JP3097089B2 - ２サイクルエンジンの排気制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、２サイクルエンジンの排気タイミングを
エンジン回転数に応じて変化させるようにした排気制御
装置に関する。

〔従来の技術〕

従来、２サイクルエンジンでは排気口上縁の位置をエ
ンジン回転数に応じて昇降させ、これにより、各エンジ
ン回転数域に応じた最適の排気タイミングを確保して広
範囲なエンジン回転数域における２サイクルエンジンの
出力の向上を図った排気制御装置が提供されている。

第２図は、上述した排気制御装置１を装着した２サイ
クルエンジン２の要部概念断面図である。

この排気制御装置１は、排気通路３の上壁3aに出没自
在に配設された板形状の第１の弁体４と第２の弁体５と
を有しており、エンジンの低回転域（Ｌ位置）では第２
図に示すように、この第１及び第２の弁体４、５の双方
を排気口６側へ突出させて、当該第１の弁体４の先端4a
により排気口６の上縁位置をＡだけ下げ、これにより排
気タイミングを遅らせて、低回転数域における２サイク
ルエンジン２の出力向上を図るとともに、エンジンの中
低回転域（Ｍ位置）では第３図に示すように、第１の弁
体４のみを排気口６から退避させて、第２の弁体５の先
端5aにより排気口６の上縁位置をＢだけ上昇させ、これ
により排気タイミングをやや速めて中回転数域における
２サイクルエンジン２の出力向上を図るようにしてい
る。

なお、図３で示すように、第１の弁体４と第２の弁体
５の各前端面は、エンジンの中回転域では前上がりで略
面一の傾斜面となるように形成されている。

またエンジンの高回転域（Ｈ位置）では第４図に示す
ように、第１及び第２の弁体４、５双方を排気口６から
退避させて排気口６の上縁位置をさらにＣだけ上昇さ
せ、これにより排気タイミングを最も速めて高回転数域
における２サイクルエンジン２の出力向上を図るように
している。

なお、上述した第１及び第２の弁体４、５は図示の如
く互いに重ね合わせて配設されており、また第２の弁体
５を排気口６から退避させるにあたっては、第４図で示
すように、第２の弁体５に圧入嵌着された係合部である
ピン７と第１の弁体４の上面に形成された係合部である
長溝4bとを係合させて、第１の弁体４の退避に追従させ
て第２の弁体５を排気通路３の上壁3a内に退避させるよ
うにしている。なお、第２の弁体５はシリンダ内に配設
されたバネ８の押圧力により、ピン７を介し常時は第２
図で示すように排気口６側へ突出するように付勢されて
いる。

なお、第２図乃至第４図で符号９はシリンダースリー
ブ、９′は掃気ポートである。

一方、上述した第１及び第２の弁体４、５の駆動装置
は、第２図で示すように、第１の弁体４の後端に支承さ
れた軸10に嵌挿するＵ字形の切り欠を有するレバー11
と、このレバー11を回動させる駆動軸12とから構成され
ており、この駆動軸12が回動することにより、前記第１
及び第２の弁体４、５は排気通路３の上壁3aから排気口
６へ向けて順次出没する。

また、上述した駆動軸12は、第５図で示す駆動軸12の
一端に固着された排気バルブ駆動プーリ13（以下単に駆
動プーリと言う）により駆動される。またこの駆動プー
リ13は当該プーリ13に巻回された駆動用ケーブル14を介
し、図示せぬサーボモータにより所定のエンジン回転数
に応じて駆動される。

一方、上述した、第１及び第２の弁体４、５は、低回
転数域では第２図に示すＬ位置、中回転数域では第３図
に示すＭ位置、高回転数域においては第４図に示すＨ位
置に移動していることが必要であるので、これらの各回
転数域においてそれぞれ上述したＬ、Ｍ、Ｈの位置とな
るよう調整するため、駆動軸12を支承するプレート15の
所定位置にＬ位置の合わせマーク16、Ｍ位置の合わせマ
ーク17、Ｈ位置の合わせマーク18を形成するとともに、
駆動プーリ13の上面所定位置に位置合わせマーク19を形
成し、第５図で示すように、プーリ13のマーク19とＬ位
置の合わせマーク16とが合致した時には、第２図に示す
Ｌ位置に第１及び第２の弁体４、５が位置決めされるよ
うに設定し、また第６図で示すように、プーリ13のマー
ク19とＭ位置の合わせマーク17とが合致した時には第３
図に示すＭ位置に第１及び第２の弁体４、５が位置決め
されるように設定し、さらに、第７図で示すように、プ
ーリ13のマーク19とＨ位置の合わせマーク18とが合致し
た時には第４図に示すＨ位置に第１及び第２の弁体４、
５が位置決めされるように調整していた。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところで、上述した排気制御装置によると、第３図に
示すＭ位置では第１の弁体４の先端面4cと第２の弁体５
の先端面5cの各面が前上がりで略面一の傾斜面となるよ
う、調整時に第６図のごとくプーリ13のマーク19とＭ位
置の合わせマーク17とを合致させるが、エンジンの作動
時に図示せぬサーボモータによりプーリ13を回転させる
と、実際は作動ケーブル14の遊び（なおこの遊び量は通
常0.3〜0.5mmで、撓み量でほぼ1mm程度である）より第
６図のごとくプーリ13のマーク19とＭ位置の合わせマー
ク17とが合致する位置に至らず、このため第３図の要部
拡大図で示す第８図の如く、第１の弁体４と第２の弁体
５との面が一致しないで、一点鎖線20、21で示すよう
に、遊び量の分だけ第１の弁体４が出っ張り、あるいは
引っ込んでしまう。

なお、ケーブルの遊びによって、第１の弁体４が一点
鎖線20で示すように引っ込む分には問題はないが、一点
鎖線21のように出っ張ると、排気ガスの流れを妨げ、中
回転数域で最適の排気タイミングを得ることが出来ず、
２サイクルエンジンの出力低下の原因となる問題点があ
った。

なお、このような問題点は、高回転数域で第１及び第
２の弁体４、５がともに排気通路３の上壁3a内に後退し
たときに、第１の弁体４の先端が第２の弁体５の先端面
5aから突出する場合もあり、この場合も排気ガスの流れ
を妨げ高回転数域で最適の排気タイミングを得ることが
できず、２サイクルエンジンの出力低下の原因となる。

この発明は、上述した事情に鑑み、中・高回転数域で
好適な排気タイミングを確保することの出来る２サイク
ルエンジンの排気制御装置を提供することを目的とす
る。

〔課題を解決するための手段〕

上述した課題を達成するため、この発明では、板状に
形成した第１の弁体と第２の弁体とを上下に重ね合せ、
さらに前記第１の弁体に駆動装置を連結するとともに所
定距離だけ後退した位置で第２の弁体と係合してシリン
ダの半径方向沿って進退させるようにして、前記第１の
弁体と第２の弁体とをシリンダの側壁に開口し排気通路
に連通する排気口の上部に出没自在に配設し、エンジン
の低速回転数域では前記第１の弁体と第２の弁体の双方
を排気口側へ突出させ、該排気口の上縁位置を前記下側
に位置する第１の弁体の先端により下降させるととも
に、エンジンの中速回転数域では前記低速回転数域に対
し下側に位置する第１の弁体のみを排気口側から所定距
離だけ後退させ前記排気口の上縁位置を第２の弁体の先
端位置まで上昇させるとともに、前記第１、第２の弁体
の前端面を前上がりで略面一の傾斜面に形成し、さらに
エンジンの高速回転数域では前記中速回転数域に対し第
１、第２の弁体の相対位置を両者の係合により略中速回
転数域の状態で駆動装置に連結した第１の弁体の更なる
後退により第２の弁体を前記排気口側から後退させ前記
排気口の上縁位置を更に上昇させるようにした２サイク
ルエンジンの排気制御装置において、前記第１の弁体の
みが所定距離後退し、該第１の弁体の先端面と前記第２
の弁体の先端面とが略面一な中速回転数域における第
１、第２の弁体の相対位置に対し、前記第１の弁体の係
合部と第２の弁体の係合部が係合する相対位置を少なく
とも第１の弁体を更に小許後退した位置とするようにし
ている。

〔作用〕

上述した排気制御装置によると、第２の弁体は、第１
の弁体の先端面が第２の弁体の先端面よりも小許後退し
た位置で係合するよう位置決め設定されているので、前
記第１及び第２の弁体が排気通路の上壁に後退したとき
でも上述した第１及び第２の弁体の位置関係が維持さ
れ、このため第１の弁体が第２の弁体の先端面から突出
して排気の抵抗となることがない。

〔実施例〕

以下、この発明に係わる排気制御装置の一実施例を詳
述する。

第１図は、この発明に係わる排気制御装置30を装着し
た２サイクルエンジン31の要部拡大斜視図で、第３図と
同一部分を同一符号で示し、特に中回転数域における調
整位置を示している。

この排気制御装置30では、エンジンの中回転数域にお
ける第１と第２の弁体４、５の位置決め設定をするに際
し、第６図に示すように、プーリ13のマーク19とＭ位置
の合わせマーク17とが合致した時に、図１で示すよう
に、第１の弁体４の先端面4cが第２の弁体５の先端面5c
よりも所定距離奥の位置に引っ込めるよう、即ち小許後
退した位置に予め位置決め設定されている。

なお小許後退させる距離は、第６図に示すケーブル14
の遊び量を考慮して決定し、また第１の弁体４の先端面
4cを第２の弁体５の先端面5cよりも所定距離小許後退さ
せるには、レバー11と駆動軸12との取付け位置を変更し
て対応する。

従って、上述した制御装置30によると、第６図のよう
に、エンジンの作動時に図示せぬサーボモータによりケ
ーブル14を介しプーリ13を回転させると、実際は作動ケ
ーブル14の遊びにより第６図のごとくプーリ13のマーク
19とＭ位置の合わせマーク17とが合致する位置に至ら
ず、このため遊び量の分だけ第１図に示す一点鎖線32の
位置へ第１の弁体４が出っ張たとしても、その出っ張り
量は予め、第１の弁体４の先端面4cを第２の弁体５の先
端面5cよりも所定距離小許後退させた距離に吸収される
こととなる。

このためケーブル14の遊び量により第１の弁体４の先
端面4cが最大出っ張っても第１図の一点鎖線32で示すよ
うに第１の弁体４の先端面4cと第２の弁体５の先端面5c
とが一致した位置、即ち前上がりで略面一の傾斜面とな
り、エンジンの中回転数域で前記第１の弁体４の先端面
4cが第２の弁体５の先端面5cから飛び出ることはない。

即ち、上述した構成によると、高回転数域で第１及び
第２の弁体４、５が排気通路３の上壁3aに後退したとき
でも上述した第１及び第２の弁体４、５の位置関係、即
ち第２の弁体５は、第１の弁体４の先端面4cが第２の弁
体５の先端面5cよりも小許後退させた位置にある関係が
維持され、このためで第１の弁体４が第２の弁体５の先
端面5aから突出して排気の抵抗となることがない。

〔発明の効果〕

以上説明したように、この発明の排気制御装置では、
第２の弁体は、第１の弁体の先端面が第２の弁体の先端
面よりも小許後退させた位置で係合するよう位置決め設
定されているので、第１及び第２の弁体が排気通路の上
壁に後退したときでも上述した第１及び第２の弁体の位
置関係が維持されることとなり、このためエンジンの中
・高回転数域で第１の弁体の先端面が第２の弁体の先端
面から飛び出すことが可及的に阻止され、これにより中
・高回転数域で好適な排気タイミングを確保して２サイ
クルエンジンの出力を一層向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明に係わる排気制御装置を適用した２サ
イクルエンジンの概念断面図、第２乃至第４図は排気制
御装置の動作を示す２サイクルエンジンの要部概念断面
図、第５図乃至第８図は駆動プーリの動作を示す図、第
８図は第３図の要部拡大図である。 ３……排気通路、3a……上壁、４……第１の弁体、4b…
…溝、4c、5c……先端面、５……第２の弁体、６……排
気口、７……ピン。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】板状に形成した第１の弁体と第２の弁体と
   を上下に重ね合せ、さらに前記第１の弁体に駆動装置を
   連結するとともに所定距離だけ後退した位置で第２の弁
   体と係合してシリンダの半径方向沿って進退させるよう
   にして、前記第１の弁体と第２の弁体とをシリンダの側
   壁に開口し排気通路に連通する排気口の上部に出没自在
   に配設し、 エンジンの低速回転数域では前記第１の弁体と第２の弁
   体の双方を排気口側へ突出させ、該排気口の上縁位置を
   前記下側に位置する第１の弁体の先端により下降させる
   とともに、 エンジンの中速回転数域では前記低速回転数域に対し下
   側に位置する第１の弁体のみを排気口側から所定距離だ
   け後退させ前記排気口の上縁位置を第２の弁体の先端位
   置まで上昇させるとともに、前記第１、第２の弁体の前
   端面を前上がりで略面一の傾斜面に形成し、 さらにエンジンの高速回転数域では前記中速回転数域に
   対し第１、第２の弁体の相対位置を両者の係合により略
   中速回転数域の状態で駆動装置に連結した第１の弁体の
   更なる後退により第２の弁体を前記排気口側から後退さ
   せ前記排気口の上縁位置を更に上昇させるようにした２
   サイクルエンジンの排気制御装置において、 前記第１の弁体のみが所定距離後退し、該第１の弁体の
   先端面と前記第２の弁体の先端面とが略面一な中速回転
   数域における第１、第２の弁体の相対位置に対し、前記
   第１の弁体の係合部と第２の弁体の係合部が係合する相
   対位置を少なくとも第１の弁体を更に小許後退した位置
   としたことを特徴とする２サイクルエンジンの排気制御
   装置。