JP3046977U - トロコイドポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 運転時の騒音値を低減させると共に、軽量化
が図れ、耐摩耗性、耐久性、耐熱性にも優れ、熱膨張に
よるクリアランスの寸法変化もなく、インナーローター
とアウターローターとの回転により円滑な流体移送がで
き、かつ油以外の液体にも使用できる等の利点を有する
大量生産に適した低コスト化が可能なトロコイドポンプ
を提供すること。 【解決手段】 本考案に係るトロコイドポンプは、内面
にＺ＋１の歯数を有する内歯１ａが形成されたアウター
ローター１と、該アウターローター１に偏心して嵌入噛
合するＺの歯数を有する外歯２ａが形成されたインナー
ローター２とをケーシング５に回転自在に組み込み、イ
ンナーローター２の回転によりアウターローター１が従
動回転してインナーローター２とアウターローター１と
の間に形成されるポンプ室６の容積の増大、減少の変化
により液体の吸込みおよび吐出を連続的に繰り返すよう
に構成したトロコイドポンプにおいて、アウターロータ
ー１とインナーローター２をガラス繊維で強化された熱
硬化性プラスチックで構成されている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は各種工作機械、産業機械、農業機械、各種自動車エンジン等の強制給 油用または各種工作機械、建設機械、印刷機械等の油圧駆動用ならびに各種工作 機械、バーナー噴射用、石油施設等の油移送用等に用いられるトロコイドポンプ に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来、トロコイドポンプはトロコイド歯形の内歯を有するアウターローターと 、そのアウターローターの内歯に偏心して噛合する外歯を有するインナーロータ ーをケーシング内の空間部に納め、内歯の歯数より１個少ない外歯のインナーロ ーターを回転させてアウターローターを従動させ、インナーローターとアウター ローターとで形成されるポンプ室の容積の変化で吸込み、吐出を連続に繰り返す ポンプ作用で強制吸入、吐出が行なわれるものである。

【０００３】 そのトロコイドポンプは、小型で構造が簡単であり、容積効率が良い等の理由 から主として、各種の工作機械や産業機械あるいは各種自動車エンジン等の潤滑 油を強制給油するのに使用されており、最近は、なかでも各種工作機械の主軸の 冷却油・液の温度調整等を行なうオイルクーラーへの需要や各種自動車の潤滑油 用ポンプやトランスミッション用オイルポンプ等として広範囲に利用されている 。

【０００４】 オイルクーラーは、その市場において低騒音化が大命題とされており、オイル クーラーに搭載されるトロコイドポンプも当然のことながら低騒音化が求められ 、大きな課題となっている。また、自動車用のオイルポンプとして採用する場合 には、自動車の特性上、静寂性が要求されることから、同様に低騒音化が望まれ ていると共に、低燃費化を達成する必要があることから、軽量性が要求されてい る。

【０００５】 ところで、従来のトロコイドポンプは、耐摩耗性、強度性、耐久性等に優れて いることから、アウターローターとインナーローターを粉末冶金による焼結合金 で製造されている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、焼結合金で製造されたアウターローターとインナーローターか らなるトロコイドポンプは、アウターローターの内歯とインナーローターの外歯 の噛合時の当りで発生する騒音値が高く、また温度上昇による膨張でアウターロ ーターの内歯とインナーローター外歯との間のクリアランスが狭くなり、それに よっても騒音値が高くなると共に、インナーローターとアウターローターがスム ーズに回転しなくなって円滑な流体移動ができなくなることがあった。

【０００７】 また、アウターローターとインナーローターが焼結合金からなるトロコイドポ ンプは、その大きさの割に重量が大きいので、低燃費化のために軽量化が求めら れている自動車に搭載されるオイルポンプとしては適切なものでなかった。

【０００８】 さらに、焼結合金の原料粉末が高価でコスト高になるばかりでなく、衝撃力に も弱く、油以外の液体、例えば、水や冷却液、薬液等を使うと発錆が生じるので 使用できないと言う問題点があった。

【０００９】 本考案は、上記の問題を解決することを課題として開発されたもので、運転時 の騒音値を低減させると共に、軽量化が図れ、耐摩耗性、耐久性、耐熱性にも優 れ、熱膨張によるクリアランスの寸法変化もなく、インナーローターとアウター ローターとの回転により円滑な流体移送ができ、かつ油以外の液体にも使用でき る等の利点を有する大量生産に適した低コスト化が可能なトロコイドポンプを提 供するものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本考案では、内面にＺ ＋１の歯数を有する内歯が形成されたアウターローターと、該アウターローター に偏心して嵌入噛合するＺの歯数を有する外歯が形成されたインナーローターと をケーシングに回転自在に組み込み、インナーローターの回転によりアウターロ ーターが従動回転してインナーローターとアウターローターとの間に形成される ポンプ室の容積の増大、減少の変化により液体の吸込みおよび吐出を連続的に繰 り返すように構成したトロコイドポンプにおいて、アウターローターとインナー ローターをガラス繊維により強化された熱硬化性プラスチックで構成してなるト ロコイドポンプを開発し、採用した。

【００１１】

【考案の実施の形態】

以下に、本考案の実施の形態を添付の図面に基づいて説明すれば、１はガラス 繊維入りのフェノール樹脂で成形された適宜厚さのアウターローターで、内面に トロコイドカーブによる７角形の内歯１ａが形成されている。

【００１２】 ２はアウターローター１と同じガラス繊維入りのフェノール樹脂で成形された インナーローターで、アウターローター１の内面に形成された内歯１ａに内接す るトロコイドカーブの６角形の外歯２ａを有している。

【００１３】 ３はインナーローター２の中心に穿設された、駆動軸４を取り付ける軸孔で、 その軸孔３の中心はアウターローター１の中心よりαだけ下方の位置に若干ズレ ていて、アウターローター１と同心ではなく、偏心した位置に設定されている。

【００１４】 ５はポンプ本体Ｐの内部に収まるケーシングで、その内部にアウターローター １が回転自在に嵌められていると共に、アウターローター１の内歯１ａとインナ ーロータ２の外歯２ａとにより回転方向に拡縮しつつ移動して形成されるポンプ 室６に連通する吸込口７、吐出口８が内面の左右に形成されている。

【００１５】 アウターローター１およびインナーローター２は前述のようにガラス繊維入り のフェノール樹脂で成形されたものであるが、このフェノール樹脂（ＮＯＫ ３ ４４Ｒ ＮＯＫ株式会社製）は、機械的物性として、引張強さ９６kgｆ／mm²、 硬さ（ロックウェルＭ）１１９、曲げ強さ１８０kgｆ／mm²、曲げ弾性率１４． ２kgｆ／mm²、圧縮強さ２６０kgｆ／mm²、また物理的特性として、比重１．８０ 、吸水率０．０５％、熱変形温度２４０度、度熱膨張係数１．６、さらに、摺動 係数として、摩擦係数０．７５、摩耗係数６００の数値をそれぞれ有しており、 通常のフェノール樹脂より機械的強度、寸法安定性、耐熱性に優れており、高温 でも剛性を維持する性質を有していて、アウターローターおよびインナーロータ ーとして長期間の耐久性を充分保証できる耐摩耗性と強度性を持つものである。

【００１６】 このように構成された本考案のガラス繊維入りフェノール樹脂製のアウターロ ーターとインナーローターからなるトロコイドポンプと、従来の焼結合金製のア ウターローターとインナーローターからなるトロコイドポンプとの騒音比較試験 を行なった。その結果を下記に示す。 試験ポンプ型式 ＫＳＰ−ＭＤ０８−２ＦＲＴ（（株）久瀬製作所製） 使用流体 モービルベロシティ No.３（潤滑油 モービル石油製） 使用電動機型式 ＳＦ−ＪＲ 三相 ４Ｐ（三菱電機（株）製） 出力 ０．２ＫＷ 周波端 ６０ＨＺ 電圧 ２００Ｖ 電流 １．１Ａ

【００１７】

【表１】 ┏━━━━━━━━━━━┯━━━━━━━━┯━━━━━━━━┓ ┃ │ 従 来 機 │ 本発明品 ┃ ┃ 吐出圧力 Kgｆ／cm² │ ｄＢ │ ｄＢ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ０．１ │ ５５．９ │ ５２．０ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ０．５ │ ５８．９ │ ５３．２ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ １．０ │ ５９．９ │ ５３．５ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ １．５ │ ６１．０ │ ５３．８ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ２．０ │ ６１．２ │ ５４．６ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ３．０ │ ６１．５ │ ５７．０ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ４．０ │ ６３．０ │ ６０．０ ┃ ┠───────────┼────────┼────────┨ ┃ ５．０ │ ６４．８ │ ６１．０ ┃ ┗━━━━━━━━━━━┷━━━━━━━━┷━━━━━━━━┛ この試験結果から明らかなように、本考案のガラス繊維入りフェノール樹脂製 のアウターローターとインナーローターからなるトロコイドポンプは、従来の焼 結合金製のアウターローターとインナーローターからなるトロコイドポンプに比 較して３．０〜７．２ｄＢ低くなっていて、低騒音化されていることが分かる。

【００１８】 このように構成された本考案のトロコイドポンプの使用態様を述べると、駆動 軸４の回動に伴ってインナーローター２が回転するとアウターローター１も同一 方向に従動回転する。そうすると、アウターローター１の内歯１ａとインナーロ ーター２の外歯２ａとで形成されるポンプ室６の容積変化により周知のポンプ作 用が行なわれ吸込み、吐出が連続的に繰り返し行なわれる。

【００１９】 このとき、アウターローター１の内歯１ａとインナーローター２の外歯２ａが ガラス繊維入りのフェノール樹脂で成形されたものであるから、噛合時の騒音値 が極めて低い低騒音になる。

【００２０】

【考案の効果】

以上のように、本考案のトロコイドポンプによれば、アウターローターとイン ナーローターをガラス繊維で強化された熱硬化性プラスチックで形成されている から、アウターローターとインナーローターとの噛合時の騒音値が低くなると共 に、長期間に亘って保持される耐久性と耐摩耗性は従来の焼結合金と何ら変わる ことがなく、且つ軽量化されているので、自動車用のオイルポンプとして使用す れば低燃費に貢献できるものである。また、油以外の液体用ポンプとして広範囲 に亘って使用することもでき、大量生産に適し、製造コストが従来のものより大 幅に低減できて経済的である等の効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】アウターローターの正面図である。

【図２】インナーローターの正面図である。

【図３】インナーローターとアウターローターを組合せ
た正面図である。

【図４】図３のＡ−Ａ線断面図である。

【図５】トロコイドポンプの分解斜視図である。

【符号の説明】

１ アウターローター １ａ 内歯 ２ インナーローター ２ａ 外歯 ５ ケーシング ６ ポンプ室

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内面にＺ＋１の歯数を有する内歯が形成
   されたアウターローターと、該アウターローターに偏心
   して嵌入噛合するＺの歯数を有する外歯が形成されたイ
   ンナーローターとをケーシングに回転自在に組み込み、
   インナーローターの回転によりアウターローターが従動
   回転してインナーローターとアウターローターとの間に
   形成されるポンプ室の容積の増大、減少の変化により液
   体の吸込みおよび吐出を連続的に繰り返すように構成し
   たトロコイドポンプにおいて、アウターローターとイン
   ナーローターをガラス繊維で強化された熱硬化性プラス
   チックで構成してなるトロコイドポンプ。