JP3158100B2 - 合成樹脂製床材及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、表面化粧層の裏面
に合成樹脂製発泡裏打層を積層した合成樹脂製床材及び
その製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、建築物の床面を装飾する化粧
材の一つとして、合成樹脂製の床材が使用されている。
また、上記の合成樹脂製床材の中には、クッション性の
向上や衝撃音吸収性等を付与することを目的として、表
面化粧層の裏面に合成樹脂製発泡裏打層を積層したもの
が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な合成樹脂製発泡裏打層を構成する合成樹脂としてオレ
フィン系樹脂を使用する場合、床材の裏打層としての物
性を満足する発泡体を得るのにそれ相応の設備が必要で
あるといった問題がある。特に、合成樹脂製床材の裏打
層とするには、広幅の発泡体が必要であるが、このよう
な広幅の発泡体を得るには、大型の設備を必要とする。
すなわち、オレフィン系樹脂による発泡体を得る場合、
一般的に、オレフィン系樹脂を架橋させた後、これを発
泡させるという工程を経るのであるが、このようにして
床材の裏打層としての物性を満足し、かつ、広幅の発泡
体を得るには、製造条件の緻密な管理と大掛かりな設備
を要するのである。

【０００４】本発明は、以上のような課題を解決するた
めになされたものであり、発泡裏打層を形成する合成樹
脂として、オレフィン系樹脂を使用するような場合であ
っても、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、床材の裏
打層として好適な物性を有する合成樹脂製発泡裏打層を
形成した合成樹脂製床材及びその製造方法を提供するも
のである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の合成樹脂製床材は、表面化粧層の
裏面に、発泡剤を含む合成樹脂組成物からなる発泡性合
成樹脂製粉体を加熱・加圧してシート状に成形した後、
加熱・発泡せしめることにより得られた合成樹脂製発泡
裏打層を有することを特徴とするものである。また、本
発明の合成樹脂製床材の製造方法は、表面化粧層の裏面
上に、発泡剤を含む合成樹脂組成物からなる発泡性合成
樹脂製粉体を載置し、当該発泡性合成樹脂製粉体を加熱
・加圧してシート状に成形した後、加熱・発泡させて合
成樹脂製発泡裏打層を形成することを特徴とするもので
ある。

【０００６】本発明の合成樹脂製床材の表面化粧層につ
いては、従来より使用されている合成樹脂製床材と同様
のものである。例えば、着色合成樹脂層等の表面に所望
の印刷を施し、その上に、必要に応じて合成樹脂製チッ
プやセラミック粒子等が混入された透明合成樹脂層を形
成したもの、合成樹脂製チップを加熱・加圧して形成
し、その上に、必要に応じて上記したような透明合成樹
脂層を形成したものなどが一般的であるが、これに限ら
れるものではない。

【０００７】上記の表面化粧層を構成する合成樹脂につ
いては、従来より合成樹脂製床材の表面化粧層を構成す
るために使用されている合成樹脂、具体的には、塩化ビ
ニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレ
タン系樹脂等から選ばれる合成樹脂、或いはこれらから
選ばれる二種以上の樹脂の混合物等が使用できるが、中
でも、塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂が一般的で
ある。また、本発明の合成樹脂製床材における表面化粧
層を形成するに当たり、塩化ビニル系樹脂等のペースト
ゾル、アクリル系樹脂やエチレン−酢酸ビニル共重合体
のエマルジョンなどを使用することも可能であることは
言うまでもない。

【０００８】塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの
単独重合体であるポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルと共
重合可能な他の単量体、例えば、エチレン、プロピレ
ン、酢酸ビニル、（メタ）アクリル酸エステル、アクリ
ロニトリル等との共重合体、或いはこれらの混合物等が
使用できる。

【０００９】オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエ
チレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレ
ン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリ
エチレン；エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−
（メタ）アクリル酸エステル共重合体、エチレン−α−
オレフィン共重合体等のエチレン系共重合体；ポリプロ
ピレン（プロピレンとエチレンのランダム共重合体であ
るランダムポリプロピレン、プロピレンとエチレンのブ
ロック共重合体であるブロックポリプロピレン等も含
む）；ポリブテンやブテン−α−オレフィン共重合体等
のブテン系重合体；架橋或いは非架橋のオレフィン系熱
可塑性エラストマー（ＴＰＯ）；等から選ばれる樹脂或
いはこれらの混合物等が使用できる。

【００１０】また、上記の合成樹脂には、必要に応じ
て、可塑剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、
難燃剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化
合物等の光安定剤、抗菌・防カビ剤、消臭剤、カーボン
ブラックや金属繊維等の導電化材、充填剤、着色剤等の
各種添加剤が添加され、適宜の手段により成形されて表
面化粧層を構成する各合成樹脂層が形成される。

【００１１】表面化粧層は、その任意の箇所、具体的に
は、表面化粧層を構成する各層の間や裏面のいずれか一
箇所以上に繊維質基材を有するものであってもよい。こ
の繊維質基材としては、従来より合成樹脂製床材の基材
として使用されているもの、例えば、綿、麻、絹、羊毛
等の天然の動物性或いは植物性繊維；ポリエステル、ポ
リアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、
ビニロン等の合成繊維；レーヨン、スフ、アセテート等
の再生繊維；ガラス繊維；パルプ；アスベスト；ロック
ウール；等から選ばれる一種又は二種以上の繊維、或い
は、これに必要に応じて、無機充填剤、合成樹脂ハイン
ダー等を混合したものから得られる織布、編布、不織
布、紙、或いはこれらの積層物等が使用できる。

【００１２】上記の表面化粧層の裏面には、合成樹脂製
発泡裏打層が形成されるが、本発明の合成樹脂製床材に
おいては、上記したような合成樹脂に、発泡剤及び各種
添加剤を添加した合成樹脂組成物からなる発泡性合成樹
脂製粉体を用いて形成されるものである。尚、上記の発
泡性合成樹脂製粉体中に配合される発泡剤としては、ア
ゾジカルボアミド等の従来より一般に使用されている熱
分解型化学発泡剤などが使用できる。

【００１３】上記の発泡性合成樹脂製粉体を得る方法と
しては、例えば、上記したような合成樹脂に、発泡剤及
び各種添加剤を添加した合成樹脂組成物をペレット状に
成形し、これを粉砕する方法、上記したような合成樹脂
に、発泡剤及び各種添加剤を添加した合成樹脂組成物を
シート状に成形し、これを粉砕する方法、などが挙げら
れるが、これに限定されるものではない。また、ペレッ
ト状等に成形したものを粉砕するには、常温での粉砕で
あってもよいし、凍結状態としての粉砕であってもよい
が、粉砕して得た合成樹脂製粉体表面に、無数の髭状突
起が形成されないよう留意して、当該粉体を得るための
合成樹脂組成物の配合や粉砕条件等を設定する必要があ
る。合成樹脂製粉体表面に形成された無数の髭状突起が
同志が絡み合ってしまい、後記するように合成樹脂製粉
体をコーティング或いは散布する際に、当該粉体を均一
にコーティングしたり散布したりすることができなくな
る。

【００１４】上記の発泡性合成樹脂製粉体は、例えば、
製造ライン上で裏面側が上になるようにセッティングさ
れた表面化粧層の裏面上に、ドクターナイフコーター等
を用いてコーティング或いは適宜に散布機を使用して散
布され、このようにして表面化粧層の裏面上にコーティ
ング或いは散布されることにより載置された発泡性合成
樹脂製粉体は、加熱・加圧されてシート状に成形（表面
化粧層の裏面に発泡性合成樹脂製粉体が加熱・加圧され
ることにより得られた合成樹脂層が形成）される。次い
で、再度加熱して、上記のようにして得られた発泡性合
成樹脂製粉体をシート状に成形することにより得られた
合成樹脂層を発泡せしめ、必要に応じて再度加圧するな
どして、合成樹脂製発泡裏打層が形成されるのである。

【００１５】本発明における合成樹脂製発泡裏打層の形
成に当たっては、上記のように、発泡性合成樹脂製粉体
を表面化粧層の裏面上に直接コーティング或いは散布
し、これを加熱・加圧してシート状に成形するようにし
た方が、後記するような離型性担体を用いて別途製造し
た合成樹脂製発泡裏打層を後工程で積層するよりも、工
程が簡略であり、表面化粧層と合成樹脂製発泡裏打層と
の一体感に優れるといったような理由から好ましい。

【００１６】また、上記のように、発泡性合成樹脂製粉
体を表面化粧層の裏面上に直接コーティング或いは散布
するのではなく、離型紙などの離型性担体上にコーティ
ング或いは散布し、加熱・加圧してシート状に成形した
後、或いはこれを加熱・発泡せしめた後、表面化粧層と
積層するようにしてもよい。勿論このとき、必要に応じ
て適宜の接着剤を使用することもできる。また、離型性
担体上は、表面化粧層と積層する前或いは後に剥離され
る。

【００１７】本発明の合成樹脂製床材及びその製造方法
は、合成樹脂製発泡裏打層を形成するに当たり発泡性合
成樹脂製粉体を用いること、そして、この発泡性合成樹
脂製粉体を先に加熱・加圧してシート状に成形（合成樹
脂層を形成）した後、改めて加熱してこれを発泡せしめ
ることを最大の特徴とするものである。また、このよう
にすることで、当該合成樹脂製発泡裏打層を構成する樹
脂としてオレフィン系樹脂を用いたとしても、大掛かり
な設備を必要とせず、かつ、合成樹脂製床材の裏打層と
しての物性を満足し得る合成樹脂製発泡裏打層を形成す
ることができるのである。もし、発泡性合成樹脂製粉体
をコーティング或いは散布した後、加熱・加圧するのと
同時に当該発泡性合成樹脂製粉体を発泡せしめ、その後
に加圧することによって合成樹脂製発泡裏打層を形成し
たのでは、当該発泡裏打層の発泡状態が不均一となり、
合成樹脂製床材の裏打層としての物性を満足する合成樹
脂製発泡裏打層を形成することができない。

【００１８】発泡性合成樹脂製粉体の粒径については、
特に限定されるものではないが、一般的には、平均粒径
で５０〜３０００μｍ程度、特に、１００〜２０００μ
ｍ程度とするのが望ましい。また、発泡性合成樹脂製粉
体をドクターナイフコーター等を用いてコーティングす
るような場合では、発泡性合成樹脂製粉体の粒径が大き
すぎたり、発泡性合成樹脂製粉体の粒径のばらつきが大
きいと、均一にコーティングするのが困難となるので、
特に、平均粒径で２０００μｍ以下とし、かつ、粒径が
３０００μｍを超えるような粉体を含まないものを使用
するのが望ましい。

【００１９】本発明の合成樹脂製床材における合成樹脂
製発泡裏打層は、その裏面に、繊維質裏打材を有するも
のであってもよい。この繊維質裏打材は、上記した繊維
質基材と同様のものが使用できる。また、この繊維質裏
打材を積層する手段としては、表面化粧層の裏面上等に
コーティング或いは散布された発泡性合成樹脂製粉体を
加熱・加圧するときに、繊維質裏打材をコーティング或
いは散布され、加熱された発泡性合成樹脂製粉体上に載
置し、発泡性合成樹脂製粉体を加圧すると同時に繊維質
裏打材を積層し、その後、加熱・発泡せしめる方法や、
後工程で適宜の接着剤を用いるなどして積層する方法な
どが採用できるが、工程が簡略で、繊維質裏打材と発泡
性合成樹脂製粉体により構成される層との一体感に優れ
るといったような理由等から、発泡性合成樹脂製粉体を
加熱・加圧すると同時に繊維質裏打材を積層するように
するのが望ましい。

【００２０】合成樹脂製発泡裏打層として、その裏面に
繊維質裏打材を有するものを使用した場合、合成樹脂製
発泡裏打層を構成する合成樹脂が接着性に劣るオレフィ
ン系樹脂などであるような場合であっても、優れた接着
性を保持し、床面への施工性が向上するといった利点が
ある。

【００２１】上記のようにして得られた本発明の合成樹
脂製床材は、必要に応じて、表面にエンボス加工を施す
こともできるし、艶調整、表面強度向上、防汚性や耐シ
ガレット性付与等を目的とした表面処理（紫外線硬化型
塗料による塗膜形成、透明フィルムの積層等も含む）を
施すこともできる。

【００２２】

【実施例】以下、具体的な実施例を挙げるが、本発明の
合成樹脂製床材は、以下に挙げる実施例に限定されるも
のではない。

【００２３】ポリエステル不織布の表面に、グラビア印
刷機を用いて木目模様を印刷し、次いで、エチレン−メ
チルメタクリレート共重合体パウダー（３０メッシュ通
過）を散布し、焼結させて、透明トップ層を形成し、こ
の表面にエンボスを施し、表面化粧層を得た。

【００２４】次いで、表１に示す配合からなり、表２に
示す平均粒径の発泡性合成樹脂製粉体を、上記のように
して得た表面化粧層の裏面上に、ドクターナイフコータ
ーによりコーティングし、コーティングした発泡性合成
樹脂製粉体を加熱・加圧し、シート状に成形した後、或
いは加熱・加圧せずに（加熱・加圧の有無は表２に示す
通り）、これを加熱・発泡せしめ、再度加圧して合成樹
脂製発泡裏打層を形成し、合成樹脂製床材を得た。得ら
れた合成樹脂製床材について、発泡性合成樹脂製粉体の
コーティング適性及び合成樹脂製発泡裏打層の発泡状態
を以下に示す基準で評価した。結果を表２に併せて示
す。

【００２５】〔評価基準〕 （１）発泡性合成樹脂製粉体のコーティング適性 ○：コーティング適性が良好 △：均一にコーティングすることがやや困難 ×：均一にコーティングすることが実質的に不可能 （２）合成樹脂製発泡裏打層の発泡状態 ○：均一に発泡しており、極めて良好な状態 △：やや発泡ムラがあるものの、商品化に支障がない程
度 ×：発泡ムラが著しく、合成樹脂製床材の裏打層として
不適当

【００２６】

【表１】

【００２７】

【表２】

【００２８】また、表面化粧層の裏面にコーティングし
た発泡性合成樹脂製粉体を加熱した後、その上に繊維質
裏打材としてのポリエステル不織布を載置し、次いで加
圧する以外は、上記試験例Ａ、Ｃ、Ｅ及びＦと同様にし
て、合成樹脂製床材（試験例ａ、ｃ、ｅ、ｆ）を得た。
得られた合成樹脂製床材は、試験例Ａ、Ｃ、Ｅ及びＦに
比較して、床面への施工性が優れるものであった。

【００２９】

【発明の効果】以上の通り、本発明の合成樹脂製床材
は、合成樹脂製発泡裏打層を構成する樹脂としてオレフ
ィン系樹脂を用いたとしても、大掛かりな設備を必要と
せず、かつ、このようにして得られた合成樹脂製発泡裏
打層は、合成樹脂製床材の裏打層としての物性を満足し
得るものである。勿論、本発明の合成樹脂製床材の上記
構成は、塩化ビニル系樹脂等のオレフィン系樹脂以外の
合成樹脂を用いる場合であっても適用可能である。

【００３０】また、製造方法として、表面化粧層の裏面
上に直接発泡性合成樹脂製粉体をコーティング或いは散
布する方法（すなわち、本発明の製造方法）を採用した
場合には、製造工程が簡略で、かつ、表面化粧層と合成
樹脂製発泡裏打層との一体感に優れる床材が得られる。

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 表面化粧層及びその裏面に積層される合
   成樹脂製発泡裏打層を有する合成樹脂製床材であって、 合成樹脂製発泡裏打層が、発泡剤を含む合成樹脂組成物
   からなる発泡性合成樹脂製粉体を加熱・加圧してシート
   状に成形した後、加熱・発泡せしめることにより得られ
   た層である合成樹脂製床材。
2. 【請求項２】 合成樹脂製発泡裏打層を構成する合成樹
   脂が、オレフィン系樹脂である請求項１記載の合成樹脂
   製床材。
3. 【請求項３】 合成樹脂製発泡裏打層が、その裏面に積
   層された繊維質裏打材を有する請求項１又は２記載の合
   成樹脂製床材。
4. 【請求項４】 表面化粧層の裏面上に、発泡剤を含む合
   成樹脂組成物からなる発泡性合成樹脂製粉体を載置し、
   当該発泡性合成樹脂製粉体を加熱・加圧してシート状に
   成形した後、加熱・発泡させて合成樹脂製発泡裏打層を
   形成することを特徴とする合成樹脂製床材の製造方法。
5. 【請求項５】 表面化粧層の裏面上に載置し、加熱した
   発泡性合成樹脂製粉体上に繊維質裏打材を載置した状態
   で加圧してシート状に成形する請求項４記載の合成樹脂
   製床材の製造方法。