JP3151471B2 - 種子の発芽改善方法 - Google Patents

種子の発芽改善方法

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JP3151471B2
JP3151471B2 JP13408395A JP13408395A JP3151471B2 JP 3151471 B2 JP3151471 B2 JP 3151471B2 JP 13408395 A JP13408395 A JP 13408395A JP 13408395 A JP13408395 A JP 13408395A JP 3151471 B2 JP3151471 B2 JP 3151471B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、種蒔き前に種子を水和
処理することにより発芽を改善する方法に関する。さら
に詳しくは、播種後の種子の迅速且つ斉一な発芽や不良
環境下での発芽率の改善などを目的とし、播種前の種子
に施す種子水和処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】種子は、播種後、水分・温度・酸素・光
等の環境条件が適当な状態に揃った場合、一定の期間を
経て発芽に至る。
【0003】この播種から発芽に至るまでの発芽準備期
間に、種子内部では様々な代謝が行なわれている。その
期間の長さは、種子個々の登熟度や作物の種類によっ
て、また温度や水分等の環境要因によって異なる。この
発芽準備期間を短縮し、迅速且つ斉一な発芽をもたらす
ことにより、栽培期間の短縮や発芽後の栽培管理が容易
となり、大規模な営利栽培においては生産コストの削減
や省力化などの利点が得られる。
【0004】このような目的で播種前の種子に施される
水和処理として、従来よりホーレンソウ栽培において
は、種子を井戸水に1日浸漬してから播種する(催芽処
理)等の方法が慣行されている。近年では、プライミン
グ、オスモコンディショニングあるいはマトリコンディ
ショニングなどの種子水和処理技術が開発されており、
発芽の迅速化や不良環境下での発芽率改善などの効果が
あることが確認されている。
【0005】プライミング等の種子水和処理技術の原理
は、種蒔き前の種子に給水し、種子の活力を増進するに
は充分であるが種子発芽をおこさせるには不充分な時間
と温度で種子を処理することにより、播種後の発芽を早
めることにある。現在、様々な種子水和処理技術の研究
・開発の報告がなされているが、その中で主なものとし
て、以下の4方法が挙げられる。
【0006】プライミング(Priming) 1974年にハイデッカー(W. Heydecker)らが開発した技
術で、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、ソジ
ウム・ポリプロペネイト(Sodium Polypropenate)など)
水溶液もしくは塩類水溶液を媒体として、浸透圧によっ
て種子への水分供給を制御する方法である。(W. Heyde
cker, J. Higgins and R. L. Gulliver,1973, Nature(L
ondon) 246:42-44 )(W. Heydecker, 1974, Univ. Not
tinghamsch. Agr. Rep. 1973/1974: 50-67)(Zuo Wein
eng et al.,1987, Chinese Science Bulletin 32: 143
8)ドラム・プライミング(Drum Priming) 1987年にローズ(H. R. Rowse )らが開発した技術で、
媒体を使用せず、回転するドラム内で噴霧状に水分を与
え、種子への水分供給を直接重量制御する方法である。
(英国特許 2192781)ソリッド・マトリクス・プライミング(Solid Matrix
Priming) 1988年にテイラー(A. G. Taylor)らが開発した技術
で、レオナルダイト頁岩(leonardite shale)粉末資材
(アグロ・リグ、Agro-Lig)を媒体として、種子への水
分供給を制御する方法である。(A. G. Taylor, D. E.
Klein and T. H.Whitlow, 1988, Scientia Horticultur
ae 37(1988)1-11)(米国特許 4912874/ヨーロッパ特
許 0309551B1/特許出願公表 平1-503437)マトリコンディショニング(Matriconditioning) 1990年にカーン(A. A. Khan)らが開発した技術で、水
に不溶性な多孔質素材(Micro-Cel E, Zonolite) を媒体
として、種子への水分供給を制御する方法である。(A.
A. Khan, H.Miura, J.Prusinski and S.Ilyas, Procee
dings of the Symposium on Stand Establishment of H
orticultural Crops / Minneapolis, Minnesota, April
4-6, 1990) 上記4つの方法は、いずれも播種前の種子に対して施す
種子水和処理方法であり、種子へ供給する水分を制御す
ることによって、発芽準備期間に種子内部で行なわれる
様々な代謝のみを播種前に人為的に完了させてしまう点
が共通する。
【0007】それらの差異は、水分制御の方法原理にあ
る。においては液体を媒体として使用し、液体の有す
る浸透圧(Osmotic Potential) によって種子への水分供
給の制御を行なっている。においては媒体を使用せ
ず、直接重量で水分制御を行なっている。、におい
ては水に不溶性の固体媒体を使用し、浸透圧用材料(os
moticum )および/または毛管力(Matric Potential)に
よって水分の制御を行なっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これらの方法は、いず
れも発芽改善には同等の効果が認められるが、それぞれ
次のような欠点を有している。
【0009】のプライミング法は、使用するポリエチ
レングリコール溶液などの粘度が高く、且つその液は酸
素の溶解度が低く、さらに処理後の種子の乾燥に時間が
かかるなど、工業的な大量処理には無理がある。
【0010】のドラムプライミング法は、単純明快な
方法であるが、実際に水量のコントロールを行なうには
精密な機械制御が必要となり、機械設備や操作が実質的
には複雑化するため実施困難である。
【0011】水不溶性の固体媒体の持つ毛管力などを利
用するおよびの方法は、簡単な設備で処理が行な
え、酸素供給の問題も解決している。しかし、粉末状の
固体媒体が種子に付着して残り、確実な篩い分けが難し
いといった問題がある。このように処理後の種子に固体
媒体の微粉が付着して残留することは、製品である種子
の包装や流通の場面でダストを発生し、また種子の商品
価値を著しく損なうことにつながる。
【0012】本発明の課題は、種子に固体媒体の微粉が
付着・残留することなく、水和処理後の種子の乾燥も容
易な種子の発芽改善方法を提供する処にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、より優れ
た種子の水和処理技術を検討した結果、高吸水性ポリマ
ーを用いることにより、上述の課題が解決され、発芽の
改善はもとより、工業化し易い種子水和処理技術を見出
し、本発明を完成した。
【0014】すなわち本発明は、水を吸収した固形状の
高吸水性ポリマーに種子を加え、酸素含有気体を供給し
ながら、種子の活力を増進するには充分であるが発芽を
おこさせるには不充分な時間と温度で種子を水和処理す
る種子の発芽改善方法である。
【0015】本発明においては、種子へ水分を供与する
媒体として高吸水性ポリマーを使用し、高吸水性ポリマ
ー特有の水分徐放性を利用して種子への水分供給を制御
している。水分徐放性の原理は不明であるが、高吸水性
ポリマーの吸水力(高吸水性ポリマーと水の親和力、水
のゲルへの浸透圧)と吸水作用を止めようとする力(高
吸水性ポリマーの3次元網目構造に基づく弾性力)の相
互作用によって発現すると考えられ、従来技術のように
浸透圧を利用する方法や毛管現象による方法とは基本的
に異なっている。
【0016】さらに詳しく述べれば、従来の方法は、種
皮(種子表面)を大量の水で直接濡らし、浸透圧用材料
(osmoticum )および/または毛管力(Matric Potenti
al)を有する媒体を共存させることにより、種皮より種
子内部への水の浸透を制御する技術である。これに対
し、本発明の方法は、種皮を時間的・空間的に直接液状
の水で濡らすことが少なく、大量の水を含み疎水性の表
面を有する高吸水性ポリマーより滲出するごく微量の気
体状あるいは液状の水を、種皮を通して種子に吸収せし
める方法であり、水の供与機構が従来法とは本質的に異
なる。
【0017】また、用いる高吸水性ポリマーの保水機構
は、高吸水性ポリマーの親水基で固定される不凍水、不
凍水と水素結合する拘束水および拘束水のまわりの自由
水からなることが核磁気共鳴(NMR)法で確認されて
おり、従来法の毛管力あるいは塩や親水性ポリマーの保
水機構とは明確に異なる。
【0018】このため、本発明の方法によれば、種子に
処理媒体が付着することが少なくて分離が容易であり、
工業的に有用である。
【0019】本発明に用いられる高吸水性ポリマーは、
市販の製品でよい。高吸水性ポリマーとは、例えば、橋
掛けポリアクリル酸塩系、架橋イソブチレン/マレイン
酸系、架橋デンプン/ポリアクリル酸塩系、架橋ポリビ
ニルアルコール/ポリアクリル酸塩系、橋掛けポリビニ
ルアルコール系、橋掛けポリエチレングリコール系、橋
掛けカルボキシルメチルセルロースなど、高分子電解質
などの水溶性ポリマーを何らかの方法で不溶化した構造
を有する化学製品で、その種類の如何に関わらず、以下
の特性を有するものであれば使用できる。 高い吸水力 適度な水分徐放性 種子に対して無害なpH(中性域:5〜9) 適度な粒径(種子と選別可能な粒度) 吸水後の適度な流動性(吸水したゲルが相互に付着し
にくい) 人体への安全性。
【0020】さらに、形態としては、粉末状、特に、吸
水しても相互付着が少なく適度な流動性を有する点より
球状のものが好ましく、その大きさは特に限定するもの
ではないが、乾燥状態で粒径10μm〜3mmのものが
市販されており、粒径50〜300μmのものが使用し
やすく好ましい。吸水倍率も特に限定するものではない
が、自重の10〜1000倍のものが好ましく使用でき
る。水を吸収した固形状の高吸水性ポリマーは球状とな
るのが好ましい。
【0021】高吸水性ポリマーの表面を疎水化するため
に、乾燥状態の高吸水性ポリマーあるいは任意量の水を
加えて吸水した高吸水性ポリマーに、疎水剤として疎水
性シリカやステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグ
ネシウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸の微粉
末を若干量加えると、流動性が向上して高吸水性ポリマ
ー同士の付着が少なくなり、制御された水和処理(cont
rolled hydration)の操作がさらに容易となり好まし
い。また、架橋度あるいは橋掛け度を増して疎水性を増
大させた高吸水性ポリマーを使用することもできる。
【0022】本発明の一般的な実施方法は次の通りであ
る。
【0023】高吸水性ポリマーに、その自重の数倍量の
水を吸収させる。(吸水量は、高吸水性ポリマーの種類
や被処理種子(処理対象種子)によって異なる。)その
際必要に応じて、吸水前あるいは吸水後に、高吸水性ポ
リマーに対して0.1〜5%重量の疎水剤を添加し、混
合し、高吸水性ポリマー粒子の表面を疎水剤でコーティ
ングする。
【0024】次いで、吸水後の高吸水性ポリマーの容積
に対して0.2〜5倍量の種子を加え、撹拌混合を行な
う。
【0025】その後、この混合物を10〜30℃程度の
温度下(通常は被処理種子の発芽適温)で、1〜14日
間の一定期間(種子内部で行なわれる代謝活動が進行す
るのに要する時間。通常は被処理種子の播種から発芽に
至るまでに要する時間±α)保持する。保持期間の間、
高吸水性ポリマーと種子の混合物に対して、種子の代謝
呼吸に必要な酸素含有気体を供給する。酸素含有気体と
しては、空気、酸素ガス、酸素と他の気体との混合物が
挙げられる。酸素含有気体の供給は、通気や酸素または
空気の封入交換により行なう。通気の際には、系の乾燥
を防ぐため、必要に応じて若干加湿した空気を供給する
のが好ましい。均一な処理を行なうためには、断続的ま
たは連続的に撹拌混合を行なうのが好ましい。
【0026】保持期間経過後、適切な目の篩で高吸水性
ポリマーと種子を分離する。高吸水性ポリマーは殆ど種
子に付着しないので、種子を傷めることなく容易に分離
できる。
【0027】分離後の種子は必要に応じて乾燥させる
が、種子への付着水は発芽には不充分な少量のため、未
乾燥の状態でも低温低湿下であれば短期間の保存は可能
であり、制御された水和処理(controlled hydration)
の効果を維持させることができる。また、処理後の種子
は、本来耐久体である種子が吸水によって活発な生命活
動を開始しているため、加熱乾燥によるダメージを受け
やすくなっている。そのため、乾燥はできるだけ低温且
つ迅速に行なうのが望ましい。
【0028】本発明に用いられる種子は、ニンジン、レ
タスなどの野菜種子、パンジーその他の草花種子など大
小どんな種子でもよい。
【0029】また、水和処理前後に殺菌剤などで種子を
処理してもよく、水和処理後にフィルムコーティングや
造粒することも可能である。
【0030】
【実施例】次に本発明の実施例を説明するが、本発明は
これらに限定されるものではない。
【0031】実施例1 高吸水性ポリマーとしてアクリル酸塩系モノマーを用い
た橋掛け重合体(大阪有機化学工業(株)、PQポリマ
ーBL100)を用いた。この高吸水性ポリマーの性状
を表1に示す。
【0032】
【表1】 被処理種子(処理対象種子)としては、ニンジン(Dauc
us carota L.)、セルリー(Apium graveolens L. )、
ホーレンソウ(Spinacia oleracea L.)、タマネギ(Al
lium Cepa L.)、パンジー(Viola ×wittrockiana)、
レタス(Lactuca sativa L. )の種子を用いた。
【0033】通気用の***を備えた密閉可能な円筒型閉
鎖容器(500ml容)に、0.1%チウラム水和剤
(処理中の雑菌繁殖防止のための殺菌剤)混合水150
mlを注ぎ、撹拌しながら高吸水性ポリマー30gを計
量投入した(吸水倍率が×5倍の場合)。
【0034】高吸水性ポリマーが均一に吸水した後、高
吸水性ポリマー重量に対して1%重量の疎水剤(ステア
リン酸カルシウム0.3g)を添加し、充分に撹拌・混
合を行ない、吸水した高吸水性ポリマー粒子表面に疎水
剤(ステアリン酸カルシウム)をコーティングした。
【0035】この疎水剤をコーティングした高吸水性ポ
リマーの入った円筒型処理容器内に、被処理種子100
ml量を計量投入し、密封後、ミックスローター(粉体
混合機)を使用して撹拌混合を断続的に行ないながら、
所定の温度に設定された恒温室内で一定期間の処理を行
なった。それぞれの作物の種子処理における諸条件は、
表2に示す通りである。
【0036】なお、高吸水性ポリマーに対する吸水倍率
や種子との混合比率、処理温度、処理日数などは被処理
種子の種類や種子ロットによって若干異なるため、予備
試験を実施して決定した。
【0037】処理中の容器内への酸素の供給法は、処理
容器の容積に対して高吸水性ポリマーと種子の混合物が
占める割合や処理期間の長さによって若干異なる。本実
施例では、比較的長期間の処理を必要とするものは連続
通気法により、短期間で処理が終わるものは酸素封入交
換法により行なった。連続通気法は、エアーポンプを用
いて少量の空気を連続的に供給する方法であり、酸素封
入交換法は、酸素供給機を用いて高濃度の酸素ガス(9
0%濃度)を封入し、24時間毎に交換封入する方法で
ある。
【0038】
【表2】 所定の処理期間経過後、適切な目の篩を用いて種子と高
吸水性ポリマーを選別し、通風オーブン内で35℃で種
子乾燥を行なった。乾燥後の種子含水率は、処理前の種
子含水率とおよそ同程度になるように調整した。
【0039】乾燥後の処理種子に対して発芽試験を実施
し、発芽改善効果の確認を行なった。発芽試験は、シャ
ーレに播種して行ない、基本的には、国際種子検査規定
(ISTA)の基準に基づいて行なった。
【0040】発芽の締め切りは14日とし、発芽の早さ
の指標として平均発芽日数を計算した。平均発芽日数
は、
【数1】 の式より算出した。この数式において、kは播種後経過
日数、Gkは播種k日後に発芽した種子固体数をそれぞ
れ示す。nは発芽締め切りの14日までとした。
【0041】発芽試験の結果を表3、4および図1〜5
に示す。
【0042】(発芽の早さの改善)表3および図1〜
3、5に示すように、ニンジン、セルリー、ホーレンソ
ウ、パンジーの各種子において、制御された水和処理に
よる発芽の迅速化が観察された。その効果は、特に無処
理種子で発芽に比較的日数を要するニンジン、セルリ
ー、パンジーで顕著に観察され、平均発芽日数で2日程
度の短縮が観察された。
【0043】
【表3】 (低温下での発芽の早さの改善)タマネギの発芽適温
(20℃)下での発芽試験では、制御された水和処理種
子は無処理種子と変わらない発芽を示した(データ略)
が、低温下(10℃)での発芽試験では無処理種子に比
較して顕著に発芽が早まり、平均発芽日数の短縮が観察
された。表3および図4参照。
【0044】(高温下での発芽率の改善)レタスの種子
は高温下では二次休眠に入ってしまうが、制御された水
和処理により、供試4品種全てにおいて高温下(35
℃)での発芽率の改善が観察された(表4参照)。無処
理種子の発芽率が0〜12.0%であるのに対し、制御
された水和処理種子の発芽率は74.7〜96.0%を
示し、制御された水和処理の効果は顕著であった。
【0045】
【表4】 実施例2 制御された水和処理後の種子と媒体の分離特性、乾燥工
程における処理後の種子の乾燥の難易性、および処理後
の種子への固体媒体の付着残留量を従来処理技術(比較
例)と比較した。
【0046】すなわち、タマネギとニンジンの種子各5
0gを計量し、プライミング(SMPと区別するために
Osmotic Priming(以下、OPと略記)とする:比較
例)、ソリッド・マトリクス・プライミング(Solid Ma
trix Priming:以下、SMPと略記:比較例)、マトリ
コンディショニング(Matriconditioning :以下、MC
と略記:比較例)、本発明の高吸水性ポリマーによる水
和処理(以下、HSAPと略記:実施例)で、それぞれ
制御された水和処理を行なった。
【0047】制御された水和処理は、表5に示す条件で
行なった。また処理温度と処理期間は、タマネギで15
℃×5日間、ニンジンで20℃×7日間に統一して行な
った。
【0048】
【表5】 制御された水和処理終了後、OPではナイロンメッシュ
袋内で種子を水洗・脱水し、種子と媒体(ソジウム・ポ
リプロペネイト溶液)を分離した。
【0049】SMP、MC、HSAPでは篩を使って種
子と固体媒体を分離した。その際、種子の粒径により、
タマネギでは12メッシュの篩を、ニンジンでは14メ
ッシュの篩をそれぞれ使用し、篩い選別による種子と媒
体の分離難易性を比較した。
【0050】種子と媒体を分離した後、40℃の通風オ
ーブン内で種子の乾燥を行なった。種子の乾燥は、オー
ブン内で種子を均一に広げて行ない、経時的に種子の含
水率を測定記録することで、それぞれの制御された水和
処理種子の乾燥の難易性を比較した。種子含水率は、乾
燥開始時と終了時にチョウ・エレクトロニック・バラン
スMC−30MB(Cho ELECTRONIC BALANCE MC-30MB)
を使って測定し、乾燥途中の種子含水率は重量の減少よ
り計算によって求めた。
【0051】乾燥後、種子を傷めない程度に擦り合わ
せ、種子表面に付着残留する媒体を強制剥離し、再度篩
い選別にかけて分離採取した。各々の制御された水和処
理で使用した媒体全量に対する剥離・分離採取媒体量の
割合を、付着残留率として計算した。最終的に処理が終
了した種子の表面観察の比較も行なった。
【0052】種子と媒体の分離難易性、種子乾燥の難易
性、および種子への媒体付着残留の結果は以下の通りで
ある。
【0053】(種子と媒体の分離難易性)OPでは、種
子を水洗することにより、種子と媒体(ソジウム・ポリ
プロペネイト溶液)の分離が容易且つ確実にできた。
【0054】SMPとMCでは、保水した媒体(アグロ
・リグ(Agro-Lig)、ミクロ・セルE(Micro-Cel E) )が
種子表面に強固に付着するとともに、媒体が種子粒径よ
り大きな塊を形成し、篩い選別による種子と媒体の確実
な分離はできなかった。特に、種子表面に凹凸が見られ
るニンジン種子では媒体の付着が著しく、タマネギ種子
でも種皮のくぼみ部分への媒体付着が著しく観察され
た。同時に、処理容器や篩など、使用機器への媒体付着
も著しく観察された。
【0055】HSAPでは、種子および処理容器・篩な
どの使用機器への媒体付着も無く、篩い選別により、種
子と媒体の分離が容易且つ確実にできた。その操作性
は、疎水性シリカの添加によりさらに向上した。
【0056】(種子乾燥の難易性)図6および図7に示
すように、HSAP処理種子は、タマネギもニンジン
も、他の処理と比較して最も短時間で種子含水率が低下
し、効率的な乾燥が行なえた。水和処理種子を、吸水前
の無処理種子の含水率(10%程度)となるまで乾燥す
る速さはHSAP>OP>MC≧SMPの順であった。
MCおよびSMPの乾燥曲線がOPよりも緩やかな傾斜
を示し、種子乾燥に長時間を要したのは、処理後の種子
に保水した固体媒体が多量に付着残留していたことに起
因すると推測される。
【0057】(種子への媒体付着残留)結果を表6に示
す。
【0058】
【表6】 OPにおいては、媒体が液体であり、種子を水洗して媒
体との分離を行なったため、種子への媒体付着残留は観
察されなかった。
【0059】SMPにおいては、制御された水和処理直
後に篩い選別を行なった際に、多量の媒体付着残留が観
察された。種子乾燥後に、付着残留した媒体(アグロ・
リグ)を強制的に剥離除去したところ、多量の媒体が分
離採取された。その付着残留率は、24.3%(タマネ
ギ測定値)と38.1%(ニンジン測定値)であり、高
い値を示した。
【0060】MCにおいては、制御された水和処理直後
に篩い選別を行なった際に、SMPと同様に多量の媒体
付着残留が観察された。種子乾燥後の強制剥離により、
ミクロ・セルEが22.6%(タマネギ測定値)と4
0.4%(ニンジン測定値)の残留率で分離採取され
た。
【0061】HSAPにおいては、制御された水和処理
直後の篩い選別による種子と媒体の分離が確実であった
ため、種子への媒体付着残留率は0%であった。
【0062】また、SMPとMCにおいては、種子付着
媒体を強制的に剥離した後も、媒体の除去は完全ではな
く、種子表面に少量の媒体の残留が観察された。その残
留量は、種子表面の外観から、通常種子に対して薬剤粉
衣を施した場合と同程度の量と観察された。
【0063】実施例3 pHが中性域(5〜9)で化学組成の異なる高吸水性ポ
リマー3種を用い、トマト種子の制御された水和処理を
行なった。その処理種子に対して発芽試験を実施し、使
用したポリマーの種類の差による処理効果の比較を行な
った。
【0064】すなわち、橋掛けアクリル酸ソーダ重合
体、架橋スターチ・ポリアクリル酸共重合体、架橋ビニ
ルアルコール・ポリアクリル酸共重合体の3種の高吸水
性ポリマーを用い、実施例1と同様にしてトマト種子の
制御された水和処理を行なった。
【0065】乾燥後の処理種子に対してシャーレ蒔きの
発芽試験を実施し、制御された水和処理に使用した高吸
水性ポリマーの種類の違いによる処理効果の比較を行な
ったところ、高吸水性ポリマーの種類の違いによる顕著
な処理効果の差は観察されなかった。
【0066】このことから、制御された水和処理に使用
する高吸水性ポリマーは、その化学組成如何に関わら
ず、種子に対して無害なpHで、且つ適度な諸性状(吸
水力・水分徐放性・粒径・流動性)を有するものであれ
ば、同様な処理効果をあげることができると思われる。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、種子に固体媒体の微粉
が付着・残留することなく、水和処理後の種子の乾燥も
容易であるため、種子を傷めずに、すばやく均一に発芽
する改善された種子を安価に工業的に製造することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニンジンの発芽試験における播種後日数と発芽
率との関係を表わす図である。
【図2】セルリーの発芽試験における播種後日数と発芽
率との関係を表わす図である。
【図3】ホーレンソウの発芽試験における播種後日数と
発芽率との関係を表わす図である。
【図4】タマネギの発芽試験における播種後日数と発芽
率との関係を表わす図である。
【図5】パンジーの発芽試験における播種後日数と発芽
率との関係を表わす図である。
【図6】タマネギの種子乾燥試験における乾燥時間と種
子含水率との関係を表わす図である。
【図7】ニンジンの種子乾燥試験における乾燥時間と種
子含水率との関係を表わす図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 浩 滋賀県大津市大江1丁目3−15 (72)発明者 松下 慎哉 滋賀県大津市一里山3−24−18 審査官 秋月 美紀子 (56)参考文献 特開 平5−56707(JP,A) 特開 平4−271707(JP,A) 特開 昭58−149604(JP,A) 特開 平4−99403(JP,A) 特表 平1−503437(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01C 1/00 - 1/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水を吸収した固形状の高吸水性ポリマー
    に種子を加え、酸素含有気体を供給しながら、種子の活
    力を増進するには充分であるが発芽をおこさせるには不
    充分な時間と温度で種子を水和処理する種子の発芽改善
    方法。
  2. 【請求項2】 水を吸収した固形状の高吸水性ポリマー
    が球状であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 高吸水性ポリマーが疎水剤で処理された
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 酸素含有気体が、空気、酸素ガスまたは
    酸素と他の気体との混合物であることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方
    法によって処理された種子。
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