気記録装置に
適用される光磁気ディスク、光磁気テープ、光磁気カー
ド等の光磁気記録媒体の再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、磁気ヘッドを用いて記録・再生が
行われる磁気記録媒体と比べて高い記録密度を実現でき
る新しい記憶媒体として実用化が進んできた光磁気ディ
スク等の光磁気記録媒体において、最近、記録密度をさ
らに向上させようとする研究開発が活発になっている。
【0003】上記光磁気記録媒体の記録密度は、記録・
再生に使用される光ビームの記録媒体上での大きさに依
存する。例えば、光磁気記録媒体上に集光された光ビー
ムのビーム径に比べて記録ビット径および記録ビット間
隔が小さい場合、光ビームの中に複数の記録ビットが存
在することになり、一つ一つの記録ビットを分離して再
生することができず、再生特性の劣化が生じる。
【0004】上記のような光磁気記録媒体の欠点を解決
すべく、最近、光ビームの大きさより小さい記録ビット
を再生する方法が提案されている。
【0005】通常、光記録において、光ビームは、集光
レンズにより回折限界まで絞りこまれているため、その
光強度分布がガウス分布になり、記録媒体上の温度分布
もほぼガウス分布になる。このため、ある温度以上の温
度を有する領域は、光ビームより小さくなっている。そ
こで、上述の光ビームの大きさより小さい記録ビットを
再生する方法は、ある温度以上の領域のみを再生に関与
させようとするものである。
【0006】上記方法を行うに際して、室温で高保磁力
を有する垂直磁化膜である読み出し層と、室温での保磁
力が小さい垂直磁化膜である記録層とから成る交換結合
二層膜を備えた光磁気ディスクが用いられる。この光磁
気ディスクに対する記録は、通常の光熱磁気記録方法で
行われる。そして、上記光磁気ディスクに記録されたビ
ットの再生は、次のようにして行われる。即ち、予め補
助磁界発生装置によって補助磁界を読み出し層に印加
し、この読み出し層の磁化の向きが所定の向きに揃うよ
うに初期化する。次に、上記光磁気ディスクに再生ビー
ムを照射し、局部温度上昇させて記録層の磁化情報を読
み出し層に転写する。こうすると、再生ビームの照射さ
れた部位の中心部の温度が上昇した部位のみの情報が再
生できる。従って、光ビームより小さな記録ビットでも
読み出せる。
【0007】しかしながら、上記光磁気ディスクを用い
た場合、再生動作に先立って、補助磁界発生装置により
補助磁界を印加しなければならない。また、再生時に、
記録層から読み出し層に転写された記録ビットは、その
部位の温度が下がっても、そのまま残ってしまう。この
ため、次の記録ビットを再生するために光ビームを移動
させると、前の記録ビットは依然として光ビームの中に
存在するので、この残存ビットも再生されてしまい、こ
れが雑音の原因となり、記録密度を向上させる際の制限
事項になる。
【0008】そこで、本願発明者等は、再生動作に先立
つ初期化のための補助磁界発生装置が不要であると共
に、雑音の原因である隣接ビット(前の記録ビット)か
らの信号混入を回避できる光磁気記録媒体を先に提案し
ている(特願平4−74605号)。この光磁気記録媒
体と、これを用いた再生方法について、図14を参照し
て以下に説明する。尚、同図(a)は、光磁気記録媒体
を光ビーム照射側から見た図であり、同図(b)は、同
図(a)の光磁気記録媒体のA−A線断面における各磁
性層51・52の磁化状態を示すものである。
【0009】上記光磁気記録媒体は、150℃程度のキ
ュリー温度点を有する記録層52と、室温では面内磁化
状態を示す一方、約50℃以上の読み出し温度において
垂直磁化状態を示す読み出し層51とを有している。こ
の光磁気記録媒体に対する記録は、該光磁気記録媒体へ
記録磁界を印加すると共に、高いパワーの光ビームを該
光磁気記録媒体へ照射して記録層52の温度をキュリー
温度近傍まで上昇させることにより行われる。これによ
り、上記記録層52に記録ビットが形成される。
【0010】一方、上記光磁気記録媒体に記録された情
報の再生は、次のようにして行われる。先ず、記録時よ
りも低いパワーの光ビームが光磁気記録媒体に照射され
ることになる。この際、光ビームは記録媒体に対して相
対的に矢印Pで示す方向に移動しており、光磁気記録媒
体上で最も温度が高くなる部位は、光ビームの中心から
後方にずれた位置に存在することになる。このため、光
ビームの照射により読み出し層51の温度が約50℃以
上に上昇して読み出し可能となる領域83(領域の中
心)は、光ビームの照射領域72(領域の中心)に対し
て後方にずれた位置に存在することになる。そして、上
記領域83のみにおいて、読み出し層51は垂直磁化状
態となり、記録層52からの交換結合力を受けて、読み
出し層51の磁化方向は、記録層52の磁化方向と同一
方向となる。ここで、読み出し層51における、光ビー
ムの照射領域72と、温度上昇により読み出し可能とな
る領域83とにずれが生じているため、実際に再生が行
われる情報は、光ビームの照射領域72内に存在し、且
つ、読み出し可能領域83に存在する情報63のみとな
り、それ以外の情報は再生されることはない。
【0011】このように、光ビームの照射領域72内の
高温領域のみが一種の光学的なアパチャーとして働くこ
とにより、情報再生に寄与する実効的な光スポットが小
さくなり、検出分解能が向上する。これにより、光ビー
ムの大きさより小さい記録ビットでも、一つ一つの記録
ビットを分離して再生することが可能である。そして、
読み出し層51における温度上昇しない部位、或いは温
度の低下した部位は面内磁化を示すので、磁気光学効果
を示さなくなり、記録層52に記録された情報は読み出
し層51の面内磁化にマスクされて読み出されることが
なくなる。これにより、雑音の原因である隣接ビットか
らの信号が混入することを回避できる。更に、再生動作
に先立つ初期化のための補助磁界発生装置が不要であ
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上記光磁気記
録媒体において、記録密度を更に高めた場合を、図15
を参照して考えてみる。尚、同図(a)は、光磁気記録
媒体を光ビーム照射側から見た図であり、同図(b)
は、同図(a)の光磁気記録媒体のA−A線断面におけ
る各磁性層51・52の磁化状態を示すものである。
【0013】読み出し層51における光ビームの照射領
域72、および該光ビームの照射による温度上昇により
読み出し可能となる範囲83を、上記図14に示した場
合と同様にした場合、光ビームの照射領域72内に存在
し、且つ、読み出し可能領域83に存在する情報は2つ
(情報93・93′)となり、一つ一つの記録ビットを
分離して再生することができなくなってしまう。
【0014】本発明は、上記に鑑みなされたものであ
り、その目的は、本願発明者が先に提案した光磁気記録
媒体の有する特徴(前の記録ビットからの信号混入を回
避できる等)を有しながら、その光磁気記録媒体よりも
更に記録密度を高めた場合でも、一つ一つの記録ビット
を分離して再生可能であり、記録密度を向上させること
ができる光磁気記録媒体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するためになされたものであって、室温において垂
直磁化状態を示し、室温からキュリー温度T 2 まで垂直
磁化状態を保持する記録層と、該記録層に対して光ビー
ムの入射側に配置され、室温において面内磁化状態を示
す一方、温度T 1 以上で垂直磁化状態へと移行する読み
出し層と、上記読み出し層と記録層との間に設けられ、
室温において垂直磁化状態を示す一方、温度T 3 以上で
面内磁化状態へと移行する中間層を有し、上記温度
1 、T 2 、T 3 が、T 1 <T 3 <T 2 の関係を満たしている
光磁気記録媒体の再生方法であって、上記光磁気記録媒
体における再生光ビームの照射領域内に、T 3 以上T 2
満の温度となる領域を形成し、その領域において上記記
録層から上記読み出し層への磁化の転写を遮断すること
を特徴とする。
【0016】また、本発明は、再生時に外部磁界を印加
して、上記読み出し層における上記T 3 以上の温度とな
る領域の磁化の方向を上記外部磁界に応じた同一の方向
にそろえることを特徴とする。
【0017】また、本発明は、再生時に外部磁界を印加
せず、上記読み出し層における上記T 3 以上の温度とな
る領域の磁化の方向を面内方向に向けることを特徴とす
る。
【0018】また、本発明は、室温において垂直磁化状
態を示し、室温からキュリー温度T 2 まで垂直磁化状態
を保持する記録層と、該記録層に対して光ビームの入射
側に配置され、室温において面内磁化状態を示す一方、
温度T 1 以上で垂直磁化状態へと移行する読み出し層
と、上記読み出し層と記録層との間に設けられ、室温に
おいて垂直磁化状態を示し、室温からキュリー温度T 3
まで垂直磁化状態を保持する中間層を有し、上記温度T
1 、T 2 、T 3 が、T 1 <T 3 <T 2 の関係を満たしている光
磁気記録媒体の再生方法であって、上記光磁気記録媒体
における再生光ビームの照射領域内に、T 3 以上T 2 未満
の温度となる領域を形成し、その領域において上記記録
層から上記読み出し層への磁化の転写を遮断し、再生時
に外部磁界を印加せず、上記読み出し層における上記T
3 以上の温度となる領域の磁化の方向を面内方向に向け
ることを特徴とする。
【0019】また、本発明は、室温において垂直磁化状
態を示し、室温からキュリー温度T 2 まで垂直磁化状態
を保持する記録層と、該記録層に対して光ビームの入射
側に配置され、室温において面内磁化状態を示す一方、
温度T 1 以上で垂直磁化状態へと移行する読み出し層
と、上記読み出し層と記録層との間に設けられ、室温に
おいて面内磁化状態を示し、室温からキュリー温度T 3
まで面内磁化状態を保持する中間層を有し、上記温度T
1 、T 2 、T 3 が、T 1 <T 3 <T 2 の関係を満たしている光
磁気記録媒体の再生方法であって、上記光磁気記録媒体
における再生光ビームの照射領域内に、T 3 以上T 2 未満
の温度となる領域を形成し、その領域において上記記録
層から上記読み出し層への磁化の転写を遮断し、再生時
に外部磁界を印加せず、上記読み出し層における上記T
3 以上の温度となる領域の磁化の方向を面内方向に向け
ることを特徴とする
【0020】
【0021】以下に作用を説明する。
【0022】上記構成によれば、使用する光磁気記録媒
体に光ビームが照射されると、照射された部位の温度分
布はガウス分布になるので、温度T1以上になる領域
は、光ビームの照射領域よりも小さく、また、温度T3
以上になる領域は、上記温度T1以上の領域よりもさら
に小さくなる。
【0023】また、光ビームは光磁気記録媒体に対して
所定の線速度で相対的に移動することになるので、媒体
上で最も温度が高くなる部位は、光ビームの中心から後
方にずれた位置に存在することになる。このため、光ビ
ームの照射領域内には、温度T1以上の領域の一部(お
よび温度T3以上の領域の一部)が存在し、温度T1以上
になる領域内に存在しても、光ビームの照射領域内に存
在しない記録ビットは再生されない。
【0024】また、読み出し層における温度T1以上の
領域外の部位では、面内磁化状態が保持され、垂直入射
光に対して磁気光学効果を示さない。したがって、光ビ
ームの照射領域内に存在しても、温度T1以上の領域外
に存在する記録ビットは再生されない。
【0025】さらに、上述の再生方法によれば、温度T
3以上の領域では、中間層の磁化が消失する(または面
内磁化状態となる)ため、記録層の磁化情報が、読み出
し層に転写されない。
【0026】このため、読み出し層には温度T1以上の
温度領域で且つT3以上の温度領域外に存在する記録ビ
ットのみが転写されることになる。
【0027】したがって、上記光磁気記録媒体は、再生
分解能の向上が図れ、記録密度を向上させることができ
る。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て実施例1〜6において説明する。
【0029】〔実施例1〕本発明の一実施例について図
1、図7および図8に基づいて説明すれば、以下の通り
である。
【0030】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、図7に示すように、基板4、透明誘電体膜
5、読み出し層1、中間層3、記録層2、透明誘電体膜
6、オーバーコート膜7がこの順に積層された構成を有
している。
【0031】上記読み出し層1は、室温で面内磁化状態
を示し、温度T1以上の読み出し温度において垂直磁化
状態へ移行するものであり(図8参照)、この読み出し
層1としては、例えば希土類遷移金属を使用することが
できる。
【0032】尚、希土類金属と遷移金属の磁気モーメン
トは、それぞれ温度特性が異なり、高温では遷移金属の
磁気モーメントが希土類金属に比べて大きくなる。そこ
で、上記のような特性を示す読み出し層1を希土類遷移
金属で形成する場合、室温の補償組成より希土類金属の
含有量を多くしておき、室温では垂直磁化を示さずに面
内磁化を示すようにすると共に、上記温度T1で垂直磁
化になるようにしておく。これにより、光ビームが照射
された部位の温度が温度T1に上昇したとき、遷移金属
の磁気モーメントが相対的に大きくなって、希土類金属
の磁気モーメントとつりあい、全体として垂直磁化を示
すようになる。
【0033】上記読み出し層1は、垂直磁気異方性が比
較的大きいものであり、例えば膜厚が50nmのDy
0.35(F 0.5Co0.50.65を使用することができる。
尚、読み出し層1が面内磁化から垂直磁化へと移行する
温度T1は、40℃〜70℃が好ましい。
【0034】上記中間層3は、室温において垂直磁化状
態を示し、室温からキュリー温度T 3まで垂直磁化状態
を保持する垂直磁化膜である(図8参照)。この中間層
3のキュリー温度T3は、上記した読み出し層1が面内
磁化から垂直磁化へと移行する温度T1よりも高く設定
される(T1<T3)。この中間層3として、例えば膜厚
が50nmのHo0.28(Fe0.85Co0.150.72、膜厚
が50nmのDy0.21Fe0.79等を使用することができ
る。尚、中間層3のキュリー温度T3は、60℃〜90
℃が好ましい。
【0035】上記記録層2は、室温において垂直磁化状
態を示し、室温からキュリー温度T 2まで垂直磁化状態
を保持する垂直磁化膜である(図8参照)。この記録層
2のキュリー温度T2は、上記した中間層3のキュリー
温度T3よりも高く設定される(T3<T2)。即ち、上
記温度T1、T2、T3は、 T1<T3<T2 の関係になっている。上記記録層2として、例えば膜厚
が50nmのDy0.23(Fe0.82Co0.180.77を使用
することができる。尚、記録層2のキュリー温度T
2は、120℃〜180℃が好ましい。
【0036】上記透明誘電体膜5は、再生特性を良くす
る、即ち、反射防止機能によって磁気カー回転角をエン
ハンスするために設けられるものであり、例えばAl
N、SiN、AlSiN、AlSiON、TiO2等を
使用でき、その膜厚は再生光の波長の1/4を屈折率で
除した値程度に設定される。例えば、再生光の波長を8
00nmとすると透明誘電体膜2の膜厚は10nm〜8
0nm程度となる。また、上記透明誘電体膜6は、例え
ばAlN等の窒化物からなる保護膜であり膜厚は50n
mである。
【0037】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0038】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図1を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層1・2
・3の磁化状態を示すものである。
【0039】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、光磁気ディスク上で
最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心から
後方にずれた位置に存在することになる。このため、レ
ーザビーム8の照射により読み出し層1の温度が温度T
1以上に上昇する領域33(領域の中心)は、レーザビ
ーム8の照射領域22(領域の中心)に対して後方にず
れた位置に存在することとなる。また、中間層3の温度
がキュリー温度T3以上に上昇する領域44(領域の中
心)は、レーザビーム8の照射領域22(領域の中心)
に対して後方にずれた位置に存在することとなる。
【0040】ここで、上記中間層3においては、その温
度がキュリー温度T3以上の領域44で、磁化が消失す
ることになる。一方、中間層3における上記領域44以
外の部位では、垂直磁化状態を示し、記録層2および中
間層3の2層間に作用する交換結合力により、記録層2
の磁化の向きが中間層3に転写される。
【0041】また、上記読み出し層1は、その温度が温
度T1以上に上昇する領域33で、垂直磁化状態を示す
一方、領域33以外の部位では面内磁化状態を示すこと
になる。この場合、読み出し層1における、領域33内
にあり、且つ、領域44外の部位では、中間層3および
読み出し層1の2層間に作用する交換結合力により、中
間層3の磁化の向きが読み出し層1に転写される。即
ち、記録層2の磁化情報は、中間層3の磁化を経由して
読み出し層1に転写され、領域33内にあり、且つ、領
域44外にある読み出し層1の磁化方向は、記録層2の
磁化方向と同一方向となる。
【0042】上記のように、記録層2の磁化情報は、中
間層3の磁化を経由して読み出し層1に転写されるよう
になっているので、中間層3のキュリー温度T3以上と
なって中間層3に磁化が存在しなくなった領域44で
は、記録層2の磁化情報が読み出し層1に転写されな
い。即ち、中間層3に磁化が存在しなくなった領域44
では、記録層2の磁化情報が、読み出し層1に交換結合
力を作用させることができなくなる。したがって、読み
出し層1における上記領域44に対応する部位は、中間
層3からの交換結合力を受けない自由な状態となり、そ
の磁化状態は、読み出し層1の特性、即ち、垂直磁気異
方性の大きさに依存することとなる。
【0043】本実施例の読み出し層1は、垂直磁気異方
性が比較的大きいため、中間層3からの交換結合力が存
在しない上記領域44においても、垂直磁化状態を保持
している。このため、本実施例では、再生時、上記領域
44に対応する読み出し層1の磁化方向を、常に同一方
向にそろえておくための外部磁界Hexが光磁気ディスク
に印加されることになる。これにより、温度T3以上に
なる領域44に存在する情報13′・14′は再生され
ることはない。
【0044】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、読み出し層1の
温度が面内磁化から垂直磁化へと移行する温度T1以上
になる領域33の一部、および、中間層3がキュリー温
度T3以上になる領域44の一部が存在することとな
る。したがって、温度T1以上になる領域33内に存在
しても、レーザビーム8の照射領域22内に存在しない
情報14・14′は再生されない。
【0045】また、読み出し層1における上記領域33
以外の部位では、面内磁化状態が保持され、垂直入射光
に対して磁気光学効果を示さない。したがって、レーザ
ビーム8の照射領域22内に存在しても、温度T1以上
になる領域33外にある情報12…は、再生されない。
【0046】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層1の温度が面内磁化から垂直磁
化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存在
し、且つ、中間層3がキュリー温度T3以上になる領域
44外に存在する情報13のみである。これにより、本
実施例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に提案し
た光磁気記録媒体(特願平4−74605号参照)より
更に小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビットを分
離して再生することが可能であり、記録密度を著しく向
上させることができる。
【0047】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層1は垂直磁化から面内磁化に移行する。
これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学カー
効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下した部
位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因である隣
接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0048】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。ターゲットとして、Al、Gd、Dy、Ho、F
e、Coを備えたスパッタリング装置内に、プリグルー
ブおよびプリピットを有するポリカーボネート製のディ
スク基板4を、ターゲットに対向して配置した。このス
パッタリング装置内を1×10-6Torrまで真空排気
した後、アルゴンおよび窒素の混合ガスを該装置内に導
入し、Alのターゲットに電力を供給して、ガス圧4×
10-3Torr、スパッタ速度12nm/minでスパ
ッタ蒸着を行い、上記ディスク基板4上にAlNからな
る透明誘電体膜5を形成した。この透明誘電体膜5は、
上述のように、再生特性を改善するものであり、その膜
厚は再生光の波長の1/4を屈折率で除した値程度に設
定される。本実施例では、波長800nmの再生光を使
用するので、透明誘電体膜5の膜厚を60nmとした。
【0049】次に、再度スパッタリング装置内を1×1
-6Torrまで真空排気した後、アルゴンガスを該装
置内に導入し、Dy、Fe、Coのターゲットに電力を
供給して、ガス圧4×10-3Torr、スパッタ速度1
5nm/minでスパッタ蒸着を行い、上記透明誘電体
膜5上に、膜厚50nmのDy0.35(Fe0.5Co0.5
0.65からなる読み出し層1を形成した。この読み出し層
1は、室温で面内磁化状態であり、60℃以上の温度で
垂直磁化状態に移行(T1=60℃)し、そのキュリー
温度は320℃であった。
【0050】次に、Dyのターゲット供給していた電力
を停止する一方、Hoのターゲットに電力を供給し、上
記読み出し層1を形成したのと同様な条件でスパッタ蒸
着を行い、上記読み出し層1上に、膜厚50nmのHo
0.28(Fe0.85Co0.150. 72からなる中間層3を形成
した。この中間層3は、そのキュリー温度T3が90℃
の垂直磁化膜であった。
【0051】次に、Hoのターゲット供給していた電力
を停止する一方、Dyのターゲットに電力を供給し、上
記読み出し層1を形成したのと同様な条件でスパッタ蒸
着を行い、上記中間層3上に、膜厚50nmのDy0.23
(Fe0.82Co0.180.77からなる記録層2を形成し
た。この記録層2は、ほぼ室温に補償点を有する垂直磁
化膜であり、そのキュリー温度T2は160℃であっ
た。
【0052】次に、アルゴンと窒素の混合ガスをスパッ
タリング装置内に導入し、Alのターゲットに電力を供
給して、ガス圧4×10-3Torr、スパッタ速度12
nm/minでスパッタ蒸着を行い、上記ディスク基板
4上にAlNからなる透明誘電体膜6を形成した。ここ
で、この透明誘電体膜6は、上記磁性層(記録層2、中
間層3、読み出し層1)を酸化等の腐食から保護するこ
とが可能なだけの膜厚を有すればよく、本実施例では5
0nmの膜厚とした。
【0053】次に、上記透明誘電体膜6上に、紫外線硬
化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照射
し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0054】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
10MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に1μm周期で0.5μmの長さの
反転磁区を形成することができた。
【0055】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして、+5kA/mの一定磁界(外部磁界Hex)を光
磁気ディスクに印加した状態で、記録情報の再生を行っ
たところ、記録層2に形成された反転磁区にしたがっ
て、周波数10MHzの再生信号を読み出し層1から得
ることができた。また、記録を行うための10mWのレ
ーザビーム8を連続照射した状態で、±15kA/mの
変調磁界を20MHzの周波数で変調して光磁気ディス
クに印加したところ、記録層2に0.5μm周期で0.
25μmの長さの反転磁区を形成することができた。
【0056】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして、+5kA/mの一定磁界(外部磁界Hex)を光
磁気ディスクに印加した状態で、記録情報の再生を行っ
たところ、記録層2に形成された反転磁区にしたがっ
て、周波数20MHzの再生信号を読み出し層1から得
ることができた。
【0057】〔比較例〕上記実施例1の比較例として、
実施例1の光磁気ディスクにおいて中間層3が存在しな
い図14に示す構成の光磁気ディスクを用いて、実施例
1と同様の記録および再生を行った。10MHzの周波
数で記録を行った場合には、実施例1と同様に周波数1
0MHzの再生信号を得ることができたが、20MHz
の周波数で記録を行った場合には、隣接する記録情報を
分離することができず、周波数20MHzの再生信号を
得ることができなかった。
【0058】〔実施例2〕本発明の他の実施例について
図2、図7および図8に基づいて説明すれば、以下の通
りである。
【0059】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、上記実施例1の読み出し層1の代わりに読
み出し層201が用いられている以外は、上記実施例1
の光磁気ディスクと同様の構成であり、上記読み出し層
201以外の各層、即ち、基板、透明誘電体膜、中間
層、記録層、透明誘電体膜、オーバーコート膜のそれぞ
れの構成および諸特性は、実施例1と同じであるので、
これらの各層には実施例1と同一の参照番号を付記し、
詳細な説明をここでは省略する(図7参照)。
【0060】上記読み出し層201は、実施例1の読み
出し層1と同様、室温で面内磁化状態を示し、温度T1
(図8参照)以上の読み出し温度において垂直磁化状態
となるものであるが、実施例1の読み出し層1は、垂直
磁気異方性が比較的大きいものであったのに対して、本
実施例の読み出し層201は、垂直磁気異方性が比較的
小さいものとなっている。上記読み出し層201として
は、希土類遷移金属を使用でき、例えば膜厚が50nm
のGd0.28(Fe0.8Co0.20.72を使用することがで
きる。
【0061】尚、読み出し層201が面内磁化から垂直
磁化へと移行する温度T1は、40℃〜70℃が好まし
い。また、中間層3のキュリー温度T3は、60℃〜9
0℃が好ましい。また、記録層2のキュリー温度T
2は、120℃〜180℃が好ましい。そして、上記各
温度T1・T2・T3は、 T1<T3<T2 の関係になっている。
【0062】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0063】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図2を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層201
・2・3の磁化状態を示すものである。
【0064】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、レーザビーム8の照
射により読み出し層201の温度が温度T1以上に上昇
する領域33(領域の中心)は、レーザビーム8の照射
領域22(領域の中心)に対して後方にずれた位置に存
在することとなる。また、中間層3の温度がキュリー温
度T3以上に上昇する領域44(領域の中心)は、レー
ザビーム8の照射領域22(領域の中心)に対して後方
にずれた位置に存在することとなる。
【0065】この場合、実施例1と同様、上記中間層3
においては、上記領域44以外の垂直磁化状態を示す部
位で、記録層2および中間層3の2層間に作用する交換
結合力により、記録層2の磁化の向きが中間層3に転写
される。
【0066】また、上記読み出し層201においても、
実施例1と同様、領域33内にあり、且つ、領域44外
の部位では、記録層2の磁化情報が中間層3の磁化を経
由して読み出し層201に転写されることにより、その
磁化方向が記録層2の磁化方向と同一方向となる。
【0067】ここで、本実施例の読み出し層201は、
垂直磁気異方性が比較的小さいため、中間層3からの交
換結合力が存在しない上記領域44においては、面内磁
化状態となり、垂直入射光に対して磁気光学効果を示さ
なくなる。このため、上記領域44に対応する記録層2
に記録された情報13′・14′は、読み出し層201
の面内磁化にマスクされて読み出されることがなくな
る。したがって、本実施例では、再生時、実施例1で用
いた、領域44に対応する読み出し層の磁化方向を常に
同一方向にそろえておくための外部磁界Hexの印加は必
要なくなる。
【0068】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、読み出し層20
1の温度が面内磁化から垂直磁化へと移行する温度T1
以上になる領域33の一部、および、中間層3がキュリ
ー温度T3以上になる領域44の一部のみが存在するこ
ととなる。したがって、上記領域33に存在しても、レ
ーザビーム8の照射領域22内に存在しない情報14・
14′は再生されない。
【0069】また、読み出し層201における上記領域
33以外の部位では、面内磁化状態が保持され、垂直入
射光に対して磁気光学効果を示さない。したがって、レ
ーザビーム8の照射領域22内に存在しても、上記領域
33外にある情報12…は、再生されない。
【0070】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層201の温度が面内磁化から垂
直磁化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存
在し、且つ、中間層3がキュリー温度T3以上になる領
域44外に存在する情報13のみである。これにより、
本実施例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に提案
した光磁気記録媒体(特願平4−74605号参照)よ
り更に小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビットを
分離して再生することが可能であり、記録密度を著しく
向上させることができる。
【0071】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層201は垂直磁化から面内磁化に移行す
る。これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学
カー効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下し
た部位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因であ
る隣接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0072】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。
【0073】ターゲットとして、Al、Gd、Dy、H
o、Fe、Coを備えた実施例1で使用したスパッタリ
ング装置内に、プリグルーブおよびプリピットを有する
ポリカーボネート製のディスク基板4を、ターゲットに
対向して配置した。このスパッタリング装置により、実
施例1と同様にして、透明誘電体膜5として膜厚60n
mのAlN、読み出し層201として膜厚50nmのG
0.28(Fe0.8Co0 .20.72、中間層3として膜厚5
0nmのDy0.21Fe0.79、記録層2として膜厚50n
mのDy0.23(Fe0.82Co0.180.77、透明誘電体膜
6として膜厚50nmのAlNを順次形成した。
【0074】上記のGd0.28(Fe0.8Co0.20.72
らなる読み出し層201は、室温で面内磁化状態であ
り、60℃以上の温度で垂直磁化状態に移行(T1=6
0℃)し、そのキュリー温度は350℃であった。ま
た、上記のDy0.21Fe0.79からなる中間層3は、その
キュリー温度T3が90℃の垂直磁化膜であった。ま
た、上記のDy0.23(Fe0.82Co0.180.77からなる
記録層2は、ほぼ室温に補償点を有する垂直磁化膜であ
り、そのキュリー温度T2は160℃であった。
【0075】この後、上記透明誘電体膜6上に、紫外線
硬化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照
射し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0076】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
10MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に1μm周期で0.5μmの長さの
反転磁区を形成することができた。
【0077】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして記録情報の再生を行ったところ、記録層2に形成
された反転磁区にしたがって、周波数10MHzの再生
信号を読み出し層201から得ることができた。本実施
例では、上記実施例1において再生時に必要であった一
定磁界(外部磁界Hex)は不要であった。
【0078】また、記録を行うための10mWのレーザ
ビーム8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調
磁界を20MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに
印加したところ、記録層2に0.5μm周期で0.25
μmの長さの反転磁区を形成することができた。
【0079】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして記録情報の再生を行ったところ、記録層2に形成
された反転磁区にしたがって、周波数20MHzの再生
信号を読み出し層201から得ることができた。
【0080】〔実施例3〕本発明の他の実施例について
図3、図7および図8に基づいて説明すれば、以下の通
りである。
【0081】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、上記実施例1の中間層3の代わりに中間層
303が用いられている以外は、上記実施例1の光磁気
ディスクと同様の構成であり、上記中間層303以外の
各層、即ち、基板、透明誘電体膜、読み出し層、記録
層、透明誘電体膜、オーバーコート膜のそれぞれの構成
および諸特性は、実施例1と同じであるので、これらの
各層には実施例1と同一の参照番号を付記し、詳細な説
明をここでは省略する(図7参照)。
【0082】上記中間層303は、室温で垂直磁化状態
を示し、温度T3で面内磁化状態となるものであり(図
8参照)、例えば膜厚が50nmのDy0.13(Fe0.5
Co0 .50.87等を使用することができる。上記中間層
303が垂直磁化から面内磁化へと移行する温度T
3は、60℃〜90℃が好ましい。
【0083】尚、読み出し層1が面内磁化から垂直磁化
へと移行する温度T1は、40℃〜70℃が好ましい。
また、記録層2のキュリー温度T2は、120℃〜18
0℃が好ましい。そして、上記各温度T1・T2・T
3は、 T1<T3<T2 の関係になっている。
【0084】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0085】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図3を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層1・2
・303の磁化状態を示すものである。
【0086】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、レーザビーム8の照
射により読み出し層1の温度が温度T1以上に上昇する
領域33(領域の中心)は、レーザビーム8の照射領域
22(領域の中心)に対して後方にずれた位置に存在す
ることとなる。また、中間層303の温度が温度T3
上に上昇する領域44(領域の中心)は、レーザビーム
8の照射領域22(領域の中心)に対して後方にずれた
位置に存在することとなる。
【0087】ここで、上記中間層303においては、温
度T3以上の領域44で、垂直磁化状態から面内磁化状
態に移行する。一方、中間層303における上記領域4
4以外の部位では、垂直磁化状態が保持されており、記
録層2および中間層303の2層間に作用する交換結合
力により、記録層2の磁化の向きが中間層303に転写
される。
【0088】また、上記読み出し層1は、その温度が温
度T1以上に上昇する領域33で、垂直磁化状態を示す
一方、領域33以外の部位では面内磁化状態を示すこと
になる。この場合、読み出し層1における、領域33内
にあり、且つ、領域44外の部位では、中間層303お
よび読み出し層1の2層間に作用する交換結合力によ
り、中間層303の磁化の向きが読み出し層1に転写さ
れる。即ち、記録層2の磁化情報は、中間層303の磁
化を経由して読み出し層1に転写され、領域33内にあ
り、且つ、領域44外にある読み出し層1の磁化方向
は、記録層2の磁化方向と同一方向となる。
【0089】上記のように、記録層2の磁化情報は、中
間層303の磁化を経由して読み出し層1に交換結合力
を作用させるため、再生時、領域44内において中間層
303が面内磁化状態になると、記録層2の磁化情報が
読み出し層1に作用させる交換結合力は、領域44外に
において中間層303が垂直磁化状態になっている場合
に比べて著しく小さくなる。このように、記録層2と読
み出し層1との間に作用する交換結合力が非常に弱くな
った領域44では、読み出し層1の磁化状態は、読み出
し層1の特性、即ち、垂直磁気異方性の大きさに依存す
ることとなる。
【0090】本実施例の読み出し層1は、垂直磁気異方
性が比較的大きいため、中間層303を介した記録層2
からの交換結合力が非常に弱くなった上記領域44にお
いても、垂直磁化状態を保ち、記録層2の磁化方向と同
じ方向を向こうとする。しかしながら、記録層2と読み
出し層1との間に作用する交換結合力が非常に弱いた
め、読み出し層1に適当な外部磁界Hexを印加すること
により、領域33内にあり、且つ、領域44外にある読
み出し層1に記録層2より転写された磁化情報を保持し
た状態のまま、読み出し層1における領域44に対応す
る部位の磁化方向を、常に同一方向にそろえておくこと
が可能となる。したがって、再生時に読み出し層1に適
当な外部磁界Hexを印加することにより、温度T3以上
になる領域44に存在する情報13′・14′は再生さ
れることはない。
【0091】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、上記温度T1
上になる領域33の一部、および、温度T3以上になる
領域44の一部が存在することとなる。したがって、温
度T1以上になる領域33に存在しても、レーザビーム
8の照射領域22内に存在しない情報14・14′は再
生されない。
【0092】また、読み出し層1における温度T1以上
になる領域33以外の部位では、面内磁化状態が保持さ
れ、垂直入射光に対して磁気光学効果を示さない。した
がって、レーザビーム8の照射領域22内に存在して
も、温度T1以上になる領域33外にある情報12…
は、再生されない。
【0093】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層1の温度が面内磁化から垂直磁
化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存在
し、且つ、中間層303が温度T3以上になる領域44
外に存在する情報13のみである。これにより、本実施
例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に提案した光
磁気記録媒体(特願平4−74605号参照)より更に
小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビットを分離し
て再生することが可能であり、記録密度を著しく向上さ
せることができる。
【0094】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層1は垂直磁化から面内磁化に移行する。
これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学カー
効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下した部
位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因である隣
接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0095】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。
【0096】ターゲットとして、Al、Gd、Dy、H
o、Fe、Coを備えた実施例1で使用したスパッタリ
ング装置内に、プリグルーブおよびプリピットを有する
ポリカーボネート製のディスク基板4を、ターゲットに
対向して配置した。このスパッタリング装置により、実
施例1と同様にして、透明誘電体膜5として膜厚60n
mのAlN、読み出し層1として膜厚50nmのDy
0.35(Fe0.5Co0.5 0.65、中間層303として膜厚
50nmのDy0.13(Fe0.5Co0.50.87、記録層2
として膜厚50nmのDy0.23(Fe0.82Co0.18
0.77、透明誘電体膜6として膜厚50nmのAlNを順
次形成した。
【0097】上記のDy0.35(Fe0.5Co0.50.65
らなる読み出し層1は、室温で面内磁化状態であり、6
0℃以上の温度で垂直磁化状態に移行(T1=60℃)
し、そのキュリー温度は320℃であった。また、上記
のDy0.13(Fe0.5Co0.50.87からなる中間層30
3は、室温で垂直磁化状態を示し、90℃以上の温度で
面内磁化状態に移行(T3=90℃)し、そのキュリー
温度は380℃であった。また、上記のDy0.23(Fe
0.82Co0.180.77からなる記録層2は、ほぼ室温に補
償点を有する垂直磁化膜であり、そのキュリー温度T2
は160℃であった。
【0098】この後、上記透明誘電体膜6上に、紫外線
硬化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照
射し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0099】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
20MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に0.5μm周期で0.25μmの
長さの反転磁区を形成することができた。
【0100】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして、+5kA/mの一定磁界(外部磁界Hex)を光
磁気ディスクに印加した状態で、記録情報の再生を行っ
たところ、記録層2に形成された反転磁区にしたがっ
て、周波数20MHzの再生信号を読み出し層1から得
ることができた。
【0101】〔実施例4〕本発明の他の実施例につい
て、図4および図7に基づいて説明すれば以下の通りで
ある。
【0102】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、上記実施例3の読み出し層1の代わりに読
み出し層401が用いられている以外は、上記実施例3
の光磁気ディスクと同様の構成であり、上記読み出し層
以外の各層、即ち、基板、透明誘電体膜、中間層、記録
層、透明誘電体膜、オーバーコート膜のそれぞれの構成
および諸特性は、実施例3と同じであるので、これらの
各層には実施例3と同一の参照番号を付記し、詳細な説
明をここでは省略する(図7参照)。また、本実施例の
読み出し層401は、実施例2に示した読み出し層20
1と同じ構成および諸特性を示すものであり、その詳細
な説明をここでは省略する。
【0103】尚、読み出し層401が面内磁化から垂直
磁化へと移行する温度T1は、40℃〜70℃が好まし
い。また、中間層303が垂直磁化から面内磁化へと移
行する温度T3は、60℃〜90℃が好ましい。また、
記録層2のキュリー温度T2は、120℃〜180℃が
好ましい。そして、上記各温度T1・T2・T3は、T1
3<T2の関係になっている。
【0104】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0105】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図4を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層401
・2・303の磁化状態を示すものである。
【0106】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、レーザビーム8の照
射により読み出し層1の温度が温度T1以上に上昇する
領域33(領域の中心)は、レーザビーム8の照射領域
22(領域の中心)に対して後方にずれた位置に存在す
ることとなる。また、中間層303の温度が温度T3
上に上昇する領域44(領域の中心)は、レーザビーム
8の照射領域22(領域の中心)に対して後方にずれた
位置に存在することとなる。
【0107】この場合、実施例1と同様、上記中間層3
03においては、上記領域44以外の垂直磁化状態を示
す部位で、記録層2および中間層303の2層間に作用
する交換結合力により、記録層2の磁化の向きが中間層
303に転写される。
【0108】また、上記読み出し層401においても、
実施例3と同様、領域33内にあり、且つ、領域44外
の部位では、記録層2の磁化情報が中間層303の磁化
を経由して読み出し層401に転写されることにより、
その磁化方向が記録層2の磁化方向と同一方向となる。
【0109】ここで、本実施例の読み出し層401は、
垂直磁気異方性が比較的小さいため、中間層3からの交
換結合力が非常に弱くなってしまった上記領域44にお
いては、面内磁化状態となり、垂直入射光に対して磁気
光学効果を示さなくなる。このため、上記領域44に対
応する記録層2に記録された情報13′・14′は、読
み出し層401の面内磁化にマスクされて読み出される
ことがなくなる。したがって、本実施例では、再生時、
実施例3で必要であった、領域44に対応する読み出し
層の磁化方向を常に同一方向にそろえておくための外部
磁界Hexは必要なくなる。
【0110】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、読み出し層40
1の温度が面内磁化から垂直磁化へと移行する温度T1
以上になる領域33の一部、および、中間層3がキュリ
ー温度T3以上になる領域44の一部のみが存在するこ
ととなる。したがって、上記領域33に存在しても、レ
ーザビーム8の照射領域22内に存在しない情報14・
14′は再生されない。
【0111】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層401の温度が面内磁化から垂
直磁化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存
在し、且つ、中間層3がキュリー温度T3以上になる領
域44外に存在する情報13のみである。これにより、
本実施例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に提案
した光磁気記録媒体(特願平4−74605号参照)よ
り更に小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビットを
分離して再生することが可能であり、記録密度を著しく
向上させることができる。
【0112】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層401は垂直磁化から面内磁化に移行す
る。これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学
カー効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下し
た部位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因であ
る隣接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0113】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。
【0114】ターゲットとして、Al、Gd、Dy、H
o、Fe、Coを備えた実施例1で使用したスパッタリ
ング装置内に、プリグルーブおよびプリピットを有する
パリカーボネート製のディスク基板4を、ターゲットに
対向して配置した。このスパッタリング装置により、実
施例1と同様にして、透明誘電体膜5として膜厚60n
mのAlN、読み出し層401として膜厚50nmのG
0.28(Fe0.8Co0 .20.72、中間層303として膜
厚50nmのDy0.13(Fe0.5Co0.50.87、記録層
2として膜厚50nmのDy0.23(Fe0.82Co0.18
0.77、透明誘電体膜6として膜厚50nmのAlNを順
次形成した。
【0115】上記のGd0.28(Fe0.8Co0.20.72
らなる読み出し層401は、室温で面内磁化状態であ
り、60℃以上の温度で垂直磁化状態に移行(T1=6
0℃)し、そのキュリー温度は350℃であった。ま
た、上記のDy0.13(Fe0.5Co0.50.87からなる中
間層303は、室温で垂直磁化状態を示し、90℃以上
の温度で面内磁化状態に移行(T3=90℃)し、その
キュリー温度は380℃であった。また、上記のDy
0.23(Fe0.82Co0.180.77からなる記録層2は、ほ
ぼ室温に補償点を有する垂直磁化膜であり、そのキュリ
ー温度T2は160℃であった。
【0116】この後、上記透明誘電体膜6上に、紫外線
硬化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照
射し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0117】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
20MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に0.5μm周期で0.25μmの
長さの反転磁区を形成することができた。
【0118】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして記録情報の再生を行ったところ、記録層2に形成
された反転磁区にしたがって、周波数20MHzの再生
信号を読み出し層401から得ることができた。本実施
例では、上記実施例3において再生時に必要であった一
定磁界(外部磁界Hex)は不要であった。
【0119】〔実施例5〕本発明の一実施例について、
図5、図7および図8に基づいて説明すれば、以下の通
りである。
【0120】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、上記実施例1の中間層3の代わりに中間層
503が用いられている以外は、上記実施例1の光磁気
ディスクと同様の構成であり、上記中間層503以外の
各層、即ち、基板、透明誘電体膜、読み出し層、記録
層、透明誘電体膜、オーバーコート膜のそれぞれの構成
および諸特性は、実施例1と同じであるので、これらの
各層には実施例1と同一の参照番号を付記し、詳細な説
明をここでは省略する(図7参照)。
【0121】上記中間層503は、室温において面内磁
化状態を示し、室温からキュリー温度T3まで面内磁化
状態を保持する面内磁化膜であり(図8参照)、例えば
膜厚が50nmDy0.09Fe0.91等を使用することがで
きる。尚、上記中間層503のキュリー温度T3は、6
0℃〜90℃が好ましい。
【0122】尚、読み出し層1が面内磁化から垂直磁化
へと移行する温度T1は、40℃〜70℃が好ましい。
また、記録層2のキュリー温度T2は、120℃〜18
0℃が好ましい。そして、上記各温度T1・T2・T
3は、 T1<T3<T2 の関係になっている。
【0123】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0124】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図5を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層1・2
・503の磁化状態を示すものである。
【0125】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、光磁気ディスク上で
最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心から
後方にずれた位置に存在することになる。このため、レ
ーザビーム8の照射により読み出し層1の温度が温度T
1以上に上昇する領域33(領域の中心)は、レーザビ
ーム8の照射領域22(領域の中心)に対して後方にず
れた位置に存在することとなる。また、中間層503の
温度がキュリー温度T3以上に上昇する領域44(領域
の中心)は、レーザビーム8の照射領域22(領域の中
心)に対して後方にずれた位置に存在することとなる。
【0126】ここで、上記中間層503においては、そ
の温度がキュリー温度T3以上の領域44で、磁化が消
失することになる一方、上記領域44以外の部位では、
面内磁化状態が保持されることになる。また、上記読み
出し層1においては、その温度が温度T1以上に上昇す
る領域33で、垂直磁化状態となる一方、該領域33以
外の部位では面内磁化状態が保持されることになる。こ
のため、温度T1以上になる領域33内で、且つ、温度
3以上になる領域44外の領域において、読み出し層
1は、中間層503の面内磁化を介して記録層2からの
交換結合力を受け、記録層2の磁化方向と同じ方向を向
くことになる。
【0127】上記のように、記録層2の磁化情報は、中
間層503の面内磁化を介して読み出し層1に転写され
るようになっているので、中間層503に磁化が存在し
なくなった領域44では、記録層2の磁化情報が読み出
し層1に転写されない。即ち、中間層503に磁化が存
在しなくなった領域44では、記録層2の磁化情報が、
読み出し層1に交換結合力を作用させることができなく
なる。したがって、読み出し層1における上記領域44
に対応する部位は、中間層503からの交換結合力を受
けない自由な状態となり、その磁化状態は、読み出し層
1の特性、即ち、垂直磁気異方性の大きさに依存するこ
ととなる。
【0128】本実施例の読み出し層1は、垂直磁気異方
性が比較的大きいため、中間層503からの交換結合力
が存在しない上記領域44においても、垂直磁化状態を
保持する。このため、本実施例では、再生時、上記領域
44に対応する読み出し層1の磁化方向を、常に同一方
向にそろえておくための外部磁界Hexが光磁気ディスク
に印加されることになる。これにより、温度T3以上に
なる領域44に存在する情報13′・14′は再生され
ることはない。
【0129】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、読み出し層1の
温度が面内磁化から垂直磁化へと移行する温度T1以上
になる領域33の一部、および、中間層503がキュリ
ー温度T3以上になる領域44の一部が存在することと
なる。したがって、温度T1以上になる領域33内に存
在しても、レーザビーム8の照射領域22内に存在しな
い情報14・14′は再生されない。
【0130】また、読み出し層1における上記領域33
以外の部位では、面内磁化状態が保持され、垂直入射光
に対して磁気光学効果を示さない。したがって、レーザ
ビーム8の照射領域22内に存在しても、温度T1以上
になる領域33外にある情報12…は再生されない。
【0131】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層1の温度が面内磁化から垂直磁
化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存在
し、且つ、中間層503がキュリー温度T3以上になる
領域44外に存在する情報13のみである。これによ
り、本実施例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に
提案した光磁気記録媒体(特願平4−74605号参
照)より更に小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビ
ットを分離して再生することが可能であり、記録密度を
著しく向上させることができる。
【0132】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層1は垂直磁化から面内磁化に移行する。
これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学カー
効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下した部
位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因である隣
接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0133】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。
【0134】ターゲットとして、Al、Gd、Dy、H
o、Fe、Coを備えた実施例1で使用したスパッタリ
ング装置内に、プリグルーブおよびプリピットを有する
パリカーボネート製のディスク基板4を、ターゲットに
対向して配置した。このスパッタリング装置により、実
施例1と同様にして、透明誘電体膜5として膜厚60n
mのAlN、読み出し層1として膜厚50nmのDy
0.35(Fe0.5Co0.5 0.65、中間層503として膜厚
50nmのDy0.09Fe0.91、記録層2として膜厚50
nmのDy0.23(Fe0.82Co0.180.77、透明誘電体
膜6として膜厚50nmのAlNを順次形成した。
【0135】上記のDy0.35(Fe0.5Co0.50.65
らなる読み出し層1は、室温で面内磁化状態であり、6
0℃以上の温度で垂直磁化状態に移行(T1=60℃)
し、そのキュリー温度は320℃であった。また、上記
のDy0.09Fe0.91からなる中間層503は、室温で面
内磁化状態を示し、そのキュリー温度T3が90℃であ
った。また上記のDy0.23(Fe0.82Co0.180.77
らなる記録層2は、ほぼ室温に補償点を有する垂直磁化
膜であり、そのキュリー温度T2は160℃であった。
【0136】この後、上記透明誘電体膜6上に、紫外線
硬化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照
射し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0137】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
20MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に0.5μm周期で0.25μmの
長さの反転磁区を形成することができた。
【0138】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして、+5kA/mの一定磁界(外部磁界Hex)を光
磁気ディスクに印加した状態で、記録情報の再生を行っ
たところ、記録層2に形成された反転磁区にしたがっ
て、周波数20MHzの再生信号を読み出し層1から得
ることができた。
【0139】〔実施例6〕本発明の他の実施例につい
て、図6および図7に基づいて説明すれば、以下の通り
である。
【0140】本実施例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、上記実施例5の読み出し層1の代わりに読
み出し層601が用いられている以外は、上記実施例5
の光磁気ディスクと同様の構成であり、上記読み出し層
以外の各層、即ち、基板、透明誘電体膜、中間層、記録
層、透明誘電体膜、オーバーコート膜のそれぞれの構成
および諸特性は、実施例5と同じであるので、これらの
各層には実施例5と同一の参照番号を付記し、詳細な説
明をここでは省略する(図7参照)。また、本実施例の
読み出し層601は、実施例2に示した読み出し層20
1と同じ構成および諸特性を示すものであり、その詳細
な説明をここでは省略する。
【0141】尚、読み出し層601が面内磁化から垂直
磁化へと移行する温度T1は、40℃〜70℃が好まし
い。また、中間層503のキュリー温度T3は、60℃
〜90℃が好ましい。また、記録層2のキュリー温度T
2は、120℃〜180℃が好ましい。そして、上記各
温度T1・T2・T3は、T1<T3<T2の関係になってい
る。
【0142】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する記録は、該光磁気ディスクへ記録磁界を印加すると
共に、高いパワーのレーザビーム8を対物レンズ9によ
り集光して光磁気ディスクへ照射し、記録層2の温度を
キュリー温度T2の近傍まで上昇させることにより行わ
れる。これにより、上記記録層2に記録ビットが形成さ
れる。
【0143】次に、上記光磁気ディスクに記録された情
報の再生について、図6を参照して以下に説明する。
尚、同図(a)は、光磁気ディスクをレーザビーム8の
照射側から見た図であり、同図(b)は、同図(a)の
光磁気ディスクのA−A線断面における各磁性層601
・503・2の磁化状態を示すものである。
【0144】先ず、記録時よりも低いパワーのレーザビ
ーム8が光磁気ディスクに照射されることになる。この
際、レーザビーム8は光磁気ディスクに対して相対的に
矢印Qで示す方向に移動しており、光磁気ディスク上で
最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心から
後方にずれた位置に存在することになる。このため、レ
ーザビーム8の照射により読み出し層1の温度が温度T
1以上に上昇する領域33(領域の中心)は、レーザビ
ーム8の照射領域22(領域の中心)に対して後方にず
れた位置に存在することとなる。また、中間層503の
温度がキュリー温度T3以上に上昇する領域44(領域
の中心)は、レーザビーム8の照射領域22(領域の中
心)に対して後方にずれた位置に存在することとなる。
【0145】この場合、上記実施例5と同様に、上記中
間層503においては、その温度がキュリー温度T3
上の領域44で、磁化が消失することになる一方、上記
領域44以外の部位では、面内磁化状態が保持されるこ
とになる。また、上記読み出し層601においては、そ
の温度が温度T1以上に上昇する領域33で、垂直磁化
状態を示そうとする一方、該領域33以外の部位では面
内磁化状態が保持されることになる。このため、温度T
1以上になる領域33内で、且つ、温度T3以上になる領
域44外の領域において、読み出し層601は、中間層
503の面内磁化を介して記録層2からの交換結合力を
受け、記録層2の磁化方向と同じ方向を向くことにな
る。
【0146】尚、前記実施例4では、領域44において
中間層303が面内磁化状態を示した場合には、垂直磁
気異方性が比較的小さい読み出し層401が、面内磁化
状態を示すと説明したが、これは、最も高温となる領域
44に存在する中間層303の温度上昇に伴う磁化減少
により、領域44においては、読み出し層401と中間
層303との間に作用すに交換結合力が極端に弱くなる
からである(以上、図4参照)。
【0147】一方、中間層503に磁化が存在しなくな
った領域44では、記録層2の磁化情報が、読み出し層
1に交換結合力を作用させることができなくなる。した
がって、読み出し層1における上記領域44に対応する
部位は、中間層503からの交換結合力を受けない自由
な状態となり、その磁化状態は、読み出し層601の特
性、即ち、垂直磁気異方性の大きさに依存することとな
る。
【0148】ここで、本実施例の読み出し層601は、
垂直磁気異方性が比較的小さいため、中間層503から
の交換結合力が存在しない上記領域44においては、面
内磁化状態となり、垂直入射光に対して磁気光学効果を
示さなくなる。このため、上記領域44に対応する記録
層2に記録された情報13′・14′は、読み出し層6
01の面内磁化にマスクされて読み出されることがなく
なる。したがって、本実施例では、再生時、実施例5で
必要であった、領域44に対応する読み出し層の磁化方
向を常に同一方向にそろえておくための外部磁界Hex
必要なくなる。
【0149】上述のように、再生時、光磁気ディスク上
で最も温度が高くなる部位は、レーザビーム8の中心か
ら後方にずれた位置に存在することになる。このため、
レーザビーム8の照射領域22内には、読み出し層60
1の温度が面内磁化から垂直磁化へと移行する温度T1
以上になる領域33の一部、および、中間層3がキュリ
ー温度T3以上になる領域44の一部のみが存在するこ
ととなる。したがって、上記領域33に存在しても、レ
ーザビーム8の照射領域22内に存在しない情報14・
14′は再生されない。
【0150】また、読み出し層601における上記領域
33以外の部位では、面内磁化状態が保持され、垂直入
射光に対して磁気光学効果を示さない。したがって、レ
ーザビーム8の照射領域22内に存在しても、上記領域
33外にある情報12…は、再生されない。
【0151】上記より、レーザビーム8の照射により再
生される情報は、レーザビーム8の照射領域22内に存
在し、且つ、読み出し層601の温度が面内磁化から垂
直磁化へと移行する温度T1以上になる領域33内に存
在し、且つ、中間層3がキュリー温度T3以上になる領
域44外に存在する情報13のみである。これにより、
本実施例の光磁気ディスクは、本願発明者等が先に提案
した光磁気記録媒体(特願平4−74605号参照)よ
り更に小さい記録ビットでも、一つ一つの記録ビットを
分離して再生することが可能であり、記録密度を著しく
向上させることができる。
【0152】そして、レーザビーム8が移動して次の記
録ビットを再生する時は、先の再生部位の温度は低下
し、読み出し層601は垂直磁化から面内磁化に移行す
る。これに伴って、この温度の低下した部位は磁気光学
カー効果を示さなくなる。したがって、該温度の低下し
た部位からは情報が再生されなくなり、雑音の原因であ
る隣接ビットからの信号が混入することがなくなる。
【0153】ここで、本実施例をさらに具体的に説明す
る。
【0154】ターゲットとして、Al、Gd、Dy、H
o、Fe、Coを備えた実施例1で使用したスパッタリ
ング装置内に、プリグルーブおよびプリピットを有する
パリカーボネート製のディスク基板4を、ターゲットに
対向して配置した。このスパッタリング装置により、実
施例1と同様にして、透明誘電体膜5として膜厚60n
mのAlN、読み出し層601として膜厚50nmのG
0.28(Fe0.8Co0 .20.72、中間層5033として
膜厚50nmのDy0.09Fe0.91、記録層2として膜厚
50nmのDy0.23(Fe0.82Co0.180.77、透明誘
電体膜6として膜厚50nmのAlNを順次形成した。
【0155】上記のGd0.28(Fe0.8Co0.20.72
らなる読み出し層601は、室温で面内磁化状態であ
り、60℃以上の温度で垂直磁化状態に移行(T1=6
0℃)し、そのキュリー温度は350℃であった。ま
た、上記のDy0.09Fe0.91からなる中間層3
は、室温で面内磁化状態を示し、そのキュリー温度T3
は90℃であった。また、上記のDy0.23(Fe0.82
0.180.77からなる記録層2は、ほぼ室温に補償点を
有する垂直磁化膜であり、そのキュリー温度T2は16
0℃であった。
【0156】この後、上記透明誘電体膜6上に、紫外線
硬化樹脂をスピンコートにより塗布した後、紫外線を照
射し、透明誘電体膜6上にオーバーコート膜7を形成し
た。尚、上記オーバーコート膜7として、熱硬化樹脂を
用いてもよい。
【0157】上記のようにして作製した光磁気ディスク
にレーザビーム8を対物レンズ9により集光して照射
し、このレーザビーム8の光磁気ディスクに対する相対
線速度が10m/sとなるように該ディスクを回転させ
た。そして、記録を行うための10mWのレーザビーム
8を連続照射した状態で、±15kA/mの変調磁界を
20MHzの周波数で変調して光磁気ディスクに印加し
たところ、記録層2に0.5μm周期で0.25μmの
長さの反転磁区を形成することができた。
【0158】この後、レーザビーム8のパワーを2mW
にして記録情報の再生を行ったところ、記録層2に形成
された反転磁区にしたがって、周波数20MHzの再生
信号を読み出し層601から得ることができた。本実施
例では、上記実施例5において再生時に必要であった一
定磁界(外部磁界Hex)は不要であった。
【0159】〔参考例〕参考例について、図9ないし図
13に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0160】本参考例の光磁気記録媒体としての光磁気
ディスクは、基板701、透明誘電体膜702、第1磁
性層703、第3磁性層704、第2磁性層705、透
明誘電体膜706、オーバーコート膜707がこの順に
積層された構成となっており、各磁性層703〜705
間には交換結合力が作用するようになっている。
【0161】上記の基板701、透明誘電体膜702、
透明誘電体膜706およびオーバーコート膜707は、
前記実施例1の基板4、透明誘電体膜5、透明誘電体膜
6およびオーバーコート膜7のそれぞれの構成および諸
特性と同じであるので、詳細な説明をここでは省略す
る。
【0162】上記第1磁性層703は、室温で垂直磁化
状態を示し、キュリー温度T71まで垂直磁化状態を保持
する垂直磁化膜である。この第1磁性層703は、記録
層と再生層との機能を兼ね備えており、そのキュリー温
度T71は、上記第2磁性層705のキュリー温度よりも
高く設定されている。この第1磁性層703としては、
例えば、GdDyFeCo等の希土類遷移金属を使用す
ることができる。この第1磁性層703は、再生層とし
ての機能が重要視されるため、そのキュリー温度T71
高く、また、カー回転角Θkが大きくなるようなものが
望ましい。本参考例では、第1磁性層703として、膜
厚50nmのGd0.10Dy0.13Fe0.54Co0.23が使用
される。このGd0.10Dy0.13Fe0.54Co0.23のキュ
リー温度T71は300℃と高く、また、このGd0.10
0.13Fe0.54Co0.23に、波長800nm程度のレー
ザビームを照射した場合のカー回転角Θkは、0.4程
度と比較的大きい。したがって、Gd0.10Dy0.13Fe
0.54Co0.23は、再生層として優れたものである。
【0163】尚、第1磁性層703は、上記GdDyF
eCoに限定されるものではなく、それ以外には、例え
ば、GdTbFeCo、TbFeCo、DyFeCo、
GdNbFe、NbTbFeCo、Pt/Coあるいは
Pd/Co等であってもよい。特に、第1磁性層703
として、GdNbFe、NbTbFeCo、Pt/Co
あるいはPd/Coを使用した場合は、短波長の再生光
でより大きな再生性能を得られるので、短波長レーザビ
ームを用いてビーム径をより小さくすることで、より高
い記録密度が実現できるという利点がある。
【0164】上記第2磁性層705は、室温で垂直磁化
状態を示し、室温からキュリー温度まで垂直磁化状態を
保持する垂直磁化膜である。この第2磁性層705は、
記録層としての機能が求められるため、そのキュリー温
度は、3つの磁性層703〜705の中で最も低く設定
されている。この第2磁性層705としては、例えば、
TbFeCo等の希土類遷移金属を使用することができ
る。本参考例では、第2磁性層705として、膜厚10
0nmのTb0.20Fe0.75Co0.05が使用される。この
Tb0.20Fe0.75Co0.05のキュリー温度は150℃と
比較的低く、記録層として優れている。
【0165】尚、第2磁性層705は、上記TbFeC
oに限定されるものではなく、それ以外には、例えば、
DyFeCo、GdTbFe、TbFe、DyFe等で
あってもよい。
【0166】ここで、図11に、Gd0.10Dy0.13Fe
0.54Co0.23からなる第1磁性層703と、Tb0.20
0.75Co0.05からなる第2磁性層705との保磁力の
温度依存性を示す。
【0167】本参考例の場合、記録時に、光磁気ディス
クに外部磁界が印加されるが、同図に示すように、この
外部磁界の大きさを200Oeに設定しているので、第
2磁性層705が磁化反転を生じる温度(以下、第2磁
性層磁化反転温度と称する)T72、即ち、第2磁性層7
05の保磁力が外部磁界の大きさ(200Oe)より小
さくなる温度は、約145℃に相当する。
【0168】上記第3磁性層704は、上記の第1磁性
層703と第2磁性層705との交換結合を仲介する中
間層の役目を担うものであり、室温で面内磁化状態を示
し、上記の第2磁性層磁化反転温度T72より高い温度で
垂直磁化状態を示すように設定されている。この第3磁
性層704としては、例えば、GdFeCo等の希土類
遷移金属を使用することができる。本参考例では、第3
磁性層704として、膜厚40nmのGd0.23Fe0.46
Co0.31が使用される。このGd0.23Fe0.46Co0.31
は、室温では面内磁化状態を示し、垂直磁化に移行する
温度T73が約170℃(>T72≒145℃)であり、キ
ュリー温度300℃まで垂直磁化状態を保持するもので
ある。
【0169】また、本参考例では、透明誘電体膜5とし
て膜厚80nmのAlN、透明誘電体膜6として膜厚5
0nmのAlN、オーバーコート膜7として紫外線硬化
性樹脂膜が用いられている。
【0170】上記の構成において、光磁気ディスクに対
する情報の記録は、該光磁気ディスクへ200Oeの大
きさの外部磁界を印加すると共に、高いパワーのレーザ
ビーム8を対物レンズ9により集光して光磁気ディスク
へ照射し、第2磁性層705の温度をキュリー温度の近
傍まで上昇させることにより行われる。
【0171】ここで、図10に、トラック内に形成され
た情報ビット721…と、レーザビーム8の照射によっ
て第2磁性層磁化反転温度T72以上となり、第2磁性
層705が磁化反転を生じる領域(以下、第2磁性層磁
化反転領域と称する)722と、第3磁性層704が面
内磁化から垂直磁化に移行する温度T73以上となり、第
3磁性層704が垂直磁化を呈する領域(以下、第3磁
性層垂直磁化領域と称する)723との相対関係を示
す。尚、ここでは、実際に記録が行われているトラック
に隣接した両トラック内には、既に情報が記録されてい
るものとし、既に記録された情報は、黒く塗り潰したビ
ットパターンとして表示している。また、光磁気ディス
クはレーザビーム8に対して、矢印Rで示す方向に移動
している。
【0172】上記外部磁界の存在下でのレーザビーム8
の照射により、上記第2磁性層磁化反転領域722にお
いて、第2磁性層705の磁化反転が生じ、第2磁性層
705上に記録ビットが形成されることになる。
【0173】そして、上記第2磁性層705上に形成さ
れた記録ビットは、第3磁性層704を介した交換結合
によって、最終的には第1磁性層703に磁気転写記憶
されることになる。この場合、実際に第2磁性層705
と第1磁性層703との間で磁気転写が行われるのは、
第3磁性層704が垂直磁化を示している領域だけに限
定されることになる。即ち、第3磁性層704が面内磁
化状態の場合、第1磁性層703と第2磁性層705と
の間に作用する交換結合力が非常に弱くなり、第2磁性
層705の磁化状態は第1磁性層には転写されないので
ある。
【0174】ここで、第3磁性層704が面内磁化から
垂直磁化に移行する温度T73は、第2磁性層磁化反転温
度T72より高く設定されており、上記第3磁性層垂直磁
化領域723は、上記第2磁性層磁化反転領域722よ
りも小さいため、結果的に第1磁性層703には第2磁
性層705に形成された記録ビットと比べて相対的に小
さな記録ビットが形成されることになる。
【0175】ところで、同図に示すように、記録時にお
ける横方向およびトラック方向の熱拡散の影響で、記録
層である第2磁性層705の磁化反転領域722は、既
に記録済みの隣接トラックや直前に記録したビットにま
でおよび、第2磁性層705における既記録部の磁化状
態を乱してしまうことになる。
【0176】しかしながら、第2磁性層705における
磁化状態に乱れが生じている部分は、第3磁性層704
の面内磁化によってマスキングされ、第1磁性層703
に磁気転写されない。即ち、本参考例の光磁気ディスク
では、上記第2磁性層705において生じる熱干渉によ
る影響が、最終的に情報を記録する第1磁性層703に
まで及ばないような構成になっており、第1磁性層70
3に既に記録されている情報の乱れは殆ど生じない。し
たがって、上記光磁気ディスクの第1磁性層703に
は、信頼性の高い高密度のビット情報が記録されること
になる。
【0177】次に、本参考例の光磁気ディスクと、本参
考例の光磁気ディスクから第3磁性層704を省いた光
磁気ディスクとに、下表1に示す条件で情報を記録し
た。そして、下表1に示す条件でそれぞれの光磁気ディ
スクに記録された情報の再生を行ったときのトラックピ
ッチに対する再生信号のC/Nの変化を、図12に示
す。尚、同図中において、本参考例の光磁気ディスクを
用いた場合を実線で、また、第3磁性層704がない従
来型の光磁気ディスクを用いた場合を点線で示してい
る。
【0178】
【表1】 同図から明らかなように、トラックピッチを狭くして高
密度化を図るにつれて、第3磁性層704のない従来型
(交換結合2層膜構造)の光磁気ディスクの場合は、記
録時の隣接トラック間クロストークの影響で、再生信号
のC/Nの劣化が顕著である。これに対し、本参考例の
交換結合3層膜構造の光磁気ディスクの場合は、記録時
の隣接トラック間クロストークが抑えられ、高密度にな
っても再生信号のC/Nの劣化は僅かである。
【0179】したがって、本参考例の光磁気ディスクを
用いることにより、装置システム側の負荷を増大させる
ことなく、記録密度を向上させることができる。
【0180】また、本参考例の第1〜第3磁性層703
〜705を記録層としてのみ用い、図13に示すよう
に、第1磁性層703上に前記実施例1〜6に用いた中
間層および読み出し層をこの順に積層し、交換結合5層
膜構造とすることができる。即ち、本参考例の交換結合
3層膜において実際に高密度の情報を記憶するのは、第
1磁性層703であるので、第1磁性層703を読み出
し層として使用せずに記録層としてのみ機能させ、この
第1磁性層703を前記実施例1〜6に示した記録層2
として用いるわけである。このような交換結合5層膜を
用いた光磁気記録媒体は、前記実施例1〜6に示したよ
うに再生時の分解能の向上が図れるという効果と共に、
記録時の隣接記録ビットへの熱干渉による悪影響をも回
避できるという効果を併せて奏するものとなり、情報の
高密度記録を実現できるものとなり得る。
【0181】尚、上記各実施例では、光磁気記録媒体と
して光磁気ディスクについて説明したが、本発明はこれ
に限定されるものではなく、光磁気テープ、光磁気カー
ド等にも適用できる。
【0182】また、発明の詳細な説明の項においてなし
た具体的な実施態様、又は実施例は、あくまでも本発明
の技術内容を明らかにするものであって、そのような具
体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではな
く、本発明の精神と前記特許請求事項の範囲内で、いろ
いろと変更して実施することができるものである。
【0183】
【発明の効果】本発明の光磁気記録媒体の再生方法によ
れば、記録層に記録されたビットの中で光ビームの照射
により再生される記録ビットは、光ビームの照射領域内
に存在し、且つ、温度T1以上の領域内に存在し、且
つ、温度T3以上の領域外に存在する記録ビットのみと
なるため、記録密度を著しく向上させることができると
いう効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図2】実施例2を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図3】実施例3を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図4】実施例4を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図5】実施例5を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図6】実施例6を示すものであり、レーザビームが照
射された光磁気ディスクの各磁性層の磁化状態を示す説
明図である。
【図7】図1ないし図6の光磁気ディスクの構成を示す
説明図である。
【図8】図1ないし図6の光磁気ディスクの各磁性層の
保持力の温度依存性を示す説明図である。
【図9】参考例を示すものであり、光磁気ディスクの構
成を示す説明図である。
【図10】上記光磁気ディスクに形成された情報ビット
パターンと、レーザビームの照射により第2磁性層が磁
化反転を生じる領域と、第3磁性層が垂直磁化を呈する
領域との相対関係を示す説明図である。
【図11】上記光磁気ディスクの第1磁性層および第2
磁性層の保持力の温度依存性を示す説明図である。
【図12】上記光磁気ディスク、および、上記光磁気デ
ィスクから第3磁性層のみを省いた光磁気ディスクのト
ラックピッチに対する再生信号のC/Nの変化を示す説
明図である。
【図13】上記光磁気ディスクの第1ないし第3磁性層
上に、さらに図1ないし図6の光磁気ディスクの中間層
および読み出し層を積層した構成を示す説明図である。
【図14】特願平4−74605号の光磁気記録媒体に
レーザビームが照射された場合の各磁性層の磁化状態を
示す説明図である。
【図15】高密度記録された上記光磁気記録媒体にレー
ザビームが照射された場合の各磁性層の磁化状態を示す
説明図である。
【符号の説明】
1・201・401・601 読み出し層 2 記録層 3・303・503 中間層 4 基板 5・6 透明誘電体膜 8 レーザビーム(光ビーム) 701 基板 702・706 透明誘電体膜 703 第1磁性層 704 第3磁性層 705 第2磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (72)発明者 太田 賢司 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−205336(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 11/105

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室温において垂直磁化状態を示し、室温
    からキュリー温度T2まで垂直磁化状態を保持する記録
    層と、該記録層に対して光ビームの入射側に配置され、
    室温において面内磁化状態を示す一方、温度T1以上で
    垂直磁化状態へと移行する読み出し層と、上記読み出し
    層と記録層との間に設けられ、室温において垂直磁化状
    態を示す一方、温度T3以上で面内磁化状態へと移行す
    る中間層を有し、上記温度T1、T2、T3が、 T1<T3<T2 の関係を満たしている光磁気記録媒体の再生方法であっ
    て、 上記光磁気記録媒体における再生光ビームの照射領域内
    に、 3 以上T 2 未満の温度となる領域を形成し、その領
    域において上記記録層から上記読み出し層への磁化の転
    写を遮断することを特徴とする光磁気記録媒体の再生方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の光磁気記録媒体の再生
    方法において、 再生時に外部磁界を印加して、上記読み出し層における
    上記T3以上の温度となる領域の磁化の方向を上記外部
    磁界に応じた同一の方向にそろえることを特徴とする光
    磁気記録媒体の再生方法
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の光磁気記録媒体の再生
    方法において、 再生時に外部磁界を印加せず、上記読み出し層における
    上記T3以上の温度となる領域の磁化の方向を面内方向
    に向けることを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法
  4. 【請求項4】 室温において垂直磁化状態を示し、室温
    からキュリー温度T2まで垂直磁化状態を保持する記録
    層と、該記録層に対して光ビームの入射側に配置され、
    室温において面内磁化状態を示す一方、温度T1以上で
    垂直磁化状態へと移行する読み出し層と、上記読み出し
    層と記録層との間に設けられ、室温において垂直磁化状
    態を示し、室温からキュリー温度T3まで垂直磁化状態
    を保持する中間層を有し、上記温度T1、T2、T3が、 T1<T3<T2 の関係を満たしている光磁気記録媒体の再生方法であっ
    て、 上記光磁気記録媒体における再生光ビームの照射領域内
    に、 3 以上T 2 未満の温度となる領域を形成し、その領
    域において上記記録層から上記読み出し層への磁化の転
    写を遮断し、 再生時に外部磁界を印加せず、上記読み出し層における
    上記T 3 以上の温度となる領域の磁化の方向を面内方向
    に向ける ことを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法。
  5. 【請求項5】 室温において垂直磁化状態を示し、室温
    からキュリー温度T2まで垂直磁化状態を保持する記録
    層と、該記録層に対して光ビームの入射側に配置され、
    室温において面内磁化状態を示す一方、温度T1以上で
    垂直磁化状態へと移行する読み出し層と、上記読み出し
    層と記録層との間に設けられ、室温において面内磁化状
    態を示し、室温からキュリー温度T3まで面内磁化状態
    を保持する中間層を有し、上記温度T1、T2、T3が、 T1<T3<T2 の関係を満たしている光磁気記録媒体の再生方法であっ
    て、 上記光磁気記録媒体における再生光ビームの照射領域内
    に、 3 以上T 2 未満の温度となる領域を形成し、その領
    域において上記記録層から上記読み出し層への磁化の転
    写を遮断し、 再生時に外部磁界を印加せず、上記読み出し層における
    上記T 3 以上の温度となる領域の磁化の方向を面内方向
    に向ける ことを特徴とする光磁気記録媒体の再生方法。
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