JP3184367B2 - 高靭性Al−Si系合金の製造方法 - Google Patents
高靭性Al−Si系合金の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高靭性Al−Si系合
金の製造方法、詳しくは、Al−Si系合金溶湯を非酸
化性ガスで噴霧して急冷凝固させながら堆積させること
によって得たビレットを使用して、自動車工業、家電お
よび産業機械用材料として好適な押出材を製造する高靭
性Al−Si系合金の製造方法に関する。
金の製造方法、詳しくは、Al−Si系合金溶湯を非酸
化性ガスで噴霧して急冷凝固させながら堆積させること
によって得たビレットを使用して、自動車工業、家電お
よび産業機械用材料として好適な押出材を製造する高靭
性Al−Si系合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム材料は、軽量な工業材料と
して広範囲に利用されているが、近年、自動車工業分
野、家電分野および産業機械分野において、各種機器の
高性能化、高速化が進んでおり、これら機器の部品とし
て使用されるアルミニウム材料にはさらに優れた特性が
要求されている。
して広範囲に利用されているが、近年、自動車工業分
野、家電分野および産業機械分野において、各種機器の
高性能化、高速化が進んでおり、これら機器の部品とし
て使用されるアルミニウム材料にはさらに優れた特性が
要求されている。
【0003】アルミニウム材料に優れた特性を与える方
法として急冷凝固法を利用した粉末冶金法がある。粉末
冶金法は、アルミニウム合金材料を微粉末にして圧縮成
形し、押出、鍛造等の加工を行って成形体を得る方法で
あり、従来の溶解ー鋳造あるいは展伸加工により製造さ
れたアルミニウム材料と比べて高温特性、耐摩耗性に優
れているため、自動車部品や家電部品の一部に実用化さ
れている。しかし、高SiのAl−Si系合金の場合に
は、とくに急冷凝固−予備成形の過程において酸化され
易く、SiあるいはSiを含む金属間化合物が粗大に晶
出あるいは析出し易いため、材料の靭性を低下させるこ
とが少なくない。
法として急冷凝固法を利用した粉末冶金法がある。粉末
冶金法は、アルミニウム合金材料を微粉末にして圧縮成
形し、押出、鍛造等の加工を行って成形体を得る方法で
あり、従来の溶解ー鋳造あるいは展伸加工により製造さ
れたアルミニウム材料と比べて高温特性、耐摩耗性に優
れているため、自動車部品や家電部品の一部に実用化さ
れている。しかし、高SiのAl−Si系合金の場合に
は、とくに急冷凝固−予備成形の過程において酸化され
易く、SiあるいはSiを含む金属間化合物が粗大に晶
出あるいは析出し易いため、材料の靭性を低下させるこ
とが少なくない。
【0004】上記の欠点を解消する技術として、非酸化
性雰囲気中において金属溶湯を非酸化性ガスで噴霧して
急冷凝固させながらコレクタ上に堆積させることにより
予備成形体を得る方法(以下、スプレイデポジション)
が英国のOSPREYMETALS社により開発されている( 特開昭
62-1849 号公報) 。スプレイデポジションによれば、非
酸化性ガスにより微粒化された金属は直ちにコレクタ上
で融着し合い急冷凝固されるから、酸化され難く、Si
あるいはSiを含む金属間化合物の粗大化も生じ難いか
ら、材料の靭性向上が期待される。
性雰囲気中において金属溶湯を非酸化性ガスで噴霧して
急冷凝固させながらコレクタ上に堆積させることにより
予備成形体を得る方法(以下、スプレイデポジション)
が英国のOSPREYMETALS社により開発されている( 特開昭
62-1849 号公報) 。スプレイデポジションによれば、非
酸化性ガスにより微粒化された金属は直ちにコレクタ上
で融着し合い急冷凝固されるから、酸化され難く、Si
あるいはSiを含む金属間化合物の粗大化も生じ難いか
ら、材料の靭性向上が期待される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、スプレイデ
ポジションの利点を生かしながら、さらにAl−Si系
合金材料の特性を向上させるための材料成分および組織
の組み合わせについて鋭意研究した結果としてなされた
ものであり、その目的は、スプレイデポジションを適用
して優れた靭性および高温強度を有するAl−Si系合
金を得る高靭性Al−Si系合金の製造方法を提供する
ことにある。
ポジションの利点を生かしながら、さらにAl−Si系
合金材料の特性を向上させるための材料成分および組織
の組み合わせについて鋭意研究した結果としてなされた
ものであり、その目的は、スプレイデポジションを適用
して優れた靭性および高温強度を有するAl−Si系合
金を得る高靭性Al−Si系合金の製造方法を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の請求項1による高靱性Al−Si系合金の
製造方法は、Si10〜30%と、TiおよびBのうちの1
種以上を合計0.005 〜0.5 %含み、残部Alと不可避的
不純物からなるAl−Si系合金の溶湯を、窒素雰囲気
において窒素ガスで噴霧して急冷凝固させながら堆積さ
せるスプレーデポジションを実施することによってビレ
ットとし、該ビレットを押出比3以上で押出加工して、
平均結晶粒径が0.1 〜5 μm 、Siの平均粒径が1 〜10
μm で、窒素を0.03〜0.2 %含有する押出材とすること
を特徴とし、請求項2による高靱性Al−Si系合金の
製造方法は、上記のAl−Si系合金が、Cu0.5 〜6
%、Mg0.2 〜3 %を含有することを特徴とし、請求項
3による高靱性Al−Si系合金の製造方法は、上記の
Al−Si系合金が、Fe、MnおよびNiのうちの1
種以上を合計1 〜10%含み、押出材中におけるこれらの
合金元素とAl、Siとの金属間化合物の平均粒径が10
μm 以下であることを特徴とする。また、請求項4によ
る高靱性Al−Si系合金の製造方法は、上記のAl−
Si系合金が、Zr0.2 〜2.0 %を含み、押出材中にお
けるAl−Zr系金属間化合物の平均粒径が10μm 以下
であることを特徴とする。
めの本発明の請求項1による高靱性Al−Si系合金の
製造方法は、Si10〜30%と、TiおよびBのうちの1
種以上を合計0.005 〜0.5 %含み、残部Alと不可避的
不純物からなるAl−Si系合金の溶湯を、窒素雰囲気
において窒素ガスで噴霧して急冷凝固させながら堆積さ
せるスプレーデポジションを実施することによってビレ
ットとし、該ビレットを押出比3以上で押出加工して、
平均結晶粒径が0.1 〜5 μm 、Siの平均粒径が1 〜10
μm で、窒素を0.03〜0.2 %含有する押出材とすること
を特徴とし、請求項2による高靱性Al−Si系合金の
製造方法は、上記のAl−Si系合金が、Cu0.5 〜6
%、Mg0.2 〜3 %を含有することを特徴とし、請求項
3による高靱性Al−Si系合金の製造方法は、上記の
Al−Si系合金が、Fe、MnおよびNiのうちの1
種以上を合計1 〜10%含み、押出材中におけるこれらの
合金元素とAl、Siとの金属間化合物の平均粒径が10
μm 以下であることを特徴とする。また、請求項4によ
る高靱性Al−Si系合金の製造方法は、上記のAl−
Si系合金が、Zr0.2 〜2.0 %を含み、押出材中にお
けるAl−Zr系金属間化合物の平均粒径が10μm 以下
であることを特徴とする。
【0007】必須成分として含まれるSiは、合金の耐
摩耗性を向上させる。好ましい含有量は10〜30%の範囲
であり、10%未満ではその効果が小さく、30%を越える
とスプレイデポジションによってもSi粒子の平均径が
20μm 以上となり、その後押出加工を行っても平均粒径
が10μm を越えてしまうため、破壊靭性が劣る。
摩耗性を向上させる。好ましい含有量は10〜30%の範囲
であり、10%未満ではその効果が小さく、30%を越える
とスプレイデポジションによってもSi粒子の平均径が
20μm 以上となり、その後押出加工を行っても平均粒径
が10μm を越えてしまうため、破壊靭性が劣る。
【0008】Ti,Bは、凝固過程において、TiB2
などのホウ化物あるいはAl3 Tiを形成し、これらが
結晶粒核となるため、結晶粒を微細化することが可能と
なる。好ましくはTiあるいはBを単独、またはTiお
よびBの両者を合計0.005 〜0.5 %の範囲で含有させ
る。含有量が0.005 %では効果が小さく、0.5 %を越え
ると合金の靭性が低下する。
などのホウ化物あるいはAl3 Tiを形成し、これらが
結晶粒核となるため、結晶粒を微細化することが可能と
なる。好ましくはTiあるいはBを単独、またはTiお
よびBの両者を合計0.005 〜0.5 %の範囲で含有させ
る。含有量が0.005 %では効果が小さく、0.5 %を越え
ると合金の靭性が低下する。
【0009】Cuは、合金中に固体あるいは時効析出し
て、合金の強度を高める。好ましい含有範囲は0.5 〜6
%であり、0.5 %未満ではその効果が小さく、6 %を越
えると合金の耐食性を劣化させる。Mgは、Cuと同様
合金中に固溶あるいは時効析出して、合金の強度を高め
る。好ましい含有量は0.2 〜3 %の範囲であり、0.2%
未満ではその効果が小さく、3 %を越えると合金の靭性
を低下させる。
て、合金の強度を高める。好ましい含有範囲は0.5 〜6
%であり、0.5 %未満ではその効果が小さく、6 %を越
えると合金の耐食性を劣化させる。Mgは、Cuと同様
合金中に固溶あるいは時効析出して、合金の強度を高め
る。好ましい含有量は0.2 〜3 %の範囲であり、0.2%
未満ではその効果が小さく、3 %を越えると合金の靭性
を低下させる。
【0010】Fe、Mn、NiおよびZrは、Al−S
i−Fe、Al−Fe、Al−Mn、Al−Ni、Al
−Zr系等の金属間化合物を形成し、合金の高温強度を
向上させる。好ましい含有範囲は合計1 〜10%であり、
1 %未満ではその効果が十分でなく、10%を越えて添加
されると、これらの金属間化合物の平均粒径が20μmを
越え合金の靭性を低下させる。
i−Fe、Al−Fe、Al−Mn、Al−Ni、Al
−Zr系等の金属間化合物を形成し、合金の高温強度を
向上させる。好ましい含有範囲は合計1 〜10%であり、
1 %未満ではその効果が十分でなく、10%を越えて添加
されると、これらの金属間化合物の平均粒径が20μmを
越え合金の靭性を低下させる。
【0011】スプレイデポジションを実施する場合の雰
囲気は非酸化性ガス雰囲気とし、溶湯を噴霧するガスも
非酸化性ガスとして合金の酸化を防止する。酸素は、合
金中において酸化物として存在し、靭性の低下をもたら
すが、含有量が0.1 %以下の場合には実質上ほとんど問
題とならない。。非酸化性ガスとしては、ヘリウムガス
(He) 、アルゴンガス(Ar)あるいは窒素ガス(N2)を単独
または混合して使用するのが好ましい。とくに窒素ガス
を使用してAl−Si系合金溶湯を噴霧すると、合金中
に窒化物が形成され、押出材中に微細な窒化物が分散し
て材料の高温強度を向上させることができる。この場
合、押出材中における好ましい窒素含有量は0.03〜0.2
%である。0.03%未満では窒化物の形成が不十分で高温
強度の向上効果が得られないことがあり、0.2 %を越え
ると合金の靭性が低下する傾向がある。
囲気は非酸化性ガス雰囲気とし、溶湯を噴霧するガスも
非酸化性ガスとして合金の酸化を防止する。酸素は、合
金中において酸化物として存在し、靭性の低下をもたら
すが、含有量が0.1 %以下の場合には実質上ほとんど問
題とならない。。非酸化性ガスとしては、ヘリウムガス
(He) 、アルゴンガス(Ar)あるいは窒素ガス(N2)を単独
または混合して使用するのが好ましい。とくに窒素ガス
を使用してAl−Si系合金溶湯を噴霧すると、合金中
に窒化物が形成され、押出材中に微細な窒化物が分散し
て材料の高温強度を向上させることができる。この場
合、押出材中における好ましい窒素含有量は0.03〜0.2
%である。0.03%未満では窒化物の形成が不十分で高温
強度の向上効果が得られないことがあり、0.2 %を越え
ると合金の靭性が低下する傾向がある。
【0012】スプレイデポジションによれば、前記のよ
うに非酸化性ガスにより微粒化された合金は直ちにコレ
クタ上で融着し合い、平均102 〜104 ℃/秒の冷却
速度で急冷凝固され、Si粒子およびAl−Si−Fe
系その他の金属間化合物を微細化するとともに結晶粒を
微細化する。Si粒子および金属間化合物は、ビレット
の押出加工によりさらに分断され、合金の強度特性を向
上させる。最終的に得られる押出材中のSi粒子の平均
径は1 〜10μm 、金属間化合物の平均粒径は10μm 以
下、結晶粒の平均径は0.1 〜5 μm の範囲にするのが好
ましい。これらの値が下限値より小さいと合金の強度が
十分でなく、上限値を越えると合金の靭性が低下する。
スプレイデポジションとの組合わせで上記の合金組織を
形成するためには、押出比3以上で押出加工を行うのが
好ましく、押出比が3未満では、Si粒子および金属間
化合物の分断が不十分となり易く、これらの粒径が20μ
m を越えることもあり、合金の破壊靭性を劣化させる傾
向がある。
うに非酸化性ガスにより微粒化された合金は直ちにコレ
クタ上で融着し合い、平均102 〜104 ℃/秒の冷却
速度で急冷凝固され、Si粒子およびAl−Si−Fe
系その他の金属間化合物を微細化するとともに結晶粒を
微細化する。Si粒子および金属間化合物は、ビレット
の押出加工によりさらに分断され、合金の強度特性を向
上させる。最終的に得られる押出材中のSi粒子の平均
径は1 〜10μm 、金属間化合物の平均粒径は10μm 以
下、結晶粒の平均径は0.1 〜5 μm の範囲にするのが好
ましい。これらの値が下限値より小さいと合金の強度が
十分でなく、上限値を越えると合金の靭性が低下する。
スプレイデポジションとの組合わせで上記の合金組織を
形成するためには、押出比3以上で押出加工を行うのが
好ましく、押出比が3未満では、Si粒子および金属間
化合物の分断が不十分となり易く、これらの粒径が20μ
m を越えることもあり、合金の破壊靭性を劣化させる傾
向がある。
【0013】
【作用】本発明の高靭性Al−Si系合金の製造方法
は、上記の構成を具え、特定の合金組成とスプレイデポ
ジション−押出比3以上の押出加工からなる工程の組合
わせにより、特定範囲のSi粒子径、金属間化合物粒子
径および結晶粒径を有する金属組織を形成するものであ
り、得られた合金材料は靭性の優れたものとなる。
は、上記の構成を具え、特定の合金組成とスプレイデポ
ジション−押出比3以上の押出加工からなる工程の組合
わせにより、特定範囲のSi粒子径、金属間化合物粒子
径および結晶粒径を有する金属組織を形成するものであ
り、得られた合金材料は靭性の優れたものとなる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。 実施例1 表1に示すAl−Si系合金を溶解し、アルゴンガス雰
囲気または窒素ガス雰囲気中において溶湯流をアルゴン
ガスまたは窒素ガスで噴霧して、円柱状のコレクタ上に
急冷凝固させながら堆積させるスプレイデポジションを
行い、外径が約260mm 、長さが900mm の円柱状ビレット
を作製した。このビレットを、押出温度400 ℃、押出比
3 〜12で押出加工し、CuおよびMgを含む合金につい
ては、押出加工後、溶体化処理( 処理温度485 ℃) −水
冷−人工時効(175℃×6hrs) の条件で熱処理を施した。
このようにして得られた押出材および熱処理材につい
て、ガス分析を行って酸素含有量および窒素含有量を測
定し、結晶粒径の測定、Si粒子および金属間化合物粒
子の粒径の測定、および破壊靭性の測定を行った。これ
らの測定結果を表2に示す。なお、破壊靭性はASTM E39
9 に基づいて評価した。
明する。 実施例1 表1に示すAl−Si系合金を溶解し、アルゴンガス雰
囲気または窒素ガス雰囲気中において溶湯流をアルゴン
ガスまたは窒素ガスで噴霧して、円柱状のコレクタ上に
急冷凝固させながら堆積させるスプレイデポジションを
行い、外径が約260mm 、長さが900mm の円柱状ビレット
を作製した。このビレットを、押出温度400 ℃、押出比
3 〜12で押出加工し、CuおよびMgを含む合金につい
ては、押出加工後、溶体化処理( 処理温度485 ℃) −水
冷−人工時効(175℃×6hrs) の条件で熱処理を施した。
このようにして得られた押出材および熱処理材につい
て、ガス分析を行って酸素含有量および窒素含有量を測
定し、結晶粒径の測定、Si粒子および金属間化合物粒
子の粒径の測定、および破壊靭性の測定を行った。これ
らの測定結果を表2に示す。なお、破壊靭性はASTM E39
9 に基づいて評価した。
【0015】表2にみられるように、実施例1に従って
作製された合金材は、いずれもSi粒子およびAl−S
i−Fe系、Al−Fe系、Al−Mn系、Al−Ni
系、Al−Zr系などの金属間化合物の平均粒径が10μ
m 以下の微細な分布組織を有し、結晶粒も微細で、例え
ば内燃機関用ピストンとして使用するに十分な常温破壊
靭値を示した。
作製された合金材は、いずれもSi粒子およびAl−S
i−Fe系、Al−Fe系、Al−Mn系、Al−Ni
系、Al−Zr系などの金属間化合物の平均粒径が10μ
m 以下の微細な分布組織を有し、結晶粒も微細で、例え
ば内燃機関用ピストンとして使用するに十分な常温破壊
靭値を示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】比較例1 表3に示すAl−Si系合金を溶解し、実施例1と同様
のスプレイデポジションを行って外径が約260mm 、長さ
が900mm の円柱状ビレットを作製した。このビレット
を、押出温度400 ℃、押出比2 〜12で押出加工し、つい
で実施例1と同一の条件で熱処理を施した。得られた熱
処理材について、実施例1と同様、酸素含有量、窒素含
有量、結晶粒径、Si粒子および金属間化合物粒子の平
均粒径、および常温破壊靭性を測定した。測定結果を表
4に示す。
のスプレイデポジションを行って外径が約260mm 、長さ
が900mm の円柱状ビレットを作製した。このビレット
を、押出温度400 ℃、押出比2 〜12で押出加工し、つい
で実施例1と同一の条件で熱処理を施した。得られた熱
処理材について、実施例1と同様、酸素含有量、窒素含
有量、結晶粒径、Si粒子および金属間化合物粒子の平
均粒径、および常温破壊靭性を測定した。測定結果を表
4に示す。
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】表3および表4において、本発明の条件を
外れているものには下線を付した。表4にみられるよう
に、試料No.1は、Tiが0.003 %と少ないため、常温破
壊靭性が低く、例えば内燃機関用ピストンとしての使用
が困難である。No.2は、Tiの含有量が多いためAl−
Ti系金属間化合物が粗大に晶出し、常温破壊靭性を劣
化させる。No.3は、Bの含有量が多いため、Al−B系
金属間化合物が粗大に晶出して、常温破壊靭性を低下さ
せる。No.4は、スプレイデポジションの雰囲気ガスとし
て空気を使用したために酸性雰囲気となり、得られた合
金材料中の酸素量が0.3 %と多く、常温破壊靭性が低下
した。No.5は、押出加工における押出比が低く熱間加工
をほとんど受けていないため、Si粒子等が分断されず
に粗大のまま残留し、破壊靭性を劣化させている。No.6
は、Si含有量が多いためSi粒径が粗大となり、常温
破壊靭性が劣る。No.7は、Fe,Mn,Niの合計含有
量が10%を越えるため、これら元素とAl,Siとの金
属間化合物の粒径が大きく、破壊靭性を低下させてい
る。
外れているものには下線を付した。表4にみられるよう
に、試料No.1は、Tiが0.003 %と少ないため、常温破
壊靭性が低く、例えば内燃機関用ピストンとしての使用
が困難である。No.2は、Tiの含有量が多いためAl−
Ti系金属間化合物が粗大に晶出し、常温破壊靭性を劣
化させる。No.3は、Bの含有量が多いため、Al−B系
金属間化合物が粗大に晶出して、常温破壊靭性を低下さ
せる。No.4は、スプレイデポジションの雰囲気ガスとし
て空気を使用したために酸性雰囲気となり、得られた合
金材料中の酸素量が0.3 %と多く、常温破壊靭性が低下
した。No.5は、押出加工における押出比が低く熱間加工
をほとんど受けていないため、Si粒子等が分断されず
に粗大のまま残留し、破壊靭性を劣化させている。No.6
は、Si含有量が多いためSi粒径が粗大となり、常温
破壊靭性が劣る。No.7は、Fe,Mn,Niの合計含有
量が10%を越えるため、これら元素とAl,Siとの金
属間化合物の粒径が大きく、破壊靭性を低下させてい
る。
【0022】実施例2 Si20%、Cu2 %、Mg1 %、Fe5 %、Ti0.03%
およびB0.01%を含み、残部Alと不可避不純物からな
るAl−Si系合金を溶解温度を変えて溶製し、得られ
た溶湯を、窒素ガス雰囲気中で流下させ、窒素ガスで噴
霧するスプレイデポジションを行い、外径約260mm,長さ
800mm の円柱状ビレットを作製した。このビレットを、
押出比7 、押出温度400 ℃で押出加工した後、溶体化処
理( 処理温度485 ℃−水冷−人工時効(175℃×6hrs) の
条件で熱処理した。得られた熱処理材について、ガス分
析を行って酸素および窒素含有量を測定するとともに、
結晶粒径、Siおよび金属間化合物の粒径を測定し、破
壊靭性試験および200 ℃での引張試験を行った。測定結
果および試験結果を表5に示す。
およびB0.01%を含み、残部Alと不可避不純物からな
るAl−Si系合金を溶解温度を変えて溶製し、得られ
た溶湯を、窒素ガス雰囲気中で流下させ、窒素ガスで噴
霧するスプレイデポジションを行い、外径約260mm,長さ
800mm の円柱状ビレットを作製した。このビレットを、
押出比7 、押出温度400 ℃で押出加工した後、溶体化処
理( 処理温度485 ℃−水冷−人工時効(175℃×6hrs) の
条件で熱処理した。得られた熱処理材について、ガス分
析を行って酸素および窒素含有量を測定するとともに、
結晶粒径、Siおよび金属間化合物の粒径を測定し、破
壊靭性試験および200 ℃での引張試験を行った。測定結
果および試験結果を表5に示す。
【0023】比較例2 実施例2と同じ組成のAl−Si系合金を850 ℃で溶解
し、得られた溶湯をアルゴンガス雰囲気中でアルゴンガ
スによりスプレイデポジションを行い外径が約260mm,長
さが800mm の円柱状ビレットを作製した。さらに、実施
例2と同じ組成のAl−Si系合金を1250℃で溶解し、
得られた溶湯を窒素ガス雰囲気中で窒素ガスによりスプ
レイデポジションを行い上記寸法のビレットを作製し
た。これらのビレットを、実施例2と同一条件で熱間押
出−熱処理した。得られた熱処理材について、ガス分析
を行って酸素および窒素含有量を測定するとともに、結
晶粒径、Siおよび金属間化合物の粒径を測定し、破壊
靭性試験および200 ℃での引張試験を行った。結果を表
5に示す。
し、得られた溶湯をアルゴンガス雰囲気中でアルゴンガ
スによりスプレイデポジションを行い外径が約260mm,長
さが800mm の円柱状ビレットを作製した。さらに、実施
例2と同じ組成のAl−Si系合金を1250℃で溶解し、
得られた溶湯を窒素ガス雰囲気中で窒素ガスによりスプ
レイデポジションを行い上記寸法のビレットを作製し
た。これらのビレットを、実施例2と同一条件で熱間押
出−熱処理した。得られた熱処理材について、ガス分析
を行って酸素および窒素含有量を測定するとともに、結
晶粒径、Siおよび金属間化合物の粒径を測定し、破壊
靭性試験および200 ℃での引張試験を行った。結果を表
5に示す。
【0024】
【表5】
【0025】表5にみられるように、実施例2に従って
作製された試料No.16 〜No.18 および比較例2に従って
作製された試料No.8,No.9 を比較すると、例えば雰囲気
ガスおよび溶湯噴霧ガスとして窒素を使用した試料No.1
6 の高温引張強度は320MPaであるのに対し、アルゴンを
使用した試料No.8の高温引張強度は280MPaであり、窒素
ガスで溶湯を噴霧した場合、高温強度の向上がみられ
る。また、溶解温度を高くして窒化物を多く含有させた
試料No.9では、窒化物が粗大となり常温破壊靭性の低下
が認められる。
作製された試料No.16 〜No.18 および比較例2に従って
作製された試料No.8,No.9 を比較すると、例えば雰囲気
ガスおよび溶湯噴霧ガスとして窒素を使用した試料No.1
6 の高温引張強度は320MPaであるのに対し、アルゴンを
使用した試料No.8の高温引張強度は280MPaであり、窒素
ガスで溶湯を噴霧した場合、高温強度の向上がみられ
る。また、溶解温度を高くして窒化物を多く含有させた
試料No.9では、窒化物が粗大となり常温破壊靭性の低下
が認められる。
【0026】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、破壊靭
性に優れたAl−Si系合金が提供され、自動車部品、
家電および産業機械用部品としての適用が期待できる。
性に優れたAl−Si系合金が提供され、自動車部品、
家電および産業機械用部品としての適用が期待できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C22C 21/02 C22C 21/02 (72)発明者 時実 直樹 東京都港区新橋5丁目11番3号 住友軽 金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−182057(JP,A) 特開 昭64−57965(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/04 - 1/05 C22C 1/10 C22C 21/00 - 21/18 B22D 23/00 B22F 3/115
Claims (4)
- 【請求項1】 Si10〜30%(重量%、以下同じ)と、
TiおよびBのうちの1種以上を合計0.005 〜0.5 %含
み、残部Alと不可避的不純物からなるAl−Si系合
金の溶湯を、窒素雰囲気において窒素ガスで噴霧して急
冷凝固させながら堆積させることによってビレットと
し、該ビレットを押出比3以上で押出加工して、平均結
晶粒径が0.1 〜5 μm 、Siの平均粒径が1 〜10μm
で、窒素を0.03〜0.2 %含有する押出材とすることを特
徴とする高靱性Al−Si系合金の製造方法。 - 【請求項2】 Al−Si系合金が、Cu0.5 〜6 %、
Mg0.2 〜3 %を含有することを特徴とする請求項1記
載の高靱性Al−Si系合金の製造方法。 - 【請求項3】 Al−Si系合金が、Fe、Mnおよび
Niのうちの1種以上を合計1 〜10%含み、押出材中に
おけるこれらの合金元素とAl、Siとの金属間化合物
の平均粒径が10μm 以下であることを特徴とする請求項
1または2記載の高靱性Al−Si系合金の製造方法。 - 【請求項4】 Al−Si系合金が、Zr0.2 〜2.0 %
を含み、押出材中におけるAl−Zr系金属間化合物の
平均粒径が10μm 以下であることを特徴とする請求項1
〜3のいずれかに記載の高靱性Al−Si系合金の製造
方法。
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JP14430993A JP3184367B2 (ja) | 1993-05-24 | 1993-05-24 | 高靭性Al−Si系合金の製造方法 |
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JPH06330263A JPH06330263A (ja) | 1994-11-29 |
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-
1993
- 1993-05-24 JP JP14430993A patent/JP3184367B2/ja not_active Expired - Fee Related
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