JP3148233U - 低レイノルズ数用翼型 - Google Patents

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Abstract

【課題】超小型あるいは超低速飛翔体において、製作誤差を多少許容しても、高揚力等安定飛行に必要な諸元を実現できる低レイノルズ数領域での飛行に適した翼形を提供する。【解決手段】レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、翼の前端から翼の翼弦長の25%以下の前縁部に薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部1を形成し、第一の丘状突起部の後方に第一の丘状突起部に連続して最低高さが翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部3を形成し、凹部に連続して凹部の後方の翼の前端から翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に翼の最大高さを有し、翼の最大高さより翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部2を形成した翼型による。【選択図】図1

Description

考案の詳細な説明
本考案は翼型に関し、より詳細には10の3乗オーダーの低レイノルズ数で飛翔する超小型あるいは超低速飛翔体に適した翼型に関する。
従来、飛翔体の翼型は航空機の進歩を支える最も重要な分野として研究されてきたが、鳥よりも小さい昆虫レベルの超小型かつ低速の飛翔体に適した翼型に関しては実用化の意義が少ないため取り残されていた。
近年昆虫の持つ驚異的な飛翔能力が注目され、災害時やテロ対策において狭隘な場所への侵入や当該狭隘な場所における観測に超小型の飛翔体が利用できないかという研究が世界中で行われるようになってきている。
しかしながら、昆虫の羽ばたき機能の解明に研究が集中して固定翼としての研究は進んでいないように見受けられる。
勿論、模型飛行機用の翼型はホビーニーズから数多く開発されている(非特許文献1および非特許文献2参照。)が、それ等は通常の航空機の翼型の延長線上のものとして設計されているために概して翼弦方向に変化する厚みをもっており、模型飛行機等の小型飛翔体には使用されているものの、軽量化と加工性の見地から一枚の薄板で翼を作ることが要求される超小型飛翔体には適用が困難であった。
「模型飛行機と凧の科学」(東昭著、電波実験社、1992年、p.56〜p.64) 「模型飛行機の科学」(和栗雄太郎著、養賢堂、2005年、p.47〜p.54)
更に、従来知られる模型飛行機用の翼型は昆虫などが飛翔するレイノルズ数が10の3乗の世界において優れた空力特性を持つことが保証されていないことが問題であるものといえる。すなわち、厚みを持つ翼型はレイノルズ数が10の4乗以下では層流剥離を防ぐことが出来ず、飛行レイノルズ数が10の3乗のオーダーとなる昆虫サイズの飛翔体の翼型として有効な揚抗特性を得ることができる保証がないものといえる。
この意味で、超小型飛翔体に適用が可能で、かつ実用に耐える翼型は曲板翼以外存在しなかったといってよい。
この曲板翼は、必ずしも理想的な揚抗比を与えるわけではないが、広いレイノルズ数範囲において特性を変えない翼型として以前から知られている(非特許文献3参照。)。また高度な工作技術を要せずに安価に実現することが可能であるため、超小型の模型飛行機あるいは紙飛行機には例外なく曲板翼が用いられている。
「Fluid Dynamic Drag」(S.F.Hoerner、1965年、p.6−11)
しかしながら、この曲板翼は超小型、超軽量機に適用する上で幾つかの問題点を有する。一つは翼の剛性が不足していることである。超小型にして薄い曲板翼を用いると、当該曲板翼は簡単に折れたり曲がったりするため取扱いに際しては神経を使うことが必要で、極めて厄介である。また、当該曲板翼の超低速における空力特性には既に述べたように未解明なところがあって、良く飛ぶ条件の翼の設定には豊富な製作経験を要するものであり、超小型、超軽量機の翼としては決して使いやすいものではないという既知の翼に共通する欠点を有していた。
このように構造強度的あるいは空気力学的に問題を有する反面、容易に入手し得る曲板翼よりも優れた翼型が従来において知られていなかったことが、小型飛翔体の超小型化を妨げていた大きな要因であるということができる。非特許文献4においても飛翔体の小型化の第一の課題はレイノルズ数の低い世界における空気力学的研究であると指摘され、新しい翼型の研究の必要性が述べられているが、レイノルズ数が10の3乗の世界における新しい知見、あるいは方向性は未だ示されていない。
「Challenges Facing Future Micro−Air−Vehicle Development」JOURNAL OF AIRCRAFT Vol.43,No.2,March−April 2006,Darryll J.Pines and Felipe Bohorquez,Univ.of Maryland
一方、超小型飛翔体に属し、飛行レイノルズ数が10の3乗のオーダーであるトンボについては、翼型を凹凸にして、その間に渦を形成し、それが翼の機能を補完しているのであろうということは知られていたが、具体的に凹凸の位置関係を明示して、このようにすればよく飛ぶと主張する文献あるいは発明を見出すことはできない。
本考案に関連する特許文献による文献公知発明として特許文献1を挙げることができる。特許文献1では、前縁を円状または楕円状に形成した曲板翼の表面に翅脈状の凸紋様を形成することにより、小さな迎え角においても失速しやすいという薄型翼の欠点を改善することができるものと発明の開示がなされているが、具体的にどのような形状の凸紋様を形成すべきかについては必ずしも明らかとされていない。
特開2005−30317号公報
本願考案は、従来知られている曲板翼についての既述の問題点を踏まえ、当該曲板翼の問題点を、従来知られる翼型によっては得ることのできなかった優れた飛行特性を超小型機に与え、かつ当該翼の格段の剛性向上を実現して解決することができる優れた超小型飛翔体用の翼型を提供することにより解決することを目的とする。
本考案は上記の課題を解決するために次の構成を備える。即ち、本考案による翼型は、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成したことを特徴とする。
また本考案による翼型は、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さを有する位置を当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の勾配に、当該第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により当該翼の高さを減じ、当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして当該翼の前端から当該翼の翼弦長の75%以下の位置において当該翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部をさらに設けたことを特徴とする。
また本考案による翼型は、当該第二の凹部の後端部に上方に突出する小突起をさらに設けたことを特徴とする。
また本考案による翼型は、当該翼の後縁端の高さを当該第二の丘状突起部の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、当該翼に逆キャンバー特性を付与したことを特徴とする。
本考案によれば、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成した翼型とすることにより、当該翼の上下面に適切な凸部と凹部を作り出すことによって、凸部で流れを加速させ、続く凹部で当該流れに直交する回転中心軸を有する渦からなる流れ領域を生成・保持することによって、当該翼の外部流れを速やかに通過させ、この種の超小型飛翔体の持つ翼において要求される以下に示す四つの機能を満足することができる。
すなわち超小型飛翔体の持つ翼において要求される第一の機能は、翼としての高揚力、低抵抗特性の確保であり、同じく第二の機能は、当該翼の剛性の確保である。また同じく超小型飛翔体の持つ翼において要求される第三の機能は、左右の翼の多少の製作誤差を許容して空力的に鈍感な翼とする機能であり、同じく第四の機能は、飛行安定性の向上である。
特に当該第三および第四の機能は、当該翼が超小型で加工困難な上、変形しやすいために完成品の精度確保が難しく、かつ機重が軽量なために空気力の僅かの変化にも敏感に応答してしまう超小型・超軽量機が満足にフライトを遂行する上で必須の条件であるものといえる。
総じて本願考案者は、本考案による翼型について開示することにより、低レイノルズ数領域で飛翔する超小型・超軽量の飛翔体において、抵抗を増加させることなく翼面上に渦流れを形成し、同時に理想的な翼形状を成す当該翼型の外部流れを形成することにより揚力を発生せしめ、さらに構造的に高剛性かつ安価な翼構造を実現し、そのうえ当該翼の多少の製作誤差による空力的影響を許容し、かつ優れた飛行安定性を飛翔体に与えることが出来る超小型・超軽量の飛翔体に最適な優れた効果を有する翼型を提供するものである。
本考案の効果は、本願考案者による以下の実験により裏付けられている。図6から図9までは本考案に係わる低速流れの研究用に開発された可視化装置を用いた流れの可視化実験の様子を示す説明図である。当該可視化装置は回流水槽の水表面に大きさの異なる複数種類のアルミトレーサーを流し、当該アルミトレーサーの流跡を観察するものであるが、2次元流であれば、水表面を含む表層を水と共に流れる当該大きさの異なる複数種類のアルミトレーサーを伴う流れにより、図6に示すような流れ方向に筋を持つ縞模様を有する表層流れをつくることができ、常に翼周りの流線を観察することが可能となるように工夫が凝らされている。この際、当該大きさの異なる複数種類のアルミトレーサーの一として、極めて微細なアルミトレーサーを用いることにより、当該極めて微細なアルミトレーサーを伴う流れによって可視化される最も黒く見える筋の流れ11により微細な渦流れの観察を十分におこなうことができる。なお、以下図7から図9において、当該極めて微細なアルミトレーサーを伴う流れによって可視化される最も黒く見える筋の流れ11のみを流線により図示するものとする。
図7は、当該流れの可視化装置を用いることにより観測された滑らかな典型的曲板翼の翼型模型20周りの2次元流れの様子を示す説明図である。なお、図7に示す2次元流れの様子は、当該翼型模型の翼弦長が約20cm、レイノルズ数が約7×10の3乗の条件における可視化実験において観測されたものである。図7に示す可視化実験では、曲板翼の最大高さ位置付近から流れの剥離が始まり、以後の剥離域内では殆ど流れがないことが、当該剥離域内の流れを可視化するアルミトレーサーに殆ど動きがないことから確認された。このような剥離域すなわち死水域21が当該曲板翼の上面を後縁に向かうに従って厚みを増して覆うために、当該曲板翼においては、当該死水域21の外側を流れる外部流れの流線の曲率が減少して理想的な揚力を発生することができなくなるとともに、当然に抵抗が増加して空気力学的性能を低下させてしまうこととなるものということができる。
一方、図8は、本考案による翼型すなわち、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成した翼型について、同じく前記可視化装置を用いることにより本考案による翼型周りの流れの様子を可視化して観測した結果を図示したものである。なお、図8に示す観測結果は、当該翼型模型の翼弦長が約20cm、当該翼型模型の迎角が0度、レイノルズ数が4×10の3乗の条件で可視化実験がおこなわれた際のものである。図8に示すように、本考案による翼型によれば、本考案による翼型が凹凸形状をなしているにもかかわらず、剥離域あるいは死水域を生じてしまうことがなく、当該翼型の外部の流れにおいて、通常の航空機に用いられる翼型周りの流れに酷似した理想的な形状の外部流れを実現することができる。
当該可視化実験においては、本考案による翼型の上面において凹んでいる箇所には強弱の差はあっても渦領域31が生じていることが観測された。また、本考案による翼型上面の第一の丘状突起部1においては流れが持ち上げられて加速され、第一の丘状突起部1の後方に連続して設けられた凹部3において生じる渦領域31の渦度が強められることにより、渦領域31と外部流れとの境界線を上方に凸に曲げていることが観察された。このようにレイノルズ数が10の3乗のオーダーの流れにおいては、前縁部に流れを持ち上げる突起部を設けることで流れを加速し、当該突起部直後の高さの落ち込みによって流れを不連続なものとし、また当該突起部直後に連続して凹部を設けることで、当該凹部にはあたかも渦が閉じ込められたような領域を作ることが出来るため、本考案による翼型の上面において定常的に理想的な外部流れを形成することができる。
なお当然に、本考案による翼型上面の凹部に生じる渦領域31によって本考案による翼型上面の外部流れが上方に凸に曲げられることにより、当該上方に凸に曲げられた外部流れに働く遠心力によって本考案による翼型において上向きの揚力が発生するものということができる。他方、本考案による翼型の下面の流れにおいて、本考案による翼型の下面に設けられた凹部に関しては、当該凹部の前に当該流れを加速する突起部が設けられることがないため、図8に示す非常に弱い循環32が当該翼型下面の凹部の内部に形成されるにとどまり、当該翼型下面の凹部の内部の循環領域32と外部流れとの境界線は当該翼型の上面の流れとは異なり略直線状となる。このため、本考案による翼型においては理想的な翼形状の外部流れを形成することとなる。
なお、本考案による翼型における後半部の高さが復帰する部分、すなわち図8に示す第二の丘状突起部2の高さが、本考案による翼型において前縁部に設けられた第一の丘状突起部1の高さと同等であるかあるいはそれ以上の高さに設けられていないと、本考案による翼型の上面の凹部3に生じる渦領域31を閉じ込めることが難しくなってしまうこと、および本考案による翼型において第一の丘状突起部1の位置を後縁側に持ってゆき過ぎると翼上面の流れの整形上好ましくなく、概ね翼弦長の25%より前縁側の位置に第一の丘状突起部1の最高点が位置するように設けることが望ましいと判断されること、および本考案による翼型の下面の流れを乱さず、また本考案による翼型の凹部3に生じる渦領域31以後の外部流れを理想的な流線形とするためには、本考案による翼型における第二の丘状突起部2の頂点の位置は翼弦長の70%の位置の近傍にあって、なおかつ当該第二の丘状突起部2はなだらかな傾斜を持って下り、本考案による翼型の後縁における高さが当該前縁における高さと略同じ高さになっている必要があることが同じく可視化装置を用いた流れの可視化実験により明らかにされている。
以上示した図1においてまとめる本考案による翼型の構成を備えることにより、レイノルズ数が10の4乗を割るような極端な低速流において、望ましい外部流れの形状をした翼型をそのまま直接低速流れに入れてしまえば粘性の影響により当該望ましい外部流れの形状をした翼型の最大高さ付近において当該外部流れに剥離が生じてしまうことにより理想的な外部流れの形状を実現することができないものとなるところ、必ずしも本考案による翼型が当該望ましい外部流れの形状に一致するものではないにもかかわらず、本考案による翼型の前縁部に設けられた第一の丘状突起部により渦を強制的に発生させ、当該発生した渦を第二の丘状突起部との間に形成される凹部において維持することで、本考案による翼型周りの流れを理想的な翼型状の外部流れとすることができるため、超小型飛翔体の翼において要求される第一の機能である高揚力、低抵抗特性の確保を実現することができる。
また、本考案によれば、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さを有する位置を当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の勾配に、当該第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により当該翼の高さを減じ、当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして当該翼の前端から当該翼の翼弦長の75%以下の位置において当該翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部をさらに設けることにより、大迎角においても理想的な外部流れを実現することができる。
第一の丘状突起部、第二の丘状突起部、加えて当該第一および第二の丘状突起部の間に設けられた凹部により構成される既述の翼型においては、迎角が小さいときには当該翼型周りに理想的な外部流れを実現することができるものの、大迎角の条件においては、必ずしも後縁に至るまで理想的な外部流れを実現することが困難なものとなる問題を挙げることができるが、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さを有する位置を当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、加えて当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の勾配に、当該第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により当該翼の高さを減じ、当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして当該翼の前端から当該翼の翼弦長の75%以下の位置において当該翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部を設けることにより、大迎角においても当該翼型の外部流れのエネルギを当該翼型における翼面上の流れのエネルギとして取り込み、また当該翼面上の流れのエネルギを後縁に至るまで維持することにより、大迎角の条件においても理想的な外部流れを実現することができる。
大迎角の条件において、外部流れのエネルギを当該翼型の翼面上の流れのエネルギとしてできるだけ多く取り入れるためには、第二の丘状突起部の最大高さ位置をできるだけ前方に配置するよう設けることが有効であるが、一方で、当該第二の丘状突起部を極端に前方に配置するよう設けるものとすれば、たとえ外部流れのエネルギを当該翼型の翼面上の流れのエネルギとして取り入れることができたとしても、当該翼面上の流れのエネルギを当該第二の丘状突起部の最大高さ位置以後の後縁に至るまでの翼面上の流れにおいて維持することが難しくなるものといえる。もちろん、この際、当該翼面上の流れのエネルギあるいは活性度を維持するために、当該翼面により多くの凸凹部を設けるものとすることができるが、当該超小型機の翼型において多くの凹凸部を設けるものとすることは製作あるいは加工上困難であり好ましくない。
当該翼面に設ける比較的大きな突起部を二つに限定した最小限の構成要素による構成の範囲では、図2にまとめて示すように、第二の丘状突起部2の最大高さ位置を概ね翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設けることにより、当該翼型の外部流れより当該翼面上の流れに大きなエネルギを吸収して当該翼面上の流れを活性化することによって、また、第二の丘状突起部2の後方に連続して第二の凹部4をさらに設けることにより、当該外部流れのエネルギを吸収した渦が当該渦の回転エネルギを維持したまま第二の丘状突起部2の最大高さより急峻な傾斜面上を落ち込んで第二の凹部4へと流れる良好な流れを確保するとともに、第二の凹部4以降の流れにおいては第二の凹部4における良好な流れに乗った渦が当該翼の後縁部上面を流れの活性を維持して流れるよう設けることによって、大迎角においても剥離を生じることのない理想的な当該翼型周りの外部流れを実現して当該翼型において高揚力、低抵抗特性の確保を実現することができる。なお、これらの構成の効果は既述の可視化実験装置を用いた可視化実験により確認されているものであるが、当該可視化実験においては、第二の凹部4以後の後縁部における当該翼の高さは当該翼の最大高さの四分の一程度に設けることが理想的であることが明らかにされている。
また、本考案によれば、当該第二の凹部の後端部に上方へ突出する小突起をさらに設けることにより、大迎角の条件における翼型後縁部上面への外部流れの逆流を防いで、さらなる大迎角においても理想的な外部流れを維持することができる。
すなわち、翼型によらず、迎え角を大きくとれば翼型後縁部上面への外部流れの逆流が生じ、当該逆流の勢いは迎え角の増加につれて増す傾向にあるものであるが、図3に示す本考案による当該外部流れの逆流防止用の堰としての機能を有する上方へ突出する形状の小突起5を設けることにより、当該外部流れの逆流を防止してさらなる大迎角の条件においても理想的な外部流れを維持することができるため、超小型飛翔体の翼において要求される第一の機能である高揚力、低抵抗特性の確保を実現することができる。
なお、本考案に基づく翼断面形状は、ある程度の自由度を持つため、当該翼の断面形状を翼幅方向に若干変更することが可能であり、このため当該翼全体として、当該翼を3次元シェル構造的に成形することが可能となるから、本考案による翼型によれば、従来知られていた曲板翼に比べると飛躍的に翼の剛性を向上させることができることは明らかであり、これにより超小型飛翔体の持つ翼において要求される既述の四つの機能のうちの第二の機能である翼の剛性の確保について満足することができることは以上に示した本考案による翼型において共通する効果である。
さらに、以上に示した本考案による翼型によれば、超小型飛翔体の持つ翼において要求される既述の四つの機能のうちの第三の機能である左右の翼の多少の製作誤差を許容して空力的に鈍感な翼とする機能および同じく超小型飛翔体の持つ翼において要求される既述の四つの機能のうちの第四の機能である飛行安定性を向上させる機能を備えることにより理想的な超小型飛翔体の翼を実現することができる。
超小型飛翔体の持つ翼において要求される既述の四つの機能のうちの第三の機能である左右の翼の多少の製作誤差を許容して空力的に鈍感な翼とする機能について、曲板翼においては、当該曲板翼の最大高さ位置付近から始まる外部流れの剥離により生じる死水域の形成が当該曲板翼の形状に大きく依存するものであるために、当該曲板翼の左右の翼における微妙な形状の差異が当該左右の翼において生じる揚力および抗力の差異を直接に生み出すこととなって当該超小型飛翔体の直進性を大きく損なうこととなるのに対し、本考案の翼型による翼によれば、当該超小型飛翔体の翼のスパン方向の全幅にわたって同一の回転中心軸を有する単一の渦を左右の翼により共同で形成して共有することができるため、当該超小型飛翔体の左右の翼において略均等な強さの渦を同時に発生させることが可能であり、このため当該左右の翼の形状の多少の差異に直接の影響を受けることなく当該左右の翼において略等しい揚力および抗力を生じさせることができることから、超小型飛翔体の左右の翼の多少の製作誤差を許容して、言い換えれば翼を空力的に鈍感なものとすることにより当該左右の翼の生ずる空気力を略等しいものとして、超小型飛翔体の直進性を向上させることができる。
また、本考案による翼型を用いることにより、超小型飛翔体の持つ翼において要求される既述の四つの機能のうちの第四の機能である飛行安定性を向上させる機能を実現することができることについて、当該考案の効果を明らかにするための実験の結果として、本考案の翼型による翼を備えた滑空機と曲板翼を備えた滑空機とを図10に示す1.2m/sで送風をおこなう送風機の送風口40に向かって同一のスプリング式射出機を用いて4m/sで各々射出する実験をおこなった際の当該各々の滑空機の飛行の軌跡(本考案の翼型による翼を備えた滑空機の飛行の軌跡41および曲板翼を備えた滑空機の飛行の軌跡42)を比較して表わす当該滑空試験の結果の説明図を図10において示す。当該滑空試験では図10に示すとおり、曲板翼を備えた滑空機は向かい風にあおられて急激に浮き上がってしまい、風路から外れて姿勢を変え、送風機の送風口40に達することなく送風機の送風口40の手前で落下してしまう結果となった。一方、本考案の翼型による翼を備えた滑空機においては、向かい風にあおられても進路を変えることがなく、減速するまで直進を続け、送風機の送風口40に到達することができた。
この実験の結果を見るに、図10に示す当該滑空試験における各々の滑空機の飛行の軌跡の差異は、本考案の翼型による翼と曲板翼による翼との翼特性の差異に基づいて生じるものであって、当該曲板翼による翼は、当該曲板翼の最大高さ位置付近から始まる外部流れの剥離により生じる死水域が当該送風機の創出する向かい風がもたらす加速流によって吹き飛ばされることにより、当該曲板翼の外部流れが突然に当該曲板翼の翼面に沿って流れることとなるために、急激な揚力の増加が生じて飛行を不安定なものとしてしまう翼特性を有するものであるのに対し、本考案の翼型による翼においては、そのような死水域が生じることがないために、当該送風機の創出する向かい風による加速流を受けた際にも急激な揚力の増加が引き起こされて飛行の安定を乱されてしまうということがなく、本考案による翼型は、超小型飛翔体の翼に優れた飛行安定性を与えることができるものであるということができる。なお、このように曲板翼において、外部流れの剥離により生じた死水域が加速流によって吹き飛ばされることに起因して当該外部流れが急激に変化する流れの遷移の現象は、当該曲板翼を水流に対して加速した際の当該外部流れの変化の様子を既述の可視化装置を用いて可視化する方法による流れの再現実験によって実験的に確認されている。
より詳しく、加速流に対する本考案による翼型周りの流れの変化の様子について考察すれば、図8に示す本考案の翼型による翼30を水流に対して加速した際の流れの変化の様子を既述の可視化装置を用いて可視化した当該流れの変化の様子をあらわす説明図である図9において見ることができるように、当該加速流の影響を受ける本考案の翼型による翼の周りの流れにおいては、先ず、本考案の翼型による翼において前縁に設けられた第一の丘状突起部1が当該加速流に対して防壁の役割を果たすことにより当該第一の丘状突起部1の後方に位置する凹部3に生じる渦流れ31が吹き飛ばされてしまうことがなく、さらに本考案による翼型周りの渦流れが加速に応じて渦の強さを増すために、加速する外部流れと当該渦の強さを増す渦流れとの相対的な圧力関係のバランスが維持されることで、本考案による翼型周りの流れの形状に大きな変化が生じてしまうことがないものといえる。もっとも、極端に大きな加速流に対しては、当該渦流れと外部流れとの流れのバランスが崩れる場合についても観察されているが、この場合においても本考案による翼型は図9において破線を用いて示すように専ら渦流れ31の渦の強さが増すことに起因して外部流れの流線が乱されることにより揚力係数が僅かに低下するとともに抗力が増加する傾向を示し、曲板翼とは大きく異なった翼特性を有するものである。よって本考案による翼型によれば、加速流を受けた際の揚力の増加が比較的緩やかなものにとどまることから、曲板翼のように急激に揚力係数を増してしまうことがなく、安定した飛行を維持することができる優れた超小型飛翔体の翼を実現することができるものということができる。
これに加えて、本考案の翼型による翼によれば、超小型飛翔体の飛行において、ヨーイング方向およびローリング方向の飛行安定性を向上させることができるものということができる。具体的に、例えば、超小型飛翔体が機首を右に向けて横滑り飛行を始めた場合を考えるときに、曲板翼においては、当該曲板翼の最大高さ位置付近から始まる外部流れの剥離により生じる死水域が、当該超小型飛翔体の左翼側においてのみ生じる当該右横滑り開始に伴う加速流により当該超小型飛翔体の左翼側においてのみ吹き飛ばされることとなる結果、当該超小型飛翔体の左翼側においてのみ揚力が急激に増加することとなるとともに、当該左翼側においてのみ急激に抗力が減少することとなるから、当該超小型飛翔体は右ロールおよび追加的な右ヨーイング運動をすることとなって方向不安定を生じてしまうこととなるのに対して、本考案の翼型による翼においては、加速流に対して既述のとおり揚力を比較的緩やかに増す特性を有するが、同時に左翼の抵抗も増す特性を有するため、当該右ヨーイング運動を止めようとする機体ヨー軸周りの回転に対する復元モーメントを発生する特性を有することになる。従って、本考案による翼型によれば、翼に直進安定性を向上させる翼特性を与えることにより理想的な超小型飛翔体の翼を実現することができる。
また、本考案によれば、当該翼の後縁端の高さを当該第二の丘状突起部の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、当該翼に逆キャンバー特性を付与することができる。当業界においてよく知られているように、無尾翼形式の飛翔体において用いる翼型では、縦の安定を確保するために、翼断面に逆キャンバー(下に凸に設けられた翼弦線の反り)を付加して設けることが必要であるが、本考案による翼型においては、図4および図5において示すように、当該翼の後縁端の高さを当該第二の丘状突起部2の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、本考案による翼型に逆キャンバー特性を付与することができる。
図4は本考案による翼型すなわち、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成した翼型の当該翼の後縁端の高さを当該第二の丘状突起部の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、当該翼型に逆キャンバー特性を付与した無尾翼形式の飛翔体用の翼型について示す説明図である。図4に示す無尾翼形式の飛翔体に用いることを目的として逆キャンバー特性を備えた本考案による翼型においては、第二の丘状突起部2の最大高さ位置から後方に向かって略水平に翼の高さが推移するように翼後縁形状が設けられており、これにより凹部3における翼の形状が元来備える逆キャンバー特性を翼特性に生かすものとする優れた構成の翼断面形状構成により逆キャンバー特性を備えた翼型が実現されている。
また図5は本考案による翼型すなわち、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成した翼型の当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さを有する位置を当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の勾配に、当該第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により当該翼の高さを減じ、当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして当該翼の前端から当該翼の翼弦長の75%以下の位置において当該翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部をさらに設け、当該第二の凹部の後端部に上方に突出する小突起をさらに設けた翼型の当該翼の後縁端の高さを当該第二の丘状突起部の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、当該翼に逆キャンバー特性を付与した本考案による無尾翼形式の飛翔体用の翼型について示す説明図である。図4および図5に示す逆キャンバー特性を備える本考案による翼型について、それぞれ本考案による翼型を備えた無尾翼形式の超小型飛翔体を用いた飛行実験をおこなうことにより、逆キャンバー特性を備えた本考案による翼型が優れた揚抗比と縦安定性とを有することが実験的に確認されている。
以下、本考案の実施の形態について詳述する。図11は、本実施例において示す超小型飛翔体を左翼前上方より見る説明図であり、図12は同じく本実施例において示す超小型飛翔体を右翼後下方より見る説明図である。本実施例に示す超小型飛翔体は全長が145mm、全幅(全スパン長)が190mm、総重量は3.5gfに設けられていて、図11および図12に示すリチウム・イオンバッテリー54、赤外線通信機能を有する制御回路55、超小型モーター56、減速ギア57、アクチュエータ(電磁スイッチ)59がそれぞれカーボン繊維強化プラスチック製の胴枠53に固定されて設けられ、超小型モーター56が駆動する樹脂製のプロペラ58の回転数制御およびアクチュエータ(電磁スイッチ)59に取り付けられた発泡スチロール製のラダー60の駆動制御を赤外線通信を用いた遠隔操作によりおこなうことで、上昇、降下および旋回をおこない自在に飛行することができるように設けられている。
また翼50は、本考案による翼型すなわち、レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%以下の前縁部に当該薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる当該翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、当該第一の丘状突起部の後方に当該第一の丘状突起部に連続して最低高さが当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、当該凹部に連続して当該凹部の後方の当該翼の前端から当該翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に当該翼の最大高さを有し、当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成した翼型の当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さを有する位置を当該翼の前端から当該翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、当該第二の丘状突起部の当該翼の最大高さより当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに当該翼の高さを減ずる形状の勾配に、当該第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により当該翼の高さを減じ、当該翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして当該翼の前端から当該翼の翼弦長の75%以下の位置において当該翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部をさらに設けた翼型を備えるようにプレス金型を用いて3次元プレス成型加工されたカーボン繊維強化プラスチック製の翼枠51に軽量高強度の雁皮紙により成る翼膜52を接着することで設けられた製作容易かつ軽量、高剛性な翼構造により構成され、既述のとおり優れた翼特性を有する超小型飛翔体において理想的な翼が実現されている。
本実施例に示す超小型飛翔体は極めて軽量であり、また比較的低速で飛行するものであるため、翼全面に亘って高剛性の材料により構成する必要はない。本実施例において示すように、スパン方向に適当な間隔を設けて高剛性の部材を設け、その間を軽量な翼膜で覆う構造とすれば十分である。本実施例に示す翼50は、発泡スチロールにより製作した翼と略同等の質量によりながら、格段に高い強度、耐久性および剛性を備えるものであるため、当該優れた翼特性と相俟って単なるホビー・ユースに留まることなく、有用な超小型・超軽量飛翔体を実現することができる。なおもちろん、本考案による翼型を実現するものであれば、当該超小型飛翔体の翼は目的に応じてどのような翼構造および翼材料によるものともすることができる。
以上示した本実施例による超小型飛翔体が風に強いことを証明するために、外気温10度以下の冬において、講堂内を暖房する大型のエアコンの吹き出し口付近を含めて本実施例に示す超小型飛翔体の飛行実験をおこなったところ、本実施例に示す超小型飛翔体は当該講堂内を自在に飛行することができ、当該エアコンの吹き出し口の真下を通過した際にも高度を落とすだけで大きな姿勢の変化を見せることがなく、当該高度も間もなく回復することができた。また、本実施例による超小型飛翔体の操縦において、小舵を用いた操縦をおこなう際には、旋回を伴うことなく機首を任意の目標に向けたまま当該目標の方向へ大きく飛行方向を変更することができるという優れた安定性および操縦性を有することが確認された。
本考案による翼型を用いることで、高い剛性および強度を備えた超小型飛翔体の翼を安価に実現することができるため、ホビー・ユースにおいて用いられる超小型飛翔体の他、災害およびテロ対策、宇宙開発における地球外天体の観測等において用いられる偵察、観測用の超小型飛翔体を好適に実現することができる。例えば、宇宙開発用途における火星の観測活動においては、火星大気中におけるレイノルズ数が地球大気中におけるレイノルズ数に比べて一桁小さいものとなることから、本考案による翼型を用いることが必要とされているものということができる。また本考案による翼型を用いた超小型飛翔体の翼は外乱に強く優れた空力特性を有することから、屋外での飛行運用等従来の超小型飛翔体において実現することができなかった新しい超小型飛翔体の運用形態を実現することができるものということができるため、屋外の遠隔地における情報の取得や伝達等の新しい運用ニーズに対応することができる。さらに、本考案による翼型を用いた超小型飛翔体によれば、小型軽量かつ極めて安価な超小型飛翔体を大量に量産することにより、多数の当該極めて安価な超小型飛翔体を一群として同時に運用することができる等、従来の運用方法を超えた超小型飛翔体の新しい運用形態を開拓して実現することができる本考案の産業上の利用可能性を有するものといえる。
本考案による翼型を示す説明図である。 本考案による翼型を示す説明図である。 本考案による翼型を示す説明図である。 本考案による翼型を示す説明図である。 本考案による翼型を示す説明図である。 低レイノルズ数用の流れの可視化装置を用いて観測した流れの様子を示す説明図である。 低レイノルズ数用の流れの可視化装置を用いて観測した曲板翼周りの流れの様子を示す説明図である。 低レイノルズ数用の流れの可視化装置を用いて観測した本考案による翼型周りの流れの様子を示す説明図である。 低レイノルズ数用の流れの可視化装置を用いて観測した本考案による翼型周りの流れの様子を示す説明図である。 本考案による翼型を備えた滑空機と曲板翼を備えた滑空機との飛行の安定性の差異を明らかにする実験の様子を示す説明図である。 本考案による翼型を用いた超小型超軽量の飛翔体を示す説明図である。 本考案による翼型を用いた超小型超軽量の飛翔体を示す説明図である。
符号の説明
1:第一の丘状突起部
2:第二の丘状突起部
3:(第一の)凹部
4:第二の凹部
5:小突起
10:可視流れ(大粒径トレーサーによる)
11:可視流れ(小粒径トレーサーによる)
20:曲板翼の翼型模型
21:死水域
30:本考案の翼型による翼型模型
31:翼上面の渦領域(強い循環)
32:翼下面の渦領域(弱い循環)
40:送風機の送風口
41:本考案の翼型による翼を備えた滑空機の飛行の軌跡
42:曲板翼を備えた滑空機の飛行の軌跡
50:翼
51:翼枠
52:翼膜
53:胴枠
54:バッテリー
55:制御回路
56:モーター
57:減速ギア
58:プロペラ
59:アクチュエータ(電磁スイッチ)
60:ラダー

Claims (4)

  1. レイノルズ数が10の4乗以下の領域において飛行する薄板を折り曲げて形成する翼において、前記翼の前端から前記翼の翼弦長の25%以下の前縁部に前記薄板を折り曲げることによって前方からの流れを持ち上げる前記翼の前端の高さよりも高い第一の丘状突起部を形成し、前記第一の丘状突起部の後方に前記第一の丘状突起部に連続して最低高さが前記翼の前端部の最低高さに概ね一致する凹部を形成し、前記凹部に連続して前記凹部の後方の前記翼の前端から前記翼の翼弦長の70%を離間した位置の近傍に前記翼の最大高さを有し、前記翼の最大高さより前記翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに前記翼の高さを減ずる形状の第二の丘状突起部を形成したことを特徴とする翼型。
  2. 前記第二の丘状突起部の前記翼の最大高さを有する位置を前記翼の前端から前記翼の翼弦長の25%から60%までの範囲の位置に設け、前記第二の丘状突起部の前記翼の最大高さより前記翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さまで緩やかに前記翼の高さを減ずる形状の勾配に、前記第二の丘状突起部の前面の傾斜よりも急な傾斜により前記翼の高さを減じ、前記翼の前端部の最低高さに概ね一致する高さを最低高さとして前記翼の前端から前記翼の翼弦長の75%以下の位置において前記翼の最大高さの四分の一程度の高さを有する形状の第二の凹部をさらに設けたことを特徴とする請求項1に記載の翼型。
  3. 前記第二の凹部の後端部に上方へ突出する小突起をさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載の翼型。
  4. 前記翼の後縁端の高さを前記第二の丘状突起部の最大高さと略同じ高さに変更して設けることにより、前記翼に逆キャンバー特性を付与したことを特徴とする請求項1から請求項3までに記載の翼型。
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