JP3128318B2 - カチオン染料可染性ポリエステル極細繊維の製造方法 - Google Patents

カチオン染料可染性ポリエステル極細繊維の製造方法

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JP3128318B2 JP04093710A JP9371092A JP3128318B2 JP 3128318 B2 JP3128318 B2 JP 3128318B2 JP 04093710 A JP04093710 A JP 04093710A JP 9371092 A JP9371092 A JP 9371092A JP 3128318 B2 JP3128318 B2 JP 3128318B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カチオン染料可染性ポ
リエステル極細繊維の製造方法に関する。詳細にはカチ
オン染料可染性で、しかも力学的特性、製糸性、風合等
の物性に優れたポリエステル極細繊維の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は強度が大きく、化学
的に安定であり、しかも寸法安定性、プリ−ツ保持性、
防しわ性等に優れていて種々の良好な特性を有すること
から、衣料用、産業資材用として汎用されている。しか
しながら周知のように、ポリエステル繊維は染色性に劣
り、分散染料以外の染料では染色が困難である。
【0003】そこで、ポリエステル繊維の染色性を改良
する方法が種々提案されている。その一つとして、5−
ナトリウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸金属塩基
を有するイソフタル酸成分をポリエステルに共重合させ
て、カチオン染料による染色を可能にする方法が従来か
ら知られている(例えば特公昭34−10497号公
報)。
【0004】また、ポリエステル繊維からなる織編物に
独特のソフトな風合を付与するために、単糸繊度を小さ
くすることも知られており、この場合、2000〜40
00m/分の高速紡糸を利用して単糸繊度が0.1〜
1.0デニ−ルの極細繊維が製造されている。
【0005】しかしながら、上記のスルホン酸金属塩基
を有するイソフタル酸成分を共重合させたポリエステル
は、スルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成分が重
合反応中に大きな増粘作用を示すため、生成するポリエ
ステル共重合体の重合度が十分高くならないうちに重合
系の粘度が著しく増大して、その重合度を十分に上げる
ことができない。したがって、得られるポリエステル共
重合体の溶融紡糸が困難であり、特に高速紡糸を利用し
て単糸繊度が0.1〜1.0デニ−ルの極細繊維を製造
しようとしても、曳糸性が極めて悪く、紡糸中に単糸切
れが多発して紡糸が不能であったり、例え紡糸できたと
しても、得られた糸は力学的特性が著しく低く、使用に
耐えられないものである。
【0006】ポリエステルの高速紡糸において、断糸発
生等の紡糸不良を改善する方法として、紡出糸条近傍の
雰囲気温度を調節して冷却する方法が提案されている
(例えば特開昭56−140116号公報、特開昭61
−47817号公報)。
【0007】しかし、本発明者らの追試によれば、この
方法は、通常繊維化に適する重合度を有するポリマ−に
は有効ではあるが、増粘作用の大きいスルホン酸金属塩
基を有するイソフタル酸成分を共重合させたポリエステ
ルには必ずしも有効な手段ではなく、高強度の繊維を得
るために、かかる共重合ポリエステルの重合度を高めた
場合はかえって、紡糸が不可能であった。
【0008】また、ポリエステルをカチオン染料可染性
にする別の手段として、スルホン酸ホスホニウム塩基を
有するイソフタル酸成分をポリエステルに共重合させる
方法が知られ(例えば特公昭47−22334号公
報)、かかる共重合ポリエステルからなる極細繊維の製
造方法も提案されている(特開昭63−211322号
公報)。
【0009】しかし、この方法では、スルホン酸金属塩
基を有するイソフタル酸成分を共重合させたポリエステ
ル特有の増粘作用による紡糸不良は解消されるが、スル
ホン酸ホスホニウム塩基を有するイソフタル酸成分の耐
熱性が、スルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成分
に比べて劣っているため、熱セット、染色等の工程にお
いて繊維の強度が著しく低下する欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、カチオン染料可染性であり、しかも力学的特
性、製糸性、鮮明性等に優れたポリエステル極細繊維の
製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らの検討の結
果、従来のスルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成
分を共重合させたポリエステルに、ガラス転移点降下剤
と固体微粒子の両者を含有させると、それらの相乗効果
でポリエステルの曳糸性が著しく改善されること、さら
に特定の紡糸条件で紡糸することにより高品質のカチオ
ン染料可染性極細繊維が得られることが見出だされたの
である。
【0012】すなわち、本発明は、ガラス転移点降下剤
が1〜5重量%および固体微粒子が0.1〜1.0重量
%含有されてなるスルホン酸塩基を有する芳香族ポリエ
ステルを、3000m/分以上の引取速度で溶融紡糸し
て、単糸の平均繊度が1デニ−ル以下の繊維を製造する
に際し、溶融紡糸を下記式およびを満足する条件下
で行うことを特徴とするカチオン染料可染性ポリエステ
ル極細繊維の製造方法である。
【数3】T↓H −T↓N <20
【数4】250≦T↓A <T↓H [ただし、T↓H は紡糸温度(℃)、T↓N は紡糸ノズ
ルの温度(℃)、T↓Aは紡糸ノズル直下から30cm
の範囲内の雰囲気温度(℃)]
【0013】本発明における「スルホン酸塩基を有する
芳香族ポリエステル」とは、テレフタル酸を主としてな
る酸成分と、少なくとも一種のグリコ−ル成分とから得
られた芳香族ポリエステルであって、かつ該ポリエステ
ル中にスルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が共重
合されているポリエステルをいう。グリコ−ル成分とし
ては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ルお
よびテトラメチレングリコ−ルのうちの少なくとも一種
を使用するのが好ましく、特に該芳香族ポリエステルが
主としてエチレンテレフタレ−ト単位および/またはブ
チレンテレフタレ−ト単位からなるものが好ましい。
【0014】本発明における芳香族ポリエステルは、必
要に応じてテレフタル酸成分、スルホン酸塩基を有する
ジカルボン酸成分、グリコ−ル成分以外の他の共重合成
分を含んでいてもよく、その場合、該他の共重合成分の
割合は通常、全ジカルボン酸成分の約10モル%以下と
するのが望ましい。
【0015】芳香族ポリエステルに共重合させるスルホ
ン酸塩基を有するジカルボン酸成分としては、5−ナト
リウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフ
タル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等スルホン酸
金属塩基を有するイソフタル酸;5−テトラブチルホス
ホニウムスルホイソフタル酸、5−エチルトリブチルホ
スホニウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸ホスホニ
ウム塩基を有するイソフタル酸などを挙げることがで
き、それらのうちで5−ナトリウムスルホイソフタル酸
が好ましい。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分
は、1種類のみを芳香族ポリエステルに共重合させて
も、または2種類以上を共重合させてもよい。
【0016】スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分
の芳香族ポリエステルへの共重合比率は芳香族ポリエス
テルを構成する全カルボン酸成分に対して、1.2〜
2.0モル%であることが好ましい。スルホン酸塩基を
有するジカルボン酸成分の共重合割合が1.2モル%未
満の場合、カチオン染料で染色したときに鮮明で良好な
色調になるカチオン染料可染性ポリエステル繊維を得る
ことができない。一方、スルホン酸塩基を有するジカル
ボン酸成分の共重合割合が2.0モル%を越えると、ポ
リエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難になり、し
かもカチオン染料の染着座席の増加により繊維に対する
カチオン染料の染着量が過剰になって色調の鮮明性がむ
しろ失われる。染色物の鮮明性および紡糸性等の点か
ら、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分の共重合
割合は1.5〜1.7モル%であるのがより好ましい。
【0017】上記の芳香族ポリエステルは任意の方法で
合成することができる。例えば、エチレンテレフタレ−
ト単位を主とするポリエステルの場合は、スルホン酸塩
基を有するジカルボン酸成分を一成分として、テレフタ
ル酸とエチレングリコ−ルとを直接エステル化反応させ
るか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレン
グリコ−ルとをエステル交換反応させるか、またはテレ
フタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかして、
テレフタル酸のグリコ−ルエステルおよび/またはその
低重合体を生成し、それを減圧下に加熱して所望の重合
度になるまで重縮合反応させるという、通常の合成方法
により製造することができる。
【0018】本発明において、スルホン酸塩基を有する
ジカルボン酸成分の添加時期は、ポリエステル中に共重
合成分として導入され得る時期であれば何時でもよく、
例えばポリエステルの合成原料に加えても、エステル交
換後で重合前に加えてもよい。
【0019】本発明では繊維を構成するスルホン酸塩基
を有する芳香族ポリエステルが、ガラス転移点降下剤
(以下、Tg降下剤という)と固体微粒子を含有するこ
とが必要である。スルホン酸塩基を有する芳香族ポリエ
ステルに、Tg降下剤と固体微粒子を含有させることに
より、該ポリエステルの曳糸性が著しく改善されるので
ある。
【0020】本発明におけるTg降下剤とは、スルホン
酸塩基を有する芳香族ポリエステル中にTg降下剤を2
重量%添加した時に、Tg降下剤を添加しない場合に比
べて、該ポリエステルのガラス転移点温度を2℃以上降
下させる性質を有する添加剤のことをいう。その際の芳
香族ポリエステルのガラス転移点温度は、示差走査熱量
計等により容易に測定することができる。本発明では、
Tg降下剤として、それを2重量%添加した時にスルホ
ン酸塩基を有する芳香族ポリエステルのガラス転移点温
度を2℃以上降下させることのできる添加剤であればい
ずれのものも使用できるが、下記一般式(I);
【0021】
【化2】R↓1 O−X−OR↓2 (I) (式中、Xは芳香族基、R↓1 およびR↓2 は炭素数6
〜18のアルキル基またはアリ−ルアルキル基を表す)
で表される化合物の少なくとも1種を使用するのが好ま
しい。
【0022】上記の一般式(I)で表される化合物にお
いて、芳香族基Xの好ましい例としては、下記の式(I
I)〜(IX)で表される2価の基を挙げることができ
る。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】そして、本発明で使用するのに適するTg
降下剤の具体例としては、例えば下記式の一般式(X)
〜(XIII)で表される化合物を挙げることができ
る。
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】Tg降下剤の含有量は、スルホン酸塩基を
有する芳香族ポリエステルの重量に対して、1〜5重量
%の範囲である。Tg降下剤の含有量が1重量%未満の
場合、曳糸性向上の効果が発現せず、5重量%を越える
場合、ポリエステルの着色が生じたり、染色堅牢度が低
下する。Tg降下剤の含有量が2〜4重量%であること
が好ましい。
【0037】また、固体微粒子としては、平均粒径が1
5〜70mμの無機微粒子が好ましい。固体微粒子の粒
径が15mμ未満の場合、得られる繊維の摩擦耐久性が
不足し、70mμを越える場合、繊維がフィブリル化し
易くなり好ましくない。固体微粒子は、アルミコ−ト、
アルキル基導入等により表面が改質されていてもよい。
固体微粒子の屈折率は特に限定されないが、繊維のブラ
イティシュな透明性を保持したい場合は、芳香族ポリエ
ステルの屈折率よりも小さい、屈折率が1.65以下の
固体微粒子を使用するのが好ましい。繊維のブライティ
シュな透明性を保持しながら、屈折率が1.65以下の
固体微粒子と屈折率が1.65を越える固体微粒子とを
併用することもできる。本発明で使用する固体微粒子と
して、屈折率が1.65以下のシリカ、アルミナ、カオ
リン、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。特
に、繊維の透明性、カチオン染料特有の鮮明性を奏する
ためには平均粒径が15〜70mμで屈折率が1.65
以下のシリカが好ましい。
【0038】固体微粒子の含有量は、スルホン酸塩基を
有する芳香族ポリエステルの重量に対して、0.1〜
1.0重量%の範囲である。固体微粒子の含有量が0.
1重量%未満の場合、Tg降下剤との相乗効果による良
好な曳糸性が発現せず、1.0重量%を越える場合、か
えって曳糸性の改善効果が低下する。固体微粒子の含有
量が0.3〜0.5重量%であることが好ましい。
【0039】Tg降下剤および固体微粒子のスルホン酸
塩基を有する芳香族ポリエステルへの添加時期や添加方
法は特に限定されない。例えば、Tg降下剤と固体微粒
子は同時に添加しても、または全く別の時点で添加して
もよい。また、Tg降下剤と固体微粒子は、スルホン酸
塩基を有する芳香族ポリエステルの重合前または重合後
の適当な時点で添加してもよいし、あるいは溶融紡糸時
に添加してもよい。
【0040】本発明においては、Tg降下剤を含有した
スルホン酸塩基を有する芳香族ポリエステルの固有粘度
[η]が0.5以上であることが好ましい。固有粘度が
0.5未満の場合、得られる繊維の力学特性、特に強度
が不足するので好ましくない。固有粘度[η]は0.6
以上であることがより好ましい。該芳香族ポリエステル
の固有粘度[η]は芳香族ポリエステルをフェノ−ル/
テトラクロロエタン(重量比1:1)の混合溶媒中に溶
解して30℃で測定した時の値である。
【0041】本発明においては、上記の芳香族ポリエス
テルを3000m/分以上の引取速度で溶融紡糸するこ
とにより、単糸の平均繊度が1デニ−ル以下、好ましく
は0.8デニ−ル以下、より好ましくは0.6デニ−ル
以下の繊維が得られるのである。同じ芳香族ポリエステ
ルを3000m/分未満の引取速度で溶融紡糸しても、
単糸の平均繊度が1デニ−ル以下の繊維は得られない。
本発明における単糸の平均繊度とは、未延伸状態の繊維
の繊度のことを示す。従来のカチオン染料可染性ポリエ
ステルでは曳糸性が著しく劣り、平均繊度が1デニ−ル
以下のフィラメントを得ることはできなかった。
【0042】本発明において、得られる極細繊維の強度
は3.5g/デニ−ル以上、特に4.0g/デニ−ル以
上であり、従来のカチオン染料可染ポリエステルから得
られる繊維の強度2.5〜3.5g/デニ−ルに比べ、
著しい向上が見られ、用途展開が容易になる。
【0043】上記の芳香族ポリエステルを3000m/
分以上の引取速度で溶融紡糸するに際し、下記式およ
びを満足するように紡糸する。
【0044】
【数5】T↓H −T↓N <20
【数6】250≦T↓A <T↓H [ただし、T↓H は紡糸温度(℃)、T↓N は紡糸ノズ
ルの温度(℃)、T↓Aは紡糸ノズル直下から30cm
の範囲の雰囲気温度(℃)]
【0045】紡糸温度と紡糸ノズルの温度との差が20
℃以上の場合、紡糸ノズルから吐出された未延伸状態の
繊維が前配向しており、曳糸性が低下する。温度差は1
5℃未満、特に紡糸温度と紡糸ノズルの温度が同じであ
ることが好ましい。
【0046】また、紡糸ノズル直下から30cmの範囲
内の雰囲気温度が上記の関係式の下限よりも低いと、
紡糸ノズルから吐出された未延伸状態の繊維が前配向し
ており、曳糸性が低下する。かかる雰囲気温度を保持す
るための手段として、例えば円筒型、平板型等の加熱部
を設けることが挙げられる。この雰囲気温度を制御する
区間が30cmを越える場合、紡糸中の繊維の重合度低
下が大きくなり、紡糸性に問題が生ずる。好ましい区間
は紡糸ノズル直下から20cmの範囲内である。
【0047】ここで、紡糸温度(T↓H )とは紡糸ヘッ
ド部の温度であり、紡糸ノズル温度(T↓N )とは紡糸
ノズルの表面温度である。また、紡糸ノズル直下から3
0cmの範囲内の雰囲気温度(T↓A )は熱電対により
走行繊維束の外周から10mm離れた位置で測定した値
である。
【0048】このようにして得られた繊維は、必要に応
じて延伸、熱処理、仮撚加工等を施すことができる。
【0049】
【作用】本発明において、例えばスルホイソフタル酸ナ
トリウム等のスルホン酸塩基を有する芳香族ポリエステ
ルから極細繊維が製造でき得る機構は明確ではないが、
次のように推定される。すなわち、Tg降下剤がポリエ
ステルの分子鎖中に分散して、分子鎖間のイオン性結合
を抑制するため、ポリエステルの分子鎖のモビリティが
向上し曳糸性が著しく良好になる。しかし、Tg降下剤
の作用だけでは必ずしも高速溶融紡糸が可能とはならな
い。ところが、固体微粒子をTg降下剤と共に繊維中に
含有させると、予想外にも、曳糸性が著しく改善され、
高速での極細繊維の製造が可能になったのである。
【0050】また、Tg降下剤はポリエステルの分子鎖
間のイオン性結合を抑制する作用を有することから、ス
ルホン酸塩基を有する芳香族ポリエステルの増粘が少な
く、従来のカチオン染料可染性ポリエステルに比べて固
有粘度を高くして紡糸することができる。したがって、
例えば強度、引き裂き強力等の力学特性の優れた極細繊
維が得られる。このようにして得られた極細繊維はスポ
−ツ衣料等の分野に好適に使用することができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はそれにより何ら限定されない。実施例
中、芳香族ポリエステルの固有粘度[η]は、上記した
ように、フェノ−ル/テトラクロロエタン(重量比1:
1)の混合溶媒中に溶解して30℃で測定した時の値で
あり、得られた極細繊維の強度はJIS L 1013
に準拠して測定した値である。
【0052】実施例1 ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタ
ル酸ジメチル(以下、SIPと略称する)を1.7モル
%含有するテレフタル酸ジメチルおよびエチレングリコ
−ルを使用して、エステル交換法により常法にしたがい
重合を行って、固有粘度[η]が0.63のポリエステ
ルを製造した。その際、エステル交換後の重合後期に一
般式(XII)で表されるTg降下剤を2重量%、およ
び平均粒径30mμで屈折率1.55のシリカを0.3
重量%添加した。得られたポリエステルのチップを使用
して、紡糸温度305℃、紡糸ノズル温度293℃、紡
糸ノズル直下から30cmの範囲を円筒加熱部により3
00℃に保持し、引取速度4000m/分で常法により
溶融紡糸して36デニ−ル/72フィラメントの極細繊
維を得た。紡糸状態および得られた繊維の強度を表1に
示す。
【0053】実施例2 一般式(XI)で表されるTg降下剤を使用する以外は
実施例1と同様にして、固有粘度[η]が0.63のポ
リエステルを製造した。実施例1と同様の紡糸条件で紡
糸し、36デニ−ル/72フィラメントの極細繊維を得
た。紡糸状態および得られた繊維の強度を表1に示す。
【0054】実施例3 一般式(XIII)で表されるTg降下剤を使用する以
外は実施例1と同様にして、固有粘度[η]が0.60
のポリエステルを製造した。実施例1と同様の紡糸条件
で紡糸し、36デニ−ル/72フィラメントの極細繊維
を得た。紡糸状態および得られた繊維の強度を表1に示
す。
【0055】比較例1 Tg降下剤および固体微粒子を添加しない以外は実施例
1と同様にして、固有粘度[η]が0.60のポリエス
テルを製造した。実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、
36デニ−ル/72フィラメントの極細繊維を得た。紡
糸状態および得られた繊維の強度を表1に示す。
【0056】比較例2 Tg降下剤を添加しない以外は実施例1と同様にして、
固有粘度[η]が0.53のポリエステルを製造した。
実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、36デニ−ル/7
2フィラメントの極細繊維を得た。紡糸状態および得ら
れた繊維の強度を表1に示す。
【0057】比較例3 固体微粒子を添加しない以外は実施例1と同様にして、
固有粘度[η]が0.55のポリエステルを製造した。
実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、36デニ−ル/7
2フィラメントの極細繊維を得た。紡糸状態および得ら
れた繊維の強度を表1に示す。
【0058】比較例4 実施例1と同様にして、SIPが共重合された固有粘度
[η]が0.60のポリエステルを製造した。得られた
ポリエステルのチップを使用して、紡糸温度305℃、
紡糸ノズル温度280℃、紡糸ノズル直下から30cm
の範囲を円筒加熱部により280℃に保持し、引取速度
3000m/分で常法により溶融紡糸して36デニ−ル
/72フィラメントの極細繊維を得た。紡糸状態および
得られた繊維の強度を表1に示す。
【0059】比較例5 実施例1と同様にして、SIPが共重合された固有粘度
[η]が0.63のポリエステルを製造した。得られた
ポリエステルのチップを使用して、紡糸温度305℃、
紡糸ノズル温度280℃、引取速度3000m/分で常
法により溶融紡糸して36デニ−ル/72フィラメント
の極細繊維を得た。紡糸状態および得られた繊維の強度
を表1に示す。
【0060】比較例6 実施例1と同様にして、SIPが共重合された固有粘度
[η]が0.63のポリエステルを製造した。得られた
ポリエステルのチップを使用して、紡糸温度305℃、
紡糸ノズル温度293℃、引取速度3000m/分で常
法により溶融紡糸して36デニ−ル/72フィラメント
の極細繊維を得た。紡糸状態および得られた繊維の強度
を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】上記表1の実施例1、実施例2および実施
例3の結果から、Tg降下剤およびシリカの添加量が本
発明の範囲内にあり、3000m/分以上の引取速度で
しかも上記の関係式およびで表される条件下で溶融
紡糸を行っている本発明では、繊維強度が4.0g/デ
ニ−ル以上と大きく、かつ紡糸状態も良好であることが
わかる。比較例1、比較例2および比較例3の結果か
ら、Tg降下剤および/またはシリカを含有しない芳香
族ポリエステルを使用した場合には、他の要件が本発明
と同じであっても、紡糸圧力が上昇し、紡糸が不可能で
あったり、単糸切れが多発し紡糸状態が極めて劣ってい
ることがわかる。比較例4、比較例5および比較例6の
結果から、上記のおよびの関係式を満足しない条件
下で紡糸をすると、曳糸性が極めて悪く、巻取が不可能
であることがわかる。
【0063】
【発明の効果】本発明では、特定割合のスルホン酸塩基
を有するカチオン染料可染性芳香族ポリエステルに、特
定量のTg降下剤および固体微粒子を特定量で含有させ
ることにより、3000m/分以上の引取速度、かつ特
定の紡糸温度条件下において極細繊維を製造することが
できる。かかる繊維の紡糸状態は良好で3.5g/デニ
−ル以上の高強度を有する極細繊維が得られる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D01F 6/84 305 D01F 6/84 305C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/84 305 D01F 6/92 301 D01F 6/62 301 D01F 6/62 303

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス転移点降下剤が1〜5重量%および
    固体微粒子が0.1〜1.0重量%含有されてなるスル
    ホン酸塩基を有する芳香族ポリエステルを、3000m
    /分以上の引取速度で溶融紡糸して、単糸の平均繊度が
    1デニ−ル以下の繊維を製造するに際し、溶融紡糸を下
    記式およびを満足する条件下で行うことを特徴とす
    るカチオン染料可染性ポリエステル極細繊維の製造方
    法。 【数1】T↓H −T↓N <20 【数2】250≦T↓A <T↓H [ただし、T↓H は紡糸温度(℃)、T↓N は紡糸ノズ
    ルの温度(℃)、T↓Aは紡糸ノズル直下から30cm
    の範囲内の雰囲気温度(℃)]
  2. 【請求項2】スルホン酸塩基を有する芳香族ポリエステ
    ルが、ポリエステルを構成する全カルボン酸成分に対し
    てスルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分を1.2〜
    2.0モル%の割合で共重合させたポリエステルである
    ことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分
    が5−ナトリウムスルホイソフタル酸に基づくものであ
    り、固体微粒子が平均粒径15〜70mμのシリカであ
    り、ガラス転移点降下剤が下記の一般式(I): 【化1】R↓1 O−X−OR↓2 (I) (式中、Xは芳香族基、R↓1 およびR↓2 は炭素数6
    〜18のアルキル基またはアリ−ルアルキル基を表す)
    で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴と
    する請求項1記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6224861B1 (en) 1996-01-09 2001-05-01 The Institute Of Physical And Chemical Research. Amino acid composition
CN102170876B (zh) * 2008-10-06 2013-12-04 株式会社明治 含有氨基酸组合物作为有效成分的耐力提高剂、抗疲劳剂或疲劳恢复剂

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CN102170876B (zh) * 2008-10-06 2013-12-04 株式会社明治 含有氨基酸组合物作为有效成分的耐力提高剂、抗疲劳剂或疲劳恢复剂

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