JP3155723B2 - 水溶性導電性高分子を用いた帯電防止剤 - Google Patents

水溶性導電性高分子を用いた帯電防止剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶性導電性高分
子を用いた帯電防止剤に関する。該帯電防止剤水溶液か
ら、スピンコート、ディップコートおよびバーコートな
どの簡便な手法により高分子フィルム、高分子繊維、高
分子樹脂成形品などの上に斑なく、密着性および強度の
高い薄膜を形成することができ、低湿下でも優れた帯電
防止効果を発揮する。
【0002】
【従来の技術】高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹
脂成形品などは、電気絶縁体であるため、静電気を帯び
やすく、電子部品を破損したり、ごみを吸着したり、と
きには発火源となることさえあり、その対策は不可欠の
ものとなっている。
【0003】従来、これらの帯電防止剤としては主に界
面活性剤が使われてきた。しかし、界面活性剤は、空気
中の水分を利用したイオン伝導を示すため、表面抵抗を
109 Ω/□以下にすることは困難であるうえに、低湿
の条件下では帯電防止効果がほとんどなくなってしまう
といった問題がある。一方、カーボンブラックやアルミ
ニウム、銅、銀などの金属微粒子および酸化インジウム
すず、フッ素ドープされた酸化すずなどの半導体微粒子
をフィラーとして汎用高分子中に分散した電子伝導タイ
プの帯電防止剤がある。しかし、これらのフィラーはか
なりの量を添加しなければならないこと、添加量を増や
すとあるところで急激に電気抵抗が下がるので電気抵抗
の調節は困難であること、フィラーが塗膜表面にでてき
て平滑な膜にはならないこと、透明性がよくないこと、
塗膜の強度が低いことなどが問題点として挙げられる。
【0004】導電性高分子は以上の問題点を解決する可
能性があるので期待されているが、導電性高分子は一般
に不溶、不融であり成形、加工ができないという問題が
あった。導電性高分子の中でもドープされたポリアニリ
ンは、空気中で安定であり、原料が安価であるためもっ
とも応用開発に適しているが、他の導電性高分子と同様
にポリアニリンは不溶、不融である。したがって、ポリ
アニリンを可溶化することは、工業的に重要であるが、
製造設備上は水溶性とするのが、コスト的に最も有利で
ある。
【0005】そこで、近年水溶性を付加させるために、
さまざまな手法によりスルホン基の導入が提案されてい
る。例えば、アニリンとo−、m−アミノベンゼンスル
ホン酸を電気化学的に共重合してスルホン化ポリアニリ
ンを合成する方法(日本化学会誌、1985,p112
4、特開平2−166165号公報)、アニリンとアミ
ノベンゼンスルホン酸を化学酸化的に共重合する方法
(特開平1−301714号公報、特開平6−5698
7号公報)、アニリンとアミノベンゼンスルホン酸およ
びその誘導体の共重合物をスルホン化する方法(特開平
5−178989号公報)、o−、m−アミノベンゼン
スルホン酸を電気化学的に酸化重合する方法(日本化学
会第64秋季年会、講演予稿集II p706,199
2)、o−、m−アミノベンゼンスルホン酸およびその
誘導体を化学的に酸化重合する方法(特開平7−324
132号公報、特開平8−41320号公報)などのア
ミノベンゼンスルホン酸をモノマーとして重合する方法
がある。
【0006】また、エメラルディン塩タイプの重合体を
無水硫酸/リン酸トリエチル錯体を用いてスルホン化を
行なう方法(特開昭61−197633号公報)、脱ド
ープされたポリアニリン(エメラルディン塩基)を発煙
硫酸を用いてスルホン化する方法(WO91−0688
7、J.Am.Chem.Soc.,1990,vo
l.112,p2800、J.Am.Chem.So
c.,1991,vol.113,p2665)、脱ド
ープされたポリアニリン(エメラルディン塩基)をクロ
ロ硫酸中でスルホン化する方法(Polymer,19
92,vol.33,p4410)、ロイコエメラルデ
ィン塩基のポリアニリンを発煙硫酸でスルホン化する方
法(J.Am.Chem.Soc.,1996,vo
l.118,p2545)などのポリアニリンにスルホ
ン化剤にてスルホン基を導入する方法が提案されてい
る。
【0007】しかしながら、アミノベンゼンスルホン酸
およびその誘導体をアニリンと電気化学的または化学的
に酸化共重合する方法では、芳香環5個に1個の割合で
しかスルホン基が導入されておらず、アルカリにはわず
かに可溶であるが、水そのものには不溶であり溶解性の
点で問題がある。また、これら共重合体をさらにスルホ
ン化する方法では、芳香環2個に対し、1個強のスルホ
ン基が導入されているが、アルカリには可溶ではある
が、水そのものには不溶であり溶解性の点で問題があ
る。
【0008】また、o−、m−アミノベンゼンスルホン
酸を電気化学的に酸化重合する方法では、水溶性導電性
高分子が得られたとの記載があるが、電極反応であるた
め、生成物の単離が困難、工業的な大量合成には適して
いないなどの問題がある。また、o−、m−アミノベン
ゼンスルホン酸およびその誘導体を酸性溶液、塩基性溶
液中で化学的に酸化重合する方法を追試したところ、赤
褐色のオリゴマー状の生成物しか得られず、エメラルデ
ィン塩を繰り返し単位とするスルホン化ポリアニリンを
得ることはできなかった。一般に、置換基を有するアニ
リンモノマーを重合してエメラルディン塩特有の緑色を
有する高分子量のポリアニリンを得ることは困難であ
る。
【0009】また、スルホン化剤を用いてスルホン基を
導入する方法において、無水硫酸/リン酸トリエチル錯
体を用いてポリアニリンをスルホン化する方法では、芳
香環5個に対し1個の割合でしかスルホン基が導入され
ておらず、導電体(ドープ状態)では、水に対し全く不
溶であり、溶解性の点で問題がある。また、発煙硫酸を
用いてスルホン化する方法では、芳香環2個に1個の割
合でスルホン基が導入された自己ドープ型のポリアニリ
ンが得られるが、スルホン基がアニリンのドープに利用
されているため、中性および酸性水溶液には不溶であ
り、溶解させるためにはアルカリと作用させる必要があ
る。しかし、一般にポリアニリンはアルカリと作用させ
ると、絶縁体となる。そのため、自己ドープ型のポリア
ニリンは、導電性を付与するために溶解後の再ドープが
必要であり、成形性、加工性の点でも十分なものとはい
えない。
【0010】また、クロロ硫酸中でスルホン化する方法
では、芳香環5個に対し4個のスルホン基が導入された
自己ドープ型のポリアニリンが得られるが、スルホン基
がアニリンのドープに利用されているため、中性および
酸性水溶液には不溶であり、溶解させるためにはアルカ
リと作用させる必要があり、成形性、加工性の点で問題
がある。また、ロイコエメラルディン塩基のポリアニリ
ンを発煙硫酸でスルホン化する方法では、芳香環4個に
対し3個のスルホン基が導入されているが、自己ドープ
型であるため、水に対しわずかに溶けるのみであり、溶
解性、成形性の点で問題がある。
【0011】さらに、上記の発煙硫酸、クロロ硫酸を用
いてスルホン化する方法においては、ポリアニリンに対
して大過剰のスルホン化剤を用いてスルホン化を行なっ
ており、大量の廃酸処理が困難であるという問題があ
る。
【0012】高い導電性を有する状態、すなわちドープ
状態で水溶性であるポリアニリンとしては、ジフェニル
アミン−4−スルホン酸を化学的に酸化重合したN−ス
ルホン化ポリアニリン(Polymer,1993,v
ol.34,p158)、ポリアニリンと1,3−プロ
パンスルトンを反応させたN−プロパンスルホン酸置換
ポリアニリン(J.Am.Chem.Soc.,199
4,vol.116,p7939、J.Am.Che
m.Soc.,1995,vol.117,p1005
5)、o−アミノベンジルホスホン酸を酸化重合したホ
スホン化ポリアニリン(J.Am.Chem.So
c.,1995,vol.117,p8517)が知ら
れている。
【0013】しかしながら、N−スルホン化ポリアニリ
ンは、高溶解性のため重合後の単離に高速遠心分離を必
要とするため、単離が非常に煩雑という問題がある。ま
た、N−プロパンスルホン酸置換ポリアニリンは、自己
ドープ型のポリアニリンのため、ドープ状態では水に対
して不溶であり、ナトリウム塩水溶液をイオン交換樹脂
で処理する方法でしかドープ状態で水に溶解することが
できず、成形性、加工性の点で非常に煩雑な手法を用い
なければならない問題がある。また、ホスホン化ポリア
ニリンは、重合原料であるo−アミノベンジルスルホン
酸を得るために数段階の反応を必要とするため、工業的
に非常に煩雑であるという問題があった。
【0014】本発明者らは、高い導電性を有する状態、
すなわちドープ状態で水溶性であるポリアニリンおよび
その簡便な製造方法を特願平8−147476号で開示
している。すなわち、ポリアニリンをクロロ硫酸と反応
させたのち加水分解に供することで、外部ドーパント
(塩酸)でドープされたスルホン化ポリアニリンが得ら
れ、高い導電性と高い水溶性を両立させることができた
ということが記載されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高い導電性
を有する状態、すなわちドープ状態で水溶性である高分
子として、例えば、スルホン化ポリアニリンを用いて、
従来より低抵抗で低湿下でも効果を維持し、基材への塗
布性、密着性に優れ、十分な強度、透明性および塗布後
の耐水性を備えた帯電防止剤を提供することを目的とす
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記諸目的は、下記の
(1)〜(5)により達成される。
【0017】(1) 外部ドーパントでドーピングされ
てなる水溶性導電性高分子を用いた帯電防止剤。
【0018】(2) ポリアニリンの骨格の芳香環が芳
香環1個当り平均して0.1〜4個のSO3 M(ただ
し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金
属原子およびアンモニウム基よりなる群から選ばれた少
なくとも1種のものである。)で置換され、かつ平均し
て0〜3.9個のR(ただし、Rは水素原子、ハロゲン
原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1
〜20のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキル
チオ基、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、カル
ボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1〜20のカ
ルボン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基よりなる
群から選ばれた少なくとも1種のものである。ただし、
SO3 MとRとの合計は4である。)で置換され、かつ
該主骨格中の窒素原子1個当り0.025〜1個が外部
ドーパントでドーピングされてなる水溶性導電性高分子
を用いた帯電防止剤。
【0019】(3) 電気伝導度が10-6S/cm以上
である状態で、水に対する溶解度(25℃)が0.5重
量%以上であり、外部ドーパントでドーピングされてな
ることを特徴とする水溶性導電性高分子を用いた帯電防
止剤。
【0020】(4) 前記(1)に記載の水溶性導電性
高分子と水溶性または水分散性高分子を混合して用いた
帯電防止剤。
【0021】(5) 水溶性または水分散性高分子がア
クリル系高分子であることを特徴とする前記(4)に記
載の帯電防止剤。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる水溶性導電性
高分子の水溶性とは、水に対する溶解度が0.01%以
上、好ましくは0.5%以上であることを表す。
【0023】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性高分子として、水溶性導電性ポリピロール、水溶性
導電性ポリチオフェン、水溶性導電性ポリパラフェニレ
ン、水溶性導電性ポリパラフェニレンビニレン、水溶性
導電性ポリアニリンなどが挙げられる。水溶性を高める
ためには上記の水溶性導電性高分子は、自己ドーピング
型よりは外部ドーピング型のものの方が好ましい。その
なかでも空気中での安定性の点から外部ドーピング型水
溶性導電性ポリアニリンが最も好ましく用いられる。外
部ドーピング型水溶性導電性ポリアニリンは、ポリアニ
リンの骨格の芳香環が芳香環1個当り平均して0.1〜
4個のSO3 Mおよび平均して0〜3.9個のR(ただ
し、SO3 MとRとの合計は4である。)で置換され、
かつ該主骨格中の窒素原子(置換基中の窒素原子を除
く)1個当り0.025〜1個が外部ドーパントでドー
ピングされてなるものである。
【0024】ここで、SO3 M中のMは、水素原子、ア
ルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウ
ムなど)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マ
グネシウムなど)およびアンモニウム基よりなる群から
選ばれたものであり、好ましくは水素原子である。
【0025】また、Rは、水素原子、ハロゲン原子、好
ましくは塩素原子、フッ素原子および臭素原子、炭素原
子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキル基、炭素原
子数1〜20、好ましくは1〜8のアルコキシ基、炭素
原子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキルチオ基、
炭素原子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキルアミ
ノ基、カルボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1
〜20、好ましくは1〜8のカルボン酸エステル基、ニ
トロ基およびシアノ基よりなる群から選ばれた少なくと
も1種のものである。これらのうち、水素原子、アルキ
ル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ
基などの電子供与性基が好ましい。
【0026】また、SO3 Mは、好ましくは平均して
0.5〜1.5個であり、またRは、好ましくは平均し
て2.5〜3.5個である。ただし、SO3 MとRとの
合計は4である。
【0027】さらに、該ポリアニリンの主骨格中の窒素
原子1個当り0.025〜1個、好ましくは0.1〜
0.5個が外部ドーパントでドーピングされている。
【0028】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性ポリアニリンを構造式で示すと、一般式(1)
【0029】
【化1】
【0030】[ただし、式中、MおよびRは前記のとお
りであり、pは0.1〜4、qは0〜3.9(ただし、
p+q=4)、Xはドーパントであるプロトン酸の陰イ
オンであり、また、nは陰イオンの価であり、通常1〜
3価、好ましくは1〜2価である。]で表わされる繰り
返し単位を必須の繰り返し単位として有し、さらに必要
により式(2)および/または式(3)
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】で表わされる繰り返し単位あるいはその他
の繰り返し単位を有してなるものである。
【0034】プロトン酸の陰イオンとしては、塩素イオ
ン、臭素イオン、沃素イオン、硝酸イオン、硫酸イオ
ン、リン酸イオン、ホウフッ化イオン、過塩素酸イオ
ン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イ
オン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢
酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなどの
1〜3価の陰イオンがあり、好ましくは1〜2価の陰イ
オンである。
【0035】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性ポリアニリンの重合度は、2〜10,000、好ま
しくは20〜1,000である。
【0036】典型的な例として得られた本発明に用いら
れるスルホン化ポリアニリンは、元素分析の結果によ
り、窒素/硫黄の比が4/4〜4/3であり、スルホン
酸基は芳香環4個に対し3〜4個の割合で導入されてい
る。また、50〜100%のドーピング率で塩化物イオ
ンがドーピングされており、WO91−06887に開
示されているような自己ドープ型ポリアニリンとは異な
った外部ドープ型のポリアニリンである。
【0037】本発明に用いられる水溶性導電性ポリアニ
リンは、例えば、つぎのようにして製造される。
【0038】まず、ポリアニリンを有機溶媒中に攪拌分
散し、加熱しながらクロロ硫酸を加えることによりポリ
アニリンの骨格中の芳香環をクロロ硫酸化し、さらに得
られたクロロスルホニルポリアニリンを水中で加水分解
することにより水溶性で導電性を有するスルホン化ポリ
アニリンが得られる。
【0039】原料のポリアニリンとしては、ドープ状態
(エメラルディン塩)、脱ドープ状態(エメラルディン
塩基)いずれのものでも、またエメラルディン塩のドー
パントもプロトン酸であればいずれでもよく、例えば、
塩酸、硫酸、硝酸、ホウフッ化水素酸、過塩素酸、アミ
ド硫酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸
などを用いることができる。しかしながら、好ましくは
脱ドーピングの工程が不要となるのでドープ状態(エメ
ラルディン塩)のものを用いる方がよい。上記いずれの
場合も外部ドーパントの大部分は、クロロスルホニル基
の加水分解で生じた塩酸であるが、一部は原料のポリア
ニリンのドーパントまたは過剰のクロロ硫酸の加水分解
で生じた硫酸が含まれる場合もある。これは塩酸が最も
強力な酸でプロトン供給能力が高いためイオン交換が起
こっているものと考えられる。一方、自己ドーピングが
起こらないのはベンゼンスルホン酸が塩酸に比べると弱
い酸であるためと考えられる。
【0040】また、原料であるポリアニリンおよびその
誘導体は、アニリンおよびo−、m−置換アニリンを電
気化学的または化学的に酸化重合したものを用いること
ができるが、原料の導電性が最終生成物であるスルホン
化ポリアニリンの導電性にも影響するので、なるべく導
電性の高いポリアニリンを用いることが好ましく、エメ
ラルディン塩タイプの無置換ポリアニリンが特に好まし
い。エメラルディン塩タイプのポリアニリンは、例え
ば、一般式(4)
【0041】
【化4】
【0042】で示される還元型単位(フェニレンジアミ
ン骨格)と酸化型単位(キノンイミン骨格)が1対1の
割合で存在する基本骨格を繰り返し単位とすることを特
徴とするエメラルディン型ポリアニリンを、プロトン酸
でドープしたものが好ましい。
【0043】一般に、エメラルディン塩タイプのポリア
ニリンの製造方法は、電気化学的酸化重合法と酸化剤を
用いた化学的酸化重合法の2種類があるが、工業的な製
造方法としては、酸化剤を用いた化学的酸化重合の方が
好ましい。ポリアニリンの化学的酸化重合法は、アニリ
ンおよびその誘導体の酸性あるいは塩基性溶液に酸化剤
を加えて攪拌して行なう。
【0044】酸化剤としては、アニリンを酸化できる酸
化剤であればいずれでもよいが、過硫酸アンモニウム、
過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫
酸類、過酸化水素、第二塩化鉄などが挙げられ、特に過
硫酸アンモニウムに代表される過硫酸類が好ましく、モ
ノマー1モルに対し0.1〜5モルがよく、特に0.5
〜1モルが好ましい。
【0045】重合溶媒としては、水、メタノール、エタ
ノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチル
ホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセ
トアミドなどが挙げられ、特に水、メタノールが好まし
い。
【0046】重合の反応温度は−15〜70℃の間がよ
く、特に−10〜20℃の間が好ましく、上記の温度範
囲を外れると、導電率が低下する傾向にある。
【0047】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性ポリアニリンの製造工程における前記ポリアニリン
のスルホン化反応に仕込むクロロ硫酸の量は、ポリアニ
リンの芳香環に対して0.5〜10倍がよいが、好まし
くは0.5〜3倍がよい。例えば、0.5倍未満で反応
を行なうと、芳香環2個に対しスルホン基が1個以下し
か導入されず、水に対する溶解性が低下する。また、3
倍を超えて反応を行なうと、スルホン基が過剰に導入さ
れ、溶解性は向上するが導電率が低下する傾向がある。
【0048】また、反応に用いる溶媒としては、クロロ
硫酸と反応しない溶媒であればいずれでもよく、例え
ば、二硫化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラ
クロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホル
ム、ジクロロメタンなどが挙げられ、特に、1,2−ジ
クロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンが
クロロ硫酸との相溶性がよく好ましい。溶媒とポリアニ
リンの仕込み量は、1〜30重量%、特に2〜10重量
%が好ましく、上記の範囲を外れると反応効率が低下す
る傾向がある。スルホン化の反応温度は、−20〜20
0℃がよく、好ましくは20〜150℃であり、特に4
0〜140℃が好ましく、上記の範囲を外れると、導電
性が低下する傾向にある。
【0049】加水分解反応での水系溶媒へのクロロスル
ホン化ポリアニリンの仕込み量は、0.1〜10重量%
が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量%であ
る。上記の範囲を外れると反応効率が低下する傾向があ
る。また、この時の反応温度は、20〜120℃が好ま
しく、さらに好ましくは60〜120℃である。すなわ
ち、20℃未満では反応効率が低下する傾向がある。
【0050】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性ポリアニリン(スルホン化ポリアニリン)は、電気
伝導度が10-6S/cm以上、好ましくは10-4S/c
m以上である状態で、水に対する溶解度(25℃)が
0.5重量%以上、好ましくは3重量%以上である。
【0051】本発明の帯電防止剤に用いられるスルホン
化ポリアニリンが導電性、すなわちドープされた状態で
高い水溶性を示すのは、ポリアニリン鎖に導入された−
SO3 H基のプロトンが自己ドーピングには使われず、
フリーの状態で存在するため、水中で解離できることに
よる。このことは、以下のような事実によっても証明さ
れる。まず第一に、IRスペクトルにおいて、自己ドー
プ型のスルホン化ポリアニリンにはない吸収、すなわち
−SO3 H基の−O−H伸縮振動にもとずく2500〜
3700cm-1付近のブロードな吸収が観測される。第
二に、アルカリで中和しながら、可視吸収スペクトルの
変化を追っていくと、アルカリの添加が少ないうちは、
可視吸収スペクトル変化が見られず、あるところから変
化が起こりはじめ、最後は一定のスペクトルになる。こ
のことは、最初は−SO3 H基の中和のみ起こり、その
後脱ドーピングがおこっていることを示している。第三
に、中和滴定曲線は−SO3 H基の中和および脱ドーピ
ングにもとずく2つの終点を示し、それから見積もられ
る−SO3 H基の数およびドーピング率が理論予想の範
囲内である。
【0052】本発明の帯電防止剤が塗布される基材とし
ては、高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹脂成形
品、紙、ガラスなどが挙げられるが、特に高分子フィル
ムが好ましい。高分子フィルムとしては、例えば、ポリ
エチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが
挙げられる。ポリエステルフィルムは、オーバーヘッド
プロジェクターシート、ビデオテープ、オーディオテー
プ、コンピューターテープ、フロッピーディスクなどの
ベースとして幅広く使用されている。
【0053】本発明の帯電防止剤を基材に塗布するため
にはスピンコート、バーコート、グラビアコート、キス
コート、ブレードコート、ロールコートおよびディップ
コートなどの方法を用いることができる。
【0054】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性高分子は水に対して高い溶解性を示すので、それ単
独の水溶液から基材に直接塗布可能であるが、塗布性、
基材との密着性、塗膜の強度、耐水性などを改善するた
めには、必要に応じて、水溶性の高分子や水系の高分子
エマルション(水分散性高分子)とブレンドして用いる
こともできる。その混合比は、水溶性導電性高分子の全
量に対する割合で、0.01〜0.99、好ましくは
0.1〜0.9がよい。
【0055】前記水溶性高分子の例としては、ポリエチ
レングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルア
ルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリ
ウム、ポリアクリル酸、ポリ−2−アクリルアミド−2
−メチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸
ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスル
ホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどの
ホモポリマーおよびそれらの成分を含むコポリマーなど
を挙げることができる。また、水系高分子エマルション
の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸
メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタ
クリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プ
ロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アク
リル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸オ
クチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ヒドロキシ
ル、メタクリル酸ヒドロキシル、アクリル酸シクロヘキ
シル、メタクリル酸シクロヘキシルなどを(共)重合し
て得られるアクリル系エマルションが挙げられる。
【0056】本発明の帯電防止剤の低抵抗化のために
は、前記の水溶性高分子のうち水溶性導電性高分子の脱
ドープを引き起こさないポリアクリル酸、ポリ−2−ア
クリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリス
チレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などの酸性高
分子が好ましく用いられる。また、アクリル系エマルシ
ョンを用いても良好な結果が得られる。
【0057】ポリエステルフィルムへの塗布性と塗膜の
透明性をよくするためには、前記のブレンド高分子のう
ちポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリア
クリル酸、アクリル系エマルションがスルホン化ポリア
ニリンとブレンドした場合の相溶性が高く、好ましく用
いることができる。
【0058】用途によっては、本発明の帯電防止剤を塗
布後不溶化し、ひっかいても基材からはがれない程度の
密着性と強度を維持する必要がある。本発明の帯電防止
剤は、水溶性導電性高分子単独のときでも、他の水溶性
高分子とブレンドしたときでも、架橋により不溶化する
ことが可能であるが、架橋後ひっかいても基材からはが
れない程度の密着性と強度を確保するためには特にポリ
アクリル酸とブレンドして用いるのがよい。架橋剤とし
ては、スルホン化ポリアニリンのスルホン基または/お
よびブレンド高分子中のカルボキシル基、スルホン基、
ヒドロキシル基、アミノ基などの官能基と反応するもの
なら何でもよく、例えば、アルキレングリコールジグリ
シジルエーテルなどのジエポキシ化合物を挙げることが
できる。架橋剤の添加量は、帯電防止剤固形分に対し
て、0.1〜10%、好ましくは0.5〜3%である。
架橋条件は150〜200℃で数分間が好ましい。
【0059】以上のように低抵抗化、塗膜の透明性、ポ
リエステルフィルムへの塗布性、塗布後の不溶化による
密着性と強度といった諸条件を満たすためには、水溶性
導電性(スルホン化)ポリアニリンとポリアクリル酸を
ブレンドして用いるのがよい。また、水系のアクリルエ
マルションを用いても前記条件を満たすことができる。
【0060】前記ポリアクリル酸の平均分子量として
は、1,000〜1,000,000、好ましくは25
0,000〜1,000,000の高分子量のものがよ
い。高分子量のものがよい理由は、帯電防止剤水溶液の
粘度が高くなり、ポリエステルフィルムへの塗布性がよ
くなるからである。通常、ポリエステルフィルムは、疎
水性であるので水溶液をはじくため、塗布するのにフッ
素系界面活性剤のような強力な界面張力低下作用を持っ
た添加剤を必要とするが、高分子量のポリアクリル酸を
ブレンドして用いれば、その増粘作用により界面活性剤
が不要となる。さらに、高分子量250,000以上の
ポリアクリル酸をブレンドして用いた場合のもうひとつ
の利点は、架橋剤なしでも加熱により不溶化し十分な密
着性と強度を示す点である。これは高分子量ポリアクリ
ル酸の分子量が加熱によりさらにあがるためと考えられ
る。不溶化させるための温度は、150〜300℃、好
ましくは180〜220℃で、加熱時間は1〜3分が、
塗膜の電気抵抗変化を起こさないので好ましく、長時間
の加熱は電気抵抗の増大をもたらすので好ましくない。
【0061】水系のアクリルエマルションをブレンドし
て用いた場合も、他の添加剤なしでポリエステルフィル
ム上に塗布可能で、80〜120℃、数分間の加熱で密
着性と強度に優れた塗膜が得られる。
【0062】水溶性導電性高分子とポリアクリル酸また
はアクリルエマルションとの混合比は、スルホン化ポリ
アニリンの全量に対する割合で0.01〜0.95がよ
く、好ましくは0.5〜0.8がよい。
【0063】本発明の帯電防止剤を塗布したフィルムの
表面抵抗は、フィルムに金電極を蒸着し、2端子法によ
り測定される。基材への密着性は、セロテープを貼り付
けてはがしどの程度残ったかでみる。塗膜を不溶化した
後の強度は、爪でひっかいてはがれるかどうかで判断す
る。
【0064】
【実施例】以下に実施例を挙げて説明する。
【0065】本発明の帯電防止剤に用いられる水溶性導
電性高分子の電気伝導度は、例えば、スルホン化ポリア
ニリンの粉末を錠剤成形器を用いて圧縮ペレットを作成
し、直流4端子法により測定した。このとき、外側の2
端子に定電流ソース(ケスレー社製220型)から1μ
Aの定電流を流し、内側2端子の電位差をデジタルマル
チメーター(ケスレー社製2001型)により測定し
た。本発明の帯電防止剤薄膜の表面抵抗は、薄膜上に真
空蒸着装置(真空機工株式会社製VPC−410)を用
いて櫛型金電極を蒸着し、2端子法で、絶縁抵抗計(ケ
スレー社製6517型)により測定した。薄膜の膜厚
は、走査プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社
製ナノスコープIIIa)のタッピングモード原子間力
顕微鏡を用いて測定した。
【0066】合成例1 1.2mol/lの塩酸水溶液300mlにアニリン2
8gを滴下攪拌して加えた。これを0℃に冷却した。3
0gの過硫酸アンモニウムをイオン交換水60mlに溶
解し、先の溶液に30分かけて滴下した。滴下終了後さ
らに5時間、0℃にて攪拌した。析出した緑色沈殿を濾
過し、濾液の色がなくなるまで、イオン交換水で洗浄し
た。さらに、メタノールで濾液の色がなくなるまで洗浄
した。
【0067】乾燥重量は、12.5gであった。得られ
たポリアニリンをペレットに成型し、4端子法による電
気伝導度を測定した結果、2.02S/cmであった。
【0068】得られたポリアニリン1gを1,1,2,
2−テトラクロロエタン(以下TCE)50ml中に分
散し、85℃に加熱した。クロロ硫酸2.4g(約2倍
モル)をTCE6mlに溶解し滴下して加えた。滴下終
了後さらに5時間、85℃にて加熱攪拌した。室温に冷
却後、濾過して反応物を取り出し、クロロホルムにて洗
浄した。風乾後、50mlのイオン交換水に分散し、4
時間加熱還流した。得られた緑色溶液を濾過して不溶分
を取り除き、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮
し、アセトンを加えて緑色沈殿を析出させた。析出した
沈殿を濾過し、アセトンにて洗浄した。乾燥重量は、
1.4gであった。
【0069】元素分析結果は、H:4.11% C:3
2.86% N:7.02% S:14.46% Cl:4.57% 組成式:C24354.4 204
1.1 であり、S/N比は0.91であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環10個に対して9個以上スルホン基が導入され
ていることになる。また対イオンがすべてCl- である
とすれば、ドーピング率は0.25(50%)である。
【0070】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、8.1重量%であった。
【0071】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、1.99×10-3S/cmであった。
【0072】合成例2 合成例1で得られたポリアニリン9gを1,2−ジクロ
ロエタン(以下DCE)270ml中に分散し、85℃
に加熱した。クロロ硫酸21.8g(約2倍モル)をD
CE15mlに溶解し滴下して加えた。滴下終了後さら
に5時間、85℃にて加熱撹拌した。室温に冷却後、濾
過して反応物を取り出し、クロロホルムにて洗浄した。
風乾後、400mlのイオン交換水に分散し、4時間加
熱還流した。得られた緑色溶液を濾過して不溶分を取り
除き、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、ア
セトンを加えて緑色沈殿を析出させた。析出した沈殿を
濾過し、アセトンにて洗浄した。乾燥重量は、12.0
gであった。
【0073】元素分析結果は、H:3.52% C:3
9.24% N:8.28% S:13.78% Cl:2.99% 組成式:C24304.3 153.2
Cl0.7 であり、S/N比は0.74であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環4個に対して3個弱のスルホン基が導入されて
いることになる。また対イオンがすべてCl- であると
すれば、ドーピング率は0.175(35%)である。
【0074】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、5.0重量%であった。
【0075】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、5.7×10-3S/cmであった。
【0076】実施例1 合成例1で得られたスルホン化ポリアニリン0.1gを
5mlのイオン交換水に溶解して塗布液を作製した。こ
れを、0.2μmのフィルターに通したところ、溶液は
完全にフィルターを通過し、残存固形分は全くなかっ
た。この水溶液を洗浄したスライドガラス上にスピンコ
ートした。この薄膜を60℃で1時間乾燥した結果、膜
厚0.20μmの淡青緑色の透明フィルムが得られた。
表面抵抗を測定した結果、1.0×108 Ω/□であっ
た。
【0077】実施例2 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリン0.1gを
5mlのイオン交換水に溶解して塗布液を作製した。こ
れを、0.2μmのフィルターに通したところ、溶液は
完全にフィルターを通過し、残存固形分は全くなかっ
た。この水溶液を洗浄したスライドガラス上にスピンコ
ートした。この薄膜を60℃で1時間乾燥した結果、膜
厚0.26μmの淡緑色の透明フィルムが得られた。表
面抵抗を測定した結果、2.6×106 Ω/□であっ
た。
【0078】実施例3 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンをポリアク
リル酸(株式会社日本触媒製アクアリックHL−41
5、平均分子量10,000)と重量比を変えて混合
し、固形分5%の水溶液を調製した。これらの水溶液か
らスライドガラス上にスピンコートして薄膜化し、その
表面抵抗を測定した結果を図1にまとめて示した。スル
ホン化ポリアニリンの全固形分に対する割合が大きくな
るにつれて、表面抵抗は指数関数的に減少する。したが
って、本発明の帯電防止剤は、スルホン化ポリアニリン
の割合をかえるだけで、電気抵抗を自由にコントロール
できるという特徴を有する。
【0079】実施例4 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンを以下の高
分子と重量比1:1で混合し、固形分5%の水溶液を調
製した。
【0080】・ポリエチレングルコール(PEG):和
光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000。 ・ポリビニルピロリドン(PVP):東京化成工業株式
会社製K−30、平均分子量40,000。 ・ポリビニルアルコール(PVA):株式会社クラレ製
117H。 ・ポリアクリルアミド(PAAM):和光純薬工業株式
会社製。 ・ポリアクリル酸ナトリウム(PSAA):株式会社日
本触媒製アクアリックDL−40S。 ・ポリアクリル酸(PAA):株式会社日本触媒製アク
アリックHL−415、平均分子量10,000。 ・ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスル
ホン酸)(PAMPS):日東化学工業株式会社製2−
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を重合
したもの。 ・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSS):ア
ルドリッチ製、平均分子量70,000。 ・ポリスチレンスルホン酸(PSS):前記PSSSを
オルガノ株式会社製イオン交換樹脂アンバーライトIR
−118で酸型としたもの。 ・ポリビニルスルホン酸(PVS):アルドリッチ製ポ
リビニルスルホン酸ナトリウムをオルガノ株式会社製イ
オン交換樹脂アンバーライトIR−118で酸型とした
もの。
【0081】上記の各水溶液からスライドガラス上にス
ピンコートして薄膜化し、その表面抵抗、透過率、成膜
性および透明性を測定した結果を表1にまとめて示し
た。
【0082】
【表1】
【0083】上記表中、成膜性および透明性の評価基準
は以下の通りである。
【0084】上記表1の結果より、ポリビニルアルコー
ル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸が混合高分子
として優れていることがわかる。
【0085】実施例5 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンをイオン交
換水に溶解して濃度の異なる塗布液を作製した。これら
の水溶液を洗浄したスライドガラス上にスピンコートし
た。これらの薄膜を60℃で1時間乾燥した結果、膜厚
が異なる透明フィルムが得られた。膜厚、表面抵抗、透
過率を測定した結果を表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】上記表2の結果より、膜厚3nm以下の超
薄膜でも帯電防止効果を維持している。
【0088】実施例6 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンの5重量%
水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィル
ム上にスピンコートにより塗布しようと試みたが、はじ
いてしまい塗布困難であった。
【0089】合成例2で得られたスルホン化ポリアニリ
ンをポリアクリル酸(株式会社日本触媒製アクアリック
HL−580、平均分子量800,000)と固形分の
重量比が1:1となるように混合し、固形分5重量%の
水溶液を調製した。この水溶液をPETフィルム上に塗
布したところ、はじかれることなく、平滑で透明な膜を
得ることができた。
【0090】実施例7 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンの5重量%
水溶液にポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(ナガセ化成工業株式会社製デナコールEX−810)
を架橋剤として、固形分全量に対し3重量%となるよう
に添加した。この水溶液をスライドガラス上にスピンコ
ートし薄膜化した後、200℃で3分間加熱した。加熱
後の膜を水にさらしても流れださず、不溶化することが
できた。
【0091】実施例8 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンをポリアク
リル酸(株式会社日本触媒製アクアリックHL−58
0、平均分子量800,000)と固形分の重量比が
1:1となるように混合し、固形分5重量%の水溶液を
調製した。水溶液をスライドガラス上にスピンコートし
薄膜化した後、200℃で3分間加熱した。加熱後の膜
を水にさらしても流れださず、不溶化することができ
た。
【0092】実施例9 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンをポリアク
リル酸(株式会社日本触媒製アクアリックHL−58
0、平均分子量800,000)と固形分の重量比を変
えて固形分2.5重量%の水溶液を調製した。これらの
水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィル
ム上にスピンコートし、それぞれの塗膜の表面抵抗、透
過率、塗布性および200℃で3分間加熱して不溶化さ
せた後の密着性、強度、耐水性について評価した結果を
表3に示した。
【0093】
【表3】
【0094】上記表中、混合比、並びに塗布性、密着
性、強度および耐水性の評価基準は、以下の通りであ
る。 (混合比) スルホン化ポリアニリン/ポリアクリル酸 (密着性) セロテープを貼って、はがしたときにはが
れたかどうかで判断した。 ○:全くはがれなかった △:一部はがれた ×:完全にはがれた (強度) 爪でこすってはがれるかどうかで判断し
た。 ○:全くはがれなかった △:一部はがれた ×:完全にはがれた (耐水性) 水で流れ出すかどうかで判断した。 ○:全く流れ出さなかった ×:一部でも流れ出した。
【0095】実施例10 合成例2で得られたスルホン化ポリアニリンとアクリル
系高分子エマルション(株式会社日本触媒製アクリセッ
トEX−16)とを固形分の重量比が1:1となるよう
に混合し、固形分5重量%の水溶液を調製した。この溶
液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上
に塗布した結果、斑のない透明な薄膜が形成できた。表
面抵抗を測定した結果、1.9×107 Ω/□であっ
た。また、この薄膜を水にさらしても流れ出さず、耐水
性は十分であった。さらに、この薄膜を150℃で1時
間加熱し硬化させると、セロテープを貼ってはがしても
はがれない程度の密着性とつめでこすってもはがれない
程度の強度が得られた。
【0096】
【発明の効果】本発明の帯電防止剤は、従来ではなしえ
なっかった高い導電性を有する状態、すなわちドープ状
態において水溶性であるスルホン化ポリアニリンを用い
た帯電防止剤であり、ポリアクリル酸などの水溶性高分
子またはアクリル系高分子エマルションなどの水系高分
子エマルションと自由に混合でき、該水溶液から、スピ
ンコート、ディップコートおよびバーコートなどの簡便
な手法により高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹脂
成型品などの上に斑なく薄膜を形成することができる。
この薄膜の表面抵抗は、105 Ω/□〜1011Ω/□の
範囲で任意の値に調製可能であり、低湿下でも優れた帯
電防止効果を発揮する。また、上記帯電防止薄膜は、熱
で硬化(不溶化)することも可能で、硬化後は、十分な
基材との密着性、強度、耐水性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スルホン化ポリアニリンとポリアクリル酸と
の混合膜における表面抵抗と混合比(全固形分に対する
スルホン化ポリアニリンの割合)との関係を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−143662(JP,A) 特開 平7−324132(JP,A) 特開 平6−56987(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 79/00 C08G 73/00 C09K 3/16 108

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアニリンの骨格の芳香環が芳香環1
    個当り平均して0.1〜4個のSO3M(ただし、Mは
    水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子お
    よびアンモニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも
    1種のものである。)で置換され、かつ平均して0〜
    3.9個のR(ただし、Rは水素原子、ハロゲン原子、
    炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20
    のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ
    基、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、カルボキ
    シル基、エステル残基の炭素原子数が1〜20のカルボ
    ン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基よりなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種のものである。ただし、SO
    3MとRとの合計は4である。)で置換され、かつ該主
    骨格中の窒素原子1個当り0.025〜1個が外部ドー
    パントでドーピングされてなる水溶性導電性高分子を用
    いた帯電防止剤。
  2. 【請求項2】 電気伝導度が10-6S/cm以上である
    状態で、水に対する溶解度(25℃)が0.5重量%以
    上であり、外部ドーパントでドーピングされてなること
    を特徴とする請求項1に記載の水溶性導電性高分子を用
    いた帯電防止剤。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の水溶性導電性高分子と
    水溶性または水分散性高分子を混合して用いた帯電防止
    剤。
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